顎顔面補綴
Online ISSN : 2435-0389
Print ISSN : 0389-4045
原著
周術期頭頸部がん患者の安静時エネルギー消費量に影響を与える要因の検討
谷 皇子隅田 由香村瀬 舞井野 秀一
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2021 年 44 巻 2 号 p. 29-36

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抄録

本研究では間接熱量計を用いて(1)術前と退院時の安静時エネルギー消費量(REE)と体重の違いを調査すること,および(2)REEの変化量に影響を与える要因を特定することを目的とした.頭頸部癌切除術を受ける25人の患者(男性12人,女性13人)を対象とした.栄養状態の評価には,体重,身長,肥満度指数(BMI),C反応性タンパク(CRP),REE,Mini Nutritional Assessment-Short Form(MNA-SF),入院期間,およびTNM分類を用いた.間接熱量計(Fitmate-2100,Cosmed,イタリア)を用いてREEを測定した.REEは,術前と退院時に測定した.術前と退院時のREEと体重の比較に対応のあるt検定を使用し,REE変化量の予測因子の特定には重回帰分析を使用した.独立変数をREE 変化量,説明変数を,CRP変化量,MNA-SFスコア,およびTNM分類とした.術前と退院時のREE,体重ともに手術前と退院時で有意差を認めた(p<0.05).本研究では体重とREEが術前期間と比較して退院時に有意に減少したことを明らかにし,重回帰分析によって,MNA-SFスコアは負の,CRP変化量は正の予測因子であることを明らかにした.顎顔面補綴医もREEの変化を注視して,患者の周術期の栄養状態を把握することで回復への寄与を評価する必要がある.臨床的意義の観点から,MNA-SFとCRPは,患者の栄養状態を評価でき,REEの計測が難しい場合にREEを予測するための有用な評価ツールになり得ることが示唆された.

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© 2021 一般社団法人日本顎顔面補綴学会
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