Journal of Japan Academy of Nursing Science
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The Impact of Loneliness, Sense of Coherence, and Social Support Among Female Nurses: Examination by Generation
Satoko SakurazawaKyoko UenoYuki Yonekura
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2020 Volume 40 Pages 553-561

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Abstract

目的:女性看護師のメンタルヘルスに影響する要因として孤独感に着目し,Sense of Coherence(SOC)およびソーシャル・サポートとの関連を世代別に検討した.

方法:一般病院8施設に勤務する20歳代から60歳代の女性看護師662名に自記式質問紙調査を行い,有効回答数(率)は335名(50.6%)であった.青年期(20~29歳),成人期(30~39歳),中高年期(40~68歳)の3群に分けて,SOC,ソーシャル・サポートおよび個人要因を説明変数,孤独感を目的変数とした重回帰分析を行った.

結果:青年期はSOC,同僚からのサポート,年齢に,成人期はSOC,家族/友人からのサポートに,中高年期はSOC,家族/友人からのサポート,子どもがいることに孤独感との負の有意な関連を認めた.

結論:女性看護師の孤独感を軽減するには,ライフサイクルを加味して,SOCを高める支援やソーシャル・サポートを整えることが有効である.

Translated Abstract

Purpose: We focused on loneliness as a factor influencing the mental health of female nurses, and examined its association with Sense of Coherence and social support in different generations.

Methods: A self-administered questionnaire survey was conducted on 662 female nurses in their 20s to 60s working at eight general hospitals. Among these responses, 335 (50.6%) were valid for the analysis. They were divided into three groups: adolescence (20–29 years old), adulthood (30–39 years old), and middle and old age (40–68 years old), and multiple regression analysis was conducted with Sense of Coherence, social support, and individual factors as explanatory variables, and loneliness as the objective variable.

Results: Subjects’ feeling of loneliness was negatively and significantly affected by the following factors: Sense of Coherence, support from co-workers, and age in adolescence; Sense of Coherence and support from family members and friends in adulthood; and Sense of Coherence, support from family members and friends, and having children in middle and old age.

Conclusion: The support of enhancing Sense of Coherence and the development of social support by taking into account their life cycle were effective in reducing the loneliness among female nurses.

Ⅰ. 緒言

近年の医療現場では,看護師の長時間労働や医療事故,患者からの暴力による抑うつやバーンアウト,ストレス関連障害などが顕在化し,メンタルヘルス対策の重要性が指摘されている(三木,2015).特に日本の看護師は全体の92.7%を女性が占め,幅広い世代が働く専門職であるため(厚生労働省,2017),女性ならではの不安や葛藤がメンタルヘルスに影響を与え,引き続き職場への影響も大きいと考えられる.

一般に人々は不安や葛藤を抱いているとき,自分なりの方法を用いて対処するが,対処できない時には無力感を生み出し,孤独に陥らせる.孤独感は,「自分がひとりであると感じること」であり(落合,1999),自分を助けてくれる人がいないと感じ,主観的な体験で,不快で苦痛を伴うものである(Peplau & Perlman, 1982/1988).またLonelinessという概念と同義語であり,Lonelinessにある人は,抑うつや不安,自殺念慮を引き起こしやすいことが知られている(Beutel et al., 2017Cacioppo et al., 2006).

しかし孤独感は日常のなかで誰もが感じることのある感覚でもある.その中でメンタルヘルスに深刻な影響を与え得るのは,孤独感が慢性化し,ネガティブな思考や行動の悪循環を生み出した時である(Cacioppo & Patrick, 2008/2010).本研究で看護師の孤独感に焦点をあてた理由は,孤独感の強い者は自己開示度が低く,対人関係能力と関係し,職務満足度が低いことや(上野ら,1999),看護の中間管理職が,職場のなかで十分な支援を得られず孤独を感じていることが報告されているためである(山本,2011).すなわち孤独感は,看護師のメンタルヘルスに影響し,生産性を低める要因のひとつと考えられる.

苦痛な孤独感を軽減する方法に個人のストレス対処能力が挙げられる.Sense of Coherence(以下,SOC)は人が健康に生きるための複合的な能力を表した概念であり(Antonovsky, 1987/2001),「把握可能感」,「処理可能感」,「有意味感」の3つの要素から構成されている.Antonovsky(1987/2001)は,把握可能感を自分の置かれている状況や,将来起こりうる状況をある程度予測,理解できる感覚のことと論じ,処理可能感をどんな困難な出来事に遭遇したとしても,何とかなる,種々の資源を活用して切り抜けられると感ずること,そして有意味感を辛い出来事も関わる価値があり,歓迎すべき挑戦であると感じている程度のことであると述べた.すなわち,SOCは,構成概念から,困難状況を直視しながらも自分なら何とかできると信ずることができ,人生には意味があると前向きに考え,その人の困難に遭遇した時の生き方や考え方を表している.先行研究では,看護師のSOCの高さが,バーンアウトに陥りにくいことを示し(枝ら,2007),母親/妻役割をもつ看護師の疲労蓄積度や抑うつが高い場合,SOCが低いことを報告するものがあり(竹内ら,2009),SOCが看護師のメンタルヘルスを測定する上で有用であることを示している.

SOCは,個人の対処能力に焦点が当てられているが,他者からの支援,すなわちソーシャル・サポートも困難時の対処能力の発揮に関連する.孤独感は社会的関係の欠如に起因するといわれ(Peplau & Perlman, 1982/1988),心を通じ合えるひとがいないと実感したときの感覚であり,この概念を構成する要因に自分を理解してくれる人の存在が含まれている.個人を取り巻くさまざまな他者から提供される心理的,実体的な援助をソーシャル・サポートといい(上野,2013),サポートの授受が孤独感という不快感情を低減することが報告されている(豊島・佐藤,2013).また職場における孤独感は,職場内の人間関係の葛藤に起因すると考えられる.一方で,社会的支援としての機能を持つ人間関係は,職業性ストレスを軽減させる緩衝要因として示されている(Hurrell & McLaney, 1988).

しかし,女性が圧倒的に多い看護職は妊娠,出産,更年期障害など,ライフイベントに応じて心身ともに体調が影響されるため,職場のストレスのみを視野に入れるのはこの職業を担う看護師のメンタルヘルスを検討するには不十分である.今後,女性看護師に対し,具体的な支援方法を検討し,実施することは彼女らのメンタルヘルスを維持,向上させ,かつ年齢にかかわらず職務に対する意欲を維持させるうえで必要であろう.そこで本研究では,メンタルヘルスの不調に影響する孤独感と,一般的なライフイベントを識別するための年齢や婚姻状況などの個人要因,そしてSOCおよびソーシャル・サポートの程度からこれらがどのように関連しているかを明らかにすることを目的とした.

Ⅱ. 研究方法

1. 調査対象およびデータ収集方法

便宜的標本抽出法により関東地方の病床数200床以上の一般病院の施設長,看護部長に文書と口頭で調査協力を依頼した.看護部長から署名による協力の同意が得られた8施設に勤務する20歳代から60歳代の常勤の女性看護師662名を対象に,調査協力依頼文書と無記名自記式質問紙を送付した.配布方法は看護部に一任し,回収方法は個別郵送法にて,研究対象者が無記名で質問に回答後,添付してある返信用封筒に質問紙を厳封し,投函する方法で行った.調査期間は2018年4月から7月であった.

2. 調査内容

1) 個人要因

女性あるいは,パートナーのいない者,子どもがいない者,単独で暮らしている者は孤独感が強い(Beutel et al., 2017)との先行研究に基づき,孤独感に関連があると想定される要因として,年齢,婚姻の有無,子どもの有無,同居者の有無,臨床経験年数,所属部署,職位について尋ねた.

2) 孤独感

Russell(1996)が作成し,柴田(2008/2010)が翻訳した日本語版UCLA孤独感尺度第3版(University of California, Los Angeles Loneliness Scale Version 3; UCLA. LS. Ver. 3)を使用した.本尺度は20項目で構成され,11項目がネガティブな表現,残りの9項目がポジティブな表現の逆転項目となっており下位尺度はない.回答は,「全くない」「めったにない」「ときどきある」「いつもある」の4件法であり,得点範囲は20~80点で,得点が高いほど孤独感が高いことを示す.豊島・佐藤(2013)の調査で,因子構造と信頼性,妥当性が確認されている.

3) Sense of coherence; SOC

Antonovskyが開発し,山崎が翻訳した13項目短縮版sense of coherence(SOC)スケール日本語版(7件法)を使用した(Antonovsky, 1987/2001).本尺度は,把握可能感(5項目),処理可能感(4項目),有意味感(4項目)の3つの下位概念から成り立ち,計13項目で構成され,「とてもよくある」「まったくない」などの7件法(SD法)で回答する.得点範囲は13~91点で,得点が高いほどSOCが高いことを示す.標準化のため全国代表サンプル調査で基準値の算出,信頼性,妥当性が確認されている(戸ヶ里,2017戸ヶ里ら,2015).

4) ソーシャル・サポート

米国国立職業安全健康研究所(National Institute for Occupational Safety and Health; NIOSH)が職業性ストレスモデルに基づいて開発し(Hurrell & McLaney, 1988),原谷(1998)が翻訳した日本語版NIOSH職業性ストレス調査票を使用した.本尺度の信頼性と妥当性は,原谷(2004)によって確認されており,主要な質問項目数は142項目,20下位尺度で構成されている.下位尺度は仕事のストレッサー(89項目),仕事外の要因(7項目),個人要因(10項目),緩衝要因(12項目),ストレス反応(24項目)である.この調査票は目的によって,必要な下位尺度のみを使用することが可能である.そこで,今回は社会的支援の程度を測定する緩衝要因尺度(12項目)を使用した.緩衝要因尺度は「直属の上司」,「職場の同僚」,「配偶者,友達,親族」の各4項目から構成されている.回答は,「非常に」「多少」「少し」「全くない」「そういう人はいない」の5件法であり,得点範囲は12~60点,部類ごとでは4~20点で,得点が高いほどソーシャル・サポートが受けられていることを示す.

なお,上記3つの尺度の使用については,尺度開発者の承諾を得て実施した.

3. 分析方法

効果量0.25,有意水準0.05,検定力0.8でサンプルサイズを算出し,159(3グループ,各53)必要であることを確認した.データ回収後に各尺度の内的一貫性を評価するため,Cronbachのα係数を算出した.分布を確認したところ正規分布からの大きな逸脱はなく,パラメトリック検定は正規性からの逸脱に頑健性があるので,パラメトリック検定を採用した.

世代の区分は,国眼(1999)の調査を参考に,青年期(20~29歳),成人期(30~39歳)とし,継続雇用制度を導入し看護職員を活用している背景から,40歳代,50歳代の中年期の区分に60歳代を含め,中高年期(40~68歳)と変更し3群に分けて分析した(以後「世代別」).対象者の基本属性を示し,世代別と婚姻,子ども,同居者の有無,所属部署,職位との関係をみるためχ2独立性の検定を行った.孤独感,SOC,ソーシャル・サポートの各尺度得点の結果を示し,世代別による平均の差を確認するため,各尺度得点の一元配置分散分析を行った.分散分析でSOC得点に有意差が認められたため,多重比較法はGames-Howel法を用いた.個人要因である婚姻,子ども,同居者の有無,所属部署(病棟と病棟以外),職位(管理職と管理職以外)の違いによる,孤独感得点の差を調べるために,t検定を行った.孤独感との関連を検討するために,孤独感を目的変数,SOC,ソーシャル・サポートおよび個人要因である年齢,婚姻,子ども,同居者の有無,所属部署,職位を説明変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った.なおSOCは3つの下位概念間の関連性が高く複雑に絡み合っているため(戸ヶ里,2017),総得点を投入し,ソーシャル・サポートは上司,同僚,家族/友人に分けて投入した.個人要因は,年齢,婚姻,子ども,同居者,所属部署,職位を調整変数として投入し,多重共線性の存在を回避するためにPearsonの積率相関係数で年齢と相関が強かった臨床経験年数は除外した.説明変数間の多重共線性をVIF(Variance Inflation Factor)値により確認した.解析は統計解析ソフトIBM SPSS Statistics ver. 24を用いて,統計学的有意水準は両側5%とした.

4. 倫理的配慮

一般病院の施設長,看護部長に文書と口頭で研究調査の説明を行い,看護部長から署名による同意を得た.研究対象者に対しては文書にて説明し,質問紙の返送をもって同意とみなした.文書には研究目的,方法,研究参加の自由意思,同意撤回の自由,協力しなくても不利益を受けないこと,個人情報の保護,匿名性の確保について明記した.なお,本研究は順天堂大学医療看護学研究科研究等倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:順看倫第29-51号).

Ⅲ. 結果

女性看護師662名に質問紙を配布し,366部を回収した(回収率55.3%).このうち,各尺度項目に欠損のない335名を分析対象とした(有効回答率50.6%).

1. 対象者の基本属性(表1

対象者の基本属性を表1に示した.各年齢層の平均年齢は,青年期(n = 135)は25.4 ± 2.4歳,成人期(n = 82)は34.5 ± 2.8歳,中高年期(n = 118)は48.9 ± 5.7歳であった.職位は,管理職である者が,青年期1.5%,成人期23.2%,中高年期49.2%であった.同居者がいる者は,青年期45.9%,成人期70.7%,中高年期81.4%であった.

表1  対象者の基本属性(N = 335)
青年期 20~29歳(n = 135) 成人期 30~39歳(n = 82) 中高年期 40~68歳(n = 118)
M SD Range M SD Range M SD Range χ2
年齢 25.4 2.4 20~29 34.5 2.8 30~39 48.9 5.7 40~68
臨床経験年数 3.9 2.2 0~9 11.6 3.6 1~18 23.3 8.3 2~44
n (%) n (%) n (%)
婚姻の有無
無し 115 (85.2) 42 (51.2) 40 (33.9) 70.95***
有り 20 (14.8) 40 (48.8) 78 (66.1)
子どもの有無
無し 123 (91.1) 51 (62.2) 38 (32.2) 94.09***
有り 12 (8.9) 31 (37.8) 80 (67.8)
同居者の有無
無し 73 (54.1) 24 (29.3) 22 (18.6) 36.36***
有り 62 (45.9) 58 (70.7) 96 (81.4)
所属部署
病棟 121 (89.6) 61 (74.4) 71 (60.2) 29.64***
病棟以外 14 21 47
外来 4 (3.0) 8 (9.8) 24 (20.3)
手術室 6 (4.4) 6 (7.3) 6 (5.1)
透析室 1 (0.7) 0 (0.0) 5 (4.2)
看護部長室 0 (0.0) 0 (0.0) 5 (4.2)
ユニット 2 (1.5) 4 (4.9) 0 (0.0)
医療安全室 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (1.7)
その他 1 (0.7) 3 (3.6) 5 (4.2)
職位 71.74***
管理職 2 (1.5) 19 (23.2) 58 (49.2)
看護副部長 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (1.7)
師長 0 (0.0) 1 (1.2) 32 (27.1)
副師長・主任・係長 2 (1.5) 17 (20.7) 20 (16.9)
その他 0 (0.0) 1 (1.2) 4 (3.4)
管理職以外 133 (98.5) 63 (76.8) 60 (50.8)
スタッフ 133 (98.5) 63 (76.8) 60 (50.8)
臨床経験年数
0~3年 60 (44.4) 3 (3.7) 1 (0.8)
4~9年 75 (55.6) 17 (20.7) 7 (5.9)
10年以上 0 (0.0) 62 (75.6) 110 (93.2)

注.所属部署のその他は,入院支援室,内視鏡室などを含めた.

注.所属部署は「病棟」「病棟以外」の2群に統合して,χ2検定を適用.

注.職位のその他は,セクションリーダー,認定看護師などを含めた.

注.職位は「管理職」「管理職以外」の2群に統合して,χ2検定を適用.

*** p < .001.

2. 世代別の孤独感,SOC,ソーシャル・サポート得点と比較(表2

Cronbachのα係数は,孤独感尺度.92,SOC尺度.82,ソーシャル・サポート尺度.87であり,内的一貫性は高かった.孤独感得点の平均値は,青年期45.1 ± 9.1点,成人期46.8 ± 9.6点,中高年期43.9 ± 9.9点であった.一元配置分散分析による世代別の比較では,有意差を認めなかった.SOC得点は,世代別の比較で有意差を認め(p < .001),多重比較法を行ったところ,中高年期が青年期(p < .001)より,中高年期が成人期(p = .001)より有意に高かった.ソーシャル・サポート得点は,一元配置分散分析による世代別の比較で,有意差を認めなかった.

表2  世代別の孤独感,SOC,ソーシャル・サポート得点と比較(N = 335)
1 青年期 20~29歳(n = 135) 2 成人期 30~39歳(n = 82) 3 中高年期 40~68歳(n = 118) F 多重比較
M SD Range 95% CI M SD Range 95% CI M SD Range 95% CI
LL UL LL UL LL UL
孤独感
孤独感得点(α = .92) 45.1 9.1 23~71 43.6 46.7 46.8 9.6 28~71 44.7 48.9 43.9 9.9 21~66 42.1 45.7 2.33
SOC
SOC得点(α = .82) 50.5 9.4 25~78 48.9 52.1 49.9 11.0 19~82 47.5 52.3 55.8 12.0 31~82 53.7 58.0 10.26*** 1<3***, 2<3**
把握可能感(α = .70) 18.4 4.3 6~31 17.7 19.2 18.8 5.2 8~31 17.7 20.0 21.2 5.2 10~31 20.3 22.2
処理可能感(α = .53) 15.3 3.3 6~25 14.8 15.9 15.1 3.7 6~26 14.2 15.9 15.4 4.7 4~26 14.5 16.2
有意味感(α = .68) 16.7 3.8 5~26 16.1 17.4 16.0 4.4 4~26 15.1 17.0 19.2 4.1 9~27 18.5 20.0
ソーシャル・サポート
ソーシャル・サポート得点(α = .87) 48.0 7.0 16~60 46.9 49.2 47.1 8.0 17~60 45.3 48.8 47.6 7.5 25~60 46.3 49.0 .43
上司(α = .87) 14.7 3.0 4~20 14.2 15.2 14.6 4.0 4~20 13.7 15.5 15.1 3.5 8~20 14.4 15.7 .54
同僚(α = .89) 16.2 3.3 4~20 15.6 16.8 15.5 3.6 4~20 14.7 16.3 15.9 3.1 7~20 15.4 16.5 1.06
家族/友人(α = .83) 17.1 3.0 6~20 16.6 17.7 17.0 2.9 8~20 16.3 17.6 16.6 3.2 4~20 16.1 17.2 .93

注.孤独感は日本語版UCLA孤独感尺度第3版を使用し,得点範囲は20~80点で,得点が高いほど孤独感が高い.

注.SOCは13項目短縮版SOCスケール日本語版(SOC-13)を使用し,得点範囲は13~91点で,得点が高いほどSOCが高い.

注.ソーシャル・サポートは日本語版NIOSH職業性ストレス調査票の社会的支援の項目を使用し,得点範囲は12~60点,部類ごとでは4~20点で,得点が高いほどソーシャル・サポートが受けられていることを示す.

注.世代別に1元配置分散分析を適用し,多重比較法はGames-Howell法を用いた.

注.Cronbachのα係数.

*** p < .001.** p < .01.* p < .05.

3. 世代別の孤独感と個人要因の関係(表3

中高年期では,未婚者(t = 2.26, p = .026),子どもなし(t = 3.27, p = .001),同居者なし(t = 1.99, p = .049)群が,既婚者,子どもあり,同居者あり群と比較して孤独感得点が有意に高かった.所属部署,職位においては2群に有意な差はなかった.また青年期,成人期では,婚姻,子ども,同居者の有無,所属部署,職位の違いにより,孤独感得点に有意差はなかった.

表3  世代別の孤独感得点と個人要因の関係(N = 335)
青年期 20~29歳(n = 135) 成人期 30~39歳(n = 82) 中高年期 40~68歳(n = 118)
n M SD t n M SD t n M SD t
婚姻の有無
無し 115 45.6 9.0 1.30 42 48.0 10.0 1.10 40 46.7 9.6 2.26*
有り 20 42.7 9.7 40 45.6 9.2 78 42.4 9.7
子どもの有無
無し 123 45.4 9.1 1.15 51 47.9 9.5 1.27 38 48.0 8.6 3.27**
有り 12 42.3 9.4 31 45.1 9.7 80 41.9 9.9
同居者の有無
無し 73 45.5 9.8 0.47 24 47.5 11.2 0.39 22 47.6 8.8 1.99*
有り 62 44.7 8.3 58 46.6 9.0 96 43.0 9.9
所属部署
病棟以外 14 43.9 10.2 –0.56 21 46.6 9.1 –0.11 47 43.9 10.5 0.05
病棟 121 45.3 9.0 61 46.9 9.8 71 43.8 9.5
職位
管理職以外 133 45.2 9.1 0.49 64 46.3 10.1 –0.87 64 43.6 9.6 –0.27
管理職 2 42.0 12.7 18 48.6 7.5 54 44.1 10.3

注.病棟以外は,所属部署が外来,手術室,透析室,看護部長室,ユニット,医療安全室,その他の者を含めた.

注.職位は,管理職に師長,副師長・主任・係長,看護副部長を含め,管理職以外はそれ以外の一般職の者とした.

注.t検定を適用.

** p < .01.* p < .05.

4. 世代別の孤独感の関連要因(表4

孤独感を目的変数,SOC,ソーシャル・サポートおよび個人要因である年齢,婚姻,子ども,同居者の有無,所属部署,職位を説明変数とした重回帰分析を行った.年齢と臨床経験年数の相関をPearsonの積率相関係数でみると,青年期(r = .769),成人期(r = .605),中高年期(r = .637)であり,いずれも高かったため,多重共線性の存在を回避するために臨床経験年数を除外した.

表4  世代別の孤独感を目的変数とした重回帰分析(N = 335)
変数 青年期 20~20歳(n = 135) 成人期 30~39歳(n = 82) 中高年期 40~68歳(n = 118)
B β p VIF B β p VIF B β p VIF
個人要因
年齢 –.618 –.161 .028 1.288 .052 .015 .868 1.147 –.066 –.038 .598 1.224
婚姻 –1.853 –.072 .418 1.933 –.760 –.040 .742 2.056 –1.074 –.052 .592 2.231
子ども .438 .014 .871 1.711 –1.193 –.061 .606 1.940 –4.575 –.218 .030 2.354
同居者 1.880 .103 .163 1.314 .005 .000 .998 1.612 1.970 .078 .379 1.883
所属部署 3.595 .120 .083 1.159 –.608 –.028 .760 1.166 .311 .015 .821 1.125
職位 –3.057 –.041 .538 1.051 1.149 .050 .568 1.074 –1.117 –.057 .428 1.223
ソーシャル・サポート
上司 –.077 –.025 .749 1.527 .032 .013 .908 1.891 –.288 –.102 .193 1.453
同僚 –1.053 –.385 <.001 1.514 –.516 –.192 .097 1.849 –.498 –.156 .065 1.695
家族/友人 –.311 –.103 .151 1.241 –.944 –.286 .005 1.379 –.810 –.260 .002 1.600
SOC
SOC –.455 –.468 <.001 1.221 –.405 –.463 <.001 1.398 –.329 –.400 <.001 1.479
F 11.999 <.001 7.130 <.001 13.349 <.001
R2 .492 .501 .555
調整済みR2 .451 .431 .513

注.強制投入法,Bは偏回帰係数,βは標準偏回帰係数.

注.婚姻は,0=無し,1=有り.

注.子どもは,0=無し,1=有り.

注.同居者は,0=無し,1=有り.

注.所属部署は,0=病棟以外,1=病棟.

注.職位は,0=管理職以外,1=管理職.

解析の結果,VIF値は全変数2.5以下で多重共線性に問題はなかった.青年期では,SOC(β = –.468, p < .001),同僚からのサポート(β = –.385, p < .001),年齢(β = –.161, p = .028)に負の有意な関連を認めた.成人期では,SOC(β = –.463, p < .001),家族/友人からのサポート(β = –.286, p = .005)に負の有意な関連を認めた.中高年期では,SOC(β = –.400, p < .001),家族/友人からのサポート(β = –.260, p = .002),子どもがいること(β = –.218, p = .030)に負の有意な関連を認め,孤独感に影響を与えていた.

Ⅳ. 考察

1. 女性看護師の世代による孤独感,SOC,ソーシャル・サポートの特徴

重回帰分析の結果,3つの世代に共通して,女性看護師の孤独感には,SOCとソーシャル・サポートとの関連が確認された.ここでは女性看護師のライフサイクルの影響を踏まえた孤独感とSOC,ソーシャル・サポートとの関連について考察する.

孤独感にはSOCが最も強く影響しており,個人の対処能力が高い人は,孤独感が低いことが示された.女性看護師のSOC得点はどの世代においても,日本の女性の基準値である58.9 ± 12.5点より低かったが(戸ヶ里,2017),本研究において多重比較の結果では,中高年期群が最も高かった.これは戸ヶ里ら(2015)の年齢階層が高いほど,SOC得点が高いという結果と一致しており,年齢層の高さは,女性看護師の職場や家庭でのさまざまな経験が人格的成長に影響していることを意味していると考えられる.

中高年期群は,40歳から60歳代であり,体力や気力の減退を感じる年代であるが,ライフサイクル上さまざまなイベントを経験し,それに伴う発達課題の達成(Erikson & Erikson, 1997/2001)を経て人格的,精神的に成熟し安定した時期ともいえる.その精神的成熟は,看護師である自分に迷いがないという安定感をもたらす.本研究におけるこの世代の職業的特徴は,50%が中間管理職であったことである.彼女らは次世代の育成や,組織への貢献を期待され,使命感を抱く中で,直面する複雑なストレスに対するとき,精神的成熟がある故に現状を理解し,思考力,判断力が充実しており,それらを活用することで自分なら何とかできると信じ,前向きに感じることができている.すなわちこのことが他世代よりSOCが高い要因であろう.しかしながら,桐山ら(2002)の看護師の中間管理職を対象とした調査において,ひとりで問題を対処しようとする行動が有意に高かった報告と同様に,この年代は職場での困難な事柄をひとりで抱え込む傾向があるといえる.また緩衝作用となるサポートを,職場以外の人物に求めるため,中高年期群のなかで婚姻しておらず,同居者や子どもがいない群が,そうでない群と比較して孤独感が有意に高かったと考えられる.

成人期群は,未婚者と既婚者の割合がほぼ半数ずつで,臨床経験年数が11.6 ± 3.6年,中間管理職が20%であった.職場ではリーダーや教育的立場の役割を担う一方で,結婚や出産,キャリア形成などの選択や決断を迫られる時期である.さらに発達論から考えると中高年期群に比べ,まだ人格的に安定している時期とは言い難い.加えて青年期群では,看護師であることが自分に適しているのか確認している時期であり,この点は他の2世代との大きな違いであろう.この特徴は,サポート源の種類に反映されており,青年期群では同僚で,成人期群と中高年期群は家族/友人であった.佐野ら(2006)は,3~5年目の看護師の仕事意欲につながる要因として,同僚看護師の支援を報告している.このことは,人生経験が少なく,さらに人格の成長過程にあり,看護師であることに安定感を抱いていない若い世代は,ストレスをひとりで軽減させるには能力の限界があるため,彼女らにとって同じ境遇で喜びや辛さに共感してもらえる仲間の存在が重要なのだろう.

今回,孤独感の程度の世代差はみられなかった.しかし佐藤ら(2014)の平均年齢33.6歳で乳幼児を持つ母親を対象とした調査結果と比較すると,37.5 ± 10.0点であり,本研究の対象者の孤独感得点の方が高かった.これは,佐藤らの対象者は約6割が専業主婦であり,専業主婦と看護師という属性の違いが影響していると考えられる.看護師の仕事は,感情労働であり,日常的に患者の生死や治療に伴う緊張感に晒された環境で勤務している.古城門ら(2016)は,看護師の共感疲労に着目し,共感疲労は,ケア提供者の感情を破壊し,無力感や困惑,孤立無援感を引き起こすことを述べている.看護師は,患者や家族との関係のなかで共感だけでなく,不安や怒りなどを体験しやすく,自分自身の劣等感や無力感,罪悪感を付随しかねない.にもかかわらずこうした思いを同僚や上司には伝えにくく,ひとりで苦悩することが多いといえる.

看護師のライフサイクルを加味して孤独感を考えるためには,職場のみの要因だけでなく,個人の生活の場での葛藤を考慮する必要がある.今回の調査では孤独感の源が職場なのか,あるいはそれ以外にあるのかについて明らかにすることはできない.しかし世代別の人格的成長の特徴を踏まえると,職場内でのサポート方法として,世代別に考慮する点があることは示唆された.

2. 女性看護師の世代におけるメンタルヘルスの支援

3つの世代とも孤独感は高いが,その低減にはSOCが最も強く,次にソーシャル・サポートが影響していた.このことを踏まえて,女性看護師のメンタルヘルスの支援について考察する.

本研究の青年期群では,同僚からのサポートが重要であった.この時期における同僚は,職場で経験する辛い出来事について本音を言え,共感しあえる存在になり得る.共に困難を乗り越える仲間がそばにいると実感できることはSOCの強化にもつながる.青年期の看護師は成長過程にあり,上司や先輩が看護師としての態度や技術を習得する上で欠かせない存在でもあるが,同僚の支え合う力を強化することが孤独感の軽減に必要になると考えられる.

成人期以降では,看護師としての活動範囲が広がり,責任が増すと同時に家庭での妻や母親としての役割が加わり,ワークライフバランスの葛藤を持ちやすくなる.馬場ら(2013)は,友人がいない者ほど孤独感が高いことを論じ,また家族の団欒や友人との付き合いをもつことが,既婚女性看護師のワークライフバランスの満足感をもたらす要因であると報告されている(本島ら,2017).そのため成人期以降の看護師は,家族や友人など,より自分の身近な人とのつながりが意味を持つと考えられる.SOCは人生経験やストレス対処などによって生涯を通じて後天的に発達,向上する概念であり(Antonovsky, 1987/2001),個々の複雑な環境のなかでSOCを高める支援をし,種々の課題を自身で乗り越えられるように励ますことが必要となる.自分だけでは乗り越えられないような困難に遭遇しても,サポートしてくれる存在がいれば頑張ろうと思える.つまり,彼女らが「ひとりぼっちではない」という感覚がもてるように,日頃からの関わりを大切にする必要がある.

3. 本研究の限界と今後の課題

本研究は,横断研究であり,女性看護師の孤独感とその関連要因の因果関係には言及できない.また対象者の条件が幅広いため,管理職や中堅看護師などに焦点を絞ることや,年齢区分を変更することで新たな知見が得られる可能性がある.今後,女性看護師を対象とした孤独感の研究は非常に少ないため,関連要因との因果関係など実証的な研究の蓄積が課題である.

Ⅴ. 結論

1.女性看護師の孤独感は,青年期ではSOC,同僚からのサポート,年齢に,成人期ではSOC,家族/友人からのサポートに,中高年期ではSOC,家族/友人からのサポート,子どもがいることに負の有意な関連を認めた.

2.中高年期では,未婚者,子どもなし,同居者なし群が,既婚者,子どもあり,同居者あり群と比較して孤独感得点が有意に高かった.

3.中高年期が青年期と成人期よりもSOC得点が有意に高かった.

4.孤独感を軽減するには,ライフサイクルを加味して,SOCを高める支援やソーシャル・サポートを整えることが有効である.

付記:本研究は,平成30年度順天堂大学大学院医療看護学研究科修士論文の一部を加筆・修正したものであり,第39回日本看護科学学会学術集会において発表した.

謝辞:本研究にご協力いただきました皆様,研究遂行にあたりご指導いただきました順天堂大学大学院医療看護学研究科精神看護学分野立石彩美先生に心より感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:SSは研究の着想およびデザイン,データ収集,統計解析,結果の分析と解釈,原稿の作成を行った.YYは統計解析および結果の分析と解釈への助言,KUは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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