抄録
糸魚川市にあるフォッサマグナミュージアムは,糸魚川ユネスコ世界ジオパークの中核施設であり,市民に広く開かれた博物館を目指し,海岸などで採集した石の名前の鑑定を窓口で学芸員が行っている.この石の鑑定は近年増加傾向にあり,博物館側では対応に苦慮している.今回の研究では,海岸の礫の写真からヒスイの自動判別ができる機器を開発し,学芸員の代わりとなる人工知能による機械学習を利用した石の鑑定の可能性を検討した.
本研究では,googleのTensorFlowを利用し,糸魚川の海岸で採取した礫の13,000枚の写真を,ヒスイとヒスイ以外の岩石として,NASNetに転移学習させた.
NASNetに転移学習させた結果,20,000回の学習で,ヒスイとヒスイ以外の岩石の認識率は約96%となった.教師画像とは別の画像を用いて,認識率の確認をしたところ,20枚の写真を用いたヒスイの的中率は95%であり,13枚の写真を用いたヒスイ以外の岩石の的中率は100%であった.
今回の研究から,人工知能を用いた画像の深層学習によって,ヒスイとヒスイ以外の岩石の認識が可能であることが明らかとなった.