2021 Volume 41 Pages 241-249
目的:外来看護師の在宅療養移行支援実践評価尺度を開発し,その妥当性と信頼性を検討する.
方法:文献検討とインタビューより抽出したデータを基に,外来看護師の在宅療養移行支援実践評価尺度原案を作成した.全国805施設の外来看護師を対象に質問紙調査を行い,妥当性・信頼性の検証を行った.
結果:分析対象は360名で(有効回答率22.3%),探索的因子分析の結果,25項目4下位尺度を作成した.モデルの適合度は,GFI = .845,AGFI = .812,CFI = .904,RMSEA = .073であった.収束的妥当性はr = .741(p < .001)で,弁別的妥当性はr = –.471(p < .001)であった.尺度全体のクロンバックαが.945で,下位尺度は.771~.915であった.
結論:本尺度の妥当性,信頼性は,統計量的に許容範囲であることが確認された.地域包括ケアシステムにおいて,外来看護師が実践する在宅療養移行支援の標準的指標となり,教育研修の効果測定に活用できる.
Aims: To develop the Transitional Care of Outpatient Department Nurses (TCODN), a self-evaluation instrument for transitional care practices among outpatient department nurses.
Methods: Based on a literature review and in-depth interviews, we developed a measure for outpatient department nurses to self-evaluate their transitional care practices. A questionnaire survey was conducted with outpatient department nurses in 805 hospitals across Japan, and the validity and reliability of the scale were investigated.
Results: A total of 360 responses (22.3%) were analyzed. An exploratory factor analysis helped identify four factors (25 items): [Standing with patient's intention and support for continuation of their home care life], [Information sharing between the multidisciplinary and support for the patient’s self-care], [Support for planned inpatients and ward cooperation], and [Support for understanding the medical condition]. The goodness of fit of the model was as follows: GFI = .845, AGFI = .812, CFI = .904, and RMSEA = .073. The convergent validity was .741 (p < .001), divergent validity was -.471 (p < .001). Cronbach’s α for the overall scale was .945, and the corresponding values for the subscales ranged from .771 to .915.
Conclusions: The results of this study suggest that the validity and reliability of the scale were within the permissible range. The scale can be used as a quality indicator in transitional care practices by outpatient department nurses and to evaluate the effectiveness of educational training.
地域包括ケア時代において,老いや病い,障がいを持ちながらもその人らしい暮らしが継続できるように,生活者の視点と医療的管理の視点を統合した支援が求められている.在宅療養移行支援は入院から退院までの一方向支援ではなく,地域・病院間の連続したサイクルに基づく支援であると考える.その支援とは,入院早期から退院後の生活をイメージした支援を提供するのみならず,地域に暮らす在宅療養者が必要時に入院治療を受けることができ,再び住み慣れた生活の場で在宅療養を継続することができるよう支援することも包含する.在宅医療が推進される中,地域支援者と協働しながら慢性疾患高齢者の再入院予防に向けたケアや入院時の病棟との情報共有・退院支援の必要性査定・退院時情報共有,がん療養者などの病状進行に伴う生活変化への療養相談・地域支援者の導入査定など在宅療養移行支援の重要性が注目されている.このように疾病のステージや療養生活,療養の場における移行期の支援拠点として,外来看護師が在宅療養移行支援に関する能力を身につけ,地域・病院間連携で重要な役割・機能を期待されていると考える.
先行研究では,外来看護師の在宅療養移行支援に関する研究は散見するのみで,在宅療養支援に関する研究がいくつか明らかにされている.特定機能病院における看護師の在宅療養支援に関する認識(坂井ら,2011)や外来看護師による在宅療養支援の実態調査(佐藤ら,2017),救急外来看護師が行う療養支援の実態調査(岩間・加藤,2019),患者の在宅療養支援ニーズ把握に向けた情報収集内容(前田・永田,2019)が報告されている.これらの文献より外来看護師は,来院時の本人や同行者の様子から病状や自己管理状況を推測し,支援の必要な患者を早期に把握し,多職種と連携を図り在宅サービス等の資源へ繋げていることが明らかとなった.
看護外来の設置や専門・認定看護師の配置等の在宅療養支援に向けた取り組みを導入する病院が増加する(錦織・永田,2017)一方で,院内の看護連携の課題や地域連携の不十分な実態(白井ら,2019),マンパワー不足による患者把握の困難さや知識不足等(牛久保ら,2020)の外来看護師の在宅療養支援スキルに関する課題があげられている.外来看護師の在宅療養支援に関する知識向上や教育の重要性が求められる中,在宅療養支援内容の要素(佐藤ら,2017)や,在宅療養を可能にする要因(川嶋ら,2020)は明らかとなっているが,外来看護師を対象とした在宅療養移行支援の教育プログラム開発や評価尺度についての報告は数少ない.丸岡ら(2020)が,病院看護師による在宅療養移行支援質指標を開発しているが,入院前・入院中・退院後までの一方向のプロセスにおける外来・病棟看護師の行動指針を評価しており,地域・病院間の連続したサイクルに基づく外来看護師に特化した支援要素が含まれていない.
そこで本研究では,外来看護師の在宅療養移行支援実践評価尺度を開発し,その妥当性と信頼性を検討することを目的とする.これにより看護実践が可視化され,外来看護業務やケア介入についての標準的な指標となることや,日々の実践内容を自己評価で振り返り質の高い看護を行うためのツールとして用いることが期待できる.
在宅療養移行支援とは,「入退院支援における早期からの退院に向けた支援のみならず,地域に暮らす在宅療養者が必要時に入院治療を受け,再び住み慣れた生活の場で在宅療養を継続することができるよう支援することも包含する,地域・病院間の連続したサイクルに基づく患者とその家族に対しておこなうすべての看護活動」と定義する.
2017年8月~2018年4月に急性期病院の外来看護師7名,入退院支援センター看護師3名,訪問看護師3名を対象とし,外来看護における在宅療養移行支援の実践要素について,インタビューガイドに基づく半構成的面接を行った.得られた逐語録から外来看護師が実践する患者・家族への在宅療養移行支援の実践内容や外来看護の役割についての語りを抽出し質的帰納的に分析した.分析の妥当性について,質的研究の経験のある研究者と検討しながら進めた.外来看護における在宅療養移行支援の実践要素として【診察時の何気ない患者の動作から家での生活状況を想像する】【病状変化にともなう意思決定場面に伴走する】【本人なりの生活環境で出来るようにセルフケアを支援する】【在宅生活を継続できるように社会資源に繋ぐ】の4つのカテゴリーが抽出された.
さらに,医学中央雑誌,Pub Medを検索ソースとして,「外来看護」,「退院支援」,「在宅療養支援」,「outpatient setting」,「nursing practice」,「transitional care」をキーワードとして文献検討を行い,35項目の尺度原案を作成した.内容妥当性の確認を行うために,外来看護に精通した研究者1名,入退院支援に精通した研究者と実践者各1名に,調査項目に不足や重複した意味内容はないか,分かりやすい表現であるか助言を依頼し,項目の表現を修正した.
2. 外来看護師の在宅療養移行支援実践評価尺度原案の妥当性・信頼性の検討 1) 研究対象者全国すべての特定機能病院,地域医療支援病院,がん診療連携拠点病院,805施設に勤務する外来看護師より研究協力が得られた外来看護師とした.サンプリングは,母集団を捉えるために設定した質問項目数の10倍が必要となる(Kline,1998)こと,有効回答率は20~30%程度になることを目標に標本規模を検討し,各病院2名ずつ調査票を配布した.
2) 調査方法2020年1月~2月に郵送法により自記式質問紙を病院の看護部長宛てに配布し,看護部長が任意に指名する経験年数の異なる2名の外来看護師へ依頼することを,同封した説明文書により依頼した.回収は同封した返信用封筒にて調査票記入後,個別に封入して郵便ポストへ投函してもらい回収した.
3) 調査項目 (1) 対象者の属性年齢,性別,看護師経験年数,外来看護経験年数,所属病院病床数,職位,最終学歴,入退院支援研修参加の有無,外来患者受け持ち制の有無を収集した.
(2) 外来看護師の在宅療養移行支援実践尺度(Transitional Care of Outpatient Department Nurses:尺度原案35項目)教示文は「ご自身が行う外来における在宅療養移行支援に関する患者・家族ケアの各項目の実施状況について,それぞれ該当すると考える番号1つに○をつけてください」として,「十分できている:6」から「全くできていない:1」の6段階リッカート尺度で回答を求めた.
(3) 病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度(Discharge Planning of Ward Nurses)病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度(Sakai et al., 2016)は,「患者・家族からの情報収集」,「患者・家族への意思決定支援」,「社会資源の活用」,「多職種連携による療養指導」の4下位尺度,24項目より構成される.信頼性・妥当性が検証され,6段階リッカート尺度で,得点が高いほど退院支援に関する患者・家族ケアが実践できている認識が高いことを示す.本研究におけるクロンバックα係数は.965であった.
(4) 在宅療養移行支援に関する困難感(Visual Analogue Scale)在宅療養移行支援に関する困難感について,「あなたはご自身が行っている在宅療養移行支援にどの程度困難感を感じていますか」との教示文で,直線0から100 mmの間の該当する位置1ヶ所に縦線の記入を求めた.
4) 分析方法各尺度項目において欠損が5%以内の場合は,欠損値を各項目の中央値で補完した(Schaefer & Graham, 2002).統計解析にはSPSS Statistics Version25.0J,AMOS25.0Jを用いて分析を行った.
(1) 項目分析各項目の天井効果とフロア効果を確認した.さらに,Item-Total Correlation Analysis(以下I-T相関)では,各質問項目のスコアが総スコアと相関する尺度の内的一貫性を考慮しr < .3の項目を削除した.Good-Poor Analysis(以下G-P分析)では上位25%,下位25%を基準点として,上位群と下位群の差をt検定を用いて有意差を確認した.さらに項目間相関では,r ≧ .7の項目のうちどちらか一方を削除し,項目を精選した(Streiner et al., 2015/2016).
(2) 妥当性の検証 ① 構成概念妥当性の検証項目分析で整理した項目に対し,最尤法,プロマックス回転による探索的因子分析を行った.因子数は固有値およびスクリープロットによって判断し,共通性,パターン行列を確認し,下位尺度の因子を解釈して因子を命名した.次いで,共分散構造分析を用いた確証的因子分析により因子構造を確認し,モデルの適合度を算出した.適合度指標にはGFI(Comparative Fit Index),AGFI(adjusted goodness-of fit index),CFI(comparative fit index),RMSEA(Root Mean Squared Error of Approximation)を用いた.
② 収束的妥当性,弁別的妥当性の検討収束的妥当性の検証として,外来看護師の在宅療養移行支援実践尺度得点と,病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度の関係性を検討するために,両尺度の合計得点および下位尺度因子ごとにPearsonの積率相関係数を算出した.退院支援とは,入院患者が今後どのような治療を受け,病いや障がいとともに生活したいか自己決定するための支援であり,在宅療養移行支援と類似する概念と考え,正の相関があると想定した.弁別的妥当性の検討は,外来看護師の在宅療養移行支援実践尺度得点と在宅療養移行支援に関する困難感の関係性について,Pearsonの積率相関係数を算出した.在宅療養移行支援に関する困難感と在宅療養移行支援の実践は,異なる概念を測定しており関連が低い,または負の相関があると想定した(堤,2009).
(3) 信頼性の検証内的整合性を検証するために,尺度全体と下位尺度の因子についてクロンバックα係数を算出した.
5) 倫理的配慮対象者に対し研究の目的・趣旨を書面で説明し,研究協力のための同意を得た.研究への参加は自由意思とし,無記名とした.また調査票は無記名のため回答をもって研究協力への同意を得たものとする旨,研究への協力諾否や中断により,研究対象者へ不利益は生じないことを説明書に明記した.研究対象者個人および施設名は特定できないよう匿名性を保持し,学会または論文等で公表することがあること,その場合も個人が特定されることがないこと,データは研究室にて鍵付きキャビネットに厳重保管し,研究終了後は直ちにすべてのデータを裁断破棄することを明記した.なお,本研究は,杏林大学保健学部倫理審査委員会の承認(承認番号2019-56)を得て実施した.
1,610名へ調査票を配布し,364名より返信があり(回収率22.6%),白票や欠損値の多い調査票を除く360名のデータを分析した(有効回答率22.3%).平均年齢は45.5 ± 7.3(mean ± SD:以下同様)歳で,平均看護師経験年数は23.0 ± 8.0年,平均外来経験年数は11.4 ± 9.5年であった.355名(98.6%)が女性で,職位はスタッフが最も多く189名(52.5%),最終学歴は専門学校が最も多く288名(80.0%)であった.
n | % | |
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性 別 | ||
女 性 | 355 | 98.6 |
男 性 | 2 | 0.6 |
無回答 | 3 | 0.8 |
看護師経験年数 | ||
10年未満 | 16 | 4.4 |
10年以上20年未満 | 128 | 35.6 |
20年以上30年未満 | 140 | 38.9 |
30年以上 | 68 | 18.9 |
無回答 | 8 | 2.2 |
外来看護経験年数 | ||
10年未満 | 188 | 52.2 |
10年以上20年未満 | 99 | 27.5 |
20年以上30年未満 | 49 | 13.6 |
30年以上 | 17 | 4.7 |
無回答 | 7 | 1.9 |
所属病院病床数 | ||
200床以下 | 12 | 3.3 |
201床以上~400床以下 | 117 | 32.5 |
401床以上~600床以下 | 125 | 34.7 |
601床以上 | 106 | 29.4 |
職位 | ||
スタッフ | 189 | 52.5 |
主任 | 104 | 28.9 |
師長 | 30 | 8.3 |
その他 | 37 | 10.3 |
最終学歴 | ||
専門学校 | 288 | 80.0 |
短期大学 | 33 | 9.2 |
大学 | 28 | 7.8 |
大学院 | 7 | 1.9 |
その他 | 4 | 1.1 |
研修参加の有無 | ||
あり | 268 | 74.4 |
なし | 92 | 25.6 |
外来患者受け持ち制の有無 | ||
あり | 53 | 14.7 |
なし | 307 | 85.3 |
天井効果,床効果を確認したところ,35項目において,平均値±標準偏差が最大値および最小値を超える項目はなかった.I-T相関では,.391 < r < .789(p < .001)でr < .3に該当項目はなく,G-P分析においても全ての項目で有意差がみられ削除項目はみられなかった.項目間相関でr ≧ .7の項目番号6,13,14,17,18,24の6項目を削除した.
質問項目 | 平均値 | 標準偏差 | I-T相関 | 項目間相関 | G-P分析 平均値の差 |
|
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外来支援1 | 看護ケアを行いながら前回受診日からの生活状況をききとり,医師へ情報をつなげる | 3.770 | 1.092 | .611** | 1.611** | |
外来支援2 | 診察時の何気ない患者の動作から家での生活状況を想像する | 4.160 | .806 | .597** | 1.122** | |
外来支援3 | 疾患の予後経過や現在の疾患のステージを理解し,日常生活への影響を査定する | 4.000 | .937 | .672** | 1.594** | |
外来支援4 | 複数の診療科に関する知識を活用して,患者の病気の進行度に合わせたケアを提供する | 3.770 | .970 | .666** | 1.620** | |
外来支援5 | 患者・家族の理解度に合わせて,自宅で実施する医療処置への指導を行う | 4.070 | 1.009 | .594** | 1.552** | |
外来支援6 | 患者の思いや気持ちを医師へ代弁する | 4.430 | .818 | .590** | r = .724 | 1.194** |
外来支援7 | 患者が意向を表明できるようにはたらきかける | 4.270 | .832 | .672** | 1.353** | |
外来支援8 | ICに同席して患者・家族の受け止めを支援チームと共有する | 3.910 | 1.162 | .659** | 2.037** | |
外来支援9 | 病状や治療に関するICを患者が理解しイメージできているか確認する | 4.080 | .936 | .679** | 1.596** | |
外来支援10 | 患者がかかえる病いや障がいへの受容過程におけるショックや怒りに寄り添う | 4.000 | .880 | .706** | 1.562** | |
外来支援11 | 在宅療養を継続できる方法について患者・家族へ提案する | 3.910 | .988 | .789** | 1.985** | |
外来支援12 | 患者がかかえる思いや葛藤を代弁して家族と共有できるようにする | 3.670 | .947 | .708** | r = .760 | 1.7040** |
外来支援13 | 家族がかかえる在宅療養に対する不安や揺らぐ気持ちを受け止める | 3.890 | .938 | .718** | 1.669** | |
外来支援14 | 病状が悪化した際の方向性について,患者・家族・支援チーム間で繰り返し話し合う | 3.390 | 1.104 | .698** | r = .810 | 2.066** |
外来支援15 | 治療方針や療養先選択について患者・家族・支援チーム間で合意形成を図る | 3.370 | 1.117 | .738** | 2.175** | |
外来支援16 | 生活習慣から症状がまだ表れていないリスクに働きかけて,予防的な視点をもって患者支援を行う | 3.390 | 1.060 | .630** | r = .737 | 1.685** |
外来支援17 | 生活の中で患者ができることを拡大していけるように働きかける | 3.560 | .997 | .678** | 1.733** | |
外来支援18 | 患者なりに意識して疾患管理している部分を見つけ出す | 3.680 | .915 | .612** | r = .815 | 1.411** |
外来支援19 | 患者自身が考え行動変容できることを見い出す | 3.530 | .961 | .678** | 1.670** | |
外来支援20 | 疾患管理に向けて家族への協力をはたらきかける | 3.820 | .922 | .687** | 1.588** | |
外来支援21 | 院内外の多職種と連携して患者のセルフケアを支援する | 3.680 | 1.075 | .682** | 1.912** | |
外来支援22 | 予定外の受診を繰り返す患者について,地域支援者(訪問看護師やケアマネジャー)とケア内容について調整する | 3.410 | 1.121 | .601** | 1.739** | |
外来支援23 | 症状コントロールや医療処置に不安のある患者へ電話やケアルームでフォローする | 3.210 | 1.222 | .637** | 1.994** | |
外来支援24 | 疾患の進行に合わせて,患者・家族へ社会資源利用のニーズについて確認する | 3.680 | 1.030 | .714** | r = .823 | 1.878** |
外来支援25 | 病状の予後予測から生活上の変化を予測して,患者・家族へ必要な支援(社会資源)について情報提供する | 3.740 | 1.027 | .736** | 1.903** | |
外来支援26 | 支援の必要な患者を院内のリソースへつなげる | 3.970 | 1.050 | .625** | 1.670** | |
外来支援27 | 訪問看護や訪問診療の必要性について医師と共有する | 3.650 | 1.127 | .702** | 2.009** | |
外来支援28 | ケアマネジャーや訪問看護師と情報共有し患者の生活を整える | 3.460 | 1.219 | .664** | 2.145** | |
外来支援29 | 予定入院患者へ病院機能や入院生活について説明する | 4.260 | 1.202 | .391** | 1.276** | |
外来支援30 | 予定入院患者の入院前情報収集から,退院支援に必要な課題を整理して病棟へつなげる | 3.970 | 1.162 | .471** | 1.516** | |
外来支援31 | 退院後に外来通院を継続する患者の在宅療養生活状況を病棟へフィードバックする | 3.250 | 1.183 | .507** | 1.667** | |
外来支援32 | 外来受け持ち患者の入院中の情報(看護サマリー)を病棟から申し受ける | 3.220 | 1.389 | .524** | 1.871** | |
外来支援33 | 外来受け持ち患者の情報を緊急入院した病棟へ申し送る | 3.830 | 1.444 | .437** | 1.634** | |
外来支援34 | 定期的に多職種カンファレンスに参加し,病棟から外来に繋がる患者や入退院を繰り返している患者情報を共有する | 3.130 | 1.355 | .587** | 2.067** | |
外来支援35 | 入院前より介護保険を使用している患者情報をケアマネジャーへ依頼し,病棟へ申し送る | 2.850 | 1.319 | .552** | 1.896** |
** p < .001
網掛けがI-T相関で相関係数が.70以上のために削除した項目
尺度原案35項目から6項目を除外した29項目について,正規性の確認で分布の偏りを確認した後,探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った.因子数は,スクリープロットの確認と,固有値1以上を基準とし,因子負荷量は.40以上,因子負荷量が2因子へまたがっていないことを基準として項目選定を行い,該当しない項目をその都度削除しながら因子分析を繰り返した.その結果,因子負荷量が2因子へまたがる項目11,因子負荷量が.40以下であった項目32,33,35の4項目を削除し,25項目4因子構造を得た.
質問項目 | 第1因子 | 第2因子 | 第3因子 | 第4因子 | 共通性 | |||
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第1因子:病いとともに本人が望む暮らしの継続に向けた支援 クロンバックα = .915 | ||||||||
外来支援4 | 複数の診療科に関する知識を活用して,患者の病気の進行度に合わせたケアを提供する | .933 | –.105 | –.016 | –.065 | .667 | ||
外来支援3 | 疾患の予後経過や現在の疾患のステージを理解し,日常生活への影響を査定する | .872 | .001 | –.047 | –.037 | .686 | ||
外来支援2 | 診察時の何気ない患者の動作から家での生活状況を想像する | .824 | –.117 | .041 | –.066 | .524 | ||
外来支援5 | 患者・家族の理解度に合わせて,自宅で実施する医療処置への指導を行う | .639 | –.095 | .049 | .112 | .468 | ||
外来支援1 | 看護ケアを行いながら前回受診日からの生活状況をききとり,医師へ情報をつなげる | .642 | .133 | –.049 | –.057 | .458 | ||
外来支援19 | 患者自身が考え行動変容できることを見い出す | .630 | .169 | –.011 | –.020 | .539 | ||
外来支援16 | 生活習慣から症状がまだ表れていないリスクに働きかけて,予防的な視点をもって患者支援を行う | .517 | .265 | –.090 | –.009 | .458 | ||
外来支援7 | 患者が意向を表明できるようにはたらきかける | .490 | –.119 | .090 | .385 | .603 | ||
外来支援20 | 疾患管理に向けて家族への協力をはたらきかける | .484 | .324 | .047 | –.031 | .550 | ||
外来支援12 | 患者がかかえる思いや葛藤を代弁して家族と共有できるようにする | .479 | .109 | .005 | .271 | .611 | ||
第2因子:多職種連携による支援情報の共有とセルフケア支援 クロンバックα = .902 | ||||||||
外来支援22 | 予定外の受診を繰り返す患者について,地域支援者(訪問看護師やケアマネジャー)とケア内容について調整する | –.134 | .899 | .001 | –.082 | .593 | ||
外来支援28 | ケアマネジャーや訪問看護師と情報共有し患者の生活を整える | –.246 | .858 | .060 | .138 | .681 | ||
外来支援21 | 院内外の多職種と連携して患者のセルフケアを支援する | .144 | .796 | –.074 | –.120 | .626 | ||
外来支援27 | 訪問看護や訪問診療の必要性について医師と共有する | .017 | .756 | –.011 | .070 | .654 | ||
外来支援25 | 病状の予後予測から生活上の変化を予測して,患者・家族へ必要な支援(社会資源)について情報提供する | .208 | .619 | .053 | –.022 | .616 | ||
外来支援23 | 症状コントロールや医療処置に不安のある患者へ電話やケアルームでフォローする | .162 | .512 | .055 | –.019 | .419 | ||
外来支援15 | 治療方針や療養先選択について患者・家族・支援チーム間で合意形成を図る | .189 | .441 | .004 | .191 | .539 | ||
外来支援26 | 支援の必要な患者を院内のリソースへつなげる | .299 | .444 | .011 | –.009 | .464 | ||
外来支援34 | 定期的に多職種カンファレンスに参加し,病棟から外来に繋がる患者や入退院を繰り返している患者情報を共有する | –.039 | .431 | –.006 | .240 | .338 | ||
第3因子:予定入院患者への支援と病棟連携 クロンバックα = .771 | ||||||||
外来支援30 | 予定入院患者の入院前情報収集から,退院支援に必要な課題を整理して病棟へつなげる | –.003 | –.008 | .953 | –.054 | .863 | ||
外来支援29 | 予定入院患者へ病院機能や入院生活について説明する | –.016 | –.043 | .733 | .012 | .505 | ||
外来支援31 | 退院後に外来通院を継続する患者の在宅療養生活状況を病棟へフィードバックする | .028 | .206 | .496 | –.030 | .381 | ||
第4因子:病状理解や受け止めに向けた支援 クロンバックα = .815 | ||||||||
外来支援9 | 病状や治療に関するICを患者が理解しイメージできているか確認する | .072 | –.053 | –.038 | .884 | .786 | ||
外来支援8 | ICに同席して患者・家族の受け止めを支援チームと共有する | –.092 | .246 | –.050 | .665 | .568 | ||
外来支援10 | 患者がかかえる病いや障がいへの受容過程におけるショックや怒りに寄り添う | .360 | –.016 | .047 | .482 | .628 | ||
回転後の負荷量の平方和 | 9.405 | 8.862 | 4.361 | 7.633 | ||||
累積寄与率 | 43.490 | 48.845 | 54.266 | 56.894 | ||||
因子間相関 | 第1因子 | 1.000 | ||||||
尺度全体 クロンバックα = .945 | 第2因子 | .670 | 1.000 | |||||
第3因子 | .426 | .463 | 1.000 | |||||
第4因子 | .714 | .638 | .450 | 1.000 |
最尤法 プロマックス回転
削除項目 外来支援11:在宅療養を継続できる方法について患者・家族へ提案する
外来支援32:外来受け持ち患者の入院中の情報(看護サマリー)を病棟から申し受ける
外来支援33:外来受け持ち患者の情報を緊急入院した病棟へ申し送る
外来支援35:入院前より介護保険を使用している患者情報をケアマネジャーへ依頼し,病棟へ申し送る
尺度の第1因子は,患者の意向表明に向けたはたらきかけや,診察時の患者の動作や聞き取りから生活状況を査定し予防的な視点で支援する内容を表していると考え,【病いとともに本人が望む暮らしの継続に向けた支援】と命名した.第2因子は,病状管理に向けた患者のセルフケアを支援するために,医師,ケアマネジャー,訪問看護師等の院内外の多職種連携を表した支援と考え,【多職種連携による支援情報の共有とセルフケア支援】とした.第3因子は,予定入院の患者情報を病棟へつなぐことや,退院後に外来通院患者の情報を病棟へフィードバックする等の外来病棟間連携を表した支援と考え,【予定入院患者への支援と病棟連携】とした.第4因子は,病状説明の場面に関連した患者・家族支援として,【病状理解や受け止めに向けた支援】とした.
(2) 確証的因子分析(図1)探索的因子分析で得られた本尺度の25項目4下位尺度において,仮説モデルの適合度を確証的因子分析で確認した.χ2/df値=5.749(p < .001),GFI = .845,AGFI = .812,CFI = .904,RMSEA = .073であった.
外来看護師の在宅療養移行支援実践評価尺度の確証的因子分析
相関分析の結果,収束的妥当性として,本尺度の合計得点と病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度の合計得点間でr = .741(p < .001),本尺度の下位尺度得点と病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度の合計得点および下位尺度間では,r = .366~.723(p < .001)であった.弁別的妥当性として,本尺度の合計得点と在宅療養移行支援に関する困難感の相関係数はr = –.471(p < .001),本尺度の下位尺度得点と在宅療養移行支援に関する困難感の相関係数は,r = –.213~–.464(p < .001)であった.
4. 信頼性の検証(表3)外来看護師の在宅療養移行支援実践評価尺度全体25項目のクロンバックα係数は.945で,第1因子10項目はα = .915,第2因子9項目はα = .902,第3因子3項目はα = .771で,第4因子3項目はα = .815であった.
本研究の回収率は22.6%とやや低い値であったが,外来看護師を対象とした全国調査の回収率は21.2%~28.9%(宇田ら,2020;錦織・永田,2017)で先行研究とほぼ同様の回収率であった.全国の200床以下から600床以上までの様々な規模における病院の外来看護師より回答を得ており,看護師経験年数,外来看護経験年数の分布から本研究の対象データは一定の代表性が確保されていると考えた.
2. 外来看護師の在宅療養移行支援実践尺度の構成要素本尺度の4下位尺度は以下に示すように外来看護師が実践する患者・家族への在宅療養移行支援に必要な支援内容を抽出していると考える.
住み慣れた地域で暮らし続ける地域包括ケアシステムの基盤として,本人の選択と本人・家族の心構えがある.前田・永田(2019)は,在宅療養支援ニーズ把握には患者の治療や病状,受診行動の情報収集が重要と述べている.第1因子の【病いとともに本人が望む暮らしの継続に向けた支援】は,患者の意向表明と家族への代弁や協力のはたらきかけを基盤としながら,疾患の予後予測や診察時の動作から生活状況をアセスメントし,暮らしの継続に向けて予防的視点で介入する外来看護師の在宅療養移行支援実践の中核を成していると考える.第2因子は,患者のセルフケアを引き出し,生活を整えるために院内外の多職種と連携し,入院予防に向けた支援が集約されている.宇都宮(2014)は,患者の心身の状態に合わせて訪問看護や在宅医療を導入し,療養生活を支援する重要性を述べており,【多職種連携による支援情報の共有とセルフケア支援】は,病院・地域支援者間のシームレスな連携を表している.第3因子の【予定入院患者への支援と病棟連携】は,丸岡ら(2020)の[入院する患者の課題共有内容]と合致する内容であった.2018年の診療報酬改定で入院時支援加算が新設され予定入院患者への支援が求められるようになり,入院患者だけでなく退院後の患者情報の共有等,外来・病棟間連携が不可欠であると考える.第4因子の【病状理解や受け止めに向けた支援】は,第1因子の本人が望む暮らしの継続にもつながる要素で,先行研究(佐藤ら,2017)による意思決定支援の重要性と一致していた.
3. 妥当性の検証 1) 構成概念妥当性の検証本尺度はインタビュー調査と文献検討によりアイテムプールを作成した.I-T相関分析,G-P分析による除外項目はなく,探索的因子分析を実施した後に確証的因子分析を行いモデルの適合度を確認した.GFI,AGFIが,.812~.845と基準値より若干低い値を示したが,CFIが.904と基準値を満たしており(小塩,2012),許容できる適合度と考える.またRMSEAは0.5~0.8が許容範囲とされており(Mohammad et al., 2019),総合的に判断して本尺度のモデル適合度は概ね許容できると考える.また各下位尺度間の相関係数は,.426 < r < .714(p < .001)で中程度の正の相関が認められ,構成概念の共通性が確認された.
2) 収束的妥当性・弁別的妥当性の検証収束的妥当性として,病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度と合計得点,下位尺度間ともに中程度~高い正の相関が得られていることから,収束的妥当性について確認できた.弁別的妥当性について,在宅療養移行支援に関する困難感の相関係数は,弱い負の相関が得られたことから,弁別的妥当性について確認できた(堤,2009).
4. 信頼性本尺度の全体と下位尺度のα係数は.700以上を示し,信頼性が担保された基準(川本ら,2016)を満たしているため内的整合性は確認できたと判断した.第3因子【予定入院患者への支援と病棟連携】のα係数が.771と若干低値を示したが,α係数は尺度に含まれる項目数に影響される(髙本・服部,2015)ことから,項目数が少なかったことが影響したと考える.
本研究では再テスト法は実施していないため,尺度の安定性は確認されていない.今後は再テスト法を用いて信頼性の確認を十分に行うことが必要である.
5. 尺度の活用の可能性について本研究で開発された尺度は,地域包括ケア時代に住み慣れた地域でその人らしい暮らしが継続できるよう,地域支援者と協働して入院予防に向けたケアや入退院時の病棟との情報共有等,地域・病院間の連続したサイクルに基づく外来看護師が実践する重要な役割・機能を包含している.本尺度は,外来看護業務やケア介入についての標準的な指標となることや,各下位尺度や尺度全体の合計得点を算出することが可能で,日々の実践内容を振り返り自己の課題や改善に向けた具体的な手立てを検討するためのツールとして活用することができると考える.さらに在宅療養移行支援に関する研修前後の評価指標として利用し,研修の効果測定や研修ニーズに合わせた項目に重点を置いた教育プログラム内容の提供につながり,外来看護師が実践する患者・家族へのケアの質向上に寄与すると考える.
本研究では再テスト法は実施していないため,尺度の安定性は確認されていない.今後は再テスト法を用いて信頼性の確認を十分に行うことが必要である.さらに因子負荷量の低い項目のうち,重要な支援内容でありながら関連性が低く除外された項目のある可能性も否定できないことから,尺度の実用性について,様々な外来機能を有する属性を対象に活用し,構成項目を精緻化していくことが課題と考える.
外来看護師の在宅療養移行支援実践尺度は,【病いとともに本人が望む暮らしの継続に向けた支援】,【多職種連携による支援情報の共有とセルフケア支援】,【予定入院患者への支援と病棟連携】,【病状理解や受け止めに向けた支援】の4下位尺度25項目で構成された.本尺度の妥当性および信頼性は統計学的に許容範囲内であることが確認された.
謝辞:本研究実施にあたり,調査にご協力くださった看護部長,外来看護師,訪問看護師の皆さまに心より御礼申し上げます.
本研究は,文部科学省科学研究費補助金若手(B)「外来看護における在宅療養移行支援プログラムの開発」を受けて実施しました(課題番号15K20782).
利益相反:本研研究に関連し,開示すべきCOI関係にある企業・組織および団体等はありません.