抄録
商業的に製造される黄色の単結晶HPHT合成ダイヤモンドは1b型で置換型単原子窒素を200ppm程度含有している。より高温で製造されるかHPHT処理が施されることで1b+1aA型になることは良く知られている。
今回検査した0.066ct, Fancy Vivid YellowのダイヤモンドはFTIR分析にてCセンタとAセンタに加えてBセンタとB2センタ(プレートレット)が検出された。トータルの窒素濃度は700ppmに及んでいた。また、3107 cm-1にC-H関連ピークが認められた。(PL)分析およびDiamondViewTMによる観察などの結果、当該石はCoを溶媒に用いたHPHT合成ダイヤモンドであり、成長後に放射線照射とHPHT処理が施されたと結論付けられる。
宝飾用に供される合成ダイヤモンドのサイズおよび品質は年々向上しており、そのバリエーションは多岐にわたる。これまで天然ダイヤモンドの鑑別特徴と考えられていた凝集した窒素関連の光学センタの検出だけでは天然起源の確定はできない。他の検査手法も用いた総合的な判断が重要である。