Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Development of a Career Plateau Measurement Scale for Mid-career Nurses and Examining its Reliability and Validity
Chizuko OgaTomomi Azuma
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2022 Volume 42 Pages 595-605

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Abstract

目的:中堅看護師のキャリア・プラトーの測定尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討する.

方法:先行研究に基づき,中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度原案を作成した.近畿圏内500床以上の9病院に勤務する臨床経験3年以上25年までの役職を持たない看護師1,409名を対象として,質問紙調査を実施し,信頼性と妥当性を検証した.

結果:有効回答は497名(35.3%)であった.主因子法,プロマックス回転による探索的因子分析の結果,26項目4因子が抽出された.さらに,確証的因子分析により探索的因子分析で得られた仮説モデルの適合度が確認された.信頼係数は,クロンバックα係数.94,再テスト法の級内相関係数は.82,基準関連妥当性の特性的自己効力感尺度および病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度との相関係数は,それぞれ–.47と–.63であった.

結論:中堅看護師のキャリア・プラトーの測定尺度は信頼性と妥当性が検証された.

Translated Abstract

Objective: This study develops a scale for measuring career plateau in mid-career nurses and examines its reliability and validity.

Method: A draft of a career plateau measurement scale for mid-career nurses was developed based on previous research. A questionnaire survey was administered to 1,409 non-positioned nurses with between 3 and 25 years of clinical experience working at 9 hospitals with 500 or more beds in the Kinki region, and the reliability and validity of the survey were verified.

Results: Valid responses were received from 497 respondents (35.3%). Exploratory factor analysis using the main factor method and promax rotation yielded 26 items and 4 factors. Furthermore, confirmatory factor analysis confirmed the robustness of the hypothesized model obtained in the exploratory factor analysis. The Cronbach’s alpha coefficient for scale reliability was .94; the intraclass correlation coefficient for the test–retest method was .82; and the correlation coefficients with the trait self-efficacy scale of criterion-related validity and job satisfaction measurement scale for nurses working in a hospital were –.47 and –.63, respectively.

Conclusion: A scale measuring career plateau in mid-career nurses was verified for reliability and validity.

Ⅰ. 緒言

医療の高度化・複雑化に伴い,看護職が専門職としての専門性の向上が強く求められている.臨床経験3年以上の中堅看護師と呼ばれる看護師は,組織の要であり,看護の質に影響を与える存在(新井ら,2016)であるが,能力,経験,背景,学習ニーズ等が,個性化,多様化し,組織での役割や責務が不明瞭になりやすく,学習経験が知識や技術の体系として集約されにくいといった指摘もある(竹内,2013).また,「自身の目標や役割が見出せず,日々の業務に満足感が得られない現状から,看護にやりがいを持てない」(宮本・藤本,2012),「仕事に慣れ,ひと通りの実践活動ができるようになると,現時点での自分の位置や役割に充実感や満足が得られず,看護を続けることに葛藤を感じるようになってくる」(伊澤,2012)ということも示されている.

アメリカの心理学者であるジュディス・M・バードウィック(1986/1988)は,これを「内的プラトー現象」と定義し,仕事が3年以上変わらないと,学習感覚が薄れ,この修得感が仕事の行き詰まりによる倦怠感へと変わっていき,プラトー状態に陥ること,このような状況は,あらゆる組織,あらゆる職業にみられる,と述べている.中堅看護師においても,プラトー現象が起こっていることが明らかになっている(木村ら,2003関,2015原ら,2016大賀・吾妻,2019).

また,その要因は,業務の過密化と単調化による刺激の減少,他者からのフィードバックや評価を受ける機会が減少していること(関,2015)であり,プラトー状態から脱出するためには,新たな目標やテーマを発見し,それに挑戦して,仕事上の自信や充実感を得ることが重要であることが示されている(木村ら,2003関,2015原ら,2016).一方で,長期間同じ業務に従事していても,また,職務の変更が頻繁になくても新たな学習上の課題を見つけ,職務遂行方法を工夫することで,プラトー現象に陥らない人もいることが明らかになっている(山本,2016).

個人が自らの職業上の成長を意識することを「キャリア発達」,キャリア発達を支援するための組織の仕組みや方法を「キャリア開発」と定義されている(勝原,2021)が,プラトー現象(以後,キャリア・プラトーとする)は,中堅看護師の多くが直面するキャリア発達における課題であり,このキャリア・プラトーの時期が長期化することは,意欲の減退や離職を招くこととなり,それが看護の質の低下をもたらすことにつながると考えられる.一方で,キャリア・プラトーは,キャリア発達に必ずしも,悪影響を及ぼすだけではなく,乗り越えることにより,キャリア発達を促し看護の質の向上のための重要な機会となる,といった指摘もある(大賀・吾妻,2021).これらのことから,中堅看護師が速やかにキャリア・プラトーから脱出するため,中堅看護師自身および組織が中堅看護師の状態を把握することが重要であると考える.

以上のことから,中堅看護師のキャリア・プラトーを知ることは,中堅看護師自身には,やりがいの発見や新たなキャリアへの挑戦などの機会となり,組織にとっては離職防止,さらに,中堅看護師が長く働き続けるということで,看護の質の向上において有用であると考える.しかし,中堅看護師のキャリア・プラトーを測定することを目的とした尺度は見当たらない.

本研究は,中堅看護師自身や,必要に応じて組織が中堅看護師の状態を把握するために,中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度を開発し,信頼性と妥当性を検証することを目的とした.

Ⅱ. 用語の定義

1. 中堅看護師

後輩指導が可能となる臨床経験3年以上25年までの役職を持たない看護師とする.先行研究によると,中堅看護師ととらえる最も早い時期が3年,終わりは25年まで示されるなどかなりばらつきがあり,役職を持たないことを条件としているものが多い(吉田,2015).

2. キャリア・プラトー

山本(2016)は,働く人のキャリア・プラトーには「昇進の停止」と「職務挑戦性の停滞」の2側面があると述べており,本研究では,キャリア・プラトーを昇進の停止と職務挑戦性の停滞の両方の意味を含んだ概念と捉えることとした.また,大賀・吾妻(2021)は,中堅看護師のキャリア・プラトーを「中堅看護師において,単調な日常,負担感,教育を受ける機会の減少,職位の停滞を契機に,自己肯定感の低下,行き詰まり,心身の不調,昇進に対する不安をきたしている状態で,再燃は不可測に起こる」と定義している.本研究ではこの定義を援用する.

Ⅲ. 方法

1. 中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度原案作成のプロセス

1) アイテムプールの作成

本尺度原案を作成するにあたり,大賀・吾妻(2021)の中堅看護師のキャリア・プラトーの概念分析の5つの属性【自己肯定感の低下】【行き詰まり】【心身の不調】【昇進に対する不安】【再燃性】をもとに,使用された文献の素データの表現を参考に,項目内容が測定したい概念を反映しているか検討しながら,5つの属性(以下,構成概念)の内容を網羅し,漏れがないことに留意して,「仕事がつまらない」「仕事がもの足りない」「仕事にむなしさを感じる」など,さまざまな表現を用いて,104項目の測定尺度の原案を作成した.

2) 内容妥当性および表面妥当性の検討と尺度原案の修正

3年以上師長の職位にある部署管理者,看護副部長,看護部長は中堅看護師の状況を間近で見守り,中堅看護師の育成・人材管理をしているため,キャリア・プラトーにある中堅看護師についても,日々の看護管理の中で理解し,育成に精通していると考え,急性期病院の看護部長1名,副看護部長(教育担当)2名,3年以上看護師長の経験がある者2名,計5名を対象に,内容妥当性を検討する質問紙調査を実施した.回答形式は,「1.全く適切でない」から「4.簡潔で適切である」の4件法とし,量的に内容妥当性を検討した.項目ごとに3以上をつけた看護管理者の割合を内容妥当性指数(Item-Content Validity Index: I-CVI)とし,これが.80以上の項目を適切である(Polit & Beck, 2004/2014)とした.その結果,I-CVIが.80以上得られた項目は91項目で,Content Validity Index (CVI) = 91/104 = .88で,内容妥当性が確保された.質問紙全体の項目数は70項目までが適当である(小塩・西口,2007)ことから,質問項目を増やさないよう,内容が重複した項目を統合・整理した.そのため,「心身の不調」に関する項目は,「何もしたくない」「落ち込んでいる」「倦怠感がある」「食欲がない」など23項目について,I-CVI = .80未満であった10項目を削除するとともに,心身の症状を個々にあげるのではなく,身体的な不調と精神的な不調の典型的な症状として2項目に統合し,他のI-CVI = .80未満の2項目についても削除した.ただし,I-CVI = .60であった「過去に昇進に対する不安を持ったことがある」の1項目については,キャリア・プラトーの構成概念として重要と考えられる,「昇進に対する不安」の「再燃性」に関する項目であったため削除せず,「過去に感じていた昇進に対する不安を再び感じている」という表現に修正し,40項目とした.

次に,中堅看護師(経験年数6年1名,10年2名,11年1名,12年1名)を対象に,修正した尺度原案40項目について,表面妥当性を検討する質問紙調査を行った.その結果,自由記載の意見をもとに,表現の分かりにくい項目を修正し,「仕事に変化を求めていない」は,業務内容の変化か,職場が変わること(異動)かが分かりにくく答えにくいという指摘を受け,「挑戦的な仕事に興味がない」に集約されると考え削除した.最終的に「自己肯定感の低下」は38項目から13項目へ,「行き詰まり」は22項目から9項目へ,「心身の不調」は23項目から2項目へ,「昇進に対する不安」は8項目から4項目へ,「再燃性」は13項目から11項目,合計39項目とした.

2. 調査方法

2021年12月15日~2022年2月28日に近畿圏内500床以上の複数診療科を有する研究協力が得られた9病院に勤務する臨床経験3年以上25年までの役職を持たない看護師1,409名を対象として,質問紙調査を実施した.再テストは,1回目の調査終了2~3週間後に,9病院のうち研究協力が得られた2病院(605名)に依頼した.1回目と2回目のデータは,回答者の誕生日4ケタと携帯電話下4ケタをあわせた8ケタの番号により照合した.

3. 調査内容

1) 対象者の背景

対象者の属性として,年齢,性別,看護職資格,最終学歴,配属部署,院内および院外での異動経験の有無と回数,臨床経験年数,現在の部署での経験年数,委員や係などの役割,婚姻状況,子供の有無,家庭や社会での役割の有無,職業継続の意思について調査した.

2) 中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度原案

内容妥当性と表面妥当性を検討し,中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度39項目の原案を作成した.回答法は,「1.そう思う」~「4.そう思わない」の4件法とし,点数が低いほど,キャリア・プラトーの状態にあるとした.

3) 基準関連妥当性

基準関連妥当性を検証するため,「特性的自己効力感尺度」(成田ら,1995)と「病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度」(撫養ら,2014)を用いた.

特性的自己効力感尺度は,シェラーらが作成した自己効力感尺度の邦訳版で,「行動を起こす意志」「行動を完了しようと努力する意志」「逆境における忍耐」など,23項目で構成され,特性的自己効力感は,特定の状況だけでなく,未経験の新しい状況においても適応的に処理できるという期待に影響を与えるため,キャリア・プラトー測定尺度と負の相関関係があると推測した.また,病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度は,「仕事に対する肯定的感情」「上司からの適切な支援」「働きやすい労働環境」「職場での自らの存在意義」の4因子28項目で構成され,「仕事に対する肯定的感情」「上司からの適切な支援」「職場での自らの存在意義」の構成因子から,キャリア・プラトー測定尺度と負の相関関係があると推測した.これら2つの尺度は,信頼性,妥当性ともに確保されている.

4. 分析方法

回収された調査票のうち,同意確認欄にチェックがないもの,研究対象外の回答,記入率が90%以下のものを除き,有効回答とした.データ解析にはIBM SPSS Statistics 28.0およびAmos Version 28.0を用いた.

1) 項目分析と標本妥当性

項目分析は,各変数の記述統計量を算出し,欠損値の頻度(基準1.0%以上)の確認,天井効果と床効果,Item-Total相関分析(以下,I-T相関:基準.40以下),Item-Item相関分析(以下,I-I相関:基準.70以上),Good-Poor analysis(以下,G-P分析),Kaiser-Meyer-Olkin(以下,KMO)の標本妥当性を検証した.

2) 妥当性の検証

(1) 構成概念妥当性

項目分析の結果,整理した項目を用いて,主因子法,プロマックス回転による探索的因子分析を行い,因子の命名を行った.さらに,探索的因子分析で得られた仮説モデルの適合度を確証的因子分析により確認した.

(2) 基準関連妥当性

基準関連妥当性の検証は,中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度と特性的自己効力感尺度および病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度との相関分析を,ピアソンの累積相関係数を用いて行った.

3) 信頼性の検証

(1) 内的整合性

内的整合性の検証は,探索的因子分析で得られた尺度全体および下位尺度ごとにクロンバックα信頼係数を算出した.

(2) 再テスト法

時間的安定性を確認するため,1回目の調査から2~3週間後に2回目の調査を実施し,探索的因子分析で得られた尺度の総合得点の1回目の得点との級内相関係数を算出した.

5. 倫理的配慮

本研究は,京都府立医科大学医学倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号:ERB-E-492).内容妥当性,表面妥当性の検討に参加した対象者には口頭および文書にて研究の趣旨,目的,方法,匿名性の保証,参加協力の自由等を説明し同意を得て行った.中堅看護師への調査では,各病院の看護部長に研究の趣旨,目的,方法,匿名性の保証,参加協力の自由等を説明し同意を得た.対象者には文書にて,研究の趣旨,目的,方法,調査への協力は自由であり,参加の拒否や不同意により不利益を受けることがないこと,質問紙は無記名とし,再テスト対象者においても匿名コード化し,結果においても統計的に処理し個人が特定されることはないこと,研究以外の目的に使用しないこと,質問紙およびデータの管理は厳重に行うことを説明し,質問紙の同意「確認欄」のチェックをもって同意とみなした.質問紙は個別に封をして投函または設置した回収袋に入れるように依頼した.尺度の使用にあたっては開発者に使用許可を得た.

Ⅳ. 結果

1. 回収率と対象の特性(表1

1回目調査の回収数は,512名(回収率36.3%),有効回答は,497名(有効回答率35.3%)であった.詳細については表1に示す.2回目調査の回収数は300名(49.6%)で,有効回答は262名(有効回答率43.3%)であった.

表1  対象の属性 n = 497
項目 n %
年齢 20歳代 201 40.4
30歳代 190 38.2
40歳代 97 19.5
50歳代 9 1.8
性別 男性 47 9.5
女性 404 81.3
回答しない 1 0.2
無回答 45 9.1
資格(複数回答) 保健師 109 21.9
助産師 25 5.0
看護師 496 99.8
認定看護師 10 2.0
専門看護師 1 0.2
特定行為研修終了看護師 6 1.2
その他 4 0.8
最終学歴 専門学校 241 48.5
大学 183 36.8
大学院 6 1.2
その他(短大等) 41 8.2
無回答 26 5.2
所属部署 内科系病棟 89 17.9
外科系病棟 85 17.1
その他(混合病棟含む) 138 27.8
特殊領域(手術室,救急室,検査室等) 87 17.5
外来 29 5.8
その他 34 6.8
無回答 35 7.0
経験年数 3~5年 148 29.8
6~10年 170 34.2
11~15年 84 16.9
16~25年 91 18.3
無回答 4 0.8
異動経験回数 異動なし 207 41.6
1~3回 241 48.5
4回以上 42 8.5
無回答 7 1.4
現部署の経験年数 1年未満 64 12.9
1~3年 143 28.8
4~5年 126 25.4
6~10年 111 22.3
11~15年 26 5.2
16年以上 11 2.2
無回答 16 3.2
現職での就業継続の意思 就業継続希望 339 68.2
異動または退職希望 156 31.4
無回答 2 0.4
1人が担っている部署での役割の数 なし 36 7.2
1つ 213 42.9
2つ 136 27.4
3~5つ 111 22.3
無回答 1 0.2
配偶者の有無 配偶者あり 184 37.0
配偶者なし 312 62.8
無回答 1 0.2
子供の有無 子供あり 132 26.6
子供なし 364 73.2
無回答 1 0.2
家庭・地域での役割 役割あり 228 45.9
役割なし 267 53.7
無回答 2 0.4

2. 項目分析と標本妥当性(表2

欠損値は0~0.4%で,すべて1.0%未満であった.天井効果を示す項目は認められなかった.項目番号27については,M-DS = 1.03であったが,ヒストグラムでは床効果を示したため削除した.また,I-T相関で.40以下の項目番号7,22の2項目を削除した.次いで,I-I相関では.70以上の組み合わせは,項目番号3と5,14と15,23と37,24と38,37と38の5組であった.これらの組み合わせのうち,I-T相関の低い方の項目は,尺度で測定している内容と関係が乏しく,調査回答者の特性の違いを正確にとらえられていない(畑中,2020)と考え,I-T相関の低い方の項目番号3,14,23,24,38の5項目を削除した.G-P分析では合計得点から平均値を基準として,下位群(n = 250,103点以下)と上位群(n = 247,104点以上)の2群間での平均値の差を,t検定した.その結果,すべての項目で1%水準での有意差があり,削除する項目はなかった.さらに,KMO の標本妥当性は最終26項目で.94で,Bartlettの球面性検定は有意な差(χ2 = 8841.58, df = 465, p < .01)であった.1回目調査において,最終26項目での総合得点の平均点は,69.5 ± 13.0(M ± SD),最大値104点,最小値29点であった.

表2  尺度原案における項目分析 n = 497
質問項目 欠損値 平均値 標準偏差 床効果
平均-1SD
天井効果
平均+1SD
I-T分析
r < 0.4
I-I相関項目番号
(r ≧ 0.7)
G-P分析
平均値の差
n %
1 仕事に満足感が得られない 1 0.2% 2.62 0.78 1.84 3.41 .64** 0.79**
2 仕事が退屈で刺激がない 0 0.0% 3.14 0.73 2.41 3.87 .41** 0.49**
削除 3 仕事に楽しさを感じられない 0 0.0% 2.57 0.86 1.72 3.43 .65** 5(.72**) 0.90**
4 看護師としての成長が実感できない 0 0.0% 2.67 0.81 1.86 3.49 .62** 0.83**
5 仕事に対する意欲が低下している 1 0.2% 2.37 0.85 1.52 3.22 .68** 3(.72**) 1.02**
6 今までの経験が仕事の役に立っていない 0 0.0% 3.15 0.67 2.48 3.82 .42** 0.49**
削除 7 今までに経験したことがない仕事はやりたくない 0 0.0% 3.01 0.77 2.24 3.78 .31** 0.42**
8 仕事に対して自信がない 1 0.2% 2.50 0.75 1.75 3.25 .55** 0.69**
9 周囲の人から認められているという実感がない 0 0.0% 2.64 0.74 1.91 3.38 .63** 0.73**
10 この先,看護師として成長できると思えない 0 0.0% 2.80 0.74 2.06 3.55 .68** 0.82**
11 役割において周囲から求められていることに答えられていない 1 0.2% 2.55 0.70 1.85 3.24 .59** 0.66**
12 理想の自分と実際の自分との間にギャップがある 0 0.0% 2.30 0.79 1.51 3.09 .57** 0.76**
13 自己評価と他者評価にギャップがある 1 0.2% 2.63 0.71 1.92 3.33 .52** 0.62**
削除 14 仕事に対する目標がぼんやりしている 0 0.0% 2.16 0.81 1.35 2.97 .55** 15(.75**) 0.81**
15 自身の目標を決める上での指針がない 0 0.0% 2.31 0.80 1.51 3.11 .58** 14(.75**) 0.76**
16 今の仕事に興味が持てない 0 0.0% 2.85 0.79 2.05 3.64 .61** 0.76**
17 挑戦的な仕事に興味がない 0 0.0% 2.69 0.81 1.88 3.50 .45** 0.67**
18 仕事に対してやらされていると感じている 0 0.0% 2.72 0.79 1.93 3.51 .60** 0.75**
19 仕事に対してこのままではいけないと感じている 1 0.2% 2.24 0.83 1.41 3.07 .48** 0.62**
20 仕事に対して将来が見えず焦っている 0 0.0% 2.65 0.80 1.85 3.44 .58** 0.74**
21 看護師として行き詰まりを感じている 0 0.0% 2.65 0.81 1.84 3.46 .68** 0.85**
削除 22 この部署しか知らないという焦りがある 0 0.0% 2.66 1.02 1.64 3.68 .24** 0.44**
削除 23 仕事による心の不調がある 0 0.0% 2.68 0.90 1.78 3.57 .64** 37(.73**) 0.89**
削除 24 仕事による身体の不調がある 2 0.4% 2.59 0.92 1.67 3.51 .52** 38(.73**) 0.77**
25 仕事上の役割が変わることに戸惑いがある 1 0.2% 2.52 0.79 1.73 3.31 .53** 0.72**
26 昇進しても役割を果たせる自信がない 0 0.0% 2.06 0.84 1.22 2.89 .52** 0.78**
削除 27 昇進したいと思わない 0 0.0% 1.89 0.86 1.03 2.75 .40** 0.65**
28 昇進の見込みがないと感じる 0 0.0% 2.20 0.80 1.40 3.01 .47** 0.71**
29 現在,過去に感じていた仕事に対する物足りなさを再び感じている 0 0.0% 2.96 0.79 2.17 3.75 .55** 0.63**
30 現在,過去に感じていた仕事に対する不満を再び感じている 0 0.0% 2.67 0.87 1.80 3.54 .60** 0.80**
31 現在,過去に感じていた仕事に対する自信のなさを再び感じている 1 0.2% 2.72 0.82 1.90 3.54 .69** 0.88**
32 現在,過去に感じていた仕事に対する自己評価と他者評価のギャップを再び感じている 0 0.0% 2.92 0.72 2.20 3.64 .65** 0.64**
33 現在,過去に感じていた仕事に対する行き詰まりを再び感じている 0 0.0% 2.78 0.82 1.95 3.60 .69** 0.83**
34 現在,過去に感じていたように仕事に対する目標が再びぼんやりしている 0 0.0% 2.58 0.84 1.75 3.42 .62** 0.83**
35 現在,過去に感じていたように再び看護に興味が持てないと感じている 0 0.0% 2.98 0.78 2.20 3.76 .68** 0.76**
36 現在,過去に感じていた仕事に対して先の見えない焦りを再び感じている 0 0.0% 2.81 0.83 1.99 3.64 .67** 0.87**
37 現在,仕事による心の不調を再び体験している 0 0.0% 2.90 0.88 2.02 3.78 .65** 23(.73**)・38(.83**) 0.84**
削除 38 現在,仕事による身体の不調を再び体験している 0 0.0% 2.85 0.90 1.95 3.75 .58** 24(.73**)・37(.83**) 0.80**
39 現在,過去に感じていた昇進に対する不安を再び感じている 1 0.2% 3.06 0.81 2.25 3.86 .50** 0.56**

** p < .01

3. 妥当性の検証

1) 構成概念妥当性

(1) 探索的因子分析(表3

尺度原案39項目から床効果を示す1項目,I-T相関で2項目,I-I相関で5項目を削除し,31項目に対し因子分析を行った.初期固有値の変化とスクリープロットから因子数4とし,固有値1以上,因子負荷量.40以上,共通性.30以上を基準として項目選定を行い,該当しない項目をその都度削除しながら,主因子法,プロマックス回転での因子分析を行った.その結果,5項目を削除して,26項目4因子構造を得た.削除した項目は表3の下欄に示した.

表3  中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度の探索的因子分析 n = 497
質問番号 因子名とクロンバックα係数
質問項目
因子負荷量
第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 共通性
第1因子:キャリア・プラトーの再燃α = .92
33 現在,過去に感じていた仕事に対する行き詰まりを再び感じている .80 –.03 .11 –.02 .70
34 現在,過去に感じていたように仕事に対する目標が再びぼんやりしている .77 –.07 .08 –.04 .59
32 現在,過去に感じていた仕事に対する自己評価と他者評価のギャップを再び感じている .76 –.21 .21 .05 .68
39 現在,過去に感じていた昇進に対する不安を再び感じている .74 –.11 –.03 –.01 .45
37 現在,仕事による心の不調を再び体験している .73 .12 –.15 .03 .54
36 現在,過去に感じていた仕事に対して先が見えない焦りを再び感じている .70 –.03 .14 .03 .62
35 現在,過去に感じていたように再び看護に興味が持てないと感じている .69 .29 –.24 .10 .66
31 現在,過去に感じていた仕事に対する自信のなさを再び感じている .68 –.13 .01 .32 .67
29 現在,過去に感じていた仕事に対する物足りなさを再び感じている .67 .23 .10 –.32 .57
30 現在,過去に感じていた仕事に対する不満を再び感じている .64 .28 –.14 –.05 .53
第2因子:モチベーションの低下α = .85
16 今の仕事に興味が持てない –.04 .74 –.01 .12 .60
5 仕事に対する意欲が低下している –.02 .71 .12 .11 .66
1 仕事に満足感が得られない .03 .68 .18 –.05 .60
2 仕事が退屈で刺激がない –.02 .66 .12 –.22 .41
18 仕事に対してやらされていると感じている .04 .53 –.06 .29 .48
4 看護師としての成長が実感できない –.02 .41 .39 .04 .46
第3因子:行き詰まり感α = .81
19 仕事に対してこのままではいけないと感じている –.09 .14 .71 –.08 .48
12 理想の自分と実際の自分との間にギャップがある .02 –.02 .63 .14 .50
21 看護師として行き詰まりを感じている .10 .23 .53 .04 .57
20 仕事に対して将来が見えず焦っている .07 .20 .52 –.01 .46
13 自己評価と他者評価にギャップがある .12 –.03 .51 .09 .39
第4因子:アイデンティティの混乱α = .79
17 挑戦的な仕事に興味がない –.08 .32 –.25 .65 .48
25 仕事上の役割が変わることに戸惑いがある .09 –.06 .03 .65 .47
26 昇進しても役割を果たせる自信がない –.02 –.08 .17 .64 .48
8 仕事に対して自信がない –.04 –.06 .26 .60 .51
11 役割において周囲から求められていることに答えられていない –.03 .02 .40 .43 .50
因子間相関 1.00
尺度全体α = .94 .54 1.00
.58 .45 1.00
.49 .42 .51 1.00

抽出法:主因子法,プロマックス回転後

削除した質問項目

 6 今までの経験が仕事の役に立っていない

 9 周囲の人から認められているという実感がない

10 この先,看護師として成長できると思えない

15 自身の目標を決める上での指針がない

28 昇進の見込みがないと感じる

抽出された4因子について,各因子を構成する項目の内容を解釈して命名した.第1因子10項目は,過去にキャリア・プラトーを経験しており,一旦は抜け出たが,現在,キャリア・プラトーの再燃を表す項目で構成されていることから,因子名を【キャリア・プラトーの再燃】とした.第2因子6項目は,日々の業務に刺激がなくなり,仕事に対する興味の欠如と現状に対する不満を抱いていることから,【モチベーションの低下】と命名した.第3因子5項目は,仕事に対して将来が見えず,このままではいけないという焦燥感と,周りの評価とのギャップに苦しんでいることから,【行き詰まり感】と命名した.第4因子5項目は,仕事に対して自信をなくし,自己を見失った状況にあり,新たな任務や変化に臆病になり,戸惑っていることから,【アイデンティティの混乱】と命名した.

(2) 確証的因子分析(図1

探索的因子分析で得られた結果に基づく仮説モデルの適合度を確証的因子分析により確認し,その結果を図1に示した.Shapiro-Wilkの正規性検定では,正規性が確認できなかった(p < .01)ため,重みづけのない最小二乗法を用いて分析を行い,適合度は,GFI = .98,AGFI = .98,NFI = .97,RMR = .04で,いずれもp < .01であった.

図1 

中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度の確証的因子分析

2) 基準関連妥当性(表4

中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度の各下位尺度と特性的自己効力感尺度との相関係数は–.33~–.60(p < .01),病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度との相関係数は,–.46~–.68(p < .01)であった.

表4  「中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度」と「特性的自己効力感尺度」「病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度」との相関 n = 497
特性的自己効力感尺度 病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度
中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度 尺度全体 –.47** –.63**
第1因子:キャリア・プラトーの再燃 –.33** –.46**
第2因子:モチベーションの低下 –.35** –.68**
第3因子:行き詰まり感 –.36** –.49**
第4因子:アイデンティティの混乱 –.60** –.48**

ピアソンの累積相関係数 ** p < .01

4. 信頼性の検証

内的整合性は尺度全体のクロンバックα信頼係数は.94,第1因子は.92,第2因子は.85,第3因子は.81,第4因子は.79であった(表3).再テスト法の級内相関係数は.82(p < .01)で,95%信頼区間は.78~.86であった.

Ⅴ. 考察

1. 中堅看護師のキャリア・プラトーの概念

山本(2016)は,働く人のキャリア・プラトーには「昇進の停止」と「職務挑戦性の停滞」の2側面があると述べており,本研究においても,キャリア・プラトーを,昇進の停止と職務挑戦性の停滞の両方の意味を含んだ概念と捉えた.また,大賀・吾妻(2021)は,中堅看護師のキャリア・プラトーについて,「中堅看護師において,単調な日常,負担感,教育を受ける機会の減少,職位の停滞を契機に,自己肯定感の低下,行き詰まり,心身の不調,昇進に対する不安をきたしている状態で,再燃は不可測に起こる」と定義している.本研究での探索的因子分析から,「自己肯定感の低下」「行き詰まり」「再燃」は抽出されたが,「心身の不調」「昇進に対する不安」は抽出されなかった.

キャリア・プラトーは,職務遂行における単調感を反映するため,モチベーションと関係が深く(山本,2016),心理的側面に関わってくるものと考えられる.木村ら(2003)も,職業上の停滞に際して,ノイローゼ状態,孤独感,やる気喪失などの情緒的反応や,体重減少,吐き気などの身体的反応を体験していたと報告している.これらのように,「自己肯定感の低下」「行き詰まり」といった停滞感を自覚し,その停滞の不適応反応として「心身の不調」につながっていくと推察される.これまで,看護職の離職理由の上位に心身の不調があがっている(日本看護協会,2019)が,本研究対象者においては,現職での就業継続を希望する人が7割近くを占めており,「心身の不調」に至る中堅看護師が少なかったため抽出されなかった可能性が考えられる.また,「昇進に対する不安」については,「仕事上の役割が変わることに戸惑いがある」「昇進しても役割を果たせる自信がない」が,第4因子【アイデンティティの混乱】に集約され,「昇進したいと思わない」「昇進の見込みがないと感じる」は削除された.「昇進したいと思わない」は床効果を示していた.髙山・佐々木(2021)が昇進に関するプラトーの促進に年齢が影響したと述べているように,昇進には年功的基準があり,本研究対象者の約8割が20~30歳代,そして,6割以上が経験年数10年までであったため,昇進がモチベーションにならないことが影響した可能性があると考える.また,中本ら(2018)は,「役職を持たない臨床経験10年までの看護師は,やりがいや価値を見いだすといった内的な成長発達を踏まえ,培ってきた自分の看護を発展させていく」と述べているように,経験年数10年までは看護師の仕事自体にプライドを持っている時期であり,役職を持たない中堅看護師には「昇進」が自分とかけ離れたものになっていると考えられる.今後は,対象者の経験年数や背景などとの関連を検討していく必要がある.

2. 妥当性

KMO標本妥当性は優良,Bartlettの球面性検定の結果,因子分析が適用できることを確認(対馬,2010a)し,探索的因子分析により抽出した4因子26項目によって確証的因子分析を行った.モデルのGFIとAGFIは一般的に.90以上,GFI ≧ AGFIを基準とし,また,NFIは1に近いほど良いモデルといわれている(豊田,2006).RMRは下限値が0,上限値は1で,値が小さければ良いモデルである(豊田,2006).よって,本研究における確証的因子分析によるモデル適合度は良好であるとした.

基準関連妥当性は,本尺度全体と特性的自己効力感尺度との相関係数は–.47で,中程度の負の相関があった.下位尺度別にみると,第4因子「アイデンティティの混乱」との相関係数は–.60と他の下位尺度と比べ,やや強い相関関係が認められた.第4因子は,仕事に対して自信をなくし,自己を見失った状態を示す項目であり,このような結果が認められたと考える.一方,本尺度全体と病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度との相関係数は–.63で,中程度の負の相関があった.第2因子「モチベーションの低下」との相関係数は–.68とやや強い負の相関関係を示した.第2因子は,仕事に対する興味の欠如や現状の不満に関する項目であり,職務満足に影響を与える項目であるため,このような結果が認められたと考える.

以上のことから,中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度と特性的自己効力感尺度および病院に勤務する看護師の職務満足測定尺度との相関係数は妥当であると考える.

3. 信頼性

クロンバックα係数は,全体および第1因子,第2因子,第3因子,第4因子ともに高かった(Polit & Beck, 2004/2014).また,再テスト法の評価では,ICCが.70以上であれば信頼性が高い(対馬,2010b)とされ,2~3週間後の級内相関係数は基準値以上の信頼性係数が得られ,本尺度の信頼性は確保された.

4. 尺度の活用可能性

本尺度の活用可能性として,中堅看護師個人と組織の2つの観点から述べる.中堅看護師個人としては,節目となる時期や自身の状況に変化があった時に,本尺度を活用することで,どの領域(因子)でキャリア・プラトーの状態が強いのか,あるいは,経時的に測定しその変化を知ることで,自らの状態を知ることが可能となる.組織としては,中堅看護師個々の状態を把握することが可能となる.また,長期研修などの前後で測定することにより,研修効果の評価に用いることが可能となる.このような活用によって,中堅看護師自身には,早期に自身のキャリア・プラトーを知り,脱出策を講じることで仕事のやりがいの発見や新たなキャリアへの挑戦などの機会となり,組織にとっては,離職防止や研修プログラムの評価に活用することが可能となると考える.

5. 本研究の限界と今後の課題

本研究は,近畿圏内500床以上の複数診療科を有する9病院に勤務する中堅看護師を対象としたため,20~30歳代が約8割,経験年数10年未満が6割以上を占め,「職務挑戦性の停滞」に関連する項目に偏った結果になっていた可能性も考えられる.今後は対象施設を拡大することで,幅広い年代の中堅看護師を対象に,実証研究を行い,有効性を評価していく必要がある.

Ⅵ. 結論

本研究で開発された中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度は,4因子26項目となり,信頼性と妥当性が検証された.

謝辞:本研究にご快諾いただきました対象施設の看護部長様,調査にご協力いただきました看護管理者の皆様,中堅看護師の皆様に心より感謝申し上げます.また,研究過程においてご指導くださいました,京都府立医科大学大学院保健看護学研究科吉岡さおり教授,京都府立医科大学大学院医学研究科手良向聡教授に深く感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:COは研究全般を実施,TAは研究の着想,研究プロセス,原稿作成への助言を行い,両著者は最終原稿を読み,承認した.

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© 2022 Japan Academy of Nursing Science
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