Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Development of a Workplace Environment Evaluation Scale for Intensive Care Homes for the Elderly
Akemi OgataKanako Ogiso
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2019 Volume 39 Pages 306-315

Details
Abstract

目的:特別養護老人ホーム(以下,特養とする)の職場環境評価尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討することである.

方法:予備調査の後,全国の特養300施設の看護職と介護職の1,800名を対象に,質問紙調査を実施した.

結果:344名(回収率19.1%,有効回答率95.6%)の因子分析の結果,「上司の支援的役割」,「創造的業務改善」,「人事考課」,「施設長の任務」,「教育」,「介護職と看護職の協働」の6因子34項目で構成された.尺度の信頼性と妥当性を検討した結果,尺度全体のクロンバックα係数は,.956で,モデル適合度は,χ2 = 1193.5,p < .001を示し,GFI = .837,AGFI = .812,CFI = .925,RMSEA = .059であった.また,外的基準との相関係数は,.204~.916であった.

結論:構成概念妥当性のデータへの当てはまりはやや劣るが,内的整合性,基準関連妥当性が一定の基準を満たした.特養の職場環境評価の指標として活用可能である.

Translated Abstract

Purpose: This study aimed to develop and assess the reliability and validity of a workplace environment evaluation scale for intensive care homes for the elderly.

Method: After the preliminary survey, a questionnaire-based survey was distributed to 1,800 nursing and care professionals working at 300 intensive care homes for the elderly across Japan.

Results: Reliability and validity were examined using data from 344 respondents (recovery rate: 19.1%; effective response rate: 95.6%). Factor analysis revealed that responses consisted of 34 items in the following 6 factors: “the supportive role of supervisors,” “creative work improvements,” “employee evaluations,” “duties of the facility director,” “education,” and “collaboration between nursing and care professionals.” As a result of examining the reliability and validity, the Cronbach’s α coefficient for the entire scale was .956, and the model’s goodness of fit was χ2 = 1193.5 (p < .001), with GFI = .837, AGFI = .812, CFI = .925, and RMSEA = .059. The correlation coefficient with the external criteria was within the range of .204 to .916.

Conclusion: While the model leaves something to be desired with respect to the fit of the construct validity to the data, its internal consistency and criterion-related validity satisfied established criteria. The model can be used in the context of management that fully comprehends the workplace environment of intensive care homes for the elderly.

Ⅰ. 緒言

我が国の高齢化率は,27.7%と世界で最も高く,総人口が減少する中で高齢化率はさらに上昇することが見込まれている(内閣府,2018).高齢者人口の増加,医療的ケアやエンドオブライフケアの需要拡大に伴い,特別養護老人ホーム/介護老人福祉施設(以下,特養)は,在宅での介護が困難な高齢者の生活支援を担う施設として重視されている.また,住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることを実現するため,地域包括ケアシステムによる地域密着型サービスが新たに創設され,高齢者を取り巻く支援は大きく変化してきている.

介護サービス拡大の一方で,特養の介護職員の離職率は,やや横ばい傾向であるものの前年と比較して10.9%から13.5%に上昇し(介護労働安全センター,2018),特養の看護職の離職率は,21.5%(堀川,2016)で,病院看護職の10.9%(日本看護協会,2018)を上回る現状である.経験豊かな職員の離職は,高齢者への心理的影響やケアの質低下など悪影響などが推測される.また,離職は,組織にとって,運営上の損失などさまざまな面で影響を及ぼすことが考えられる.

特養の介護職員を対象とした先行研究によると,職務継続意欲や離職に関連する要因に,給与,人事評価,人材育成などが確認されている(大和,2010阿部,2011).また,特養の介護職員の「職場の人間関係やコミュニケーションに関する満足度」は,他の高齢者施設と比較して低値であることが示されている(介護労働安全センター,2018).これらの課題に対し,介護事業者全般に対する国の施策では,職員の人材育成や就労環境等の改善対策(厚生労働省,2019a)として,給与および昇給基準の策定や新規採用者の育成計画,研修の実施,キャリアパス制度の導入を推進してきた.また,福祉・介護分野の人材確保対策強化事業(厚生労働省,2019b)では,職員の人材育成や就労環境等の改善につながった介護事業者の認証制度の実施など,介護人材を量と質の両面から確保する取り組みを進めている.しかし,高齢者施設の中でも特養は,介護職と看護職の人員配置基準が異なり,両職種の人材管理を含めた特養に特化した取り組みが求められていると考えられる.特養の看護職を含めた先行研究は少ない中,看護職および介護職を対象とした研究では,離職予防には,職員と幹部との積極的情報交流やキャリアアップ制度,サポート体制の充実などが示唆されており(緒形ら,2015),組織運営のあり方が課題となっている.

組織は特定の目的を達成するために,多くの場合,経営者たちのイニシアティブによって形成されており,組織を維持していくためには,経営管理能力が必要である(桑田・田尾,2010).特養においても,人材管理を含めた組織の運営は,その統括を担う施設管理者の役割が重要であり,理事長および施設長などの施設管理者による職場定着につながる具体的マネジメントの指針が求められていると考える.国策による人材定着の取り組みでは,その概要は示されているもののガイドラインを詳細に示したものではなく,特養の組織運営や人材管理を含めた職場環境を客観的に評価することは難しいことが考えられる.また,既存の指針においては,旧介護保険制度の枠組みによる特養の職場環境を評価するツールの開発(潮谷ら,2002)にとどまっている.介護保険法の改正に伴い,2015年4月以降,新たに特養に入所できる方は,要介護1以上から,原則,要介護3以上に限定された(厚生労働省,2013).特養は,中重度のケアを要する施設へと変化がもたらされたにもかかわらず新たな評価ツールは開発されていない.本研究により,特養に特化した職場環境の新たな評価ツールを開発することは,施設管理者が現行の雇用管理諸施策を見直して職場環境を包括的に捉え,人材定着につながる組織運営をすることに貢献し,間接的に特養で生活する高齢者の健康と生活の質の発展に寄与することが考えられる.

Ⅱ. 目的

本研究の目的は,特養の施設管理者が,職場環境を包括的に捉えマネジメントすることに寄与する職場環境評価尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討することである.

Ⅲ. 用語の操作的定義

1. 職場環境

Strong et al.(1999)は,職場環境の定義を「個人内,個人間,または仕事の結果や活動に影響し,課業ではない仕事の要因」とし,対人関係・物理的労働条件・構造的職務特徴でとらえている(労働政策研究・研修機構,2012).しかし,研究者らは,職場定着という行動は,感情と関連していると仮定し,感情に関わる「対人関係」と「対人関係以外の物」という視点で捉え,職場環境を「物質的側面や人的側面に影響する要因」と独自に定義した.なお,物質的側面とは,仕事の作業環境や組織的構造・職務役割体制,労働条件,教育体制などの仕事に関連する職務構造的な要因を,人的側面とは,職場スタッフ間の対人関係やサポート,役職の役割・機能・権限などの組織の人的資源に関係する要因をいう.人的側面については,看護職・介護職の相互的な関係を全体的に捉える.

2. 特養で働く看護職と介護職

特養で働く看護職と介護職とは,正規(正職員)もしくは非正規(人材派遣契約職員など)の職員として,看護職・介護職に専従,もしくは介護支援専門員など兼務する看護・介護の職員とする.なお,ここでの看護職は,看護師もしくは准看護師の資格を有する者で,介護職は,資格の有無は問わない.

Ⅳ. 研究方法

尺度開発の本調査までに,構成概念の検討,試作版作成,プレテスト,予備調査を経た(図1).

図1

構成概念の検討から予備尺度作成までの経緯

1. 構成概念の検討から試作版作成

構成概念の検討では,先行研究1(緒形ら,2017)および先行研究2(緒形ら,2018)の質的データより抽出された項目を基盤に,重要項目の確認のため,3回のデルファイ法にて老年看護学分野の研究者および特養の職員の意見を集約した.その後,既存の職場環境評価尺度(潮谷ら,2002),職場や仕事の現状を客観的に把握する「ワークシチュエーションチェックリストの測定概念」(日本労働研究機構,2003),および,仕事における満足と不満足を引き起こす要因に関する「動機づけ‐衛生理論」(Herzberg, 1966/1968)から不足項目を追加した.以上の検討を経て,91項目で構成された特養の職場環境評価尺度(Workplace Environment Evaluation Scale for Intensive Care Homes for the Elderly,以下WEES-I)の試作版を作成した.試作版を用いて,看護職と介護職の各1名に対してプレテストを実施し,調査票の不明瞭な点,負担感,所要時間について確認し項目の表現を一部修正した.

2. 予備調査

1) 調査施設と対象者

対象は,回収率をおよそ20%と見込み,介護サービス情報公表システム(厚生労働省,2018)により,全国特養から無作為抽出した入居者100名以上の300施設を対象に,常勤の看護職と介護職の両職種が同割合で抽出できるように各3名の1,800名とした.都道府県による偏りがないように全国の県を選び,その後,都道府県ごとに8~10施設を無作為に抽出した.

2) データ収集方法と調査期間

対象施設の施設長宛に,研究協力依頼書,対象者への説明書,調査票,返信用封筒を郵送した.介護職に対しては,今までの合計の経験年数に偏りが生じないよう,およそ3年未満,3年以上8年未満,および8年以上の常勤の介護職スタッフ1名ずつ計3名に,看護職に対しては,常勤職員として働いている看護職スタッフ3名に質問紙等を配布してもらうよう,各特養の施設長に文書で依頼した.なお,看護職については,1施設につき3名の人員配置基準のため経験年数による調整の依頼はしていない.調査期間は,2018年3月1日から5月31日とした.

3) 調査内容と結果

調査内容は,基本属性とWEES-I試作版91項目とした.

分析対象は,看護職124名(41.9%),介護職168名(56.8%),無回答4名(1.4%)の計296名(回収率17.7%,有効回答率93.1%)であった.天井効果,床効果,GP分析,IT相関による項目分析の後,因子分析では,主因子法,最尤法,最小二乗法による因子抽出それぞれに対し,数十回分析を繰り返した.因子数は解釈の可能性を基盤にスクリ―プロットの確認により5因子と仮定し,因子負荷が.40以上の項目を採択した.因子分析の結果,最尤法による因子抽出とプロマックス回転により5因子53項目をWEES-Iの予備尺度とした.

3. 本研究の調査方法

1) 調査施設と対象者

対象の抽出は,予備調査の対象施設を除外後,予備調査と同様に実施した.

2) データ収集方法と調査期間

データ収集方法は,予備調査と同様である.調査期間は,2018年10月1日から12月31日とした.

3) 調査内容

調査内容は,基本属性とWEES-I予備尺度53項目とした.基準関連妥当性の外的基準として組織コミットメント(organizational commitment以下,OC)尺度(高橋,1999)を用いた.OCは,組織の活性化や人材の職場への定着について,仕事に関わる対象に対する関与や思い入れを表した概念である.OC尺度は,国外の先行研究ではさまざまな条件下で組織を対象に研究が繰り返されてきた.特に,離退職を予測し(Williams & Hazer, 1986),OCを高めることで従業員のパフォーマンスや生産性が向上し,欠勤や遅刻の減少との関連から,人材定着を目指すのであれば,OCを高めることが一つの目標となることが明らかになっている(Bateman & Strasser, 1984).国内の先行研究では,企業社員や看護職員を対象に,離転職の意思,職務満足とOCの関連が確認されている(厨子,2010).

なお,WEES-I予備尺度の教示文は「現在の職場で実施されている程度について,最もあてはまる数字に〇をひとつ付けてお答えください」とし,「全くあてはまらない1点,ほとんどあてはまらない2点,ややあてはまる3点,とてもあてはまる4点」の4件法とした.

4. 分析方法

1) 項目分析と削除項目の基準

項目分析を実施した後,削除項目の候補を抽出した.削除基準は,a)標準偏差が.7未満,b)天井効果が(平均値+標準偏差)>4,c)床効果が(平均値-標準偏差)<1,d)Good-Poor Analysis(G-P分析)は当該項目以外の項目得点の合計を四分位に分け,上位群を75%以上,下位群を25%以下の2群にし,2群間でt検定を行い有意差が認められないこと,e)Item-Total Correlation Analysis(I-T分析)は当該項目を除いた項目得点の合計と項目の相関をPearsonの相関係数で確認した相関係数が.25以下,f)項目間相関は.75以上,g)項目が削除された場合のクロンバックα係数は全体の信頼係数値よりも.10以上上昇する場合,の7つの条件とした.

2) 信頼性の検討

信頼性については,項目分析による削除候補項目を省きながら,尺度全体と下位尺度のCronbach α係数による内的整合性の評価をした.

3) 妥当性の検討

因子分析では因子数をスクリ―プロットで仮定し,因子負荷量.40以上の項目を採択し,主因子法,最尤法,最小二乗法による因子抽出それぞれに対し,因子間の相関を仮定してプロマックス回転による探索的因子分析を繰り返した.

構成概念妥当性評価は,共分散構造分析で評価した.モデルの適合度評価にあたっては,GFI(Goodness of Fit Index)は1に近いほど説明力のあるモデルとし,AGFI(Adjusted GFI)は,GFIともに.90以上(Polit & Beck, 2004/2016),GFI≧AGFIを基準とした.CFI(comparative Fit index)は1に近いほど,RMSEA(root mean square error approximation)は.05以下であれば当てはまりが良いと判断した(小塩,2018).

基準関連妥当性には,外的な基準であるOC尺度(高橋,1999)の下位概念である情緒的コミットメント,継続的コミットメント,規範的コミットメントおよび尺度全体とWEES-Iのそれぞれの因子間と,Pearsonの相関係数による併存的妥当性評価を行った.OC尺度は,組織の理念や価値に対する愛着・受容,組織成員であることにともなう利益・不利益関係の意識的構造,および組織への忠誠心や組織の一員としてあり続けることへの義務感と個人の道徳的認識を表している.また,先行研究より,OCと職場継続の意思に有意な関連があることが確認されている(難波ら,2009Lee et al., 2011).以上のことから,WEES-Iの点数が高い場合,職場に定着する傾向にあると推測しOC尺度(高橋,1999)と相関があると仮定した.

以上の解析は,統計ソフトIBM SPSS Statistics 23,Amos 23を用い有意水準5%で行った.

5. 倫理的配慮

対象者に研究の目的・意義・方法,研究参加への自由意思,結果の公表においては,個人情報の保護が遵守されることなどについて文書で説明し,無記名にて質問紙の回答と返送をもって同意とした.なお,データ収集方法に示したように,施設長に対象条件の目安を示し,可能な限り施設長の個人的な意図が反映しないよう配慮した.また,調査票の回収方法は,施設長を介さず,対象者が個別に郵送にて直接返送することとした.なお本研究の実施にあたっては,中部大学倫理審査委員会にて承認を受けた(承認番号290051-2).

Ⅴ. 結果

分析対象は,看護職156名(45.3%),介護職188名(54.7%)の計344名(回収率19.1%,有効回答率95.6%)であった.

1. 対象者の個人特性

対象者は,344名のうち40~49歳が104名(30.2%)で最も多く,職位は,スタッフが61.6%を占めていた.また,介護職が54.7%と看護職よりやや多い割合であった.取得している資格では介護福祉士の資格を持つ介護職が44.5%であり,看護師資格を有する者が48.0%を占めた(表1).

表1 個人特性の概要 n = 344
項目 人数 %
性別 女性 259 75.3
男性 85 24.7
年齢 19歳以下 3 0.9
20~29歳 53 15.4
30~39歳 72 20.9
40~49歳 104 30.2
50~59歳 87 25.3
60歳以上 24 7.0
無回答 1 0.3
職種 介護職員 188 54.7
看護職員 156 45.3
雇用形態 正規 314 91.3
非正規で常勤 30 8.7
職位 スタッフ 212 61.6
介護もしくは看護の副責任者(主任・係長) 61 17.7
ユニットリーダー 33 9.6
介護もしくは看護の責任者(士長・師長) 32 9.3
その他 3 0.9
無回答 3 0.9
取得している資格(複数回答) 介護福祉士 153 44.5
看護師 102 29.7
准看護師 63 18.3
ホームヘルパー2級 60 17.4
介護支援専門員 50 14.5
介護職員初任者研修 30 8.7
社会福祉士 15 4.4
ホームヘルパー1級 11 3.2
認知症ケア専門士 4 1.2
認知症ケア指導管理士 1 0.3
認定看護師 1 0.3
専門看護師 1 0.3
ホームヘルパー3級 1 0.3
現在の職場の勤務年数 1年未満 29 8.4
1年~3年未満 59 17.2
3年~5年未満 62 18.0
5年~10年未満 91 26.5
10年~20年未満 87 25.3
20年~30年未満 11 3.2
30年以上 3 0.9
無回答 2 0.6
今までの合計経験年数 1年未満 5 1.5
1年~3年未満 24 7.0
3年~5年未満 30 8.7
5年~10年未満 55 16.0
10年~20年未満 118 34.3
20年~30年未満 64 18.6
30年以上 46 13.4
無回答 2 0.6
所在地 北海道 7 2.0
東北地方 50 14.5
関東地方 69 20.1
中部地方 82 23.8
近畿地方 65 18.9
中国地方 25 7.3
四国地方 10 2.9
九州・沖縄 36 10.5

2. 項目分析

天井効果・床効果はなく,GP分析では上位群・下位群の2群間においてすべての項目は有意差を示し,GP分析,IT分析の結果,削除項目はなかった.53項目全体のクロンバックα係数は.968で,各質問項目を除外した場合のクロンバックα係数が全体の信頼係数値よりも.10以上上昇するものはく,削除項目はなかった.項目間相関の結果では,19項目の削除候補となる相関が確認された.

3. 探索的因子分析

分析対象344名のWEES-Iの探索的因子分析の結果は表2に示した.因子数をスクリ―プロットで確認し,累積寄与率,および解釈可能性から,34項目からなる6因子構造が妥当であると判断した.それぞれの因子は,内容を反映させて,「上司の支援的役割」,「創造的業務改善」,「人事考課」,「施設長の任務」,「教育」,「介護職と看護職の協働」と命名した.

表2 特別養護老人ホームの職場環境評価尺度の探索的因子分析の結果
内容 共通因子
1
(11項目)
2
(7項目)
3
(6項目)
4
(4項目)
5
(3項目)
6
(3項目)
因子1 上司の支援的役割
 4 上司は,仕事をうまく段取りし計画できる .888 –.173 .094 –.057 .024 .031
 5 上司は,職員に分け隔てなく公平に関わっている .883 –.070 –.079 .111 –.070 .025
 3 助けが必要なときには,上司からの支援がある .875 –.124 –.088 –.007 .125 .006
 9 上司は,職員の意見を聞く姿勢がある .871 .144 –.012 –.060 –.176 –.014
12 上司は,仕事が遅れたり困ったりしているとき,同僚が互いに助け合うようにサポートしている .812 –.005 .005 –.051 .050 .002
 8 上司は,職員の能力が高まるよう配慮している .803 –.039 .004 .040 .073 .017
 7 上司は,職員を信頼している .800 .123 .002 .011 –.005 –.060
11 上司は,職員の仕事能力を評価する .754 .043 .065 .052 –.024 .037
13 上司は,職員に対して臨機応変に行動するように指導している .746 .034 –.015 .046 –.012 –.001
10 上司は,職員の仕事のやり方を批判することはない .721 .106 .117 –.120 –.124 –.064
 6 上司は,高齢者福祉の専門的知識をもとにして仕事をしている .615 .056 –.081 .047 .196 .020
因子2 創造的業務改善
39 業務に対する提案などを意見として提言できる機会がある –.051 .859 –.099 .007 .071 .000
41 新しい仕事のやり方に対して肯定的で受け入れが良い –.015 .817 .118 –.037 –.008 –.055
38 仕事上の改善点について,職員が自由に発言できる .041 .799 –.143 .037 .020 .040
40 仕事をすすめる上で,自分の意見は十分反映される .052 .778 –.028 .062 –.024 –.018
42 新技術導入や業務変更などの決定には,職員の意見が反映される –.037 .738 .124 .115 –.126 –.035
36 新しい考え方をできるだけ仕事の中に生かすよう取り組んでいる .011 .675 –.021 –.158 .089 .084
37 仕事上の新しい解決法,新しいアイデアが職員に求められている .019 .602 .002 –.032 .131 .064
因子3 人事考課
43 適切な人が,適切な時期に昇進する .099 .104 .763 .055 –.135 –.029
49 能力を反映した昇給制度で給与の差がついている –.090 –.064 .754 –.045 .119 .018
47 評価は誰から見ても納得でき,十分な透明性がある .079 .055 .713 .018 .008 .067
48 仕事内容・仕事量に応じた十分な給与である –.047 –.088 .684 .129 –.039 –.065
46 経験を積むことにより,職位があがる .120 –.038 .534 –.003 .124 .007
51 仕事において,自分がどのレベルに達したかを把握できる .053 .060 .418 –.029 .329 .020
因子4 施設長の任務
19 施設長は,職場の人間関係について気にかけている .056 .006 –.075 .892 –.034 –.047
20 施設長は,運営や今後の計画について,職員の意見を積極的に取り入れる –.036 .085 .067 .843 –.017 –.023
22 施設長は,施設全体の運営が改善されるように,常に努力している .019 –.019 .072 .709 .051 .043
21 施設長は,職員に対し接遇について教育する –.074 –.090 .120 .692 .070 .080
因子5 教育
52 キャリアに相応した研修を実施している –.072 .006 .125 –.057 .869 –.013
50 職種に応じた研修を実施している .055 .037 –.071 .144 .778 –.054
53 仕事で必要な知識や技術については,十分な教育・研修がある .008 .088 .024 –.014 .761 –.014
因子6 介護職と看護職の協働
25 介護職と看護職は,相談しながら一緒に,利用者の日常生活の援助をしている .056 –.004 –.122 .015 .024 .888
27 介護職と看護職は,協力し合いながら仕事をする –.063 –.003 .131 –.007 –.044 .842
28 介護職と看護職は,医療的なことについて頻回に相談し合う .002 .079 –.015 .013 –.061 .781
Cronbachのα係数 全体 .956
.953 .909 .868 .890 .881 .874
因子間相関 因子1 1.000
因子2 .568 1.000
因子3 .560 .549 1.000
因子4 .471 .434 .635 1.000
因子5 .481 .498 .622 .502 1.000
因子6 .417 .488 .426 .377 .372 1.000

因子抽出法:主因子法 回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法

因子は因子1から「上司の支援的役割」「創造的業務改善」「人事考課」「施設長の任務」「教育」「介護職と看護職の協働」と命名

4. 信頼性の検討

尺度全体のクロンバックα係数は.956,累積寄与率は64.65%であった.各因子のクロンバックα係数は.868から.953であった.

5. 妥当性の検討

構成概念妥当性の検討では共分散構造分析による適合度指数は,χ2 = 1193.5,p < .001を示し,GFI = .837,AGFI = .812,CFI = .925,RMSEA = .059であった.

基準関連妥当性の検討として併存的妥当性評価にOC尺度(高橋,1999)の下位概念である情緒的コミットメント,継続的コミットメント,規範的コミットメントおよび尺度全体とWEES-Iのそれぞれの因子間の相関関係の結果は,表3に示したように,すべての項目において相関係数.204から.916のやや相関からかなり強い相関が確認された.

表3 特別養護老人ホームの職場環境評価尺度と組織コミットメント尺度の相関関係数 n = 344
特別養護老人ホームの職場環境評価尺度
因子1 因子2 因子3 因子4 因子5 因子6 合計
(34項目)
上司の支援的役割
(11項目)
創造的業務改善
(7項目)
人事考課
(6項目)
施設長の任務
(4項目)
教育
(3項目)
介護職と看護職の協働
(3項目)
OC尺度
情動的(8項目) .474** .527** .575** .531** .435** .332** .636**
継続的(8項目) .228** .264** .339** .407** .327** .204** .362**
規範的(8項目) .299** .379** .508** .916** .417** .262** .480**
合計(24項目) .410** .480** .589** .774** .484** .333** .606**

Pearsonの相関係数 ** <.01

OC(組織コミットメントorganizational commitment)尺度は,得点が高いほど,組織への所属を希望する意思が強いことを意味する

Ⅵ. 考察

1. 母集団と標本抽出枠から考えるデータの適切性

厚生労働省が指定する特養の人員配置基準は,看護職または介護職を入所者3人に対し1人である.ただし看護職は入所者100人に対し3人と,入所者数に応じて最低限配置すべき人数となっている.そのため現実的に特養の職員は,介護職の割合が圧倒的に多い状況である.本研究の標本は,介護職が54.7%とやや多くを占め,現実的な母集団の割合より少ないことが考えられる.しかし,本研究の目的は,両職種の職員を対象に職場環境の改善を通じて人材の定着につながる指標を得ることとしているため,両職種が同割合で抽出できるように調査票を配布し,介護職に対しては経験年数に偏りが生じないよう施設長に依頼している.以上のことから,本研究の標本は,介護職の割合がやや多いものの職場環境を包括的に捉えたマネジメントを目的とした開発に適切なデータであると考える.

2. WEES-Iの信頼性

WEES-Iの信頼性は,一貫性を検討する方法であるクロンバックα係数の算出によって検討した.信頼係数は,.80以上が望ましいと考えられ(Polit & Beck, 2004/2016),得られた値から尺度全体および各因子の内的整合性が確認された.なお,信頼性の確認には,安定性を検討する再テスト法や平行テストがあるが,同一対象者に複数回調査することや同時期の調査は現実的に実施困難であると判断し一貫性を検討することとした.

3. WEES-Iの妥当性

WEES-Iの構成概念妥当性は,モデルの全体的な適合度のGFIおよびAGFIの指標は.90未満であったことから,モデルの説明力,およびデータへの当てはまりに関して容認基準をやや下回っていた.ただし,GFI≧AGFIの基準は満たすものであった.基準比較の指標であるCFIについては,.925と1に近く当てはまりが良いと判断できるが,RMSEAは.059で,若干基準を下回る値であった.以上のことからモデル全体としての評価は容認できるものの,今後のさらなる洗練化の必要が考えられた.

基準関連妥当性評価では,WEES-I全体と因子1「上司の支援的役割」,因子2「創造的業務改善」,因子3「人事考課」,因子4「施設長の任務」,因子5「教育」因子6「介護職と看護職の協働」それぞれの因子,およびOC尺度の全体と下位概念において,すべての視点から相関が確認された.WEES-Iの点数が高ければ,職場定着につながることが考えられるため,組織とのつながりの度合いを示すOC尺度と相関が示されたことにより,妥当性が確認できたといえる.中でも因子4「施設長の任務」において,かなり高い相関が示され,施設長の職員に対する積極的働きかけや運営努力などが職場定着につながる可能性を示唆していると考えられた.

4. 既存尺度である職場環境評価尺度から考えるWEES-I

既存尺度である特養の職場環境評価尺度(潮谷ら,2002)と比較して,本尺度の特徴は,組織内の人々の相互作用に関する概念が多く含まれていることが挙げられる.上司によるサポートは既存尺度と同様に本尺度にも示されたが,本尺度には,施設管理者である施設長の任務や,介護職と看護職の協働が下位尺度として考えられた.組織運営のマネジメントとして職場環境を捉えた際,人的管理は働く側の職員のみならず,職員に影響を与える側の施設長のあり方も重要になることが考えられる.組織運営としては,施設管理者自らの職員に対するサポートや高齢者の直接的な支援を担う職員間の協働についての必要性が示唆された.また,職員のキャリア発達に向けた組織の取り組みや昇給や昇進の透明性も時代に求められていることが反映された尺度項目と考えられる.

5. WEES-Iの有用性

本尺度は,構成概念妥当性のデータへの当てはまりに関してやや劣るものの一定の基準を満たし,信頼性が確認された.本尺度の基準関連妥当性評価においては,OC尺度との相関が示されたことから,本尺度の点数が高い程,職場定着につながり,組織運営の指標として有用である可能性が示唆された.特養の施設管理者である施設長が自らの組織運営の取り組みを省みるとともに,職員がそれぞれの立場から職場を見直す指標とすることにも活用可能であると考えられる.これらのことから,特養の施設管理者が人材定着の指標とし,職場環境を包括的に捉えて評価する尺度として活用が可能であると考えられる.今後は,さらにWEES-Iを活かし,職場継続意思との関連を明らかにする研究を進めていくことが必要である.

Ⅶ. 本研究の限界と今後の課題

WEES-Iは職場環境を物質的側面や人的側面に影響する要因としてとらえている.人的側面である特養の「上司」についての現状としては,副施設長,介護長,看護長,フロアーリーダなど,各施設の運営状況によりその位置づけや,職員との関わりのあり様が異なり,名称はさまざまである.「上司」とは,職位ではなく対象者の主観に依存する用語として用いており,この点において職員に関わる「上司」の役割が示す職場環境が,本尺度の質問紙に十分反映されていない可能性が考えられる.役職を細分化した視点から上司の詳細な位置づけを基盤とし,それぞれの立場が職員に与える影響について質問項目を集約することにより,より信頼性・妥当性の高い尺度が得られる可能性も考えられ,今後さらに尺度の洗練化を高めることが求められる.

また,本研究では特養における職場環境を看護職と介護職それぞれの視点に分けなかった.その理由として,施設管理者は職種別にアプローチするのではなく,包括的に職場を捉え,組織運営することを目的としたためである.しかし,特養で働く看護職と介護職との仕事の役割が異なり,また入居者の人数によりそれぞれの職種の配置人数も異なる.これを鑑みて,職種別に職場を捉えることによる運営方法の示唆が得られることも考えられ,職場環境を職種別にとらえた評価尺度のためにさらなる分析を進めていくことが必要である.

Ⅷ. 結論

WEES-Iは,34項目からなる6因子で構成された.構成概念妥当性のデータへの当てはまりに関してはやや劣るものの,尺度全体および各因子の内的整合性,および基準関連妥当性評価が確認され,一定の基準を満たした.以上のことからWEES-Iは,施設管理者が,特養の職場環境を包括的に捉えたマネジメントにおいて活用することが可能である.

謝辞:本研究に実施にあたり,ご協力いただきました対象者の皆様に,深く感謝いたします.なお,本研究は,JSPS科研費JP15K11779の助成を受けたものである.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:AOは,研究の着想およびデザイン,データ収集・分析,原稿の作成までの研究プロセス全体に貢献;KOは,データ収集・分析解釈,研究プロセス全体への助言に貢献;すべての著者が最終原稿を確認し,承認した.

文献
 
© 2019 Japan Academy of Nursing Science
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