Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Verification of Reliability and Validity in Developing the Japanese Version of the Nursing Profession Self-Efficacy Scale (NPSS)
Yoko TakeuchiMayumi KatoKoji TanakaRyuji IchinoyamaHiroshi Takatsuji
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2024 Volume 44 Pages 153-163

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Abstract

目的:日本語版・看護師の自己効力感尺度(Nursing Profession Self-Efficacy Scale: NPSS)の作成における信頼性と妥当性の検証をする.

方法:翻訳尺度作成はInternational Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Researchタスクフォース翻訳尺度ガイドラインに準拠した.原版はCaruso et al.(2016)による尺度を用いた.対象者は総合病院の看護師で,無記名自記式調査票による郵送法を行った.

結果:内的整合性Cronbach’s α = .925,Item–Total相関係数r = .413 ~ .734,再検査法r > .812,KMO測度値 .94であった.モデル適合度はCFI = .865,RMSEA = .069であった.

結論:本尺度は信頼性と妥当性があると示唆された.

Translated Abstract

Purpose: To verify reliability and validity in developing the Japanese version of the nursing profession self-efficacy scale (NPSS).

Method: The translation scale was developed in accordance with the translation scale guidelines by the International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research task force. The scale by Caruso et al. (2016) was used as an original version. The subjects were nurses working in general hospitals. An anonymous self-administered questionnaire was sent to them by mail.

Results: Internal consistency with Cronbach’s α = was .925, item-total correlation coefficient r = .413 – .734, retest method r > .812, and KMO measure .94. Model fit included CFI = .865 and RMSEA = .069.

Conclusion: Results suggested that this scale is reliable and valid.

Ⅰ. 緒言

自己効力感(self-efficacy)とは,Bandura(1977, 1994)によると,自己が課題をうまく遂行できるとした信念のことであり,考え方や思考および行動に影響するとされている.また,自己効力感が高い人は,目標を高く設定し,それをやり遂げようと努力し,そこで挫折が生じても,自己効力感が低い人に比べ,より早くモチベーションを回復させ,目標へのコミットメントを維持するとされる(Bandura, 1986, 1997).それゆえ,看護師における様々なパフォーマンスの向上には重要な要素であるといえる.

自己効力感に関する看護師の調査には,COVID-19の感染拡大による緊急事態の状況下,看護師の64%に急性ストレス障害が認められたという中で,自己効力感の高さが急性ストレス障害に対する保護要因であったと報告されている(Shahrour & Dardas, 2020).それに伴い,看護師のバーンアウトにおいては,自己効力感が最も重要な保護因子であると共に,重要な予測因子であるとされている(Yao et al., 2018).また,自己効力感が高いほどストレスは低く,回復力が高くなることの関連性が示され(Peñacoba et al., 2021),自己効力感の高さが不安を軽減し,抑うつなどのメンタルヘルス問題を軽減することが明らかとなっている(Hu et al., 2020Azemi et al., 2022).これらの報告から,有事の際を始め,看護師の離職防止や,メンタルヘルスの問題に対して,自己効力感の評価への関心や,測定するニーズが高まっていることが伺われる.

一方,看護師の自己効力感に関する研究は,指標として一般的な自己効力感尺度(成田ら,1995坂野・東條,1986三好,2003)等が主に用いられている(小谷野,1999境・冨樫,2017平ら,2015Takeuchi et al., 2020Yada et al., 2022).しかしながら,一般的な自己効力感尺度には,専門的な看護の内容が含まれておらず,看護師の専門職としての自己効力感については,的確に測定できていないという課題がみられる.すなわち,既存の研究では,その人自身の自己効力感の程度は評価できているが,専門的な看護師のケアに対しての自己効力感は測定できていないのである.

そのような課題に着目し,看護師の専門的なケアに対する自己効力感の指標として開発された尺度には,Dellafiore et al.(2021)による高齢者の栄養ケアを評価するための看護師の自己効力感尺度や,平ら(2015)による手術室看護師の特性的自己効力感を測る領域固有の尺度および,Yada et al.(2022)による精神科看護師の自己効力感尺度,等がみられた.しかし,Dellafiore et al.(2021)や,平ら(2015)による尺度は,領域特有の専門性に対する自己効力感の指標であり,その領域に関しては的確に測定できる尺度ではあるが,看護師の全体的な専門性に関する内容を測定するものではなかった.また,Yada et al.(2022)による尺度は精神科看護師に特化した尺度であった.看護師が定期的に配置転換している部署が多い現状を鑑みると,限られた領域のみを測定するのではなく,全ての領域における看護師の専門性を含めた自己効力感の高さを測定できる指標が必要である.

そのような広範で包括的な内容を測定可能とする尺度には,Caruso et al.(2016)によるNursing Profession Self-Efficacy Scale: NPSS尺度の開発がみられた.この尺度は看護師の専門的な内容として,個々の背景を踏まえた個別的なケアや,患者の自己決定の尊重,守秘義務の徹底,および新たな知識習得への自己研鑽等が含まれ,専門的な看護師のケアについて測定が可能であった.しかし,Nursing Profession Self-Efficacy Scale: NPSS尺度の日本語版は開発されておらず,現在,日本の看護師の専門的な自己効力感を測定することは不可能なままである.そのため,本研究の目的は,日本語版・看護師の自己効力感尺度(Nursing Profession Self-Efficacy Scale: NPSS)の作成における信頼性と妥当性の検証を行なうこととする.原版は,Caruso et al.(2016)による信頼性と妥当性を有した19項目の尺度を用いる.この日本語版作成により,日本の看護師における専門的な自己効力感を的確に測定できることが可能となる.また,尺度項目は,看護師各自における専門職としての自己効力感の指標となり,客観的に自身の専門職としての自己効力感を測ることができるという意義がみられる.加えて,本研究の尺度で日本の看護師の自己効力感について調査が可能となることにより,看護師の自己効力感に関する研究成果を国内および国際的に共有することが可能となる.国際比較を通じて,異なる国や地域での成果を共有することは,自国の現状を客観的に把握し,改善するための示唆を得ることに繋がり,今後,日本の看護師の自己効力感の向上に繋がる可能性が考えられる.看護の専門性を高めることは,ケアを受ける患者の有益に反映する可能性を本研究の意義とする.

Ⅱ. 研究方法

1. 日本語版翻訳尺度作成

本研究はInternational Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research(ISPOR)タスクフォースによる翻訳尺度ガイドライン(Wild et al., 2005)に準拠し,日本語版翻訳尺度を作成した.原版はCaruso et al.(2016)によるNursing Profession Self-Efficacy Scale(NPSS)である.この尺度は19項目で構成されており,信頼性と妥当性が検証された尺度である.内的整合性はCronbach’s α = .88であり,モデル適合度はCFI = .90,RMSEA = .059である.

1) 翻訳尺度ガイドラインにおける手順(Wild et al., 2005稲田,2015

(1) 原著者に日本語翻訳の許諾を得る

原著者に日本語翻訳版を作成する許諾を得たのちに,当該尺度の概念や項目内容に関する誤解や曖昧さをなくすためにメールでやり取りをして,尺度に対する理解を十分に深めた.

(2) 翻訳原版の言語から日本語への翻訳を行う

Caruso et al.(2016)による原版は,イタリア語版が開発されたのち,英語版が発表されたため,伊英の双方を翻訳した.イタリア語版の翻訳者は,第1翻訳者,第2翻訳者共に日伊の翻訳家とした.英語版の第1翻訳者は英語に精通している看護系専門領域の大学教員とし,第2翻訳者は日英の翻訳家とした.またガイドラインに従い,イタリア語・英語の翻訳は共に母語が日本語である者とした.なお,イタリア語版の翻訳はイタリア在住7年目の日本人であり,英語版の翻訳は,第1・第2翻訳者は共に日本在住であった.各第1・第2翻訳者は独立して翻訳しており,プロジェクト責任者は,翻訳者に尺度が開発された背景や構成概念などを事前に説明し,共通理解を得るよう努めた.翻訳の際は,原版の意味を損なうことなく,日本語として自然であり,回答者が容易に理解できる表現を使うように十分に配慮した.また,原版の文化特有の表現や固有名詞が出てきた場合は,原著者とメールにて協議のうえ日本文化や,日本の看護師の状況に即したものにした.

(3) 調整

第1・第2翻訳版を比較・統合し,翻訳が妥当であるかの確認を,看護系大学教員および看護師で構成された12名により行い,原案を作成した.その後,プロジェクト責任者と翻訳者間で議論を行い調整した.

(4) バックトランスレーション

翻訳版を再度,イタリア語と英語に逆翻訳し,翻訳の表現が原版と等価な概念・意味を持つ尺度であるかを原著者R. CarusoおよびM. Ariannaにメールで確認した.

(5) バックトランスレーションのレビュー

原著者R. Carusoらによって,イタリア語と英語でのバックトランスレーション内容を,原版と比較してもらい,双方が等価であるかどうかを確認してもらった.それにより乖離がないことが認められた.

(6) 調和

原版として存在する伊版・英版と,本尺度の日本語版を合わせ,複数の異なる言語間で生じうる翻訳の問題を修正するため,原著者R. Carusoらに,複数の逆翻訳版と原版をそれぞれ比較し,項目表現が等価であるかどうかの検討を依頼した.その際,韓国版がある可能性を伝えられたが,論文として公表されていなかったため除外された.

(7) 認知デブリーフィング

尺度を使用する看護師にとって,わかりにくい項目がないかを,看護師8名(女性5名,男性3名)に,実際に翻訳尺度に回答してもらい,項目の内容や概念の理解の確認をした.

(8) 認知デブリーフィング結果のレビューと翻訳終了

プロジェクト責任者が,認知デブリーフィングの結果を総合して,項目の日本語表現の修正がないことを確認した.

(9) 校正

プロジェクト責任者は,日本語版を最終的に見直し,誤字脱字,文法的な間違いなどを修正した.

(10) 最終報告

プロジェクト責任者により,尺度翻訳のプロセスをまとめた.今回の翻訳作業において,表現が違うのは,13項目:Refuse to participate in treatment if is contrary to professional valuesであった.始めは翻訳者により,「専門家としての価値に反する場合,治療に携わることを断る」という文言となったが,日本の看護師が治療に携わることを断ることは,保健師助産師看護師法のもとや,文化的背景の違いから想定が難しいため,原著者らと文化的背景を確認し,原文の意味あいを加味して,「専門家としての価値観に反する場合,その治療において,違うと言う姿勢や意見を示している」という文言にすることとした.

2. 調査方法

調査は無記名自記式調査票を用い,郵送法にて行った.対象者には,病院の看護部長に研究の主旨及び目的,方法,倫理的配慮等を文書にて説明し,協力には書面による同意を得たうえで,配布部数を確認した.研究参加者となる看護師個人宛ての依頼文にも,最終的に看護師各自の自由意思に基づき調査への諾否を選択できることを明記し,郵送での調査票の回収をもって同意が得られたこととした.調査期間は2021年12月~2022年3月であった.

3. 対象者の選定

対象数の設定はCOnsensus-based Standards for the selection of health Measurement INstruments(COSMIN)の基準(Terwee et al., 2012Mokkink et al., 2018)に沿って,項目数 × 7かつ100名以上とした基準を満たすこと,および原版は917人を対象としている(Caruso et al., 2016)ことから,同程度の約900人を目標数とした.

対象者は200床以上の総合病院として,機縁法により,予備調査では1か所,本調査では8か所の協力依頼に同意が得られた病院の看護師とした.看護師の選定基準は,日本における看護師資格を有し,臨床で看護師として勤務している者とした.なお,所属はすべての病棟や外来を対象とした.また,保健師,助産師の資格を有していても,看護体制における人員配置として,看護師として配置されている者とした.除外基準は,看護部長,看護副部長(看護師全体の管理職として病棟等に属さない者)および,日本語が母国語ではない者とした.

4. 調査内容

1) 基本属性

年齢,性別,看護師経験年数,役職,専門的資格の有無,最終教育課程,診療の科を調べた.

2) 日本語版・看護師の自己効力感尺度

Caruso et al.(2016)による原版を日本語翻訳した本尺度は,原版通り19項目で構成している.評価は5段階のリッカート・スケール「全くできない(1点),あまりよくできない(2点),普通にできる(3点),とてもよくできる(4点),非常にできる(5点)」で回答し,得点が高いほど,看護師の専門職としての自己効力感が高いと判定する.

3) 特性的自己効力感尺度(成田ら,1995

成田らの特性的自己効力感尺度は,基準関連妥当性の検証のために用いた.この尺度は,Sherer et al.(1982)のThe self-efficacy scale日本語版であり,23項目から成る質問紙である.Cronbach’s α係数は .88であり,信頼性,妥当性が検証されている.評価は5段階のリッカート・スケール「そう思わない(1点),あまりそう思わない(2点),どちらともいえない(3点),まあそう思う(4点),そう思う(5点)」で回答し,逆転項目は点数を反転させ集計し,得点が高いほど自己効力感が高いと判定する.

5. 分析方法

1) 項目に関する検討

(1) 項目分析

記述統計量を算出し,各項目の得点の偏りを天井効果(平均+標準偏差)>5,フロア効果(平均-標準偏差)<1にて確認した.

項目間の関連の検討として,項目間相関分析(Streiner et al., 2015/2016小笠原・松木,2007)にて正の相関を確認し,類似項目の基準は,先行研究(牧野ら,2020)を参考に,.80で検討した.

(2) Good–Poor分析

Good-Poor分析は全体合計点上位25%と下位25%の群に分け,有意差を確認した.

2) 信頼性の検討

(1) Item–Total相関分析

尺度項目間の内的一貫性の信頼性としてItem–Total相関を確認し,項目の削除を検討する基準(小笠原・松木,2007)は .40とした.

(2) 安定性の検討

尺度の安定性の検討(Polit-O’Hara et al., 2004/2010)として,再現性には再検査法を用い,調査票を2回測定した.Terwee et al.(2012)の再検査信頼性に基づき50名以上の調査対象者とした.調査票1回目から1~2週間後に2回目を記載してもらった.再現性の信頼は,再検査信頼性係数として,2回の尺度得点間の相関係数(石井,2013)により安定性を確認した.また,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficients: ICC)の算出により,検者内信頼性としてICC(1, 1)(1, 2).70を基準(対馬,2016)に検討した.

(3) 内的整合性の検討

内的整合性はCronbach α係数の算出をし,α > .70を基準(対馬,2016小田,2013)に判定した.

3) 妥当性の検討

(1) モデル妥当性の検討

日本語版・看護師の自己効力感尺度が,原版と同様の2因子構造にした場合の適合度を検討するために,確証的因子分析を行った.Comparative Fit Index: CFI, Normed Fit Index: NFI, Relative Fit Index: RFI, Tucker-Lewis Index: TLI, の各指標は1に近いことを基準(豊田,2007星野ら,2005)とした.Root Mean Square Error of Approximation: RMSEAは .05以下で当てはまりが良い(豊田,2007)とされ,.1以上であれば当てはまりが悪い(小塩,2014)とされているため,.08までが良好とする基準(小田,2013)で評価した.

因子分析の標本妥当性の検討には,Kaiser-Meyer-Olkin値(KMO値)を算出した.妥当性基準は,Kaiser & Rise(1974)を参考に,相関係数の基準値は .50未満(不十分),.50~.70(中程度),.70~.80(良い),.80~.90(非常に良い),.90(極めて優れている)として,本研究では .70以上とした.

(2) 基準関連妥当性の検討

基準関連妥当性は,.40~.80を基準(Streiner et al., 2015/2016)に,日本語版・看護師の自己効力感尺度の19項目の合計得点と,特性的自己効力感尺度(成田ら,1995)23項目の合計得点との正の相関を予測して確認した.

解析にはIBM SPSS Statistics ver. 28, Amos28を使用した.

6. 倫理的配慮

本研究は金城大学倫理審査委員会の審査を受け,承認を得たうえで横断調査を実施した(承認番号202017).協力病院の看護部長および研究対象者に,研究の主旨,目的,方法,倫理的配慮,および調査票の回答は自由意思である任意性,同意をしなくても不利益が生じない保証,学会発表と学会誌への投稿すること,確認欄および連絡先を明記し,協力に同意が得られた場合に返送を依頼した.また,対象者は調査票の郵便投函をもって本研究協力への同意とし,郵送後は個人が特定不可能であるため投函後の辞退はできないことを記載した.

Ⅲ. 結果

1. 予備調査

総合病院1か所の看護師200名に調査を行った.200部を配布した結果,回収98部,回収率49.0%であった.内的整合性はCronbach α係数が .891が確認され,尺度の天井効果・フロア効果はなく,Item–Total相関はr = .361~.702であった.また,基準関連妥当性は,r = .412(p < .01)で,妥当性は充分であったが,再検査法は,相関係数がr > .494(p < 0.01)であったため,充分な安定性が確認できるよう各項目の文言の見直しを行い,翻訳手順の(4)バックトランスレーション以降を繰り返し,最終的に修正された日本語版・看護師の自己効力感尺度の原案が完成された.

2. 本調査

総合病院8か所において,看護部長から配布協力に同意が得られた部数で調査を行った.1,710部を配布した結果,回収948部,回収率55.4%,有効回答939部,有効回答率54.9%であった.なお,有効回答は日本語版・看護師の自己効力感尺度(Nursing Profession Self-Efficacy Scale: NPSS)に欠損がないものとした.予備調査での参加者は原案の完成前のものであり,含まれていない.

1) 基本属性(表1

年齢は平均41.6 ± 11.3歳であり,性別は女性897名(95.2%),男性44名(4.7%)であった.臨床経験年数は,平均18.3 ± 11.4年であり,所属部署は,内科系251名(26.0%),外科系394名(41.9%)等であった.

表1 回答者の基本属性

n = 939

項目 内訳 n(%)
性別 男性 44(4.7)
女性 897(95.3)
年齢(歳) 平均±標準偏差 41.6 ± 11.3
20歳代 187(19.8)
30歳代 223(23.7)
40歳代 262(27.9)
50歳代 217(22.9)
60歳代 50(5.7)
臨床経験年数(年) 平均±標準偏差 18.3 ± 11.4
1~5年未満 124(13.2)
5~10年未満 172(18.3)
10~15年未満 104(10.9)
15~20年未満 102(10.8)
20~25年未満 122(12.9)
25~30年未満 130(13.9)
30~35年未満 97(10.5)
35~40年未満 62(6.7)
40年以上 26(2.8)
所属部署 内科系 251(26.6)
外科系 394(41.9)
その他 294(31.5)
職位 師長 58(6.2)
副師長および主任 140(14.9)
リーダー 112(11.9)
スタッフ 629(67.0)
認定や専門資格 138(14.7)
801(85.3)
雇用形態 正規職員 882(93.8)
非正規職員 57(6.2)
最終教育課程 大学院 17(1.8)
大学 198(21.1)
短大 45(4.8)
専門学校 665(70.7)
その他 14(1.6)

2) 項目に関する検討

(1) 項目分析

各項目の得点を天井・フロア効果にて確認した結果,天井・フロア効果を認めた項目はなく,得点の偏りのないことを確認した.また,項目間相関分析の結果は,r = .151~.711(p < .01)であった.尺度19項目よる171の項目間相関(190項目間から1.0となる19項目間を引いた項目間)において,0 ≦ r ≦ .2の値が11項目間でみられ,.2 ≦ r ≦ .4の値は77項目間,.4 ≦ r ≦ .7の値は82項目間,.7 ≦ r ≦ 1.0の値は1項目間にみられた.そのうち,0 ≦ r ≦ .2の値の11項目間は,尺度項目14「看護研究に参加している(参加したことがある)」に限定しており,対尺度項目は1.2.3.5.6.7.8.9.10.12.15であった.一方,尺度項目14の対尺度項目4.11.13.14.16.17.18.19では,.2 ≦ r ≦ .4の値が確認された.また,.7 ≦ r ≦ 1.0の値の1項目間は,尺度項目8と対尺度項目15で,r = .711であった.

(2) Good–Poor分析

尺度全体の合計点上位25%と下位25%の群に分け,因子分析結果による19項目の各得点をMann–Whitney U検定によって比較したところ,19項目すべてで得点の上位群と下位群に有意差(p < .001)を両側で認めた.

3) 信頼性の検討

(1) Item–Total相関分析(表2

因子分析結果による19項目の合計点と各項目との相関係数はr = .418~.734と正の相関であった(p < .001).

表2 因子分析と信頼性係数

n = 939

因子番号 項目と内容 得点 因子負荷量 共通性 I-T相関 項目が削除された場合のCronbach α ICC
19項目尺度全体 Cronbach’s α係数 .925 平均値 標準偏差 最小 最大 因子1 因子2
因子1 専門的状況  Cronbach’s α係数 .868
8 専門家として守秘義務を尊重し徹底している 3.924 .834 1 5 .908 –.260 .392 .608** .915 .797
15 個人情報の取り扱いにおいて,患者のプライバシー保護の権利と守秘義務を保護している 3.934 .841 2 5 .899 –.214 .456 .641** .914 .886
3 人々の健康と社会の安全性を守るようにしている 3.479 .699 1 5 .728 .380 .571 .704** .912 .804
12 患者の法的権利および道徳的権利を保護している 3.449 .730 1 5 .671 .920 .541 .706** .912 .834
5 公平性の原理に基づいて,差別や偏見のない個別的な医療を提供している 3.458 .715 1 5 .647 .132 .559 .711** .912 .743
10 特定の状況や問題を判断するうえで,同僚のサポートを活用している 3.527 .708 2 5 .473 .150 .457 .597** .915 .769
1 患者とその自律性(選択の自由や自己決定の原則)を尊重している 3.253 .661 1 5 .463 .203 .407 .633** .914 .782
因子2 ケア状況の属性  Cronbach’s α係数 .891
11 専門的な実践に研究結果(知見)を活かしている 2.763 .742 1 5 –.149 .789 .549 .625** .914 .547
16 自己の実践において,ベストなケア水準を保つために,看護協会や組織の学会および研修企画に協力や参加している 2.865 .905 1 5 –.154 .718 .424 .573** .917 .805
13 専門家としての価値観に反する場合,その治療において,違うと言う姿勢や意見を示している 3.009 .736 1 5 .230 .669 .349 .666** .913 .697
19 倫理的・道徳的なジレンマや,日常のワーキングライフの問題を認識していて,対処しながら専門的な実践を行っている 3.084 .659 1 5 .113 .658 .474 .722** .912 .817
7 看護実践に関連する倫理的ジレンマに対して,相談を積極的に行っている 2.973 .772 1 5 .119 .547 .549 .640** .914 .739
6 自分が働いている施設で,不十分な点と非効率性があれば,それを補っている 2.932 .689 1 5 .175 .539 .470 .674** .913 .755
18 専門的な実践において,自分がもっている資源(能力やスキル,教育,資料,時間,等)を正しく使用している 3.261 .654 1 5 .234 .536 .157 .717** .912 .796
14 看護研究に参加している(参加したことがある) 3.044 1.109 1 5 –.152 .492 .575 .418** .925 .927
17 同僚の(患者に対する)虐待や,非倫理的な行動があった場合,適切な部署に報告している 3.196 .832 1 5 .113 .482 .379 .602** .915 .793
2 科学的に検証された最新の知識に基づいて仕事をしている 3.003 .669 1 5 .290 .435 .324 .682** .913 .786
9 看護記録の質(正確性/完全性)の見直しや検討をしている 3.122 .748 1 5 .298 .402 .523 .671** .913 .791
4 どのような状況(急変時や予期しない状況等)になっても,専門的な基準に沿って医療を提供している 3.278 .698 1 5 .393 .399 .553 .734** .912 .658
因子1 因子2
因子間相関 第1因子 .691**
第2因子 .691**

注1)因子抽出法:アルファ因子法 3回の反復で回転が収束,回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法

注2)ICC: Intraclass Correlation Coefficients(1, 2)のみ,n = 50

**.相関係数は1%水準で有意(両側)

(2) 安定性の検討

再検査法による安定性の検討として,1回目と2回目の尺度得点間の相関係数は,全体でr = .850であった.因子の項目順として,r = .644, .672, .679, .490, .624, .617, .584, .657, .655, .619, .398, .710, .539, .868, .793, .669, .669, .659, .703(p < .001)であった.また,級内相関係数は,ICC(1, 1).843(95%信頼区間:.738~.909),ICC(1, 2).915(95%信頼区間 .849~.952)であった.各項目のICC(1, 2)は表2に示す通りであった.

(3) 内的整合性の検討(表2

本尺度19項目におけるCronbach’s α係数は,尺度全体でα = .925,各因子ではα = .912~.925(p < .001)であり,十分な内的整合性をもつことを確認した.

4) 妥当性の検討

(1) モデル妥当性の検討

日本語版・看護師の自己効力感尺度が,原版と同様の2因子19項目構造となるか確証的因子分析を行った.因子数は原版と同様に2因子を指定し,共通性は .40以上,因子負荷量は .30以上とした.分析法の選択は,19項目合計分布の正規性をShapiro-Wilk検定で判定した結果をもとに,因子の信頼性を最大化し,母集団まで結果を拡張し一般化することを目的とする分析法として,アルファ因子分析法,Kaiserの正規化を伴うプロマックス回転法を用いた.確証的因子分析の結果は,図1の通りであった(図1).

図1  日本語版・看護師の自己効力感尺度(Nursing Profession Self-Efficacy Scale: NPSS)の確証的因子分析結果

モデル適合度は,χ2 = 1286.133(df = 151, p < .000),CFI = .865,NFI = .866,RFI = .812,TLI = .830,RMSEA = .069であった.因子間の標準化推定値は .80,因子と項目間の標準化推定値は .33~.76であった.

因子分析の標本妥当性の検討にKMO値を算出した結果,測度値は .944であり,妥当性基準の .700を上回っていた.

また,原版では最尤法を用いたことから最尤法も試みた.最尤法による結果も,原版と同様に2因子19項目であったが,尺度全体19項目のCronbach’s α係数は .728であり,因子1(項目:19,6,11,7,18,2,4,13,9,16,5,1,17,3,10,14)は,因子負荷量が .776~.312であり,Cronbach’s α係数は .906であった.因子2(項目:15,8,12)は,因子負荷量が .987~.517であり,Cronbach’s α係数は .842であった.標本妥当性のKMO値は .500であり,因子間相関は .604であった.最尤法による2因子19項目でのモデル適合度は,Amos28では不適解であった.

(2) 基準関連妥当性の検討

日本語版・看護師の自己効力感尺度の19項目の合計点と,特性的自己効力感尺度(成田ら,1995)23項目の合計点との相関は,r = .401の有意な正の相関を認めた(p < .01).

Ⅳ. 考察

1. 対象の概要

厚生労働省(2022)が示す,看護師の年齢構成割合と比較して,本研究の対象は,ほぼ同程度の割合が確認され,日本全体の母集分布と同じような分布であるといえる.また,臨床経験年数は,ほぼ均等であり尺度の検証において妥当な割合である.所属部署,職位,認定や専門資格の有無,最終学歴においても日本の看護師の自己効力感を検証する上で,不足はないと判断した.また,原版(Caruso et al., 2016)との比較では,被験者数の看護師が917名に対し,本尺度は939名であり,平均年齢や臨床経験年数等,類似した属性が確認された.

2. 項目に関する検討

項目分析により,得点に偏りのないことを確認した.また,項目間相関分析では,解釈の目安(坂下ら,2018)として0 ≦ r ≦ .2:ほとんど相関関係はない,.2 ≦ r ≦ .4:弱い相関関係がある,.4 ≦ r ≦ .7:中程度の相関関係がある,.7 ≦ r ≦ 1.0:強い相関関係がある,でみると,本尺度は171項目間において,弱い相関関係が77項目間,中程度の相関関係が82項目間,強い相関関係が1項目間とした160項目間で正の関連性が認められた.ほとんど相関関係はないとする値が尺度項目14に限定し11項目間にみられたが,11項目間以外の8項目間で弱い相関関係の値が確認されており,負の関連性も認められないことから,概ね正の関連性とみなした.また,類似項目の基準は .80であり,類似した質問項目がないことが確認された.Good–Poor分析では,項目得点における有意差が認められており,本尺度が合計得点による測定が可能および,高低を評価することが可能な尺度であることが確認された.

3. 信頼性の検討

信頼性の検討では,Item–Total相関による結果から,本尺度の19項目における項目間の一貫性が確認されると共に,削除される項目はなかった.また再検査法による2回の得点の相関から安定性が確認され,級内相関係数ICCの結果からも検者内における信頼性が確認された.これにより,再現性は十分であると判断した.加えてCronbach’s α係数が尺度全体で .925であり,内的整合性が確認された.本尺度は信頼性において十分な尺度であると判断した.

4. 妥当性の検討

1) モデル妥当性

モデル適合度の評価に多く用いられている(星野ら,2005)CFI,NFI,RFI,TLIの指標により検討したところ,各指標は,CFI = .865,NFI = .866,RFI = .812,TLI = .830であり,1に近いという基準からモデル適合度は妥当であると判断した.RMSEA = .069は,.05の基準に近似であり(豊田,2007),.08までが良好(小田,2013)であることから,モデル適合度は総合的に妥当であると判断した.また,因子分析の標本妥当性の検討ではKMO値が .94であることから,標本の妥当性は極めて優れていると判定できた.

また,最尤法の結果と比較して,アルファ因子分析法による2因子19項目の因子構造の方が,適合度が良好なモデルであるとした.

2) 基準関連妥当性

基準関連妥当性は,本尺度の合計点と特性的自己効力感尺度(成田ら,1995)の合計点に有意な正の相関が認められたことから,妥当性が確認された.

5. 日本語版尺度の有用性

本尺度の有用性としては,日本の看護師における専門的な自己効力感を測定することが可能である.研究に活用することにより,日本の看護師の自己効力感についての調査が可能となる.また,国内および国際的にも看護師の自己効力感に関する研究成果を共有することができる.加えて,看護師自身が客観的に自身の専門的な自己効力感を評価し,付録1に示す項目により,自己の特性を把握することが可能である.自己分析は,表2に示される日本の看護師における平均値と比較することも可能である.これにより,専門的な自己効力感を更に高めたいと考える看護師にとって,具体的な内容が示されていると言える.

6. 日本語版の使用における留意点

原版の2因子19項目に対して確証的因子分析を行った結果,原版と同様に2因子19項目となったが,2因子における下位項目に違いがあった.そのため,原版による測定値と比較する際は,合計点においては可能であるが,2因子の下位尺度では留意が必要である.

本尺度は,原著者R. Carusoらと,日本語翻訳尺度作成時から確証的因子分析等の結果までディスカッションを繰り返し,日本語版としての承認と支持を得ている.合計得点では国際比較においても使用が可能であり,日本語版で測定したデータ同士であれば,下位尺度までの比較も可能である.ただし,国際誌に投稿する際は,原版との違いを明記する必要がある.項目においては,原版と表現が違う,13項目:Refuse to participate in treatment if is contrary to professional valuesは,原文の意味あいを加味して,「専門家としての価値観に反する場合,その治療において,違うと言う姿勢や意見を示している」という文言としているが,原著者により双方が等価であることが認められていることを含め,日本語版として内容的妥当性は担保されている.ただし,これも国際比較の際には違いの明記が必要である.

2因子の命名は,原版では【専門的状況】【ケア状況の属性】とされており,本尺度も同様に命名した.下位項目が原版と相違がみられる本尺度において,同様に命名した理由は,成田ら(1995)が述べる「原版は探索的因子分析の結果,事後的に因子名を命名しており,必ずしも2因子構造について理論的根拠があるわけでない」という事象と概念に基づいている.

翻訳尺度においては,原版との因子数と下位項目が完全一致する難しさが,既存の日本語版の確証的因子分析結果(浅野・吉田,2014井狩・安東,2022佐藤ら,2015,他)に示されている.翻訳尺度を使用する際には,原版との違いを理解して活用することが求められる.

本尺度の日本語版と原版との下位項目を比較すると,同項目は,因子1で項目8,15,3,12,5,1であり,因子2では項目11,16,13,14,17,2である.相違項目として,日本語版の因子1の項目10は,原版では因子2に含まれており,因子2の項目19,7,6,18,9,4は原版では因子1に含まれている.この解釈は簡単ではないが,World Health Organization:WHO(2020)が示す世界の看護において,教育的背景や専門性,所得や労働の待遇などの違いが示されているが,それらが因子構造の差異に影響している可能性が考えられる.また,既存の日本語版尺度においては,モデル適合度を高めるために項目の削除(梶原・森本,2021大津ら,2010)が行なわれる中,本尺度では,原版の2因子19項目における項目の削除は行なっておらず,Cronbach’s α係数は原版を上回る .925であり,モデル適合度はどれも基準を満たしている.日本語版としての本尺度の有用性が示唆された.

Ⅴ. 研究の限界と今後の課題

同意の得られた施設の病棟毎に全数配布を依頼したが,回答は任意であり,看護師の自己効力感に関心が高い回答者のデータであることは否めない.

今後は本尺度を活用し,日本における看護師の専門的な自己効力感に関する研究を進めていくことが課題である.

Ⅵ. 結論

日本語版・看護師の自己効力感尺度(Nursing Profession Self-Efficacy Scale: NPSS)の作成と,その信頼性,妥当性の検証を行った.結果,原版同様に2因子19項目で構成されたが,因子の下位項目に違いが見られた.本尺度は,項目分析,項目間内的一貫性における信頼性,再現性による安定性および検者内の信頼性,内的整合性,確証的因子分析におけるモデル適合度の妥当性,基準関連妥当性が確認された.看護師のプロフェッショナリズムが反映された本尺度により,日本の看護師における専門的な自己効力感の測定が期待される.

付記:本研究は第42回日本看護科学学会学術集会で発表した内容に加筆,修正をしたものである.

謝辞:本研究の調査に参加してくださいました看護師の皆様方,およびご協力頂きました総合病院看護部の皆様方,関係者の皆様へ深く感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:竹内陽子は研究の着想およびデザイン,研究データの収集,分析・解釈,論文出筆の全研究プロセスに貢献した.加藤真由美と田中浩二は,研究プロセス全体への助言および原稿への示唆に貢献した.一ノ山隆司は,研究データの取得に貢献し,出版前の原稿に最終的な承認を与えた.高辻博志は,研究の着想およびデザイン,重要な知見となる部分を起草した.すべての著者は最終原稿を読み,承諾した.

文献
 
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