抄録
沈み込み帯で形成される変成岩は付加・堆積作用から変成作用に至る履歴をもつ。北部九州西部に産する浮嶽,雷山および天山地域の低圧型変成岩は付加体での堆積物を主な原岩とし,少量の貫入岩を伴う。上記の3地域に加え,福岡県三郡山麓,飯塚地域から低圧型の変成岩を見出した。三郡山麓の変成岩は,福岡県飯塚地域南部に東西約8 km,南北約3 kmにわたり分布する。細粒角閃岩には,コアがアクチノ閃石で,リムがホルンブレンドを示す角閃石が含まれる。また,泥質片麻岩には,白雲母,黒雲母,珪線石,石英,斜長石を包有するザクロ石が産する。キンセイ石とカリ長石の周囲に黒雲母と白雲母が晶出することもある。これらの組織と鉱物組み合わせは,時計回りのヘアピン型変成履歴を記録している。ザクロ石とその包有物の組成から,620-720 度, 0.4-0.5 GPaのピーク変成条件が見積もられた。以上から,北部九州に点在する低圧型変成岩は東西約100 kmにわたり共通の記載的特徴をもつことが明らかになった。