動物心理学年報
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回避反応の習得及び消去に先立つCS-UCS単一対呈示の効果 (シロネズミ)
高橋 晃
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1979 年 29 巻 1 号 p. 35-39

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抄録

一方向の回避事態では, 逃避できない状態でのCS-UCS前呈示が後続の回避学習を促進することが知られている。たとえば, DE TOLEDO & BLACK (2) では, 1.3mA, 3秒間の電撃とCSが対呈示される試行を10回受けたラットは, 後続の回避反応の学習において, そのような前呈示を受けなかったラットよりも少ない試行数で習得基準に到達している。BAUM (1) も, 6秒間の電撃を10試行または1分間の電撃を1試行与えて同様の結果を得ている。
一方, 回避反応の習得基準達成後, 反応を妨害した状態でCSだけを強制的に呈示する手続きは反応妨害法と呼ばれ, 消去を促進する効果を持つ。PAGE & HALL (5) は一方向の回避反応を学習したラットを2群に分け, 実験群には電撃を以前与えた部屋に15秒間閉じこめる反応妨害試行を5試行与えたところ, 後続の消去期間において, 実験群は反応妨害試行を受けなかった統制群よりも少ない試行数で消去基準に達した。
ところで, 最近MARRAZO, RICCIO & RILEY (4) は反応妨害試行中にCSと電撃を対呈示しても, CSだけを呈示する通常の反応妨害法と同様の消去促進効果が見られたと報告している。MARRAZOらによると, 習得基準達成後10秒間のCS単独呈示を行なう通常の反応妨害試行を8試行与えた群と, この反応妨害試行に替えてCS開始5秒後から5秒間の電撃を対呈示した群とでは消去基準に達するまでの試行数がほぼ同じであり, いずれの型の反応妨害試行も受けなかった統制群の試行数よりも少ない。しかしながら, この結果をDE TOLEDO&BLACK (2) の結果と合わせて考える時, CS-UCS対呈示は学習開始前になされれば習得を促進し, 消去に入る前になされれば消去を促進するということになり, これは一見矛盾している。
本研究の目的はこの間の問題を整理し, 整合的な説明を行なうために, 全く同じ手続きによるCS-UCS対呈示を回避反応の習得試行系列の直前 (実験1), あるいは消去試行系列の直前 (実験II) に1試行のみ行ない, それぞれが回避反応の習得あるいは消去に及ぼす効果を調べるものである。

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