2021 Volume 41 Pages 29-36
目的:本研究は,放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所における医療的ケア児の受入有無の関連要因を検討することを目的とした.
方法:2018年12月末日時点で放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所の検索サイトである「放デイどっとこむ」に掲載された,全国15,560か所の放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所のうち約10%に当たる1,556か所の事業所を無作為抽出した郵送質問票調査を実施した.
結果:二項ロジスティック回帰分析の結果,医療的ケア児の受入有無の関連要因は,「訪問看護の併設(オッズ比(OR)=4.55)」,「連携:地域のリソースが具体的にわかる(OR = 1.18)」,「看護師の人数(OR = 14.94)」であった.
結論:放課後等デイサービスおよび児童発達支援における医療的ケア児の受入には,看護師の配置や医療的ケア児を地域で支えるための連携が関連していた.今後,医療福祉連携の推進と適切な職員配置の基準化が重要と示唆された.
Aim: This study aimed to investigate the factors determining whether children in need of medical care are accepted into after-school daycare and child development support centers.
Method: The study design was a cross-sectional study. A survey questionnaire was distributed to 1556 after-school daycare offices and child development support centers between January and February 2019. Statistical analyses were performed using the χ2 test, Wilcoxon rank-sum test, and logistic regression.
Results: There were 292 responses (response rate: 20.7%), of which 249 were complete enough to be analyzed. Factors related to the acceptance of children requiring medical care include “paralleled with visiting nursing offices (odds ratio (OR) = 4.55),” “cooperation: knowing local resources specifically (OR = 1.18),” and “the number of nurses (OR = 14.94).”
Conclusion: According to this study, acceptance of children requiring medical care in after-school daycare and child development support centers was related to the arrangement of nurses and cooperation to support children with medical care in the community. Therefore, it is hoped that medical welfare cooperation and appropriate staffing will be promoted in the future.
日本は世界有数の乳幼児死亡率の低率国であり,1,500 g未満の極低出生体重児が年間約5,000人出生しており,500 gを切る低出生体重児においても約半数が救命されていると報告されている(前田,2017).その背景には,日本の周産期医療の発展があり,0~19歳の子どもの死亡者数は1985年の18,488人に対し,2015年では4,834人に大幅減少している(前田,2017).乳幼児死亡率の低下および乳幼児の救命率の向上は現代医療の功績であるが,一方で医療依存度の高い医療的ケア児は増加しており,超重症心身障害児の70%が在宅で療養している(杉本ら,2008).在宅医療の発展に伴い,在宅で十分な医療を受けることで利用者の生活の質の向上は期待できるが,家族介護者への支援は十分ではない(Adelman et al., 2014).利用者の生存率は家族介護者の負担と関連しており(Dionne-Odom et al., 2016),負担のある家族介護者の死亡率は非介護者の1.63倍と報告されている(Schulz & Beach, 1999).さらに,家族介護者の生活の質は家族介護者の負担と関連しており(Franchini et al., 2020),家族介護者の負担や提供するケアの質は,利用者だけでなく,家族介護者の健康を維持する上で重要な課題である.
2012年の児童福祉法の改訂を始め,多くの障害児在宅支援体制の検討がなされたが,課題も山積されている.なかでも医療的ケア児の家族介護者への支援であるレスパイトケアは,国内外で重要性が認識されている(Hill, 2016:大槻ら,2018:Otsuki et al., 2020).レスパイトケアとは,障害児をもつ親・家族を,一時的に一定の期間,障害児の介護から解放することによって,日ごろの心身の疲れを回復し,ほっと一息つけるようにする援助とされ(廣瀬,1993),国外ではすでに在宅療養支援制度として取り扱われているにも関わらず,日本では制度化されておらず,現行の医療・福祉サービスを組み合わせたレスパイトケアが提供されている.一方で,医療的ケア児のレスパイトケアは現行サービスの構成要素や機能を包括して提供する必要があり,各種サービス毎に機能分化させて実施していくことには限界がある.むしろ,地域包括ケアとして捉えて医療的ケア児のレスパイトケアを発展させていくほうが,利用者には統合したケアを提供できる可能性が拡大する.その統合ケアとして導入されたサービスの一つに,児童福祉法を依拠とした就学障害児の生活能力の向上,社会交流の促進,保護者支援等の共生社会の実現に向けた後方支援である障害児の放課後支援である放課後等デイサービスおよび児童発達支援がある.本サービスでは,医療的ケア児の受入も期待されるが,スタッフの人員配置は,障害児10名以下に2名,以降5名間隔に1名となっており,障害児の属性等は勘案されていないことに加え,スタッフの保有資格等の厳格な区分はない.さらに医療的支援を主に担う看護師配置に関しては,障害児の重症度に応じ,1名ないし2名の加配加算となっており,医療的ケア児の積極的な受入に十分な人員配置となっているかは明らかになっていない.このように,本サービスは平成24年の児童福祉法改定に伴い発足した福祉サービスであり,高まる需要に対し,近年急速に実施主体が増加しているにも関わらず,全国規模の実態把握が十分に行われていない現状がある.放課後等デイサービスおよび児童発達支援を医療的ケア児の統合ケアとして,地域包括ケアへの貢献可能性を検討するためには,放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所における医療的ケア児の受入実態を全国規模で検討することが不可欠である.
そこで本研究では,2018年12月末日時点で放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所の検索サイトである「放デイどっとこむ」に掲載された,全国に15,560か所ある放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所のうち,10%を無作為抽出した郵送質問票調査による横断研究を実施し,医療的ケア児の受入有無の関連要因を検討することを目的とした.これらを明らかにすることで,医療的ケア児の後方支援として,放課後等デイサービスおよび児童発達支援における医療的ケア児の受入にむけた具体的な示唆と受入課題の抽出が可能となり,今後の医療的ケア児の包括的支援のあり方を検討するための基礎的資料となることが期待される.
全国の放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所検索サイトである「放デイどっとこむ」に2018年12月末日時点で掲載されていた,全国15,560か所の放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所のうち約10%に当たる1,556か所の事業所を無作為抽出した郵送質問票調査による横断研究を実施した.質問票は,事業管理者宛てに送付し,回答は事業管理者もしくは,管理責任者に依頼した.
本研究における医療的ケア児とは,「医療技術の進歩等を背景として,NICU等に長期間入院した後,引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し,たんの吸引や経管栄養など医療的ケアが必要な障害児(厚生労働省,2016)」とした.また,本研究の医療的ケア児は,放課後等デイサービスおよび児童発達支援の対象年齢である,未就学児から高校3年生までを対象とした.
2. 調査項目 1) 事業所情報および利用者特性事業所特性と利用者特性を把握するために,事業所の開設主体,実施主体,併設施設・事業の有無,医療的ケア児受入に関する設備を尋ねた.さらに,事業管理者の職種および経験年数,事業開設動機,事業所スタッフの配置,身体障害者手帳および療育手帳の有無と等級,医療的ケア児の受入有無,利用者の一日および週の利用状況を尋ねた.事業評価としては,下記のレスパイトケアの有益性の認識,連携,放課後等デイサービス自己評価表を用いた業務評価を尋ねた.
2) レスパイトケアの有益性の認識対象事業所がレスパイトケアの有益性についてどの程度認識しているかを検討するために,the benefits of respite care use by children with disabilities and their families(Otsuki et al., 2020)の尺度を用いた.レスパイトケア有益性尺度は,“Child development;子どもの発達”,“Sense of peace and life fulfillment among caregivers;家族介護者の休息と生活の充実”,“Mental health support for the caregiver;家族介護者の精神的支え”,“Expansion of perspectives and future vision;視野の拡充と将来への展望”の4ドメインから構成されており,各質問項目に対し,「そう思わない」から「そう思う」までの4件法で尋ねた.レスパイトケア有益性尺度は,それぞれの項目を得点化し,点数が高い方が回答者はよりレスパイトケアの有益性を認識していると評価する.レスパイトケア有益性尺度の使用可能性については,放課後等デイサービスおよび児童発達支援の事業管理者3名に対し,口頭および紙面で研究の趣旨を説明した上で,調査項目への回答を依頼し,表面妥当性,実施可能性を確認した.
3) 在宅医療介護従事者における顔の見える関係評価尺度対象事業所が地域でどの程度,連携を図っているかを検討するために,在宅医療介護従事者における顔の見える関係評価尺度(福井,2014)を用いて検討した.顔の見える関係評価尺度は,多職種連携(顔の見える関係づくり)を測る7ドメインと,回答者の仕事に関する全体的な満足感を測る1項目で構成されており,点数を得点化し,尺度全体およびドメインごとの使用が可能であり,点数が高い方が連携できていると評価できる.本研究では,「地域のリソースが具体的にわかる」ドメインを含む,6ドメインを用いた.回答は「そう思わない」から「そう思う」の5件法で尋ねた.
4) 放課後等デイサービス自己評価表放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所の事業における自己評価を検討するために,厚生労働省が放課後等デイサービスガイドラインの内容を反映して作成した(厚生労働省,2015),放課後等デイサービス自己評価表を用いた.自己評価表は,それぞれ「環境・体制整備」「業務改善」「適切な支援の提供」「関係機関や保護者との連携」「保護者への説明責任等」「非常時等の対応」からなる43項目で構成されている(厚生労働省,2015).自己評価表は「はい」「どちらでもない」「いいえ」の3件法で回答を行うが,「どちらでもない」の回答への偏りを避けるため,本研究では,「どちらでもない」を含む,「そう思わない」から「そう思う」の5件法で尋ねた.
3. 統計解析放課後等デイサービスおよび児童発達支援における医療的ケア児の受入有無での対象背景の確認をχ2検定およびWilcoxonの順位和検定で行った.つぎに,医療的ケア児の受入有無の関連要因を検討するために,先行研究に基づき抽出した仮定される要因をχ2検定,Wilcoxonの順位和検定による単変量解析で関連性を検討した.さらに,交絡因子を制御するために,多重共線性を勘案し,Spearmanの相関分析で相関係数が0.3以上のものは除いた上で,二項ロジスティック回帰分析による多変量解析を行った.
すべての統計解析はSAS ver. 9.4.(Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いて行い,有意水準は5%,両側検定とした.
4. 倫理的配慮本研究は,大阪大学医学部附属病院の介入研究・観察研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号18339).倫理的データ収集を担保するために,対象となった事業所は,調査は自由参加であり,匿名かつ個人を特定せず,プライバシーおよび個人情報を保護した後に結果が公開されることを通知した.
全国1,556か所の事業所に郵送質問票調査を実施した結果,宛先不明で差し戻しのあった136か所および廃業連絡のあった6か所の事業所を除く,1,414か所の事業所のうち,292か所の事業所より返送があった(回収率20.7%).そのうち,主要変数に欠測を含まない分析可能な249データを本研究の対象とした.なお,主要変数に該当しない部分的な欠測のみの回答は解析対象に含めたため,解析ごとに対象人数が異なっている.
医療的ケア児の受入有無別での対象背景は表1に示した.本研究の対象では,放課後等デイサービスのみを運営している事業所は118か所,児童発達支援のみが18か所,両方を運営している事業所が115か所であった.放課後等デイサービス(両方含む)の医療的ケア児の受入は,受入ありが48か所(20.6%),受入なしが185か所(79.4%)であった.児童発達支援(両方含む)の医療的ケア児の受入は,受入ありが37か所(28.9%),受入なしが91か所(71.1%)であった.これらを全て含めた本研究の対象での医療的ケア児の受入は,受入ありが55か所(22.1%),受入なしが194か所(77.9%)であった.医療的ケア児を受け入れている事業所では,管理者の資格として医療職である看護師が多く(p < .001),訪問看護および居宅介護の併設事業を持っている事業所が多かった(訪問看護p = .001,居宅介護p < .001).利用者の特徴として医療的ケア児を受け入れている事業所の方が1日の平均利用者数が少ないが(p = .010),利用者の週の利用頻度には有意差は認めなかった(p = .224).
項目 | あり n = 55,22.1% n(%) |
なし n = 194,77.9% n(%) |
p-value | ||
---|---|---|---|---|---|
実施主体 | 放課後等デイサービス | 無 | 6(11.1) | 8(4.1) | .087 |
有 | 48(88.9) | 185(95.9) | |||
児童発達支援 | 無 | 17(31.5) | 102(52.8) | .006 | |
有 | 37(68.5) | 91(47.2) | |||
両方 | 無 | 23(42.6) | 109(56.5) | .089 | |
有 | 31(57.4) | 84(43.5) | |||
開設主体 | 市町村 | 5(9.1) | 5(2.6) | .071 | |
株式会社 | 12(21.8) | 72(37.1) | |||
合資会社 | 1(1.8) | 3(1.5) | |||
NPO | 11(20.0) | 33(17.0) | |||
社会福祉法人 | 16(29.1) | 47(24.2) | |||
社団・財団法人 | 0(0.0) | 8(4.1) | |||
その他 | 10(18.2) | 26(13.4) | |||
併設の有無 | 併設:訪問看護 | 無 | 44(80.0) | 185(95.4) | .001 |
有 | 11(20.0) | 9(4.6) | |||
併設:居宅介護 | 無 | 27(49.1) | 149(76.8) | <.001 | |
有 | 28(50.9) | 45(23.2) | |||
管理者特性 | 保有資格 | 介護福祉士 | 18(32.7) | 56(29.5) | <.001 |
社会福祉士 | 9(16.4) | 13(6.8) | |||
看護師 | 8(14.5) | 3(1.6) | |||
資格なし | 6(10.9) | 33(17.4) | |||
保育士 | 8(14.5) | 46(24.2) | |||
その他 | 6(10.9) | 39(20.5) | |||
経験年数 | n | 55 | 191 | .53 | |
Mean | 4.98 | 5.20 | |||
SD | 4.00 | 6.01 | |||
サービス利用状況 | 一日の利用者数 | n | 54 | 193 | .01 |
Mean | 8.52 | 9.84 | |||
SD | 4.94 | 5.29 | |||
週の利用頻度 | n | 52 | 183 | .224 | |
Mean | 2.59 | 2.85 | |||
SD | 1.15 | 1.38 | |||
身体障害者手帳 | 1級 | n | 46 | 155 | <.001 |
Mean | 4.72 | 0.51 | |||
SD | 4.15 | 1.68 | |||
2級 | n | 46 | 155 | .029 | |
Mean | 0.39 | 0.19 | |||
SD | 0.88 | 0.75 | |||
3~7級 | n | 46 | 155 | .766 | |
Mean | 0.13 | 0.18 | |||
SD | 0.40 | 0.55 | |||
なし | n | 46 | 156 | <.001 | |
Mean | 5.87 | 11.75 | |||
SD | 7.38 | 5.30 | |||
療育手帳 | A | n | 45 | 154 | <.001 |
Mean | 6.04 | 3.10 | |||
SD | 4.32 | 3.22 | |||
B1 | n | 45 | 154 | .001 | |
Mean | 1.29 | 2.52 | |||
SD | 1.93 | 2.48 | |||
B2 | n | 45 | 154 | <.001 | |
Mean | 0.51 | 1.87 | |||
SD | 1.38 | 2.50 | |||
なし | n | 45 | 154 | .072 | |
Mean | 3.40 | 4.75 | |||
SD | 4.76 | 5.89 |
SD,Standard Deviation;身障,身体障害者手帳;療育,療育手帳
欠測があるためnに偏りがある
医療的ケア児のケアに関する先行研究から抽出した,施設基準や連携,有益性の認識等と,医療的ケア児の受入の関係性を検討するために,Wilcoxonの順位和検定およびχ2検定を用いた単変量解析を行った.その結果,表2に示した通り,医療的ケア児の受入は,開設理由で「地域のニーズ(p = .028)」があると回答した事業所の方が医療的ケア児の受入割合が多く,一方,開設理由が「事業拡大(p = .002)」と回答した事業所は医療的ケア児の受入割合が少なかった.また,訪問看護併設の有無(p < .001),居宅介護併設の有無(p < .001),保育士(p = .007),看護師(p < .001),リハビリ専門職のスタッフの人数(p < .001),レスパイトケアの有益性の認識(p = .013~.017),自己評価表(p = .007~.067)も医療的ケア児の受入に正の関連性が認められた.他方で,連携尺度各ドメインと医療的ケア児の受入有無には単変量解析での関連性は認めなかった.
医療的ケア児の受入 | p-value | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
無 | 有 | ||||||||
n = 194,77.9% | n = 55,22.1% | ||||||||
n | % | n | % | ||||||
開設理由 | 地域のニーズ | いいえ | 61 | 87.1 | 9 | 12.9 | .028 | ||
はい | 133 | 74.3 | 46 | 25.7 | |||||
事業拡大 | いいえ | 141 | 73.4 | 51 | 26.6 | .002 | |||
はい | 53 | 93.0 | 4 | 7.0 | |||||
経営母体の方針 | いいえ | 149 | 76.0 | 47 | 24.0 | .167 | |||
はい | 45 | 84.9 | 8 | 15.1 | |||||
営利目的の新規参入 | いいえ | 182 | 76.8 | 55 | 23.2 | .059 | |||
はい | 12 | 100.0 | 0 | 0.0 | |||||
併設 | 訪問看護 | 無 | 185 | 80.8 | 44 | 19.2 | <.001 | ||
有 | 9 | 45.0 | 11 | 55.0 | |||||
居宅介護 | 無 | 149 | 84.7 | 27 | 15.3 | <.001 | |||
有 | 45 | 61.6 | 28 | 38.4 | |||||
n | M | SD | n | M | SD | p-value | |||
連携 | 他の施設の関係者とやりとりができる | 194 | 11.8 | 2.8 | 55 | 11.4 | 2.9 | .378 | |
地域の他の職種の役割がわかる | 193 | 10.1 | 3.0 | 55 | 10.3 | 2.9 | .685 | ||
地域の関係者の名前と顔・考え方がわかる | 193 | 9.2 | 3.1 | 55 | 9.2 | 3.1 | .971 | ||
地域の多職種で会ったり話し合う機会がある | 194 | 10.3 | 3.3 | 55 | 10.7 | 3.3 | .343 | ||
地域の相談できるネットワークがある | 193 | 11.0 | 3.3 | 55 | 11.5 | 2.9 | .422 | ||
地域のリソースが具体的にわかる | 194 | 10.5 | 3.1 | 55 | 11.3 | 3.2 | .058 | ||
スタッフの人数 | 福祉専門職 | 194 | 1.0 | 1.6 | 55 | 1.1 | 1.6 | .309 | |
介護スタッフ | 194 | 1.2 | 1.9 | 55 | 1.6 | 2.5 | .261 | ||
保育士 | 194 | 1.6 | 2.0 | 55 | 2.2 | 2.2 | .007 | ||
看護師 | 194 | 0.1 | 0.3 | 55 | 1.8 | 1.8 | <.001 | ||
リハビリ専門職 | 194 | 0.2 | 0.5 | 55 | 0.6 | 1.0 | <.001 | ||
臨床心理士 | 194 | 0.1 | 0.4 | 55 | 0.1 | 0.4 | .559 | ||
レスパイトケアの有益性 | スタッフが保護者の身近な相談相手になった | 194 | 3.4 | 0.6 | 55 | 3.2 | 0.6 | .006 | |
子どもの社会性が向上した | 194 | 3.5 | 0.6 | 55 | 3.1 | 0.8 | .013 | ||
子どもが精神的に成長した | 194 | 3.5 | 0.5 | 55 | 3.2 | 0.9 | .016 | ||
子どもの新しい体験の機会が増加した | 194 | 3.7 | 0.5 | 55 | 3.6 | 0.6 | .017 | ||
自己評価表 | 用定員とスペースとの関係が適切か | 194 | 4.2 | 1.1 | 55 | 3.7 | 1.4 | .022 | |
職員の配置数は適切か | 194 | 4.4 | 1.1 | 55 | 4.0 | 1.3 | .067 | ||
バリアフリー化の配慮は適切か | 194 | 3.6 | 1.3 | 55 | 4.0 | 1.3 | .013 | ||
事業改善・目標設定へのスタッフ参画 | 194 | 4.2 | 1.0 | 55 | 3.9 | 1.1 | .017 | ||
記録の適切記載と支援の検証・改善 | 194 | 4.6 | 0.6 | 55 | 4.4 | 0.7 | .014 | ||
子どもの発達や課題について保護者と共通理解を持てているか | 194 | 4.5 | 0.6 | 55 | 4.3 | 0.8 | .007 |
カテゴリ変数はχ2検定,連続量変数はWilcoxonの順位和検定を用いた.
SD,Standard Deviation;M,Mean
つぎに,医療的ケア児の受入有無に関連する要因を検討するために,医療的ケア児の受入有無を2値名義変数とした二項ロジスティック回帰分析による多変量解析を行った.なお,交絡因子を制御するために,多重共線性を勘案し,Spearmanの相関分析で相関係数が0.3以上のものは除いた上で,モデルに強制投入した.その結果,表3に示した通り,医療的ケア児の受入有無の関連要因として,「訪問看護の併設(オッズ比(OR)=4.55)」,「連携:地域のリソースが具体的にわかる(OR = 1.18)」,「看護師の人数(OR = 14.94)」が挙げられた.
オッズ比 | 95%信頼区間 | p-value | ||
---|---|---|---|---|
下限 | 上限 | |||
併設_訪問看護 | 4.55 | 1.04 | 19.90 | .044 |
開設理由:事業拡大 | 0.60 | 0.17 | 2.13 | .428 |
看護師の人数 | 14.94 | 6.47 | 34.52 | <.001 |
連携:地域のリソースが具体的にわかる | 1.18 | 1.00 | 1.39 | .049 |
有益性:子どもの社会性が向上した | 0.53 | 0.24 | 1.16 | .111 |
自己評価表:利用定員とスペースとの関係が適切か | 1.39 | 0.82 | 2.34 | .223 |
自己評価表:職員の配置数は適切か | 0.81 | 0.50 | 1.32 | .393 |
自己評価表:事業改善・目標設定へのスタッフ参画 | 0.65 | 0.40 | 1.05 | .078 |
自己評価表:記録の適切記載と支援の検証・改善 | 0.66 | 0.30 | 1.44 | .292 |
医療的ケア児の受入有無を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を用いた.
医療的ケア児を受け入れている事業所では,看護師の配置や訪問看護の併設の有無や,居宅介護の併設が特徴であった.また,利用者の特徴としては,医療的ケア児を受け入れている事業所の方が1日の平均利用者数が少ない一方で,利用者の週の利用頻度には違いはなかった.医療的ケア児の受入有無の関連要因は,「訪問看護の併設(OR = 4.55)」,「連携:地域のリソースが具体的にわかる(OR = 1.18)」,「看護師の人数(OR = 14.94)」が挙げられた.
医療的ケア児を受け入れる際に看護師配置や訪問看護の併設が関連要因として挙げられたことは,直接的な医療的介入はもちろんであるが,看護職へ期待される役割機能が関係していると考えられる.地域における看護役割として,医療と介護を繋ぎ,シームレスなケア介入が期待されるが,医療的ケア児を福祉サービスとして受け入れるためには,医療へのアクセスや地域での継続支援の利便性は必要不可欠である.今後ますます増加が予測される医療的ケア児を地域で支えるには,児童福祉法を依拠とした福祉サービスである放課後等デイサービスおよび児童発達支援においても,サービス提供体制を効果的・効率的にする必要があり(松田ら,2018),医療的支援のための看護師を十分に配置することで,円滑なサービス提供を検討する必要がある.一方で,看護師配置を現状の制度で増員することは,事業所運営上困難な場合も多いと考えられるため,訪問看護を併用するなどの在宅支援制度を横断的かつ柔軟に活用することは,地域包括ケアシステム構築の観点からも必要な対応であると思われる.同時に,本研究が示すように,看護師が1名増えると医療的ケア児の受入が14.94倍(OR = 14.94)増加することを鑑みると,今後ますます増加する医療的ケア児を地域で継続的に支えるためには,事業所そのものを増やすという量的な対応だけではなく,医療財政的観点から捉えても,看護師配置に対する加算を強化する等の法整備を行うことなどの質的な対応も検討することは合理的な施策につながる可能性がある.したがって,今後より継続的にエビデンスを集積し,より効率的なケア提供の検討を行っていくことが望まれる.
また,医療的ケア児の受入有無には多職種連携である,顔の見える関係評価の「地域のリソースが具体的にわかる」ドメインが関連要因として挙げられた.連携はケアの質にポジティブな影響を与えると言われており(Saint-Pierre et al., 2018),さらに,訪問看護事業所向けの事業所の質向上を目指す標準的指針の自己評価ガイドラインでは,事業所運営の基盤整備及び利用者の状況に応じた専門的サービスの提供とともに,多職種連携や地域参画は主要な柱として扱われている(福井ら,2015).また,超重症児の在宅移行における訪問看護の課題として,連携の強化や社会資源の整備等が報告されており(生田,2015),地域のリソースが具体的にわかることは,地域の中で多職種連携を図り医療的ケア児を地域で支えるという,地域包括ケアへの貢献にも直結する,質の高いケアであると考えられる.放課後等デイサービスの現状と課題を全国調査で検討した小澤の研究によると(小澤,2018),放課後等デイサービスの今後の課題として,サービスの質の担保を指摘しているように,本研究でも一定水準以上のケアの質が要求される医療的ケア児の受入に際し,サービスの質の担保が重要な要因であることが示唆された.これらより,放課後等デイサービスや児童発達支援事業所は,生活支援である居宅介護事業や,医療的支援である訪問看護等と積極的に連携し,医療的ケア児を地域全体で支える基盤整備の一端を担うことが期待される.
本研究の限界は,放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所は近年著しく増加し,設立条件が緩く(小澤,2018),医療介護の実績のない事業所も数多く事業参入しているといわれている.今回の全国調査では,回答率が約20%と低く,さらに,宛先不明の事業所は配布数の約10%認めていた.これらを踏まえると,回答した事業所には,開設理由が地域のニーズに即していることや,回答に耐え得る利用者の利用実績や医療介護事業の運営実績があるなどの背景要因が考えられる.そのため,本研究では選択バイアスが生じている可能性がある.さらに,放課後等デイサービスと児童発達支援は対象となる児の年齢層が異なるため,層別分析等を用いて,それぞれにおける医療的ケア児の受入要因を検討すべきであったが,サンプルサイズ上困難であった.そのため本研究では,放課後等デイサービスと児童発達支援を医療的ケア児の受入に関する後方支援の位置づけとして突合して検討したが,今後は対象数を増やし層別分析等での詳細な検討が望まれる.また,本研究では,一時点調査に基づくものであり,因果関係については検討できない.放課後等デイサービスおよび児童発達支援が抱える社会問題等を勘案すると(松田ら,2018),より継続した縦断研究デザインによる因果関係の検証が望まれる.
本研究では,放課後等デイサービスおよび児童発達支援における医療的ケア児の受入は全体の22%であった.医療的ケア児の受入には,看護師の配置である訪問看護併設(OR = 4.55),看護師の人数(OR = 14.94),さらに医療的ケア児を地域で支えるための連携である地域のリソースが具体的にわかる(OR = 1.18)が関連していた.放課後等デイサービスや児童発達支援事業所は,居宅介護事業や訪問看護等と地域のリソースと積極的に連携し,医療的ケア児を地域全体で支える基盤整備の一端を担うことが期待されると同時に,法制度としての適切な人員配置の基準化が望まれる.
謝辞:本研究は公益財団法人ユニベール財団2018年度研究助成の助成を受けて実施した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:NO,KI,SFは研究の着想およびデザインに貢献;NOは統計解析の実施および草稿の作成;KIおよびSFは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.