Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Support for Women and Their Partners after Receiving a Diagnosis for Fetal Abnormality: A Literature Review
Rumi Okamoto Kiyoko Kabeyama
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2015 Volume 35 Pages 194-202

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Abstract

目的:胎児異常の診断を受けた女性とそのパートナーの支援に関する文献を整理し,支援の方向性と今後の研究課題について示唆を得る.

方法:PubMed, Web of Science, 医学中央雑誌を用いて“fetal abnormality (胎児異常)”“women(女性)”“partner(パートナー)”“nursing(看護)”をキーワードに2003年1月から2013年12月の期間に発表された文献を検索.胎児異常を診断された女性の体験や心理に関する研究とパートナーの体験を含む26文献(国内文献10件・海外文献16件)を分析対象とした.

結果:妊娠期の女性に焦点を当てた研究がほとんどであった.女性とパートナーの心理特性では,診断時における悲嘆,不安,ショック,などの心理的反応に性別の違いはなく,夫婦間での一致の頻度は高かった.また,夫婦ともにネガティブな感情だけでなく,希望などのポジティブな感情もみられた.医療者には,胎児異常の診断時から正確な情報提供を行うことや共感的で継続的な支援が求められていた.

結論:日本の研究は海外に比べ集積が少ない現状にあり,日本の社会文化的背景のなかでの検討が必要である.今後は,ケアシステム構築のため,パートナーも含めたケアニーズやケアの質評価に関する検討が必要である.女性とそのパートナーの支援を行う看護者への教育プログラムの必要性が示唆された.

Ⅰ.緒言

近年,超音波検査を含めた画像診断およびDNA検査の進歩により子どもの疾患の約8割が妊娠期に診断可能となっている.通常の妊婦健診における超音波検査は意図せず出生前診断となることがあり,結果の説明は胎児異常の告知となる可能性がある.多様な出生前診断が普及する中で,検査を受ける女性は増加し続けている.しかし,妊娠期に胎児異常を診断された女性とそのパートナーの支援体制は,システム化されておらず,胎児治療可能な疾患は限られており,その救命率も100%ではないため支援体制の構築は重要な課題である.そこで,本研究では国内外の胎児異常の診断を受けた女性とそのパートナーの支援に関する文献を整理し,今後の支援の方向性と研究の課題に関する示唆を得ることを目的とした.

Ⅱ.方法

1.文献の検索方法

過去10年間(2003年1月~2013年12月)の文献をPubMed, Web of Science, 医学中央雑誌Web版を用いて検索した.医学中央雑誌Web版で,“胎児異常”“女性”“パートナー”“看護”の4つのキーワードを用いて検索した結果,133件該当した.そのうち総説や会議録を除く原著論文の表題,要約,本文から胎児異常の診断を受けた女性とそのパートナーの心理特性や体験,医療者のかかわりに関する文献を含む10件の原著を抽出した.海外の文献は,PubMed, Web of Scienceで“fetal abnormality” “women”“partner”“nursing”の4つのキーワードを用いて検索した結果,PubMedで192件,Web of Scienceで90件が該当した.そのうち,上記の基準を踏まえ重複を除く16件の原著を抽出した.以上より,国内外の合計26件の原著論文が扱っている目的・方法・結果を分類し,研究成果から国内外の研究の動向を分析した.

Ⅲ.結果

1.研究の動向

胎児異常の診断を受けた女性とそのパートナーに関する26件の国別の文献数は,イギリス,アイルランドなど欧州で計10件,カナダ・アメリカの北米で計4件みられ,欧州・北米が多かった.日本では,妊娠期の女性の体験に焦点を当てた研究が3件,女性の心理過程に関する縦断的研究が2件と少なく,パートナーの体験を含む研究はなかった.また,看護者の体験に関する研究は5件あったが,女性やパートナーの視点から医療者のかかわりを検討した研究はなかった.さらに,発表年代別の文献数は,2009年以降に発表されたものが14件で半数以上を占めていた.

国内外の26文献を「胎児異常の診断を受けた女性に関する研究」,「胎児異常の診断を受けた女性とパートナーの体験・心理特性」,「胎児異常の診断を受けた女性の支援を行う医療者に関する研究」に分類し,表1, 2, 3にまとめた.「胎児異常の診断を受けた女性に関する研究」は,表1–1「胎児異常の診断を受けた女性の体験」と表1–2「胎児異常の診断を受けた女性の心理特性」にさらに分類した.

表1–1 胎児異常の診断を受けた女性の体験(概要)
表1–2 胎児異常の診断を受けた女性の心理特性(概要)
表2 胎児異常の診断を受けた女性とパートナーの体験・心理特性(概要)
表3 胎児異常の診断を受けた女性と家族の支援に関わる医療者に関する研究(概要)

2.胎児異常の診断を受けた女性に関する研究

1) 胎児異常の診断を受けた女性の体験(表1–1

胎児異常の診断を受けた女性の体験の研究は,8件あった.いくつかの文献で共通していたのは,妊娠期に診断を受けた女性の揺れ動く心理過程や希望を持つこと,悲嘆にくれる中でも我が子への温かい思いが存在することであった.また,妊娠期における新生児専門医との面談は,出産や新生児のケアを計画するうえで有意義であり(Hedrick, 2005),NICUの見学は感情的な難しさを伴うが,有意義であり見学を拒む母親はいなかったと報告されている(Miquel-Verges et al., 2009).

さらに,女性の視点からとらえた医療者の支援に関する研究(Lalor et al., 2007)では,すべての女性は胎児異常の重症度にかかわらず,医療者に対し継続的で個別的なケアニーズがあり,継続的なケアが得られない場合には,失望感や恐れが高まったと報告している.

多くの女性が,胎児異常の診断を受けてからインターネットを使って情報を集めていた(Hedrick, 2005).診断を受けた女性は,ストレスフルな状況に対処するために情報の受け取りを規制していたが,陣痛や出産に関する情報は,すべて重要であると認識していた(Lalor et al., 2008).また,Hedrick(2005)は非致死的な胎児異常を診断された女性たちのポジティブなコーピングには,家族や友人からのサポート,宗教上の信念,仕事で忙しくすることや同じような体験をした人と話をすることも含まれることを示した.さらに,やむをえず妊娠を中断する場合では,意思決定における心理的カウンセリングの重要性(Benute et al., 2012)や次回妊娠も含む継続的な支援が必要であることが報告されている(Lafarge et al., 2013).

2) 胎児異常の診断を受けた女性の心理特性(表1–2

胎児異常の診断を受けた女性の心理特性に関する縦断的研究は4件,横断研究は3件あった.告知を受けた女性の不安や抑うつは,告知後に最も高く出産後1年から1年半が最も弱かった.次に,上に子どもがいない人のほうが,子どもがいる人に比べすべての時期において,不安や抑うつが強かった(堀田ら,2007).診断の時期では,22週以降の女性で心理的ストレスが高く,予後良好で曖昧さのない疾患グループで心理的ストレスが最も低かった(Kaasen et al., 2010).また,胎児異常の診断を受けた女性の心理的ストレスに対する対処は,問題中心型と情動中心型の対処があった(Lalor et al., 2008; Horsch et al., 2013).不確かな診断や検査結果の場合には,情報ニーズが高く,情動中心型の対処に焦点が当てられており,身体症状として,不眠などのストレスサインが現れた(Lalor et al., 2008).問題中心型と情動中心型の両方の対処を行っている場合では,上手く対処できること,出産後はストレスが大幅に減少し,そのことは子どもの治療の成功ともいくらか関連があった(Horsch et al., 2013).さらに,胎児異常の診断を受けた体験のトラウマに関する報告(Horsch et al., 2013)もあり,堀田ら(2005)も,出産後や出産後1年で「告知場面の蘇り」が多くみられ,出産後は児の誕生,出産後1年は1歳の誕生日であることから記念日のような節目に,告知場面が蘇ってくることを報告している.Lalor et al. (2009)によると,胎児診断後の適応過程は,【希望を持ちなおすこと】という概念で表され,〈正常であると思い込む〉〈衝撃〉〈意味づけをする〉〈再構築〉の4つの段階があった(図1).それらは,胎児診断後の時期別の看護介入について明示されており今後の支援において有用である.

図1 希望を持ちなおすこと—胎児診断後の適応過程(Lalor et al., 2009

3.胎児異常の診断を受けた女性とパートナーの体験・心理特性(表2

海外の文献では,胎児異常の診断を受けた女性とパートナーの体験・心理に関する文献は,4件あった.国内では,パートナーの体験を含む原著はなく,海外においてもパートナーを個別に調査した原著はみあたらない.診断時における,悲嘆,不安,ショック,などの親の心理的反応に性別の違いはなく,夫婦間での一致度は高かった.さらに,夫婦ともにネガティブな感情だけでなく希望などのポジティブな感情もみられた(Fonseca et al., 2013).また,診断が不確かなときや,父親では診断について事前に知識がないとき,母親では流産や死産経験がない場合において高頻度に否定的感情のパターンを示した(Fonseca et al., 2013).さらに,診断を受けた直後の父親と母親の心理的ストレスのレベルは関連がみられた.父母間での心理的ストレスに関連する因子の違いは,母親では,診断時の週数が心理的ストレスに影響したが,父親では子どもの疾患の重症度や予後の曖昧さのみが影響した(Kaasen et al., 2013).出生前に先天性心疾患を診断された父母の意思決定に関する研究(Rempel, 2003)では,妊娠の継続や追加の検査を受けるか否かの意思決定における男女間の違いについて報告されていた.また,それらの意思決定は,親としての最初の決断であり,出生前の決断を子どもにとって最善の利益としたいという信念にもとづいていた.

4.胎児異常の診断を受けた女性の支援を行う医療者に関する研究(表3

胎児異常の診断を受けた女性の支援を行う医療者に関する研究は7件あった.そのうち5件は国内文献であり,対象は看護者であった.胎児異常を診断された女性とかかわる助産師は,寄り添いきれない葛藤(内海ら,2011)やジェンダー役割や自己の価値観との間の葛藤(渋谷,2012)などを体験していたとの報告もあった.また,看護者の葛藤への対処としては,仲間への相談や自分のかかわりや気持ちを振り返ることで葛藤やストレスを次の課題としてとらえ,より良いケアへつなげる姿勢が明らかにされていた(内海ら,2011).しかし,頼られる存在として得られる満足感から多忙業務を招き,ジレンマやバーンアウトに陥りやすい環境を自ら作り上げていた(渋谷,2012)との報告もある.

Ⅳ.考察

1.胎児異常の診断を受けた女性の体験

妊娠期に診断を受けた女性の体験は,揺れ動く心理過程や希望を持つこと,悲嘆にくれる中でも我が子への温かい思いを抱いていた.多くの女性が,胎児異常の診断を受けてからインターネットを使って情報を集めており(Hedrick, 2005),ストレスフルな状況に対処する場合には情報の受け取りを規制していたが,陣痛や出産に関する情報は,すべて重要であると認識していた(Lalor et al., 2008).また,すべての女性は胎児異常の重症度にかかわらず,医療者に対し継続的で個別的なケアニーズがあり,継続的なケアが得られない場合には,失望感や恐れが高まったとの報告もあった(Lalor et al., 2007).

1)妊娠期における出産・育児に向けた支援

女性たちは厳しい状況にあっても現実的な情報を必要としていることが示されており,新生児専門医による面談やNICUの見学も含めた妊娠期から産後の育児に向けた支援が必要である.また,Fonseca et al. (2013)は,出生前または出生後に子どもの先天異常を診断された両親は,悲嘆,不安,ショックなどの感情と同様に,希望も抱いていることを報告しており,希望を持ち続けられるような支援が重要である.

2)妊娠を中断する場合の支援

Lafarge et al. (2013)は,胎児異常の特殊性を理解した直接的でない情緒的サポートや児とともに過ごす時間の価値を伝えること,次の妊娠期間を含む長期的なサポートが,心理的適応を促進する可能性があると報告しており,妊娠を中断する場合においても,継続的なケアが求められている.さらに,Korenromp et al. (2005)は,パートナーの支援の認識が精神的な影響に関連があると報告しており,パートナーも含めた支援が重要である.

3)女性のコーピングスタイルに合わせた情報提供

Lalor et al. (2008)は,女性たちはストレスフルな状況に対処するために情報を規制していたが,陣痛や出産の準備に関する情報は,すべて重要であると認識していたと述べており,妊娠期からの継続的な支援の検討が必要である.また,妊娠期に胎児治療が行える疾患は限られており,女性たちは不確かさの中で追加の検査や新たな異常の判明など多くのストレスフルな体験をする.過剰な情報はストレスとなるが,陣痛や出産,NICUの見学などは,女性たちが重要と認識している情報であることが示唆された.さらに,信頼できるインターネットサイトの案内やピアカウンセリングの提供,親の会の紹介など,今後は周産期における時期別のケアニーズを明確にしていく必要がある.

2.胎児異常の診断を受けた女性の心理特性

超音波検査で胎児異常の診断を受けた女性の適応過程(Lalor et al., 2009)は,〈正常であると思い込む〉〈衝撃〉〈意味づけをする〉〈再構築〉の4つの段階があることが明らかにされているが,診断の方法は妊婦健診の超音波検査であり,追跡期間は胎児異常の診断を受けてから出産後4~6週間までであった.さらに調査対象の中には,死産や新生児死亡の転帰をとるものなどが混在していた.そのため,診断方法による心理的影響の違いや疾患の分類と経過をある程度統制し,より長期的な検討も必要である.堀田ら(2007)は,告知を受けた女性の不安や抑うつは,告知後に最も高く出産後1年から1年半が最も弱かったと報告している.そのため,胎児異常の診断から出産,育児へと続く過程を支援していくうえで,胎児異常の診断を受けた女性の心理変化を縦断的に捉える必要がある.Horsch et al. (2013)は,高齢妊婦や追加のストレスフルな体験をしている女性,社会的孤独を感じている女性では,産後にさらにストレスが増大する可能性があると報告しており,妊娠・分娩経過や家族背景などを踏まえた支援が必要である.

3.女性とパートナーの体験・心理特性

胎児異常の告知後の心理的反応の強さは,夫婦間で一致度が高く,このことは夫婦が互いに影響し合っていることを示している.また,妊娠継続や追加の検査に関する意思決定,子どもの養育に関する男女の考え方の違いについて理解したうえで,情報提供やカウンセリングなどの支援を行っていく必要がある.さらに,安藤(1994)は妊婦の羊水穿刺を受けるか否かの意思決定には,夫や家族の羊水穿刺に対する考え方も影響を与えたと報告しており,妊娠の継続や追加の検査に関する意思決定についても同様の影響が考えられる.これまでの研究は,妊娠期の女性に焦点を当てた研究が中心であるため,今後は対象をパートナーに限定した研究が望まれる.先天異常の子どもの父母の感情は,子どもの治療経過や成長・発達の節目により揺れ動く.そのため,これから親となる女性とそのパートナーにおいて,妊娠期に診断を受けることが,その後の出産・育児を行う過程で,周囲の人々との関係性を含む社会生活の中でどう影響しているのかという視点からの支援も必要である.

4.胎児異常の診断を受けた女性と家族の支援を行う医療者に関する研究

胎児異常の診断を受けた女性の支援を行う看護者の体験についての研究(木村,2009内海ら,2011渋谷,2012)では,個々の看護者がどのように対処しているかが明らかにされており,支援を行う看護者に対するサポートや組織全体の取り組みの必要性が報告されている.また,下山(2010)は胎児異常に伴う中期中絶を行う女性とその家族にかかわる看護者の「二次的ストレス」や「代理受傷」といった問題を指摘しており,リエゾンナースへの相談など看護者自身もケアを受ける機会を作ることの必要性を挙げている.しかし,看護者への支援に関する研究はまだ少ない.看護者への支援に関する研究が少ないという現状は,看護者の抱える様々な葛藤は,個人の対処努力として扱われている可能性を示唆する.渋谷(2012)も胎児異常を診断された母親とかかわる助産師のジレンマは,組織の中では一個人の問題として対処されており,臨床でしか経験できない倫理的課題については検討する場もなく悪循環を引き起こしていることを指摘している.そのため,看護者に対する倫理的教育も含めた支援体制の構築が必要である.また,胎児異常の診断を受けた女性と医療者のかかわりでは,疾患の重症度にかかわらず医療者の共感や継続的で個別性のあるケアが求められており,家族も含めた支援が重要である.

5.今後の課題(女性とそのパートナーに関する研究および支援の方向性)

これまでの研究を概観すると,出産前後の支援だけではなく,妊娠を中断する場合においても次の妊娠期間を含めた継続的な支援の重要性が示唆されており,揺れ動く女性の心理過程に寄り添う助産ケアの独自性を探究していく必要がある.また,有効なプレネイタルビジットやNICUの見学など妊娠期からの新生児専門医ら医療チームによる継続的な支援についても検討が必要である.胎児異常の診断を受けた女性の心理特性は,診断を受けた時期や疾患によって違いがあり,パートナーの心理特性も含め,それらの違いを検討していく必要がある.調査対象の多くは妊婦であり,パートナーのみを対象とした研究はみられなかった.今後は,夫婦間での認識や,男女間での捉え方の違いを明らかにし,それらを踏まえた支援につなげていく必要がある.また,支援を行う看護者も様々な葛藤を抱えており,看護者への教育プログラムやリエゾンナースの活用など幅広く支援体制を整備することが重要である.支援を受けた女性や家族の視点から,医療者の支援について検討を行っている研究は,海外文献は2件(Maijala et al., 2003; Lalor et al., 2007)みられたのに対し,国内文献は皆無であった.このことは,国内において奇形や障害といったテーマを扱うことに対する研究者自身の抵抗や対象へのアプローチの難しさが影響していると考えられる.今後は支援を受ける女性とそのパートナーの視点から,医療者との関係性やケアの質評価に関する検討が望まれる.さらに,先天異常の子どもの母親や家族の受容をすすめるためには,治療や指導だけではなく地域社会がその子どもや家族をどう支援するかが問われている(刀根ら,1994).そのため,今後は,検索データベースの拡大や,医療者に限定しない多職種および一般市民の意識などの文献検討も必要である.

Ⅴ.結論

国内外の26編の文献を整理した結果,以下のことが明らかになった.

  • 1.胎児異常の診断を受けた女性の心理特性は,告知後に最も不安や抑うつが高く,出産後1年から1年半が最も弱かった.また,上に子どもがいない人のほうが,子どもがいる人に比べすべての時期において,不安や抑うつが強かった.
  • 2.女性とパートナーの心理特性では,診断時の悲嘆,不安,ショック,など心理的反応に性別の違いはなく,夫婦間での一致の頻度は高かった.また,ネガティブな感情だけでなく,希望などのポジティブな感情もみられた.
  • 3.胎児異常の診断を受けた女性とパートナーは,追加の検査や妊娠継続に関する意思決定は親としての最初の決断として捉えており,その基本となるものは,親の信念や価値観と出生前の決断を子どもにとって最善の利益にしたいという欲求であった.
  • 4.出産や育児に向けての支援と同様に妊娠を中断する場合においても,次の妊娠期間も含めた継続的な助産ケアの在り方を探究する必要がある.
  • 5.妊娠期からの新生児専門医ら医療チームによる継続的な支援とパートナーや家族,ピアカウンセリングなどの社会的支援についても検討が必要である.
  • 6.医療者には,胎児異常の診断時から正確な情報提供を行うことや共感的で継続的な支援が求められていた.一方で,看護者は様々な葛藤を抱えながらもケアを行っており,倫理的教育も含めた支援体制の構築が不可欠である.

国内における研究は,海外の研究に比べて集積が少ない現状であり,日本の社会文化的背景の中でも検討を重ねていく必要がある.今後は,胎児異常の診断を受けた女性とそのパートナーの体験に焦点を当て,支援体制の構築につなげていくことや,ケアシステム発展のためにケアの質評価や社会的支援の検討が必要である.

Acknowledgment

本研究にご協力くださいました皆様に心より感謝申し上げます.なお,本研究の一部は,第34回日本看護科学学会学術集会において発表した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:ROは研究の着想および研究プロセス全体に貢献,KKはデータの解釈と原稿への示唆,研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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