Journal of Japan Academy of Nursing Science
Online ISSN : 2185-8888
Print ISSN : 0287-5330
ISSN-L : 0287-5330
Original Articles
Developing a Revised Version of the Team Approach Assessment Scale (TAAS-R)—Examining Reliability and Validity—
Yukiko IiokaTomoko Kamei
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2021 Volume 41 Pages 114-121

Details
Abstract

目的:学際的チームを基盤とし,個人の認識からチームアプローチを評価するチームアプローチ評価尺度(TAAS)の信頼性と妥当性を検討し,TAAS改訂版(TAAS-Revised Edition)を開発する.

方法:A県の総合病院3施設の医療専門職を対象にTAASを用いて無記名質問紙横断調査を行った.信頼性はα係数の算出,妥当性は探索的因子分析にて検討した.研究倫理審査委員会の承認を得て行った.

結果:回収率27.1%,有効回答は789部だった.探索的因子分析は最尤法のプロマックス回転により,22項目となり,TAASの4因子から5因子構造(チームの機能,チームへの貢献,チーム活動の重要性,チームメンバーの役割遂行,目標と役割の明確化)となった.尺度全体のα係数は .93であり,各因子は .68~.91の範囲だった.

結論:TAAS改訂版は,概ね信頼性と妥当性は確保された.

Translated Abstract

Aim: This study aimed to examine the reliability and validity of the Team Approach Assessment Scale (TAAS), which assesses a team approach based on individual perceptions, to develop a revised version (TAAS- Revised Edition) using an interdisciplinary team.

Method: An anonymous, cross-sectional questionnaire survey was conducted using TAAS on medical professionals at three general hospitals in prefecture A. The alpha coefficient was calculated for the scale’s reliability, and exploratory factor analysis (EFA) was conducted for validity. This study was carried out after being approved by research ethics reviews at the facility to which the researcher belongs and cooperating research facilities.

Results: There were 789 valid responses with a response rate of 27.1%. The EFA results yielded a 5-factor structure with 22 items using the maximum likelihood method and promax rotation. The factors of TAAS-R changed from four to five. There were nine items for “team functions,” five items for “contributions to team,” three items for “importance of team activities,” three items for “team member role performance,” and two items for “clarification of goals and roles.” The alpha coefficient for the overall scale was 0.93, while the scope of each factor had a range of 0.68–0.91.

Conclusion: This study almost confirmed the reliability and validity of the resulting TAAS-Revised Edition with a 22-item, 5 factor structure.

Ⅰ. 研究背景

近年は高齢社会の進展に伴い,患者・家族への医療・ケアはより複雑化し,領域を超えたチーム医療へのニーズが高まっている.その一方で,医療の高度化により専門的知識・技術が必要となり専門分化が進展している.チーム医療の発展には,専門分化による組織の縦割りなどの課題が言及されている(全日本病院協会,2016).

チーム医療の概念は1970年代から発展し,関連論文も急激に増加した.チームは「共通/共有された目標」「メンバーの相互依存的な協働」「小集団」の3条件が示され(菊地,2002),チーム医療は「医療に従事する多種多様な医療スタッフが,おのおのの高い専門性を前提に,目的と情報を共有し,業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い,患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と定義されている(厚生労働省,2010).しかし,チーム医療のあり方は,構成メンバー,環境,緊急度などによって容易に変化する状況依存性があり,曖昧模糊としやすい.そのような特性があるが,Multidisciplinary team,Interdisciplinary team,Transdisciplinary teamなどのチーム医療のモデルが検討され(松岡,2000大坂,2013),チームの形成段階を示したTackmanモデルが提唱されている(田村,2012).

このチーム医療の重要性に伴って多職種連携の関心が高まっている.多職種連携は,様々な職種の人が一つの目的のために連携をとり,各自の役割を果たすことを指す.また,Interprofessional Work(IPW)やInterprofessional Education(IPE)がチーム医療と多職種連携と同等として言及されるようになった.IPWは,より良い健康のための専門職の協働,専門職種間の協働実践であり,「2つ以上の異なる専門職が患者・クライエントとその家族とともにチームとして,彼らのニーズやゴールに向かって協働すること」と定義されている(田村,2012).文部科学省医学教育モデル・コア・カリキュラムや,看護実践能力の到達目標などに導入されている(文部科学省,2017).一方で,働いている各職種の専門性が高く,さらに倫理観や価値観などが仕事内容に入り込み,また多くの不確実性の中で業務が行われるため,職種間の意見対立や葛藤が生じやすいといわれ,コミュニケーション,チーム機能,価値の相違,タイミングのズレなどの多様な困難が報告されている(成瀬・宇多,2018吾妻ら,2013佐藤ら,2018).

この困難の原因である課題の明確化や対応策の構築が,チーム医療・多職種連携の発展に重要となる.その実現には,チーム医療・多職種連携の事象を捉える尺度の開発が重要である.多職種連携に関連した尺度は,特定領域に特化したり,特定の能力に特化した尺度が開発され(杉本・亀井,2011冨澤ら,2017上原ら,2019)ている.また,地域包括ケアを基盤とした多職種連携の尺度は多く開発されているが,医療施設内のチーム医療に焦点を当てた尺度は少ない.更に,海外では医療施設内のチーム医療に焦点を当てた尺度が多様に存在する.だが,コンサルテーションを基盤としたチーム活動などで日本の医療体制の相違があるものや,医師と看護師のみに焦点を当てたものなどだった(Klemenc-Ketis et al., 2018Anthoine et al., 2014).日本の医療状況に即した尺度で,医療専門職を対象とした尺度を開発する必要があると考えた.

医療施設のチーム医療では,急性期医療で適応しやすいmultidisciplinary teamが論じられることが多い.だが,地域との連携の発展が嘱望されることを鑑み,階層性がなく,目標を共有し,プランの作成,問題の解決,任務の実行と評価までを相互依存的に行う学際的チーム(interdisciplinary team)を基盤とし,医療施設内におけるチーム医療・多職種連携を想定した尺度の重要性は高いと考える.学際的チームを基盤とし,個人の認識からチームアプローチを評価する尺度として,チームアプローチ評価尺度(Team Approach Assessment Scale: TAAS)を開発し,高度実践看護師を目指す大学院生を対象として開発初期段階における信頼性と妥当性を検討した(飯岡ら,2016).だが,TAASは開発初期段階の信頼性と妥当性を検討していることと,臨床経験の少ない大学院生も含まれた対象者でありサンプルサイズが小さいなどの課題があった.医療施設内のチームアプローチの状況を評価するためには臨床の医療専門職を対象として信頼性と妥当性を再度検討し尺度を洗練させる必要があると考えた.従って,本研究の目的は,医療施設に勤務する医療専門職を対象にして,学際的チームを基盤とし,個人の認識からチームアプローチを評価する尺度(TAAS)の信頼性と妥当性を検討し,TAAS改訂版(TAAS-Revised Edition)を開発することである.

Ⅱ. 研究方法

1. 研究デザイン

本研究は横断的自記式質問紙調査を行った.

2. 対象者

研究協力の同意が得られたA県にあるがん診療拠点病院でもある総合病院3施設に勤務し,医療専門職(医師,看護師,理学療法士,作業療法士,薬剤師,管理栄養士,医療ソーシャルワーカー,臨床心理士)を対象とした.

3. データ収集方法

研究協力施設の施設長へ研究に関する説明をし,同意を得た.研究協力施設の事務部,看護部,医局などの協力にて対象者に質問紙を配布した.施設内に回収箱を設置し,対象者が質問紙を直接投函した.データ収集時期は2019年5月~9月だった.

4. データ収集内容

1) チームアプローチ評価尺度(TAAS)

TAASは個人の認識からチームアプローチを評価する尺度であり,尺度開発初期段階における信頼性と妥当性が検証されている(飯岡ら,2016).下位尺度は「チームの機能」「チームのコミュニケーション」「メンバーシップ」「チームへの貢献」で,4側面の26項目から成り,回答は「全くそう思わない」から「とてもそう思う」の4段階で回答する.

2) 対象者の特性

性別,年代,職種,経験年数,職位,多職種連携に関する研修会の有無を問う項目から成り,研究者が作成した.

5. 分析方法

解析は統計ソフトIBM SPSS Statistics26.0を用い,有意水準は0.05とした.記述統計量を算出し,天井効果,床効果,Item-Total相関を検討した.妥当性の検討は,探索的因子分析を行った.欠損値は「リストごとに除外」で探索的因子分析を行った.信頼性の検討はクロンバックのα係数を算出した.

6. 倫理的配慮

研究協力候補施設の施設長に,研究協力依頼書を用い,研究協力に関して口頭で説明し,同意書への署名をもって同意を得た.研究対象者には研究協力依頼書と質問紙を同封して配布し,研究協力施設内に設置した回収箱へ対象者が質問紙を直接投函した.回収箱への投函をもって同意とみなした.回収箱は,一度投函すると取り出せない形状とし,研究者が回収箱を回収した.質問紙は無記名とし,データはID番号を付記して管理した.本研究は,埼玉県立大学研究倫理審査委員会(承認番号30094)および研究協力施設の研究倫理審査委員会の承認を得て行った.

Ⅲ. 研究結果

1. 対象者の特性

質問紙は2,943部配布し,799部回収した(回収率27.1%).欠損値が5項目以上だった10部を削除し,789部を有効回答とした.対象者の特性は表1に示した.現在の職種での平均経験年数は,12.15年(SD9.76)だった.対象者は,看護師が多かったが,年代は広範囲となった.

表1  対象者の特性(n=789)
n %
性別 女性 650 82.4
男性 127 16.1
不明 12 1.5
年代 20代 262 33.2
30代 227 28.8
40代 179 22.7
50代 98 12.4
60代 13 1.6
不明 10 1.3
職種 医師 92 11.7
看護師 605 76.7
理学療法士 20 2.5
作業療法士 1 0.1
薬剤師 41 5.2
管理栄養士 10 1.3
医療ソーシャルワーカー 10 1.3
臨床心理士 2 0.3
不明 8 1.0
職位 スタッフ 669 84.8
管理職 99 12.5
不明 21 2.6
多職種連携研修 参加経験あり 340 43.1
参加経験なし 424 53.7
不明 25 3.2

2. 項目分析

26項目の平均得点は2.53~3.09の範囲にあり,天井効果と床効果に該当すると考えられる項目はなかった(表2).Item-Total相関は,.40~.75の範囲に分布し,削除すべき項目はないと判断した.26項目の項目間相関係数は,.19~.65の範囲に分布し,いずれも有意な正の相関が認められた(p<0.01).

表2  TAAS改訂版の項目別記述統計量(n=789)
項目 n 欠損数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 TAASの因子(原版) TAAS改訂版の因子
1 問題の解決に向けて積極的・発展的に取り組んでいる 787 2 2.89 0.523 1 4 メンバーシップ チームへの貢献
2 葛藤を処理する手段を活用している 786 3 2.61 0.629 1 4 チームの機能
3 チームメンバーはそれぞれ責任を持って役割を遂行している 787 2 2.80 0.561 1 4 メンバーシップ チームメンバーの役割遂行
4 チームメンバーそれぞれが課題に対して貢献している 788 1 2.83 0.532 1 4 メンバーシップ チームメンバーの役割遂行
5 チームの活動に関して自分の能力を効果的に発揮している 787 2 2.73 0.567 1 4 チームへの貢献 チームへの貢献
6 チームは意思決定に向けて自由な発言を認めている 788 1 2.92 0.540 1 4 チームのコミュニケーション
7 チームメンバーの専門性や特性を踏まえて役割が分担されている 785 4 2.97 0.534 1 4 チームの機能 チームメンバーの役割遂行
8 私はチームメンバーとして貢献できている 787 2 2.78 0.613 1 4 チームへの貢献 チームへの貢献
9 効率的な話し合いが展開されている 785 4 2.72 0.592 1 4 チームの機能
10 伝えるべき情報は正確に伝えている 787 2 3.01 0.480 1 4 チームの機能 チーム活動の重要性
11 チームで取り組む課題に重要性を感じている 787 2 3.09 0.520 1 4 チームの機能 チーム活動の重要性
12 チームメンバーは,少数意見であっても傾聴しようとしている 786 3 3.04 0.585 1 4 チームのコミュニケーション チーム活動の重要性
13 チームの目標や優先すべきことは明確である 786 3 2.85 0.583 1 4 チームの機能 目標と役割の明確化
14 チームメンバーの役割は明確である 786 3 2.78 0.588 1 4 チームの機能 目標と役割の明確化
15 私は良いチームワークをつくれるという自信がある 787 2 2.53 0.630 1 4 チームへの貢献 チームへの貢献
16 問題状況に応じて役割を調整している 787 2 2.82 0.521 1 4 チームの機能
17 チーム内のコミュニケーションは円滑である 786 3 2.83 0.578 1 4 チームのコミュニケーション チームの機能
18 必要な時には,適宜意見交換を行っている 786 3 3.03 0.502 1 4 チームのコミュニケーション チームの機能
19 私はチームの目標を達成するために努力している 786 3 2.97 0.500 1 4 チームへの貢献 チームへの貢献
20 チームの意思決定は効果的に行われている 785 4 2.81 0.555 1 4 チームの機能 チームの機能
21 チームメンバーはお互いに協働している 786 3 2.93 0.543 1 4 メンバーシップ チームの機能
22 私はチームが導き出した結果に満足している 786 3 2.83 0.539 1 4 チームの機能 チームの機能
23 チームメンバーはお互いに尊重しあっている 787 2 2.93 0.565 1 4 メンバーシップ チームの機能
24 チームのリーダーシップは適切である 786 3 2.83 0.595 1 4 チームの機能 チームの機能
25 チームに一体感が感じられる 785 4 2.70 0.616 1 4 チームのコミュニケーション チームの機能
26 チーム内で行われている討議は意義がある 786 3 2.93 0.567 1 4 メンバーシップ チームの機能

―は,探索的因子分析にて削除した項目を示している.

3. 探索的因子分析

設問項目は「 」,TAASの因子名を〈 〉,TAAS改定版の因子名を【 】で示した.Kaiser-Meyer-Olkinの標本妥当性は0.95だった.因子のスクリープロット,固有値,因子の解釈可能性などを検討し,5因子構造が妥当と判断した.因子抽出法は最尤法を,因子間相関が想定されるためプロマックス回転を用いた.共通性,因子負荷量などを検討し,4項目を削除した.「葛藤を処理する手段を活用している」は共通性が0.28と低く削除した.また,「チームは,意思決定に向けて自由な発言をみとめている」「効果的な話し合いが展開されている」「問題状況に応じて役割を調整している」は因子負荷量が0.4以下であり,他の項目でも代用可能と解釈され削除した.最終的に,22項目の5因子の構造となった(表3).負荷量平方和は第1因子8.00,第2因子5.32,第3因子5.22,第4因子4.86,第5因子5.29となり,累積寄与率は54.01%だった.

表3  探索的因子分析結果
チームの機能 チームへの貢献 チーム活動の重要性 チームメンバーの役割遂行 目標と役割の明確化
因子負荷量 共通性 ra
チームの機能(α=0.914)
23 チームメンバーはお互いに尊重しあっている 0.863 –0.088 0.086 0.073 –0.154 0.685 0.826
25 チームに一体感が感じられる 0.816 –0.027 –0.142 0.042 0.070 0.627 0.808
17 チーム内のコミュニケーションは円滑である 0.802 0.047 –0.052 –0.070 0.030 0.606 0.790
24 チームのリーダーシップは適切である 0.718 0.027 –0.109 0.028 0.083 0.552 0.770
21 チームメンバーはお互いに協働している 0.698 –0.007 0.102 0.127 –0.089 0.620 0.801
22 私はチームが導き出した結果に満足している 0.626 –0.114 0.092 0.136 0.060 0.564 0.773
20 チームの意思決定は効果的に行われている 0.570 0.084 0.002 0.100 0.091 0.563 0.768
26 チーム内で行われている討議は意義がある 0.481 0.024 0.237 0.044 –0.041 0.447 0.709
18 必要な時には,適宜意見交換を行っている 0.456 0.102 0.345 –0.037 –0.096 0.497 0.687
チームへの貢献(α=0.783)
8 私はチームメンバーとして貢献できている 0.037 0.834 0.044 –0.068 –0.135 0.603 0.788
5 チームの活動に関して自分の能力を効果的に発揮している –0.155 0.734 –0.020 0.284 –0.045 0.602 0.770
1 問題の解決に向けて積極的・発展的に取り組んでいる –0.122 0.469 0.181 0.101 0.087 0.382 0.704
15 私は良いチームワークをつくれるという自信がある 0.371 0.419 –0.192 –0.202 0.270 0.497 0.707
19 私はチームの目標を達成するために努力している 0.146 0.400 0.234 –0.044 –0.002 0.396 0.697
チーム活動の重要性(α=0.683)
11 チームで取り組む課題に重要性を感じている –0.146 0.047 0.705 0.039 0.094 0.507 0.801
12 チームメンバーは,少数意見であっても傾聴しようとしている 0.214 –0.095 0.516 –0.128 0.187 0.457 0.808
10 伝えるべき情報は正確に伝えている 0.087 0.232 0.462 –0.105 0.037 0.416 0.738
チームメンバーの役割遂行(α=0.741)
4 チームメンバーそれぞれが課題に対して貢献している 0.153 0.046 –0.132 0.742 0.017 0.661 0.853
7 チームメンバーの専門性や特性を踏まえて役割が分担されている 0.286 –0.060 0.097 0.487 –0.047 0.483 0.794
3 チームメンバーはそれぞれ責任を持って役割を遂行している 0.050 0.173 –0.012 0.454 0.161 0.478 0.790
目標と役割の明確化(α=0.742)
13 チームの目標や優先すべきことは明確である –0.030 –0.107 0.236 –0.007 0.758 0.656 0.890
14 チームメンバーの役割は明確である 0.028 0.010 0.051 0.218 0.578 0.585 0.893
因子相関係数
チームの機能 1.000 0.562 0.612 0.587 0.632
チームへの貢献 0.562 1.000 0.494 0.464 0.584
チーム活動の重要性 0.612 0.494 1.000 0.453 0.485
チームメンバーの役割遂行 0.587 0.464 0.453 1.000 0.482
目標と役割の明確化 0.632 0.584 0.485 0.482 1.000

因子抽出法:最尤法 回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法

ra 因子合計得点と項目との相関係数

第1因子は9項目で,「チーム内のコミュニケーションは円滑である」「必要な時には,適宜意見交換を行っている」「チーム内で行われている討議は意義がある」というチーム内のコミュニケーションに関する項目と,「チームメンバーはお互いに尊重しあっている」「チームメンバーはお互いに協働している」のチームメンバーの協働に関する項目と,「チームのリーダーシップは適切である」「チームの意思決定は効果的に行われている」のチームの効果的な機能に関する項目と,「チームに一体感が感じられる」「私はチームが導き出した結果に満足している」のチームが効果的に機能した結果に関する項目で構成された.これらは,効果的なコミュニケーションや協働や機能性に関する内容と解釈され,因子名は【チームの機能】とした.この9項目は,TAASの〈チームのコミュニケーション〉3項目,〈メンバーシップ〉3項目,〈チームの機能〉3項目だった.TAASとTAAS改訂版を比較すると,TAASの〈チームの機能〉に加えて,〈チームのコミュニケーション〉のコミュニケーションに関する項目と,〈メンバーシップ〉の協働に関する項目が【チームの機能】に移動した.

第2因子は5項目で,「私はチームメンバーとして貢献できている」「チームの活動に関して自分の能力を効果的に発揮している」「私はチームの目標を達成するために努力している」「私は良いチームワークをつくれるという自信がある」というチーム活動に対する自分の貢献や努力と自信に関する項目と,「問題の解決に向けて積極的・発展的に取り組んでいる」の問題解決への取り組みに関する項目で構成された.これらは,チーム活動に対する自分の取り組みや努力に関する内容と解釈され,因子名は【チームへの貢献】とした.5項目は,TAASの〈チームへの貢献〉4項目,〈メンバーシップ〉1項目だった.TAASの〈チームへの貢献〉の項目がTAAS改訂版の【チームへの貢献】に移動し,問題解決への取り組みの項目が加わった.

第3因子は3項目で,「チームで取り組む課題に重要性を感じている」というチーム活動の重要性の認識と,「チームメンバーは,少数意見であっても傾聴しようとしている」「伝えるべき情報は正確に伝えている」という情報共有の重要性に関する項目で構成された.これらは,チーム活動の重要性の認識と,情報共有の重要性の内容と解釈され,因子名は【チーム活動の重要性】とした.3項目は,TAASの〈チーム機能〉2項目,〈チームのコミュニケーション〉1項目だった.TAASとTAAS改訂版を比較すると,チーム活動を重要視することとそれに伴う行動が新たに抽出された.

第4因子は,「チームメンバーそれぞれが課題に対して貢献している」「チームメンバーの専門性や特性を踏まえて役割が分担されている」「チームメンバーはそれぞれ責任を持って役割を遂行している」の3項目で,いずれもチームメンバーそれぞれの役割遂行に関する項目で構成されたため,因子名は【チームメンバーの役割遂行】とした.3項目は,TAASの〈メンバーシップ〉2項目,〈チームの機能〉1項目だった.TAASとTAAS改訂版を比較すると,チームメンバーの役割遂行に関する内容が新たに抽出された.

第5因子は2項目で,「チームの目標や優先すべきことは明確である」「チームメンバーの役割は明確である」で構成され,目標や役割を明確にすることの項目であるため,因子名は【目標と役割の明確化】とした.この2項目は,TAASの〈チームの機能〉から抽出された2項目だった.

TAAS改訂版の因子間相関係数は,.45~.63の範囲にあり中程度の有意な正の相関だった(p < 0.01).

4. 信頼性の検討

TAAS改訂版のα係数は .93だった.各因子は .68~.91の範囲だった(表3).

5. TAAS改訂版の記述統計量

TAAS改訂版の各因子の記述統計量を表4に示した.合計得点を項目数で除すと,因子合計得点の平均得点は2.78~3.05の範囲にあり,【チーム活動の重要性】は他と比較して高く評価しており,【チームへの貢献】がやや低い結果だった.

表4  TAAS改訂版の記述統計量
因子合計得点 項目数で標準化した因子合計得点
因子(項目数) n 平均値 中央値 標準偏差 最小値 最大値 平均値 中央値 標準偏差 最小値 最大値
チームの機能(9) 779 25.80 27 3.90 9 36 2.87 3 0.43 1 4
チームへの貢献(5) 784 13.91 14 2.08 5 20 2.78 3 0.42 1 4
チーム活動の重要性(3) 786 9.14 9 1.24 3 12 3.05 3 0.41 1 4
チームメンバーの役割遂行(3) 785 8.61 9 1.32 3 12 2.87 3 0.44 1 4
目標と役割の明確化(2) 786 5.63 6 1.04 2 8 2.82 3 0.52 1 4
尺度全体(22) 776 63.08 64 7.98 22 88 2.87 3 0.36 1 4

Ⅳ. 考察

1. TAAS改訂版の信頼性と妥当性

信頼性の検討では,多少の相違はあるが一般的にα係数の基準値は .7~.8以上とされている(石井,2007).TAAS改訂版では,【チーム活動の重要性】のα係数はやや低かったが,それ以外は基準値を満たしており,内的整合性はほぼ保たれていると考える.妥当性の検討では,探索的因子分析の累積寄与率は53.7%であり,やや低い結果となった(松尾・中村,2005).本研究は,探索的因子分析のみによる妥当性の検討であるが,概ね保たれていると考える.TAAS改訂版は,【チーム活動の重要性】【目標と役割の明確化】を認識するとともに,【チームへの貢献】を果たし,【チームの機能】や【チームメンバーの役割遂行】が効果的に実践されていることが把握できる.

TAAS改訂版では,4項目を削除した.「葛藤を処理する手段を活用している」は,他項目と比較して具体的な対処法を問うため共通性が低くなった可能性がある.「チームは,意思決定に向けて自由な発言をみとめている」「効果的な話し合いが展開されている」は,“自由な発言”の意義が不明瞭なことや,“効果的な話し合い”の抽象的表現が影響している可能性がある.いずれもコミュニケーションに関する項目であり,「チーム内のコミュニケーションは円滑である」「必要な時には,適宜意見交換を行っている」で代替可能と考えた.更に,「問題状況に応じて役割を調整している」は,医療施設の専門職において役割の変更の機会は少ないと想定され,「チームメンバーの役割は明確である」で代替可能と考えた.以上から,4項目の削除は,項目削減というメリットもあったが,設問項目の課題から生じたことと考えられた.

また,TAAS改訂版の因子構造は,【チームへの貢献】は概ね同じ項目で構成されたが,それ以外はTAASと異なった.全体的には,TAASの〈チームの機能〉〈チームのコミュニケーション〉〈メンバーシップ〉の項目は分散し,再構成された.【チームの機能】は,チームの機能的側面だけでなく,コミュニケーションや協働に関する内容も含み,内容の抽象度が高まったことが伺える.他方,【チーム活動の重要性】【チームメンバーの役割遂行】【目標と役割の明確化】は,関連する項目が特化され新たな因子として独立したと解釈された.

因子構造の変化の主な要因には,対象者の相違が考えられる.TAASは,臨床からある程度の距離を置いた看護職のみの大学院生を対象とした少人数データによる分析結果だった.TAAS改訂版の対象者は,臨床で活躍する専門職を対象とし,看護師は多かったが看護師以外の医療専門職が含まれた.施設内における医療職はチームにおいての位置づけや役割の点で,それぞれ異なる経験や見解をもつ可能性がある.この認識の違いが因子構造の相違に影響したことが考えられる.一方,TAAS改訂版は臨床で活躍する専門職者の認識を,ひいては臨床の実状をより反映していると考える.TAAS尺度開発時,文献や既存尺度から構成要素を抽出したことと,この臨床での実情との乖離が因子構造の変化に影響した可能性がある.言い換えれば,TAASのコミュニケーションやメンバーシップの要素は,臨床におけるチーム活動において明確に区別されるものではなく,チーム医療の複雑さが影響していると考える.医療専門職の多職種連携では,現象を単純な法則や原理に落とし込むことができないため,複雑な現象を複雑なまま理解しようとする姿勢が必要というシステム理論の考え方もある(春田・錦織,2014Cooper et al., 2004).協働論では,協働の不明瞭さや理論と現実の乖離が指摘されている(小田切,2018).効果的なコミュニケーションやメンバーシップやチームの機能は重要概念と考えるが,臨床においてそれらの概念は相互依存的で複雑に影響しあい,混在すると推測された.

【チーム活動の重要性】【チームメンバーの役割遂行】【目標と役割の明確化】は,より特化した内容として抽出された.チームの組織化が成立するための必要かつ十分な条件には,相互に意思を伝達できる人の存在,それらの人々が行為を貢献しようとする意欲を持つこと,共通目標の達成を目指すことの3要素が指摘されている(神部,2008).【チーム活動の重要性】や【目標と役割の明確化】は,それらを反映していると考えた.そして,【チームメンバーの役割遂行】と【目標と役割の明確化】では,チームメンバーの役割は明確するにも関わらず,各役割の遂行や課題への貢献の状況を問う設問もあり,役割に対する多角的な見解が読み取れる.バーナードが専門化は職種や職務の分割よりも広い意味を持っており,場・時間・人・プロセス・対象の要素が相互依存的に作用して組織として理解されると述べているように(村田,2010),役割を明確にしつつも役割遂行の俯瞰的な把握や,時にはある程度の重複が協働には重要であると考えられ,この役割の明確化と遂行という2つの要素が重要と考えた.

2. TAAS改訂版の汎用性

TAAS改訂版は,医療現状をより反映した結果と考えられ,より汎用性の高い尺度として改訂されたと考えることができる.TAAS改訂版は,チーム医療・多職種連携に関する要素である職務満足やメンバーの能力などを測定する項目や,チームアプローチの成果である医療の質向上,組織変容などの要素は含んでいない.だが,チームアプローチが機能しているかを個人の認識から評価する尺度であることより,自分のチーム活動への取り組みを含め,機能的な側面からチーム医療・多職種連携の状態を捉えることが可能と考える.また,因子間の得点比較により,チームの長所・短所の検討にも活用できると考える.

また,タックマンらが提唱するようにチーム組織化はプロセスがあることから(田村,2012),TAAS改訂版の経時的な得点変化によりチームの発展段階を捉えることが可能となる.そして,TAAS改訂版の項目は,疾患特有の項目を含んでいないため,多様な領域で活用できる可能性がある.一方で,TAAS改訂版で視座を置いた医療施設内でのチーム医療・多職種連携のあり方と,医療施設と地域との連携や,地域包括ケアにおけるチーム医療・多職種連携のあり方では,その現象はかなり異なることが予測される.このように地域を含めた分野においては他の尺度を活用することを推奨したい.

2025年問題が間近となり,チーム医療・多職種連携の期待がさらに高まっている.チーム医療・多職種連携は,状況依存性が高く,曖昧で複雑な事象であるが,これらの社会情勢や医療の変化に対応するためにもTAAS改訂版の活用とともに,チーム医療・多職種連携を促進する教育(IPE)が非常に重要である.IPEは学部教育への導入(朝日,2018)や,在宅医療推進プログラム(土屋ら,2017)などが開発されているが,まだ発展してきたばかりである.TAAS改訂版がこれらの教育の発展に寄与すると期待したい.

3. 研究の限界と今後の課題

本研究で開発したTAAS改訂版は,医療施設内の医療専門職を対象として開発した.そのため,医療施設内外や医療専門職以外を含めたチーム医療・多職種連携の評価には限界がある.また,職種の偏りなどの対象者バイアスや,基準関連妥当性および再検査信頼性が検討できてない等の限界があり,更なる信頼性と妥当性の検討とTAAS改訂版の洗練が必要である.そして,更にデータの蓄積を行い,感度と特異度の検討により得点による分類化をすることが今後の課題となる.

Ⅴ. 結論

学際的チームを基盤としたチームアプローチ評価尺度(TAAS)の信頼性と妥当性を検討し,TAAS改訂版(TAAS-R)を開発した.

TAAS改訂版は,探索的因子分析により22項目の5因子構造となった.因子名は【チームの機能】【チームへの貢献】【チーム活動の重要性】【チームメンバーの役割遂行】【目標と役割の明確化】となった.TAASと比較すると,【チームへの貢献】の変更は僅かであったが,それ以外は因子構造が異なった.α係数は尺度全体で .93,各因子は .68~.91だった.以上から,TAAS改訂版は,概ね信頼性と妥当性は確保された.

謝辞:本研究にご協力いただきました研究協力施設の医療専門職の皆様に深く感謝申し上げます.また,研究遂行にご協力いただきました埼玉県立大学プロジェクト研究メンバーの皆様に感謝申し上げます.本研究は埼玉県立大学プロジェクト研究の一環で行いました.

利益相反:YIとTKは,本研究において申告すべき利益相反はない.

著者資格:YIは,研究の着想およびデザインに貢献し,研究データの収集や解析,解釈を行い,論文の重要な知的な内容について執筆した.KTは,研究の着想およびデザインに貢献し,原稿への示唆と助言を行った.本研究のデータ収集に貢献した者は,謝辞に含めた.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

文献
 
© 2021 Japan Academy of Nursing Science
feedback
Top