初期地球へ水を運びこんだ物質の候補の一つとして、星間空間固体の主成分である非晶質のケイ酸塩に着目した。そこに水和した後の水素の原子スケールでの拡散の過程を、中性子準弾性散乱の手法によって調べた。加熱による結晶化が起きない300Kまでの比較的低温の条件において系統的な計測と解析を行った結果、時間・空間スケールと活性化エネルギーがすべて異なる、2種類の水素拡散の過程を検出した。いずれも結晶質鉱物内での水素拡散過程と比して遥かに速い過程であった。以上の結果から、原始太陽系星雲で星雲ガスとして存在したH2Oが非晶質微粒子に吸着され、その内部に急速に拡散して保持されることは充分に可能である。