抄録
本研究では九州黒瀬川帯の中で最もortho-type PSに富む産地である熊本県八代市泉町下岳の試料の分析結果を発表する。下岳では緑暗色の片状の蛇紋岩がみられそれらの間に多くの幅2,3 mm程度の直線的な黄緑色-緑白色の蛇紋石脈がみられる。片状蛇紋岩はlizarditeと少量のmagnetiteから構成されbastite組織が顕著である。黄緑色の脈の多くがほぼ純粋なortho-type PSであり、まれにclinochrysotileとorthochrysotileからなる黄緑色の太脈がみられる。 Ortho-type PSからなる脈は組成的にほぼ均質で少量のAl (0.03-0.05 apfu)、Fe (0.05-0.12 apfu)を含んでいた。Ortho-type PSは少量のorthochrysotileを伴いchrysotileとPSの中間的な性質を示すものも含んでいた。繊維の方向はランダムであり隙間のない密な組織であった。直径は200-300 nmのものが最も多く形の整ったもののセクター数は15しか見られなかった。