Journal of Japan Academy of Nursing Science
Online ISSN : 2185-8888
Print ISSN : 0287-5330
ISSN-L : 0287-5330
Brief Reports
Effects of Poultice Application to Skin Lesions Induced by Extravasation of Administered Catecholamines: An Experimental Study
Hitoshi Nozato, Ryo Takahashi, Toshiaki Takeda
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2021 Volume 41 Pages 391-394

Details
Abstract

目的:ラットを用いた基礎研究により,カテコラミン製剤の漏出性皮膚傷害に対する確かな看護ケアの確立に向けた基礎的な知見を得ることである.

方法:ラットの背部皮下に実験的な漏出性皮膚傷害を作製し罨法の効果を検討した.

結果:罨法を実施しない対照群では3/6例において観察1日目に発赤を認め,その中の1例は3日目に潰瘍へと変化した.温罨法群では5/6例において1日目に発赤を認め,その発赤は3日目には全例が潰瘍化した.一方で,冷罨法群では発赤,潰瘍などの皮膚傷害は認められなかった.

結論:血管拡張作用を目的に温罨法を実施した動物では,対照群より高い割合で潰瘍を形成したため,これまで推奨されてきた温罨法は皮膚傷害を悪化させる知見が得られた.また,抗炎症作用を目的に冷罨法を実施した動物では,皮膚傷害は認められなかったことから,冷罨法の有効性が示唆された.

Translated Abstract

Purpose: The present study was to develop an evidence-based nursing procedure for skin lesions induced by subcutaneous injection of catecholamines using an extravasation rat model.

Methods: Skin lesions were induced in rats by subcutaneous injection of catecholamines into the back skin, and then the effects of applying a poultice were observed.

Results: In a control group for which no poultice was applied, flare-up was observed in three rats on the first day, and in one of these rats an ulcer developed on the third day. In a group treated with a hot poultice, flare-up was observed in five rats on the first day, and all of those rats developed ulcers on the third day. On the other hand, no skin lesions occurred in a group treated with a cold poultice.

Conclusion: When extravasation of catecholamines occurs, application of a hot poultice for vasodilation causes deterioration of the skin lesions whereas a cold poultice for suppression of inflammation is effective for prevention of skin lesions.

Ⅰ. はじめに

カテコラミン製剤が血管外に漏出すると,壊死が改善しないため下肢を切断した症例(園山ら,2018)が報告されるなど,皮膚傷害が重篤化することがある.これは,当該製剤の薬理作用である血管収縮作用が関与した局所虚血が影響する(牧野ら,2016)と考えられており,血管外に漏出した際は収縮した血管を拡張することを目的に温罨法が推奨されている(徳永,2015).しかし,温罨法を実施しても皮膚傷害は改善しないことも少なくないことや,漏出性皮膚傷害に対する温罨法の効果を示す実証データはなく,その有効性は十分に検討されていない.また,抗がん剤以外の薬剤漏出時の冷罨法は研究によって確立された技術(菱沼ら,2019)とされていることからも,カテコラミン製剤の漏出性皮膚傷害に対する罨法の効果を検討することは重要と考えた.

そこで,本研究の目的は,エビデンスに基づく看護ケアの確立に向けた基礎的な知見を得るために,実験動物を用いたカテコラミン製剤の漏出性皮膚傷害に対する罨法の効果を検討することである.

Ⅱ. 実験方法

1. 使用動物

生後4週齢のJcl:Wistar系雄性ラット(日本クレア)20匹を,室温20 ± 2°C,相対湿度55 ± 5%に設定され,飼料,水とも常時摂取可能な動物室にて2週間馴化飼育したのち,健康な18匹を使用した(温罨法群,冷罨法群,罨法を実施しない動物を対照群とし,各群6匹).

2. 使用薬剤

強心薬を使用する際に第一選択されているドブタミン塩酸塩(坂田,2012)を選択し,その中でも臨床で使用されることが多い希釈型ドブタミン塩酸塩注射液(ドブポン注0.6%シリンジ®,テルモ(株))を使用した.

3. 漏出性皮膚傷害の作製方法

動物実験用吸入麻酔器を使用し,イソフルラン(フォーレン吸入麻酔液®,アボットジャパン(株))を吸入させ,麻酔導入後に電気バリカンでラットの背部を剃毛した.剃毛後は,漏出性皮膚傷害の実験的な作製方法(三浦ら,2003)を参考に,背部の皮膚を摘み上げ,26G × 1/2SBの注射針を45度の角度で2/3挿入後,薬剤を0.5 mL投与した.

4. 罨法の実施方法

漏出性皮膚傷害の作製直後から,ゲルパック(コールド/ホットパック®:スリーエムヘルスケア)を用いて,背部を覆い被せるように罨法を実施した.罨法の実施時間は,実験研究(三浦ら,2003)および臨床研究(葛西ら,2014)ともに,30分の罨法で漏出性皮膚傷害の予防や軽減に効果が認められたことから30分とした.

温度の管理および設定については,デジタル温度計(BAT-7001H,バイオリサーチセンター(株))を用いて,漏出性皮膚傷害に対する罨法の効果に関する研究(三浦ら,2003)を参考に,温罨法群は41 ± 1°C,冷罨法群は21 ± 1°Cとした.

5. 検索方法

漏出性皮膚傷害の作製後1,3および5日目に肉眼的な観察を行った.

6. 倫理的配慮

本研究は,岩手医科大学の動物実験倫理審査委員会の承認(承認番号01-015)を得て,動物福祉の観点からも適正な動物実験が実施できるよう十分に考慮して研究を行った.

Ⅲ. 結果

各群の皮膚傷害の特徴に関しては表1に示した.対照群では1日目に6匹中3例に発赤が確認され(図1:a),3日目も発赤は持続した.その中の2例は5日目までに発赤は消失したが,1例のみ皮膚傷害が悪化し潰瘍を形成した.これに対して,温罨法群では,1日目に6匹中5例に発赤が確認され(図1:b),その後発赤が消失する症例はなく,5例全てが5日目までに潰瘍を形成した.その一方で,冷罨法群では1日目から5日目まで発赤や潰瘍形成などの皮膚傷害は確認されなかった(図1:c).

表1  漏出性皮膚傷害の肉眼的所見
1日目 3日目 5日目
対照群 皮膚傷害なし 3/6 3/6 5/6
発赤 3/6 2/6 0/6
潰瘍形成 0/6 1/6 1/6
温罨法群 皮膚傷害なし 1/6 1/6 1/6
発赤 5/6 0/6 0/6
潰瘍形成 0/6 5/6 5/6
冷罨法群 皮膚傷害なし 6/6 6/6 6/6
発赤 0/6 0/6 0/6
潰瘍形成 0/6 0/6 0/6
図1 

1日目の肉眼的所見(代表例)

Ⅳ. 考察

これまで,カテコラミン製剤の血管外漏出性皮膚傷害に対しては,その薬理作用である血管収縮作用による虚血性傷害が関与すると考えられてきたが(徳永,2015),我々の基礎研究により当該製剤による漏出性皮膚傷害では,漏出直後から急性の炎症反応が発現することが明らかになっている(野里ら,2020).この変化は,カテコラミン製剤以外の一般の薬剤(抗がん剤以外)が漏出した際の皮膚傷害と同様の組織反応であり,三浦ら(2003)はその際の温罨法は炎症性細胞の組織浸潤を促し,組織破壊を促進させることを指摘している.このことから,温罨法による漏出性皮膚傷害の増強は,三浦らの知見と同様の作用に基づいていると考えられた.このように,当該製剤の漏出性皮膚傷害に対する温罨法が病変を悪化させることが明らかとなった一方で,冷罨法を実施した動物に皮膚傷害は確認されなかった.

抗がん剤以外の一般的な薬剤が漏出した際は,急性炎症反応が起こることから抗炎症作用をもつ冷罨法が有効であることが明らかとなっている(三浦ら,2003).本実験においても冷罨法を実施した動物のみ発赤などの急性炎症反応はなく,潰瘍の形成も確認されなかった.したがって,カテコラミン製剤の漏出時も一般的な薬剤と同様に冷罨法により急性炎症を抑制することが漏出性皮膚傷害の予防に効果的であり,推奨されるケアは温罨法ではなく冷罨法である可能性が示唆された.本研究では当該製剤漏出時の急性炎症に対する罨法の効果について検討したが,今後は局所虚血に対する反応についても検討する必要があると考える.

これまで,臨床においてカテコラミン製剤が漏出した際に発赤や腫脹が確認されても,局所虚血が助長し皮膚傷害を悪化させると思い込み冷罨法を実施することが難しい状況にあった.しかし,本実験で得られた知見とこれまでの研究成果(三浦ら,2003;小山ら,2008)から,当該製剤の漏出性皮膚傷害に対する温罨法を再考するとともに,冷罨法の臨床応用を検討する必要性が示された.このことは,カテコラミン製剤の漏出性皮膚傷害の予防や軽減だけではなく苦痛の緩和にもつながり,傷害に苦しむ患者のQOL向上に寄与すると考える.

付記:本論文の内容の一部は第40回日本看護科学学会学術集会にて発表した.

謝辞:本研究は,JSPS科学研究費(課題番号18K17466)の助成を受けて行ったものである.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:HNは研究の構想,データの収集や解析,論文執筆.RTは研究の構想,データの収集や解析への貢献.TTは研究プロセス全体への助言および原稿への示唆.すべての著書は最終原稿を読み承認した.

文献
 
© 2021 Japan Academy of Nursing Science
feedback
Top