2023 Volume 43 Pages 698-708
目的:腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策を解明し,腰痛なく看護師を継続するために必要な予防対策への示唆を得る.
方法:全国の病院に就業し腰痛のない看護職者を対象に質問紙調査を実施し,Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いた.
結果:腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策を表す【身体を動かす活動をする】【腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時や重量のあるものを持つ時はボディメカニクスを意識し活用する】など25カテゴリが形成された.Scott, W. A.の式によるカテゴリへの分類の一致率は90%以上であり,カテゴリが信頼性を確保していることを示した.
結論:腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策は25種類である.また,それは6つの特徴を持つことが明らかになった.
Purpose: To elucidate the preventive measures for lower back pain (LBP) that nurses without LBP take on a daily basis, and to obtain suggestions for preventive measures necessary to continue to practice nursing without LBP.
Method: We conducted a questionnaire survey of nurses who work in hospitals nationwide and do not have LBP, and using the qualitative analysis in nursing education based on Berelson’s content analysis method.
Results: 25 categories were formed, including “engage in physical activity” and “use knowledge of body mechanics when assisting or examining patients with back and lower back strain or when carrying heavy weights,” which represent the preventive measures for LBP that nurses without LBP take on a daily basis. The matching rate of classification into categories by W. A. Scott’s formula was 90% or more, indicating that the categories ensured reliability.
Conclusion: There are 25 types of LBP prevention measures that nurses without LBP take on a daily basis. It was also revealed that they had 6 characteristics.
我が国において,職場における腰痛は多くの業種にみられている.「業務上疾病発生状況等調査」(厚労省,2017)による保健衛生業の腰痛は,業務上疾病全体の約8割を占めている.また,看護師の腰痛については9割が腰痛経験を持ち(鈴木・白石,2017),8割以上は就業してから腰痛があることも明らかになっている(原田ら,2015).さらに,約半数が看護師になってから3年以内の早期に腰痛を発症し(小久保ら,2000;鈴木・白石,2017),就業年数5年ごとの腰痛経験は年齢差がないことも明らかになっている(鈴木・白石,2017).これらは看護師の業務が年齢を問わず常に腰部に負担を与えている可能性があることを示す.看護職の腰痛予防対策の取り組みについて諸外国と我が国の動向を概観すると,諸外国は豪州看護連盟(ANMF, 1988),英国腰痛協会(HSE, 1992),米国労働安全衛生管理局(OSHA, 2009)などは,人が持ち上げる重量制限や介護機器の導入などを推奨し,腰痛予防対策へ積極的に取り組んでいる.一方,我が国は,厚生労働省は1994年に「職場における腰痛予防対策指針」を明示している.しかし,こうした規定があるにもかかわらず職場における腰痛は減少しないまま推移しており,2013年に同指針を改定し腰痛予防対策を強化した.日本看護協会(2014)は,看護師の就労施設のうち約6割の病院が腰痛予防対策に取り組んでいないことを報告している.看護師の腰痛が業務上疾病であるにもかかわらず就労施設による組織的な教育や対策が取られていないため,看護師は自分の身体を守るためにボディメカニクスの活用,始業前の準備体操,痛みへの対処として市販薬の購入など,独自に健康を維持し,腰痛予防対策に取り組んでいる(竹光ら,2003;中野,2013).これらは,看護師が健康を維持するため,自ら,腰痛の悪化予防に取り組んでいる状況を示す.看護師が健康を維持し,生涯を通じ専門職として働き続けるために,腰痛対策は喫緊の課題である.
看護師の腰痛に関する多くの先行研究(原田ら,2015;鈴木・白石,2017)は,腰痛の実態調査や腰痛のある看護師が就業時に行っている対処法を明らかにしている.一方,腰痛のない看護師を対象にした研究は,武田・渡邉(2012)が腰痛のある看護師と腰痛のない看護師を比較し,腰痛のない看護師は就業中の身体的姿勢について姿勢や行動を評価し調整するなど腰痛を予防する因子が多いことを明らかにしている.また,原田ら(2015)は腰痛のある看護師と腰痛のない看護師の看護作業との関連について,腰痛のない看護師は腰痛のある看護師に比べ就業中に体位変換や移動介助を一人で行わないことや道具の活用性が高いことなど明らかにしている.いずれも2件は,対象の属性および取り組んでいる腰痛予防対策が就業中に限定されていた.
そこで本研究は,全国の病院に就業する腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策を解明し,考察を通しその特徴を明らかにするとともに,腰痛なく看護師を継続するために必要な予防対策への示唆を得ることを目的とする.本研究の成果は,腰痛なく看護師として就業を継続するための腰痛予防対策に役立つ.また,腰痛のない状態を維持し自律した専門職として働き続けることに繋がる.
本研究は全国の病院に就業する看護師を対象に,就業も含めた生活全体の中で日常的に取り組んでいる腰痛予防対策を明らかにするところに独自性をもつ.
病院に就業する腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策を解明し,考察を通しその特徴を明らかにするとともに,腰痛なく看護師を継続するために必要な腰痛予防対策への示唆を得る.
腰部を主とした症状として現れる,痛み,はり,不快感の症状の総称である.
2. 腰痛のない看護師看護師として就業前から,腰部を主とした症状として現れる痛み,はり,不快感の症状がない者である.
3. 腰痛予防対策健康障害を起こさないため,腰痛のない状態を維持するための方策である.
4. 日常普段・毎日の暮らしであり,生活全体を包含し,就業も含めた生活である.
病院に就業し,看護師として就業前する前から腰部を主とした症状として現れる痛み,はり,不快感の症状がない看護師を研究対象とした.なお,データ収集にあたり,質問紙配布数は先行研究(中山ら,2014;渡辺ら,2018)のデータ収集の結果を参考に,質問紙回収率を30%(棚部,2002)と仮定し,普遍的な研究成果を算出できる範囲内の300名以上のデータを回収することを目標に1,000名を目安とした.
2. 測定用具次の質問紙2種類を作成し,本研究の測定用具とした.
1) 「腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策」を問う質問紙質問紙は,腰痛予防対策を問う自由回答式質問からなる.質問文は,日常的に取り組んでいる腰痛予防対策を想定して回答できるよう「あなたが腰痛のない状態を維持するために,個人的に就業中もしくは日常生活の中で取り組んでいる腰痛予防は,どんなことですか」とした.次に,それがどのような取り組みであったのかを自由かつ具体的に記述できるよう,「具体的にお書きください.いくつお書きいただいても結構です.」とした.
2) 対象の特性を問う質問紙質問紙は,腰痛のない看護師の年齢や性別,臨床経験年数,就業部署など,対象者の特性を明らかにするための選択式,もしくは実数記入式質問からなる.
3) 質問紙の内容的妥当性の検討調査に向けて研究者間,質的研究の専門家などと質問項目の適切性を検討した.また,検討した質問紙を用いてパイロットスタディを2回実施し,内容的妥当性を確保した.
3. データ収集 1) データ収集のための手続き国内の病院に就業する看護管理者の紹介を得る便宜的標本抽出法,便宜的標本抽出法により紹介を得た看護管理者から,他看護管理者の紹介を得るネットワークサンプリングも用いて研究協力を依頼した.承諾の得られた23施設の看護管理者宛てに,質問紙を送付した.質問紙の配布方法は,看護管理者に一任した.質問紙の回収は,返信用封筒を用いた個別投函とした.
2) データ収集期間データ収集期間は,2021年8月1日から2021年10月31日であった.
4. データ分析 1) 「腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策」を問う質問への回答の分析Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析(舟島,2018)を用いて分析した.この方法論の最大の特徴(舟島,2018)は,研究のための問いと問いに対する回答文の存在にある.これは,研究者が,データの多様性に惑わされずに研究目的を達成するために重要である.
本研究は,研究のための問いを「腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策は,どのようなことであるか」とした.この,問いに対する回答文を「腰痛のない看護師は,日常的に( )という腰痛予防対策に取り組んでいる」とした.また,自由回答式質問に対する回答のうち,1名の回答全体を文脈単位とし,「腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策」を表す1内容を含む,単語,文章を1記録単位とした.同一もしくは意味内容の類似した記録単位を集約して同一記録単位群を作成した.次に個々の同一記録群を意味内容の類似性に基づき分類し,その意味内容を忠実に反映したカテゴリネームを付けた.最後に,各カテゴリに包含された記録単位の出現頻度を数量化し,カテゴリごとに集計した.
2) 対象者の特性を問う質問への回答の分析対象の特性を問う回答は,Excel2021を用いて記述統計値を算出した.
5. カテゴリの信頼性Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析(舟島,2018)を用いた研究を,実施した経験のある研究者2名によるカテゴリへの分類の一致率をScott, W. A.の計算式(Scott, 1955)に基づき算出した.
6. 倫理的配慮「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(文科省・厚労省,2014)に基づき次のように行った.看護管理者責任者と研究対象者に,研究目的や方法,研究参加による対象への不利益の排除および,研究参加への意向確認の方法などを書面にて説明し,自己決定の権利を保障した.また,調査に関する問い合わせ先を説明文書へ明記し,情報を得る権利を保障した.さらに,研究対象者が回答した質問紙は,無記名,個別投函により回収し,匿名性の権利も保証した.本研究は,公立大学法人新潟県立看護大学倫理審査委員会の審査で承認を受けて実施した(承認番号020-5).
研究協力を依頼した26施設のうち,23施設より承諾を得,総数1,036部の質問紙を看護管理者に送付した.その結果,質問紙650部(回収率62.6%)の返送があった.このうち腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策について具体的な記述のあるものが493部であった.そこで,この493部の記述を分析対象とした.
1. 対象者の特性対象となった看護師493名の年齢は21歳から64歳の範囲であり,平均36.4歳(SD = 10.56)であった.臨床経験年数は,0.4年から43.5年の範囲であり,平均13.5年(SD = 4.25)であった.所属部署年数は,0.1年から26.6年の範囲であり,平均3.8年(SD = 9.94)であった.所属看護単位は,一般内科病棟,一般外科病棟など多様であった(表1).
対象の特性 n = 493(%)
項目 | 項目範囲・種類及び度数 | |||
---|---|---|---|---|
年齢 | 20歳~24歳 | 76名(15.42%) | 45歳~49歳 | 50名(10.14%) |
25歳~29歳 | 96名(19.47%) | 50歳~54歳 | 30名(6.09%) | |
30歳~34歳 | 69名(14.00%) | 55歳~59歳 | 26名(5.27%) | |
35歳~39歳 | 55名(11.16%) | 60歳~64歳 | 8名(1.62%) | |
40歳~44歳 | 82名(16.63%) | 未記入 | 1名(0.20%) | |
性別 | 女性 | 451名(91.48%) | 未記入 | 1名(0.20%) |
男性 | 41名(8.32%) | |||
看護基礎教育課程 | 大学 | 74名(15.01%) | 専門学校(2年課程) | 28名(5.68%) |
短期大学(3年課程) | 36名(7.30%) | 高等学校専攻科 | 11名(2.23%) | |
専門学校(3年課程) | 335名(67.95%) | その他 | 2名(0.41%) | |
短期大学(2年課程) | 5名(1.01%) | 未記入 | 2名(0.41%) | |
取得免許・資格 | 看護師 | 396名(80.28%) | 看護師+その他 | 9名(1.83%) |
看護師+保健師 | 63名(12.80%) | 看護師+保健師+認定看護師 | 1名(0.20%) | |
看護師+助産師 | 12名(2.44%) | 看護師+助産師+認定看護師 | 1名(0.20%) | |
看護師+保健師+助産師 | 2名(0.41%) | 看護師+保健師+その他 | 1名(0.21%) | |
看護師+認定看護師 | 7名(1.42%) | 看護師+助産師+その他 | 1名(0.22%) | |
臨床経験年数 | 0.1年以上~5年未満 | 119名(24.14%) | 25年以上~30年未満 | 37名(7.51%) |
5年以上~10年未満 | 104名(21.10%) | 30年以上~35年未満 | 22名(4.46%) | |
10年以上~15年未満 | 66名(13.39%) | 35年以上~40年未満 | 12名(2.43%) | |
15年以上~20年未満 | 65名(13.18%) | 40年以上~45年未満 | 2名(0.41%) | |
20年以上~25年未満 | 66名(13.39%) | 45年以上~50年未満 | 0名(0.00%) | |
所属部署年数 | 1年未満 | 116名(23.58%) | 15年以上~20年未満 | 8名(1.63%) |
1年以上~2年未満 | 90名(18.29%) | 20年以上~25年未満 | 6名(1.22%) | |
2年以上~3年未満 | 67名(13.62%) | 25年以上~30年未満 | 3名(0.61%) | |
3年以上~4年未満 | 53名(10.77%) | 30年以上~35年未満 | 0名(0.00%) | |
4年以上~5年未満 | 38名(7.72%) | 35年以上~40年未満 | 0名(0.00%) | |
5年以上~10年未満 | 91名(18.70%) | 未記入 | 1名(0.20%) | |
10年以上~15年未満 | 19名(3.86%) | |||
所属看護単位 | 一般内科病棟 | 74名(15.01%) | 手術室 | 31名(6.29%) |
一般外科病棟 | 92名(18.66%) | 精神科病棟 | 2名(0.41%) | |
一般内科・外科系混合病棟 | 111名(22.52%) | ホスピス・緩和ケア病棟 | 11名(2.23%) | |
小児病棟 | 6名(1.22%) | 外来 | 48名(9.74%) | |
産科病棟 | 15名(3.04%) | 看護部 | 8名(1.62%) | |
ICU/CCU | 16名(3.25%) | 未記入 | 79名(16.02%) | |
就業病院 病床数 | 20~49床 | 5名(1.01%) | 500~599床 | 92名(18.66%) |
50~99床 | 20名(4.06%) | 600~699床 | 20名(4.06%) | |
100~149床 | 30名(6.09%) | 700~799床 | 8名(1.62%) | |
150~199床 | 39名(7.91%) | 800~899床 | 2名(0.41%) | |
200~299床 | 82名(6.63%) | 900床以上 | 9名(1.83%) | |
300~399床 | 73名(14.81%) | 未記入 | 18名(3.65%) | |
400~499床 | 95名(19.27%) | |||
就業病院 所在地 | 北海道 | 25名(5.07%) | 近畿 | 1名(0.20%) |
東北 | 55名(11.16%) | 中国・四国 | 25名(5.07%) | |
関東甲信 | 197名(39.96%) | 九州・沖縄 | 1名(0.20%) | |
北陸 | 109名(22.11%) | 未記入 | 3名(0.61%) | |
東海 | 77名(15.62%) |
分析対象となった493部の記述,493文脈単位,999記録単位を意味内容の類似性に基づき分類した結果,腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策を表す25カテゴリが形成された(表2).以下,各カテゴリから形成した記録単位数の多いものから順に結果を論述する.なお【 】内は各カテゴリ,〔 〕内はカテゴリを形成した記録単位数とそれが記録単位総数に占める割合を表す.
腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策
カテゴリ | 記録単位数(%) |
---|---|
1.身体を動かす活動をする | 197(19.7%) |
2.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時や重量のあるものを持つ時はボディメカニクスを意識し活用する | 172(17.2%) |
3.全身の筋肉と関節を伸長するストレッチをする | 167(16.7%) |
4.腰部・背部に負担のかかる援助時や重量のあるものを把持・搬送時は複数名で行う | 119(11.9%) |
5.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時はベッドの高さを調整する | 115(11.5%) |
6.民間療法に通う | 38(3.8%) |
7.座位・立位・歩行時は背筋を伸ばした姿勢を意識し実践する | 35(3.5%) |
8.腰部を支持する装具を装着する | 33(3.3%) |
9.保温具・全身浴により身体を温める | 27(2.7%) |
10.休息・睡眠時間を確保する | 20(2.0%) |
11.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時や重量のあるものを把持する時は福祉用具や台車を活用する | 20(2.0%) |
12.食事内容・食事量の調整により体重管理し標準体重を維持する | 13(1.3%) |
13.援助・看護記録・カンファレンス・診療の補助時は椅子に座る | 9(0.9%) |
14.身体に適合した寝具・マットレスを使用する | 8(0.8%) |
15.腰部・背部の負担を軽減するための専門知識を学ぶ | 6(0.6%) |
16.身体のマッサージをする | 5(0.5%) |
17.足底部への負担を軽減するための工夫がされた履物を着用する | 5(0.5%) |
18.規則正しい生活をする | 3(0.3%) |
19.腰に負担をかけないよう物は台の上に置く | 1(0.1%) |
20.パソコン作業時は自分の高さに合わせる | 1(0.1%) |
21.腰に負担を感じる時は業務調整を依頼する | 1(0.1%) |
22.重量のある防護具は援助後速やかに外す | 1(0.1%) |
23.作業服は活動しやすいズボンを着用する | 1(0.1%) |
24.起床時は横向きになり起き上がる | 1(0.1%) |
25.重量のあるものを把持する時間を短縮化する | 1(0.1%) |
記録単位総数 | 999(100%) |
【1.身体を動かす活動をする】〔197記録単位:19.7%〕は,「日常的に上半身・下半身の筋力トレーニングをする」「定期的にヨガ・ピラティスをする」などの記述から形成された.
【2.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時や重量のあるものを持つ時はボディメカニクスを意識し活用する】〔172記録単位:17.2%〕は,「ボディメカニクスを意識する」「ボディメカニクスを活用する」「重量のあるものを持ち上げる時は膝を屈曲し重心を低くする」などの記述から形成された.
【3.全身の筋肉と関節を伸長するストレッチをする】〔167記録単位:16.7%〕は,「起床時,腰のストレッチをする」「就業前・就業時・就業後に筋肉と関節を伸長するストレッチをする」などの記述から形成された.
【4.腰部・背部に負担のかかる援助時や重量のあるものを把持・搬送時は複数名で行う】〔119記録単位:11.9%〕は,「体位変換時は2人で行う」「体位変換時は2人以上で行う」などの記述から形成された.
【5.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時はベッドの高さを調整する】〔115記録単位:11.5%〕は,「看護援助時,ベッドの高さを調整する」「自分の身長に合わせベッドの高さを調整する」などの記述から形成された.
【6.民間療法に通う】〔38記録単位:3.8%〕は,「定期的に整体に行く」「定期的にマッサージに行く」などの記述から形成された.
【7.座位・立位・歩行時は背筋を伸ばした姿勢を意識し実践する】〔35記録単位数3.5%〕は,「姿勢を正す」「椅子に座る時は足底が床につくように調整する」「歩行時,背筋を伸ばす」などの記述から形成された.
【8.腰部を支持する装具を装着する】〔33記録単位:3.3%〕は,「腰ベルトを装着する」「コルセットを装着する」などの記述から形成された.
【9.保温具・全身浴により身体を温める】〔27記録単位:2.7%〕は,「湯船に浸かり身体を温める」「腰をホッカイロで温める」などの記述から形成された.
【10.休息・睡眠時間を確保する】〔20記録単位:2.0%〕は,「休息時間を確保する」「休日は温泉に行く」などの記述から形成された.
【11.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時や重量のあるものを把持する時は福祉用具や台車を活用する】〔20記録単位:2.0%〕は,「移乗時,補助具を活用する」「リフト補助具を活用する」などの記述から形成された.
【12.食事内容・食事量の調整により体重管理し標準体重を維持する】〔13記録単位:1.3%〕は,「標準体重を維持する」「食事内容・食事量を適度に保ち体重管理する」などの記述から形成された.
【13.援助・看護記録・カンファレンス・診療の補助時は椅子に座る】〔9記録単位:0.9%〕は,「看護援助時は椅子に座る」「診療の補助時は椅子に座る」などの記述から形成された.
【14.身体に適合した寝具・マットレスを使用する】〔8記録単位:0.8%〕は,「寝具は耐圧分散を使用する」「使い慣れた寝具を使用し,十分な睡眠をとる」などの記述から形成された.
【15.腰部・背部の負担を軽減するための専門知識を学ぶ】〔6記録単位:0.6%〕は,「体位変換・移乗時は理学療法士から教授を受けた方法を実施する」「ボディメカニクスの研修会を受講する」などの記述から形成された.
【16.身体のマッサージをする】〔5記録単位:0.5%〕は,「入浴時,足首マッサージをする」「入浴後,マッサージをする」などの記述から形成された.
【17.足底部への負担を軽減するための工夫がされた履物を着用する】〔5記録単位:0.5%〕は,「足底部に適合した中敷きを着用する」「足底の負荷を軽減するクッション性の高い靴を履く」などの記述から形成された.
【18.規則正しい生活をする】〔3記録単位:0.3%〕は,「規則正しい生活をする」「早く寝る」「早寝早起きをする」などの記述から形成された.
【19.腰に負担をかけないよう物は台の上に置く】〔1記録単位:0.1%〕は,「腰に負担をかけないよう物は台の上に置く」の記述から形成された.
【20.パソコン作業時は自分の高さに合わせる】〔1記録単位:0.1%〕は,「パソコン作業時は自分の高さに合わせる」の記述から形成された.
【21.腰に負担を感じる時は業務調整を依頼する】〔1記録単位:0.1%〕は,「腰に負担を感じる時は業務調整をする」の記述から形成された.
【22.重量のある防護具は援助後速やかに外す】〔1記録単位:0.1%〕は,「X-Pのプロテクターは,介助後すぐに脱ぐ」の記述から形成された.
【23.作業服は活動しやすいズボンを着用する】〔1記録単位:0.1%〕は,「作業服は活動しやすいズボンを着用する」の記述から形成された.
【24.起床時は横向きになり起き上がる】〔1記録単位:0.1%〕は,「起床時は横向きになり起き上がる」の記述から形成された.
【25.重量のあるものを把持する時間を短縮化する】〔1記録単位:0.1%〕は,「重量のあるものを把持する時は短時間にする」の記述から形成された.
3. カテゴリの信頼性看護学研究者2名によるカテゴリへの分類の一致率をScott,W.A.の式により算出した結果は,93.3%と94.4%であった.
本研究の対象者は,「病院の所在」「病床数」「就業部署」と多様な背景を持つ腰痛のない看護師から構成されていた.これは,本研究結果が多様な背景を持つ腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策を反映している可能性が高いことを示す.
2. カテゴリの信頼性Scott, W. A.の式により算出されたカテゴリ分類への一致率は,70.0%以上の場合,信頼性を確保していると判断できる(舟島,2007).本研究の一致率は,93.3%と94.4%であり,いずれも70.0%以上であった.これは本研究の25カテゴリが分析結果として信頼性を確保していることを示す.
3. 腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策の特徴本研究は,腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策25カテゴリ,すなわち,25種類の腰痛予防対策を明らかにした.次に,これら25種類の腰痛予防対策と文献を照合することを通し,腰痛なく看護師を継続するために必要な予防対策への示唆を得る.
第1に着目したカテゴリは,【2.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時や重量のあるものを持つ時はボディメカニクスを意識し活用する】【4.腰部・背部に負担のかかる援助時や重量のあるものを把持・搬送時は複数名で行う】【5.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時はベッドの高さを調整する】【7.座位・立位・歩行時は背筋を伸ばした姿勢を意識し実践する】【8.腰部を支持する装具を装着する】【11.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時や重量のあるものを把持する時は福祉用具や台車を活用する】【13.援助・看護記録・カンファレンス・診療の補助時は椅子に座る】【17.足底部への負担を軽減するための工夫がされた履物を着用する】【19.腰に負担をかけないよう物は台の上に置く】【20.パソコン作業時は自分の高さに合わせる】【21.腰に負担を感じる時は業務調整を依頼する】【22.重量のある防護具は援助後速やかに外す】【24.起床時は横向きになり起き上がる】【25.重量のあるものを把持する時間を短縮化する】である.これら14カテゴリは,腰痛のない看護師の多くが,腰部・背部にかかる負担の軽減策に取り組んでおり,腰痛予防対策の中核となる対策であった.【2】は,ボディメカニクスの知識を活用するという対策を示す.また,【5】【20】は,物品を調整するという対策を示す.さらに,【2】【22】は,重量物品の使用時間を短縮化するという対策を示す.加えて,【7】【13】【19】【24】は,必要な姿勢を確保するという対策を示す.【4】は,人的資源を活用するという対策を示す.【11】は,負担軽減用補助用具を活用するという対策を示す.【8】【17】は,作業装具の着用という対策を示す.【21】は,業務調整の要請という対策を示す.これらは,①ボディメカニクスの知識の活用,②物品の調整,③重量物品の使用時間の短縮化,④必要な姿勢の確保,⑤人的資源の活用,⑥負担軽減用補助用具の活用,⑦必要な作業装具の着用,⑧業務調整の要請という8種類に及ぶ腰部・背部にかかる負担の軽減策を示す.
腰痛のある看護師を対象とした先行研究の多くが,この8種類のうち,次に示す6種類の腰痛予防対策を明らかにしている.この6種類とは,①ボディメカニクスの知識の活用(久留島ら,2003),②物品の調整(高橋ら,2016),④必要な姿勢の確保(田丸ら,2017),⑤人的資源の活用(原田ら,2015),⑥負担軽減用補助用具の活用(鈴木・白石,2017),⑦必要な作業装具の着用(Chiu & Wang, 2007)である.
「職場における腰痛予防対策指針 改訂版」(厚労省,2013)は腰痛予防対策として,上記6種類の対策を明示している.腰痛のある看護師も,腰痛のない看護師もこの対策を導入しているという事実は,この指針が普及している可能性を示す.また,諸外国では⑥負担軽減用補助具の活用を積極に取り入れており(Trinkoff et al., 2003),本研究と同様に重要な対策であることを示す.しかし,補助具の活用について機器の不足や取り扱いのサポートが不十分という指摘もあり(Richardson et al., 2019),施設による取り組みが看護師の腰痛予防対策に影響を与えることを示唆する.一方,③重量物品の使用時間の短縮化は,腰痛のある看護師を対象とした研究が明らかにしていない対策である.しかし「職場における腰痛予防対策指針 改訂版」(厚労省,2013)は,「取り扱う物の重量,取り扱う頻度,運搬距離,運搬速度など,作業による負荷に応じて,小休止・休息をとり,またほかの軽作業と組み合わせる等により,連続した重量物取り扱い時間を軽減すること」を明記している.これは,本研究の明らかにした③重量物品の使用時間の短縮化と同義であることを示す.腰痛のない看護師は,この対策を職務遂行中及び日常生活双方に取り入れていた.具体的には,「職務中にレントゲン被爆回避に向けたプロテクターの着用時間を短くする」「日常生活においては子どもを抱き上げる時間を短くする」である.③重量物品の使用時間の短縮化は,意図すれば就業中も日常生活の中にも取り入れやすい対策である.一方,⑧業務調整の要請は,先行研究が明らかにしていない対策であり,本研究の対象者1名のみの記述であった.具体的には,「腰痛の経験はないものの腰部に負担を感じるとき,負担のある業務の代行を同僚に依頼」である.この対策が,本研究の対象者1名が記述していたという事実は,人手不足で助けを求めにくい環境(鈴木・白石,2017)や業務が多忙により協力が互いにできていない(吉岡ら,2017)ことが要因となり,病院に就業する看護師にとってこの対策が取り入れにくいことを示唆する.しかし,1名のみの記述から病院に就業する看護師にとって,この対策が取り入れにくいのか等の実態までは本研究では明らかにすることはできなかった.病院に就業する看護師にとって,腰部・背部への負担のある職務を回避することは不可能であり,本研究の対象者が腰痛のない看護師であるという事実は,腰部・背部への負担軽減策を複数組み合わせて確実に実行することの重要性を示唆する.
以上,【2】【4】【5】【7】【8】【11】【13】【17】【19】【20】【21】【22】【24】【25】は,腰部・背部にかかる負担の軽減策を腰痛予防対策の中核に据えるとともに,少数ながら職務遂行中のみならず日常生活にも負担軽減策を取り入れるという特徴を持つことを示す.
第2に着目したカテゴリは,【1.身体を動かす活動をする】【3.全身の筋肉と関節を伸長するストレッチをする】である.これら2カテゴリは,身体の筋力維持,筋力を鍛えるという身体活動・運動の導入を意図した対策であった.【1】は,身体の筋力維持,筋力を鍛えるため身体を動かす,【3】は,身体の筋力維持,筋力を鍛えるためストレッチをする,という対策を示す.これらは,①身体を動かす,②ストレッチをするという2種類に及ぶ身体活動・運動の導入策を示す.
先行研究は,この2種類の対策を講じていることを明らかにしていた.①身体を動かすは,ヨガ(佐久間ら,2014),腰痛予防体操(Ike & Olawumi, 2018)の2種類,また,②ストレッチをするは,ストレッチ(鈴木・白石,2017)である.①身体を動かすは,先行研究が明らかにしていない記述が含まれていた.具体的には,「職務遂行中にラジオ体操をする」「移動時階段を利用する」である.本研究の4割近くが,多様な身体活動・運動の導入を職務遂行中だけでなく日常生活双方に取り入れていた.このことは,身体の筋力維持,筋力を鍛えるという多様な身体活動・運動の導入を,意図して取り組んでいることを示す.
以上【1】【3】は,職務遂行中のみならず日常生活にも身体を動かす・ストレッチをするといった身体の筋力維持,筋力を鍛える対策に取り組むとともに,腰痛のない看護師は多様な身体活動・運動の導入策を取り入れているという特徴を持つことを示す.
第3に着目したのは,【6.民間療法に通う】【9.保温具・全身浴により身体を温める】【16.身体のマッサージをする】である.これら3カテゴリは,身体の緊張緩和を意図した対策であった.このうち,【6】【16】は,筋肉の緊張を緩和する,【9】は,循環を促進するという対策を示す.これらは,①筋肉の緊張緩和,②循環促進という2種類に及ぶ,身体の緊張緩和という対策を示す.
先行研究は,この2種類のうち,次に示す1種類の腰痛予防対策を講じていることを明らかにしている.この1種類とは,①筋肉の緊張緩和であり,整体に通う(鈴木・白石,2017),マッサージを行う(Borges et al., 2012)である.腰痛のある看護師も腰痛のない看護師も,この対策を職務遂行中及び日常生活双方に取り入れていた.しかし,先行研究は本研究が明らかにした「定期的」に整体やマッサージに行くことは明らかにしていない.このことは,定期的に筋肉の緊張緩和に取り組むという対策を講じることにより,腰痛のない看護師は身体を良い状態に保つことを示す.一方,②循環促進は,先行研究が明らかにしていない対策である.具体的には,「湯船に浸かる」「腰を懐炉で持続的に温める」である.入浴は,鎮痛緩和や代謝促進の作用により,肩のこりや腰痛などの症状を緩和する効果があり,習慣化することが身体的・心理的な健康状態を高める(石澤,2014).このことは,生活習慣の一つである入浴が,循環促進として日常生活の中に取り入れやすい対策であるとともに,身体を温めリラックスすることにより身体的な健康状態を高める重要な対策であることを示唆する.
以上【6】【9】【16】は,定期的に筋肉の緊張緩和に取り組むという対策を講じるとともに,入浴により身体を温め身体的な健康状態を高める対策を取り入れるという特徴を持つことを示す.
第4に着目したカテゴリは,【10.休息・睡眠時間を確保する】【12.食事内容・食事量の調整により体重管理し標準体重を維持する】【14.身体に適合した寝具・マットレスを使用する】【18.規則正しい生活をする】である.これら4カテゴリは,日常生活全般における生活習慣の調整を意図した対策であった.このうち,【10】【18】は,生活リズムの調整をする,【12】は,体重管理をする,【14】は,寝具を調整する,という対策を示す.これらは,①生活リズムの調整,②体重管理,③寝具調整という3種類に及ぶ,日常生活全般における生活習慣の調整という対策を示す.
この3種類のうち,③寝具調整は,先行研究(岩下,2007)でも明らかにされている対策である.これは,看護師が睡眠確保により疲労を軽減するため寝具調整をしていることを示唆する.③寝具調整は,意図すれば就業中の仮眠や日常生活の中にも取り入れやすい対策である.また,①生活リズムの調整については先行研究(中野,2013)でも明らかにされている.しかし,本研究では,先行研究にはない「規則正しい生活をする」「早く寝る」という記述が含まれていた.24時間継続した看護が必要とされる病院で就業する看護師にとって,不規則な勤務形態を回避することは困難であり,結果,看護師はサーカディアンリズムの変調(Lowson et al., 2013)や生活リズムの確保が困難(吉岡ら,2017)な状況にならざるを得ない.これらの報告から,この対策が病院に就業する看護師にとって取り入れにくい可能性を示す.一方,②体重管理は,先行研究が明らかにしていない対策である.具体的には,「食事を食べ過ぎず体重を管理する」「3食バランスよく食べる」である.バランスの取れた食事をとることは,全身及び筋・骨格系の疲労に好ましい作用が期待される(厚労省,2013).この対策を記述した看護師は少数であったが,意図すれば日常生活の中にも取り入れやすい対策である.
以上【10】【12】【14】【18】は,休息・睡眠時間を確保し生活リズムを整える対策を講じるとともに,食事内容を意識し体重管理をすることや寝具調整により,日常生活全般に及ぶ生活習慣の調整という導入策を取り入れているという特徴を持つことを示す.
第5に着目したカテゴリは,【23.作業服は活動しやすいズボンを着用する】である.この1カテゴリは動作や姿勢を妨げない作業服の調整を意図した対策であった.作業服の調整は,先行研究が明らかにしていない対策である.具体的には,「ユニフォームは活動しやすいスラックスを着用する」である.これは,看護師が実施する看護作業内容は多岐にわたり,患者の状態や状況によって多様な動きを求められることにより運動機能性のある活動しやすい衣類を選択し着用していることを示す.
「職場における腰痛予防対策指針 改訂版」(厚生労働,2013)は,「作業服は,重量物の取り扱い動作や適切な姿勢の保持を妨げないよう,伸縮性,保湿性,吸湿性のあるものとすること」と明記している.このことは,作業服が腰痛予防に重要な対策であることを示す.また,先行研究は,看護師が就業する病院の大半が動きやすさやしゃがむ動作が気にならないなどの利便性を重視した作業服を採用しており(庄山ら,2013),看護師が着用する作業服の調整は意図すれば取り入れやすい対策であることを示唆する.
以上【23】は,動作や姿勢を妨げない,運動機能性のある活動しやすい作業服の調整策を取り入れるという特徴を持つことを示す.
第6に着目したカテゴリは,【15.腰部・背部の負担を軽減するための専門知識を学ぶ】である.この1カテゴリはボディメカニクスや移乗方法の知識を深めるという学習機会の確保を意図した対策であった.この対策,学習機会の確保は先行研究が明らかにしていない対策である.具体的には,「理学療法士に安全な移乗方法を教授してもらう」「リハビリの専門職と情報交換し効果的な移乗方法を学ぶ」である.これは,腰痛を予防するためボディメカニクスや移乗方法について知識を深めていることを示す.しかし,ボディメカニクスの活用について,「移動動作はボディメカニクスを考慮したものであるが,現実には看護師の負担が軽減され,安全で安楽な看護援助ができるものとは言えない.腰痛予防対策指針に基づき看護援助を行い,ボディメカニクスの限界も踏まえることが重要である.」(深井・前田,2016)とも示されている.このことは,ボディメカニクスの知識だけでなく,腰痛予防対策指針も併せ看護基礎教育及び看護継続教育に取り入れることが,腰痛予防として重要であることを示す.
以上【15】は,看護基礎教育で修得したボディメカニクスの基礎的知識・技術を,さらに学習機会を確保しボディメカニクスや移乗方法の知識を深めるという特徴を持つことを示す.
4. 研究の限界と今後の課題本研究は,病院に就業する腰痛のない看護師が取り組んでいる腰痛予防対策は明らかにできたが,それぞれの対策を,どの程度の期間取り組んでいるのか,どのように組み合わせて取り組んでいるのかは明らかにしていない.今後,これらを明らかにすることにより,腰痛なく看護師を継続するために必要な予防対策の更なる具体策を提案することができると考える.
1.腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策は,【1.身体を動かす活動をする】【2.腰部・背部に負担のかかる援助・診療の補助時や重量のあるものを持つ時はボディメカニクスの知識を活用する】など25種類である.
2.腰痛のない看護師が日常的に取り組んでいる腰痛予防対策は,それがどのような取り組みであるかという観点から考察した時,6つの特徴を持つ.それは,1.腰部・背部にかかる負担の軽減,2.身体活動・運動の導入,3.筋肉の緊張緩和と循環促進,4.生活習慣の調整,5.作業服の調整,6.学習機会の確保である.
3.本研究の成果は,腰痛なく看護師として就業を継続するための腰痛予防対策として活用可能である.また,腰痛のない状態を維持し自律した専門職として働き続けることに有用である.
付記:本研究は令和3年度新潟県立看護大学大学院修士課程修士論文の一部に加筆・修正をしたものである.また,本論文の一部は,第42回日本看護科学学会学術集会において発表した.
謝辞:本研究の実施にあたり,調査にご協力いただきました皆様に心より感謝を申し上げます.また,本研究の方向性をお示しいただいた清泉女学院大学大学院看護研究科研究科長舟島なをみ教授に深く感謝申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:YYは,研究の着想・計画,データ収集・分析,結果,考察,論文作成まで,研究全体に貢献した.NOは,計画,データ分析,結果,考察,論文作成に関する研究プロセス全体の助言を行った.著者全員が最終原稿を読み,承認した.