抄録
島根県江津地域中向井の蛇紋岩体に近接する露頭より緑れん石-バロワ閃石片岩を採取した.この岩石には局所的に最大径8 mm程度のざくろ石の斑状変晶が形成されており,ざくろ石藍閃石片岩とよぶべき岩石である.主要構成鉱物は角閃石(Gln, Wnc, Brs, Act, Mhb, Ed, Prg),ざくろ石,緑れん石,緑泥石,曹長石であり,他に少量のオンファス輝石,カリ長石,ルチル,チタン石,赤鉄鉱,石英を含む.ピーク変成時にエクロジャイト相の変成条件に達しており,地質温度・圧力計(Ellis & Green, 1979; Waters & Martin, 1993)の適用により510℃,18.5 kbar,が得られた.これは蛇紋岩体より離れて分布する青色片岩の変成条件(380–540 °C, 11–14 kbar; Li et al., 2017)より有意に高圧である.