Journal of Japan Academy of Nursing Science
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2023 Volume 43 Pages 280-284

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Ⅰ. 緒言

日本看護科学学会誌は日本看護科学学会の機関紙であり,わが国の看護学の発展に寄与する研究や学術的取り組みを発信する学術誌である.この目的に加えて本誌は2019年度~2020年度理事会による若手研究者活性化の取り組み,およびそれを継承した2021年度~2022年度理事会の方針に従い,論文投稿数および採択数の増加,とくに若手研究者による論文投稿を推進するためにいくつかの取り組みを行ってきた(若手研究者は45歳以下と定義).

まず,2020年10月の投稿規程の改定で迅速査読の導入と著者条件の変更を行った.迅速査読は「(1)筆頭著者が当該の投稿論文が各教育機関において,博士号の学位審査の申請時に義務付けられている査読誌に掲載,もしくは受理された論文に該当するものであること.」「(2)筆頭著者が博士論文として審査された論文に基づく投稿論文であり,平成25年文部科学省令第5号により博士号取得後1年以内に公表することが求められているものであること.」という2つの条件のいずれかを満たした論文を対象とし,原則として迅速査読を認められた日から30日以内に査読結果を通知することを目標とした(修正投稿に関しても同様).また,著者要件に関しては,従来全ての著者は本会会員である必要があったが,「筆頭著者は本会会員(賛助会員を除く)とする.筆頭著者以外は本会会員である必要はないが,非会員を共著者に含む論文は,採択後に掲載料を支払う必要がある.」と変更した.

本稿はこれらの取り組みの成果を確認するとともに,今後本誌への投稿を検討している会員の助けとなるように,編集事務局が現在の中西印刷株式会社に移行した2016年1月1日から2022年12月31日までの投稿・採択状況等を集計し,公表するものである.なお,年次に関しては年度ではなく1月~12月までの年区切りとしている.

Ⅱ. 投稿数

投稿数について表1表5に示す.2016年から2022年にかけて総投稿数は倍増した.迅速査読は2020年10月に開始され,2021年44本,2022年53本と投稿総数の20%程度であった.全体として年齢別の違いはあまりなく,経時的な変化もあまりみられなかった.また,迅速査読は博士論文の審査前の割合が増えている.著者に非会員を含む投稿は2021年は16本,2022年は20本であった.後述するデータを用いると2021年に投稿された論文で採択された論文のうち15%が著者に非会員を含んでいたことがわかる.なお,投稿時に非会員を含んでもその後会員になることがあるため,非会員を含むか否かは採択時に調査することにしている.そのため,投稿時に非会員を含んだ論文数やそのような論文の採択率は不明である.

表1  投稿数(総数)
N %
2016年 115 9.3
2017年 125 10.1
2018年 162 13.1
2019年 146 11.8
2020年 186 15.0
2021年 254 20.5
2022年 250 20.2
表2  投稿数(通常査読,年齢別)
45歳以下 46歳以上 合計
N % N %
2016年 68 59.1 47 40.9 115
2017年 62 49.6 63 50.4 125
2018年 80 49.4 82 50.6 162
2019年 82 56.2 64 43.8 146
2020年 101 56.4 78 43.6 179
2021年 117 55.7 93 44.3 210
2022年 98 49.8 99 50.3 197
表3  投稿数(迅速査読,年齢別)
45歳以下 46歳以上 合計
N % N %
2020年 3 42.9 4 57.1 7
2021年 23 52.3 21 47.7 44
2022年 27 50.9 26 49.1 53
表4  投稿数(迅速査読,審査の区分別)
審査前 審査後 合計
N % N %
2020年 5 71.4 2 28.6 7
2021年 25 56.8 19 43.2 44
2022年 43 81.1 10 18.9 53
表5  投稿数(採択時に非会員を含んだ投稿)
2020年 1
2021年 16
2022年 20

※2022年12月31日までに採択された論文のみ

論文採択状況について表6表11に示す.2021年の全体としての採択率は43%であり,それまでより若干上昇したが年による違いも大きい.通常査読と迅速査読を比較すると,迅速査読のほうが若干採択率が高い傾向にある.年齢による採択率の違いは45歳以下のほうが若干採択率が高い傾向にある.表11はいったん不採択になった論文が再度投稿され,初回査読からやり直した論文であるが,このような論文は2016年の6本から2022年の31本と増加傾向にあり,2022年度の採択率は50%であった(それまでは30%程度).

表6  論文採択状況(全体)
採択 不採択 査読中 取り下げ 合計
N % N % N % N %
2016年 44 38.3 48 41.7 0 0.0 23 20.0 115
2017年 42 33.6 73 58.4 0 0.0 10 8.0 125
2018年 42 25.9 108 66.7 0 0.0 12 7.4 162
2019年 54 37.0 80 54.8 0 0.0 12 8.2 146
2020年 73 39.2 102 54.8 0 0.0 11 5.9 186
2021年 109 42.9 130 51.2 0 0.0 15 5.9 254
2022年 86 34.4 132 52.8 29 11.6 3 1.2 250
表7  論文採択状況(通常査読)
採択 不採択 査読中 取り下げ 合計
N % N % N % N %
2016年 44 38.3 48 41.7 0 0.0 23 20.0 115
2017年 42 33.6 73 58.4 0 0.0 10 8.0 125
2018年 42 25.9 108 66.7 0 0.0 12 7.4 162
2019年 54 37.0 80 54.8 0 0.0 12 8.2 146
2020年 69 38.6 99 55.3 0 0.0 11 6.2 179
2021年 90 42.9 108 51.4 0 0.0 12 5.7 210
2022年 60 30.5 110 55.8 26 13.2 1 0.5 197
表8  論文採択状況(迅速査読)
採択 不採択 査読中 取り下げ 合計
N % N % N % N %
2020年 4 57.1 3 42.9 0 0.0 0 0.0 7
2021年 19 43.2 22 50.0 0 0.0 3 6.8 44
2022年 26 49.1 22 41.5 3 5.7 2 3.8 53
表9  論文採択状況(年齢別,45歳以下)
採択 不採択 査読中 取り下げ 合計
N % N % N % N %
2016年 32 47.1 26 38.2 0 0.0 10 14.7 68
2017年 23 37.1 31 50.0 0 0.0 8 12.9 62
2018年 24 30.0 49 61.3 0 0.0 7 8.8 80
2019年 29 35.4 44 53.7 0 0.0 9 11.0 82
2020年 44 42.3 54 51.9 0 0.0 6 5.8 104
2021年 60 42.9 71 50.7 0 0.0 9 6.4 140
2022年 50 40.0 56 44.8 17 13.6 2 1.6 125
表10  論文採択状況(年齢別,46歳以上)
採択 不採択 査読中 取り下げ 合計
N % N % N % N %
2016年 12 25.5 22 46.8 0 0.0 13 27.7 47
2017年 19 30.2 42 66.7 0 0.0 2 3.2 63
2018年 18 22.0 59 72.0 0 0.0 5 6.1 82
2019年 25 39.1 36 56.3 0 0.0 3 4.7 64
2020年 29 35.4 48 58.5 0 0.0 5 6.1 82
2021年 49 43.0 59 51.8 0 0.0 6 5.3 114
2022年 36 28.8 76 60.8 12 9.6 1 0.8 125
表11  論文採択状況(再投稿論文のみ)
採択 不採択 査読中 取り下げ 合計
N % N % N % N %
2016年 2 33.3 3 50.0 0 0.0 1 16.7 6
2017年 2 14.3 9 64.3 0 0.0 3 21.4 14
2018年 6 31.6 11 57.9 0 0.0 2 10.5 19
2019年 6 31.6 13 68.4 0 0.0 0 0.0 19
2020年 7 31.8 15 68.2 0 0.0 0 0.0 22
2021年 13 50.0 11 42.3 0 0.0 2 7.7 26
2022年 13 41.9 14 45.2 4 12.9 0 0.0 31

最終的に採択または不採択となった論文の査読の初回通知および最終通知までの日数を表12表15に示す.通知までの日数は最終的に採択となるか不採択となるかで大きく異なるため,通常査読・迅速査読を区別するとともに最終的な採否の別で示した.通常査読における2021年の初回通知までの日数の採択論文,不採択論文の中央値は30日および31日であり,2016年から大幅に短縮化している.同様に通常査読における2021年の最終通知までの日数の採択論文,不採択論文の中央値は122日および34日であり,2016年から大幅に短縮化している.迅速査読における2021年の初回通知までの日数の採択論文,不採択論文の中央値は14日および14日であり,ほとんどの論文を30日以内に初回通知することができた.同様に迅速査読における2021年の最終通知までの日数の採択論文,不採択論文の中央値は69日および24.5日であり,採択論文は半数以上2か月半程度で最終判断ができており,不採択論文に関しては半数以上が1カ月以内に最終判断ができていることになる.最終判断までの日数は著者の修正投稿までの期間の影響を受けることに注意する必要がある(修正投稿までの期間は原則として1カ月と設定しているが,事情を考慮することがある).

表12  査読の初回通知までの日数(通常査読:採択論文,不採択論文別)
採択論文 不採択論文
N 平均 標準偏差 中央値 最小値 最大値 N 平均 標準偏差 中央値 最小値 最大値
2016年 44 51.6 22.3 46.5 25 139 2016年 48 39.9 22.6 43.5 0 92
2017年 42 46.7 25.3 39 8 116 2017年 73 39.6 22.7 39 1 104
2018年 42 37.0 19.7 35.5 1 96 2018年 108 35.9 17.6 36 0 82
2019年 54 43.4 22.9 38.5 2 115 2019年 80 44.0 25.8 38.5 2 110
2020年 69 35.0 13.8 34 4 92 2020年 99 36.0 20.9 35 0 119
2021年 90 29.9 11.1 30 0 59 2021年 108 31.8 13.1 31 6 85
2022年 60 29.5 14.0 27.5 1 89 2022年 110 33.1 15.0 32 0 85

※年は投稿された年.査読中または取り下げの論文は集計に含まなかった.

表13  査読の最終通知までの日数(通常査読:採択論文,不採択論文別)
採択論文 不採択論文
N 平均 標準偏差 中央値 最小値 最大値 N 平均 標準偏差 中央値 最小値 最大値
2016年 44 208.4 88.6 202 68 410 2016年 48 60.4 56.8 47 0 253
2017年 42 156.0 82.0 129.5 11 428 2017年 73 56.5 44.5 43 1 199
2018年 42 155.8 73.1 149.5 40 368 2018年 108 58.7 51.8 40 0 255
2019年 54 154.8 78.0 150.5 31 373 2019年 80 63.2 53.4 45 2 262
2020年 69 133.0 49.5 134 37 249 2020年 99 54.3 47.4 39 0 209
2021年 90 124.2 53.4 122 17 268 2021年 108 46.6 35.7 33.5 6 166
2022年 60 124.7 50.0 128.5 10 222 2022年 110 43.1 32.7 34 0 181

※年は投稿された年.査読中または取り下げの論文は集計に含まなかった.

表14  査読の初回通知までの日数(迅速査読:採択論文,不採択論文別)
採択論文 不採択論文
N 平均 標準偏差 中央値 最小値 最大値 N 平均 標準偏差 中央値 最小値 最大値
2020年 5 13.6 7.8 9 7 24 2020年 4 11.5 8.6 8.5 5 24
2021年 31 13.7 5.3 13 6 29 2021年 30 13.1 4.9 13 6 29
2022年 32 15.3 8.6 14 6 47 2022年 29 18.1 15.4 14 0 87

※年は投稿された年.査読中または取り下げの論文は集計に含まなかった.

表15  査読の最終通知までの日数(迅速査読:採択論文,不採択論文別)
採択論文 不採択論文
N 平均 標準偏差 中央値 最小値 最大値 N 平均 標準偏差 中央値 最小値 最大値
2020年 5 93.2 77.2 51 24 199 2020年 4 23.0 13.3 20.5 10 41
2021年 31 65.8 41.5 69 6 171 2021年 30 44.5 38.2 29.5 6 136
2022年 32 73.3 34.2 73 9 152 2022年 29 37.4 36.2 24 0 152

※年は投稿された年.査読中または取り下げの論文は集計に含まなかった.

Ⅲ. 考察および今後の課題

本誌の投稿数は2016年から2022年に倍増し,それとともに若手研究者の投稿も増加した.このことから,2019年度~2020年度理事会による若手研究者活性化のミッションは達成したと考えている.2022年は迅速査読の投稿が20%,著者に非会員を含んだ採択論文が15%であり,これらの取り組みも順調に進んでいると考えているが,著者に非会員を含んだ投稿は,より増加してもよいかもしれない.

論文採択状況は大幅には上昇していないが,投稿数が増加しているため採択に至る質ではない論文も増加している可能性がある.どのレベルであれば採択できるかという基準は難しい問題であるが,現在の編集委員会では,採択できる論文を不採択と判断する割合を最小にすることを目標にしている.臨床検査の統計学に関する語を使えば,特異度を犠牲にしても感度を向上させることである.そのため,従来であれば不採択であった論文が採択される可能性も否定できないが,最終的に論文の価値は読者や引用数によって評価されるものであるから,この方針は「わが国の看護学の発展に寄与する研究や学術的取り組みを発信する」という本誌の目標および会員の利益に合致していると考えている.現状で編集委員,専任査読者による採択と判断するレベルにはバラツキが見受けられるため,今後はこのレベルの均一化が課題である.

査読の初回通知,最終通知までの日数は通常査読において大幅に短縮したものの,初回査読の30日,31日はまだ短縮の余地があると考えている.従来は通常査読の専任査読者への依頼期限は3週間であったが,2022年12月の投稿規程の改定により2週間に変更された(迅速査読は導入時から1週間のままである).これによって,今後は1週間程度の期間の短縮が見込まれる.迅速査読においては殆どすべての論文で30日以内に初回通知がなされている.迅速査読で30日を超えた論文もあり,また通常査読でも初回返事が90日を超える論文も散見されるが,これらの理由は査読期限や編集委員の処理期限を過ぎた論文が気づかれず日にちが経過した件があったためであり,編集委員会ではそのようなことを最小限にするように,期限経過日数をチェックする仕組みを導入しつつある.これらの取り組みによって最終通知までの日数も今後短縮すると考えている.

以上により,2016年から2022年にかけて,日本看護科学会誌は,より投稿しやすい雑誌に変化し,量的な面では改善したと考えている.今後の課題としては前述したように査読のレベルの均一化や質の維持・向上である.

謝辞:無償にも関わらず,迅速査読も含めて多くの査読に真摯に対応していただいている過去・現在の専任査読者の皆様に深く感謝します.また,2019年度委員会からの迅速査読や著者要件の変更などを可能とする基礎をつくり,委員会の枠組みの再構成を実施した2017~2018年度和文誌編集委員会委員長の秋元典子先生にも感謝しつつ,この成果をお届けします.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない

2021年度~2022年度 日本看護科学学会和文誌編集委員会名簿(所属は投稿時)

委員長/編集長  宮下 光令  東北大学大学院

編集長   河野あゆみ   大阪公立大学

編集長   春名めぐみ   東京大学大学院

編集委員  會田 信子   信州大学

編集委員  飯岡由紀子   埼玉県立大学

編集委員  宇佐美しおり  四天王寺大学

編集委員  落合 亮太   横浜市立大学

編集委員  小野若菜子   聖路加国際大学

編集委員  梶井 文子   東京慈恵会医科大学

編集委員  片山はるみ   浜松医科大学

編集委員  勝山貴美子   横浜市立大学

編集委員  キタ 幸子   東京大学

編集委員  佐藤 伊織   東京大学大学院

編集委員  瀬戸奈津子   関西医科大学

編集委員  征矢野あや子  京都橘大学

編集委員  田中 真琴   東京医科歯科大学大学院

編集委員  玉木 敦子   神戸女子大学

編集委員  鶴若 麻理   聖路加国際大学

編集委員  成瀬  昂   SOMPOインスティチュート・プラス株式会社

編集委員  新家 一輝   名古屋大学大学院

編集委員  春山 早苗   自治医科大学

編集委員  細田 泰子   大阪公立大学大学院

編集委員  松井 優子   公立小松大学

編集委員  宮本 有紀   東京大学大学院

編集委員  森本 悦子   甲南女子大学

編集委員  師岡 友紀   武庫川女子大学

編集委員  矢野 理香   北海道大学大学院

編集委員  吉田 俊子   聖路加国際大学

編集委員  吉田美香子   東北大学

 
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