Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Nursing Actions in Acute Care Hospital Settings to Continue with Care for Elderly People (Part 1: Nurses’ Perspective)
Yuko OharaNobuko KawaiKumiko KurodaAkiko SakamotoYuka IshiiHarue Masaki
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2019 Volume 39 Pages 202-210

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Abstract

目的:高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能を明らかにする.

方法:看護師16名を対象に半構成的面接を行い質的統合法(KJ法)にて分析した.

結果:コーディネート機能は,【他職種を含めたケア実践への動力:日頃の関わりから高齢者の望みや価値観を感性で捉え支える】,【他職種との連携・調整への動力:多角的視点での情報収集・現状判断と予測からの舵取り】,【高齢者の生き様を尊重したケア実践に向けた足固め:高齢者の全体像やケアの方向性一致・集約への働きかけ】,【よりよい連携に向けた足固め:互いの専門性の尊重と担当領域の見定め】,【高齢者をとりまく環境に対する調整:介護者へのケアや関係調整,地域住民への啓発】,【システム環境に対する調整:伝達をスムーズにする為の手段やルートの構築】の6機能であった.

結論:コーディネート機能は「足固め-動力-調整」と「高齢者-他職種」からなる2軸構造となった.

Translated Abstract

Aim: This study aimed to identify actions that nurses take in acute care hospital settings to continue with care for elderly people.

Method: Sixteen nurses participated in semi-structured interviews. Interview data were analyzed using a qualitative synthesis method (KJ method) and then organized into groups representing the targeted nursing actions.

Results: The following six actions were extracted from the interview data. 1) Encourage your healthcare professional team to pay attention to elderly people’s hopes or values based on their everyday interactions. 2) Encourage collaboration between healthcare professionals by sharing information about elderly people from multiple perspectives and discussing possible treatments. 3) Gain a foothold for elderly care by respecting their own way of living and ensuring other healthcare professionals consider elderly people as human beings. 4) Gain a foothold for healthcare professionals’ work by respecting individual specialties and determining their area of responsibility. 5) Control the environment around elderly people by supporting caregivers, adjusting the relationship between an elderly person and his/her caregiver and informing general citizens. 6) Control the environment around healthcare professionals by creating a system to communicate smoothly.

Conclusions: Actions 1) and 2) represent “Encouraging”, actions 3) and 4) represent “Gaining a foothold” and actions 5) and 6) represent “Controlling the environment”. Furthermore, actions 1), 3) and 5) targeted elderly people and actions 2), 4) and 6) targeted healthcare professionals. Therefore, we found two axes of nursing actions: “Encouraging–Gaining a foothold–Controlling the environment” and “Elderly people–Healthcare professionals”.

Ⅰ. はじめに

政府は,超高齢社会に向けた政策として,医療機能の分化・強化ならびに,医療機関間あるいは医療・介護施設間の役割分担と連携による効率化,地域包括ケアシステムの構築を推し進めている(厚生労働省,2017).今後,複数の疾患や障害を併せ持ち生活する高齢者を,地域や在宅が中心となって支える傾向は強まるとみられている.多くの高齢者は複数の疾患を抱え,入退院を繰り返している.身体状態とそれに応じた生活状況の変化を繰り返す高齢者は,自ずと病院,施設,在宅など治療や療養の場を行き来することになる.こうした高齢者の特徴を踏まえると,高齢者が安心して一定した質の担保されたケアを受け続けるには,それぞれの場の保健医療福祉に携わる人々を結んでいく看護師のコーディネート機能が支援の要となる.

現在,病院では,退院支援部門に所属する看護師や退院調整を担う看護師が,治療・療養の場の移行におけるコーディネート機能を専門的に担っている.しかし,日常的に高齢者や家族と関わっているのは,こうした専門部署に属しない,病棟や外来の看護師である.坂井(2015)は「病棟看護師が退院支援に関する能力を身につけ,退院調整部署と病棟の効果的な協働システムを確立していくことが必要」と述べている.また,早い段階から退院後を見据えて関わる重要性から,平成30年度診療報酬改定では入院予定の患者に対する入院前からの支援が評価されることになった(厚生労働省,2018).したがって,病棟や外来に所属する看護師にはコーディネート機能を発揮し,治療・療養の場の移行を円滑にするような支援が期待されていく.特に地域で拠点となるような急性期病院は治療や療養の変化が生じる転機の場であることから,多様なコーディネート機能を必要とすると考えられる.

戸村ら(2013)は,退院支援看護師の実践能力を評価するための尺度を開発しているが,対象は退院支援部署に所属し退院支援業務を主とする看護師であり,病棟や外来に所属する看護師は含んでいない.また,この尺度ではコンピテンシーを理論的基盤におき「退院支援のプロセス」と「病院内外のスタッフとの連携」を枠組みに構成し職務行動を示しているが,両者の構造は示されておらず,対象となる患者像も特定はしていない.臨床現場では,各病棟・外来ごとに退院支援を担う看護師を配置したり(山田,2012),病棟看護師を対象に退院支援・調整に関する研修を実施する施設が現れてきており(岡田ら,2016),退院支援や在宅療養移行支援における看護師の看護実践内容も報告されている(大森ら,2015品川・黒田,2017長嶋,2017).さらに,病棟看護師を対象とした研修プログラムが作成され退院支援にあたって行うべき支援内容が示され,それがどの程度実施されたのかの評価尺度も開発されている(坂井,2015).Jeffs et al.(2017)は,「患者・家族・ケア提供者に対するセルフマネジメントスキルに関する教育」等11の効果的な看護師主導の移行支援内容を特定している.しかし,高齢者ケアが継続されるよう他職種・他機関との連携において,病棟や外来の看護師がそれらの支援内容をどのように実践しているのか,そして支援内容の実践においてどのような働きを担っているのかといった,果たしている機能については明らかにされていない.このコーディネート機能を明らかにすることは,その支援内容が何に繋がり,どのような意味をもつのかを示すことに貢献すると考える.また,地域保健や社会福祉領域において用いられる「ケアマネジメント」「ケアコーディネーション」が,ケア対象者にとってサービスの種類・程度が最適かどうかを判断し適切な時期に総合的に提供されるよう,主としてサービスの調整を行うものであるのに対し(平野,1997),本研究でのコーディネート機能はサービスの調整に留まらず,病棟や外来の看護師が,高齢者ケアを継続できるよう看護実践しながら,看護師と他の専門職とのコーディネート,他の専門職間のコーディネートをしていることに着目したものである.この多岐にわたる働きを明らかにすることは,病棟や外来看護師の看護実践の意味を導くものとして重要である.

そこで,本研究では高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能とその構造を,看護師自身の実践内容に基づいて明らかにすることを目的とした.

Ⅱ. 用語の定義

1. コーディネート機能

コーディネーションに関する文献(鈴木ら,2013日本看護協会,2007)を参考に,「コーディネート機能」を「高齢者がよりよく生活を送ることができるようにする為,異なる専門職の立場や役割の特性を引き出し調和させ,それぞれが効果的に機能しつつ,同じ目標に向かって全体の取り組みが有機的,統合的に行えるように,高齢者への働きかけも含んだ環境を整える働き」と定義する.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究対象者

研究対象者は,地域の拠点となる急性期病院に所属している看護師とした.複数の疾患や障害を併せ持つ高齢者が急性期病院の病棟や外来から療養の場が変化するにあたり,他の専門職と連携し必要なケアを継続できるよう援助をおこなった経験をもつ看護師として,対象施設の管理者から推薦を受けた者とした.専門看護師などの資格や職位は問わないが,退院支援・調整の専門部署に所属する看護師は除外した.なお,対象施設は,連携の多様性を考慮し,都市部と地方にある急性期病院を含むようにした.

2. データ収集期間

2015年11月~2016年7月

3. データ収集方法

都市部3施設,地方3施設それぞれに所属する看護師に協力を依頼し,静かで落ち着いた雰囲気の個室を選定し,安寧や職務遂行に悪影響がないよう対象者の都合のよい時間や場所を確認して,1名30~60分程度で半構成的面接を実施した.対象者には,他部署や他施設,他職種と連携することにより必要なケアを継続できた看護実践について,高齢者が抱える問題の背景,援助行為や他職種との連携活動とそのプロセスや手段,評価について語ってもらった.その際,その他職種を連携先として選んだ理由,その行為・活動を行おうと思った理由や感じたり考えたことについても尋ねるようにした.面接内容は同意を得て録音し逐語録にした.

4. データ分析方法

高齢者ケアにおいて関与する変数は多様であり複雑に関連し合っている.本研究では,こうした複雑な現象の中で,予め規定された分類枠を当てはめるのではなくデータのもつ意味を純粋に取り出すことでコーディネート機能を明らかにしようとすることから,現象の断片であるデータ群から統一した全体像をあらわすことができる質的統合法(KJ法)を用い(山浦,2012)分析した.分析手順は,まず逐語録の内容を繰り返し読み,「高齢者ケアの継続に向けた他職種との連携において果たしている看護師のコーディネート機能はどのようなものか」という視点で単位化し,1つのラベルは1つの志を示す文章とした.次に,相対的に類似するもの同士のラベルを集め,集まったラベルの全体感を表すような一文を表札としてつけた.同様の手順でラベル集め,表札づくりのグループ編成を繰り返し,これ以上集まらなくなった段階の表札を最終ラベルとした.最後に,最終ラベルを用い,そのラベル間の関係性に着目してラベルを配置し,ラベル同士の関係を記号と添え言葉で表し,その内容を端的に示すシンボルマークをつけ空間配置図とした.分析は質的統合法(KJ法)に精通した研究メンバー3名で行い分析の妥当性に努めた.

5. 倫理的配慮

千葉大学大学院看護学研究科倫理審査委員会の承認を得た後(承認番号27-40),対象者に研究目的と方法,匿名性の保持と個人情報の保護,研究参加への自由意思ならびに途中辞退の保障,またその場合も不利益を生じないことについて,書面と口頭で説明したうえで書面にて研究参加の同意を得た.研究の全過程において,研究参加の任意性,匿名性,安全性を確保し,得られたデータは厳重に管理した.

Ⅳ. 結果

1. 対象者の概要

対象者は,都市部3か所,地方3か所の急性期病院に所属している看護師16名であり,内訳は外来/病棟副看護師長9名(うち,1名はインタビュー時に副看護部長となったが研究依頼時ならびに語られた内容は副看護師長時のもの),外来/病棟看護師6名,看護部所属看護師1名であった.このうち,慢性疾患看護専門看護師の資格を有する者は2名,老人看護専門看護師の資格を有する者は2名であった.年齢は,22~55歳(平均39.8 ± 8.4歳),看護師としての経験年数は,3~32年(平均16.4 ± 8.0年)であった.インタビュー回数は各対象者1回で,時間は54~92分間(平均69.3 ± 11.4分間)であった.

2. 分析結果

分析には全対象者のラベル299枚を用い,多段ピックアップ法(山浦,2012)にて155枚となったラベルを7段階に渡ってグループ編成を繰り返し,最終的に6つのシンボルマークとなった.なお,文中の【 】はシンボルマーク,[ ]は最終ラベル,「 」はローデータを示す.以下,空間配置図について説明したのち,6つのシンボルマークごとに説明する.

1) 看護師のコーディネート機能の空間配置図

看護師のコーディネート機能には2つの軸が存在した(図1).

図1

高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能

1つは,高齢者ケアの継続と,それに向けて他職種と連携するための「足固め」,それを土台とした「動力」,そしてさらに看護師から他職種あるいは高齢者周囲へと拡張させていく「調整」といった「足固め-動力-調整」機能からなる軸である.「足固め」は,他職種との【よりよい連携に向けた足固め】である【互いの専門性の尊重と担当領域の見定め】機能と【高齢者の生き様を尊重したケア実践に向けた足固め】である【高齢者の全体像やケアの方向性一致・集約への働きかけ】機能で,これらは相互に補強し合っていた.「動力」は,【他職種を含めたケア実践への動力】である【日頃の関わりから高齢者の望みや価値観を感性で捉え支える】機能と【他職種との連携・調整への動力】である【多角的視点での情報収集・現状判断と予測からの舵取り】機能を両面とし中核となった.「調整」では,看護師は【システム環境に対する調整】である【伝達をスムーズにする為の手段やルートの構築】機能と【高齢者をとりまく環境に対する調整】である【介護者へのケアや関係調整,地域住民への啓発】機能を担い,これらも相互に補い合う関係であった.

もう1つの軸は,「高齢者」に向けた視座と「他職種」に向けた視座からなる「高齢者-他職種」それぞれを中心に働きかける機能の軸である.これには,【高齢者の生き様を尊重したケア実践に向けた足固め:高齢者の全体像やケアの方向性一致・集約への働きかけ】【他職種を含めたケア実践への動力:日頃の関わりから高齢者の望みや価値観を感性で捉え支える】【高齢者をとりまく環境に対する調整:介護者へのケアや関係調整,地域住民への啓発】へと繋がる,「高齢者に対してどうケアしていくか」といった視座と,【よりよい連携に向けた足固め:互いの専門性の尊重と担当領域の見定め】【他職種との連携・調整への動力:多角的視点での情報収集・現状判断と予測からの舵取り】【システム環境に対する調整:伝達をスムーズにする為の手段やルートの構築】へと繋がる,「他職種に対してどうアプローチしていくか」の視座が作る軸であった.

2) 6機能からなる看護師のコーディネート機能

(1) 【他職種を含めたケア実践への動力:日頃の関わりから高齢者の望みや価値観を感性で捉え支える】機能

これは,[他職種を含めたケアの中で,高齢者に添うという関わりを基盤として,定まった方法ではなく,日頃のケアの中で高齢者・家族の望みや価値観を感性で捉え,自信やプライドが保たれるよう高齢者・家族の影となって支えていく]というものである.看護師は,時間がない中でも特別な関わりを通してではなく,高齢者と何気ない普段の会話を通して関わりを持つよう心がけており,会話の中にある高齢者の背景・望むあり方や体調の変化などを自然に把握しケアに繋げることを大切にしていた.そして,ささやかな変化であれば見守り,直感的にいつもと異なる様子を捉えて関わるようにしたり,異変があれば他職種に発信したりしていた.

「普段の会話を大事にすればよかった.(自宅に)帰りたいか帰りたくないかよりも,おうちの話とか他愛もない話でキャッチしなきゃいけない部分もありそうだった.犬をどうしても最期見たいっていうのも,そういえば犬のこと言ってたよねみたいなのをちらちら言う.それを何かそこに繋げていったりだとかする事の大事さを学べた.」

「毎回看護メモをしてるかっていうとそうじゃなくて,外来の待合に行って,『こんにちは,どう?』っての会話だけだと思います.その中で,何かちょっといつもより何か太ってたし,とか反応が悪かったみたいとか,ちょっと臭うねとか,いつもついてくる家族が今日はついてこなかったねと.何かピンときておかしいからちょっと呼んでみる.」

(2) 【他職種との連携・調整への動力:多角的視点での情報収集・現状判断と予測からの舵取り】機能

これは,[他職種や他施設との連携は看護師が様々なものを活用して積極的に情報をとり,多角的に高齢者の現状を判断し行く末を予測し,働きはじめることで始めていく]というものである.看護師は,せん妄になりそうか,フォロー上必要となるポイントは何か等,高齢者の個々の状況に対応できるだけの疾患や治療経過への視点をもち,先を予測しながら,いかに情報を得て,どの時期にどのようにして,どの他職種や他部署に繋げていくかを見極めていた.一方で,生活への視点をもって,セルフケア能力やADL,高齢者・家族の思いや状況等ありとあらゆる側面から総合的に把握し関連づけ,そのアセスメント内容を他職種に伝えていた.

「(本人の清潔保持能力の見極めは)本人の理解力,普段の内服薬の管理とかの理解もそうですし,あとは手先の器用さとかそういうところ,あと清潔度合いですね.日ごろパンツとか汚れていても気にしないような人だったりするのかどうか,お風呂とかちゃんと清潔に入れたりしているのかどうか,あと本人に管理能力がいま一つかなと思っても,すごくよくやってくれる奥さんがいるとか……その情報を先生に伝えます.」

また,看護師は今後起こりうることを療養環境や病状から統合して予測し,その先に備えるため,他職種や高齢者・家族が二の足を踏んでいるようなことであっても高齢者・家族が安心して次の展開にスムーズに進めるように,情報収集したりケアの方策を考えたり今後関わることが予測される他職種が参入できるよう取り計らったりして,早めに手を打つ動きをしていた.そして,踏み出しにくいことであっても,次の展開を生む支援になると考え,在宅療養に関係する人々に看護師自らが積極的に交渉にあたったり,看護師が日々の状態をみる中で,帰れそうだと見通せたタイミングで,他職種・家族に働きかけるようにしていた.

「入院した時に全く情報がないのは避けたいなって(中略)ある程度治療が効かなくなった段階で情報を取っていく.」

「おそらく歩いて帰れるだろうというのは私の中ではあったんですが.(中略)お風呂だとか,この後ADLの予後的なことを考えると改修しておいたほうがいいだろうなというような予測と(中略)介護保険取れるかもしれないと,地域連携にその辺りの事情を話して(後略).」

「何が嫌で(サービスを)入れたくないのかとか,そういう部分を明らかにしないと先に進めないので聞き,ご家族・本人ができるだけ具体的に想像がつくように説明をして(後略).」

「何かあったらうちの病院にっていう関係性が(医師と患者に)できていた中で,やはり最期を苦しめないっていうことを考えると(中略)往診の先生とか訪問看護を入れたりとか,していきましょうと.」

(3) 【高齢者の生き様を尊重したケア実践に向けた足固め:高齢者の全体像やケアの方向性一致・集約への働きかけ】機能

これは,[高齢者にとって望みや生き様が尊重された人生となるよう高齢者や家族の意向を細やかに汲み取る一方で,異なるケアへのスタンスや高齢者の捉え方をもっている職種間での話し合いを重ね,高齢者の全体像やケアの方向性が一致・集約されていくよう働きかけている]というものである.看護師は,高齢者に残された時間の過ごし方については,病状コントロールの視点を押さえつつも高齢者が大切にしていることを最優先に生きてきた背景を踏まえて病気と生活を結び合わせ,家族や他職種とも合意のプロセスを歩みながら,高齢者にとって良い人生であるようにコーディネートしていた.

「口から食べられるという所が命取りになることも考えられるけども,グルメな人だから食べることを最優先に考えて,それでも初期対応が遅くならないように訪問看護と往診を入れるという所と,延命治療はしないという所を取り決めて,今後本当にどういうふうに医療を継続するかというのをお家で考えていきましょうという体制を作った.」

特に,必要な医療資源導入が難しかったり介護負担が大きかったりする時や,高齢者の病状や治療方針,療養が変化する時は,家族と医療者それぞれのスタンス・見解・価値観が一致せず難しい.しかし,看護師は表面化していない高齢者や家族の生活や人生,病気の捉え方,さらに本当の希望や意向を引出し,些細なものであっても他職種と共有することを,支援することの限界を検討するよりも大切にしていた.カンファレンスの中では高齢者の全体像を共有できるよう各職種が持っている情報をバランスよく集約するように,職種間で異なる情報が存在する場合には高齢者がどのような人で現状はどうなのか事実に基づいて理解されケアの方向性が共有されるように働きかけていた.

「価値と価値がぶつかってる状態じゃないですか.娘さん(介護者)もすごく揺れていて,おばあちゃん(患者)の気持ちすごく分かるんだけど,最期までできるだけお家で過ごすことがその方の良い最期っていうのになるとも思うんだけど,でももう無理なのって言うところを,患者さんにとって何が一番いいのかっていうのを,話し合おうって言って,カンファレンスを開こうと(看護師が)呼びかけました.」

(4) 【よりよい連携に向けた足固め:互いの専門性の尊重と担当領域の見定め】機能

これは,[高齢者が困らないよう実情に見合ったケアを継続していくために,仕事内容がオーバーラップする他職種との連携は,職種の専門性を尊重し,任せられる内容を見定め合いながら分担しつつフォローし合っていく]というものである.看護師は仕事の範囲が他職種とオーバーラップしており限定が難しく,看護師と他職種各々が異なる見解を持っているため任せきりや任されきりにならない認識にしたいと考えていた.そして,退院後の在宅ケアや外来サポートを他職種に委ねられるかどうか見定めながら,高齢者が困らないよう確実にケアが提供されるようにしていた.1人で抱え込まず他職種の専門性・持ち味を尊重し,それが発揮されるよう任せつつも経過は自らフォローしていた.

「本当にプロに任せるしかないですよね.(中略)これってこうなんだというのが分かってくるので自分の知識にもなる.全部任せっ切りじゃなくて『それってどうなの?』と聞いていると思います.」

(5) 【高齢者をとりまく環境に対する調整:介護者へのケアや関係調整,地域住民への啓発】機能

これは,[看護師の力が重要となる調整活動には,介護者(家族)へのケアや関係調整,地域住民への啓発など高齢者周辺の環境を整えていくことも含まれる]というものである.看護師は,対象となる高齢者にとどまらず,介護者(家族)など高齢者にかかわる周囲の人々の生活を整えることまで含めて調整していた.たとえば,介護者(家族)に認知症があることを見いだして支援したり,介護者(家族)の介護保険申請を支援したりしていた.また,介護が限界まできていたり1人で抱え込もうとしていたりするような介護者(家族)の思いをそれとなく察知して伝えたり話し合う場を設けたりと高齢者と介護者(家族)の間に入って両者を橋渡したり,さらに地域住民に地域包括ケアについて啓発しようとしていた.

「とてもじゃないけど(妻を介護しなくてはいけないので)自分は入院できない(中略),まだ(妻の)介護保険とかそういった手続きも全くしてないと言うので,地域医療連携部に連絡をして,奥さんのことをお願いして,本人は入院できるようにした.」

「(地域包括ケアの)制度はできたけど,実際には地域の準備が整ってなくて,さらに一般の方がわかっていないんです.特に田舎の過疎地の方とかは家族も本人もずっとここで見てもらえるもんだと思っています.そういう人たちが安心して帰ってもらえるのにはそういう啓蒙ですとか,看護師の力がすごく大事なんじゃないかな.」

(6) 【システム環境に対する調整:伝達をスムーズにする為の手段やルートの構築】機能

これは,[最低限必要な情報を取り逃がすことのない伝達手段や,メールやカンファレンスの発動などは,看護師が表だってなくてもシステム化するよう看護師がルートづくりを担っている]というものである.看護師は,情報の量や質が充実していることだけでなく最低限必要な情報を取り逃がさないことも重視しており,その伝達方法をルール化,システム化していくようにしていた.また,情報共有シートの運用状況を見守ったりメールやカンファレンスの発動等自分が表には出ない形で,現場で生じる軋轢を看護師が他職種とのパイプ役になることで見守ったり関係をとりもったりしていた.

「病棟の看護師さんもやっぱりサマリーをタイムリーに入れられないので,例えば在宅物品を提供しなくちゃいけないような方,地域医療連携部に介入してもらって問題がある方に関してはIDと名前だけでいいので退院する時に外来に教えてくださいって伝える.」

Ⅴ. 考察

1. 2つの座標軸によって構造化されたコーディネート機能

本研究において看護師のコーディネート機能は,「足固め-動力-調整」機能からなる軸と,「高齢者-他職種」を中心に働きかける機能の軸といった2つの座標軸によって構造化できた.「足固め-動力-調整」機能ではそれらが連動し,「足固め」が確実となってこそ「動力」が効果的に機能し,そしてより幅広い「調整」へと広がっていくものと捉えられた.また,「足固め-動力-調整」機能からなる軸と,「高齢者-他職種」を中心に働きかける機能の軸は2軸ともに,高齢者ケアの継続に向けた他職種との連携には欠かせないが,「継続」には「高齢者に対してどうケアしていくか」の視座,「連携」には「他職種に対してどうアプローチしていくか」の視座が対応していると考えられた.つまり,「高齢者に対してどうケアしていくか」の視座は高齢者がその人らしく生きることを継続して支援するための機能である一方,「他職種に対してどうアプローチしていくか」の視座は,他職種に視野を広げ連携を活性化する広角的な機能だといえる.つまり,ケアの「継続」においては高齢者中心的であり,ケアの「連携」においてはその重点が他職種に移る.

瀧口ら(2013)は,人工呼吸器装着患者の管理において看護師の多職種チーム機能を明らかにし,「日常性最大化への挑戦」「個別性の反映」「多職種機能の統合」「多職種機能の采配と強化」の4カテゴリーを調整の方向性を示すものとしていた.この研究とは対象が異なるものの,前者2カテゴリーは本研究の「高齢者に対してどうケアしていくか」の視座に相当し,後者2カテゴリーは「他職種に対してどうアプローチしていくか」の視座に相当するといえる.加えて,本研究では両者が複眼的視座をもったコーディネート機能として示されたことが特徴である.空間配置図の構造では,「高齢者に対してどうケアしていくか」の軸と「他職種に対してどうアプローチしていくか」の軸を対称に置きつつも,それぞれの軸が「足固め-動力-調整」へし連動していくことから,6つの機能が別々に機能するのではなく,縦横無尽に各機能を関連し合わせて看護師がコーディネート機能を発揮していたことを示すものと考えられた.

2. 看護師のコーディネート機能を明らかにすることの意義

1) 過不足のないケアの提供にとどまらない,より高齢者の目標を志向するケアの提供へ

退院支援・調整として行われている支援内容を明らかにする研究はこれまでにも散見され,患者・家族の意向確認,医療処置・管理指導,日常生活援助指導,社会資源活用,他職種との連絡調整といった支援内容が挙げられている(長嶋,2017藤澤,2012).こうした支援内容の実践には,患者のありたい目標に向けて看護実践しつつ他職種と連携していく看護師の働きがあり,その働き同士の構造を,本研究ではコーディネート機能として明らかにし可視化できた.Nosbusch et al.(2011)は,スタッフ看護師が効果的な退院支援を行うのを妨げる要素のひとつに「役割の混乱」をあげ,退院支援のプロセスにおける他職種との関係において自分達がどのように主導するのかスタッフ看護師の責任として明確になっていないことを指摘している.療養の場の移行における支援内容を実践しようとする時に,全体の中でどこに位置づくコーディネート機能を駆使しながら実践しているのかが明確となることは,スタッフ看護師が役割を発揮する際の拠り所となると考える.

また,高齢者の療養の場の移行にあたって行う支援は,その対象が必要としている支援内容を見出し,その状況に見合った社会資源を適用し,その人らしい生活の継続を支えることが大きな目的である.しかし,「移行支援の内容」を視点としてみていくと,ともすれば社会資源や医療処置,自己管理方法の調整などが中心となり,高齢者や家族に欠如あるいは不足している部分を補うケアが移行支援だと捉えかねない.そこで,「移行支援のコーディネート機能」を視点にしてみることによって,決して不足している部分を補うだけではなく,高齢者や家族がどう生きていきたいかという目標を中心になされているものであることがわかり,それだけに留まらない支援の在り方がみえてくることが期待される.佐久川ら(2009)は「回復期リハビリテーション病棟看護師の在宅復帰支援についての認識と役割」について調査しており,直接ケアや教育的ケアは提供している一方で,家族または専門職種間の調整をすることへの認識が低かったことや調整機能そのものへの認識が高くないといった結果を示している.しかし,研究対象である病棟看護師はカンファレンスの中で患者の現状を説明したり患者の意思や希望の発言を促すといった役割への認識は高いことが示されていた.本研究結果を踏まえれば,こうした役割も看護師のコーディネート機能のひとつであるといえ,必ずしも直接専門職と対応したり交渉したりする行為に看護師のコーディネート機能は限定されず,高齢者の在りたい目標に近づけていくためにチーム内でなされる擦りあわせ行為の中でも,その機能が発揮されていくと捉えることができる.

2) 看護師のコーディネート機能の日常性

高齢者の療養の場の移行支援においては,看護師がチームの中での情報の源になっているという(Jeffs et al., 2018).情報の源としての看護師の在り方は,他職種から看護師のところに情報が集まるというだけでなく,看護師自身が高齢者の日常の中に存在していることによって情報が集められるということが,【他職種を含めたケア実践への動力】機能と【他職種との連携・調整への動力】機能の中で,看護師が日常の何気ない関わりや日頃の様子から情報を得ていたことから言えるだろう.高齢者の日常は看護師の日常でもある.高齢者とその周囲には日々様々なことが生じているが,高齢者の日常の場には看護師が存在しており,それは特別に新たに設けた場ではない.例えば,他職種は高齢者の思い等を聞き知るための設定や体制づくりから始める必要があるかもしれない.しかし病棟や外来の看護師は,高齢者の思いを聴くためにわざわざ面接場面を設け情報を取りにいかなくても,高齢者の情報を肌で感じられる日常の場にいる.本研究結果では,この働きは「動力」の機能の中に見い出されていた.このことは,日常の中でコーディネート機能が働いているからこそ「動力」となり得ていたのだと考えられる.また,退院支援専門部署ではなく病棟や外来に所属している看護師の特徴を反映したものだといえ,このような「日常性」の重要性を,病棟や外来の看護師が意識し,コーディネート機能として意味づけながら発揮できると実践が深化していくのではないだろうか.

3. 本研究の限界と今後の課題

本研究では,対象者の半数以上が副看護師長職であり部署全体を見渡しコーディネート機能を発揮していく力に長けていた可能性が高く,それゆえの結果であった可能性がある.しかし,複雑な高齢者ケアの継続に向けた他職種との連携には,そうした高い実践能力が必要であり,そのような能力を持った対象者から得られたコーディネート機能は,看護師の看護実践の質向上に大いに役立てることができるだろう.今後は,本研究で明らかになった知見に基づき,高齢者ケアの継続に向けた他職種との連携において看護師がコーディネート機能を発揮しケアを実践できるようになるためのツールの開発につなげることが課題である.

付記:本稿は,第37回日本看護科学学会学術集会にて発表し,これに一部加筆修正を加えたものである.

謝辞:本研究にご協力いただきました皆様に心より感謝申し上げます.本研究はJPJS科研費15H05284(研究代表者 正木治恵)の助成を受けて実施した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:YOは研究フィールドの調整,データ収集・分析,草稿の作成;NKはデータ分析および草稿全体への助言;KKは研究フィールドの調整,データ収集,草稿全体への助言;AKはデータ収集,YIはデータ分析に貢献; HMは研究の着想・計画,研究フィールドの調整,草稿全体への助言.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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