抄録
ザクロ石やジルコン中の、ナノ花崗岩・ガラス包有物、珪長岩包有物は、岩石が部分溶融した直接的な証拠として近年注目が高まっている。これらの包有物は、世界中の大陸衝突型造山帯に産するグラニュライトから報告されている。本研究では、今まで報告のなかった東南極セール・ロンダーネ山地において、同山地東部バルヒェン山からナノ花崗岩包有物を見出したので報告する。ナノ花崗岩が見出された試料は、ザクロ石―黒雲母片麻岩2試料およびザクロ石―単斜輝石―斜方輝石片麻岩1試料である。ナノ花崗岩は、いずれもザクロ石に包有されて産し、黒雲母+石英±斜長石±紅柱石±珪線石の鉱物組み合わせを持つ。本発表では、ナノ花崗岩中の黒雲母とマトリクスに産する黒雲母の組成差から、同山地における塩素に富む流体・メルトの分布と活動時期について議論する。