2020 Volume 40 Pages 484-494
目的:看護管理者のキーコンピテンシー尺度を開発する.
方法:特定機能病院と地域医療支援病院に勤務する看護管理者4,410名を対象に質問紙調査を実施した.看護管理者のキーコンピテンシー50項目の項目分析と因子分析を行った.構成概念妥当性はモデルの適合度指標を用いて確認,併存妥当性は看護管理者のコンピテンシー評価尺度(NACAS)を用いて確認した.信頼性はCronbachのα係数で内的整合性を確認した.
結果:看護管理者2,480名から回答が得られ(回収率56.2%),有効回答2,330名を分析対象とした.因子分析の結果,5因子30項目(状況認識,メタ認知,自己管理,キャリア支援,意思決定)が抽出された.モデルの適合度はGFI = .907,AGFI = .899,CFI = .921,RMSEA = .047であり構成概念妥当性が確認された.5因子とNACASの下位概念との相関はr = .34~.63であり併存妥当性が確認された.5因子のα係数は .81~.88であり内定整合性が確認された.
結論:看護管理者のキーコンピテンシー尺度の信頼性と妥当性が検証された.
Objective: To develop a key competency scale of nursing manager.
Methods: A questionnaire survey was conducted on 4,410 nursing managers who work at facilities of University hospital and facilities of regional medical support hospitals. We set 50 items on key competencies of nursing manager, and performed item analysis and factor analysis. The construct validity is checked the model to validity confirm and the coexistence validity is checked using NACAS; Nursing Administrator’s Competency Assessment Scale. The reliability confirmed internal consistency by Cronbach’s alpha coefficient.
Results: A total of 2,480 nursing manager were response (collection rate 56.2%) and 2,330 valid responses were analyzed. Five factors were extracted as a result of factor analysis, situation awareness, meta-cognitive, self-control, career support, decision making. The fitness of the model consisting of 5 factors and 30 items was GFI = .907, AGFI = .899, CFI = .921, RMSEA = .047, and the construct validity was confirmed. The correlation between the extracted five factors and lower-level concepts of NACAS was r = .34 to .63, confirmed coexistence validity. The alpha coefficient of each factor was .81 to .88, confirmed the internally defined consistency.
Conclusions: The reliability and validity of the key competency scale of nursing manager; KCSNM were verified.
安全で質の高いケアを提供していくためには看護人的資源の質向上が必須であり,そのためには看護管理者のマネジメント能力の向上が欠かせない.医療の高度化,重症化する患者状態,患者権利や医療安全の重視,医療財源の逼迫と医療費抑制といった医療を取り巻く社会状況の変化を背景に,看護職員の疲弊感の増大や離職といった問題が顕在化している.こうした状況を踏まえて,看護管理者には人的資源管理のみならず,経営的参画や組織運営などを含めたマネジメント能力の向上が求められている(柴田ら,2003).しかし,医療現場の人的余裕のなさ,リーダー育成機会の減少など看護管理者を取り囲む状況はますます厳しい状況が指摘されている(手島ら,2016).
職務において高い業績をあげるために必要な知識・スキル・能力・行動などの集合体をコンピテンシーと呼び,一般的にコンピテンシーとは「できる人の行動特性」と言われている(Spencer & Spencer, 1993/2011).看護管理者のコンピテンシーの構成要素に関する研究成果がいくつか報告されている.例えば,ANA(American Nursing Association, 2004)は倫理的管理実践,ケアの質評価,資源の評価,協働,研究支援など14のコンピテンシーを示している.また,Chase(2012)は53項目からなる看護管理能力を提示している.わが国においても,看護管理者に求められるコンピテンシーとして,5領域25コンピテンシー(武村,2014),6領域20コンピテンシー(虎の門病院看護部,2013),3概念15能力(小澤・村田,2014),11コンピテンシー(井上,2014),看護管理能力12因子48項目(八尾ら,2012),看護管理実践能力20項目(松下,2001),基本的管理能力13項目(東辻ら,2005)などが報告されている.しかしながら,先行研究では看護管理者のコンピテンシー構成要素については明確にされつつあるが統一した見解が示されていない.また,看護管理者のコンピテンシーがどのように獲得され,どのように向上させることができるのかについての体系的な研究成果はみあたらない.
OECD(2005)によれば,キーコンピテンシーとは,あらゆる場面で必要なコンピテンシーをすべて列挙するのではなく,コンピテンシーの中で特に重要な課題に対応するために必要となる能力とされている.本研究は,看護管理者が限られた資源の中で,日々求められる役割を効果的に果たすために重要となるコンピテンシーに着目した.すなわち,これまで明らかにされてきた複数の看護管理者のコンピテンシー構成要素の中からキーコンピテンシーを特定して,そのキーコンピテンシーを可視化する必要があると考える.
看護管理者がコンピテンシーを獲得しているか否かを評価するためには,それらを測定することができる尺度が必要となる.しかし,看護管理者のコンピテンシー評価に関するこれまでの研究では,年齢など個人特性別の比較(山下ら,2014;五味・鈴木,2014;徳森,2014;東辻ら,2005),研修導入による能力変化の評価(八尾ら,2012)などが散見されるが,これらに用いられている測定指標はその信頼性や妥当性が検証されたものではない.本村・川口(2013)は,中規模病院の看護管理者を対象としたコンピテンシー評価尺度(NACAS: Nursing Administrator’s Competency Assessment Scale)を開発し,信頼性と妥当性を検証している.しかしながら,この尺度は対象者が中規模病院の看護管理者に限定されたものであり,また看護管理者のコンピテンシーの一部分を評価したものであり看護管理者の役割を効果的に果たすために鍵となるコンピテンシーとは異なるものである.
先に述べたように,看護管理者のコンピテンシー構成要素については明確にされてきたものの統一した見解が示されておらず,測定指標の十分な検証がなされていない現状にある.看護管理者のコンピテンシーがどのように獲得され,どのような要因がコンピテンシーを向上させるのかを明らかにするために,また,今後の研修導入による効果を評価するためにも看護管理者のキーコンピテンシー評価尺度の開発が急がれる.
本研究は,看護管理者のマネジメント能力の向上を目指した効果的な組織的人材育成の方策を検討するために,看護管理者の役割を効果的に果たすために鍵となるコンピテンシーを測定する「看護管理者のキーコンピテンシー尺度」を開発することを目的とする.
本研究における看護管理者とは「看護師長もしくは主任の職位にある看護師」とする.また,キーコンピテンシーとは,看護管理者のコンピテンシーの中でも「看護管理者の役割を効果的に果たすために鍵となるコンピテンシー」とする.
2. 研究対象研究協力の内諾が得られた特定機能病院42施設および400床以上の地域医療支援病院60施設に勤務する看護管理者4,410名(看護師長2,205名,主任2,205名)を対象とした.
3. 調査方法全国の特定機能病院85施設および400床以上の地域医療支援病院の中からランダムに抽出した120施設へ文書で研究協力の依頼を行い,研究協力への内諾が得られた施設において質問紙調査を実施した.
調査票は,看護師長と主任への配布数が同数となるように依頼した上で,研究者から施設担当者に該当人数分を郵送し,施設担当者から調査対象者へ配布した.配布数は4,410部である.調査対象者は質問紙を受け取った後,質問紙へ記入し,記入後は各自が返信用封筒を用いてポストへ投函し,郵送法にて回収した.調査期間は2017年10~12月である.
4. 調査内容 1) 看護管理者のキーコンピテンシーに関する項目看護管理者の役割を効果的に果たすために鍵となるコンピテンシーに関する具体的行動に着目し,以下の手順で50項目を設定した.はじめに,看護管理者20名を対象に,看護管理者の役割を効果的に果たすために鍵と考えるコンピテンシーについて実践事例を踏まえて1人あたり60分程度のインタビュー調査を行った.この質的データ,看護管理者のコンピテンシーの構成概念および定義が示されている文献(武村,2014;虎の門病院看護部,2013;小澤・村田,2014;井上,2014;八尾ら,2012;松下,2001;東辻ら,2005),一般企業の管理者のコンピテンシーに関する文献(佐藤,2015;西尾,2015)をもとに,看護管理経験者(看護部長・副看護部長)6名および看護管理学領域の研究者3名で項目内容の妥当性について検討を重ね,項目を精選した.また,看護管理者(看護師長)5名を対象にプレテストを行い,答えやすさの観点から項目の表現を確認した.作成した50項目は「大変あてはまる」を4点,「ある程度あてはまる」を3点,「あまりあてはまらない」を2点,「全くあてはまらない」を1点,の4件法で尋ね,得点が高いほどコンピテンシーが高いことを示している.
2) 併存妥当性に用いる尺度併存妥当性の検証には「看護管理者のコンピテンシー評価尺度(NACAS)」を用いた(本村・川口,2013).この尺度は4因子20項目からなり,信頼性と妥当性が確認されている.NACASの下位概念は「問題対処行動CP」8項目,「対人関係CP」8項目,「目標設定CP」5項目,「情報収集CP」4項目で構成されている.NACAS の20項目は「大変あてはまる」を4点,「ある程度あてはまる」を3点,「あまりあてはまらない」を2点,「全くあてはまらない」を1点,の4件法で尋ね,得点が高いほどコンピテンシーが高いことを示している.NACASの使用については,開発者の許可を得て使用した.
3) 個人属性と施設特性に関する項目個人属性として,年齢,性別,職位,スタッフおよび管理者の経験年数,資格,最終学歴,看護管理者研修を尋ねた.施設特性として,所在地,設置主体,施設種類,施設規模,部署の看護配置基準,在院日数,稼働率を尋ねた.
5. 分析方法回収された調査票のうち,同意確認欄にチェックがされていないものを除き有効回答とした.
1) 看護管理者のキーコンピテンシーの因子構造「看護管理者のキーコンピテンシー」50項目について,はじめに記述統計による項目分析を行った.欠損値(1.0%以上),天井効果(M + SD > 4.0),フロア効果(M – SD < 1.0)を削除基準に項目を確認した.また,項目間相関(I-I相関;r > .80),Item-Total相関分析(I-T相関;r < .40)を削除基準に項目を確認した.
次に,Fokkema & Greiff(2017)の見解にもとづき,有効回答データをランダムに2つのグループに分割し,サンプルグループ1を用いて探索的因子分析(主因子法,バリマックス回転)を行い,累積寄与率を確認した.そして,抽出された各因子において因子負荷量が0.40以上であり,かつ,因子負荷量が高い順から6項目を採用して,再度,因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,因子の収束性と因子間相関を確認した.なお,各因子を6項目とした理由は,今後の尺度の活用可能性を鑑み,調査項目の記入者負担の最小化,各因子の同じ得点範囲による評価の容易性を考慮したためである.
2) 妥当性の検証構成概念妥当性は,サンプルグループ2を用いて確証的因子分析を行い,モデルの適合度指標(GFI, AGFI, CFI, RMSEA)を確認した.また,すべての有効回答データを用いて看護管理者のコンピテンシー評価尺度(NACAS)との相関から併存妥当性を確認した.相関分析は各因子の得点について正規性をShapiro-Wilk検定で確認したうえでスピアマンの相関係数を求めた.さらに,職位による群間比較で基準関連妥当性を確認した.具体的には,看護師長群と主任群に分け,それぞれの分布の正規性Shapiro-Wilk検定で確認したうえでt検定を行った.
3) 信頼性の検証信頼性は,すべての有効回答データを用いて項目全体と抽出された因子ごとにCronbachのα係数で内的整合性を確認した.
以上の統計解析にはSPSS Version 24とAMOS Version 24を使用し,統計学的有意水準はp < .05とした.
6. 倫理的配慮本研究は,個人情報保護法および人を対象とした医学系研究に関する倫理指針に従い,長野県看護大学倫理委員会の審査を受け承認を得た(承認番号2017-5).対象者へは個人や施設の匿名性を保証し,調査協力の承諾は調査票の同意欄へのチェックで同意を確認した.調査票は,プライバシーの配慮に留意し,匿名にて行うこと,調査への参加は対象者の意思を尊重し,研究の参加・不参加によって不利益を被らないこと,得られたデータは本研究の目的以外で使用しないこと,データは統計的に処理し,厳重に保管し,分析終了後に確実に廃棄することを文書にて説明した.分析結果については,個人が特定されない形で,学会発表や論文投稿する旨を文書で説明した.
看護管理者2,480名から回答が得られ(回収率56.2%),有効回答2,330名(有効回答率94.0%)を分析対象とした.
対象者の個人属性と施設特性を表1に示した.対象者の平均年齢は48.0歳,女性が2,205名(94.8%)を占めていた.看護スタッフとしての平均経験年数は16.7年であり,看護管理者としての平均経験年数は12.6年であった.最終学歴は3年課程の専門学校と看護短期大学で2,012名(87.0%)を占めていた.認定看護管理者の資格を有する者は69名(3.0%)であった.
全体 (N = 2,330) |
看護師長 (n = 1,227) |
主任 (n = 1,103) |
p値 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
n | % | n | % | n | % | ||||
個人属性 | 年齢† | (mean ± SD) | 48.0 ± 6.6 | 50.9 ± 5.3 | 44.8 ± 6.4 | <.01 | |||
性別‡ | 1.男性 | 121 | 5.2% | 41 | 3.3% | 80 | 7.3% | <.01 | |
2.女性 | 2,205 | 94.8% | 1,183 | 96.7% | 1,022 | 92.7% | |||
職位‡ | 1.看護師長・科長 | 1,227 | 52.7% | 1,227 | 100.0% | 0 | 100.0% | <.01 | |
2.副師長・主任 | 1,103 | 47.3% | 0 | 0.0% | 1,103 | 0.0% | |||
経験年数 スタッフ† | (mean ± SD) | 16.7 ± 6.2 | 16.1 ± 6.5 | 17.4 ± 5.9 | <.01 | ||||
管理者† | (mean ± SD) | 12.6 ± 6.4 | 13.6 ± 6.3 | 6.8 ± 4.8 | <.01 | ||||
資格‡(複数回答) | 1.看護師 | 2,273 | 97.6% | 1,195 | 97.4% | 1,078 | 97.7% | <.01 | |
2.保健師 | 153 | 6.6% | 46 | 3.7% | 107 | 9.7% | <.01 | ||
3.助産師 | 160 | 6.9% | 99 | 8.1% | 61 | 5.5% | .01 | ||
4.認定看護師 | 207 | 8.9% | 83 | 6.8% | 124 | 11.2% | <.01 | ||
5.専門看護師 | 27 | 1.2% | 10 | 0.8% | 17 | 1.5% | .08 | ||
6.認定看護管理者 | 69 | 3.0% | 57 | 4.6% | 12 | 1.1% | <.01 | ||
7.その他 | 103 | 4.4% | 57 | 4.6% | 46 | 4.2% | .31 | ||
最終学歴‡ | 1.専門学校 | 1,605 | 69.4% | 856 | 70.4% | 749 | 68.3% | <.01 | |
2.看護短期大学 | 407 | 17.6% | 210 | 17.3% | 197 | 18.0% | |||
3.看護大学 | 127 | 5.5% | 35 | 2.9% | 92 | 8.4% | |||
4.看護系大学院(看護管理専攻) | 43 | 1.9% | 36 | 3.0% | 7 | 0.6% | |||
5.看護系大学院(看護管理専攻以外) | 85 | 3.7% | 48 | 3.9% | 37 | 3.4% | |||
6.看護系以外の大学院 | 46 | 2.0% | 31 | 2.5% | 15 | 1.4% | |||
看護管理者研修‡ | 1.ファーストレベル | 987 | 56.6% | 497 | 44.1% | 490 | 79.4% | <.01 | |
2.セカンドレベル | 587 | 33.7% | 558 | 49.6% | 29 | 4.7% | |||
3.サードレベル | 35 | 2.0% | 33 | 2.9% | 2 | 0.3% | |||
4.その他 | 134 | 7.7% | 38 | 3.4% | 96 | 15.6% | |||
施設特性 | 所在地‡ | 1.北海道 | 164 | 7.1% | 79 | 6.5% | 85 | 7.7% | .73 |
2.東北 | 229 | 9.9% | 119 | 9.7% | 110 | 10.0% | |||
3.関東 | 512 | 22.1% | 285 | 23.3% | 227 | 20.7% | |||
4.中部 | 701 | 30.2% | 360 | 29.5% | 341 | 31.0% | |||
5.近畿 | 372 | 16.0% | 194 | 15.9% | 178 | 16.2% | |||
6.中国 | 59 | 2.5% | 34 | 2.8% | 25 | 2.3% | |||
7.四国 | 70 | 3.0% | 38 | 3.1% | 32 | 2.9% | |||
8.九州・沖縄 | 214 | 9.2% | 113 | 9.2% | 101 | 9.2% | |||
設置主体‡ | 1.国 | 76 | 3.3% | 49 | 4.1% | 27 | 2.5% | .12 | |
2.都道府県・市町村 | 572 | 25.0% | 285 | 23.6% | 287 | 26.6% | |||
3.国立大学法人 | 660 | 28.9% | 354 | 29.4% | 306 | 28.4% | |||
4.社会医療法人 | 34 | 1.5% | 16 | 1.3% | 18 | 1.7% | |||
5.医療法人 | 121 | 5.3% | 62 | 5.1% | 59 | 5.5% | |||
6.学校法人 | 255 | 11.2% | 135 | 11.2% | 120 | 11.1% | |||
7.公益法人 | 89 | 3.9% | 58 | 4.8% | 31 | 2.9% | |||
8.社会保険関連団体 | 7 | 0.3% | 4 | 0.3% | 3 | 0.3% | |||
9.日本赤十字社 | 130 | 5.7% | 64 | 5.3% | 66 | 6.1% | |||
10.済生会 | 80 | 3.5% | 36 | 3.0% | 44 | 4.1% | |||
11.その他 | 261 | 11.4% | 143 | 11.9% | 118 | 10.9% | |||
施設種類‡(複数回答) | 1.特定機能病院 | 1,452 | 62.3% | 677 | 55.2% | 775 | 70.3% | .23 | |
2.地域医療支援病院 | 846 | 36.3% | 466 | 38.0% | 380 | 34.5% | .19 | ||
3.小児救急医療拠点病院 | 176 | 7.6% | 105 | 8.6% | 71 | 6.4% | .06 | ||
4.災害拠点病院 | 1,241 | 53.3% | 669 | 54.5% | 572 | 51.9% | .24 | ||
5.がん診療連携拠点病院 | 1,392 | 59.7% | 747 | 60.9% | 645 | 58.5% | .29 | ||
6.周産期母子医療センター | 726 | 31.2% | 406 | 33.1% | 320 | 29.0% | .06 | ||
7.一般病院 | 224 | 9.6% | 126 | 10.3% | 98 | 8.9% | .29 | ||
8.臨床研修指定病院 | 989 | 42.4% | 561 | 45.7% | 428 | 38.8% | .01 | ||
9.救命救急センター | 953 | 40.9% | 524 | 42.7% | 429 | 38.9% | .07 | ||
10.その他 | 43 | 1.8% | 28 | 2.3% | 15 | 1.4% | .12 | ||
施設規模‡ | 1.100床未満 | 7 | 0.3% | 4 | 0.3% | 3 | 0.3% | .10 | |
2.100~299床 | 2 | 0.1% | 0 | 0.0% | 2 | 0.2% | |||
3.300~499床 | 62 | 2.7% | 20 | 1.6% | 42 | 3.9% | |||
4.500~799床 | 1,664 | 72.2% | 876 | 72.0% | 788 | 72.3% | |||
5.800床以上 | 571 | 24.8% | 316 | 26.0% | 255 | 23.4% | |||
部署の看護配置‡ | 1.7対1 | 1,948 | 84.4% | 1,004 | 82.5% | 944 | 86.4% | .09 | |
2.10対1 | 54 | 2.3% | 30 | 2.5% | 24 | 2.2% | |||
3.その他 | 307 | 13.3% | 183 | 15.0% | 124 | 11.4% | |||
部署の在院日数† | (mean ± SD) | 13.0 ± 3.9 | 13.1 ± 4.0 | 12.9 ± 3.9 | .52 | ||||
部署の稼働率† | (mean ± SD) | 85.4 ± 6.7 | 84.8 ± 6.6 | 86.2 ± 6.7 | .46 |
† t検定
‡ χ2検定
施設特性として,設置主体については国・都道府県・市町村が648名(28.3%),国立大学法人が660名(28.9%)を占めていた.施設種類を複数回答で尋ねたところ,特定機能病院,診療連携拠点病院,災害拠点病院,臨床研修指定病院の順で多かった.
2. 看護管理者のキーコンピテンシーの因子構造記述統計による項目分析を行った結果,50項目のうち欠損値,天井効果,フロア効果の削除基準に該当する項目はなかった(表2).また,I-I相関とI-T相関を分析した結果,削除基準に該当する項目はなかった.
Mean | SD | 欠損値 | フロア効果 | 天井効果 | I-I相関 | I-T 相関 |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
n | % | (M – SD) | (M + SD) | Min | Max | ||||||
1 | 目標(あるべき姿)と現状の差異を,常に客観的事実をもとに確認している | 2.9 | 0.5 | 6 | 0.3% | 2.3 | 3.4 | .24** | – | .51** | .58** |
2 | 状況の変化を見逃さないよう,多方面から情報収集し,リスクを常にモニタリングしている | 2.8 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.2 | 3.4 | .20** | – | .55** | .58** |
3 | 直面している状況は,どの段階にあるか(問題把握の段階,原因究明の段階,手段選択決定の段階,リスク対応の段階)を常に把握している | 2.7 | 0.6 | 5 | 0.2% | 2.1 | 3.3 | .23** | – | .55** | .63** |
4 | 将来,何か不都合は生じないか,それは現状のままでいいのか,を考えて問題の洗い出しを行っている | 2.8 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.2 | 3.4 | .23** | – | .52** | .59** |
5 | なぜ問題が起きたのか,その「なぜ」を繰り返し問い,原因の洗い出しを行っている | 3.0 | 0.6 | 15 | 0.6% | 2.4 | 3.6 | .24** | – | .60** | .61** |
6 | 問題が起きている状況は,時間の経過(過去・現在・未来)の中で,どのような傾向(繰り返し起こるなど)にあるかを捉えている | 2.9 | 0.6 | 5 | 0.2% | 2.3 | 3.5 | .26** | – | .60** | .59** |
7 | 「問題が起きている場合」と「起きていない場合」の状況の違いを確認している | 2.7 | 0.6 | 6 | 0.3% | 2.1 | 3.4 | .22** | – | .52** | .54** |
8 | 原因を特定する際は,その真実を立証するための裏づけ情報を収集している | 2.9 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.3 | 3.5 | .28** | – | .73** | .63** |
9 | 原因を特定する際は,起きている状況を分析し,全体像を把握している | 3.0 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.4 | 3.6 | .30** | – | .73** | .65** |
10 | 山積する問題について,優先順位を「重要度」と「緊急度」で整理している | 3.0 | 0.6 | 6 | 0.3% | 2.4 | 3.7 | .26** | – | .50** | .61** |
11 | 問題を「基本的な問題」「例外的な問題」「個別対応の問題」「頻度が高い問題」に区分し, 戦略や手段を考えている |
2.6 | 0.7 | 13 | 0.6% | 1.9 | 3.2 | .20** | – | .45** | .59** |
12 | 問題を先送りせずに,素早くタイムリーに対応している | 3.0 | 0.6 | 8 | 0.3% | 2.4 | 3.5 | .25** | – | .45** | .58** |
13 | 目標の達成基準は,数値目標を用いて,具体的かつ明確に示している | 2.8 | 0.7 | 21 | 0.9% | 2.1 | 3.4 | .22** | – | .46** | .54** |
14 | 問題が生じた原因に対して,どのように解決するべきかを繰り返し問い,対策を立てている | 2.9 | 0.6 | 9 | 0.4% | 2.3 | 3.4 | .27** | – | .50** | .63** |
15 | 状況が変化した場合の代替の対策を立てている | 2.7 | 0.6 | 8 | 0.3% | 2.1 | 3.3 | .21** | – | .50** | .54** |
16 | 目標達成のための戦略や手段を整理し,優先順位を決定している | 2.9 | 0.6 | 8 | 0.3% | 2.3 | 3.5 | .25** | – | .56** | .64** |
17 | 目標達成のための戦略や手段に応じて,担当者と時間を適切に配分している | 2.7 | 0.6 | 12 | 0.5% | 2.1 | 3.3 | .24** | – | .56** | .60** |
18 | リスクを「起きる可能性が高いか」「もし発生したならばどのような影響があるか」の2面から捉えている | 2.8 | 0.6 | 8 | 0.3% | 2.1 | 3.4 | .21** | – | .52** | .59** |
19 | 今後,問題が起きる可能性を低くするための対策を検討している | 2.9 | 0.6 | 8 | 0.3% | 2.3 | 3.5 | .23** | – | .74** | .56** |
20 | 今後,問題が起きたときの影響を小さくするための対策を検討している | 2.9 | 0.6 | 9 | 0.4% | 2.3 | 3.5 | .23** | – | .74** | .54** |
21 | 自分と異なる意見に対しては,一度相手の主張を受け入れてから,自分の考えを主張している | 3.1 | 0.5 | 8 | 0.3% | 2.5 | 3.6 | .20** | – | .44** | .46** |
22 | 相手の主張がはっきりつかめない場合「つまりあなたの言いたいことはこういうことですか」と相手の主張を明確にしてから話を進めている | 2.9 | 0.6 | 9 | 0.4% | 2.3 | 3.6 | .22** | – | .45** | .51** |
23 | 部下からの問題提起に対して安易に回答するのではなく「あなたならどうするのか」と問いかけ,自分で考えさせるようにしている | 2.9 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.3 | 3.5 | .24** | – | .45** | .52** |
24 | 部下に権限委譲する際は,基本的なコンセプトを示すのみにとどめ,遂行プロセスは部下の主体性を尊重している | 2.9 | 0.6 | 9 | 0.4% | 2.3 | 3.5 | .23** | – | .51** | .49** |
25 | 多少の失敗があっても,部下の能力に応じてチャンスを与えている | 3.1 | 0.5 | 7 | 0.3% | 2.6 | 3.6 | .24** | – | .52** | .52** |
26 | 明らかなミスを発見した時は,タイミングを逃がさず,その場で具体的に指摘している | 3.1 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.5 | 3.7 | .27** | – | .52** | .58** |
27 | 部下が抱えている問題は曖昧にせず,問題が大きくならないうちに解決策を打っている | 3.0 | 0.6 | 11 | 0.5% | 2.4 | 3.5 | .29** | – | .52** | .62** |
28 | 部下に忠告するときは,相手が受け入れられる感情の限度を考慮して忠告している | 3.1 | 0.6 | 9 | 0.4% | 2.5 | 3.7 | .24** | – | .48** | .55** |
29 | 部下のキャリアプランを確認している | 2.9 | 0.7 | 9 | 0.4% | 2.3 | 3.6 | .25** | – | .71** | .58** |
30 | 部下のキャリアプランを共有し,必要と考えられる研修を積極的に受講させている | 2.8 | 0.7 | 9 | 0.4% | 2.1 | 3.6 | .22** | – | .71** | .58** |
31 | 目標達成までのプロセスにおいて,その進捗度を定期的にチェックしている | 2.8 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.1 | 3.4 | .25** | – | .55** | .60** |
32 | 目標達成に向けて,自分の役割を認識して,自ら率先し行動している | 2.9 | 0.6 | 9 | 0.4% | 2.3 | 3.5 | .27** | – | .59** | .66** |
33 | 目標達成の評価では,成果レベルをチェックし,客観的に判断している | 2.9 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.3 | 3.5 | .29** | – | .59** | .63** |
34 | 部署目標を個人単位にブレイクダウンし,部下の能力に見合った個人目標を設定させている | 2.8 | 0.7 | 8 | 0.3% | 2.1 | 3.5 | .24** | – | .51** | .57** |
35 | 部下の業務の進捗状況を把握しながら,タイムリーに仕事を分配している | 2.8 | 0.6 | 10 | 0.4% | 2.2 | 3.4 | .23** | – | .40** | .55** |
36 | 納得できない意見に対して,譲歩することなく,アサーティブコミュニケーションができる | 2.8 | 0.6 | 9 | 0.4% | 2.2 | 3.4 | .28** | – | .43** | .57** |
37 | 意見が対立した場合は折衷案ではなく,目標を達成するにふさわしい意見を採用している | 2.8 | 0.6 | 13 | 0.6% | 2.3 | 3.4 | .26** | – | .43** | .55** |
38 | 失敗があった場合,部下のせいにするのではなく,自らの責任として対応している | 3.2 | 0.6 | 9 | 0.4% | 2.6 | 3.7 | .23** | – | .52** | .53** |
39 | 患者・家族が困っている立場に遭遇したら,即座に対応している | 3.3 | 0.5 | 10 | 0.4% | 2.8 | 3.9 | .21** | – | .67** | .59** |
40 | 患者・家族からの多少の理不尽な要求でも,冷静に対応している | 3.2 | 0.6 | 8 | 0.3% | 2.6 | 3.7 | .22** | – | .67** | .54** |
41 | なかなか成果があがらない場合,諦めずに絶対に成果を出すという意志をもって行動している | 2.8 | 0.6 | 8 | 0.3% | 2.2 | 3.4 | .26** | – | .45** | .57** |
42 | 自らの発言と実際に取っている行動は一致している | 3.0 | 0.5 | 8 | 0.3% | 2.5 | 3.5 | .25** | – | .46** | .56** |
43 | 自分の感情が他者や仕事へどのような影響を与えているかを意識して行動している | 3.2 | 0.5 | 8 | 0.3% | 2.6 | 3.7 | .22** | – | .53** | .52** |
44 | 自分の強み,弱み,限界を自覚して,行動している | 3.1 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.5 | 3.7 | .22** | – | .53** | .55** |
45 | 目標達成のために,自分に求められる役割や仕事内容が具体的にイメージできている | 3.0 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.4 | 3.6 | .28** | – | .58** | .62** |
46 | 自分のなりたい姿を明確に持ち,その実現に向けて何が必要か考えて行動している | 2.8 | 0.6 | 7 | 0.3% | 2.2 | 3.4 | .26** | – | .58** | .58** |
47 | 新しい情報や状況の変化に応じて,自らの思考や行動を変化させ,適応することができる | 2.9 | 0.6 | 10 | 0.4% | 2.3 | 3.5 | .28** | – | .54** | .60** |
48 | できる人の仕事ぶりから,そのノウハウを参考に,自分自身の行動に取り入れている | 3.0 | 0.6 | 8 | 0.3% | 2.4 | 3.6 | .21** | – | .49** | .52** |
49 | いつまでに何を完了させるべきか,締切期日を決めて,具体的に行動している | 3.0 | 0.7 | 7 | 0.3% | 2.3 | 3.7 | .23** | – | .44** | .57** |
50 | 自部署の利益よりも,病院全体の利益を考えて物事を進めている | 2.7 | 0.7 | 7 | 0.3% | 2.1 | 3.4 | .20** | – | .38** | .54** |
スピアマン相関係数 ** p < .01
以上の結果から,50項目を用いてサンプルグループ1(n = 1,160)について因子分析を行った結果,累積寄与率48.9%で,5因子が抽出された(表3).さらに,各因子で因子負荷量の高い順に6項目を選定し,計30項目を用いて因子分析を行った結果,5因子に収束した(表4).5因子を以下の通り命名した.
因子 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
9 | 原因を特定する際は,起きている状況を分析し,全体像を把握している | .782 | .249 | .234 | .137 | .161 |
5 | なぜ問題が起きたのか,その「なぜ」を繰り返し問い,原因の洗い出しを行っている | .758 | .255 | .167 | .120 | .127 |
8 | 原因を特定する際は,その真実を立証するための裏づけ情報を収集している | .745 | .253 | .180 | .136 | .193 |
6 | 問題が起きている状況は,時間の経過(過去・現在・未来)の中で,どのような傾向(繰り返し起こるなど)にあるかを捉えている | .690 | .262 | .118 | .095 | .212 |
3 | 直面している状況は,どの段階にあるか(問題把握の段階,原因究明の段階,手段選択決定の段階,リスク対応の段階)を常に把握している | .599 | .125 | .253 | .209 | .202 |
2 | 状況の変化を見逃さないよう,多方面から情報収集し,リスクを常にモニタリングしている | .566 | .112 | .243 | .180 | .185 |
4 | 将来,何か不都合は生じないか,それは現状のままでいいのか,を考えて問題の洗い出しを行っている | .561 | .180 | .246 | .145 | .204 |
7 | 「問題が起きている場合」と「起きていない場合」の状況の違いを確認している | .551 | .242 | .086 | .111 | .233 |
1 | 目標(あるべき姿)と現状の差異を,常に客観的事実をもとに確認している | .500 | .152 | .270 | .243 | .167 |
10 | 山積する問題について,優先順位を「重要度」と「緊急度」で整理している | .419 | .228 | .269 | .247 | .222 |
28 | 部下に忠告するときは,相手が受け入れられる感情の限度を考慮して忠告している | .167 | .578 | .188 | .185 | .073 |
25 | 多少の失敗があっても,部下の能力に応じてチャンスを与えている | .141 | .573 | .100 | .188 | .170 |
39 | 患者・家族が困っている立場に遭遇したら,即座に対応している | .183 | .551 | .316 | .146 | .007 |
43 | 自分の感情が他者や仕事へどのような影響を与えているかを意識して行動している | .143 | .533 | .377 | .038 | .026 |
40 | 患者・家族からの多少の理不尽な要求でも,冷静に対応している | .144 | .516 | .311 | .116 | .012 |
26 | 明らかなミスを発見した時は,タイミングを逃がさず,その場で具体的に指摘している | .191 | .497 | .188 | .195 | .165 |
23 | 部下からの問題提起に対して安易に回答するのではなく「あなたならどうするのか」と問いかけ,自分で考えさせるようにしている | .168 | .493 | .094 | .163 | .211 |
22 | 相手の主張がはっきりつかめない場合「つまりあなたの言いたいことはこういうことですか」と相手の主張を明確にしてから話を進めている | .199 | .493 | .088 | .141 | .180 |
21 | 自分と異なる意見に対しては,一度相手の主張を受け入れてから,自分の考えを主張している | .137 | .486 | .170 | .079 | .139 |
38 | 失敗があった場合,部下のせいにするのではなく,自らの責任として対応している | .167 | .466 | .236 | .181 | .084 |
24 | 部下に権限委譲する際は,基本的なコンセプトを示すのみにとどめ,遂行プロセスは部下の主体性を尊重している | .148 | .454 | .083 | .204 | .210 |
36 | 納得できない意見に対して,譲歩することなく,アサーティブコミュニケーションができる | .167 | .408 | .256 | .240 | .226 |
44 | 自分の強み,弱み,限界を自覚して,行動している | .196 | .400 | .286 | .044 | .054 |
37 | 意見が対立した場合は折衷案ではなく,目標を達成するにふさわしい意見を採用している | .207 | .381 | .236 | .221 | .203 |
48 | できる人の仕事ぶりから,そのノウハウを参考に,自分自身の行動に取り入れている | .194 | .307 | .263 | .094 | .126 |
45 | 目標達成のために,自分に求められる役割や仕事内容が具体的にイメージできている | .252 | .253 | .726 | .180 | .160 |
46 | 自分のなりたい姿を明確に持ち,その実現に向けて何が必要か考えて行動している | .241 | .226 | .677 | .160 | .141 |
47 | 新しい情報や状況の変化に応じて,自らの思考や行動を変化させ,適応することができる | .273 | .260 | .527 | .158 | .180 |
42 | 自らの発言と実際に取っている行動は一致している | .202 | .265 | .459 | .149 | .128 |
49 | いつまでに何を完了させるべきか,締切期日を決めて,具体的に行動している | .217 | .223 | .457 | .225 | .164 |
41 | なかなか成果があがらない場合,諦めずに絶対に成果を出すという意志をもって行動している | .165 | .245 | .445 | .180 | .164 |
50 | 自部署の利益よりも,病院全体の利益を考えて物事を進めている | .232 | .225 | .336 | .249 | .152 |
12 | 問題を先送りせずに,素早くタイムリーに対応している | .303 | .209 | .315 | .235 | .293 |
30 | 部下のキャリアプランを共有し,必要と考えられる研修を積極的に受講させている | .176 | .284 | .097 | .780 | .069 |
29 | 部下のキャリアプランを確認している | .170 | .333 | .098 | .766 | .049 |
34 | 部署目標を個人単位にブレイクダウンし,部下の能力に見合った個人目標を設定させている | .184 | .238 | .180 | .695 | .162 |
31 | 目標達成までのプロセスにおいて,その進捗度を定期的にチェックしている | .185 | .201 | .284 | .533 | .232 |
33 | 目標達成の評価では,成果レベルをチェックし,客観的に判断している | .248 | .210 | .324 | .460 | .270 |
13 | 目標の達成基準は,数値目標を用いて,具体的かつ明確に示している | .269 | .114 | .274 | .440 | .200 |
32 | 目標達成に向けて,自分の役割を認識して,自ら率先し行動している | .264 | .246 | .306 | .386 | .245 |
27 | 部下が抱えている問題は曖昧にせず,問題が大きくならないうちに解決策を打っている | .217 | .272 | .218 | .384 | .209 |
35 | 部下の業務の進捗状況を把握しながら,タイムリーに仕事を分配している | .163 | .265 | .300 | .313 | .272 |
20 | 今後,問題が起きたときの影響を小さくするための対策を検討している | .306 | .215 | .124 | .094 | .750 |
19 | 今後,問題が起きる可能性を低くするための対策を検討している | .335 | .213 | .144 | .106 | .732 |
18 | リスクを「起きる可能性が高いか」「もし発生したならばどのような影響があるか」の2面から捉えている | .404 | .205 | .141 | .124 | .519 |
15 | 状況が変化した場合の代替の対策を立てている | .333 | .174 | .157 | .189 | .473 |
17 | 目標達成のための戦略や手段に応じて,担当者と時間を適切に配分している | .299 | .164 | .279 | .308 | .419 |
16 | 目標達成のための戦略や手段を整理し,優先順位を決定している | .377 | .136 | .354 | .299 | .406 |
14 | 問題が生じた原因に対して,どのように解決するべきかを繰り返し問い,対策を立てている | .328 | .226 | .210 | .224 | .402 |
11 | 問題を「基本的な問題」「例外的な問題」「個別対応の問題」「頻度が高い問題」に区分し,戦略や手段を考えている | .329 | .166 | .219 | .209 | .346 |
寄与率 | 11.4 | 10.2 | 9.9 | 8.9 | 8.4 | |
累積寄与率 | 11.4 | 21.7 | 31.6 | 40.5 | 48.9 |
サンプルグループ1(n = 1160)について,主因子法,バリマックス回転を実施
因子 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
5 | なぜ問題が起きたのか,その「なぜ」を繰り返し問い,原因の洗い出しを行っている | .801 | .072 | –.069 | –.019 | –.054 |
9 | 原因を特定する際は,起きている状況を分析し,全体像を把握している | .756 | .052 | .036 | .004 | –.028 |
8 | 原因を特定する際は,その真実を立証するための裏づけ情報を収集している | .756 | .037 | –.051 | –.023 | .061 |
6 | 問題が起きている状況は,時間の経過(過去・現在・未来)の中で,どのような傾向(繰り返し起こるなど)にあるかを捉えている | .717 | .051 | –.100 | –.020 | .095 |
3 | 直面している状況は,どの段階にあるか(問題把握の段階,原因究明の段階,手段選択決定の段階,リスク対応の段階)を常に把握している | .622 | –.125 | .252 | .005 | –.068 |
2 | 状況の変化を見逃さないよう,多方面から情報収集し,リスクを常にモニタリングしている | .523 | –.078 | .148 | .061 | .009 |
40 | 患者・家族からの多少の理不尽な要求でも,冷静に対応している | .022 | .660 | .035 | –.032 | .038 |
39 | 患者・家族が困っている立場に遭遇したら,即座に対応している | .098 | .649 | –.001 | .071 | –.061 |
43 | 自分の感情が他者や仕事へどのような影響を与えているかを意識して行動している | –.066 | .577 | .288 | –.115 | –.009 |
28 | 部下に忠告するときは,相手が受け入れられる感情の限度を考慮して忠告している | –.033 | .540 | .001 | .169 | .038 |
26 | 明らかなミスを発見した時は,タイミングを逃がさず,その場で具体的に指摘している | .087 | .447 | –.021 | .132 | .112 |
25 | 多少の失敗があっても,部下の能力に応じてチャンスを与えている | –.019 | .434 | –.019 | .158 | .142 |
45 | 目標達成のために,自分に求められる役割や仕事内容が具体的にイメージできている | –.035 | .081 | .831 | –.082 | –.075 |
46 | 自分のなりたい姿を明確に持ち,その実現に向けて何が必要か考えて行動している | .015 | .023 | .781 | –.072 | –.113 |
47 | 新しい情報や状況の変化に応じて,自らの思考や行動を変化させ,適応することができる | .084 | .137 | .616 | –.089 | –.064 |
41 | なかなか成果があがらない場合,諦めずに絶対に成果を出すという意志をもって行動している | –.084 | .278 | .484 | –.034 | .023 |
49 | いつまでに何を完了させるべきか,締切期日を決めて,具体的に行動している | .070 | .082 | .476 | .076 | –.055 |
42 | 自らの発言と実際に取っている行動は一致している | .005 | .320 | .437 | –.041 | –.036 |
30 | 部下のキャリアプランを共有し,必要と考えられる研修を積極的に受講させている | .007 | .066 | –.145 | .901 | –.106 |
29 | 部下のキャリアプランを確認している | –.010 | .098 | –.122 | .877 | –.103 |
34 | 部署目標を個人単位にブレイクダウンし,部下の能力に見合った個人目標を設定させている | .035 | .016 | .045 | .620 | –.002 |
13 | 目標の達成基準は,数値目標を用いて,具体的かつ明確に示している | .045 | –.075 | .236 | .571 | .166 |
31 | 目標達成までのプロセスにおいて,その進捗度を定期的にチェックしている | –.078 | –.039 | .299 | .498 | .049 |
33 | 目標達成の評価では,成果レベルをチェックし,客観的に判断している | –.009 | –.013 | .295 | .401 | .111 |
20 | 今後,問題が起きたときの影響を小さくするための対策を検討している | –.068 | .075 | –.124 | –.082 | .949 |
19 | 今後,問題が起きる可能性を低くするための対策を検討している | .017 | .031 | –.107 | –.053 | .877 |
18 | リスクを「起きる可能性が高いか」「もし発生したならばどのような影響があるか」の2面から捉えている | .138 | .020 | .057 | –.051 | .572 |
15 | 状況が変化した場合の代替の対策を立てている | .108 | –.038 | .205 | .021 | .490 |
16 | 目標達成のための戦略や手段を整理し,優先順位を決定している | .107 | –.121 | .201 | .134 | .451 |
17 | 目標達成のための戦略や手段に応じて,担当者と時間を適切に配分している | –.001 | –.122 | .235 | .158 | .423 |
因子間相関 | ||||||
因子1【状況認識】 | 1 | |||||
因子2【メタ認知】 | .51 | 1 | ||||
因子3【自己管理】 | .67 | .58 | 1 | |||
因子4【キャリア支援】 | .54 | .55 | .66 | 1 | ||
因子5【意思決定】 | .69 | .42 | .62 | .57 | 1 |
サンプルグループ1(n = 1160)について,最尤法,プロマックス回転を実施
第1因子は,問題に直面しているときの状況把握や情報収集とそれにもとづく問題や原因の特定を示す項目で構成されていることから【状況認識】と命名した.第2因子は,自己の言動に注意しながら他者への影響を考慮し,相手やその場の状況に応じて,冷静にタイミングよく具体的に対応する項目で構成されていることから【メタ認知】と命名した.第3因子は,自分のなりたい姿を明確に持ち,目標達成のために自分に求められる役割や仕事が具体的にイメージでき,その実現に向けて何が必要か考えて諦めず状況に応じて行動する項目で構成されていることから【自己管理】と命名した.第4因子は,部下のキャリアプランを共有し,目標設定や進捗状況を確認し,課題解決や目標達成に向けてサポートする項目で構成されていることから【キャリア支援】と命名した.第5因子は,目標達成のための戦略や手段を複数検討し,最適なものを選択してタスク配分する,また,影響の最小化や代替案の検討などリスク対応を検討する項目で構成されていることから【意思決定】と命名した.
3. 妥当性の検証サンプルグループ2(n = 1150)を用いた5因子30項目のモデルの適合度指標はGFI = .907,AGFI = .899,CFI = .921,RMSEA = .047であった(図1).また,今回抽出された5因子とNACASの下位概念との相関を求めた結果,r = .34~.63(p < .01)であった(表5).さらに,看護師長群と主任群の得点を群間比較した結果,5因子すべてにおいて看護師長群の得点が有意に高かった(表6).
看護管理者のキーコンピテンシーのパス図
サンプルグループ2(n = 1150).
〇は潜在変数,□は観測変数(Qは項目番号)を示す.誤差変数は省略.
看護管理者のコンピテンシー評価尺度 (NACAS) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
問題対処行動CP | 対人関係CP | 目標設定CP | 情報収集CP | ||
因子1 | 状況認識 | .63** | .41** | .63** | .51** |
因子2 | メタ認知 | .50** | .56** | .49** | .44** |
因子3 | 自己管理 | .58** | .45** | .59** | .48** |
因子4 | キャリア支援 | .51** | .40** | .57** | .43** |
因子5 | 意思決定 | .54** | .34** | .56** | .45** |
スピアマン相関係数 ** p < .01
看護師長 (n = 1,205) |
主任 (n = 1,099) |
p値 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
mean | SD | mean | SD | |||
因子1 | 状況認識 | 17.7 | 2.8 | 16.8 | 2.7 | <.01 |
因子2 | メタ認知 | 19.3 | 2.5 | 18.6 | 2.3 | <.01 |
因子3 | 自己管理 | 17.8 | 2.7 | 17.2 | 2.5 | <.01 |
因子4 | キャリア支援 | 18.0 | 2.7 | 15.8 | 2.8 | <.01 |
因子5 | 意思決定 | 17.3 | 2.7 | 16.4 | 2.6 | <.01 |
t検定
30項目全体のCronbachのα係数はα = .93であった.各因子のα係数は,第1因子【状況認識】がα = .88,第2因子【メタ認知】がα = .81,第3因子【自己管理】がα = .83,第4因子【キャリア支援】がα = .86,第5因子【意思決定】がα = .85であり,内的整合性が確認された.
本結果より,看護管理者のキーコンピテンシーは5因子構造【状況認識】【メタ認知】【自己管理】【キャリア支援】【意思決定】であることが確認された.
今回,明らかになった【状況認識】は問題に直面しているときの状況把握や問題や原因を特定するための情報収集に関するコンピテンシーであり,【意思決定】は目標達成のための方策について起こりうるリスクを吟味し最適なものを選択するコンピテンシーである.また【状況認識】と【意思決定】の因子間相関は比較的高い結果を示しており,これらの因子は連動して起こるものと考えられ,この一連の過程は問題解決能力と言える.中小規模病院の病院長,事務部門長,看護部門長を対象とした調査結果では看護管理者に求められる能力として「問題解決」が上位にあげられており(手島ら,2016),【状況認識】と【意思決定】は看護管理者のキーコンピテンシーとして妥当であると考える.また,看護管理者のコンピテンシーの構成要素として,既存の研究成果では「分析的思考」(武村,2014;虎の門病院看護部,2013;松下,2001),「概念化(課題設定力)」(武村,2014)もしくは「概念化思考」(虎の門病院看護部,2013),「情報収集」(本村・川口,2013)もしくは「情報収集・処理能力」(八尾ら,2012;東辻ら,2005)が提示されており,これらは本研究の【状況認識】と【意思決定】に該当するものと考える.
【メタ認知】は自己の言動に注意しながら他者への影響を考慮し,相手やその場の状況に応じて,冷静に対応するコンピテンシーである.この【メタ認知】は既存研究で示された看護管理者のコンピテンシーの構成要素のうち,他者とのかかわりという点においては「コミュニケーション能力」(八尾ら,2012;東辻ら,2005)や「対人関係」(本村・川口,2013)に該当すると考えられるが,これらと大きく異なる点がある.それは他者とのかかわりの前提に自分自身を客観的に捉える視点を持つことである.つまり,看護管理者は患者や家族,部下とのかかわりにおいて,相手の言動に一喜一憂するのではなく,自己の感情を客観視して冷静な対応が求められ,【メタ認知】はこの内容を反映したコンピテンシーであると考える.
そして,【自己管理】は自分自身のキャリアビジョンを明確に持ち,その実現に向けて諦めずに状況に応じて行動するコンピテンシーであり,【キャリア支援】は部下の目標設定や進捗状況を確認し,課題解決や目標達成に向けてサポートするコンピテンシーである.主に前者は「信念の維持」(武村,2014)や「自己研鑽・学習力」(武村,2014),後者は「育成力」(武村,2014),「部下へ動機づけ」(東辻ら,2005),「能力開発」(井上,2014)を網羅している内容であり,いずれも看護職員の資質向上には必要不可欠なコンピテンシーである.看護管理者の役割とは「安全かつ質の高い看護を継続的かつ一貫性をもって提供する.良質な看護を提供するために,看護職員が看護実践能力を保持し,十分に能力を発揮して働き続けられる教育的環境を整え,各人の成長と職業上の成熟を支援する.」とされる(日本看護協会,2016).看護管理者は,単に役割をこなすだけではなく,この役割をどのようにこなすかが良質な看護の提供や看護職員の資質向上に関係してくると考える.看護管理者は自らが明確なビジョンを持ち,率先垂範する姿勢を見せ,部下が十分に看護実践能力を発揮して働き続けられる教育的環境を整えていくことが求められており,【自己管理】と【キャリア支援】は看護管理者のキーコンピテンシーとして妥当であると考える.
2. 開発した尺度の信頼性・妥当性の検証5因子30項目から構成される尺度の妥当性については,構成概念妥当性,併存妥当性,基準関連妥当性の検証を行った.構成概念妥当性について,モデル適合度指標はGFI,AGFI,CFIの値が1に近いほどあてはまりが良いとされ,RMSEAは .50以下であてはまりが良いと判断される(豊田,2007).本研究のモデルの適合度はGFI = .907,AGFI = .899,CFI = .921,RMSEA = .047であり,妥当な適合度を示す結果であると判断でき,構成概念妥当性を支持する結果と考える.併存妥当性について,既存尺度NACAS(本村・川口,2013)を用いて検証した結果,本研究の5因子とNACASの下位概念4因子との相関はr = .34~.63であり,併存妥当性を支持する結果であったと考える.基準関連妥当性について,職位別比較を行った結果,看護師長群は主任群より有意に高い得点を示し,基準関連妥当性を支持する結果であったと考える.
5因子30項目から構成される尺度の信頼性について,内的整合性を検証した結果,各因子のCronbachのα係数は .81~.88であった.内的整合性は一般にCronbachのα係数がα = .80以上の値が望ましいとされ(村上,2006),本尺度の内的整合性は確保されたと考える.
3. 本研究の限界と今後の課題本研究の対象は,全国から抽出した大規模サンプリングによって得られたものであり,看護管理者の属性については看護管理者を対象とした既存の全国規模の調査結果(日本看護協会,2014;手島ら,2016)と比べても看護管理者となった年齢,看護管理経験年数などにおいて大差はなく,施設の所在地,設置主体,施設種類についてもほぼ同様の結果であり,概ね母集団を反映した結果であると考える.しかし,本研究は大規模病院に勤務する看護管理者を対象に限定しており,中小規模病院の看護管理者への適応可能性についてはさらなる検証が必要である.また,本研究はCOSMINチェックリスト(2019)に示されている推奨事項をすべて満たすことはできなかった.中でも,再検査信頼性・測定誤差については,研究デザイン上,検証することはできなかったが,COSMINの3つのドメインである信頼性,妥当性,反応性を総合的に判断しても適切な尺度を開発することができたと言える.
今回,5因子30項目からなる尺度の信頼性と妥当性が確認できた.看護管理者の役割を果たすために鍵となるコンピテンシーは5因子構造であることが示されたため,今後はこの5つのキーコンピテンシーの向上に資する効果的な組織的支援のあり方について検討していく.
本研究は【状況認識】【メタ認知】【自己管理】【キャリア支援】【意思決定】の 5因子30項目からなる「看護管理者のキーコンピテンシー尺度」を開発した.この尺度のモデル適合度はGFI = .907,AGFI = .899,CFI = .921,RMSEA = .047を示し構成概念妥当性が確認され,5因子とNACASの下位概念との相関はr = .34~.63を示し併存妥当性が確認され,職位別比較では看護師長群が主任群より有意に高い得点を示し基準関連妥当性が確認された.各因子のα係数は .81~.88であり内的整合性が確認され,信頼性が検証された.
謝辞:本研究の実施にあたり,ご協力いただいた各施設の看護部長ならびに看護管理者の皆様に深く感謝申し上げます.本研究は平成28~31年度科学研究費補助金(基盤研究C)16K11995の研究成果の一部である.本尺度の使用許諾は必要ありません.
利益相反:本研究に関する利益相反は存在しない.
著者資格:SKおよびTK,MM,SH,TI,AMは研究の着想およびデザインへの貢献,SKおよびTK,MM,AW,SH,TS,TI,AM,KKは調査票作成への貢献,SKおよびTK,MM,AW,SH,TSはデータの入手,分析,解釈への貢献,SKおよびTK,MM,AW,SH,TS,TI,AM,KKは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言を行い,すべての著者は最終原稿を読み,承認した.