抄録
八方超苦鉄質岩体の蛇紋岩中から,鉄モンチセライト(またはMgキルシュスタイナイト)を発見した。モンチセライトはこれまでにキンバーライトやスカルンなどから報告されており,稀にかんらん岩にも産するが,蛇紋岩中からはおそらくこれが初めての発見である。
その化学組成は,酸素数を4.0としたときの陽イオン総計が3.0,Siが1.0,Ca/(Mg+Fe+Mn)が約1.0と,ほぼ理想的組成に近いが,これまでに報告されているモンチセライトに比べて鉄とマンガンがかなり多い。
八方の鉄モンチセライトは不規則な形態を持って初生かんらん石を置換しており,アンチゴライト±透輝石と共存している。透輝石とかんらん石が直に接することはないことから,かんらん石+透輝石よりもモンチセライト+アンチゴライトの組み合わせが安定であったと考えられる。
単純化したCMSH系の熱力学的計算によると,モンチセライト+アンチゴライトは450℃以下の温度で,低いシリカ活動度と高いCa2+/(H+)2活動度のもとで安定である。