抄録
三波川変成帯の五良津岩体は、エクロジャイト相を経験した岩体である。五良津東部岩体にごく僅かにみられるimpure marbleから、局所組成を反映した多様な鉱物組み合わせと反応組織をみつけた。これらの反応組織は、(1)圧力低下、(2)CO2分圧の低下、あるいは(3)両者の相乗作用によって形成される。二種類の前駆物質が同時に存在できるCO2分圧の値は、2GPa, 600℃(エクロジャイト相相当)では0.018-0.027である。この状態から反応生成物を形成するには、温度一定のもとでは10kbar以上の圧力低下、あるいは圧力・温度一定のもとではCO2分圧を0.001-0.004まで低下させる必要がある。前者は、エクロジャイトユニットが減圧し周辺の片岩ユニットと合体した現象に由来する可能性がある。後者の場合は、エクロジャイト相における岩体へのH2O主体の流体の浸潤が候補のひとつである。