2023 Volume 43 Pages 362-371
目的:不穏状態を呈し,精神科病院に入院となった初対面の患者に対する,精神科看護師の入院時の対応プロセスを明らかにすることを目的とした.
方法:修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた探索的質的研究であり,精神科看護師12名を対象に半構造化面接を実施した.
結果:不穏状態を呈する初対面の精神疾患患者に対する看護師の入院時の対応は,【脅かさない接近】から始まり,【患者が体験している世界のイメージ】をしながら,患者に【味方であるという認識の促進】を図るプロセスであった.また,このプロセスは【味方であり続けるためのセルフマネジメント】が支えており,さらに【通じ合う感性を探る姿勢】という看護師の信念が基盤になっていた.
結論:精神科看護師は患者と通じ合える感性があるという信念があり,入院時から私はあなたの味方であるというメッセージを患者に送り続けることが重要であることが示唆された.
Purpose: The purpose of this study was to clarify psychiatric nurses’ involvement with to patients who they had met for the first time and who were in a restless state when admitted to a psychiatric hospital at the time of admission.
Methods: This is an exploratory and qualitative study using a modified grounded theory approach in which semi-structured interviews were conducted with 12 psychiatric nurses.
Results: Nurses’ involvement to hospitalized psychiatric patients exhibiting restlessness were as follows: They used a [non-threatening approach] and were part of a process of [helping patients realize they were their allies] while [imagining the world experienced by patients]. In addition, the process was supported by [self-management to remain an ally] and was based on nurses’ beliefs of [trying to understand one another].
Conclusion: Psychiatric nurses believe that they have the sensitivity to communicate with patients, and the results suggest that it is important for nurses to continue sending the message that they are on the patients’ side starting at the time of hospitalization.
近年の精神医療は,入院治療を中心とした医療から地域生活をしながら治療を行う医療福祉の考え方に転換し,地域共生社会の実現が加速している.そのため,厚生労働省(2021)は,精神障害者に対応した地域包括ケアシステムの構築を推進しており,地域の支援体制の整備に加え,精神症状の急性増悪や急性発症に対応するための精神科救急医療体制整備の充実を掲げた.この方針の転換に際し,急性期患者への対応方法や看護スキルの見直しや開発が喫緊の課題と言える.
わが国の精神科病院に入院している総患者数は約27.2万人であり,その中で強制入院である非自発的入院形態の医療保護入院と措置入院の患者数は約半数を占めている(厚生労働省,2019).非自発的入院形態や,精神症状の急性増悪・急性発症の場合,患者は幻覚・妄想を伴っていることがあり,落ち着かず,場合によっては昏迷状態となっていたり,攻撃的・暴力的言動が見られることも少なくない.そのため,本人の同意なく病棟に移送され,鎮静剤等の薬物投与や隔離・身体拘束といった強制的な処遇を受けることが多い.患者にとって,同意なく入院させられ,隔離や拘束などを伴った強制的な治療が行われることは,治療自体をトラウマにする危険があることが容易に考えられる(川野,2018).Ishikawa et al.(2021)は,非自発的に入院した患者の入院時の感情について調査しており,患者は怒りや諦めなどの否定的な感情を抱くことを明らかにした.さらに,梶原・遠藤(2017)は,看護師と非自発的入院患者の参加観察と面接を行い,患者の語りから「入院時の理不尽な対応への怒りとあきらめ」の概念を抽出した.
一方,梶原・遠藤(2017)の看護師を対象としたデータからは,患者の暴力予防対応や緊張緩和の対応が抽出された.川内ら(2020)の熟練看護師の入院後7日間の対応について聴取した研究においても,入院による患者の衝撃を和らげたり,「患者のペースを尊重」し,「無理に関わらない」対応などが示された.二つの研究結果とも患者の苦痛という感情や問題行動の対処的な対応は論じられているが,同意せずに入院を強いられた患者の怒りやあきらめを引き起こした原因に直接対応する看護対応の概念は明らかになっていない.しかしその中で,遠田ら(2019)は,精神科救急病棟施設一カ所を対象に患者満足度調査を定量的に行った.その結果,行動制限に対し患者が納得している程度と満足度には中程度の相関(.52)がみられた.このことを受け,精神病患者を尊重した対応の一つとして,患者が理解できるように説明することが有効であると推測できる.しかし,この研究対象の属性は,医療保護入院は93.2%であったが,気分障害が57.6%,統合失調症26.3%と偏りがあり,状態像として幻覚妄想や精神運動興奮がないものがそれぞれ60%以上であった.入院時の精神症状や機能レベル(GAF)が低い患者の場合,満足度が低いことが示されたことから,急性期統合失調症患者などへの対応が今後の課題であると指摘した.
そこで,本研究では,精神疾患患者の緊張が非常に高まり,自身をコントロールできない状況下で,診察や病棟へ移送する時の看護師の対応に焦点をあてる.研究として取り扱う場面は,精神症状の急性増悪や急性発症によって不穏状態となった患者が,外来診察後に入院の同意を得ないまま病棟に移送される場面である.患者は,自傷他害や衝動行為のリスクがあるため,予防のため複数の看護師に行動を抑制されながら移動したり,興奮が強い場合は事前に診察室で薬物投与を受ける.病棟到着後は速やかに隔離や拘束となり,一連の処置が完了する.さらに,対応した看護師にとってもその患者と過去に面識がなく,診察室から病棟へ移送されるまでの間に初めて関わる状況とした.精神病患者の入院時対応について,先述した先行研究では,この場面での対応について詳細に分析されたものは見当たらない.そこで本研究では,精神症状が悪化した不穏状態の患者に対して,精神科看護師として何ができるのか,このような場面でどのような対応の特徴があるのかを抽出し,患者にとって将来的に好ましい影響をもたらしうる対応はあるのか,あるのならばそれはどのような対応なのかを考察することを目的とした.
本研究の目的は,入院時に不穏状態を呈する初対面の精神疾患患者への精神科看護師の対応のプロセスを明らかにすることである.
この対応プロセスが解明されることにより,精神科病院での不穏状態の患者の援助や地域生活をしている精神疾患患者が一般病院を受診した際の関わり方の一助になること,また看護師の対応により患者の入院時のトラウマを減じることが可能になると思われる.
本研究は,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Modified Grounded Theory Approach:以下,M-GTA)(木下,2007)を用いた探索的質的研究である.M-GTAは社会的相互作用により生じるプロセスを明らかにする研究手法である.本研究では,1)入院時に不穏状態を呈する初対面の患者への看護師の対応という限定された現象を取り扱っており,限局された範囲の理論生成を目指していること,2)看護師と不穏を呈する精神疾患患者の二者間で社会的相互作用が生じていること,3)研究結果を精神科入院時の場面で実践活用することを想定した研究であることから,M-GTAを用いることは妥当と判断し選択した.
2. 用語の定義不穏状態:幻覚や妄想等の増悪や不安焦燥感の増大により,不意な行動化,興奮,自己への危害,他害行為に至る危険のある状態であり(芦沢ら,2018),ささいな刺激に反応しやすく,緊張が高まっている状態とする.
3. 研究対象者関東圏内4か所の医療法人精神科病院を選定した.病院選定基準は関東圏内の精神科を標榜し,地域の精神障害者の急性期,あるいは救急搬送可能な病院とし,研究者の有意な合目的的サンプリングとした.
病院管理者に研究協力の許可を得たのち,看護部長または病棟所属長から,研究対象となる人物を下記の基準に則って,各病院1~4名ずつ推薦してもらった.
そのインタビュー対象の選定条件は,1)訪問看護師を含む精神科看護師とし,准看護師は除外し,年齢や経験年数は問わない,2)患者がそのスタッフと話しをするのを好んでいる,3)患者と関係を築くのが上手だと思う,4)患者がそのスタッフと楽しそうに話しをすることがよくある,5)話をしたがらない患者がそのスタッフには話をすることができる,そして6)不安が強かったり,興奮している患者に上手く関わることができ,関わることで患者が落ち着く,とし,2)~6)のいずれかに該当する看護師で研究参加の同意が得られたものを対象とした.
4. データ収集方法データは半構造化面接により収集し,対象者の病院内の個室にてプライバシーを保護した状態で実施した.インタビューは,精神科救急での臨床経験がある研究者1名とM-GTAの手法に精通している研究者1名のいずれか1名により1対1で実施した.インタビューは,「患者が外来を受診し,医師との診察室での面談時に措置入院または医療保護入院が決定し,その後,外来から入院病棟に到着し,隔離や拘束のために必要な入院処置が終了するまでの場面」に特化して,インタビューガイドに基づいた半構造的面接を行った.ガイド項目は,入院時の患者に対する具体的な接し方や話し方のエピソード,対応時の信念や考えていること,感じていること,そして不穏な患者対応に必要と考える看護技術についてとした.面接調査は,2018年1月~2月,及び,4月にも実施した.
5. 分析方法M-GTAの分析手法に則り,分析テーマを「精神症状の悪化に伴い,精神科病院に自分の意思ではなく受診させられ,意思疎通が困難であり,入院の必要性も理解できないまま,入院が必要と診断された不穏状態を呈している初対面の患者に対し,診察から病棟移送の間に患者に対応するプロセス」とし,分析焦点者を「入院時に不穏状態を呈している初対面の精神疾患患者に対応している精神科看護師」と設定した.インタビュー内容は対象者の同意を得てICレコーダーに録音し,文字データに変換後に熟読し,同じ意味,文脈を持つヴァリエーション毎に分析ワークシートに列挙した.複数のヴァリエーションの共通点を吟味し,概念を生成し,概念名と定義を定めた.概念は逐次精錬し,概念間の関係性の検討や概念の統廃合をしながら,カテゴリーの生成を進めた.
概念とカテゴリーの比較分析を続けながら全体を結果図としてまとめ,結果図の完成後に分析結果をストーリーラインとして記述した.また,分析と同時に,解釈の収束化に向けて理論的サンプリングを継続しつつ,新たな概念が生成されなくなった時点で理論的飽和化と判断し,データ収集と分析を終了した.
研究の厳密性を確保するために,概念の生成は,まず,2名のインタビュアーにより別々に分析し,その内容を突き合わせて不一致の箇所や概念について他の研究者5名を加えてディスカッションを行なった.このほかにディスカッションを2回行い,生データとストーリーラインとの間に飛躍はないか,概念名が適切にヴァリエーションを反映しているかなどについてメンバーの合意を得た.
6. 倫理的配慮施設の管理者に,文書にて研究目的・方法・調査内容・倫理的配慮を説明し,同意書にて同意を確認した.その後,対象候補者に文書と口頭にて研究の目的・方法・調査内容,研究参加は任意であり,途中撤回が可能であること,参加しない場合も不利益がないことを説明し,同意書にて同意を確認した.また,インタビューでは,語りたくないことは話さなくてもよいことを伝え ,プライバシーが守られるよう個室での面接を実施した.また,収集された録音データを文字データにする際に,個人が特定されないよう氏名・施設名,患者名の箇所は伏せ字として加工した.なお,本研究は順天堂大学医療看護学部研究等倫理委員会(順看倫第29-41)の承認を得て実施した.
看護師12名にインタビューを実施した.インタビューの平均時間は48.4分であった.男性5名,女性7名,平均年齢は43.1歳(SD = 10.5)であり,精神科勤務平均年数は13年(SD = 5.8)であった(表1).
対象者の概要
看護師 | 性別 | 年齢 | 経験年数 | 職位 | 基礎教育 |
---|---|---|---|---|---|
A | 男 | 30代 | 9 | 主任 | 専門学校 |
B | 女 | 30代 | 14 | スタッフ | 専門学校 |
C | 男 | 60代 | 26 | 師長 | 専門学校 |
D | 女 | 40代 | 14 | 主任 | 専門学校 |
E | 女 | 30代 | 12 | パート | 専門学校 |
F | 男 | 40代 | 8 | 副主任 | 専門学校 |
G | 女 | 20代 | 3.5 | スタッフ | 大学 |
H | 男 | 50代 | 21 | 師長 | 専門学校 |
I | 男 | 30代 | 13 | 主任 | 専門学校 |
J | 女 | 40代 | 13 | 師長 | 専門学校 |
K | 女 | 50代 | 12 | 主任 | 専門学校 |
L | 女 | 30代 | 11 | スタッフ | 専門学校 |
語られた患者の事例は,主に統合失調症の急性増悪による幻覚・妄想が活発な不穏状態であり,場面としては,患者が外来を受診し,措置入院または医療保護入院が決定し,外来から入院病棟に移動し,隔離や拘束のために必要な入院処置が終了するまでの場面であった.
2. 概念とカテゴリーデータ分析の結果,5個の【カテゴリー】と15個の〈概念〉が生成された(表2).5個のカテゴリーの関係性を示す結果図を作成し,「不穏状態を呈した初対面の精神疾患患者に対する入院時の対応プロセス」として示した(図1).
カテゴリー・概念・具体例一覧
カテゴリー | 概念 | ヴァリエーション(具体例) |
---|---|---|
脅かさない接近 | 患者のパーソナルスペースの保護 | ・どうしても人っていうのは,まず初めは警戒から入るので,不信,警戒から入るので,入ってはいけない距離って絶対生じるんですよね,心理的距離の中に.(B) ・物理的距離です,はい.そういうときは,ちょっと斜め脇とか,はい.もう正面には行かないです.そうですね.はい,そのときは避けてます.あんまりじっと見ないとか.またじっと見ると「何でじっと見てんだよー」とか怒られたりするので.はい.同じくらいの目の高さにはするようにはしています.やっぱり上からだと,余計相手も怖がるし,やっぱりこの人は怖い人なんじゃないかっていうふうに思っちゃうと思うので,はい.(J) |
警戒心を和らげる話し方 | ・やっぱり初めてで,医療者で,たぶん自分たちに警戒心を持ってくる方って少なからずいるので,やっぱその警戒心を少しずつ解くことが大事かなっていうところがあるので.(G) ・何か口調はすごく穏やかに,やっぱり誰でも,わーって言われると,わーってなるじゃないですか.なので,ちょっと優しい感じでいこうとは思ってます.(E) ・ちょっとフレンドリーに「どうしたの?」「教えて」って言うと,患者様は,そのー,妄想だったり,精神症状の悪いところをもう一方的に,やっぱり話すんですよね.……「教えて」って.「何?どうして,興奮してる?」みたいな形で.「言って,言って」っていうことで.(I) | |
患者が体験している世界のイメージ | まっすぐに事情を聴く | どうして死のうかって,死のうと思ったかっていうのは聞きます,誰にでも.それは聞かないと分からないし.でも,先生たちも聞きますよね,診察のとき.同じだと思うんですよ.(D) |
患者の思いを想像して確認 | やっぱり聞いてみるっていう.何が起こっているか分からないじゃないですか.勝手に想像しても.なので,「怖い,怖い,怖い」って言ったら「何が怖いんですか」ってすると,結構「何とかって言ってくる」とか幻聴があることが分かったりとか.(E) | |
味方であるという認識の促進 | 患者の安心感を育むための駆け引き | (そばに)いさせてくださるっていうことは,開いてますよね.たぶん,本当に嫌であれば「もう向こう行け,あっち行け」.で,あと,もう余計興奮される.何も興奮しないというのもサインである.あとは,辛抱強く待っていると患者様のほうが折れていただくことで,まあ,私は入っていく.(B) ・患者さんが,身構えてたりするときあるんですね,私が対応するとき.そのときに,「まあ何とかだよ」って患者さんも崩し言葉で結構対応してくれるときは,「ああ,この人に少し入れてるな」っていうふうには思います.(I) |
承認と共感を強調した関わり | ・保護室とかに入ると……本当に最初は5~6人でわーって囲んで,本当にたぶん怖いと思うんですね.……「ああ,幻聴聞こえて怖いんですね」ってちょっと共感をしていくと,割と心を開いてくれるとか,この状況を「こんなに囲まれちゃって,怖いですよね」とか「びっくりしますよね」とか「突然入院って言われてもね」とかって,ちょっと共感していくと,割とぽつりぽつり話してくれたりとか.(E) | |
孤立感を和らげるための私からのメッセージ | (初日は)まあお互いに緊張は強い中,やはり患者さんはなすがままにされるような状況っていうところをしっかりと理解した上で……常に,「心配なんですよ.あなたことを一番心配してますよ」とか「気に掛けてますよ」っていう心掛けて,一番,何かこう,気を使って行っております.(F) | |
処置時の労いと説明 | ・やはり押さえ付けるとか,何か嫌なことをするときには「私も嫌なんです」って.まあ,症状は緩和することはなかなかできないので,感情にアプローチするっていうのは必要かなと思うので「おつらいですよね」と.……「嫌ですよね.おつらいですよね.私も嫌なんですけれども,あなたのためにこうさせていただくんです」っていうことはお伝えをして.(B) ・拘束の指示が出たら,どんなに暴れても何しても……「あなたのためよ」っていうことは,その時々の言葉で言います.「嫌なのはすごく分かるけど,あなたには今,休息が一番大事だから」って.「このままじゃ休めないから,休むためにするんです」っていうことは説明はします.(E) | |
通じ合う感性を探る姿勢 | 病気の部分を持ったホリスティックな存在と認識 | ・その患者さんの症状がそうさせているので,もうそこは致し方ない部分かなと.(A) ・それは病気がさせているんであって,性質ではない.私が嫌われたからそうしているんではなく,病気がそうさせている.……大きな声を出すのは,病気がそうさせる.(B) ・相手(患者)の置かれた状況を,まあ自分(看護師)が理解してあげるっていうか,……今興奮して,つらくて,結局幻聴も聞こえて.でも幻聴,それは病気によって幻聴が起こっているんだけど,本人はそれを認識していないわけですよね.……人としてっていうんですかね.人として.たぶんおんなじ,まあ人ですよね.(J) ・最初,その精神疾患で,病名が付いてても,病名を見ないようにしています.病名を見ちゃうと,どうしても何かそっちを見ちゃうんですよね.その病的な部分を見ちゃうんですけど,うーん,まあ,1人の人で,この人はどういう人なんだろうって.(L) |
心遣いが知覚されているという期待 | 結構認識しているんですよ.そのとき「ああ,あの時の看護師さんだね」とか,声とか,こう,雰囲気で,うん.で「あのとき,こう言ってくれたね」とは,やっぱわかってるんですよね.そうすると,その後も結構スムーズなんですよ.関係性が築けて,結構治療もスムーズにいって,早く退院できたりとかっていうのがあるので,はい.(J) | |
態度を常に評価されている感覚 | ・あのー,冷静,自分が冷静でいないといけないっていうのは,気持ちには正直あり,あります.やっぱ緊張も同じですけど,やっぱり相手に伝わってしまうので.(F) ・(看護師の声かけが)聞こえてないときもあるでしょうけど,たぶん気配というのは感じてると思うので,この人は敵か味方かって,たぶんそこで判断してるような感じもあると思うので.……「この人は何をする人だろう」って,たぶんね,思うので.うん,そこで,自分はもうちゃんとした,安心した存在だっていうのをアピールするように,まず声掛け.(J) | |
味方であり続けるためのセルフメネジメント | 暴力防止を意識しながらの寄り添い | ・手が届く範囲にいないっつうのは,もちろんそうなんでしょうけど.意識としては,何があるか分からないって意識はあっても近付きます.(K) ・安全第一っていうのは,体の保持,支持させていただく方法っていうのがまず一番で,声掛けっていうのは,あのー,まず「敵じゃないよ」ってところで,「大丈夫,大丈夫」っていうような声掛けをしてますね.あの,特に注意するっていうのは,とにかく「敵ではないよ」ということと,取りあえず「話を聞くから,一緒に(病棟に)行こうよ」っていう形にします.(I) |
勇気付け合う仲間 | ・ステーションに戻って,こう,ちょっと吐いたりっていうところがもしかしたら大事なのかもしれない,看護者のケアっていうところではね.自分の中でためこんでると,自分がもうつらくなってくるので.(C) ・一番は,やっぱ「怖い」とか「やだな」とか,陰性的な感情になったときに,こう,一人ではない.……一人ではなく,誰かが近くにいるとか,そばにいるとか,見ててくれる……仲間がやっぱいる.(B) | |
客観的対応の重視 | ・「いいじゃない,ちょっとぐらい」みたいな感じで,ね.どうにか希望をね,通そうとする人もいるし.他の全ての患者さんについて,操作されないようにしようっていうのはありますけど.(E) | |
ダメという毅然とした態度 | 「今のはちょっと僕も嫌な気持ちしてたし,何でそんなことを言ったの」って,その場で聞いてます.(自分の気持ちを伝えつつ,その理由を)そうですね,理由.「いらいらするのは分かるけど,何でそんなことやったの」って.「こっちだって気分悪いんだけど」って言って,言ってます.正直に.(F) ・怖いと思ってしまうと,相手がやっぱさらに向かってきたりとかする可能性もあったりもするので,そこはこう毅然として,対応する.……うろたえてしまったりすると,さらに,エスカレートしてしまったり,この人だったら,何やっても許されるとかいうパターンもあるのかなっていう.(F) |
不穏状態を呈した初対面の精神疾患患者に対する入院時の対応プロセス
【脅かさない接近】のカテゴリーは,〈患者のパーソナルスペースの保護〉・〈警戒心を和らげる話し方〉の2個の概念で構成されていた.この【脅かさない接近】は,不穏状態を呈する患者への看護師の関わりの始点となっていた.〈患者のパーソナルスペースの保護〉は,怖がったり,警戒している患者が,看護師が近づくことで不快感や緊張感を抱かないように配慮するために患者の心理的に安心できるテリトリーを脅かさないよう配慮し,心理的領域内に不用意に入らないように接近することであった.〈警戒心を和らげる話し方〉は,看護師が主導して入院や治療に必要な内容の話しを進めるのではなく,患者の緊張を和らげ,体調の悪化を避けることに重きをおいて話しを進め,話し方を工夫することであった.
2) 患者が体験している世界のイメージ【患者が体験している世界のイメージ】のカテゴリーは,〈まっすぐに事情を聴く〉・〈患者の思いを想像して確認〉の2個の概念で構成されていた.不穏状態の【患者が体験している世界のイメージ】をして,患者が認識している世界を理解しようと試みることで,不穏状態における患者の心情を深く察し,共感を利用したり,安心を提供することが看護師自身に動機付けられていた.〈まっすぐに事情を聴く〉は,患者が刺激で感情が揺らいでしまうかもしれない時でも,自死に関する重要な話題などを避けることはせず,直接患者に問いかけることであった.〈患者の思いを想像して確認〉は,疎通が図れず,警戒している患者の言動や思いを看護師が観察や簡単な言葉かけ,直観などから想像して,それを患者に直接,言葉や態度で確認したり,サインを送りながら反応をみて,その思いを具体的にイメージすることであった.
3) 味方であるという認識の促進【味方であるという認識の促進】のカテゴリーは,〈患者の安心感を育むための駆け引き〉・〈承認と共感を強調した関わり〉・〈孤立感を和らげるための私からのメッセージ〉・〈処置時の労いと説明〉の4個の概念で構成されていた.不穏状態の患者は,医療者への敵意や治療に対する恐怖や抵抗感を抱いているため,初期の関わりでは,このような患者からの否定的な反応を和らげるような【味方であるという認識の促進】を目的として関わっていた.〈患者の安心感を育むための駆け引き〉は,患者が看護師やこの環境は安全で安心であるとわかり受け入れてもいいと思ってもらえるまで,焦らず距離を縮めるための言語的,非言語的サインを送り,その反応を見定めることであった.〈承認と共感を強調した関わり〉は,患者からの反応として語りや感情表出など何らかの変化が起こることを期待して,今までの患者の頑張りを労い,患者の頑張りを認めていることを伝え,さらに患者の辛さに共感した声掛けをすることであった.〈孤立感を和らげるための私からのメッセージ〉は,私はあなたのことを常に気にしているというメッセージを送り,患者自身が孤立しているという感覚にならないようにすることであった.〈処置時の労いと説明〉は,患者の苦痛の気持ちを思いやり,同情的なメッセージを口頭で示しながら,かつ,この処置は必要であることを必ず説明して遂行することであった.
4) 通じ合う感性を探る姿勢【通じ合う感性を探る姿勢】のカテゴリーは,〈病気の部分を持ったホリスティックな存在と認識〉・〈心遣いが知覚されているという期待〉・〈態度を常に評価されている感覚〉の3個の概念で構成されていた.この【通じ合う感性を探る姿勢】は,患者への対応の全過程での看護師の信念となっていた.〈病気の部分を持ったホリスティックな存在と認識〉は,障害があるが故の病的な言動の部分がある人という理解と同時に,自分と同じように懸命に生きている部分のある人に区別して二元的理解を一旦行うが,それぞれの関連を探りながら統合した一つの人格として患者を理解しようとすることであった.〈心遣いが知覚されているという期待〉は,混乱,興奮し,取りつく島がないと思われる患者や,反応がなく,現実を到底認識できていないと思える患者であっても,患者は看護師の自分に対する態度や行動,雰囲気を知覚でき記憶しているという確信を持つことである.そして,それがその後の関係性構築に大きな影響を与えるという認識を持って接することであった.〈態度を常に評価されている感覚〉は,患者は意識がある時には看護師全員の言動を常に観察しており,自分に関わろうとしている目の前の看護師は信用できるかどうかの判断の根拠にしていると考えていることであった.
5) 味方であり続けるためのセルフマネジメント【味方であり続けるためのセルフマネジメント】のカテゴリーは,〈暴力防止を意識しながらの寄り添い〉・〈勇気付け合う仲間〉・〈客観的対応の重視〉・〈ダメという毅然とした態度〉の4個の概念で構成されており,【脅かさない接近】から始まる【味方であるという認識の促進】を図るプロセスを支える影響要因であった.〈暴力防止を意識しながらの寄り添い〉は,何が衝動行為のきっかけになるか分からないという意識の下,看護師への暴力行為を未然に阻止することを常に意識しつつ患者に寄り添うことを忘れない行動であった.〈勇気付け合う仲間〉は,看護師自身が恐怖感や無力感を抱いていても仲間がいることで支えられ,そのことで感情をコントロールし,ケアを継続できることであった.〈客観的対応の重視〉は患者の自傷他害に関する行為や看護師を操作しようとする患者の可能性があれば,看護師は意志を強くもって,動じず,安易に承認や共感はせず,患者の状態を淡々と観察し,対応することであった.〈ダメという毅然とした態度〉は,精神症状や患者の苦悩には共感するが,反社会的行為には毅然とダメと言うことであった.
3. ストーリーライン最初の対応では,精神科看護師は不穏を呈している患者に対して,不用意に近づきすぎず,〈患者のパーソナルスペースの保護〉をしながら,〈警戒心を和らげる話し方〉により【脅かさない接近】を図っていた.次に,看護師は患者の反応を注意深く観察しながら〈患者の思いを想像して確認〉し,時に〈まっすぐに事情を聴く〉ことで【患者が体験している世界のイメージ】を通して,患者が入院時の環境や患者自身の状態,看護師の対応をどのように認識しているのか探っていた.そして,看護師はどのような関わりが安心を提供できるか予測しながら,〈患者の安心感を育むための駆け引き〉,〈処置時の労いと説明〉,〈承認と共感を強調した関わり〉と同時に〈孤立感を和らげるための私からのメッセージ〉を送り続けることで【味方であるという認識の促進】を図っていた.
以上が,看護師の初対面の不穏患者に対する行動であったが,この一連の行動を支える看護師の信念が【通じ合う感性を探る姿勢】であり,その信念を実践する上で影響要因となるものが【味方であり続けるためのセルフマネジメント】であった.
精神科看護師は,不穏を呈している入院患者のことを,〈病気の部分を持ったホリスティックな存在と認識〉していた.また,不穏状態であっても患者は看護師の行動を観察し,信用できるかどうか査定しているという〈態度を常に評価されている感覚〉を持ちながら,一見すると疎通が困難であるが〈心遣いが知覚されているという期待〉という【通じ合う感性を探る姿勢】という信念があった.
一方,不穏の患者への対応は看護師自身の恐怖感情や関わりへの迷いをもたらす.そのため,【味方であり続けるためのセルフマネジメント】が必要であった.それには,折に触れて自身の感情を表出し,支え合うチームの存在が大きく影響しており,関わりの中で〈勇気付けあう仲間〉により,看護師一人ではコントロールが困難な状況が支えられていた.また,不穏状態を呈している患者からの暴力被害や危険行為が生じるリスクに対して,〈暴力防止を意識しながらの寄り添い〉や,操作的であったり自傷行為をしようとする患者の場合には〈ダメという毅然とした態度〉を取り,常に〈客観的対応の重視〉をした関わりを行い,【味方であり続けるためのセルフマネジメント】が実施されていた.
不穏状態を呈する患者への看護師の対応は,不穏状態をこれ以上悪化させないことを意図した【脅かさない接近】が始点となっていた.精神科病棟に入院する患者は,急激な環境の変化や行動制限に伴い,戸惑い,不安,恐怖心を抱いており(松下,2019),時に入院体験そのものがトラウマとなることもある.そのような精神科の急性期では,患者の恐怖心や不安・緊張を高めないよう,また不穏患者に限らず,精神疾患患者と関わる際は基本的に防衛反応をそれ以上強めない対応(花澤,2019)が必要となる.特に入院初期は自我境界が弱体化し,外界からの侵襲を受けやすいため,かける言葉や声の調子に配慮し,やわらかい態度で接する必要がある(水野・岩崎,2020).また,初対面で関係を開始する段階では,患者は「自分の今いる場所は安全な場所であるか」「周囲の人々はどのような人で味方なのか,信じてもよいのか」「なぜ,何のために,他者(看護師)がそこにいるのか」などについて知りたいというニーズがある(坂田,2017).
そのため,看護師は,不穏状態の患者に対し,〈警戒心を和らげる話し方〉をしながら,不用意に近づき過ぎないよう〈患者のパーソナルスペースの保護〉に留意し,患者が安全であると認識できるよう【脅かさない接近】を図っていた.
次に,【患者が体験している世界のイメージ】とは,疎通が取れず,警戒している患者の言動や思いを看護師が観察や簡単な言葉がけ,直感などから想像し,患者に確認しながら反応を見て,その思いを具体的にイメージすることを指す.川内ら(2020)の入院時の精神疾患患者の関わりに関する調査でも【患者の体験を知る】というカテゴリーが挙げられており,本研究の入院時に不穏状態を呈する患者においてもこの関わりは同様であり,看護者は〈まっすぐに事情を聴く〉ことで差し迫った自殺や他害行為のリスクアセスメントを行い,患者の言動からだけでなく,わずかな表情の機微を見逃さずに〈患者の思いを想像して確認〉していた.患者の怒りや不安,焦燥感など,不穏状態の患者の情動的な変化は,アドレナリンにより闘争-逃走反応を引き起こす.看護師は,患者の生理学的変化,すなわち発汗や呼吸の変化,表情や声の様子からこの反応の程度を観察していると考えられる.患者が不穏状態という緊急時の関わりでは,患者と看護師との双方向の言語的コミュニケーションを図ることは困難であることが多く,患者の表情や声の様子など観察が可能なわずかな情報から瞬間的に患者の心情を察していると考えられた.
次に,初対面の不穏状態の患者への対応のプロセスの終点であった【味方であるという認識の促進】では,(1)〈処置時の労いと説明〉として,患者の苦痛に対して思いやりや同情的なメッセージを口頭で示しながら,かつ,この処置は必要であることを必ず説明し,(2)〈孤立感を和らげるための私からのメッセージ〉として,私はあなたのことを常に気にしているというメッセージを送り,患者自身が孤立しているという感覚にならないようにし,(3)〈承認と共感を強調した関わり〉では,今までの患者の頑張りを労い,患者の頑張りを認めていることを伝え,さらに患者の辛さに共感した声掛けを行なっていた.このような関わりにより,患者が闘争-逃避反応により,看護師をはじめとする医療者に敵意を抱いている状態に対し,患者が安心することできるよう介入を試みていた.
近年,闘争-逃避反応に作用する神経系は,交感神経と副交感神経の2種類以外に,両者の神経系の調整を行う腹側迷走神経の存在が明らかとなり,この腹側迷走神経の働きについて,ポリエーガル理論が提唱されている(Porges, 2018/2020).Porges(2018/2020)は,ポリヴェーガル理論の中で,交感神経の働きを鎮めるための腹側迷走神経系の活性化には,社会的繋がりによる「安心感」の提供が作用していることを明らかにしている.精神科看護師は,このことを無意識的に経験から学習している可能性が考えられ,〈承認と共感を強調した関わり〉を中心に,患者が不穏状態の中でも社会的な繋がりを意識できるように関わり,〈患者の安心感を育むための駆け引き〉により,患者の反応を見ながら,介入の方法や程度を調整し,【味方であるという認識の促進】をしていたと考えられた.
ポリヴェーガル理論では,接する相手に逃走-闘争行動に代表される防衛反応を生じさせずに,相手の神経系が「これは攻撃ではない」と解釈するように働きかけること,安心できるようにするための具体的な方法として,目を合わせ・声や表情を使って,安全であることを表現することが挙げられている(Porges, 2018/2020).すなわち,これは,言語的・非言的に味方であるというメッセージを送り続けることをさす.しかし,初対面の不穏患者に対応する看護師は,不穏状態の患者を前にして,恐怖感情が想起され,味方であるというメッセージを送り続けることに困難が生じることが容易に予想される.そのため,〈勇気付け合う仲間〉の存在により看護師自身の感情をコントロールしていた.また,操作的・依存的・攻撃的な患者に対して,過度な特別対応をしないという〈ダメという毅然とした態度〉や〈客観的対応の重視〉をした関わりを通して,【味方であり続けるためのセルフマネジメント】が行われていた.
尾原ら(2018)も同様に精神疾患特有の症状や危機的状況への介入として,【患者の不安定な気持ちの鎮静化】のカテゴリーの中で〔不穏な患者を不快にさせない冷静な態度〕というサブカテゴリーを抽出しており,患者が不穏でも一人の人として尊重した態度をとり,刺激しないことで患者の不安定な気持ちの鎮静化を図ることの重要性を報告している.本研究においても【味方であり続けるためのセルフマネジメント】は【脅かさない接近】から【味方であるという認識の促進】をするプロセスを支える重要な影響要因であると考えられた.
また,【味方であり続けるためのセルフマネジメント】には暴力リスクへの対応も含まれており,患者が著しい興奮状態等の不穏を呈する場合には,精神科看護師は,暴力発生のリスクが高いことを認識し,〈暴力防止を意識しながらの寄り添い〉が行われていた.この対応は,単に暴力行為の防止に留まらず,患者に寄り添うことを忘れない行動であった.下里(2019)は,患者の暴力性や攻撃性に対するケアにおいて,威圧したり従わせるものであってはならないと指摘している.このように看護師は,安全管理の対応と同時に,患者に寄り添う視点を忘れずに心理的距離を接近させることに重きを置いて対応していたと考えられた.
2. 【通じ合う感性を探る姿勢】という対応時の信念的基盤初対面の不穏状態を呈する患者に対して,精神科看護師の入院時の対応のプロセスでは,【味方であるという認識の促進】のため,患者に安心感を与えるような看護師の〈心遣いが知覚されているという期待〉があり,どこか分かり合える部分が残されているはずであるといった【通じ合う感性を探る姿勢】が信念となっていることが明らかとなった.
精神疾患患者との関わりにおいては,「深いところのまともさを信じる」・「患者の奥にあるものに絶えず関心を向ける」・「変わる可能性を信じる」ことが重要である(水野・岩崎,2020;中井・山口,2021).それは,患者が不穏状態を呈する場合も同様であり,精神科看護師はどこかで冷静に通じ合える部分はあるという認識のもと,不穏状態の患者の関わりを行っていると考えられた.また,川内ら(2020)の報告では,入院時に丁寧に関わることが関係構築に効果的であった体験から【看護師として関わりに責任を持つ】という精神科看護師の関わりを報告しており,初期の関わりの重要性を精神科看護師は認識していると考えられる.
さらに,急性期の状態を脱した回復後の精神疾患患者との関わりの中で,不穏時でも断片的な記憶が残ることを患者の語りから学習し入院初期の不穏時の関わりが後の関係性構築に大きく影響する経験を重ねることで,【通じ合う感性を探る姿勢】という,不穏状態を呈する精神疾患患者に関わる上での信念を構築していたと考えられた.
3. 本研究の限界本研究は,スタッフ看護師から看護管理者までを対象に含めて分析しているため,職位による対応の差異の特徴は把握できていない.今後は,管理者のみを対象とするといった職位を限定することで,看護師の個人的な対応プロセスに留まらず,病棟全体としての組織的な対応について検討することが必要であると考える.
1.入院時に不穏状態を呈している初対面の精神疾患患者に対する精神科看護師の対応は,【脅かさない接近】から始まり,【患者が体験している世界のイメージ】をした上で,【味方であるという認識の促進】をするプロセスであった.また,このプロセスは【味方であり続けるためのセルフマネジメント】が支えており,さらに【通じ合う感性を探る姿勢】という看護師の信念が基盤となっていた.
2.初対面であり,かつ不穏状態を呈している精神疾患患者への関わりについては,初期の関わりが重要であり,現実検討能力が低下し,コミュニケーションを取ることが困難であっても,看護師は動じず,患者をホリスティックに捉え,どこかで分かり合える部分があるという【通じ合う感性を探る姿勢】のような看護師の信念を持ち,味方であるというメッセージを送り続けることが重要であることが示唆された.
付記:本研究は,第38回日本看護科学学会学術集会で発表した.
謝辞:研究協力施設の皆様に深く御礼申し上げます.本研究は,JSPS科研費17K12225(代表者上野恭子)の助成を受け実施した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:CSはデータ収集と分析,論文作成,KUは研究の着想及びデザイン,データ収集と分析,論文作成の補助,KK,YU,TNは分析に関与し,全ての著者が最終原稿を読み承認した.