抄録
SiおよびAlを主成分とする層状ケイ酸塩鉱物や含水非晶質物質は, 地球表層における風化・変質生成物の多くを占める。このため, 含水非晶質物質を起源とする層状ケイ酸塩鉱物の結晶化過程の速度論的理解は地球表層環境変遷過程の定量的解析において重要である。本研究では, Si-Al系含水非晶質物質を用いた熱水実験を行い, 生成した層状ケイ酸塩鉱物について, その産状および組織の変遷についての観察結果を報告する。
SEM観察により, 200℃以上の条件の試料には, 様々な二次生成物相が形成されていることが確認できた。XRD分析と, 赤外吸収スペクトルは, これらの結晶がkaolinite系の鉱物, pyrophyllite, halloysiteであることを示している。出発物質の残存相の組成は, 初期組成よりもSiの量比が増加しており, Alがより選択的に溶脱していることを示している。出発物質の溶解の進行がSi-Al系層状ケイ酸塩鉱物種とその産状に強く影響していると考えられる。