Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Perceptions of Palliative Cancer Care and Related Factors among Outpatient Nurses Working at Designated Oncology Hospitals
Hiroko NotoharaRie OkamotoShizuko Omote
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2021 Volume 41 Pages 885-894

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Abstract

目的:がん診療連携拠点病院に勤務する外来看護師を対象に,がん緩和ケアの実践に対する認識の自己評価とその関連要因を4側面ごとに明らかにした.

方法:A県がん診療連携拠点病院の外来看護師を対象に,がん緩和ケアの実践に対する認識と,緩和ケアに関する経験について自記式質問紙調査を行なった.

結果:207名に配布し回収率は92.3%であった.実践の程度の自己評価について,できていると回答した割合はいずれも2割以下であった.役割意識がある者は,スピリチュアルな側面で約7割,残りの3側面で8割から9割であった.緩和ケアの実践に関連する要因は,研修の受講や専門・認定看護師の支援を受けた経験,他職種連携の経験などであった.

結論:外来看護師の緩和ケア実践を促進するためには,基本的な緩和ケアの実践知を積み上げ,他職種へとつなぐ体制整備が不可欠であると示唆された.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to clarify the perceptions of outpatient nurses for palliative cancer care and its related factors in the following four aspects: physical, psychological, social and spiritual.

Method: A self-administered questionnaire survey was conducted on outpatient nurses at designated oncology hospitals in a prefecture to understand their perceptions of palliative cancer care and related experiences.

Results: The questionnaire was distributed to 207 participants, and the response rate was 92.3%. Less than 20% of the nurses considered themselves to be practicing palliative care. Nurses who believed that they were practicing in a spiritual sense of the role comprised approximately 70%, and 80% to 90% felt they were involved in the in the other three aspects mentioned above. Factors that influenced the practice of palliative care included training of nurses, support from other professionals or certified nurses, and collaboration with other healthcare professionals.

Conclusion: To promote the practice of palliative care by outpatient nurses, it is imperative to expand their practical knowledge of basic palliative care and assist them to develop a collaborative working relationship with other healthcare professionals.

Ⅰ. 緒言

がんは我が国の死亡原因の第1位である(厚生労働省,2018c).2007年4月に施行された「がん対策基本法」を受け,同年2007年に第1期がん対策推進基本計画が策定され,緩和ケアの推進が明記された(厚生労働省,2007a).緩和ケアの定義は,がんと診断された時からの切れ目ない緩和ケア,全人的な緩和ケアの提供などである(厚生労働省,2007b).緩和ケアとは,生命を脅かす問題に直面している患者とその家族に対し,身体的,心理社会的,スピリチュアルな問題に対して評価を行いそれが障害とならないよう予防,対処することであり,クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を改善することであるとしたWHOの定義を参考としている(日本緩和医療学会,2002厚生労働省,2007b).

2001年の医療制度改革以降,悪性新生物平均在院日数は28.9日,2019年は16.1日(病院+診療所)(厚生労働省:患者調査,2017a)と短縮され,がん治療の外来化が急速に進んでいる(数間・小林,2005).

Davidらは,在宅がん患者に緩和ケアを提供する一つのモデルに外来診療が組み込まれていると述べており(David & Eduardo, 2020),通院するがん患者にとって外来は重要な治療の場である.しかし,我が国においては,外来における緩和ケアの実践がまだ確立したものであるとはいえず,緩和ケアの提供も少ないとの指摘がある(宮下,2013).

現在,がん診療連携拠点病院等(厚生労働省,2018a)では,がんと診断された時からの緩和ケアが推進されており(厚生労働省,2014),すべての医療従事者は基本的な緩和ケアを提供することが望まれている.また,患者の生き方を考慮した治療・ケア計画(以下ACP)が重要視されており(厚生労働省,2018b),早急に緩和ケアの支援体制を整える必要がある.外来看護師は緩和ケアの提供や病棟や地域,他職種をつなぐチームの一員としての役割を担っており(公益社団法人 日本看護協会,2016),外来看護師の緩和ケア実践に対するがん患者のニーズは高いと考えられる.Satoらは看護師を対象とした緩和ケアの知識,困難感,実践に関する調査を実施している(Sato et al., 2014).しかし,外来看護師に特化した調査はまだ行われておらず,外来看護師が自らの緩和ケア実践についてどのように認識しているか,実践の認識に影響を与える役割意識や自覚を持っているかといった実態は明らかになっていない.

本研究の目的は,がん診療連携拠点病院に勤務する外来看護師を対象に,がん緩和ケアの実践に対する認識の自己評価とその関連要因を4側面ごとに明らかにすることであり,本研究の結果は,看護職が今後ますます高まると考えられるがん患者とその家族のニ―ズに対応し,切れ目のない緩和ケアの提供を行うための基礎資料になると考える.

Ⅱ. 方法

1. 研究デザイン

実態調査型研究である.

2. 用語の定義

緩和ケアの4側面とは,2002年WHOの定義に基づく,身体的側面・精神的側面・社会的側面・スピリチュアル(実存的)な側面とする.

基本的な緩和ケアとは,がんの診断時から,がん患者に関わるすべての医療者によって提供されるべき緩和ケア実践とする.(東北大学病院がんセンター,2013~2021

3. 研究対象者

A県においてがん診療連携拠点病院に指定されている5病院の一般外来に勤務する看護師を対象とした.がん治療に関して専門性の高い専門看護師・認定看護師・外来化学療法室,がん患者に接しない採血部門に勤務する看護師は除外した.

4. 調査期間

2018年9月から11月であった.

5. 調査方法

対象施設の看護部を通じ,施設ごとの対象人数の確認を行った後,自記式質問紙の配布を依頼し,外来で勤務する専従看護師及び病棟からの応援看護師(以下,外来看護師)に対し調査を行った.質問紙は,1週間または2週間の留め置き法にて回収を行った.留め置き法について同意が得られなかった施設については郵送法にて各対象者に返送を依頼した.

6. 調査項目

1) 基本属性

年齢,性別,看護師経験年数,外来部署経験年数,雇用形態,外来での勤務形態,診療科,看護師の判断や診療の補助等で直接接するがん患者の一日平均人数について調査した.

2) 外来看護師の緩和ケアの4側面ごとの実践に関する認識

①実践の程度の自己評価:緩和ケアをどの程度実践できているかを「とてもできている」,「どちらかというとできている」,「あまりできていない」,「できていない」の4件法で調査した.

②役割意識:緩和ケアは外来看護師の役割だと思うかを「大変そう思う」「そう思う」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」の4件法で調査した.

③全般的な実践の自覚:緩和ケアを行なっている自覚があるかを「あり」「なし」「わからない」の3件法で調査した.

3) 緩和ケアに関する経験

外来看護師のがん罹患・介護の経験の有無,緩和ケアに関する研修の受講経験の有無,アセスメントツールの使用経験の有無,外来勤務中のがんに関連した専門看護師,認定看護師(以下,専門・認定看護師)から支援を受けた経験の有無,他職種との連携経験の有無を調査した.

7. 分析方法

緩和ケアの4側面(身体的側面・精神的側面・社会的側面・スピリチュアルな側面)ごとの実践の程度の自己評価,役割意識,全般的な実践の自覚について記述統計を行った後,実践の程度の自己評価と役割意識との関連を見た.次に,主要評価項目である実践の程度の自己評価(4群)を「できている」,「できていない」の2群に分け,自覚との関連を見た.実践の程度2群と属性および緩和ケアに関する経験の関連については,t検定とχ2検定を行った.最終的に,実践の程度2群を目的変数,有意差がみられた変数を説明変数とし,二項ロジスティック回帰分析を行った.有意水準は5%とし,分析にはSPSS statistics ver. 26を使用した.

Ⅲ. 倫理的配慮

対象施設の看護部長へ,研究目的と調査方法,倫理的配慮について書面および口頭で説明し,研究協力の依頼を行った.対象施設の概要は,自記式質問紙の内容と連結しないこと,また施設ごとの分析は公表しないことを説明した.対象者には,研究の目的と方法,研究協力の有無で不利益が生じないこと,匿名であること,質問紙への回答をもって同意が得られたと判断することを文書で説明した.本研究は,筆者の所属する金沢大学医学倫理審査委員会の承認を得た.(承認番号873-1)

Ⅳ. 結果

1. 自記式質問紙回収状況

対象の5施設から本研究の対象者に該当すると回答のあった計207名に質問紙を配布し,回収数は191名であった(回収率:92.3%).回答に不備があった18名を除く173名を有効回答とした(有効回答率:83.6%).がん患者に接する人数の一日の平均が1名に満たない者29名を除外し,最終的に144名(69.6%)について分析を行った.

2. 対象者の基本属性と緩和ケアに関する経験(表1

対象の年齢は40.5 ± 10.3歳であった.看護師経験年数は,10年未満が41名(29.3%),外来経験年数は,5年未満が83名(60.1%)と一番多かった.雇用形態は,常勤が94名(67.6%)であった.勤務形態は,外来専従看護師89名(63.6%),病棟からの応援51名(36.4%)であった.外来看護師が勤務する主な診療科は,内科(11.1%),決まっていない(9.0%)など多岐に渡っていた.外来看護師が1日に接する患者の人数の平均は27.1 ± 19.4名,1日に接するがん患者の人数の平均は10.1 ± 9.4名であった.また,すべての施設に緩和ケアチームが設置されていた.

表1  対象者の基本属性と緩和ケアに関する経験
n (%)
年齢 n = 141
 平均年齢(歳±SD) 40.5 ± 10.3
 年齢区分 20代 19 (13.5)
30代 53 (37.6)
40代 39 (27.7)
50代 26 (18.4)
60代 4 (2.8)
看護師経験年数 n = 140
 平均年数(平均±SD) 19.7 ± 10.5
 年数区分 0~10年未満 41 (29.3)
10~20年未満 46 (32.9)
20~30年未満 32 (22.9)
30年以上 21 (15.0)
看護師経験経験年数のうち外来経験年数 n = 138
 平均年数(平均±SD) 5.9 ± 6.9
 年数区分 0~5年未満 83 (60.1)
5~10年未満 28 (20.3)
10~15年未満 14 (10.1)
15年以上 13 (9.4)
性別 n = 143
男性 2 (1.4)
女性 141 (98.6)
がん罹患・介護の経験 n = 138
自身・家族にあり 54 (39.1)
親戚・知人・友人にあり 14 (10.1)
なし 70 (50.7)
雇用形態/(就労時間 平均±SD) n = 139
常勤/(7.5 ± 1.2) 94 (67.6)
常勤時間短縮勤務/(5.9 ± 1.4) 24 (17.3)
非常勤・パート勤務/(6.8 ± 1.0) 21 (15.1)
勤務形態 n = 140
外来専従看護師 89 (63.6)
病棟からの応援 51 (36.4)
他職種連携経験の有無 n = 138
経験あり 79 (57.2)
経験なし 59 (42.8)
アセスメントツールを使用している n = 131
はい 25 (19.1)
いいえ 106 (80.9)
緩和ケアに関する研修の受講経験 n = 138
あり 31 (22.5)
なし 107 (77.5)
外来勤務中の専門,認定看護師からの支援の経験 n = 136
あり 67 (49.3)
なし 69 (50.7)
診療科 n = 144
内科 16 (11.1)
決まっていない 13 (9.0)
外科 11 (7.6)
整形外科 10 (6.9)
婦人科 10 (6.9)
泌尿器科 9 (6.3)
その他 75 (52.0)

3. 緩和ケアの4側面別にみた外来看護師の認識

1) 実践の程度の自己評価と役割意識の関連(表2

緩和ケアの実践の程度を「とてもできている」と回答した者は,精神的側面,身体的側面,社会的側面は2名,スピリチュアルな側面では1名であった.「どちらかというとできている」と回答した者は,精神的側面27名(19.7%),身体的側面23名(16.4%),社会的側面18名(12.8%),スピリチュアルな側面12名(8.6%)であった.

表2  外来看護師の緩和ケアの4側面ごとの実践の程度の自己評価と役割意識の関連 n(%)
役割意識
実践の程度の自己評価
大変そう思う そう思う あまりそう思わない そう思わない 総計
身体的側面 とてもできている 1 (0.7) 1 (0.7) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (1.4)
どちらかというとできている 10 (7.1) 12 (8.6) 1 (0.7) 0 (0.0) 23 (16.4)
あまりできていない 9 (6.4) 78 (55.7) 4 (2.9) 0 (0.0) 91 (65.0)
できていない 2 (1.4) 18 (12.9) 4 (2.9) 0 (0.0) 24 (17.1)
合計 22 (15.7) 109 (77.9) 9 (6.4) 0 (0.0) 140 (100.0)
精神的側面 とてもできている 2 (1.5) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (1.5)
どちらかというとできている 15 (10.9) 12 (8.8) 0 (0.0) 0 (0.0) 27 (19.7)
あまりできていない 18 (13.1) 64 (46.7) 4 (2.9) 0 (0.0) 86 (62.8)
できていない 0 (0.0) 17 (12.4) 5 (3.6) 0 (0.0) 22 (16.1)
合計 35 (25.5) 93 (67.9) 9 (6.6) 0 (0.0) 137 (100.0)
社会的側面 とてもできている 1 (0.7) 1 (0.7) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (1.4)
どちらかというとできている 7 (5.0) 11 (7.8) 0 (0.0) 0 (0.0) 18 (12.8)
あまりできていない 12 (8.5) 63 (44.7) 6 (4.3) 0 (0.0) 81 (57.4)
できていない 2 (1.4) 25 (17.7) 12 (8.5) 1 (0.7) 40 (28.4)
合計 22 (15.6) 100 (70.9) 18 (12.8) 1 (0.7) 141 (100.0)
スピリチュアルな億面 とてもできている 1 (0.7) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (0.7)
どちらかというとできている 4 (2.9) 8 (5.7) 0 (0.0) 0 (0.0) 12 (8.6)
あまりできていない 6 (4.3) 54 (38.6) 15 (10.7) 0 (0.0) 75 (53.6)
できていない 1 (0.7) 29 (20.7) 21 (15.0) 1 (0.7) 52 (37.1)
合計 12 (8.6) 91 (65.0) 36 (25.7) 1 (0.7) 140 (100.0)

役割意識を,「大変そう思う」と回答した者は,精神的側面35名(25.5%),身体的側面22名(15.7%),社会的側面22名(15.6%),スピリチュアルな側面12名(8.6%),「そう思う」と回答した者は,身体的側面109名(77.9%),社会的側面100名(70.9%),精神的側面93名(67.9%),スピリチュアルな側面91名(65.0%)であった.

役割意識と実践の程度の関連で最も多かったのは,4側面共に役割意識を「そう思う」かつ実践の程度を「あまりできていない」と回答した者で,身体的側面78名(55.7%),精神的側面64名(46.7%),社会的側面63名(44.7%),スピリチュアルな側面54名(38.6%)であった.

2) 実践の程度の自己評価と自覚の有無(表3

緩和ケアを行っている自覚があると回答した外来看護師の4側面ごとの割合は,精神的側面が62名(44.9%)で一番高く,スピリチュアルな側面21名(14.8%)が一番低かった.

表3  外来看護師の緩和ケアの4側面ごとの実践の程度の自己評価と自覚の有無 n(%)
実践の程度の自己評価 自覚の有無
あり なし わからない 合計
身体的側面 できている 22 (88.0) 1 (4.0) 2 (8.0) 25 (100.0)
できていない 25 (21.7) 43 (37.4) 47 (40.9) 115 (100.0)
精神的側面 できている 28 (96.6) 0 (0.0) 1 (3.4) 29 (100.0)
できていない 34 (31.5) 36 (33.3) 38 (35.2) 108 (100.0)
社会的側面 できている 12 (60.0) 2 (10.0) 6 (30.0) 20 (100.0)
できていない 14 (11.7) 57 (47.5) 49 (40.8) 120 (100.0)
スピリチュアルな側面 できている 11 (84.6) 0 (0.0) 2 (15.4) 13 (100.0)
できていない 10 (7.9) 64 (50.4) 53 (41.7) 127 (100.0)

実践の程度と実践の自覚の関連で最も多かったのは,実践の程度を「できていない」,かつ実践の自覚がないと回答した者で,スピリチュアルな側面では64名(50.4%)であった.実践の程度を「できていない」かつ実践の自覚を「わからない」とした者もスピリチュアルな側面が最も高く53名(41.7%)であった.

4. 実践の程度の自己評価と属性および経験の関連(表4

実践の程度2群について,年齢,性別,看護師経験年数,外来部署経験年数の平均値の比較を行ったところ,4側面共に差はみられなかった.身体的側面を実践できていると評価した者は実践できていないと評価した者に比べて,研修受講の経験あり,専門・認定看護師の支援を受けた経験あり,他職種連携の経験ありの割合が高かった(p = 0.004, p = 0.001, p = 0.005).精神的側面を実践できていると評価した者は実践できていないと評価した者に比べて,研修受講の経験あり,専門・認定看護師の支援を受けた経験あり,他職種連携の経験ありの割合が高かった(p = 0.007, p = 0.033, p = 0.009).社会的側面は,外来専従の勤務形態,アセスメントツールの使用経験あり,研修受講の経験あり,専門・認定看護師の支援を受けた経験ありの割合が高かった(p = 0.031, p = 0.023, p = 0.016, p = 0.048).スピリチュアルな側面は,アセスメントツールの使用経験ありの割合が高かった(p = 0.048).

表4  緩和ケアの4側面ごとの外来看護師の実践の程度の自己評価と属性および経験との関連 n(%),(平均年数±SD)
実践の程度 合計 p
実践できている 実践できていない
身体的側面 看護師経験年数 25 16.6 ± 9.5 113 16.9 ± 10.9 0.921
がん罹患・介護経験の有無
n = 134
自身・家族にあり 12 (23.1) 40 (76.9) 52 (100.0) 0.152
親戚・知人・友人にあり 4 (28.6) 10 (71.4) 14 (100.0)
なし 8 (11.8) 60 (88.2) 68 (100.0)
合計 24 (17.9) 110 (82.1) 134 (100.0)
雇用形態
n = 135
常勤 15 (16.3) 77 (83.7) 92 (100.0) 0.434
常勤時間短縮勤務 6 (27.3) 16 (72.7) 22 (100.0)
非常勤・パート 3 (14.3) 18 (85.7) 21 (100.0)
合計 24 (17.8) 111 (82.2) 135 (100.0)
勤務形態
n = 136
外来専従看護師 19 (22.4) 66 (77.6) 85 (100.0) 0.063
病棟からの応援 5 (9.8) 46 (90.2) 51 (100.0)
合計 24 (17.6) 112 (82.4) 136 (100.0)
アセスメントツール使用経験の有無
n = 128
あり 8 (32.0) 17 (68.0) 25 (100.0) 0.084
なし 16 (15.5) 87 (84.5) 103 (100.0)
合計 24 (18.8) 104 (81.3) 128 (100.0)
研修受講経験の有無
n = 128
あり 11 (35.5) 20 (64.5) 31 (100.0) 0.004
なし 13 (12.6) 90 (87.4) 103 (100.0)
合計 24 (17.9) 110 (82.1) 134 (100.0)
専門認定看護師の支援を受けた経験の有無
n = 132
あり 19 (29.7) 45 (70.3) 64 (100.0) 0.001
なし 5 (7.4) 63 (92.6) 68 (100.0)
合計 24 (18.2) 108 (81.8) 132 (100.0)
他職種連携経験の有無
n = 134
経験あり 20 (26.0) 57 (74.0) 77 (100.0) 0.005
経験なし 4 (7.0) 53 (93.0) 57 (100.0)
合計 24 (17.9) 110 (82.1) 134 (100.0)
精神的側面 看護師経験年数 29 16.1 ± 9.8 106 16.7 ± 10.7 0.786
がん罹患・介護経験の有無
n = 132
自身・家族にあり 16 (30.8) 36 (69.2) 52 (100.0) 0.068
親戚・知人・友人にあり 4 (28.6) 10 (71.4) 14 (100.0)
なし 9 (13.6) 57 (86.4) 66 (100.0)
合計 29 (22.0) 103 (78.0) 132 (100.0)
雇用形態
n = 132
常勤 18 (20.2) 71 (79.8) 89 (100.0) 0.431
常勤時間短縮勤務 7 (30.4) 16 (69.6) 23 (100.0)
非常勤・パート 3 (15.0) 17 (85.0) 20 (100.0)
合計 28 (21.2) 104 (78.8) 132 (100.0)
勤務形態
n = 133
外来専従看護師 21 (24.4) 65 (75.6) 86 (100.0) 0.110
病棟からの応援 6 (12.8) 41 (87.2) 47 (100.0)
合計 27 (20.3) 106 (79.7) 133 (100.0)
アセスメントツール使用経験の有無
n = 125
あり 7 (28.0) 18 (72.0) 25 (100.0) 0.525
なし 22 (22.0) 78 (78.0) 100 (100.0)
合計 29 (23.2) 96 (76.8) 125 (100.0)
研修受講経験の有無
n = 132
あり 12 (40.0) 18 (60.0) 30 (100.0) 0.007
なし 17 (16.7) 85 (83.3) 102 (100.0)
合計 29 (22.0) 103 (178.0) 132 (100.0)
専門認定看護師の支援を受けた経験の有無
n = 130
あり 19 (29.2) 46 (70.8) 65 (100.0) 0.033
なし 9 (13.8) 56 (86.2) 65 (100.0)
合計 28 (21.5) 102 (78.5) 130 (100.0)
他職種連携経験の有無
n = 132
経験あり 23 (29.9) 54 (70.1) 77 (100.0) 0.009
経験なし 6 (10.9) 49 (89.1) 55 (100.0)
合計 29 (22.0) 103 (78.0) 132 (100.0)
社会的側面 看護師経験年数 20 18.0 ± 9.8 119 16.2 ± 10.4 0.482
がん罹患・介護経験の有無
n = 135
自身・家族にあり 11 (21.2) 41 (78.8) 52 (100.0) 0.123
親戚・知人・友人にあり 3 (21.4) 11 (78.6) 14 (100.0)
なし 6 (8.7) 63 (91.3) 69 (100.0)
合計 20 (14.8) 115 (85.2) 135 (100.0)
雇用形態
n = 136
常勤 16 (17.6) 75 (82.4) 91 (100.0) 0.212
常勤時間短縮勤務 2 (8.3) 22 (91.7) 24 (100.0)
非常勤・パート 1 (4.8) 20 (95.2) 21 (100.0)
合計 19 (14.0) 117 (86.0) 136 (100.0)
勤務形態
n = 137
外来専従看護師 17 (19.5) 70 (80.5) 87 (100.0) 0.031
病棟からの応援 3 (6.0) 47 (94.0) 50 (100.0)
合計 20 (14.6) 117 (85.4) 137 (100.0)
アセスメントツール使用経験の有無
n = 129
あり 7 (28.0) 18 (72.0) 25 (100.0) 0.023
なし 10 (9.6) 94 (90.4) 104 (100.0)
合計 17 (13.2) 112 (86.8) 129 (100.0)
研修受講経験の有無
n = 135
あり 9 (30.0) 21 (70.0) 30 (100.0) 0.016
なし 11 (10.5) 94 (89.5) 105 (100.0)
合計 20 (14.8) 115 (85.2) 135 (100.0)
専門認定看護師の支援を受けた経験の有無
n = 133
あり 14 (21.2) 52 (78.8) 66 (100.0) 0.048
なし 6 (9.0) 61 (91.0) 67 (100.0)
合計 20 (15.0) 113 (85.0) 133 (100.0)
他職種連携経験の有無
n = 135
経験あり 15 (19.2) 63 (80.8) 78 (100.0) 0.091
経験なし 5 (8.8) 52 (91.2) 57 (100.0)
合計 20 (14.8) 115 (85.2) 135 (100.0)
スピリチュアルな側面 看護師経験年数 13 14.6 ± 9.8 125 17.0 ± 10.7 0.440
がん罹患・介護経験の有無
n = 135
自身・家族にあり 6 (11.3) 47 (88.7) 53 (100.0) 0.629
親戚・知人・友人にあり 2 (14.3) 12 (85.7) 14 (100.0)
なし 5 (7.4) 63 (92.6) 68 (100.0)
合計 13 (9.6) 122 (90.4) 135 (100.0)
雇用形態
n = 135
常勤 8 (8.7) 84 (91.3) 92 (100.0) 0.705
常勤時間短縮勤務 3 (12.5) 21 (87.5) 24 (100.0)
非常勤・パート 1 (5.3) 18 (94.7) 19 (100.0)
合計 12 (8.9) 123 (91.1) 135 (100.0)
勤務形態
n = 136
外来専従看護師 7 (8.1) 79 (91.9) 86 (100.0) 0.549
病棟からの応援 6 (12.0) 44 (88.0) 50 (100.0)
合計 13 (9.6) 123 (90.4) 136 (100.0)
アセスメントツール使用経験の有無
n = 128
あり 5 (20.8) 19 (79.2) 24 (100.0) 0.048
なし 7 (6.7) 97 (93.3) 104 (100.0)
合計 12 (9.4) 116 (90.6) 128 (100.0)
研修受講経験の有無
n = 135
あり 4 (13.3) 26 (86.7) 30 (100.0) 0.485
なし 9 (8.6) 96 (91.4) 105 (100.0)
合計 13 (9.6) 122 (90.4) 135 (100.0)
専門認定看護師の支援を受けた経験の有無
n = 133
あり 9 (13.8) 56 (86.2) 65 (100.0) 0.122
なし 4 (5.9) 64 (94.1) 68 (100.0)
合計 13 (9.8) 120 (90.2) 133 (100.0)
他職種連携経験の有無
n = 135
経験あり 9 (11.7) 68 (88.3) 77 (100.0) 0.350
経験なし 4 (6.9) 54 (93.1) 58 (100.0)
合計 13 (9.6) 122 (90.4) 135 (100.0)

看護師経験年数:t検定

外来看護師の活動:χ二乗検定, Fisherの直接法

5. 実践の程度の自己評価に影響する要因(表5

実践の程度2群を説明変数としたロジスティック回帰分析で「できている」群と関連が見られた要因は,身体的側面について,研修の受講経験あり(オッズ比3.755,p = 0.009),専門・認定看護師の支援を受けた経験あり,(オッズ比5.233,p = 0.003)であった.精神的側面は,研修の受講経験あり(オッズ比2.629,p = 0.044),他職種連携の経験あり(オッズ比1.799,p = 0.021)であった.社会的側面は,研修の受講経験あり(オッズ比4.450,p = 0.018),アセスメントツール使用経験あり(オッズ比3.192,p = 0.074),外来専従の勤務形態(オッズ比8.067,p = 0.012)であった.スピリチュアルな測面について実践の程度と関連が見られたのは,アセスメントツール使用経験あり(オッズ比3.571,p = 0.046)であった.

表5  外来看護師の緩和ケアの4側面ごとの実践の程度の自己評価に影響する要因
実践の程度の自己評価:できている/できていない 偏回帰係数 オッズ比 95%信頼区間 p
下限 上限
身体的側面 研修の受講経験あり/なし 1.323 3.755 1.383 10.196 0.009
専門認定看護師の支援を受けた経験あり/なし 1.655 5.233 1.769 15.479 0.003
精神的側面 研修の受講経験あり/なし 0.966 2.629 1.027 6.729 0.044
他職種連携を行った経験経験あり/なし 0.587 1.799 1.092 2.964 0.021
社会的側面 研修の受講経験あり/なし 1.493 4.450 1.295 15.294 0.018
アセスメントツール使用経験あり/なし 1.161 3.192 0.894 11.397 0.074
勤務形態 外来専従看護師/病棟からの応援 2.088 8.067 1.583 41.094 0.012
スピリチュアルな側面 アセスメントツール使用経験あり/なし 1.273 3.571 1.024 12.452 0.046

二項ロジスティック回帰分析

投入した項目 身体的側面:看護師経験年数,研修受講経験の有無,専門・認定看護師の支援を受けた経験の有無,他職種連携経験の有無

精神的側面:看護師経験年数,研修受講経験の有無,専門・認定看護師の支援を受けた経験の有無,他職種連携経験の有無

社会的側面:看護師経験年数,研修受講経験の有無,専門・認定看護師の支援を受けた経験の有無,アセスメントツールの使用経験の有無,勤務形態

スピリチュアルな側面:看護師経験年数,アセスメントツールの使用経験の有無

Ⅴ. 考察

1. 外来看護師におけるがん緩和ケアの認識の特徴

4側面ごとの実践の程度において,外来看護師の平均経験年数による差は見られなかった.この理由として,外来が夜勤を希望しない者,産休明け,パートタイム看護師で構成されており,その特殊性から業務量,質,モチベーションの個人差が大きいことあげられる(大津・草間,2007).また,本研究結果より緩和ケアの4側面共に外来看護師は緩和ケアの実践が十分に出来ておらず,かつ自覚がない,わからないといった回答の割合が高かったことから,緩和ケアの概念が定着しておらず,実践知が蓄積されにくい状況があると考える.

緩和ケアを実践できていると回答した者はスピリチュアルなケアに至っては約1割であった.実践できている者の割合が低かった理由として,スピリチュアルな側面では,外来看護師は外来での看護実践において患者の生き方の支援までは出来ておらず(佐藤ら,2003),患者の内面に深く関われない状態(酒井ら,2001)がある.また,現時点ではスピリチュアルな側面そのものについての統一された定義はないことから(内藤ら,2021),外来看護師の看護場面においても何をすればスピリチュアルケアなのかという合意が得られにくい現状があると考える.

さらに,外来看護師の緩和ケア実践を阻む別の背景として,他職種からみても人的資源の不足,処置の多さがあり,診察に入らない事で外来には看護師がいないと思われている現実がある(村上ら,2013).しかしその中でも,外来看護師は,外来受診中に看護を必要としている患者を見つけ出し,関わる時間を捻出し対処する役割や,外来受診の間に看護を実践する役割がある(廣川ら,2008)と報告されている.これらのことより,がん治療の外来化が急速に進む状況下において,外来看護師は日常の支援において外来の専門性を発揮し,緩和ケアの実施体験を積み重ね,外来での緩和ケアの実践知を構築していく必要があると考える.

実践ができている割合が低い一方で,緩和ケアを外来看護師の役割と考える者が4側面ではスピリチュアルケアを除き約9割であり,緩和ケアの実践はあまりできていないが外来看護師の役割だとする者が,どの側面も3~5割と一番多い割合を示した.第2期がん対策推進基本計画(平成24年)では,5年以内にがん診療に関わる全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを理解し,知識と技術を習得する目標を掲げている(厚生労働省,2012).がん診療連携拠点病院における緩和ケアは浸透したとされており(中川ら,2016),これは緩和ケアの法的位置づけが臨床現場にも浸透した結果と考える.

2. 外来看護師の緩和ケアの実践の認識と関連する要因

研修受講やアセスメントツールの使用は,受講や使用経験が共に約2割と少ないが,緩和ケア実践に影響していた.研修は緩和ケアに対する直接的な知識を得るための重要な機会であり,アセスメントツールはがん患者の状態を把握し,的確に他職種へつなぎ連携するためのリソースである(公益社団法人 日本看護協会,2016).組織的に研修参加やアセスメントツールの活用と評価ができるような体制づくりを行う必要があると考える.

外来専従の勤務形態について,大津らの外来看護師を対象とした調査では,外来専従体制の施設が65%であり,本研究の63.6%とほぼ同じであった.外来専従看護師と病棟からの応援に実践の差があった要因として,外来専従看護師は外来の特殊性に対応する能力を持ち(大津ら,2009),がん患者の通院方法や付き添い者など,社会的側面を理解していることが考えられる.

外来看護師にとって,専門・認定看護師との関わりや他職種連携への参加は,看護経験の質を向上させ(大津ら,2009),熟練した臨床実践,コラボレーション,看護実践の開発やコンサルテーションなど(石久保ら,2004),緩和ケアの実践知を享受出来る機会であると考えられる.また,外来看護師には現場での気づきを専門・認定看護師,主治医,ソーシャルワーカー,リハビリテーションへつなぐことが期待されている(公益社団法人 日本看護協会,2016).また,職種間をつなぐ体験を重ねることが外来看護師自身の実践へフィードバックになると考える.

3. 今後のがん診療連携拠点病院の外来における緩和ケアの在り方

平成30年3月,厚生労働省は,「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を改訂し,ACPの概念を盛り込んだ.外来看護師は,社会的側面,スピリチュアルな側面も含めた基本的な緩和ケアの実践知の積み重ねが必要であり,その結果が,がん患者のQOLの向上へ結びつくと考える.

4. 研究の限界と今後の課題

質問項目について,緩和ケアの知識を問う尺度は存在するものの,本研究の目的とする看護師自身のケアに対する認識を問う尺度はなく,今回の調査では外来看護師の緩和ケアに対する主観を問う形式となった.また,緩和ケアを取りまく社会的背景は目まぐるしく変化しており,今後は緩和ケアの実践の程度に関連する要因について精査していく必要がある.今回の調査で得られた実践と関連する要因を参考に,さらに外来看護師を取り巻く環境を精査し必要な要因を加えた調査を実施する予定である.

Ⅵ. 結論

がん診療連携拠点病院で働く外来看護師のがん患者を対象とした緩和ケアの実践の認識と,緩和ケアにおける経験について調査を行い,以下の結論を得た.

1.緩和ケアの4側面ごとの実践の程度の自己評価を「できている」と回答した者は,スピリチュアルな側面は1割,他の3側面は約2割であった.役割意識は,スピリチュアルな側面で約7割,他の3側面で8割~9割であった.

2.役割意識と実践の程度の関連で最も多かったのは,4側面共に役割意識を「そう思う」かつ実践の程度を「あまりできていない」と回答した者で,身体的側面78名(55.7%),精神的側面64名(46.7%),社会的側面63名(44.7%),スピリチュアルな側面は54名(38.6%)であった.外来看護師の緩和ケア実践の促進には,基本的な緩和ケアの実践知の積み上げが必要である.

3.緩和ケアの4側面ごとの実践の程度の自己評価「できている」群に関連が見られた要因は,研修の受講経験,専門・認定看護師の支援を受けた経験,外来専従の勤務形態,アセスメントツールの使用経験,他職種連携の経験であった.外来看護師は積極的に経験を積み重ね,把握したがん患者のニーズを他職種へとつなぐ体制整備が不可欠であると示唆された.

付記:本研究は金沢大学大学院医薬保健学総合研究科に提出した修士論文に加筆・修正を加えたものである.本研究の内容の一部は第39回日本看護科学学会学術集会において発表した.

謝辞:本研究にご協力を頂きましたA県5病院の看護部長様,ならびに外来看護師の皆さまに心より御礼申し上げます.

著者資格:HNは研究の着想及びデザイン,データ収集,統計解析,草稿の作成;ROは,統計解析,原稿の作成,研究プロセス全体への助言;SOは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

文献
 
© 2021 Japan Academy of Nursing Science
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