抄録
栃木県鹿沼市には日向層の玄武岩が分布している。本地域は東北日本弧南端部に位置し,日向層玄武岩から報告される放射年代(17.3–15.3 Ma)は日本海拡大の時代と一致している。このため,日向層玄武岩の成因は清水(2016)が指摘したフィリピン海プレート由来流体との関連が示唆される。
日向層玄武岩は岩石の組織や全岩化学組成および同位体組成の特徴に基づき,Hn–typeとHSr–typeに区分される。両者がもつ主成分組成は,東北日本弧に産するマントル起源の中新世玄武岩と同様島弧ソレアイト質の特徴を示す。
16.3 Maで計算したHn–typeのSr–Nd同位体比初生値は,東北日本弧のマントル起源玄武岩と同様の値を示すことから,Hn–typeはマントルの部分融解によって生成されたと考えられる。
一方で,HSr–typeはフィリピン海プレート由来流体の影響を受けた火山岩類よりも,さらに高いSr同位体比と低いNd同位体比をもち,この値は本邦に産する玄武岩からは報告されていない。本講演ではHSr–typeの成因について,地殻物質との著しい同化作用が起きた可能性などを追求する。