2019 Volume 39 Pages 127-136
目的:炎症性腸疾患患者のQOLを評価する尺度を開発することを目的とした.
方法:これまでに行ってきたQOL関連要因探索研究の結果に基づき,2病院の外来患者を対象に質問紙法による調査を実施した.クロンバックのα係数および再テストによる尺度の信頼性と,因子分析による構成概念妥当性および外的基準との相関係数による基準関連妥当性を検証した.
結果:質問紙を460部配布し,分析対象は319名(クローン病222名,潰瘍性大腸炎97名)であった(有効回答率69.3%).項目分析と探索的因子分析により19項目5因子を抽出した.19項目に欠損がない対象300名のクロンバックのα係数は尺度19項目全体が.914,因子別では.710~.927の範囲であった.再テスト法の級内相関係数は.820,外的基準との相関係数は,SF-8のPCSが.388,MCSが.711,生活満足度10点評価が.731であった.
結論:信頼性,妥当性は概ね良好であったが,構成概念妥当性については課題が残った.
Aims: This study aimed to develop a scale for quality of life (QOL) assessment in patients with inflammatory bowel disease.
Methods: Based on the results of our previous exploratory studies on factors associated with QOL, a survey was conducted among outpatients in two hospitals using a questionnaire. Reliability of the scale was verified by Cronbach’s coefficient alpha and retesting, construct validity by factor analysis, and criterion-related validity by correlation coefficient with the external criterion.
Results: A total of 460 questionnaires were distributed, and 319 participants (222 patients with Crohn’s disease and 97 patients with ulcerative colitis) were analyzed (69.3% effective response rate). Using item analysis and exploratory factor analysis, 19 items and five factors were extracted. Cronbach’s coefficient alpha for 300 participants with no missing values for the 19 items was .914, and it was within the range of .710 to .927 by factor. The intraclass correlation coefficient of retesting was .820. The correlation coefficient with the external criterion was .388 for the physical component summary and .711 for the mental component summary of the short-form 8. It was .731 for the 10-point scale life satisfaction ratings.
Conclusion: The results showed that overall reliability and validity of the scale were good; however, there were still unresolved issues with construct validity.
炎症性腸疾患は,慢性の炎症や潰瘍など難治性の腸管障害が持続する疾患の総称であり,クローン病と潰瘍性大腸炎を指す.腹痛や下痢症状に加えて発熱や栄養障害などの全身症状を伴い,クローン病ではときに肛門病変や,腸管狭窄による腸閉塞,瘻孔などの症状を呈し,潰瘍性大腸炎では血性下痢,血便や粘血便を伴うことも多い.治療はアミノサリチル酸製剤をベースに重症例ではステロイド剤や免疫抑制剤,難治例ではインフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF-α抗体療法や血球成分除去療法が行われる(高添,2002;日比・久松,2012).クローン病では,経腸栄養法が寛解維持療法と位置づけられている(Akobeng & Thomas, 2007).内科的な治療に限界がある場合は外科的治療が行われ,特にクローン病の手術率は高く,発症後10年で7割(八尾ら,1992),再手術率も高いと報告されている(福島ら,1996).患者数は年々増加しており,H28年度医療受給者証所持者数は,クローン病患者42,789名,潰瘍性大腸炎患者167,872名であった(難病情報センター,2018).
両疾患は若年で発症することが多く,寛解や再燃を繰り返しながら長期の経過をたどる.将来への夢に向けて活動する若い時期に発症した患者の多くは,長い人生の中で何度か再燃を繰り返し,治療の選択に迫られ(Corey & Siege, 2009),仕事や家庭生活,社会生活を送る上で様々な影響を受ける.病因は未だ不明であり治療法も確定していない現段階において,治療や看護の目的は寛解を維持し患者のQOLを高めることにある.
QOLの概念は,1980年代から医療の分野でも急速に取り入れられ,疾患や障害を抱えながらもより良く生きることを医療のエンドポイントとして重要視されてきた.看護学においてもQOLは主要な概念として位置づけられ,高齢者や慢性疾患,障害を有する人々,そして炎症性腸疾患患者(Knowles et al., 2018a)を対象とした研究のアウトカムとしても多く用いられている.また看護理論においてもQOLは看護のメタパラダイムと重なる概念として捉えられ,ホリスティックな視点は患者個々の生活を理解することに役立つとされている(Plummer & Molzahn, 2009).QOLの概念は多義的であり安寧感,人生や生活の満足度,幸福感,生きがいなどの言葉で表現されることが多い(Haas, 1999).QOLの定義は未だ一律に示されてはいないが,QOLの概念分析において,QOLは個々の生活に対する文化やその人の価値観に基づいた主観的な評価であり,身体的・心理的・社会的・霊的側面を包括されていることが示されている(Kleinpell, 1991;Meeberg, 1993).また経済的,哲学的,倫理的な観点からも多面的に捉えられるが,医療や看護においては介入可能な範囲として健康関連QOL(HRQOL)が用いられることが多く(Taylor et al., 2008),疾患特異的QOL尺度の開発が,多くの疾患において進められている(池上ら,2001).
炎症性腸疾患の疾患特異的QOL尺度も欧米諸国で開発され,既に19の尺度が使われている(Chen et al., 2017).その中で,成人ではIBDQ-32(Guyatt et al., 1989)およびその短縮版SIBDQ(Irvine et al., 1994),小児ではIMPACT-III(Ogden et al., 2011)が世界的に翻訳され広く用いられている.IBDQ-32は日本でも翻訳され(Hashimoto et al., 2003),医学論文を中心に利用されている.IBDQは,潰瘍性大腸炎患者とクローン病患者が混在する97名のデータを用いてカナダで開発されたが,腹部症状と腹部症状による生活上の問題に偏っている傾向がある.また,これまでに国内では食事に関する問題が多く示されてきたが(赤松・竹村,2017;大日向・中村,2013;吹田・鈴木,2007),IBDQには食欲を問う1項目のみしかなく,食事に関する生活への影響を的確に評価できない.さらに日本では取り上げにくい性生活上の問題が3項目含まれている点や費用が掛かるなど使用しづらい点がある.
富田らはこれまで炎症性腸疾患患者を対象に自記式質問紙法によるQOL関連要因の探索的研究を行ってきた.これらの研究では,炎症性腸疾患患者のQOLを「病いを持ちながら生活するその人なりの生活に対して,主観的な満足感を得る程度であり,身体的・心理的・社会的側面からの影響を受けるもの」と操作的に定義し,身体的症状や食事,治療の生活背景,心理的側面,日常生活上の困難さや周囲からのサポートを含む社会的側面,および病いを持ちながらの生活において重要な疾患の管理をQOLの構成要素とした.初めにクローン病患者5名との面接調査と治療経験が豊富な医師1名,栄養指導に長年取り組んでいる管理栄養士1名および富田らの看護経験と既存の文献を参考にQOL関連要因102項目を設定した(富田,2008).クローン病患者を対象に,欠損値が20%を超える項目,平均値が10%以下に位置する項目,従属変数とした生活満足度10点評価との相関が±.200以内の項目を除外し,QOL関連項目計65項目に精選して分析し(富田,2004),その後の調査において23項目に減数化した(富田・片岡,2012).
富田らは炎症性腸疾患患者を対象とした研究を進める中で,病いを持ちながらの日々の生活をより適切に評価し,その人なりの生活に満足感を得ているかを測定できるQOL尺度が必要であると考えた.これまでの過程ではクローン病患者のみを対象としていたが,類似疾患として扱われることが多い潰瘍性大腸炎とクローン病の両疾患を含む炎症性腸疾患患者のQOL尺度を開発するために,両疾患を対象に再度データを収集することにした.本研究は,炎症性腸疾患患者のQOLを評価する尺度を開発し信頼性と妥当性を検証することを目的とした.
対象者は,研究参加の協力が得られた2病院(A・B)にクローン病または潰瘍性大腸炎で通院中の外来患者とした.A病院は炎症性腸疾患外来を有する総合病院,B病院は大学病院の消化器内科である.通常1~3か月に1度受診することを考慮し,4名の主治医から約3か月間質問紙を手渡すことを依頼した.質問紙は1回目と2回目に個人が特定できない同じ研究番号を付し,返信用封筒と共に対象患者へ配布した.2回目は約2週間をあけて回答し,1回目,2回目の質問紙を別々に直接研究者へ郵送することを求めた.
調査期間は,A病院は2014年1月~6月,B病院は2017年8月~10月であった.A病院とB病院の調査の間に「難病の患者に対する医療等に関する法律」が施行され,医療費助成の上限が一部上がったが炎症性腸疾患患者には大きな変化はなく,治療法は変わっていない.
2. 調査内容基本属性として性別,年代,現在の社会活動,治療内容,手術歴,治療年数,尺度項目として23項目に減数化した項目に因子分析の取捨選択で除外されたが重要であると考えた項目を残した30項目を尺度原案として用いた.尺度項目の回答は,症状「1:症状がなかった,または苦痛ではなかった」「2:あまり苦痛ではなかった」「3:少し苦痛」「4:多少苦痛」「5:かなり苦痛」「6:非常に苦痛」,他の項目は質問文に合わせて「1:全くなかった」「2:あまりなかった」「3:少しあった」「4:時々あった」「5:かなりあった」「6:いつもあった」または「1:全くそうではない」「2:あまりそうではない」「3:少しそうだ」「4:まあまあそうだ」「5:かなりそうだ」「6:非常にそうだ」の6段階評定とした.
基準関連妥当性を確認するため,QOLとの関連が予測される主観的健康度と生活満足度の10点評価,SF-8を外的基準とした.主観的健康度(杉澤・杉澤,1995)と生活満足度(Janke et al., 2004)10点評価はIBDQ(Guyatt et al., 1989)にも含まれ,単一評価項目は多くの研究でも用いられている(Cheung & Lucas, 2014).SF-8TM(Short Form-8)は,8つの概念と身体的サマリースコア(PCS),精神的サマリースコア(MCS)をスコアリングプログラムによって算出することができる(福原・鈴鴨,2004).信頼性と妥当性が検証されたQOL尺度としてSF-8TM スタンダード版を使用登録申請の上で用いた.
3. 分析方法 1) 分析手順これまでの富田ら(2005)の研究では,クローン病患者と潰瘍性大腸炎患者では,クローン病患者の方が食事に関する項目の得点が低いことが明らかになっている.炎症性腸疾患として共に扱われることが多いが,年齢や性比率,治療法,手術率,再燃率にも違いがある.そこで全患者のデータを用いて尺度の妥当性と信頼性を検証し,次に同じ項目を用いて疾患別にも分析した.
2) 項目分析および因子分析による項目の選定平均値と標準偏差から,天井効果およびフロア効果を認めた項目と尖度歪度±1.5以上,項目間の相関係数は.9以上,IT相関は.3以下を除外の目安とした.生活満足度10点評価と負の相関を示す項目は逆転項目として処理し,因子分析を最尤法,プロマックス回転にて探索的に行い,因子負荷量.4以上を目安に2因子に重複する項目がないかを確認しながら分析を繰り返し,項目を取捨選択した.G-P分析は合計点の上位群と下位群で分け,各項目について各群間の差をt検定にて求め,有意差のなかった項目を除外することとした.
3) 信頼性と妥当性の検証内的整合性の確認のため,尺度合計と各下位因子のCronbachのα係数を算出した.再テスト法では,1回目と2回目の尺度の合計点の級内相関係数を2要因ランダム効果モデルにて算出した.
基準関連妥当性を検証するために,外的基準とした主観的健康度および生活満足度の10点評価,SF-8の身体的サマリースコア,精神的サマリースコアと本尺度合計点および下位尺度得点とのピアソンの積率相関係数を算出した.構成概念妥当性を確認するために,探索的因子分析と,探索的因子分析にて抽出された5因子19項目の一次因子モデルにて確証的因子分析を行った.以上について疾患別にも同様に行った.
4) 統計処理統計処理には,統計ソフトSPSS.Ver24およびAmos.Ver22を使用し,有意水準を5%とした.
5) 倫理的配慮調査は匿名にて行った.書面にて調査の目的と方法,自由意思での参加,拒否による不利益がないこと,再テストでの連結を可能にするための個人を特定できない研究番号の符号などについて説明し,質問紙には同意に対するチェック欄を設け,同意の確認を行った.本研究は昭和大学保健医療学部倫理委員会(承認番号:403),四国大学研究倫理審査専門委員会(承認日:H25年1月7日)の承認を得て行った.
質問紙を計460部配布し,321名より回答を得た(回収率69.8%).50%以上の無回答があった2名を除外して分析対象を319名とした(有効回答率69.3%).調査施設によりいくつかの項目で差が見られたが,施設によって2疾患の占める割合に違いがあるため,疾患別に2施設を比較したところ,各項目に有意な差はなかった.
1. 対象者の属性(表1)対象者は319名の内,クローン病222名,潰瘍性大腸炎97名であった.研究協力機関A病院の医師3名がクローン病を専門としているためにクローン病患者の方が多かった.対象者の属性を表1に示す.男性200名(63%),40歳代が最も多く96名(30%),フルタイム就労149名(47%),パート就労52名(16%)であった.治療内容は5-ASA薬(アミノサリチル酸製剤)248名(78%),抗TNF-α抗体療法(抗サイトカイン療法)93名(29%),在宅経腸栄養法142名(45%),手術経験あり154名(48%)であった.
| 合計(n = 319) | クローン病(n = 222) | 潰瘍性大腸炎(n = 97) | ||
|---|---|---|---|---|
| n(%) | n(%) | n(%) | ||
| 性別 | 男性 | 200(63%) | 164(74%) | 36(37%) |
| 女性 | 119(37%) | 58(26%) | 61(63%) | |
| 年代 | 20歳未満・20歳代 | 52(16%) | 45(20%) | 7(7%) |
| 30歳代 | 82(26%) | 70(32%) | 12(12%) | |
| 40歳代 | 96(30%) | 67(30%) | 29(30%) | |
| 50歳以上 | 84(26%) | 40(18%) | 44(45%) | |
| 無回答 | 5(2%) | 0(0%) | 5(5%) | |
| 現在の社会活動 | ||||
| 就労(フル・パート)・就学 | 219(69%) | 157(71%) | 62(64%) | |
| 家事・在宅療養中(無職) | 89(28%) | 59(27%) | 30(31%) | |
| 無回答 | 11(4%) | 6(3%) | 5(5%) | |
| 治療内容 | ||||
| 5-ASA薬注1) | 248(78%) | 168(76%) | 80(82%) | |
| 免疫抑制剤 | 98(31%) | 68(31%) | 30(31%) | |
| 抗TNF-α抗体療法注2) | 93(29%) | 84(38%) | 9(9%) | |
| 在宅経腸栄養法 | 142(45%) | 142(64%) | 0(0%) | |
| 開腹手術あり | 154(48%) | 149(67%) | 5(5%) | |
| 治療年数 | 13.5 ± 10.1年 | 14.3 ± 9.4年 | 12.0 ± 11.2年 |
注1)5-アミノサリチル酸製剤(5-aminosalicylic acid)
注2)抗サイトカイン療法(Anti-Tumor Necrosis Factor-Alpha therapy)
尺度原案30項目について生活満足度10点評価と負の相関を示す項目を逆転項目として処理した.尖度歪度が±1.5を超える項目はなかったが,症状が安定している外来患者が対象であったため,身体的側面の症状3項目と心理的側面の2項目が天井効果に該当した.IT相関は.231~.809であり,.30未満の項目が1項目存在した.GP分析は,すべての項目で上位群と下位群に有意な差が認められた.項目分析により6項目が除外対象であったが,身体的側面の項目はQOL測定に欠かせないため残して27項目にて分析した.
| 全体n = 319 平均値±SD |
歪度 | 尖度 | 天井効果 | フロア効果 | I-T相関 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 身体的側面 | |||||||||
| 〇 | 1 | 【r】 | 腹痛 | 5.0 ± 1.3 | –1.2 | 0.5 | 6.3 | 3.7 | .462 |
| 〇 | 2 | 【r】 | 下痢 | 4.7 ± 1.5 | –0.8 | –0.6 | 6.3 | 3.2 | .496 |
| 3 | 【r】 | 倦怠感 | 4.7 ± 1.5 | –0.8 | –0.7 | 6.2 | 3.2 | .564 | |
| 心理的側面 | |||||||||
| 4 | 【r】 | 焦りを感じる | 4.1 ± 1.5 | –0.4 | –1.0 | 5.6 | 2.5 | .473 | |
| 〇 | 5 | 【r】 | 気分が落ち込んでいる | 4.0 ± 1.4 | –0.1 | –0.9 | 5.4 | 2.6 | .604 |
| 〇 | 6 | 【r】 | 将来の生活設計ができない | 4.0 ± 1.7 | –0.3 | –1.2 | 5.7 | 2.3 | .801 |
| 〇 | 7 | 【r】 | 病気に振り回されていると感じる | 4.0 ± 1.6 | –0.4 | –1.0 | 5.6 | 2.4 | .778 |
| 8 | 【r】 | 病気がもっと悪くなるのではないか | 3.9 ± 1.5 | –0.2 | –1.0 | 5.3 | 2.4 | .746 | |
| 9 | 【r】 | ひとり取り残された気分だ | 4.6 ± 1.5 | –0.9 | –0.3 | 6.1 | 3.0 | .662 | |
| 10 | 【r】 | 病気のせいでイライラする | 4.6 ± 1.5 | –0.9 | 0.0 | 6.1 | 3.2 | .705 | |
| 11 | 【r】 | 将来が不安 | 4.0 ± 1.6 | –0.4 | –0.9 | 5.6 | 2.4 | .809 | |
| 〇 | 12 | 【r】 | 好きなものを食べることができない | 3.9 ± 1.7 | –0.3 | –1.2 | 5.6 | 2.3 | .628 |
| 〇 | 13 | 【r】 | 食べると病気が悪くなりそうで不安 | 3.9 ± 1.7 | –0.3 | –1.1 | 5.6 | 2.3 | .664 |
| 社会的側面 | |||||||||
| ・日常生活上の困難さ | |||||||||
| 〇 | 14 | 【r】 | 自分で満足のいくように仕事(学業・家事)ができない | 4.1 ± 1.7 | –0.5 | –1.0 | 5.8 | 2.5 | .758 |
| 〇 | 15 | 【r】 | 病気があることで仕事上不利なことがある | 4.1 ± 1.7 | –0.5 | –1.1 | 5.8 | 2.4 | .656 |
| 16 | 【r】 | 病気があるために経済的な不安がある | 3.9 ± 1.8 | –0.3 | –1.2 | 5.6 | 2.1 | .674 | |
| 17 | 【r】 | 友人や同僚との付合いに支障がある | 4.3 ± 1.6 | –0.6 | –0.8 | 5.9 | 2.6 | .725 | |
| 〇 | 18 | 【r】 | 他の人と食べる楽しみを分かち合えない | 4.2 ± 1.7 | –0.5 | –1.0 | 5.9 | 2.5 | .641 |
| 〇 | 19 | 【r】 | 外食ができない | 4.4 ± 1.5 | –0.8 | –0.7 | 5.9 | 2.9 | .577 |
| 〇 | 20 | 【r】 | 外出中トイレに困る | 3.7 ± 1.8 | –0.2 | –1.3 | 5.5 | 1.9 | .615 |
| ・サポート | |||||||||
| 〇 | 21 | 家族や友人などに病気の悩みを打ち明けられる人がいる | 4.3 ± 1.5 | –0.5 | –0.7 | 5.7 | 2.8 | .449 | |
| 〇 | 22 | 周囲の人は,私の病気について理解してくれている | 4.0 ± 1.3 | –0.2 | –0.5 | 5.4 | 2.7 | .524 | |
| 23 | 医療者は私の話を良く聞いてくれる | 4.6 ± 1.1 | –0.8 | 0.4 | 5.8 | 3.5 | .464 | ||
| 〇 | 24 | 体調の悪い時,看病してくれる人がいる | 4.1 ± 1.6 | –0.5 | –0.9 | 5.7 | 2.5 | .335 | |
| 25 | 治療に満足している | 4.3 ± 1.2 | –0.4 | –0.3 | 5.5 | 3.1 | .567 | ||
| 〇 | 26 | 私には心の支えになる人がいる | 4.2 ± 1.6 | –0.6 | –0.9 | 5.8 | 2.6 | .387 | |
| 疾患の管理 | |||||||||
| 〇 | 27 | 私は病気と上手く付き合っている | 4.1 ± 1.2 | –0.3 | –0.2 | 5.3 | 2.9 | .562 | |
| 28 | 私は疾患の知識がある | 3.9 ± 1.2 | –0.2 | –0.3 | 5.1 | 2.7 | .231 | ||
| 〇 | 29 | 私は病気を自己管理(セルフコントロール)することができる | 3.8 ± 1.2 | 0.0 | –0.2 | 4.9 | 2.6 | .415 | |
| 〇 | 30 | 病気があっても私は自分なりに生きることにがんばれる | 4.3 ± 1.2 | –0.4 | –0.3 | 5.5 | 3.0 | .467 | |
注)〇が採用した項目,【r】は逆転項目
回答は6段階順序尺度 症状は1=「症状なし・苦痛なし」,2=「あまり」,3=「少し」,4=「多少」,5=「かなり」,6=「非常に」苦痛
4~20までは,1=「全くなかった」,2=「あまりなかった」,3=「少しあった」,4=「時々あった」,5=「かなりあった」,6=「いつもあった」を逆転して算出
21~30までは,1=「全くそうではない」,2=「あまりそうではない」,3=「少しそうだ」,4=「まあまあそうだ」,5=「かなりそうだ」,6=「非常にそうだ」
27項目について固有値1以上を目安に,探索的に因子分析(最尤法,プロマックス回転)を繰り返し行った.分析の過程において因子負荷量.40未満,複数の因子に高い因子負荷量を示す項目をモニタリングしながら,できるだけシンプルな尺度を目指して8項目を除外し,最終的に5因子からなる19項目の尺度とした(表3).19項目に欠損値がないデータ数はクローン病患者217名,潰瘍性大腸炎患者83名,計300名であった.
第1因子は,QOL構成要素の社会的側面と心理的側面の中から抽出された食事に関する4項目で構成された.食事に関する不便さや不安に関する項目であり【食生活上の困難さ】と命名した.第2因子は5項目から構成され,生活上の不利益やそれに伴う心理的なダメージを示す項目であった.尺度原案までのプロセスにおいてQOLの構成要素とした社会的側面と心理的側面に該当する項目が一つの因子にまとまっており,【心理社会的生活への負担】と命名した.第3因子は,QOL構成要素の社会的側面のサポートと一致した項目で構成された.心の支えや理解をしてくれる人などサポートに関する項目であり,これを【周囲からのサポート】と命名した.第4因子は,下痢と腹痛症状に対する苦痛の程度を表す項目と下痢による社会生活への影響の3項目で構成され,これを【症状の苦痛】と命名した.第5因子は,自己管理や前向きさなどに関するQOL構成要素の疾患の管理と一致した項目で構成された.これを【病いとの付き合い】と命名した.
| 第1因子 | 第2因子 | 第3因子 | 第4因子 | 第5因子 | 共通性(因子抽出後) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 19項目合計 α = .914 | ||||||||
| 第1因子【食生活上の困難さ】 α = .927 | ||||||||
| 12 | 【r】 | 好きなものを食べることができない | .956 | –.035 | .019 | .002 | –.052 | .837 |
| 18 | 【r】 | 他の人と食べる楽しみを分かち合えない | .917 | –.044 | .062 | .060 | –.052 | .828 |
| 19 | 【r】 | 外食ができない | .841 | .007 | –.003 | –.036 | .006 | .694 |
| 13 | 【r】 | 食べると病気が悪くなりそうで不安 | .784 | .094 | –.098 | –.042 | .080 | .713 |
| 第2因子【心理社会的生活への負担】 α = .905 | ||||||||
| 14 | 【r】 | 自分で満足のいくように仕事(学業・家事)ができない | .022 | .991 | –.031 | –.065 | –.064 | .858 |
| 15 | 【r】 | 病気があることで仕事上不利なことがある | –.035 | .917 | –.111 | –.030 | .015 | .719 |
| 6 | 【r】 | 将来の生活設計ができない | –.039 | .829 | .149 | –.069 | –.026 | .688 |
| 7 | 【r】 | 病気に振り回されていると感じる | .103 | .598 | –.010 | .232 | .047 | .707 |
| 5 | 【r】 | 気分が落ち込んでいる | .036 | .558 | .113 | .084 | –.017 | .452 |
| 第3因子【周囲からのサポート】 α = .801 | ||||||||
| 26 | 私には心の支えになる人がいる | .031 | .043 | .785 | –.081 | –.014 | .635 | |
| 21 | 家族や友人などに病気の悩みを打ち明けられる人がいる | .028 | –.021 | .754 | –.016 | .021 | .582 | |
| 24 | 体調の悪い時,看病してくれる人がいる | –.073 | –.029 | .657 | .151 | –.069 | .392 | |
| 22 | 周囲の人は,私の病気について理解してくれている | .009 | .028 | .598 | .024 | .148 | .502 | |
| 第4因子【症状による苦痛】 α = .710 | ||||||||
| 1 | 【r】 | 下痢 | –.066 | –.080 | .031 | .997 | –.023 | .867 |
| 2 | 【r】 | 腹痛 | .065 | .030 | .079 | .587 | –.051 | .397 |
| 20 | 【r】 | 外出中トイレに困る | .076 | .242 | –.135 | .402 | .150 | .449 |
| 第5因子【病いとの付き合い】 α = .791 | ||||||||
| 27 | 私は病気と上手く付き合っている | .021 | –.049 | –.008 | .069 | .871 | .773 | |
| 29 | 私は病気を自己管理(セルフコントロール)することができる | –.057 | –.060 | –.010 | –.010 | .756 | .473 | |
| 30 | 病気があっても私は自分なりに生きることにがんばれる | .028 | .112 | .107 | –.126 | .612 | .512 | |
| 因子相関 第1因子【食生活上の困難さ】 | .665 | .326 | .431 | .501 | ||||
| 第2因子【心理社会的生活への負担】 | .417 | .499 | .604 | |||||
| 第3因子【周囲からのサポート】 | .158 | .506 | ||||||
| 第4因子【症状による苦痛】 | .417 | |||||||
| 第5因子【病いとの付き合い】 | ||||||||
注)最尤法,プロマックス回転による探索的因子分析
疾患別に同様の項目で探索的因子分析を行ったところ,いずれも5因子構造となったが,クローン病患者データでは因子負荷量が.4に達しない項目(「周囲の人は,私の病気について理解してくれる.378)が1項目あり,潰瘍性大腸炎患者データでは「外出中トイレに困る」が第4因子【症状の苦痛】ではなく,【心理社会的生活への負担】に収束された.
4. 尺度の記述統計量(表4)QOL19項目合計の記述統計量は,平均値80.1 ± 18.0であり,天井効果やフロア効果は生じなかった.因子毎の得点は 【食生活上の困難さ】4項目16.9 ± 5.9,【心理社会的生活への負担】5項目20.6 ± 6.8,【周囲からのサポート】4項目16.7 ± 4.8,【症状の苦痛】3項目13.5 ± 3.7,【病いとの付き合い】3項目12.3 ± 2.9であった.クローン病と潰瘍性大腸炎の違いは表4に示す.
| 項目数 | 記述統計量 | 信頼性 | 基準関連妥当性 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平均値±SD | フロア効果 | 天井効果 | 歪度 | 尖度 | α係数 | 主観的健康感 | 生活満足度 | SF-8 | |||
| PCS(身体) | MCS(精神) | ||||||||||
| QOL19項目合計(全体)n = 300 | (19) | 80.1 ± 18.0 | 62.0 | 98.1 | –0.3 | –0.5 | .914 | .572 | .731 | .388 | .711 |
| 第1因子【食生活上の困難さ】 | (4) | 16.9 ± 5.9 | 11.0 | 22.8 | –0.5 | –0.9 | .927 | .480 | .544 | .264 | .592 |
| 第2因子【心理社会的生活への負担】 | (5) | 20.6 ± 6.8 | 13.9 | 27.4 | –0.4 | –0.8 | .905 | .529 | .705 | .338 | .736 |
| 第3因子【周囲からのサポート】 | (4) | 16.7 ± 4.8 | 11.9 | 21.5 | –0.3 | –0.5 | .801 | .268 | .384 | .200 | .328 |
| 第4因子【症状の苦痛】 | (3) | 13.5 ± 3.7 | 9.9 | 17.2 | –0.6 | –0.6 | .710 | .429 | .479 | .438 | .459 |
| 第5因子【病いとの付き合い】 | (3) | 12.3 ± 2.9 | 9.3 | 15.2 | –0.1 | 0.4 | .791 | .409 | .546 | .237 | .434 |
| QOL19項目合計(クローン病)n = 217 | (19) | 77.7 ± 17.6 | 60.1 | 95.3 | –0.2 | –0.6 | .906 | .561 | .726 | .330 | .716 |
| 第1因子【食生活上の困難さ】 | (4) | 15.8 ± 5.9 | 9.9 | 21.7 | –0.3 | –1.0 | .913 | .472 | .528 | .241 | .607 |
| 第2因子【心理社会的生活への負担】 | (5) | 20.0 ± 6.8 | 13.2 | 26.9 | –0.4 | –0.8 | .902 | .515 | .679 | .263 | .755 |
| 第3因子【周囲からのサポート】 | (4) | 16.5 ± 4.6 | 11.9 | 21.0 | –0.3 | –0.5 | .758 | .229 | .406 | .116 | .308 |
| 第4因子【症状の苦痛】 | (3) | 13.4 ± 3.6 | 9.7 | 17.0 | –0.5 | –0.7 | .701 | .422 | .469 | .442 | .417 |
| 第5因子【病いとの付き合い】 | (3) | 12.0 ± 2.9 | 9.1 | 14.9 | –0.2 | 0.6 | .775 | .384 | .500 | .185 | .364 |
| QOL19項目合計(潰瘍性大腸炎)n = 83 | (19) | 86.1 ± 17.9 | 68.3 | 104.0 | –0.7 | 0.4 | .929 | .595 | .732 | .538 | .730 |
| 第1因子【食生活上の困難さ】 | (4) | 19.9 ± 4.8 | 15.1 | 24.8 | –1.2 | 0.6 | .942 | .514 | .572 | .341 | .638 |
| 第2因子【心理社会的生活への負担】 | (5) | 22.2 ± 6.4 | 15.8 | 28.6 | –0.7 | –0.4 | .909 | .549 | .763 | .533 | .713 |
| 第3因子【周囲からのサポート】 | (4) | 17.2 ± 5.3 | 11.9 | 22.5 | –0.4 | –0.5 | .889 | .326 | .322 | .379 | .359 |
| 第4因子【症状の苦痛】 | (3) | 14.0 ± 3.7 | 10.2 | 17.7 | –0.7 | –0.4 | .741 | .431 | .494 | .429 | .535 |
| 第5因子【病いとの付き合い】 | (3) | 12.9 ± 2.9 | 9.9 | 15.8 | 0.2 | –0.5 | .819 | .444 | .649 | .358 | .572 |
注)基準関連妥当性の数値は,外的基準と各因子とのピアソンの積率相関係数を示す.
QOL尺度19項目の尺度全体のα係数は.914,第1因子.927,第2因子.905,第3因子.801,第4因子.710,第5因子.791であった.再テストでは,1回目と2回目の尺度合計点の2要因ランダム効果モデルによる級内相関係数は.820であり,再現性が認められた.
6. 妥当性基準関連妥当性を確認するために,19項目の合計得点と基準変数とした生活満足度,主観的健康感,SF-8のPCS(身体的サマリースコア)およびMCS(精神的サマリースコア)とのピアソンの積率相関係数を算出した(表4).SF-8のPCSおよびMCSは,スコアリングシートを用いて計算した.QOL19項目合計点との相関係数(全体/クローン病/潰瘍性大腸炎)は,主観的健康感とr = .572/.561/.595,生活満足度とr = .731/.726/.732,PCSとr = .388/.330/.538,MCSとr = .711/.716/.730であった.因子別では,【食生活上の困難さ】はPCS,【周囲からのサポート】は主観的健康感とPCS,【病いとの付き合い】は,PCSとの相関がやや弱かった(表4).
構成概念妥当性を確認するために,探索的因子分析にて抽出された5因子19項目の一次因子モデルにて確証的因子分析を行った結果,モデル適合度指標はGFI = .866,AGFI = .821,CFI = .918,RMSEA = .081であった.因子間の標準化推定値は.216~.672,因子と項目間は.624~.911であった.
本研究では,これまで富田らが行ってきた炎症性腸疾患患者を対象としたQOLの研究を基に,炎症性腸疾患患者の生活を評価するQOL尺度を開発した.
1. 尺度の構成因子分析の結果から,QOL尺度は,【食生活上の困難さ】,【心理社会的生活への負担】,【周囲からのサポート】,【症状の苦痛】,【病いとの付き合い】の5因子19項目の構成とした.初期段階では身体的側面,心理的側面,社会的側面,疾患の管理を下位概念としたが,心理面と社会面が統合され,食事に関する問題や周囲からのサポートが独立した因子として構成された.
【食生活上の困難さ】:炎症性腸疾患は消化管の炎症を引き起こす疾患であるため,食事の影響が大きい(赤松・竹村,2017,大日向・中村,2013,吹田・鈴木,2007).寛解期であれば普通食に近い食事が可能であるが,再燃期には腸管の安静を要し,特にクローン病患者は厳しい食事制限を強いられる.食事による病状の悪化を心配し,好きなものを好きなだけ食べるという欲求が満たされない状況にある.それは単なる食欲の問題だけではなく,家族や友人と食事を楽しむことにも影響し,QOLの低下をもたらす(富田ら,2005).国内では,クローン病において経腸栄養法がプライマリーセラピーとされ,寛解期であっても経腸栄養法と食事療法を継続する患者も多い(富田ら,2002).そのため寛解期には食事制限がない潰瘍性大腸炎患者とクローン病患者との比較ではクローン病患者の方が食生活上の困難さを感じていた.
【心理社会的生活への負担】:炎症性腸疾患患者の多くは生産年齢にあり,疾患に基づく不安や悩みを持ちつつも社会生活を送っている(河内ら,2016;那須ら,2016;藪下,2011).社会面と心理面は密接に関わり,心理的問題は疾患そのものによる辛さだけではなく,疾患を抱えながら社会的役割を果たすことや仕事上の不利益が心理的なダメージをもたらすために一つの因子に集約されたと考える.再燃期には,自分の思うように仕事ができなくなり,焦りや落ち込みをもたらし,身体をコントロールできないジレンマから苛立ちを感じることもあろう.生活満足度やSF-8の精神的サマリースコアとの相関が最も強い因子であり,QOLに負の強い影響を与えている.
【周囲からのサポート】:サポートに関する項目は,橋本ら(1999)が行ったクローン病患者のQOLモデルやがん患者のQOL尺度FACT-G(Cella et al., 1993;池上ら,2001)にも含まれている.炎症性腸疾患患者が病いを抱えながらも社会的役割を遂行していく上で,周囲からのサポートは欠かせない(工藤,2011).比較的若い患者が多く,周囲に理解され体調の悪い時には看病をしてくれる人や悩みを打ち明け心の支えになる人の存在は患者に勇気をもたらす.【心理社会的生活への負担】や【病いとの付き合い】との因子相関が強く,【症状による苦痛】との相関は弱かった.寛解期であっても周囲からのサポートは病いを持ちながらの生活に影響することが伺え,QOLを評価するうえで必要な項目であると考える.
【症状の苦痛】:炎症性腸疾患患者の主症状である腹痛と下痢は長期にわたって続く患者が多い.特に難治性の下痢に悩まされ,移動中のトイレや勤務先での排泄など外出中はトイレに困ることが多い.【食生活上の困難さ】や【心理社会的生活への負担】との因子相関が強く,食事や社会生活,心理的なダメージにも影響をしていることが考えられる.
【病いとの付き合い】:炎症性腸疾患患者にとってセルフケアは寛解期を維持するために重要であり(布谷ら,2012),疾患を自己管理しながら病気と上手く付き合うことは,QOLを高め前向きさをもたらす(富田,2004).他の因子全てとの因子相関が強く,症状や食事,心理社会生活上の困難を乗り越え,周囲からのサポートを受けることが,病いと上手く付き合いながら生きる力へとつながっていることが伺える.
以上,5つの因子19項目からなる本尺度は,病いと共にある炎症性腸疾患患者が社会的役割を果たしながら生活を営む中で,疾患に起因する社会生活や食生活の妨げを最小限にし,周囲からのサポートを受けながら病いと上手く付き合い自分の生活に満足感を得られているかを測定するものとなった.クローン病患者と潰瘍性大腸炎患者を比較すると19項目合計点はクローン病患者の方が低く,特に第2因子【食生活上の困難さ】に差があった.寛解期においてクローン病患者の方が,QOLが低い傾向がみられるのは既存の研究(Knowles et al., 2018b)と同様の結果であった.
2. 尺度の信頼性と妥当性尺度19項目の合計得点は,天井効果およびフロア効果は生じていなかったが,やや高い得点に偏る傾向がみられた.
信頼性の検討において全体および第1,第2因子のCronbachのα係数は高く,第3~5因子も許容範囲であり,内的整合性が認められた.また再テストの級内相関係数も.820と強い相関があり,尺度は適切に測定され安定した評価指標であると考える.
基準関連妥当性の検証において,尺度合計点と外的基準とした主観的健康感および生活満足度10点評価,SF-8との相関が認められ基準関連妥当性が確保された.特にQOLの指標となる生活満足度やSF-8の精神的サマリースコアとの相関が強かった.
構成概念妥当性について,探索的因子分析の結果から19項目の因子負荷量は.4以上の値を1因子のみに示していたが,確証的因子分析の結果からは適合度指標において基準値をやや下回っており(小塩,2014),構成概念妥当性については,今後さらなる検証が必要である.特に潰瘍性大腸炎患者のデータを用いた分析では,基準関連妥当性,信頼性はほぼ確保できたものの,構成概念妥当性には問題が残った.本研究では潰瘍性大腸炎患者のデータ数が不十分であり,今後検証していかなければならない.
3. 研究の限界と尺度の活用性および今後の課題本研究は,研究協力が得られた2病院のみの外来通院患者を対象に分析した.サンプリングに問題があることは否めない.本尺度は,信頼性については十分な結果が得られ,炎症性腸疾患患者の生活を安定的に評価しうる尺度となったが,構成概念妥当性において課題を残した.今後広く本尺度をお使いいただき,さらに精度を高めていく必要がある.また注意点としては,クローン病と潰瘍性大腸炎の患者ではクローン病患者の方がQOL尺度得点が低い傾向があり,【食生活上の困難さ】には明らかな違いがあることがあげられる.
炎症性腸疾患患者のQOL尺度は,19項目で【食生活上の困難さ】,【心理社会的生活への負担】,【周囲からのサポート】,【症状の苦痛】,【病いとの付き合い】の5因子から構成された.サンプリングに問題があり,構成概念妥当性にも一部課題を残したが,おおむね信頼性と妥当性が確認され,病いを抱えながら毎日を過ごす炎症性腸疾患患者のQOLを主観的に評価する尺度となった.
謝辞:本研究にご協力いただいた対象者の皆様に心から感謝申し上げます.また本研究にご協力いただいた医師の高添正和氏,河口貴昭氏,酒匂美奈子氏,竹内義明氏,看護師の福地本晴美氏,川上由香子氏,教員の鈴木浩子氏,管理栄養士の斎藤恵子氏に深く感謝申し上げます.
利益相反:本研究による利益相反は存在しない.
著者資格:MTは研究の全てを実施し,対象疾患の臨床経験が豊富なYKは項目作成と原稿への助言者として貢献した.すべての著者は原稿を読み,承認した.