Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Students’ Evaluation of Distance and Face-to-face Classes: Lessons during The Spread of COVID-19
Yuichi FujitaShingo UekiMika KitaoMinae Fukui
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2021 Volume 41 Pages 148-154

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Abstract

目的:1年次後期専門教育科目「小児看護学概論」におけるオンデマンド型授業,ライブ型授業,対面授業の各授業方法について評価の差異および意見について検討する.

方法:第8回授業後に学生73名に無記名自記式のアンケート用紙を配布し,回答を求めた.

結果:66名より回答があり,3つの授業方法で理解度や満足度に有意差はなかった.来年度からどのような授業形態がよいかについては,遠隔授業を中心とした授業形態がよいと回答した学生が3分の2を占めていた.

結論:大学側と学生側の双方で遠隔授業を行う体制が整っていれば,講義を中心とした科目は遠隔授業で学習することも可能であろう.科目の特性によって遠隔授業と対面授業を使いわけることで,より効率的な学習が可能となることが示された.

Translated Abstract

Objective: To consider how students’ evaluate and comprehend teaching methods of the differences between on-demand viewing, online, and face-to-face lessons in the first-year of the specialized subject “Introduction to Pediatric Nursing.”

Method: After the final lesson, we conducted an anonymous self-administered survey involving 73 students.

Results: We received 66 responses. There was no significant difference in comprehension and satisfaction between the three types of lessons. To the question of what kind of lesson type would be better in the subsequent year, the distance learning (on-demand viewing and online lessons) option was chosen by approximately two-thirds of the students.

Conclusion: If both the university and students’ homes are sufficiently equipped, it is possible to conduct classes and study using distance learning methods for knowledge transmission. This result suggests that efficient learning is possible by adequately using distance learning and face-to-face lessons, depending on the demands of the subject.

Ⅰ. はじめに

我が国では2020年初頭より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大したことに伴い,多くの大学において対面授業から遠隔授業へと授業方法の変更を余儀なくされた.文部科学省(2020)が2020年9月に全国1,060校の大学等を調査した結果では,2020年度後期の授業を「対面・遠隔を併用」する大学等が849校(80.1%),「対面授業のみ」とする大学等は205校(19.3%)であり,ほとんどの大学で遠隔授業が導入されていた.

A大学看護学部は2018年からICT化が進められ,LMS(学習管理システム)のひとつであるGoogle Classroom®の導入と全学生のアカウント付与がされており,遠隔授業の導入が比較的スムーズにできた.2020年7月には感染状況が落ち着いてきたため,A大学では9月より開始する後期授業から遠隔授業を基本としたうえで一部対面授業を実施することとなった.

1年次後期の専門科目「小児看護学概論」(必修1単位)は講義科目であるが,例年一方向の講義だけではなく,8回の授業のうち第7,8回目では授業の前半に講義と後半にグループワークを実施している.2020年度は第1~6回は遠隔授業を実施し,第7,8回授業では感染防止対策を徹底して対面授業を実施することとした.学生は入学時より遠隔授業のみで双方向のコミュニケーションが十分にとれていない現状があった.そのため,遠隔授業は一方向のオンデマンド型授業に加えて,リアルタイムでの質疑応答ができる双方向のライブ型授業を組み合わせた形態とした.ただし,学生個々の通信環境や家庭での都合等を考慮し,ライブ型授業は任意の参加とした.

このように,新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって,小児看護学概論は1つの科目でオンデマンド型授業(自宅等で任意の時間に受ける遠隔授業)とライブ型授業(同時双方向型で自宅等にて指定された時間に受ける遠隔授業),対面授業の3つの授業形態を行うこととなった.そこで,今後の新興感染症の感染拡大時にも対応できるように,学生のニーズに対応した効果的な授業方法についての示唆を得るため学生からの評価について調査を行った.

Ⅱ. 目的

1年次後期専門教育科目「小児看護学概論」におけるオンデマンド型授業,ライブ型授業,対面授業の各授業方法に対する理解度,満足度などの評価の差異および意見について検討する.

Ⅲ. 方法

1. 研究デザイン

無記名自記式のアンケート用紙を用いた横断調査

2. 対象者

A大学看護学部1年次後期「小児看護学概論」(必修1単位)を履修登録し,第8回授業に出席した学生73名.対象となった学生は,1年次前期の授業はすべてGoogle Classroom®を用いた遠隔授業で,対面での授業は行っていなかった.1年次後期から基礎看護技術演習などの3つの演習科目と解剖生理学で対面授業が開始され,その他の科目はGoogle Classroom®を用いた遠隔授業であった.

3. 調査期間

2020年11月

4. 調査手順

8回の授業を実施した.第1回から6回までは Google Classroom®を用いた遠隔授業とし,オンデマンド型授業とライブ型授業を組み合わせて実施した.第7,8回は,対面授業を実施した.授業計画を表1に示した.

表1  2020年度小児看護学概論の授業計画
オンデマンド配信期間 ライブ配信日時(10:00~10:30) 対面授業日1時間目 授業内容
第1回 9月16日(水)~23日(水) 9月17日(木) オリエンテーション,小児看護とは,小児の人権
第2回 9月23日(水)~30日(水) 9月24日(木) 小児の成長・発達と看護1:成長・発達の基礎知識
第3回 9月30日(水)~10月7日(水) 10月1日(木) 小児の成長・発達と看護2:新生児期・乳児期
第4回 10月7日(水)~14日(水) 10月8日(木) 小児の成長・発達と看護3:幼児期,学童期,思春期
第5回 10月21日(水)~28日(水) 10月22日(木) 小児看護における法律,外来,入院,在宅療養における小児と家族の看護
第6回 10月28日(水)~11月4日(水) 10月29日(木) 小児看護と看護倫理,グループワークのオリエンテーション
中間試験
第7回 11月5日(木) 児童虐待を受けた小児と家族の看護,グループワーク1
第8回 11月12日(木) 災害を受けた小児と家族の看護,グループワーク2

Google Classroom®はLMS(学習管理システム)のひとつであり,オンライン上で課題の配布,採点,返却などを行うことができる.小児看護学概論では,学生とのコミュニケーションを円滑にするため,学生への連絡事項の通知,Google Meet®(遠隔会議用webアプリ),授業動画の配信,小テストの出題と採点などの機能を使用した.

オンデマンド型授業は講義動画を6回配信した.講義動画はMicrosoft Power Point®の録音機能で作成した.1回の講義動画は平均71.3分で,30~40分の長さで前半,後半と分けた.配付資料は,学生が他の演習科目で登学した際に配付した.受講期間は配信後1週間とした.受講後はGoogle Classroom®上で小テストを出題して解答することにより出席とし,質問や感想も受け付けた.

ライブ型授業はGoogle Meet®を使用し,10:00~10:30の時間枠で5回(平均29.8分)実施した.Google Meet®は遠隔会議用webアプリで画面共有機能があり,教員側のMicrosoft Power Point®のスライドを学生のパソコンやスマートフォンに示し,リアルタイムで講義をすることがきる.前日にオンデマンド配信した授業内容の重要部分についてのダイジェスト講義と質疑応答を行った.ライブ型授業の出席は任意であるが,可能な限り参加するようにと学生に第1回授業で周知した.

対面授業は9:00~10:30の時間枠で第7回と第8回の2回を実施した.授業の前半に講義(平均44.0分)と,後半にグループワーク(平均43.5分)を実施した.講義の中でシンクペアシェアなどのアクティブラーニングを取り入れた.グループワークは,倫理的課題のある小児看護の事例を用いて,ジグソー法を2回実施した.なお,グループワークのメンバーは1回目と2回目で異なるため,話し合いが円滑に進むようにグループワークの開始時に自己紹介を1人1分間するように説明した.なお,対面授業の感染予防対策は,A大学の規定にもとづいて講義に出席する学生には毎朝の検温と健康チェックを義務付け,座席は市松模様状に配置してソーシャルディスタンスを確保した.

第8回授業後に科目担当者ではない共同研究者が,学生へ研究の目的,意義,方法,倫理的配慮について説明をし,アンケート用紙を配付した.

5. 調査内容

3つの授業方法それぞれの評価として,「授業の内容は理解できたか」「授業は満足の行くものだったか」「教員の説明はわかりやすかったか」「授業の分量は適切だったか」「教員の熱意は感じられたか」について,「そう思わない」~「そう思う」の5段階で回答を求めた.3つの授業方法それぞれについて「良かった点」と「改善してほしい点」について自由記載で回答を求めた.来年度からの小児看護学概論はどのような授業方法がよいかについて質問した.また,学習環境として遠隔授業は主に何を使って学習していたか,自宅に使用量に制限のないWi-Fiはあるか,対面授業を実施する際の新型コロナウイルスの感染に対する不安の程度について質問した.

6. 分析方法

単純集計により分析した.3つの授業方法の評価の差異はFriedman検定を用いて分析した.来年度からの小児看護学概論はどのような授業形態がよいかについて,遠隔授業のみの群と対面授業を行う群の2群で,感染に対する不安の程度の差異をMann-WhitneyのU検定で分析した.統計解析にはSPSS ver. 25を使用し,本研究における有意水準は.05 とした.自由記載は内容分析で分析した.

7. 倫理的配慮

科目担当者ではない共同研究者が,学生へ研究の目的,意義,方法,倫理的配慮について文書を配布して口頭で説明をした.自由意思を尊重し,協力の有無や回答の内容は成績とは一切関係がなく不利益を被らないこと,および学会等での発表について説明した.研究の協力に同意をした学生は,1週間以内にアンケートを無記名で回答して,回収ボックスへ提出した.筆者が所属する武庫川女子大学の研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:20-67).

Ⅳ. 結果

アンケートは66名より回答され(回収率90.4%),全てが有効回答であった(有効回答率90.4%).6回のオンデマンド型授業の出席率の平均は99.1%であり,2回の対面授業の出席率は96.6%,5回のライブ型授業の出席率は35.7%であった.オンデマンド型授業の動画を2回以上視聴したことが“ある”と回答した学生は53名(80.3%),“ない”と回答した学生は13名(19.7名)であった.

1. 学生の学習環境

「遠隔授業は主に何を使って学習していたか(複数回答)」については,“パソコン”が58名(87.9%)で最も多く,次いで“スマートフォン”14名(21.2%),“タブレット”6名(9.0%)であった.「自宅に使用量に制限のないWi-Fiはあるか」の質問については,“ある”が60名(96.8%),“ない”2名(3.2%)であった.

対面授業を実施する際の新型コロナウイルスの感染に対する不安の程度は,「通学中の感染の不安」は“不安である”が最も多かった.「講義中の感染の不安」「グループワーク中の感染の不安」については“どちらでもない”が最も多かった(図1).

図1 

対面授業を実施する際の新型コロナウイルスの感染に対する不安の程度

2. 各授業方法に対する理解度,満足度などの評価

「授業の内容は理解できたか」「授業は満足の行くものだったか」「教員の説明はわかりやすかったか」「授業の分量は適切だったか」「教員の熱意は感じられたか」について質問したところ,すべての評価において“そう思う”が最も多かった(図2).オンデマンド型授業,ライブ型授業,対面授業でFriedman検定により分析したが授業方法による評価の有意差はみられなかった.

図2 

オンデマンド型授業,ライブ型授業,対面授業それぞれの授業方法に対する評価(Friedman検定)

3. 各授業方法に対する意見

オンデマンド型授業,ライブ型授業,対面授業の各授業形態の「良かった点」と「改善してほしい点」について自由記載で回答を求めた(表2).

表2  各授業方法に対する学生からの意見
記述内容 件数
オンデマンド型
 良かった点 76件 好きな時間にみることができる 33
何回もみることができる 23
理解できなかったところを動画を巻き戻してみることができる 4
聞き逃したところを動画を巻き戻してみることができる 3
自分のペースで授業をうけることができる 2
何回もみることができるように動画を公開し続けている 1
落ち着いてみることができる 1
止めることができる 1
大学に行かなくてもよい 1
遅刻の心配がない 1
寝坊することがない 1
自分の時間を有効に使うことができる 1
動画の長さが適当 1
関連動画(リンク先のYou Tube®動画)をみることができる 1
わかりやすい 1
ポイントが簡潔にまとまっている 1
 改善してほしい点 3件 音声の乱れがある 1
スライドにペンで書きこむ時にタイムラグがあり遅くなる 1
動画の録画中に飲み物を飲まないでほしい 1
ライブ型
 良かった点 38件 授業の内容をより詳しく理解できる 8
質問の回答を聞くことができる 6
オンデマンド型の動画よりも掘り下げた内容を聞くことができる 6
復習することができる 4
教員自身のことや家族のことを聞ける 3
対面授業を受けているような気持ちで受講できる 2
質問することがきる 2
オンデマンド型よりも集中することができる 2
教員の臨床での経験談を聞くことができる 1
大事なポイントがわかる 1
わかりやすい 1
教員を身近に感じることができる 1
参加したい学生のみが参加できる 1
 改善してほしい点 1件 もう少し経験談などの話を聞きたい 1
対面授業
 良かった点 55件 集中して授業を受けることができる 11
理解しやすい 10
グループワークができる 9
他の学生とコミュニケーションをとることができる 7
友達と会える 3
決められた時間に受講できる 3
記憶に残りやすい 2
知っている学生が増える 1
他の学生の顔を見ることができる 1
周りの学生の様子をみることができる 1
他の学生と仲良くなれる 1
教員と会える 1
生で授業を受けられる 1
直接質問ができる 1
忘れることがない 1
やる気がでる 1
眠たくならない 1
 改善してほしい点 1件 早めに終わることができるなら終わらしてほしい 1

「来年度からの小児看護学概論はどのような授業形態がよいか」については,“オンデマンド型授業のみがよい”が22名(33.8%)と最も多く,次いで“オンデマンド型授業とライブ型授業がよい”が21名(32.3%),“オンデマンド型授業とライブ型授業と対面授業がよい”13名(20.0%)であり,“対面授業のみがよい”は9名(13.8%)と最も少なかった.遠隔授業のみの群と対面授業を行う群の2群で,感染に対する不安の程度の差異を分析した.その結果,「通学中の感染の不安」(p = 0.95),「講義中の感染の不安」(p = 0.82),「グループワーク中の感染の不安」(p = 0.52)のすべてにおいて有意差は認めなかった.

Ⅴ. 考察

1. 学生の学習環境

A大学の学生の87.9%は自宅にパソコンがあり,さらに96.8%は自宅に使用量に制限のないWi-Fiがあると回答していた.令和元年通信利用動向調査(総務省,2020)によると,パソコンを保有している世帯の割合は69.1%であり,ブロードバンド回線を利用している世帯の割合は89.0%であったと報告されている.調査対象となった学生は2020年度の入学時より前期の授業がすべて遠隔授業となったため,パソコンやWi-Fiなどの学習環境を急遽整えたと推察する.後期の時点では,パソコンの保有率,Wi-Fiの保有率ともに高く,良好な学習環境で学ぶことができていたといえる.

2. 各授業方法に対する理解度,満足度などの評価

オンデマンド型授業,ライブ型授業,対面授業で理解度,満足度などの評価の差異を比較したが,全体的に“そう思う”,“ややそう思う”という評価が多かったこともあり,授業方法での有意差は認めなかったと考える.三苫ら(2020)は,医学部の学生へオンデマンド型授業を行い,90分の授業内容の動画を3,4本に分けて配信した.その結果,68.6%の学生が対面授業よりもオンデマンド型授業の方が理解しやすく学びやすいと回答していた.また,オンデマンド型授業では65%の学生が1.5から2.0倍の時間をかけて学習していた.本研究においても,有意差はなかったもののオンデマンド型授業は高い評価が得られ,8割の学生が動画を2回以上視聴していた.オンデマンド型授業は繰り返し時間をかけて学習できるという優れた点があるため,高い評価であったと考える.また,A大学の学生はパソコンの保有率,Wi-Fiの保有率ともに高く,学習環境が整っていたことも,オンデマンド型授業が高評価であった一因であろう.

対面授業についても全体的に高い評価が得られた.講義の中でシンクペアシェアなどのアクティブラーニングを取り入れて講義にメリハリをつけたことも理解度や満足度が高くなった一因と考える.アクティブラーニングは,授業外学習時間や論述問題の成績,授業満足度といった学習効果を高めることが報告されており(杉山・辻,2014),対面授業ではスムーズに導入しやすいという強みがある.

3. 各授業方法に対する意見

オンデマンド型授業の良かった点としては,「好きな時間にみることができる」という回答が最も多かった.オンデマンド型授業は自分のペースで好きな時間に落ち着いて,繰り返し学習できることが大きな強みであり,知識を習得することが中心となる科目では効果的に活用ができると考える.

ライブ型授業の良かった点としては,「授業の内容をより詳しく理解できる」「質問の回答を聞くことができる」という回答が多かった.ライブ型授業はオンデマンドで配信した内容のダイジェスト版であり,質問に回答しながら進めたため,どこが重要なポイントであるのかがわかりやすかったと考える.しかし,任意の参加としたため回答者は学習意欲の高い学生であり,今回の調査結果に偏りが生じた可能性もある.出席率は35.7%であり,より深く学びたいという学生のニーズに沿うことができていた一方で,参加することが望ましい学習意欲の低い学生は参加していないという現状もあった.そのため,毎回のライブ型授業の前日にアナウンスをして参加するように周知しておくべきであった.

対面授業の良かった点としては,「グループワークができる」「他の学生とコミュニケーションがとれる」などの回答が多かった.グループワークの前にアイスブレイクとして自己紹介を取り入れたことで,入学時から遠隔授業のみで面識のなかった学生ともコミュニケーションを深められたと考える.対面授業は,コミュニケーションやグループワークなどのアクティブラーニングができることが大きな利点であり,講義中心の科目であっても授業計画の中でこれらをうまく取り込むことによって,効果的な授業につなげることが可能であろう.

来年度からの小児看護学概論はどのような授業形態がよいかの質問については,オンデマンド型授業のみやオンデマンド型授業とライブ型授業の併用といった遠隔授業を中心とする授業形態がよいと回答した学生が3分の2を占めていた.感染の不安の程度と希望する授業形態との間に関連性がなかったことから,遠隔授業を希望する理由として「好きな時間にみることができる」「何回もみることができる」「より深く学べる」等の利点を支持していたと考える.

今回の結果から,概論のように知識を習得するような科目では学生は遠隔授業を中心とする授業形態を支持しており,その理由としては,好きな時間に繰り返し学習できることに加え,学習環境が整っていたことが考えられた.

本研究の限界として,今回の調査結果はひとつの事例であり,対象者数が少なく一般化することはできない.また,授業方法ごとに対象者を分けてはいないため適切に比較することが困難である.対象となった学生は大学入学後に,全て対面で実施される科目の履修は終わっていない状況での調査であった.1年生の前期を対面で受講する科目があれば,異なる結果となった可能性がある.

大学側と学生側の双方で遠隔授業ができる学習環境が整っていれば,講義を中心とする科目は遠隔授業で学習できる可能性も示された.実習室での技術演習や対面でのグループワークが必要となる授業では,これまで通り大学に登学して対面で実施することが必要であろう.

我が国は,2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大により大きな転換期を迎えることとなった.多くの大学では遠隔授業や遠隔会議といった環境を急速に整えることができ,教員,学生ともにそれらを使用するスキルを身につけることができた.看護系学部の授業は,講義のみならず,演習や臨地実習など多岐にわたる.今後は,科目の特性によって遠隔授業と対面授業を使いわけることで,学生のニーズに対応したより効率的な学習が可能となるであろう.

Ⅵ. 結論

オンデマンド型授業,ライブ型授業,対面授業では理解度や満足度に有意差はなかった.来年度からどのような授業方法がよいかについては,遠隔授業を中心とした授業がよいと回答した学生が3分の2を占めていた.遠隔授業を実施する学習環境が整っていれば,講義を中心とする科目は遠隔授業で学習することも可能であろう.科目の特性によって遠隔授業と対面授業を使いわけることで,学習効果を高められる可能性が示された.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない

著者資格:YF は研究の着想およびデザインに貢献,データ収集と分析,論文の作成;SUはデータ収集と分析,論文作成;MKおよびMF はデータ収集と分析,研究プロセス全体への助言.全ての著者は最終原稿を読み,承認した.

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