抄録
従来, 概日リズムの研究から, 光刺激と活動性の間に密接な関係が存在すると言われているが, 行動のどのような側面に影響するかが, 不明確であった。そこで, チンパンジーを用い, 点灯および消灯オペラントを形成し, 自分で照明周期を作り出させてみた。その結果, 1日24時間は, ほとんど点灯せず, 巣箱に入っている休止期と, 数分~数十分毎に点滅を繰り返す活動期とに分かれ, その比率は1 : 1であるが, 周期は短縮され, 位相が約3時間ずれて, 停止することが分った。この停止は給餌時間が固定されているために生じたものと思われる。この周期短縮現象は, 強制的照明条件下では周期的照明から常時点灯状態に移行した際に見られるものであり, 点滅を被験体に委ねた場合, 実際には照明に周期性があるにもかかわらず, 位相が短い方にずれるという興味ある結果を得た。この事実と, 照明のオペラント行動への効果を考察した結果, 少なくとも, 高等霊長類においては, 光刺激の同期化効果は弱いものであると結論され, 概日リズムと行動との関係は, 動因の変動, 身体内弁別刺激の消長という観点から分析されるべきであると提言されている。