2021 Volume 41 Pages 230-233
目的:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍で市区町村保健師が重視している地域保健活動方法について記述統計を用いて明らかにし,COVID-19禍での市区町村保健師の活動について示唆を得る.
方法:地域保健活動方法について市町村保健師を対象にした面接調査より作成した78項目の地域保健活動方法について,682市区町村の保健師各1名に質問紙調査を実施した.
結果:270人(有効回答率39.6%)を分析対象とした.集計の結果,COVID-19禍で重視するようになった上位5位の地域保健活動方法は,「内容や回数を減らし事業を継続する」「NDB,KDBや介護DB等のデータを活用する」「ICTを活用した保健事業を実施する」「重点活動のために,その他の事業を整理する」「さまざまな機会を活用して住民の健康状態を把握する」であった.
結論:市区町村保健師は,対面での支援が制限される中で事業を継続していくための地域保健活動方法を重視していた.
Aim: To gain insight into the community health activities of municipal public health nurses (PHNs) during the novel coronavirus disease 2019 (COVID-19) pandemic by using descriptive statistics to identify community activity approaches that these PHNs considered important during the pandemic.
Methods: We listed 78 community health activity approaches as questionnaire items. The approaches were based on an interview survey of municipal PHNs. We then conducted a questionnaire survey on the approaches with PHNs in 682 municipalities, selected by using stratified random sampling after classification of the municipalities across Japan into six groups by population size. In one municipality, one PHN responded to the survey.
Results: Data from 270 public health nurses were analyzed (valid response rate: 39.6%). The calculated results revealed that the top five community health activity approaches that the PHNs came to consider important during the COVID-19 pandemic were: “continue projects while reducing their content and frequency,” “utilize data such as the NDB (the national database of health insurance claims and specific health checkups of Japan), KDB (kokuho [national health insurance] database), and long-term care database,” “implement health projects by utilizing ICT,” “downsize other projects in order to implement priority activities,” and “gain an understanding of the health status of residents by making use of various opportunities.”
Conclusion: Municipal PHNs placed emphasis on community health activity approaches aimed at continuing projects under circumstances where face-to-face support was restricted.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍においては,疾病の罹患や重症化を招くことのないよう,感染対策と並行して,通常の医療や予防活動を行うことも重要であることから,住民に身近な市区町村の保健師は,住民に対して感染対策防止対策と通常の予防活動に取り組むことが求められている(春山ら,2020).
そこで,COVID-19禍で市区町村保健師が重視している地域保健活動方法について記述統計を用いて明らかにし,COVID-19禍での市区町村保健師の活動について示唆を得ることとした.
日本全国の市区町村を人口規模別に6分類し層化無作為抽出した696市区町村の保健師各1名を対象とした.本研究では,一つの市区町村で複数の保健師が回答したデータは含まれていない.
なお,人口50万以上の14の市区町村については,最前線で感染症対策にあたっていることが想定され,調査票への回答が業務の支障になることが懸念されたため除外した.14の市区町村を除外した682市区町村は,全国の市区町村数の約4割を占める数である.
2. 調査項目調査内容は,所属部署および回答者の基本属性,地域保健活動方法である.
所属市区町村の基本属性は,人口,地域ブロック,老年人口割合,年少人口割合,人口増減率,保健師の配置とした.また,回答者の基本属性は,統括保健師または統括的立場であるかどうか,担当分野,現在の役職,性別,保健師としての実務経験年数,現在の市町村に就職してからの年数,現在の所属部署での勤務年数とした.
地域保健活動方法は,市町村保健師の地域保健活動方法について,市町村保健師を対象にした面接調査を実施して得た結果に基づき,保健師教育を専門とする研究者間で討議し決定した78の質問項目で調査した.
また,対象者にはCOVID-19禍前の2019年度までの地域保健活動方法およびCOVID-19禍において,以前より重視するようになった地域保健活動方法について回答を求めた.2019年度までの地域保健活動方法は「とても重視している」「やや重視している」「ふつう」「あまり重視していない」「重視してない」の5スケールで尋ねた.COVID-19禍において,以前より重視するようになった地域保健活動方法については,重視するようになった地域保健活動方法にマルをするよう求めた.
3. データ収集方法調査対象者に対して,研究協力依頼文書,無記名自記式質問紙,返信用封筒を同封し,郵送法により配布した.質問紙は,郵送またはWEB上で回収した.調査期間は,2020年11月~12月であった.
4. 分析方法各項目において単純集計を行った.COVID-19禍前から重視している地域保健活動方法とは,「とても重視している」および「やや重視している」と回答された地域保健活動方法とした.
5. 倫理的配慮調査への協力依頼文書に,調査の趣旨,調査への協力は任意で自由意志であること,調査票は無記名であり,個人や施設は特定されないこと,回答は本研究の目的以外に使用しないこと,協力の有無による不利益がないこと,結果は学会等で公表すること,質問票の返信をもって同意したとみなすことを明記し,調査票に設けた同意確認チェック欄へのチェックにより同意を得た.
質問紙の回収数は276人(約40.0%)であり,同意しないにチェックがあった6人を除く,270人(有効回答率約39.6%)を分析対象とした.
1. 回答者の特性配布時と回収時の回答者の所属市区町村人口規模別割合は,ほぼ同じ割合であった.回答者の特性を表1に示す.
| 項目 | 内容 | 人数(%) |
|---|---|---|
| 所属施設 | ||
| 市区町村の人口(令和2年4月1日時点) | 20万以上~50万未満 | 18(6.7) |
| 5万以上~20万未満 | 74(27.4) | |
| 3万以上~5万未満 | 28(10.4) | |
| 1万以上~3万未満 | 72(26.7) | |
| 1万未満 | 78(28.9) | |
| 市区町村の地域ブロック | 北海道・東北 | 66(24.4) |
| 関東・甲信越 | 80(29.6) | |
| 東海 | 27(10.0) | |
| 北陸 | 10(3.7) | |
| 近畿 | 23(8.5) | |
| 中国・四国 | 35(13.0) | |
| 九州・沖縄 | 29(10.7) | |
| 老年人口割合(H30.4現在) | 20%未満 | 9(3.3) |
| 20~30%未満 | 81(30.0) | |
| 30~40%未満 | 123(45.6) | |
| 40~50%未満 | 53(19.6) | |
| 50%以上 | 4(1.5) | |
| 保健師の配置 | 各支所配置 | 82(30.4) |
| 集中配置 | 178(65.9) | |
| 無回答 | 10(3.7) | |
| 対象者 | ||
| 担当分野(複数回答) | 母子保健 | 106(32.2) |
| 健康づくり(成人保健) | 145(43.8) | |
| 介護予防 | 79(24.0) | |
| 統括保健師かどうか | 統括保健師または統括的立場である | 123(45.5) |
| 統括保健師ではない | 147(54.4) | |
| 性別 | 男性 | 6(2.2) |
| 女性 | 264(97.8) | |
| 年(±SD) | ||
| 保健師としての実務経験年数(通算) | 23.3(±9.2) | |
| 現在の市区町村(合併前含)での経験 | 23(±9.3) | |
| 現在の所属部署での勤務年数 | 12(±10.0) | |
COVID-19禍で重視するようになった地域保健活動方法の上位10位を表2に示す.上位10位のうち,COVID-19禍前は重視していなかったと回答した者が半数以上の活動方法は,「内容や回数を減らし事業を継続する」「ICTを活用した保健事業を実施する」「重点活動のために,その他の事業を整理する」「事業の効果を考慮しながら優先順位を判断する」であった.
| 活動方法 | 重視するようになったN(%) | うち,COVID-19禍前は重視していないN(%) | うち,COVID-19禍前から重視しているN(%) |
|---|---|---|---|
| 内容や回数を減らし事業を継続する | 96(35.6) | 73(76.8) | 22(23.2) |
| NDBa),KDBb)や介護DBc)等のデータを活用する | 76(28.1) | 34(44.7) | 42(55.3) |
| ICTd)を活用した保健事業を実施する | 69(25.6) | 52(75.4) | 16(23.2) |
| 重点活動のために,その他の事業を整理する | 65(24.1) | 37(56.9) | 28(43.1) |
| さまざまな機会を活用して住民の健康状態を把握する | 55(20.4) | 18(32.7) | 36(65.5) |
| 住民が主体的に保健活動に取り組めるよう支援する | 52(19.3) | 20(38.5) | 32(61.5) |
| 他の市区町村保健師と情報交換・情報共有する | 52(19.3) | 25(48.1) | 26(50.0) |
| 健診データを分析する | 48(17.8) | 18(37.5) | 30(62.5) |
| 優先すべき課題を検討する場をつくる | 45(16.7) | 16(36.4) | 28(63.6) |
| 事業の効果を考慮しながら優先順位を判断する | 44(16.3) | 23(52.3) | 21(47.7) |
a)National Database.レセプト情報・特定健診等情報データベース
b)Kokuho Database. 国保データベース
c)介護Database. 介護保険総合データベース
d)Information and Communication Technology.情報通信技術
COVID-19禍で重視するようになった上位10位の地域保健活動方法から考えられたことは,①対面が制限されたことで,今まで実施してきたような体制で事業ができなくなったために事業の整理や優先順位を判断する必要性に迫られた,②対面での支援が制限されるCOVID-19禍においても事業を継続するために,ICTを活用したり,住民が主体的に取り組めるよう支援したり,回数を減らしたりして対応した,③対面により得られていた情報が得られなくなったために,データを活用したり,他の市区町村保健師と情報交換したり,様々な機会を利用して情報を得る努力をしたの3つであった.また,COVID-19禍前は重視していなかったと回答した者が半数以上の地域保健活動方法は,平常時では後回しになりがちな活動であることが想定された.
COVID-19禍における虫歯の増加(大府市,2020)や体重増加(日本生活習慣病予防協会,2020)などが報告され始めていることから,感染拡大時においても必要な事業は続けられるよう平時から備えていくことが,住民の健康を守るために重要であると考える.
謝辞:本研究の趣旨をご理解いただき,調査にご協力いただきました保健師のみなさまに深く感謝申し上げます.なお,本研究は,JSPS科研費17K12591の助成を受けた.
利益相反:著者に開示すべき利益相反はない.