動物心理学年報
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視覚的初期経験が問題解決におよぼす効果 (シロネズミ)
持留 英世福元 格太郎
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1966 年 16 巻 1 号 p. 11-19

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抄録

生後 6 日目から暗室で飼育され, テストまでの 4 ヵ月間, 視覚的経験が遮断されたシロネズミを用い, 遮断を解いた直後の探索および情動行動が, 最初に, 探索箱で観察された。測度は, 非強化事態での区画移行数, 嗅ぎ廻り, 洗顔, 排尿, 排便の諸反応であった。これらの反応のうち, 暗室で飼育されたネズミの区画移行数と排尿する割合が, 明室で飼育されたネズミに比較して, 有意に大きかった。性差については, 有意な差が認められなかった。
視覚的初期経験が問題解決におよぼす影響と, 飼育条件からテスト事態への刺激変化が問題解決行動におよぼす影響を検討するため, 暗室飼育群は, さらに, 2 群に分けられた。すなわち, テストの間のわずかな時間だけ光刺激を経験する群 (実験群I), 探索テストの後, 統制群と同じく, 明室で飼育される群 (実験群II) である。統制群は, 生後明室で飼育された群であった。問題解決箱での成績は, 実験群Iがもっとも悪く, これについで, 実験群II, 統制群の順で成績がよかった。実験群Iと実験群IIとの間の差は, 実験群IIと統制群との間の差よりも, 多くの課題において大きく, その差は有意であった。これらの結果から, 視覚的初期経験よりも, 飼育条件からテスト事態への刺激変化の方が, 問題解決箱での成績に顕著な影響をおよぼすことが考察された。

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© 日本動物心理学会
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