動物心理学年報
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シロネズミにおける反応持続時間スケジュールでのフィードバック刺激の効果と瞬時押し
山本 豊
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1978 年 27 巻 2 号 p. 111-118

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抄録

従来のバー押し事態において, 動物がバーを押し始めてから離すまでの反応持続時間の長短により分化強化を行なうことが可能である。反応はバー押え反応 (bar-holding response) と呼ばれ, そのスケジュールは反応持続時間スケジュール (response duratoin schedule : 以下RDスケジュールと略記) と呼ばれる。現在までの若干の報告例では, バー押え反応があらかじめ設定された時間を越えた時, 1) バーを離さなくても報酬が与えられるタイプと, 2) バーを離して初めて報酬が与えられるタイプ, の二大別が可能である。本報告は後者に属し, 以後の議論も後者を前提とする。
既存の報告には, 反応の力と関係づけて検討したもの (2, 5) や, 時間評価の問題として扱ったもの (1, 6) が多いが, RDスケジュール自体の知見においては, ラットでは設定時問1.6秒ならば長期訓練の後50%程度の強化率が得られるが, 非常に持続時問の短い反応 (short-duration barpress : 以下瞬時押しと仮称する) も多発し, 反応持続時間ヒストグラムは双峰性となることが知られている。
本実験は反応持続時間を分化強化することによる行動の形成と変容そのものの検討を目的とし, 基礎事実の蓄積を期すものである。ここでは特定の呈示パターンの外部刺激を与えて, 内部刺激以外の手掛りを付与することによる効果を比較検討することにする。長期訓練の後も残る瞬時押しは分化強化の統制を受けないかの如くであるが, PLATT, et al. (6) のこれに対する考察は不適当と思われる。従って本報告では, 強化率, 反応持続時間等の分析の他, この瞬時押しの分析に焦点を合わせ, 各反応の前反応への依存程度, IRT等の分析結果は, 次の機会に譲ることとする。
反応持続時間スケジュールにおけるシロネズミの行動において, 瞬時押しは他の反応と時間的に密接して生じること, 反応を外部刺激としてフィードバックすると瞬時押しが減ることが示され, 瞬時押しが一連の反応連鎖内での筋反応の移行の反映である可能性が示唆された。

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