本研究の目的は中国の護士長が部下育成で経験する困難感の実態を調査し,困難感の程度と必要と認識している支援内容を明らかにすることである.調査は,独自に作成した質問紙を用いて,中国にある4つの大学附属病院における護士長202名を対象とし,集合法による自記式調査を実施した.その結果,部下育成で経験する困難感の下位カテゴリーの「継続教育活動」(66%),「教育研究能力」(61%),「動機づけ」(46.5%)の順に困難感得点比率が高かった.各項目得点の平均値によって上位3項目はスタッフの看護研究能力を高めること(3.81±1.25),病棟単位の教育に必要な備品や消耗品を整えること(3.75±1.31),病棟単位の教育予算を確保すること(3.62±1.23)であった.下位3項目はスタッフに自分自身が実践モデルを示すこと(1.21±0.65),スタッフへ診療介助技術を習得させること(1.35±0.67),スタッフへ看護基礎知識を習得させること(1.37±0.79)であった.部下育成に関する必要な支援項目の得点平均値の高い順に上位3項目は護士長が院外研修に参加する機会を増やすこと(4.79±0.58),知識技術の教育・指導能力を高める内容を充実すること(4.79± 0.56),看護研究の方法論に関する研修の内容を充実すること(4.6±0.73)であった.10項目すべて支援が必要と答えた者は45名(25.3%)であり,全体の約4分の1を占めていた.部下育成で経験する困難感と必要な支援の総得点には,相関がみられなかった.護士長自身の研修制度は不備であるため,今後系統的な看護管理者の研修制度の構築の必要があることが示唆された.