抄録
CMコンドライトには、トチリナイトとクロンステッタイトの連晶組織(tochilinite-cronstedtite intergrowth, 以下TCI)が普遍的に存在し、母天体の水質変質環境に関する重要な情報を保持していると考えられる。本研究ではQUE97990,Murchison,Nogoya の3つのCMコンドライトのTCIについてTEMによる微細組織観察を行い、その形成プロセスを検討した。水質変質程度の小さいQUE97990とMurchison中のTCIでは、クロンステッタイト中に薄いトチリナイトの脈が存在する組織が観察された。このことは、クロンステッタイトの形成中あるいは形成後にトチリナイトが形成したことを示しており、母天体の初期水質変質環境を推定するうえで重要な制約条件となる。また、水質変質程度の大きいNogoyaでは、TCIがサーペンティンを取り囲んだ組織が多くみられ、連続的に変化している様子から、変質の途中で流体の化学組成がFeやSに富むものからMgに富むものに変化したと考えられる。