Journal of Japan Academy of Nursing Science
Online ISSN : 2185-8888
Print ISSN : 0287-5330
ISSN-L : 0287-5330
Reports
A Survey about Factors Important to Non-Nursing Baccalaureate Degree Students When Selecting Nursing Educational Institution in Japan
Hiromi Oku
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2014 Volume 34 Issue 1 Pages 292-300

Details
Abstract

目的:看護学以外の学問領域で学士号を取得した後に看護基礎教育課程で学ぶ学生(学士号を持つ学生)の看護教育機関選択における影響要素を明らかにする.

方法:学士および社会人入試制度を実施する大学(13校),養成所(16校),および無作為に抽出した准看護師養成所(10校)に対し,調査票1255通を配布した.606通(48.7%)が回収され,学士号を持つ学生275名,持たない学生301名による576通を有効回答とした.

結果:学士号の有無による比較の結果,学士号を持つ看護学生の看護基礎教育機関選択に影響する要素は,「自宅から通えること」,「入試方法」であり,「自宅から通えること」は社会人経験の有無に影響を受けていた.学士号の有無に関わらず,「学費が安いこと」は大きな影響要素であった.

結論:学士号を持つ看護学生の教育機関選択に,入試方法が大きく影響していた.彼らの看護学への参入を促進するためには,入試制度の工夫や修学支援が得られることが望ましい.

Ⅰ.はじめに

少子高齢社会を支える保健医療職の確保は国家的な課題となり,看護職においても将来の需要が供給を上回ることが予測されている.そこで,現在働いている看護職が働き続けられるようにする取り組みや,潜在看護師の再就職支援に加え,これから看護職となる人材を確保するための施策を積極的に検討する必要がある.そのような中,いったんは他の学問を学び,看護以外の職業に就いた後に看護職となることを希望して看護基礎教育機関に入学してくるものの数が増加傾向にある.調査によると,2010年度,看護師養成所(3年課程)に入学した学生の10.2%が大卒者であり,短大卒者と合わせるとその数は14.4%となっている.また,特筆すべきは准看護師養成課程への入学者である.准看護師養成所の入学要件は中学卒業以上であるが,2010年度の入学者に占める大卒者の割合は9.0%,短大卒者と合わせると18.9%に上る(日本看護協会出版会,2011).彼らのように看護学以外の学問的基盤や経験を持つ人材は,幅広い人間性が求められる看護の分野での活躍が期待され,大卒社会人経験者等を対象とした看護職の新規養成の促進は国レベルで検討される事項となっている(社会保障制度改革国民会議,2013).しかしわが国において,看護基礎教育機関に通う看護以外の分野(他分野)の学士号を持った学生の特性や教育実態については,学士号の有無に関わらず高卒後に社会人経験等を持つ学生を対象とした,学習活動に関する調査(三木,2013)や,学習体験に関する調査(根岸,2012大高ら,2007)などが報告されているが,学士号を持つ看護学生に対象を絞り,全国的な傾向を調査した結果は報告されていない.そこで本研究は,他分野の学士号を取得した後,看護基礎教育課程で学ぶ学生の実態と,彼らが看護教育機関を選択する際の影響要素を明らかにすることを目的として行った.

Ⅱ.研究方法

1.研究デザイン

「看護学生の看護基礎教育機関選択に関する調査票」による横断的,量的な観察研究.学士号を持つ看護学生と,それ以外の看護学生の双方からデータを収集し,両者の比較から学士号を持つ看護学生に特徴的な傾向を探索した.

2.データ収集期間

2012年5月~11月

3.調査の対象

日本国内の看護系大学,看護師養成所(3年課程),准看護師養成所(2年課程)に在学中の他分野の学士号を持つ看護学生を含む看護学生とした.

4.測定用具

使用した調査票は,文献検討および,予備調査(奥,2013)によって得られた情報をもとに作成した.作成した調査票は10名の他分野の学士号を持つ看護学生であった看護師に回答を依頼し内容妥当性を高め,反応分布を検討し項目を洗練させた上で確定した.無記名で,対象者の①基本的属性,②現在通う教育機関を選択した経緯,③看護学を学ぶ体験,④看護に対する考えとキャリアについての4部24項目から成る.なお本研究では①基本的属性,②現在通う教育機関を選択した経緯のうち,入試形態および,教育機関決定の際に影響した要素についての質問項目に対する回答データを分析した(質問項目は表3を参照).

5.調査方法

看護系大学では,他分野の学士号を持っていることが受験要件である「学士入学制度(編入学を含む)」を実施している大学に学士号を持つ学生が集中している可能性が高い.また,高校や大学の既卒者および社会人としての就業経験を持つ者を対象とする「社会人入試制度」が設けられていると,学士号を持つ学生が受験しやすいため在籍している可能性が高い.そこで,①学士入学又は社会人入試制度が設けられている看護系大学131校,②社会人入試制度が設けられている看護師養成所(3年課程)326校をインターネット検索によって把握し,全国を7ブロックに分け,ブロック内で無作為に選択した教育機関の代表者に研究協力依頼状を送付した.依頼状には返信用はがきを同封し,研究協力が可能な場合には在籍する学士号を持つ看護学生の人数を記載して返信するよう依頼した.③准看護師養成所(2年課程)については,入試制度の詳細に関する情報がインターネット上に公開されている施設が少なく,最新の入試実態の把握が困難であったため,特に制限を設けずに研究協力を依頼した.なお,准看護師養成所は看護系大学,看護師養成所とは取得を目指す資格が異なる教育機関である.しかし,多くの学士号を持つ学生が学んでいる現状があること,学士号を持つ看護学生の実態に関する全国的な調査がこれまでされていないことから,本研究の対象に加えた.

①学士入学制度が行われている全国の看護系大学と,社会人入試制度のある大学のうち20校程度,②社会人入試制度がある看護師養成所のうち15校,③准看護師養成所(2年課程)のうち20校を目安とし,研究に協力する学士号を持つ看護学生の人数が200人分となることを目標として依頼状を送付した.各教育機関には,学士号を持つ看護学生と同数の学士号を持たない学生にも調査票の配布を依頼し,双方の人数が同等数となることを目標とした.

6.分析方法

項目別単純集計,項目間クロス集計等を行った.学士号を持つ看護学生とそれ以外の学生,教育機関種別,社会人経験の有無による回答の差を比較した.分析には統計ソフトSPSS Statistics 19.0を使用した.

7.倫理的配慮

研究協力者に対し,本研究への協力は自由意思によって行うものであり,無記名の質問紙の回答の提出をもって同意の承認を得たものとすること,データは研究の目的以外には一切使用しないことなどを文章で説明し,研究協力の意思を確認した.本研究は聖路加看護大学研究倫理審査委員会の承認を受けて行った(承認番号12-001).

8.用語の定義

1)看護基礎教育機関:保健師助産師看護師養成所指定規則第1条による大学,看護師養成所,准看護師養成所のうち,大学,看護師養成所(3年課程),准看護師養成所(2年課程)とした.

2)学士号を持つ看護学生:看護学以外の分野(他分野)の学士号を取得した後,看護基礎教育機関に入学した学生・生徒とした.短期大学を卒業し,準学士号を持つものは含まない.

Ⅲ.結果

1.対象の基本的属性

全国124の看護基礎教育機関に研究協力を依頼し,承諾の得られた39校(大学13,看護師養成所16,准看護師養成所10校)の代表者に対し,1255通の調査票を送付したところ,606通が回収された(回収率48.3%).うち,576通を有効回答として分析を行った.

年齢は20歳代が最も多く264人(45.8%),次いで30歳代が174人(30.2%),10歳代93人(16.1%),40歳代38人(6.6%),50歳代以上が1名(0.2%)であった.学士号の有無別にみると,双方とも最も多いのは20歳代(「学士号あり群」48.0%,「学士号なし群」43.9%)であるが,「学士号あり群」では次いで30歳代が多く43.3%(21人),「学士号なし群」では10歳代(30.9%,93人)が多かった.最も年齢が高かったのは「学士号あり群」の50歳代以上であり,「学士号なし群」でも,30歳代,40歳代のものが23.9%(72人)あった.

性別は「学士号あり群」では男子学生が20.4%(56人)と,「学士号なし群」における男子学生の割合(10.0%,30人)に比べて高かった.特に准看護師養成所では,学士号を持つ男子学生の割合が54人中20人(37.0%)と高かった.所属する教育機関は,大学が85人(14.8%),看護師養成所が344人(59.7%),准看護師養成所が147人(25.5%)であった.社会人(就業)経験のあるものは334人(58.0%),ないものは240人(41.7%)であった.「学士号あり群」では働いたことがあるものが78.9%(217人)を占め,「学士号なし群」でも38.9%(117人)が働いた経験を持っていた(表1).

表1 研究対象者の所属する教育機関と性別および就業経験の有無

2.看護基礎教育機関受験時の入試形態

「学士号あり群」の受験時の入試形態は,「社会人入試」が最も多く152人(55.3%)であった.教育機関ごとにみると,大学と看護師養成所において社会人入試の割合が多かった,准看護師養成所では一般入試を受験したものが最も多く,41人(75.9%)であった(表2).

表2 看護基礎教育機関受験時の入試形態

3.教育機関選択時の影響要素

1)学士号の有無による教育機関を選択する際の影響要素

看護基礎教育機関を選択する際に考慮する教育機関の特徴を探索するため,「学校を決めるとき,次のようなことはどのくらい影響しましたか」という問いに対する34の質問項目について,影響した程度を5段階のリッカート・スケール(とても影響した=5点~全く影響しなかった=1点)で回答を得た(表3).

表3 教育機関選択時の影響要素

「学士号あり群」において最も平均値が高く,影響すると回答された項目は,「自宅から通えること」(4.22),次に「入試方法」(4.13),「学費が安いこと(3.80)」であり,平均値4以上となる「影響した」以上の回答を得たのは上位2項目のみであった.「学士号なし群」において最も平均値が高かったのは,「学費が安いこと」(3.91),次いで「資格試験の合格率」(3.90)であった.両群の差が統計的に有意な項目は21項目あったが,そのうち「学士号あり群」の方が「影響がある」と回答していた項目は,「自宅から通えること」(t(558)=3.25, p=0.00),「入試方法」(t(573)=2.75, p=0.01)の2項目のみであった.

2)社会人経験の有無と教育機関の種別による教育機関決定時の影響要素

教育機関の決定には,社会人経験の有無が影響することも考えられる.そこで「学士号あり群」の方が高い値を示し,統計的にも有意な差が認められた「自宅から通えること」,「入試方法」の2項目について,学士号の有無に社会人経験の有無と,教育機関の種別の影響を加えた3要因の分散分析を行った.

「自宅から通えること」では,学士号の有無による主効果に有意差はなく,社会人経験の有無の主効果(F(2560)=7.22, p=0.01),教育機関種別の主効果(F(2560)=3.25, p=0.04),および,学士号の有無と社会人経験の有無の1次の交互作用(F(2560)=10.95, p=0.00)で有意差があった.また,「入試方法」では,学士号の有無に有意差があった(F(2561)=7.38, p=0.01).さらに,学士号の有無と教育機関の種別の1次の交互作用にも有意差があった(F(2561)=1.69, p=0.01)(表4).

表4 教育機関を決定する要因に社会人経験と教育機関種別が与える影響 3要因の分散分析

「自宅から通えること」に対する主効果があった社会人経験の有無では,平均値は「社会人経験あり群」で4.28,「社会人経験なし群」で3.82であり,「社会人経験あり群」の方が「自宅から通えること」による影響があると回答していた.教育機関の種別では,大学(3.69)<看護師養成所(4.18)<准看護師養成所(4.28)の順で平均値が高く,大学と看護師養成所および准看護師養成所の間に1%水準で有意な差があった.つまり大学に通うものより看護師養成所,准看護師養成所に通う者の方が「自宅から通えること」に影響を受けて教育機関を選択していた(表5).

表5 教育機関の種別と「自宅から通えること」の平均値の差の検定

学士号の有無と社会人経験の有無の単純主効果の検定では,「社会人経験なし群」において学士号の有無の単純主効果が有意(F(1568)=11.56, p=0.00)であり,「学士号なし群」において社会人経験の有無の単純主効果が有意(F(1568)=43.81, p=0.00)であった.つまり,社会人経験がなければ学士号を持つ者の方が,学士号がなければ社会人経験がある者の方が,「自宅から通えること」を教育機関選択に影響する要因だと回答していた.さらに入試方法で交互作用のあった学士号の有無と教育機関の種別の単純主効果の検定を行ったところ,教育機関の種別では,大学で学士号の有無の単純主効果が有意(F(1561)=8.95, p=0.00)であり,学士号の有無では「なし群」において,教育機関種別の単純主効果が有意(F(2561)=4.17, p=0.02)であった(表6).

表6 「入試方法」の学士号の有無と教育機関による比較

Ⅳ.考察

1.多様性のある学士号を持つ看護学生の実態

看護基礎教育機関に入学する男性の割合は3年課程(大学,看護師養成所3年課程)で約13%,准看護師養成所で約22%であるが(日本看護協会,2011),本研究の学士号を持つ看護学生においては,看護師養成所に通うものでは174人中25人(14.4%)と大きな違いはないものの,大学で23.4%,准看護師養成所では37.0%と全国統計値の1.5倍以上高い割合となっていた.また,社会人経験の有無については「経験あり」が78.9%であった.ただし本研究においては学士号のない学生においても働いた経験を持つものが38.9%含まれており,特に准看護師養成所では学士号のないものでも93人中79人(84.9%)が働いた経験を持っていた.性別や経験してきたことの異なる多様な看護学生が登場し,「看護学生イコール高校を卒業したての若い未婚の女性」というこれまでの典型的な看護学生像(AACN, 2005; Jeffreys, 2004)は,変貌しているという米国の状況と,類似したところがある.

2.学士号を持つ看護学生を受け入れる入試制度の検討

本研究では,学士号を持つ看護学生の55.3%が,社会人入試制度を利用して看護基礎教育機関に入学していた.また教育機関を決定する際,学士号なしの学生が,学習設備・学習環境に関連する多くの項目が影響すると回答していたのに対し,学士号を持つ看護学生の方が影響すると回答したのは「自宅から通えること」と「入試方法」の2項目のみであった.この結果には本研究への協力を,学士入学および社会人入試制度がある教育機関に依頼した点が影響していると考えるが,一般入試と比較して課せられる学科試験が少なく,小論文や面接を主とした試験内容であることが多い社会人入試制度は,教科目の学習から離れていた期間のある学士号を持つ看護学生にとっては利用しやすい制度であり,自分にあった入試方法があるかどうかという点が,学士号を持つ看護学生が教育機関を選択する際の重要な要素となっていることが示唆された.

社会人入試制度を設ける看護系大学・短期大学,専門学校は増加傾向にあり,2000年には17.6%,2003年には22.3%(日本看護協会調査研究科,2002日本看護協会政策企画室,2004),その後全国調査はないものの,研究者自身の調査では2012年度に社会人入試を実施する看護系大学・短大,専門学校は約470校(約63%)に上っている.しかし,社会人入試制度よりもさらに対象を特化した,学士入学制度がある看護基礎教育機関は全国に数校しか存在せず,1校あたりの募集人数も少ない.関東地方の看護教育機関(准看護師養成所は除く)で,他分野の学士号を持った者を対象とした学士・準学士入学制度があるのは10校のみ(大学4校,短大1校,看護師養成所5校),定員は若干名から30名と,こちらも狭き門である(新宿セミナー,2011).学士入学制度を行っている大学では,単位の互換によって通常4年の修業年限を3年に短縮する,2年次への編入学制度を導入していることが多く,この場合は看護師養成所に通うのと同じ期間で卒業することができる.

高度に進化し続ける医療の質を担保するためには,高度な教育を受けた看護師が必要になるといわれ,米国医学研究所(IOM)の報告書には,学士号を持つ看護師の割合を2020年までに80%まで上昇させることが望ましいと書かれている(Institute of Medicine, 2010).わが国においても同様に,社会のニーズに応えられる看護師となるためには,看護師教育を大学で受けることが推奨されている(日本看護協会,2013).しかし,学士号を持つ看護学生は年齢が高く,早く看護職として就職したいと考えていることから(奥,2013),看護師養成所よりも国家試験受験までに1年長く要する大学への進学は,敬遠される可能性が高い.そこで今日教育機関数が200を超え,看護職育成の主要な役割を担うに至っている看護系大学は,学士編入学制度実施の推進を積極的に検討することが必要であると考える.

3.学士号を持つ看護学生に対する社会的支援の必要性

学士号を持つ看護学生は「入試方法」とともに,「自宅から通えること」も教育機関選択時に考慮していた.ただし本研究の結果において「自宅から通えること」は,学士号の有無だけでなく,社会人経験の有無にも影響を受けていた.社会人経験がなければ学士号を持つ者の方が,学士号がなければ社会人経験がある者の方が「自宅から通えること」を重視していたということから,年齢の高さが回答に影響していたと考えられる.「自宅から通えること」は学士号を持つ看護学生が生活の維持のために考慮する点であり,家賃のかからない実家や,現在の生活拠点からの通学が可能であることが教育機関の選択基準とされている(奥,2013).また「学費が安いこと」も,学士号の有無を問わず教育機関選択に影響していた.

特に学士号を持つ看護学生を含む年齢が高い学生には,就学中の生計を自分で維持する必要がある者も多く,安心して就学を継続するための経済的な支援策が必要であると示唆される.米国では学士号を持つ看護学生が看護を学ぶことを支援することに特化した奨学金制度が設立され(Davisら,2012),看護関係団体とともに企業が彼らの学習を支援しているという例もあり,わが国においても参考にできる制度であると考える.

現在,看護職が活躍する場はいわゆるベッドサイドだけではなく,教育や研究,政策提言など多分野にわたり,他分野の学士号を持ちながら第2のキャリアとして看護学を専攻する人たちは,豊かで幅広い知識を看護の世界にもたらしており,参入の促進が期待されているとも言われている(Petrini, 2000).彼らが持っている知識や能力が十分に発揮できるような看護教育を行うためには,取り巻く社会の理解や支援が必要である.

4.研究の限界と今後の課題

学士号を持つ看護学生とそれ以外の看護学生の双方から得られた主観的データを比較することによって学士号を持つ看護学生に特徴的な傾向を探索した.サンプル数には限界があるが,これまで同様の研究は行われていないため,全国的な傾向を知るための基礎データとして活用が可能である.今後は看護以外の学問分野で学士号を持っていることが,看護学生,看護職となってからどのように影響するのかを検討していく必要がある.また,教育機関や教員側からも情報を収集し,これからの看護基礎教育体制や,教員,教育機関に必要な能力や役割,環境について受け入れる側からも検討していく必要がある.

Ⅴ.結論

学士号を持つ看護学生の看護教育機関選択に特徴的な傾向を知ることを目的として,大学,看護師養成所,准看護師養成所に通う学士号を持つ看護学生を含めた看護学生576人に対して質問紙調査を行ったところ,以下のような結果が得られた.

1.学士号を持つ看護学生では,持たない学生に比べて男性の割合が高かった.

2.学士号を持つ看護学生が看護基礎教育機関を選択する際に影響する要素は「自宅から通えること」と自分に合った「入試方法」があることであった.なお,「自宅から通えること」は社会人経験の有無に影響を受けていた.

3.学士号の有無に関わらず「学費が安いこと」は影響要素として大きかった.

学士号を持つ看護学生が持つ知識基盤を生かした看護教育を行うためには,入試方法をはじめとした看護基礎教育制度の変化が必要であるとともに,就学を支える社会的支援が得られることが望ましい.

Acknowledgment

本研究にご高配,ご協力いただいた教育機関の皆様,調査票に回答してくださった皆様に心から感謝いたします.本研究の進行と論文作成に惜しみなく時間と熱意を注いで支援してくださった故 柳井晴夫先生,ご指導くださった井部俊子先生に心から感謝いたします.本研究は2012年度聖路加看護大学大学院博士論文の一部である.

References
  • AACN(2005): White Paper: Faculty Shortages in Baccalaureate and Graduate Nursing Programs: Scope of the Problem and Strategies for Expanding the Supply(2014.2.1検索),https://www.aacn.nche.edu/publications/white-papers/facultyshortage.pdf
  • Davis D., DeWitty V., Millett C.(2012): A Seamless Progression: Preparing Accelerated Second Degree Nursing Students for Entry into Baccalaureate and Masters Nursing Education, Clinical Scholars Review, 5(1), 6–13.
  • Institute of Medicine(2010): The Future for Nursing: Leading Change, Advancing Health, National Academy Press, Washington, D.C.
  • Jeffreys M. R.(2004): Nursing Student Retention: Understanding the Process and Making a Difference, Springer, N.Y.
  • 三木隆子(2013):社会人学生の看護学実習における学習活動,インターナショナルNursing Care Research,12(1),105–114.
  • 根岸貴子(2012):社会人経験を持つ学生が看護専門学校で学ぶことの認識,日本看護学会論文集:看護教育,42,26–29.
  • 日本看護協会(2013):看護職の人材養成に関する要望書(2013年4月30日),(2014.2.1検索),http://www.nurse.or.jp/up_pdf/20130430155422_f.pdf
  • 日本看護協会調査研究科編(2002):日本看護協会調査報告No. 62 2000年看護教育基礎調査,(2014.2.1検索),http://www.nurse.or.jp/home/publication/seisaku/pdf/62.pdf
  • 日本看護協会政策企画室編(2004):日本看護協会調査研究報告No. 69 2003年看護基礎調査,(2014.2.1検索),http://www.nurse.or.jp/home/publication/seisaku/pdf/69.pdf
  • 日本看護協会出版会(2011):平成22年度看護関係統計資料集,日本看護協会出版会
  • 奥裕美(2013):学士号を持つ看護学生が看護教育機関を選択した要因,聖路加看護学会誌,16(3),28–37.
  • 大高恵美,伊藤美奈加,牟田能子ほか(2007):日本赤十字秋田短期大学看護学科卒業生の動向調査—社会人経験の有無と学業に関する取り組み—,日本赤十字秋田短期大学紀要,11,77–84.
  • Petrini M. A.(2000):アメリカにおける看護学以外の学士号取得者向けの集中型看護教育プログラム,Quality Nursing, 6(7),11–27.
  • 社会保障制度改革国民会議(2013):社会保障制度改革国民会議報告書,(2014.7.9検索),http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/pdf/houkokusyo.pdf
  • 新宿セミナー(2011):2011年度看護医療系入試倍率一覧(2011年8月22日),(2012年3月13年検索),http://www.shinsemi.ac.jp/data/index.html
 
© 2014 Japan Academy of Nursing Science
feedback
Top