Japanese Journal of Medical Technology
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Basic performance evaluation of the automatic blood cell washing system “cell washer UltraCW II”: Usefulness in tests of blood transfusion
Kento NISHIDAChiaki KATOSatoru YOKOYAMAMoe KAWAKAMIHiroko ENDOTomomi WATANABETadashi MATSUSHITA
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2020 Volume 69 Issue 1 Pages 82-88

Details
Abstract

輸血検査において赤血球洗浄機に求められる基本的機能は,洗浄効率と洗浄後の赤血球が試験管内に残存することである。今回,Helmer社の自動血球洗浄システム「セルウォッシャーUltraCW II」を使用し,洗浄工程の各パラメーターの条件設定を試み,輸血検査への有用性を検討した。洗浄後残液量は,試験管の洗浄前後の重量差から求めた。洗浄希釈倍数は,OrangeGを使用し478 nmの吸光度測定により求めた。赤血球残量率は,精製水を加え作製した溶血液の541 nmの吸光度により求めた。赤血球洗浄に最も影響を与えた因子は,DECANTの回転数であった。FILLの洗浄液量は過剰な場合,赤血球を減少させた。SPINは時間の延長が洗浄時間の延長につながった。得られたパラメーターにおいて,24本の試験管を用いた同時再現性において洗浄希釈倍数は,10 mm試験管でmean = 109倍,CV = 3.7%,12 mm試験管でmean = 165倍,CV = 6.1%であった。赤血球残存率は10 mm試験管でmean = 72.2%,CV = 12.2%,12 mm試験管でmean = 78.6%,CV = 5.2%であり,良好であった。高蛋白・高グロブリン検体でのPEG-IATによる抗D抗体価測定では,洗浄不十分による抗グロブリンの中和はなく,凝集判定が可能であった。以上より,UltraCW IIは輸血検査における赤血球洗浄に有用であった。

Translated Abstract

The basic requirements demanded from a red blood cell washing system in tests of blood transfusion are the efficiency of washing cells and a sufficient number of red blood cells remaining in a test tube. We tried to examine the usefulness of the automatic blood cell washing system called “cell washer UltraCW II” (Helmer) in a test of blood transfusion wherein the conditions were set for each parameter in the washing process. We calculated the amount of liquid that remained in the test tube from the difference in the weight of the test tube before and after washing cells. We calculated the washing dilution factor by measuring the absorbance at 478 nm using OrangeG. We calculated the number of red blood cells that remained in the hemolysis liquid with distilled water by measuring the absorbance at 541 nm. The factor that affected most the washing efficiency of red blood cells was the number of revolutions of DECANT. It made the red blood cells decrease in number when the number of washings (FILL) was too high. Extending the time of SPIN led to the extension of the washing time. Using a parameter provided by the manufacturer, we determined the intra-assay precisions of 24 test tubes. The washing dilution factor showed a mean of 109 and a CV of 3.7% for a 10 mm test tube, and a mean of 165 and a CV of 6.1% for a 12 mm test tube. The red blood cell residual rate showed a mean of 72.2% and a CV of 12.2% for a 10 mm test tube, and a mean of 78.6% and a CV of 5.2% for a 12 mm test tube. The results indicated a good performance of the system. In the anti-D titration with PEG-IAT in high-protein and high-globulin specimens, antiglobulins were not neutralized owing to washing insufficiency, and agglutination detection was possible. From these results, we found that UltraCWII was useful for the washing of red blood cells in the test of blood transfusion.

I  はじめに

輸血検査の間接抗グロブリン試験では,赤血球洗浄は重要な工程であり,洗浄不十分で偽陰性となるため,確実に反応溶液中のグロブリンが除去される必要がある1)~3)。洗浄工程は通常,用手による洗浄や,赤血球洗浄装置を用いて行われる。そのため,赤血球洗浄機に求められる基本的な機能は,洗浄効率と洗浄後の赤血球が試験管内に残存することである。今回,Helmer社の赤血球洗浄装置を使用する機会を得たので,Orange Gを用いた洗浄希釈倍数と,洗浄前後の赤血球から得た溶血液の吸光度から,輸血検査に最適な洗浄条件を設定し,輸血検査への有用性を検討した。

II  対象

1. 試薬および材料

塩化ナトリウム(SIGMA-ALDRICH®),インスタント燐酸緩衝液4(株式会社LSIメディエンス),Orange G(CHROMA-GESELLSCHAFT),Polyethylene Glycol(片山化学工業株式会社),ガンマPEG(株式会社イムコア),オーソ®抗ヒトIgG血清(ウサギ)(オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス株式会社),クームスコントロール(弱)(株式会社カイノス),献血グロベニン®-I静注用2,500 mg(日本製薬株式会社),および,当院検査部に生化学検査の依頼があった血清,輸血検査に使用した赤血球LR-「日赤」の残血を使用した。使用試料は,名古屋大学臨床研究審査委員会の承認(承認番号2010-1038-3)を得て,日常検査における残余検体を使用した。

洗浄用PBS加生理食塩液は塩化ナトリウム85 gとインスタント燐酸緩衝液450 mLを精製水で10 Lにした。

試験管はPYREX® Tube,Culture,Disposable Rimless,10 × 75 mm Borosilicate GlassおよびIWAKI DISPOSABLE CULTURE TUBES 12 × 75 mm Borosilicate Glass JR-2を使用した。

2. 測定装置

自動血球洗浄システム セルウォッシャーUltraCW® II(Helmer©)(以下UltraCW II)を使用した。UltraCW IIは,分注液量の校正を行った後使用した。プログラムはFILL(分注時回転数,洗浄液分注量),SPIN(回転数・時間),DECANT(上清廃棄回転数・時間),DOWN(試験管壁残液収集回転数・時間),AGITATION(攪拌回数),LOOP(繰り返し回数),CHECK(抗グロブリン試薬分注用の一時停止)が任意に設定可能である。

試験管重量の測定には,分析用電子天秤BM-252(株式会社エー・アンド・デイ),吸光度の測定には7011 Clinical Spectro photometer(HITACHI)を使用した。

III  検討方法

1. Orange Gサンプル原液

Orange G 300 mgを精製水10 mLで溶解後に濾過し,血漿の粘性と類似させるため16.2%ポリエチレングリコール溶液で10倍に希釈し,サンプル原液とした。

試験管にサンプル原液0.1 mLを分注し,精製水0.9 mLで希釈後,478 nmの吸光度を測定し原液吸光度とする。ただし,吸光度は測定可能レンジに入るよう適宜希釈して測定した。

2. 3%赤血球浮遊液

検査に使用した赤血球LR-「日赤」のセグメントチューブ残血3~5本分をプールし,用手法にて3回洗浄し生理食塩液で3%に調製。

3%赤血球浮遊液0.05 mLを試験管に分注し,0.95 mLの精製水を加え混和後,完全に溶血させるため−30℃の冷凍庫で10分凍結後,37℃で解凍,4,000 rpm 5分遠心後541 nmの吸光度を測定し,3%赤血球浮遊液の吸光度とした。

3. 試験管内残液量の測定

使用前の試験管重量を測定後,UltraCW IIで1回洗浄し,洗浄後の試験管重量を測定。試験管の洗浄後重量から洗浄前重量を差し引き,洗浄後残液量とした。

4. 洗浄希釈倍数の測定

試験管にOrange Gサンプル原液0.1 mLを分注。1回洗浄実施後,先に求めた試験管内残液量を含めて総量1 mLとなるよう精製水を分注し,478 nmの吸光度を測定。洗浄前吸光度/洗浄後吸光度を洗浄希釈倍数とした。

5. 赤血球残量率の測定

試験管に3%赤血球浮遊液を0.05 mL分注し,UltraCW IIで指定のプログラムを実行後,試験管内残液量を含め1 mLとなるよう精製水を加えて溶血液を作製し,541 nmの吸光度を測定。洗浄後吸光度/洗浄前吸光度 × 100を赤血球残存率(%)とした。

IV  結果

1. 試験管へのサンプル分注精度

試験管へのサンプル分注精度が洗浄希釈倍数の測定に与える影響を確認するため,10本の試験管に10倍希釈したOrange Gサンプル原液0.1 mLを分注し精製水0.9 mLで希釈し吸光度を測定した。吸光度はmean = 1.061,SD = 0.006,CV = 0.6%と良好であり,分注誤差は少なく,洗浄希釈倍数に与える影響はないと判断した。

同様にサンプル分注精度が赤血球残存率の測定に与える影響を確認するために,3%赤血球浮遊液0.05 mLを10本の試験管に分注し,0.95 mLの精製水を加え溶血液を作製し,吸光度を測定したところ,mean = 0.434,SD = 0.004,CV = 0.9%と良好であり,分注および溶血液作製の誤差は少なく,赤血球残存率の測定に与える影響はないと判断した。

2. 洗浄回数

洗浄回数を決定するため,献血グロベニン®-I(5 g/dL)の10の階乗希釈液0.09 mLに抗ヒトIgG血清0.1 mLを添加し混和後,IgG感作赤血球0.05 mLを加え凝集の有無を観察した。その結果104以上で凝集が確認でき,間接抗グロブリン試験で偽陰性を防ぐためには104以上の希釈倍数が必要であるとの結果となった。1回の洗浄で50倍に希釈が可能であれば,3回の洗浄を行うことで503 = 125,000倍に希釈することが可能であり,3回の洗浄で十分と判断した。

3. DECANT

洗浄後の残液量に最も影響を与えるDECANT条件を決定するため,DECANT 10 mm試験管で350,400,430,500 rpm,また12 mm試験管で300,350,400,430,460,500 rpmの各々で6本の試験管を用いて試験管内残液量と赤血球残存率の平均値を求めた。DECANT以外の工程において赤血球を損失しないよう他のパラメーターを,10 mm試験管ではFill 1,270 rpm 2.5 mL,SPIN 3,500 rpm 60 sec,AGIT 15回,LOOP 3,DOWN 2,000 rpm 5 sec,12 mm試験管ではFill 1,270 rpm 4.3 mL,SPIN 3,400 rpm 35 sec,AGIT 15回,DOWN 2,000 rpm 5 secの条件とした。その結果をFigure 1に示した。回転数の増加に従い試験管内残液量は減少するが赤血球残存率も減少し,凝集確認の見やすさが損なわれた。

Figure 1 Decantの回転数による試験管内残液量と赤血球残存率

左縦軸に試験管内残液量,右縦軸に赤血球残存率(%),横軸にDecantの回転数

DECANTは残液量が約0.03 mL,赤血球残存率約80%となるよう10 mmでは400 rpm,12 mmでは430 rpmとした。

4. SPIN

1) 回転数

洗浄液投入後の遠心回転数を決定するため,SPINを3,000,3,170,3,400,3,500 rpm各60 secとし,他の条件は10 mm試験管でFill 1,270 rpm 2.5 mL,DECANT 400 rpm,AGIT 15回,LOOP 3,DOWN 2,000 rpm 5 sec,12 mm試験管でFill 1,270 rpm 4.3 mL,DECANT 430 rpm,AGIT 15回,LOOP 3,DOWN 2,000 rpm 5 secで6本の試験管を用いて赤血球残存率を測定した。その結果,10 mm試験管で74.8%~83.3%,12 mm試験で77.6%~81.0%となり,遠心回転数と赤血球残存率の相関は認められなかった。そのため,輸血検査において主に用いられる3,400 rpmで行うこととした。

2) 時間

洗浄液投入後の遠心条件を決定するため,SPIN 3,400 rpmで30,35,40,60 secと変化し,他の条件は10 mm試験管でFill 1,270 rpm 2.5 mL,DECANT 400 rpm,AGIT 15回,LOOP 3,DOWN 2,000 rpm 5 sec,12 mm試験管でFill 1,270 rpm 4.3 mL,DECANT 430 rpm,AGIT 15回,LOOP 3,DOWN 2,000 rpm 5 secとし,6本の試験管を用いて赤血球残存率を測定した。その結果,10 mm試験管で74.9%~86.7%,12 mm試験管で77.4%~80.4%となり,遠心時間と赤血球残存率の関係は認められなかった。遠心時間の延長は赤血球洗浄所要時間の延長に影響すること,初期パラメーターの設定が35 secであることから,35 secで行うこととした。

5. FILL

洗浄液の投入量を決定するため,10 mm試験管でFILL 1,270 rpmにおいて2.5,2.7,2.8,3.0,3.5 mLと変化させ,他の条件はSPIN 3,400 rpm 35 sec,DECANT 400 rpm,AGIT 15回,LOOP 3,DOWN 2,000 rpm 5 sec,12 mm試験管でFill 1,270 rpmにおいて3.8,4.0,4.3,4.5 mLと変化させ,他の条件はSPIN 3,400 rpm 35 sec,DECANT 430 rpm,AGIT 15回,LOOP 3,DOWN 2,000 rpm 5 secとし,6本の試験管を用いて赤血球残存率を測定した。その結果,10 mm試験管で82.3%~87.5%,12 mm試験管で75.2%~82.7%となり,いずれの洗浄液投入量であっても過剰なオーバーフローはなく凝集判定に必要な赤血球は残存した。そのため,初期パラメーターの設定である10 mm試験管で3.5 mL,12 mm試験管で4.3 mLに決定した。

6. 洗浄希釈倍数と赤血球残存率の同時再現性

結果2~5で決定したパラメーターを使用し,洗浄希釈倍数と赤血球残存率の同時再現性を24本の試験管で測定した。洗浄希釈倍数はLOOP 1として1回のみ洗浄パラメーターを実行した。実測の洗浄希釈倍数は,10 mm試験管でmean = 109倍,SD = 4倍,CV = 3.7%,12 mm試験管でmean = 165倍,SD = 10倍,CV = 6.1%であった。赤血球残存率は10 mm試験管でmean = 72.2%,SD = 8.8%,CV = 12.2%,12 mm試験管でmean = 78.6%,SD = 4.1%,CV = 5.2%であり,いずれの試験管においても十分な洗浄希釈倍数,赤血球残存率および同時再現性が確認できた。

7. 抗体価測定によるUltraCW IIの総合評価

1) 測定パラメーター

結果2~5で決定した各パラメーターと,Helmerの初期設定プログラムのパラメーターをTable 1に示す。

Table 1  洗浄パラメーター
検討結果10 mm 検討結果12 mm Helmer 10 mm Helmer 12 mm
FILL 1,270 rpm 3.5 mL 1,270 rpm 4.3 mL 1,100 rpm 3.5 mL 1,100 rpm 4.3 mL
SPIN 3,400 rpm 35 sec 3,400 rpm 35 sec 3,500 rpm 35 sec 3,500 rpm 35 sec
DECANT 400 rpm 430 rpm 460 rpm 460 rpm
AGIT 15× 15× 15× 15×
LOOP 3 3 3 3
DOWN 2,000 rpm 5 s 2,000 rpm 5 s
CHECK 1 1

2) 測定サンプル

高力価抗D血漿を,Table 2に示す3種類の希釈用試料を用いて27希釈したものを,各々の希釈用試料でさらに2の階乗希釈を行い,抗体価測定用の希釈系列を作製した。測定方法間の希釈誤差をなくすため,一括で希釈系列作製後に,各洗浄比較用の試験管に希釈系列の分注を行った。

Table 2  抗体価測定に用いた希釈液用 高蛋白・高グロブリン試料
TP(g/dL) ALB(g/dL) IgG(mg/dL) IgA(mg/dL) IgM(mg/dL)
TP高値・IgG高値 10.2 3.5 4,979 337 106
TP高値・IgM高値 9.1 3.2 253 462 4,195
グロブリン製剤(献血グロベニン-I) 5.2 0.0 4,808 7 1

3) 抗体価測定

抗体価測定はPEG添加間接抗グロブリン試験(polyethylene glycol-indirect antiglobulin test; PEG-IAT)で行い,希釈検体0.1 mL,3%赤血球浮遊液0.05 mL,PEG 0.1 mLを混和し37℃ 15分加温,よく混和後,各パラメーターで洗浄,抗ヒトグロブリン血清0.1 mL添加し3,400 rpm 15 sec遠心後,1+を示す最終希釈倍数を抗体価とした。Hermer初期設定プログラムは抗グロブリン試薬添加のために洗浄後の一時停止機能と凝集判定のための遠心機能(3,500 rpm 15 sec)があるため,これを使用した。凝集の認められなかった場合は,IgG感作赤血球0.05 mLを添加し,3,400 rpm 15 sec遠心後,凝集の確認により抗ヒトグロブリン試薬の有効性を確認した2)~4)

1+が確認できた抗Dの最終希釈倍数を抗体価とすると,Table 3に示すようにいずれのサンプルにおいても抗体価は28~29倍となり,用手法の洗浄による抗体価と同等または1管高く,陰性またはw+となった場合にはIgG感作赤血球で陽性となることが確認され,いずれの条件においても赤血球洗浄は問題なく行われていた。

Table 3  各種高蛋白・高グロブリン試料を希釈液とした場合の抗D抗体価
検討結果10 mm 検討結果12 mm Helmer 10 mm Helmer 12 mm 用手洗浄
TP高値・IgG高値 27 3+ 3+ 3+ 3+ 3+
28 2+ 2+ 2+ 2+ 2+
29 1+ 1+ 1+ 1+ w+
210 w+ w+ w+ w+ 0
TP高値・IgM高値 27 3+ 3+ 3+ 3+ 3+
28 2+ 2+ 2+ 2+ 2+
29 1+ 1+ 1+ 1+ 1+
210 w+ w+ w+ w+ w+
グロブリン製剤 27 2+ 2+ 3+ 2+ 3+
28 2+ 2+ 1+ 1+ 1+
29 w+ w+ w+ w+ w+
210 0 0 0 0 0

V  考察

輸血検査において赤血球洗浄機に期待される性能は,①赤血球洗浄による未反応グロブリンの除去と,②凝集反応に必要な赤血球の残存と考える。これらを評価するために,①については,試験管にOrange Gを一定量分注し洗浄後にどれだけ希釈されているかを478 nmの吸光度で測定した。また,②については,赤血球洗浄後に赤血球がどれほど残っているかを赤血球洗浄前後の赤血球を溶血させ541 nmの吸光度を測定することで評価した。

最初に分注手技による誤差が結果にどの程度影響するかを確認するため,赤血球洗浄機を使用しないでOrange Gと溶血液の測定を行ったところ,良好な同時再現性が確認でき,分注手技による誤差はないことが確認された。

洗浄回数は,PEGを使用する場合3~4回の洗浄を行うよう示されている2),3)。一般的に抗グロブリン試薬は試験管内のIgG残量が10 μg/mLで完全中和となり,2~5 μg/mLで反応が弱くなるとされている5)。すなわち,5 g/dLのグロブリン溶液が中和されない1 μg/mLとなるには50,000倍の希釈が必要となる。実際にIgG感作赤血球を加え,抗グロブリン試薬を添加した場合,偽陰性を防ぐためには,5 g/dLのグロブリン溶液の希釈した0.1 mLのサンプル量に対し10,000倍の希釈が必要であった。仮に,10 mm試験管で0.1 mLに対し3.5 mLの洗浄液を投入し残液量が0.05 mLと仮定すると3回の洗浄で(0.1/0.05) × (3.6/0.1)3 = 373,248倍となり十分な洗浄が行われていると考える。実際の試験管内残液量が約0.03 mLであり,仮定以上の希釈が行われ,抗グロブリン試薬の中和は発生しないと考える。

洗浄希釈倍数に関しては,1回の洗浄による実測値は10 mm試験管で109倍,12 mm試験管で165倍となった。今回のパラメーターにおける洗浄液量は10 mm試験管で3.5 mL,12 mm試験管で4.3 mLであり,理論値は10 mm試験管で残液量0.033 mLとした場合,(0.1/0.033) × (3.6/0.1) = 109倍,12 mm試験管で残液量0.028 mLとした場合,(0.1/0.028) × (4.3/0.1) = 154倍であり,実測値と理論値はほぼ一致した。3回の洗浄によりそれぞれ約130万倍,約449万倍に希釈され,十分な洗浄効果が期待できた。

各種洗浄パラメーターの設定に関しては,洗浄希釈倍数と赤血球残存率に影響を与えたのは,FILLにおける洗浄液分注量とDECANTによる残液量であった。

FILLにおける洗浄液の分注は,1,270 rpmの回転速度に達してから投入するため,遠心初期における試験管からの赤血球の溢れは防止できている。そのため,投入量が多いほど洗浄希釈倍数の増加につながるため6),7),Helmerの初期設定を採用し試験管容量の約8割の分注量とした。

DECANTは,生食水がほぼ除かれ,かつ赤血球の損失が無いことが望ましい6)。回転数は,増加に従い残液量は減少したが,同時に赤血球残存率も減少した。残液の廃棄時に同時に赤血球も遠心力で飛ばしていると考える。残液量が多いと希釈倍数が低くなるとともに,抗グロブリン試薬を希釈することにもなり好ましくない。そのため,残液量が0.03 mL程度かつ赤血球残存率が80%程度を目標に,10 mm試験管で400 rpm,12 mm試験管で430 rpmとした。

SPINは赤血球洗浄自体に影響は少ないが,赤血球洗浄に要する時間をLOOPの回数分延長させるため,Helmerの初期パラメーターである短めの35 secを採用した。

上記で決定したパラメーターとHelmerの初期パラメーターで,実際の輸血検査が可能かを評価した。洗浄に影響を与える血漿の要因として,PEG添加時の高グロブリン血漿および高タンパク血漿を想定し1),4),7),TP 10.2 g/dLかつIgG 4,979 mg/dL,TP 9.1 g/dLかつIgM 4,195 mg/dLの各血漿,IgG 4,808 mg/dLのグロブリン製剤を希釈液として準備した。高力価のIgG型抗Dをこれら希釈液で希釈することで,高グロブリン状態で抗Dの抗体価が測定可能となる。また,各洗浄パラメーターの希釈系列作製の誤差を排除するため,事前に一括して希釈系列を作製後,各パラメーター用の試験管に抗Dの2の階乗希釈系列を0.1 mL分注した。その結果,いずれのパラメーターにおいてもほぼ同等の抗体価が測定でき,かつ,陰性となった試験管においては,IgG感作赤血球の添加により凝集が確認でき,輸血検査が実施可能であることが確認できた。

VI  結語

今回,洗浄希釈倍数と赤血球残存率,抗体価測定によって,UltraCW IIが輸血検査に有用であるかを検討した。抗グロブリン試薬の中和を防ぐために十分な洗浄希釈倍数,凝集判定に必要な赤血球残存率が確認でき,高タンパク・高グロブリンの血漿においても,PEG-IATで正確な抗体価測定が可能であり,輸血検査に有用であることが確認できた。

本洗浄機は,洗浄液投入量の校正が可能で,投入量が0.1 mL単位で設定可能である上,遠心においても詳細な条件の設定も可能である。赤血球浮遊液を作製するための0.05 mL程度の赤血球を洗浄するためには,さらに最適なパラメーターを設定することも可能であり,また,フローサイトメトリーにおける白血球細胞の洗浄など,様々な検査に役立つ可能性が考えられる。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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