本研究は,抑制(身体的拘束)を廃止した施設の実態を探り,抑制を行わない看護を可能にした要因を明らかにすることを目的とした.抑制を廃止している4つの高齢者施設に勤務する看護職者18名(看護部長または総師長5名,師長6名,主任・スタッフ看護師7名)に半構造式面接法を用いて調査を行った.面接で得られた内容を質的に分析し,抑制を廃止できた理由,抑制を使わない看護を継続できている理由に該当する箇所をコード化し,カテゴリーに分類した.
その結果,共通要因として,3つの主カテゴリー,1)組織の理念とリーダーシップ,2)組織のシステム,3)看護実践,7つの副カテゴリー,①病院の明確な方針,②看護管理者のパワー,③教育・学習の機会,④事故対策システム,⑤看護のマンパワー,⑥抑制に替わる看護技術,⑦家族の納得,が明らかになった.職位別要因では,看護部長・総師長は,1)マネジメント能力,2)医師の協力,師長は1)役割意識,2)価値の共有,主任・スタッフ看護師は1)価値の共有,2)弊害の認識,3)仕事への誇り,が明らかになった.共通要因の副カテゴリーのうち,病院の明確な方針や看護管理者のパワーは,抑制廃止を行う前提条件であること,また,抑制に替わる看護技術を試み,それらを活用していることが,抑制を行わない看護を継続させていること等が示唆された.