2019 Volume 39 Pages 82-90
目的:初期キャリア形成期看護師のピア・コーチング測定尺度の信頼性と妥当性を検討する.
方法:専門家会議と内容妥当性指数から55項目のピア・コーチング測定尺度原案を作成した.2017年9月~2018年3月に全国65施設の卒後2・3年目の看護師を対象に質問紙調査を実施した.318名のデータを分析対象とし,項目分析,探索的因子分析,Cronbach’s α係数,外的基準との相関関係,再テスト法を行い信頼性と妥当性を確認した.
結果:探索的因子分析の結果【互恵関係の構築行動】【援助方法の共創行動】【援助方法の補填行動】【自己変容の促進行動】の4因子20項目が抽出された.下位尺度のCronbach’s α係数は .82~.89であった.協同作業認識尺度の「協同効用」との相関係数は .33,看護師チームのチームワーク測定尺度との相関係数は .33であった.再テスト法では下位尺度の級内相関係数が .65~.79であった.
結論:初期キャリア形成期看護師のピア・コーチング測定尺度の信頼性と妥当性が検証された.
Purpose: This study aimed to consider the reliability and validity of the Peer Coaching Scale for Nurses during the initial career-development period.
Methods: The researchers selected 55 items from an initial scale of 64 items based on peer debriefing and their content validity index. A questionnaire survey was conducted for nurses in the second and third years after graduation from 65 institutions nationally from September 2017 to March 2018. Data obtained from 318 nurses were analyzed. The reliability and validity were examined using item analysis, exploratory factor analysis, Cronbach’s α coefficient, the confirmation of correlation with external criteria, and the test-retest method.
Results: As a result of the exploratory factor analysis, four factors and 20 items were extracted. The four factors were “the act of building a reciprocal relationship,” “the act of co-creating a care method,” “the act of compensating a care method,” and “the act of accelerating self-transformation.” The Cronbach’s α coefficient for the overall scale was .93. The Cronbach’s α coefficients for the subscales ranged from .82 to .89. The correlation coefficient of the Peer Coaching Scale with the subscale “usefulness of cooperation” of the Belief in Cooperation Scale was .33 (p < .01), and with the Teamwork Measure for Nursing Teams was .33 (p < .01). Using the test-retest method, the intraclass correlation coefficient for the subscales ranged from .65 to .79 (p < .01).
Conclusion: The reliability and validity of the Peer Coaching Scale for Nurses during the Initial Career-Development Period were verified.
2000年には「継続教育の基準」が示され,2009年には看護職の臨床研修等が努力義務化となり,継続教育の充実を図ることによる看護の質の向上が重要視されている.継続教育の体系化を促進し,継続教育提供組織およびその教育内容の水準を設定し,一定水準以上の継続教育を受けられるようにするために,2012年に「継続教育の基準」が改訂され(日本看護協会,2012),教育による看護師の能力開発は,より一層取り組むべきものといえる.特に,卒後2・3年目の時期は基礎的な知識や技術を基盤に,より高度な看護ケアに発展させていく段階(谷脇,2006)である.できるだけ早く職務要件に十分応えられるだけの実務能力を形成することがきわめて重要な時期を初期キャリアと呼ぶことから(Schein, 1978/1991;若林,1988),看護師免許を取得後,就職してから2・3年目(以下,卒後2・3年目とする)は初期キャリア形成期にあたる.初期キャリア形成期看護師は臨床実践能力不足や自信のなさを感じているが(真壁ら,2006;山田ら,2014),新人看護師に比べて職場の教育的支援が充実しているとは言い難いという報告もある(吉田ら,2011;成田・石井,2015;吉岡ら,2017).したがって,この時期における教育的支援を検討することは,能力開発における重要な意味をもつと考える.
中原(2010)は,日本企業において同僚・同期からの支援が能力向上に影響を与えているとしている.看護学分野においても,冨田ら(2016)が,初期キャリア形成期看護師が同期入職看護師(以下,同期とする)とのピア・コーチングにより成長していることを明らかにしている.ピア・コーチングとは,非評価,類似の経験,協同作業,成長という要素を含む,2人以上の専門職の同僚の間でなされるプロセスである(Robbins, 1991;Waddell & Dunn, 2005).ピア・コーチングは,看護学生や看護スタッフ,成人などを対象に幅広く用いられ,その有用性について研究が行われている(Broscious & Saunders, 2001;Thalluri et al., 2014;McQuiston & Hanna, 2015;Nyamathi et al., 2015).また,冨田・細田(2019)はピア・コーチングの具体的行動として,「絆を深める」「同期を身近な目標とする」「同期とのかかわりから生じる自発的な行動」「ともに学びあう機会をもつ」「同期を通じた自分なりのケアの模索」のカテゴリーを明らかにしている.さらに,ピア・コーチングの効果として,「ケアの幅の広がり」を示し,ピア・コーチングが看護師の能力向上に影響を及ぼすと考えられるが,どの程度行われているのかなど現状を把握するには至っていない.そこで,ピア・コーチングを測定する尺度を開発し,自己評価ツールとして使用することにより,初期キャリア形成期看護師の能力開発に貢献できると考える.そして,教育的支援を行う者にとっても,ピア・コーチングが行われている現状を把握することで,より効果的に支援するための資料を得ることができる.したがって,本研究の目的は初期キャリア形成期看護師のピア・コーチング測定尺度を開発することである.
できるだけ早く職務要件に十分応えられるだけの実務能力を形成することがきわめて重要な時期(Schein, 1978/1991;若林,1988)である看護師免許を取得後の就職してから2・3年目とする.
2. ピア・コーチング知識・技術の洗練や問題解決のために,同期と非評価的で支持的な関係を築きつつ行われる,実践の振り返りや教え合うという協同を通じた行動のことであり,認識を含むものとする(Robbins, 1991;Waddell & Dunn, 2005).
冨田・細田(2019)の初期キャリア形成期看護師のピア・コーチングにおける具体的行動として抽出された64のコードを用いて,尺度項目を作成した.尺度は「全く当てはまらない:1点」「ほとんど当てはまらない:2点」「あまり当てはまらない:3点」「やや当てはまる:4点」「かなり当てはまる:5点」「非常に当てはまる:6点」の6段階のリッカートスケールとした.その後,看護教育学の研究者で臨床経験5年以上,臨床における教育の経験があり修士以上の学位をもつ者5名を対象に専門家会議を行った.専門家の意見を基に内容の重複する項目は削除,または統合し,【同期を通じて援助方法を模索する行動】【役割・業務遂行について同期と理解を深める行動】【同期との関係を構築する行動】【同期を通じて学習へのモチベーションが高まる行動】からなる59の尺度項目に精練した.さらに,臨床経験5年以上で修士以上の学位をもつ看護師と研究者10名によって,内容妥当性指数(Content Validity Index: CVI)を用いた検討を行った.CVIは内容妥当性を定量化するために広く使用されている方法であり,尺度の内容の有効性を推定するための適切な方法であるとされ,0.78以上の項目を採択し(Polit et al., 2007),55項目となった.
2. 尺度の信頼性・妥当性の検討 1) 対象者全国の一般病床数200床以上の医療施設(全国病院一覧データVer4.0.0)から無作為抽出法によって選出された65施設に所属する1,052名の初期キャリア形成期看護師で,次の条件を満たす者とした.社会人経験がない卒後2・3年目の者,同一部署に継続して勤務している者,部署に同期入職の看護師がいる者である.なお,外来,手術室に所属する看護師は除いた.また,安定性の確認のために,同意の得られた165名を対象に再テスト法を行った.
2) 調査方法2017年9月から2018年3月に,施設の看護部長または看護研究責任者に研究協力の承諾を得て,1施設あたり10名程度の初期キャリア形成期看護師を対象に,無記名自記式質問紙を配布した.配布の際は,卒後2年目と3年目が同数になるように依頼した.対象者から個別に質問紙を郵送していただいた.再テスト法は,調査1回目と2回目の間を1ヵ月空けて実施した.
3) 調査内容 (1) 初期キャリア形成期看護師のピア・コーチング測定尺度原案初期キャリア形成期看護師のピア・コーチングにおける具体的行動から尺度項目を作成し,専門家会議とCVIによって精選された55項目である.
(2) 協同作業認識尺度長濱ら(2009)によって開発された協同作業の認識を測定する尺度で,「協同効用」「個人志向」「互恵懸念」の3因子18項目から構成される.内容妥当性,構成概念妥当性,内的整合性,基準関連妥当性が検証されている.
(3) 看護師チームのチームワーク測定尺度三沢ら(2009)によって開発された看護師チームのチームワークを測定する尺度で,「チームの志向性」「チーム・リーダーシップ」「チーム・プロセス」の3因子30項目から構成される.内容妥当性,構成概念妥当性,内的整合性,基準関連妥当性が検証されている.
(4) 個人背景年齢,性別,同じ病棟に所属する同期入職看護師の人数,最終学歴
4) 分析の方法 (1) 項目分析シーリング効果,フロア効果,歪度,尖度,修正済み項目合計相関(Corrected Item-Total Correlation: CITC)を確認した.シーリング効果は平均値+標準偏差>6,フロア効果は平均値-標準偏差<1,歪度・尖度は±2.0を超える項目(Kunnan, 1998),CITCは .30以下(Polit & Beck, 2017)を削除基準とした.その後,項目間相関を行い .70以上(Polit & Beck, 2017)を削除基準とした.項目間相関が .70以上を示す場合,項目のどちらか一方を削除した.
(2) 探索的因子分析項目分析により抽出された項目を用いて探索的因子分析を行った.Kaiser-Meyer-Olkinの標本妥当性の測定とBartlettの球面性検定を行い,因子分析に適合していることを確認した.因子数の決定は小塩(2011)を参考にし,専門家会議やCVIによる検討により,4因子構造が考えられたため,4因子にて最尤法・プロマックス回転による因子分析を行った.因子負荷量 .40を規準として,分析結果を初期キャリア形成期看護師のピア・コーチング測定尺度(以下,ピア・コーチング測定尺度)とした.
(3) Cronbach’s α係数内的整合性の検討のために,ピア・コーチング測定尺度の全体と各下位尺度のCronbach’s α係数を算出した.
(4) 外的基準との相関関係協同作業認識尺度(長濱ら,2009)と看護師チームのチームワーク測定尺度(三沢ら,2009)を用いた.ピア・コーチングは同期との協同を通じた行動であるため,「協同効用」「チームの志向性」「チーム・リーダーシップ」「チーム・プロセス」と正の相関があり,「個人志向」「互恵懸念」と負の相関,または相関がみられないという仮説を立てた.また,二種類の尺度を用いることで,より多面的に基準関連妥当性を検討することができると考えた.両尺度の正規性をKolomogorov-Smirnovの検定で確認後,ピア・コーチング測定尺度とのSpearmanの順位相関係数をそれぞれ求めた.
(5) 再テスト法ピア・コーチング測定尺度の調査1回目と2回目の得点の正規性をKolomogorov-Smirnovの検定で確認後,級内相関係数を求めた.
対象者に研究の意義・目的・方法,研究参加の自由意思,プライバシーに関する配慮,データの匿名性の保持や保管に関すること,研究成果を関連学会で発表することなどを紙面により説明し,質問紙の返信をもって同意を得た.また,尺度を使用する際は,開発者の使用許諾を得た.専門家会議,CVIによる検討,質問紙調査は大阪府立大学大学院看護学研究科研究倫理委員会の承認を得た上で実施した(申請番号28-67;29-20;29-36).
初期キャリア形成期看護師に質問紙を配布し,339名(回収率32.2%)から回答が得られ,欠損値を含むデータを対象外とし,318名(有効回答率30.2%)を分析対象とした.対象者の年齢は平均23.8 ± 1.13歳,女性298名(93.7%),男性20名(6.3%)で,同じ部署に所属する同期の人数は平均3.37 ± 1.64人であった.最終学歴は3年課程の専門学校175名(55.0%),大学122名(38.4%),3年課程短期大学16名(5.0%),その他5名(1.6%)であった.また一般病院15施設,特定機能病院11施設,地域医療支援病院36施設,精神科病院3施設であった.
2. 尺度原案の信頼性・妥当性の検討 1) 項目分析シーリング効果は4.80~6.19の範囲を示し,6以上の5項目を削除した.フロア効果は2.12~4.12の範囲を示し,削除対象となる項目は認められなかった.歪度は–1.41~0.04の範囲を示し,尖度は–0.90~2.54の範囲を示し,尖度が+2.0を超えた1項目を削除した.CITCは .22~.79の範囲を示し,.30以下の1項目を削除した(表1).さらに,項目間相関では .13~.88の範囲を示し,.70以上を示す14項目を削除した.項目分析により尺度項目は55項目から35項目となった.
| シーリング効果 | フロア効果 | 歪度 | 尖度 | CITC | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 同期が患者と関わる様子を観察する | 5.11 | 3.23 | –0.40 | 0.84 | 0.42 |
| 2 | 経験の少ない援助方法について同期と情報を共有する | 5.81 | 3.97 | –0.69 | 0.55 | 0.64 |
| 3 | 習得できていない援助方法について同期の方法を見学する | 5.28 | 2.90 | –0.23 | –0.40 | 0.57 |
| 4 | 同期の援助方法を見て基本的な手技が身についていないと自覚する | 4.80 | 2.60 | –0.11 | –0.10 | 0.22 |
| 5 | 同期から間違いを指摘されることで学習の必要性を認識する | 5.35 | 3.31 | –0.55 | 0.40 | 0.51 |
| 6 | 自分が理解できていない援助方法について同期と一緒に調べる | 5.39 | 3.07 | –0.45 | 0.00 | 0.68 |
| 7 | 自信が持てない援助方法について同期に確認する | 5.83 | 4.02 | –0.74 | 0.95 | 0.63 |
| 8 | 援助方法について同期と意見交換する | 5.63 | 3.71 | –0.52 | 0.33 | 0.70 |
| 9 | 援助の視点について同期と意見交換する | 5.43 | 3.25 | –0.32 | –0.27 | 0.71 |
| 10 | 同期から援助方法についてアドバイスをもらう | 5.39 | 3.23 | –0.30 | –0.22 | 0.71 |
| 11 | 患者への関わりに対する同期の考えを参考にする | 5.34 | 3.34 | –0.05 | –0.34 | 0.70 |
| 12 | 患者への関わりに対する同期の意見を受け入れる | 5.42 | 3.60 | –0.14 | 0.10 | 0.68 |
| 13 | 同期から得た情報を自分の援助方法に取り入れる | 5.47 | 3.87 | –0.02 | –0.17 | 0.66 |
| 14 | 先輩の援助方法のコツを同期と教え合う | 5.72 | 3.78 | –0.64 | 0.79 | 0.69 |
| 15 | 日々実施している援助方法以外の方法を同期と一緒に考える | 5.02 | 2.65 | 0.04 | –0.48 | 0.65 |
| 16 | 自分と同期の援助方法が異なるときに効率的な方法について話し合う | 4.96 | 2.86 | –0.25 | 0.25 | 0.66 |
| 17 | 同期から教わった援助方法を自分で再確認する | 5.22 | 3.28 | –0.30 | 0.55 | 0.67 |
| 18 | 同期の意見をもとに援助方法について多角的に考える | 5.00 | 2.91 | –0.21 | 0.05 | 0.67 |
| 19 | 同期の援助の様子から自分が患者を受け持つときを想定する | 5.20 | 3.18 | –0.41 | 0.33 | 0.59 |
| 20 | 同期の援助方法をまねる | 5.07 | 3.03 | –0.29 | 0.66 | 0.67 |
| 21 | 同期の意見を援助方法に活用する | 5.31 | 3.37 | –0.22 | 0.11 | 0.73 |
| 22 | リーダーの役割について同期と教え合う | 4.96 | 2.12 | –0.04 | –0.75 | 0.47 |
| 23 | インシデントについて同期と一緒に振り返る | 5.09 | 2.81 | –0.14 | –0.38 | 0.51 |
| 24 | 患者の状態について同期と一緒にアセスメントする | 5.29 | 3.15 | –0.26 | –0.05 | 0.63 |
| 25 | 後輩指導について同期に相談する | 5.43 | 2.39 | –0.24 | –0.90 | 0.52 |
| 26 | 後輩指導について同期と一緒に考える | 5.26 | 2.38 | –0.17 | –0.75 | 0.56 |
| 27 | 後輩指導に対する考えが偏らないように同期と意見交換する | 4.94 | 2.32 | –0.13 | –0.44 | 0.59 |
| 28 | 問題を解決するときに同期と声を掛け合う | 5.55 | 3.51 | –0.43 | 0.27 | 0.76 |
| 29 | 問題を解決するときに同期に相談する | 5.72 | 3.70 | –0.60 | 0.50 | 0.73 |
| 30 | 問題を解決するときに同期と助け合う | 5.80 | 3.80 | –0.76 | 0.82 | 0.74 |
| 31 | 問題が起きた後の対応について同期と話し合う | 5.46 | 3.34 | –0.31 | 0.18 | 0.75 |
| 32 | 素直な気持ちを同期に打ち明ける | 5.99 | 3.76 | –0.93 | 0.70 | 0.66 |
| 33 | 間違いを恐れずに同期と意見を出し合う | 5.76 | 3.58 | –0.54 | –0.06 | 0.74 |
| 34 | 率直な意見を同期と交わす | 5.90 | 3.76 | –0.85 | 0.90 | 0.71 |
| 35 | 自分の意見に確信が持てないときは同期に意見を求める | 5.86 | 3.88 | –0.76 | 0.39 | 0.74 |
| 36 | 同期が仕事について把握していることは同期を頼りにする | 5.80 | 4.00 | –0.65 | 0.70 | 0.63 |
| 37 | 仕事に関する悩みについて同期と話し合う | 6.11 | 3.98 | –1.41 | 2.54 | 0.62 |
| 38 | 互いの改善点について同期と話し合う | 5.42 | 3.12 | –0.41 | –0.01 | 0.74 |
| 39 | 自分の未熟な部分を同期に相談する | 5.67 | 3.37 | –0.69 | 0.35 | 0.76 |
| 40 | 同期の意見をきっかけに自分の未熟な部分を振り返る | 5.62 | 3.48 | –0.65 | 0.69 | 0.79 |
| 41 | 仕事を頑張ろうと同期と励まし合う | 6.18 | 4.02 | –1.19 | 1.18 | 0.59 |
| 42 | 困難な状況にある同期を気遣う | 5.97 | 4.12 | –0.88 | 1.11 | 0.68 |
| 43 | 同期と一緒に困難を乗り越えていこうと力を合わせる | 6.01 | 4.09 | –0.83 | 0.70 | 0.74 |
| 44 | 同期と対等な関係を築こうと努力する | 6.00 | 4.10 | –0.77 | 0.21 | 0.68 |
| 45 | 仕事以外で同期と集まってリフレッシュする | 6.19 | 3.53 | –1.14 | 0.72 | 0.52 |
| 46 | 成功体験を同期と伝え合う | 5.57 | 3.19 | –0.51 | 0.11 | 0.71 |
| 47 | 丁寧な態度で接する同期の姿勢を目標にする | 5.61 | 3.50 | –0.45 | 0.06 | 0.67 |
| 48 | 同期を目標に自ら努力する | 5.35 | 3.05 | –0.18 | –0.30 | 0.70 |
| 49 | 同期が経験したことを自分も経験できるように機会を求める | 5.53 | 3.57 | –0.38 | 0.41 | 0.66 |
| 50 | 同期がどのような患者を受け持っているのか関心を寄せる | 5.52 | 3.36 | –0.35 | –0.04 | 0.63 |
| 51 | 自分より経験の多い同期を良きライバルとする | 5.14 | 2.92 | –0.32 | 0.14 | 0.39 |
| 52 | 同期と知識の差を感じ進んで学習する | 5.04 | 3.24 | –0.06 | 0.54 | 0.51 |
| 53 | 同期の援助に対する姿勢に刺激を受けて自分も積極的に経験を重ねる | 5.20 | 3.42 | 0.03 | –0.01 | 0.58 |
| 54 | 提出する課題について同期と意見交換する | 5.69 | 3.67 | –0.59 | 0.59 | 0.61 |
| 55 | 学習を深めるために施設外研修に同期と一緒に参加する | 5.19 | 2.35 | –0.26 | –0.59 | 0.51 |
※太文字は,削除対象項目と削除対象基準に該当した値を表す(6項目).
項目分析により抽出された35項目を用いて探索的因子分析を行った.Kaiser-Meyer-Olkinの標本妥当性の測定では .95を示し,Bartlettの球面性検定は有意な差(χ2=7070.161, df = 595, p < .001)を認めた.先行研究より作成した項目を専門家会議とCVIによって精練した結果,4因子構造が考えられたため,最尤法・プロマックス回転による因子分析を行い,4因子20項目を抽出した.因子間相関は .31~.66であった.
第1因子は,「素直な気持ちを同期に打ち明ける」などの8項目から構成され,同期との関わりを通じて,対等で精神的に支え合う良好な関係を築くための行動であり,【互恵関係の構築行動】と命名した.第2因子は,「自分と同期の援助方法が異なるときに効率的な方法について話し合う」などの5項目から構成され,同期との関わりを通じて,新たな援助方法を考え出す行動であり,【援助方法の共創行動】と命名した.第3因子は,「自信が持てない援助方法について同期に確認する」などの4項目から構成され,同期との関わりを通じて,同期から援助方法に関する情報などを得て補填するという行動であり,【援助方法の補填行動】と命名した.第4因子は,「同期と知識の差を感じ進んで学習する」などの3項目から構成され,同期との関わりを通じて,自分をよりよい方向へ成長させるための行動であり,【自己変容の促進行動】と命名した(表2).
| 第1因子 | 第2因子 | 第3因子 | 第4因子 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1因子 互恵関係の構築行動 Cronbach’s α = .89 | ||||||
| 32 | 素直な気持ちを同期に打ち明ける | .83 | –.21 | .18 | –.09 | |
| 42 | 困難な状況にある同期を気遣う | .77 | –.14 | .16 | –.03 | |
| 39 | 自分の未熟な部分を同期に相談する | .73 | .12 | .02 | –.05 | |
| 46 | 成功体験を同期と伝え合う | .63 | .23 | –.08 | –.01 | |
| 36 | 同期が仕事について把握していることは同期を頼りにする | .55 | –.09 | .32 | –.03 | |
| 48 | 同期を目標に自ら努力する | .54 | .35 | –.13 | .05 | |
| 50 | 同期がどのような患者を受け持っているのか関心を寄せる | .48 | .22 | –.15 | .22 | |
| 49 | 同期が経験したことを自分も経験できるように機会を求める | .41 | .20 | –.03 | .27 | |
| 第2因子 援助方法の共創行動 Cronbach’s α = .88 | ||||||
| 16 | 自分と同期の援助方法が異なるときに効率的な方法について話し合う | –.08 | .84 | .09 | –.04 | |
| 15 | 日々実施している援助方法以外の方法を同期と一緒に考える | –.03 | .83 | .06 | –.09 | |
| 17 | 同期から教わった援助方法を自分で再確認する | –.10 | .77 | .17 | .01 | |
| 19 | 同期の援助の様子から自分が患者を受け持つときを想定する | –.01 | .76 | –.05 | .03 | |
| 20 | 同期の援助方法をまねる | .24 | .58 | .04 | –.07 | |
| 第3因子 援助方法の補填行動 Cronbach’s α = .82 | ||||||
| 8 | 援助方法について同期と意見交換する | –.01 | .20 | .70 | .03 | |
| 7 | 自信が持てない援助方法について同期に確認する | .24 | –.05 | .63 | –.01 | |
| 2 | 経験の少ない援助方法について同期と情報を共有する | .20 | .00 | .57 | .07 | |
| 3 | 習得できていない援助方法について同期の方法を見学する | –.09 | .29 | .50 | .07 | |
| 第4因子 自己変容の促進行動 Cronbach’s α = .83 | ||||||
| 52 | 同期と知識の差を感じ進んで学習する | –.09 | –.01 | .07 | .86 | |
| 51 | 自分より経験の多い同期を良きライバルとする | –.05 | –.14 | .04 | .83 | |
| 53 | 同期の援助に対する姿勢に刺激を受けて自分も積極的に経験を重ねる | .05 | .05 | .00 | .77 | |
| 項目全体Cronbach’s α = .93 | 因子相関行列 第1因子 | ― | .66 | .57 | .53 | |
| 第2因子 | ― | .52 | .64 | |||
| 第3因子 | ― | .31 | ||||
| 第4因子 | ― | |||||
因子抽出法:最尤法
回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法
下位尺度のCronbach’s α係数は,第1因子が .89,第2因子が .88,第3因子が .82,第4因子が .83であった.尺度では .93であった(表2).
4) 外的基準との相関関係ピア・コーチング測定尺度と協同作業認識尺度の「協同効用」とのSpearmanの順位相関係数は有意な正の相関(ρ = .33, p < .01)を示した.また,ピア・コーチング測定尺度の各下位尺度と協同作業認識尺度の「協同効用」の間で有意な正の相関(ρ = .23~.31, p < .01)を認めた.「個人志向」と「互恵懸念」では,ピア・コーチング測定尺度の下位尺度と負の相関(ρ = –.19~–.11, p < .05)か,または相関がみられなかった(表3).
| 協同作業認識尺度 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 協同効用 | 個人志向 | 互恵懸念 | ||
| ピア・コーチング測定尺度 | 尺度全体 | .33** | –.18** | –.11* |
| 互恵関係の構築行動 | .30** | –.17** | –.08 | |
| 援助方法の共創行動 | .24** | –.09 | –.004 | |
| 援助方法の補填行動 | .23** | –.19** | –.17** | |
| 自己変容の促進行動 | .31** | –.12* | –.16** | |
Spearmanの順位相関係数 ** 1%水準(両側) * 5%水準(両側)
ピア・コーチング測定尺度と看護師チームのチームワーク測定尺度のSpearmanの順位相関係数は有意な正の相関(ρ = .33, p < .01)を示し,すべての下位尺度間で有意な正の相関(ρ = .15~.34, p < .01)がみられた(表4).
| 看護師チームのチームワーク測定尺度 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 尺度全体 | チームの志向性 | チーム・リーダーシップ | チーム・プロセス | ||
| ピア・コーチング測定尺度 | 尺度全体 | .33** | .31** | .25** | .33** |
| 互恵関係の構築行動 | .33** | .29** | .27** | .34** | |
| 援助方法の共創行動 | .27** | .30** | .16** | .27** | |
| 援助方法の補填行動 | .17** | .15** | .15** | .16** | |
| 自己変容の促進行動 | .24** | .22** | .19** | .21** | |
Spearmanの順位相関係数 ** 1%水準(両側)
再テスト法にて検討した結果,90名から返信があり(回収率54.5%),欠損値のない79名(有効回答率47.8%)を分析対象とした.ピア・コーチング測定尺度の調査1回目と2回目の両方で正規性が確認された.級内相関係数は,尺度全体が .82(95%CI: .73~.88, p < .01),第1因子が .79(95%CI: .69~.86, p < .01),第2因子が .70(95%CI: .56~.80, p < .01),第3因子が .65(95%CI: .50~.76, p < .01),第4因子が .65(95%CI: .51~.73, p < .01)であった(表5).
| 級内相関係数 | 95%信頼区間 | ||
|---|---|---|---|
| 下限 | 上限 | ||
| 尺度全体 | .82** | .73 | .88 |
| 互恵関係の構築行動 | .79** | .69 | .86 |
| 援助方法の共創行動 | .70** | .56 | .80 |
| 援助方法の補填行動 | .65** | .50 | .76 |
| 自己変容の促進行動 | .65** | .51 | .73 |
** 1%水準(両側)
ピア・コーチング測定尺度の総得点は,41~120の範囲で,平均値88.2(SD = ±13.8)であった.ピア・コーチング測定尺度は,Kolmogorov-Smirnovの正規性の検定(KS = 0.037, df = 318, p = 0.200)により正規分布に従うことが確認された.
ピア・コーチング測定尺度の得点分布は正規分布に従うため,信頼性と妥当性を検討するにあたり,適切なデータであると考えられた.
2. 本尺度の信頼性と妥当性の検討 1) 本尺度の構成要素探索的因子分析を行った結果,第1因子【互恵関係の構築行動】,第2因子【援助方法の共創行動】,第3因子【援助方法の補填行動】,第4因子【自己変容の促進行動】が抽出された.小塩(2011)は,因子数の決定方法についていくつかの方法を挙げ,回転後に抽出された因子がうまく解釈することができるかという「解釈可能性」という観点が重要であるとしている.本研究では 4因子構造が専門家会議やCVIの結果をふまえて妥当であると考えて分析を行った.得られた結果は,冨田ら(2016, 2019)の研究結果と比較しても,解釈可能なものであり,4因子構造が妥当であると考えた.
第1因子の【互恵関係の構築行動】は,8項目から構成された.ピア・コーチングとは互恵的な関係(Waddell & Dunn, 2005)を築きつつ行われる行動であり,「信頼の構築」という要素をもつ(Ladyshewsky, 2010)ことから,同期と対等で精神的に支え合う良好な関係を築くための行動が重要である.第2因子の【援助方法の共創行動】は5項目から構成された.ピア・コーチングには,互いに助け合うといった協働(Himes & Ravert, 2012;McQuiston & Hanna, 2015)が含まれており,新しい知識や技術を実践に統合するといった,類似の経験を積んだ実践家の間でなされるもの(Waddell & Dunn, 2005)であることから,初期キャリア形成期看護師と同期において,援助方法を協力して「共」に「創」り出すための行動が行われていると考えられた.第3因子の【援助方法の補填行動】は,援助方法について不十分な部分を同期から補うという行動であった.冨田ら(2016)は,初期キャリア形成期看護師が同期と「部分的な知識を互いに補い合う」ことや「互いの体験を共有する」ことなどを明らかにしており,援助方法を模索する行動として,足りない部分を補うという行動をとっていると考えられた.第4因子の【自己変容の促進行動】は,同期との関係性から自分の位置を確認し,自己変容を促す行動である.初期キャリア形成期看護師は同期を心の支えとすると同時に良きライバルとして認識し,同期の存在からエネルギーを得ている.さらに,同期と自分を比較することで焦りや悔しさを感じて,それが原動力になる(冨田ら,2016).つまり,同期の存在から影響を受けて,自分を成長させるための行動を起こしていると考えられる.さらに,看護師としての能力開発だけではなく,人間としての成長という側面も考えられた.各因子は,ピア・コーチングの具体的行動をもとに作成された項目から抽出されたものであり,ピア・コーチングの要素を示すものとして適切な内容であると考えた.
2) 信頼性の検討本尺度のCronbach’s α係数が全体では .93,下位尺度では .82~.89の範囲を示しており,.80以上あれば内的整合性が高いと判断されるため(小塩,2011),本尺度の内的整合性が確保された.再テスト法の結果,級内相関係数が尺度全体では .82,下位尺度では .65~.79(p < .01)を示し,.61~.80は充実した値(対馬,2007)とされているため,本尺度の安定性が確保されたと考える.
3) 妥当性の検討構成概念妥当性を探索的因子分析で確認し,4因子構造が適切であると考えた.基準関連妥当性については,外的基準を用いて検討を行った.
協同作業認識尺度の「協同効用」は,協同作業することに対する正の側面を測定し,「個人志向」と「互恵懸念」は協同作業することに対する負の側面を測定する.本尺度は,同期との協同を通じた行動を測定しているため,「協同効用」と正の相関,「個人志向」「互恵懸念」と負の相関,または相関がみられないという仮説を検証することで,併存的妥当性を確認することにつながる.本尺度と協同作業認識尺度の下位尺度におけるSpearmanの順位相関係数は「協同効用」と正の相関を示し,「個人志向」「互恵懸念」と負の相関,または相関がみられなかったため,仮説と同じ結果となり併存的妥当性が確認されたと考えた.
看護師チームのチームワーク測定尺度は,チームワークの各側面を測定している.メンバー同士でコミュニケーションを取り,協力しながら課題や作業を遂行していくチームワークは,互いの尊敬とチームワークの発達を促すとされているピア・コーチング(McQuiston & Hanna, 2015)と正の相関があると考えられる.本尺度と看護師チームのチームワーク測定尺度,各下位尺度とのSpearmanの順位相関係数は尺度間,「チームの志向性」「チーム・リーダーシップ」「チーム・プロセス」のすべての下位尺度と正の相関を示したことから,仮説が確認されて併存的妥当性が検証されたと考えた.
3. 本尺度の実用性(活用性)ピア・コーチング測定尺度は,4因子20項目からなり,使用者の負担が少ない尺度といえる.また,初期キャリア形成期看護師だけではなく,教育支援者の教育活動にも活用できる利便性の高い尺度である.
吉岡ら(2017)の調査では,卒後2・3年目看護師の半数以上が「まだできない自分」や「自信がない」といった実践に関する困難を感じているとしている.初期キャリア形成期看護師はピア・コーチングを通じて,同期との関係性を構築し,自分のケアを再構成するという成長が明らかにされており(冨田ら,2016),ピア・コーチングを活用することで,初期キャリア形成期看護師が抱える困難感を軽減することにつながると考えた.また,教育学分野においてもピア・コーチングが,教師の自律や自立と創造的実践とを促すためのものであるとされており(古市,2018),本尺度を用いて,初期キャリア形成期看護師とその同期との間で行われるピア・コーチングが,どの程度行われているのかを把握し,今後に活かすことで,初期キャリア形成期看護師の成長に寄与できると考えた.さらに,この尺度を用いることで,同期との関係性を振り返る機会にもなる.「同期とうまくやれない」という「人間関係」に困難を感じている卒後3年目看護師もいるという報告もあり(吉岡ら,2017),関係性が悪化する前に本尺度を用いて現状を確認することで,関係性を構築するきっかけになると考えた.
本尺度を用いて自己評価することで自身の行動を振り返る機会となり,さらに,ピア・コーチングを用いた教育的介入の効果を検証できる.教育的介入の前後でピア・コーチングがどの程度行われるようになったのかという変化が確認でき,ピア・コーチングが及ぼす影響についても探索していくことが可能となる.
4. 本研究の限界と今後の課題本研究は,初期キャリア形成期看護師を対象としている.研究対象者が各施設の組織文化や教育体制に影響を受けている可能性があり,さらに質問紙調査のため,研究に協力的な対象者から得られたデータであることから,ある程度の偏りがある可能性は否定できない.今後は,ピア・コーチングが及ぼす影響などを明らかにすることで,教育的支援の向上につなげる.さらに,本尺度が新人看護師や中堅看護師などにも活用可能であることを確認し,縦断的に調査を行いピア・コーチングの具体的な支援を検討していく.
初期キャリア形成期看護師のピア・コーチング測定尺度の開発を行った.本尺度は,【互恵関係の構築行動】【援助方法の共創行動】【援助方法の補填行動】【自己変容の促進行動】の4下位尺度20項目で構成されている.また,表面妥当性,内容妥当性,構成概念妥当性,基準関連妥当性,内的一貫性,安定性を検討し,信頼性と妥当性が確認された.
謝辞:本研究に快くご協力くださいました看護師の皆様,病院関係者の皆様に厚く御礼申し上げます.また,熱心にご指導いただきました大阪府立大学大学院の籏持知恵子教授,長畑多代教授に深く感謝申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:RTおよびYHは研究の着想およびデザインに貢献;RTは統計解析の実施および草稿の作成;YHは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.
付記:本研究は,大阪府立大学大学院看護学研究科に提出した博士論文の一部を加筆・修正したものである.