Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Support for Teachers Who Provide Medical Care in Special Needs Schools by Nurses Responsible for Practical Training
Fumie ShimizuHitomi Katsuda
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2024 Volume 44 Pages 249-262

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Abstract

目的:特別支援学校教員による医療的ケアの適切な実施に向け,実地研修を担う学校看護師による教員への支援を明らかにする.

方法:学校看護師456名を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,各質問項目の単純集計,自由記述の回答は質的内容分析を行った.また,学校看護師15名に教員への支援について半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.

結果:学校看護師は,子どもの安全と安心と安楽を守りながら,教員への医療的ケアに関する知識や技術の伝達,教員の医療的ケア実施への意欲や安心感を醸成し,医療的ケアを実施できるよう教員を支援する意義を見出し,教員を主体として互いに学びあうという支援をしていることが明らかとなった.

結論:学校看護師が教員を支援するうえで,学校看護師と教員がともに経験から学び合い,学校看護師が教員を理解し信頼し,教員を支援する意義を見出すことの重要性が示唆された.

Translated Abstract

Aim: The purpose of this study is to explore practical training nurses’ support for teachers to provide medical care safely to technology-dependent (TD) children attending special needs schools.

Methods: Self-report questionnaires asking about support for teachers were provided to 456 nurses working at special needs schools. The results were analyzed using simple tabulation of each question and by using qualitative content analysis of free descriptions. Semistructured interviews with 15 nurses working alongside TD children in special needs schools were also conducted. These data were analyzed qualitatively and inductively.

Results: Nurses’ primary objective was to provide safety, security, and comfort of TD children. Nurses have built relationships with teachers and they knew and understood teacher mentality. They have realized the need to support teachers in providing medical care, and entrusted them to play center. Nurses and teachers have learned from each other’s experiences in taking care of TD children.

Conclusions: These findings suggest that it is important for nurses to cultivate a learner’s attitude from their experiences to build relationships with teachers and trust them, and to realize the implications of supporting teachers in providing medical care.

Ⅰ. 背景

日常生活において医療的ケアを必要とする医療的ケア児は増加し,2022年には,特別支援学校に8,361人の医療的ケア児が在籍している(文部科学省,2023).学校生活において,医療的ケアのため雇用された看護師(以下,学校看護師)や認定特定行為業務従事者として登録された教職員が,彼らへの医療的ケアを実施している.2022年の時点で,全国の特別支援学校に,学校看護師2,913人,認定特定行為業務従事者4,256人が勤務している(文部科学省,2023).教職員は,基礎研修と実地研修からなる第3号研修の修了を経て,認定特定行為業務従事者となることができる.2019年2月に文部科学省の「学校における医療的ケアの実施に関する検討会議」の「最終まとめ」が出され,学校看護師の役割の1つに「認定特定行為業務従事者である教職員への指導・助言」が挙がっている.そのように,学校看護師は,教員が医療的ケアを安全に実施できるように,教員に医療的ケアを指導することが求められているが,具体的な方法や内容は示されていない.

特別支援学校の教員は,医療的ケアの実施に負担や不安を感じ(濵田・全,2021),教員が学校看護師に医療的ケアを依存する傾向にあることが指摘されている(宮本ら,2009日本小児看護学会,2008).医療的ケア児の保護者も,特別支援学校の教員の医療的ケア実施に対する消極的な傾向や(盛岡・松浦,2017鈴木・中垣,2016),教員の医療的ケアに関する負担が大きいと感じている(鈴木・中垣,2016).特別支援学校で医療的ケアを実施している教員の6~7割は,実地研修での指導や学校生活における学校看護師からの支援に満足しているが,一部の教員は,学校看護師に医療的ケアの実施を十分に見守ってもらえないこと,学校看護師により支援内容に差があることで不満を抱いている(清水・勝田,2023).教員は,学校看護師に,安全安心を保証できる見守り,医療の専門職としての助言,教員とともに子どものことを考えること,教育を意識した支援,教員の実施が難しいケアの代行を求めている(清水・勝田,2023).教員への支援については,教員の医療的ケア技術習得に人形を使い,不安が軽減し有効であったという報告はあるが(吉岡・井合,2009),教員が医療的ケアを実施していけるよう,どのように学校看護師が教員に医療的ケアの指導を行っているのかなど,学校看護師による教員への支援について,ほとんど明らかにされていない.

Ⅱ. 目的

教員への第3号研修の実地研修も含め,教員による医療的ケアの適切な実施に向け,実地研修を担う学校看護師が教員に対しどのような支援を行っているのかを明らかにする.

Ⅲ. 方法

1. 研究デザイン

研究デザインは,混合研究法の説明的デザインである(Creswell & Plano Clark, 2007/2010).研究1として無記名自記式質問紙を用いた量的手法にて,学校看護師の教員への支援の全国的な実態を明らかにし,研究2では質的手法を用い,学校看護師による教員への支援の詳細を明らかにした.

2. 研究1:全国質問紙調査

1) 調査期間

2019年11月~2020年1月に実施した.

2) 研究対象者とリクルート方法

全国の調査票配布協力の承諾が得られた地方公共団体における,特別支援学校229校に勤務する学校看護師である.各校において医療的ケアの第3号研修の実地研修の指導経験の長い学校看護師2名に依頼した.特別支援学校の学校長に文書で研究協力の依頼を行い,研究対象者の条件に該当する学校看護師に,研究協力依頼書と調査票を渡してもらった.同封の返信用封筒にて,無記名で調査票を個々に研究者あてに返送してもらった.2校においては学校看護師が1名の配置であったため,学校看護師456名を対象とした.学校看護師213名(回収率46.7%)より返送があった.

3) 調査内容

対象者の属性として,雇用形態,看護師としての経験年数,特別支援学校での勤務年数,勤務校に在籍する医療的ケア児数,教員への第3号研修の実地研修の実施件数を尋ねた.また,第3号研修での指導方法,実地研修以外の普段の学校生活での教員への支援については,著者らが作成した選択肢を用いて尋ねた.選択肢の作成にあたっては先行研究(日本小児看護学会,2010清水ら,2012全国訪問看護事業協会,2016)を参考にし,選択肢の内容妥当性について,特別支援学校で実地研修の指導経験のある学校看護師2名に確認した.

(1) 第3号研修の実地研修での指導方法

著者らが作成した9つの選択肢で尋ねた(表1).「その他」を選択した場合は,その内容について自由記述で回答を求めた.

表1 学校看護師による医療的ケアに関する教員への支援(研究1)

調査内容 選択肢(No)
第3号研修の実地研修での指導方法(n = 195) チェックリストにそって教員の手技を目でみて確認する(1) 184
その児童生徒の場合に注意することを説明する(2) 179
わからないことはないか教員へ尋ね,質問する機会を設ける(3) 174
医療的ケアの個別マニュアルにそって説明する(4) 171
学校看護師が実際に手順を実施し見せる(5) 158
絵を描いたり,物品を用いて,目で見てわかるように説明する(6) 143
医療の専門用語を使わずに説明する(7) 139
何度も説明する(8) 132
その他 42
実地研修以外の普段の学校生活での教員への支援(n = 187) 医療的ケアを実施する際に見守る(9) 172
医療的ケアを実施する際に,手順について助言する(10) 150
医療的ケア児の体調不良時の医療的ケアの実施方法について助言する(11) 139
医療的ケアに関する勉強会や研修の場を提供する(12) 86
その他 43

注.( )の番号は表5の( )の数字と対応したものである 複数回答

(2) 実地研修以外の普段の学校生活での教員への支援

医療的ケアを適切に実施できるよう,普段の学校生活(実地研修を除く)での教員への支援について,表1に示すように,著者らが作成した5つの選択肢で尋ね,「その他」を選択した場合は,その内容について自由記述で回答を求めた.

(3) 教員への支援で上手くいったと感じたエピソード

自由記述でその詳細の回答を得た.

4) 分析方法

質問項目について単純集計をし,自由記述の回答については,質的内容分析を行った.

3. 研究2:学校看護師へのインタビュー調査

1) 調査期間

2020年7月~2021年3月に実施した.

2) 研究対象者

医療的ケアの第3号研修の実地研修を教員へ実施した経験があり,特別支援学校に3年以上勤務する学校看護師を対象とした.研究1の対象とした特別支援学校のうち,研究2の研究協力依頼の承諾も得られた地方公共団体にある学校に勤務する学校看護師を対象とした.研究1終了後,地域に偏りが生じないよう学校を抽出し,研究2の研究協力の依頼を行った.特別支援学校の学校長に文書で研究協力の依頼を行い,研究対象者の条件に該当する学校看護師に,研究協力依頼書と研究協力の意思を示す用紙を渡してもらった.学校看護師17名より研究協力の意思を示す用紙の返送があったが,2名はインタビューの協力が困難となり,15名を対象とした.

3) データ収集方法

学校看護師15名に対し,インタビューガイドに基づき,半構造化インタビューを対面もしくはオンラインにより平均57分間実施した.9名は個別のインタビューであったが,6名は勤務校の学校看護師と共にインタビューを受けることを希望されたため,2名ずつ実施した.インタビューでの質問内容は,①どのように教員に第3号研修の実地研修の指導をしているのか,②第3号研修の実地研修の場面以外で,教員が医療的ケアを安心して適切に実施できるよう教員に支援している内容,③教員への支援をしていて,上手くいったと感じた支援や上手くいかなかった支援,④支援していて難しいと感じること,難しいと感じた時にどう対応しているのか,⑤教員が安心して適切に医療的ケアを実施できるように教諭を支援する際,心がけていることや工夫していることについて尋ね,自由に話してもらうようにした.

4) データ分析方法

インタビュー内容は匿名性を保持した形で逐語録とし,質的帰納的に分析した.逐語録を何度も読み込み,教員が医療的ケアを適切に実施できるように,学校看護師が教員に支援している内容や支援に関する考えを表すデータ部分を抽出した.抽出したデータごとにその意味内容を考え,意味内容の類似性や相違性を比較し,類似する意味内容のデータを集めコード化した.コード間の関係を,逐語録に戻って確認しながら検討した.関連するコードのまとまりが意味する内容を命名し,サブカテゴリーを生成した.サブカテゴリー間の関係を検討し,カテゴリーを生成した.分析過程においては,質的研究の経験を有する研究者から意見をもらい分析結果の検討を重ねた.また,郵送によるメンバーチェッキングにより,学校看護師の意図とデータ解釈にずれがないかを確認し,真実性を確保するように努めた.

4. 研究1と研究2の結果の統合

研究1の調査票の設問である,(1)第3号研修の実地研修での指導方法,(2)実地研修以外の普段の学校生活での教員への支援,(3)教員への支援で上手くいったエピソードでの教員への関わりのそれぞれの選択肢と自由記述を質的内容分析して抽出したカテゴリーやサブカテゴリー,加えて,研究2で見出したカテゴリー,サブカテゴリー,コードを比較検討した.サブカテゴリー名,コード名が類似するが名称が異なる場合は,データに立ち返り,データ内容から意味内容が同様かどうかを確認した.意味内容が同様の場合は,データ内容をより表現している名称を支援の構成要素であるコードとして選択した.研究1もしくは研究2でしか抽出されなかったサブカテゴリー,コードについては,抽象度に合わせサブカテゴリーもしくはコードとした.また,研究1でのみ抽出されたサブカテゴリーがあった場合は,研究2のコードのもととなったデータ内に該当するデータが含まれていないかを確認した.支援の構成要素であるコードを比較し,研究2で見出したサブカテゴリー,カテゴリーの変更が必要かどうかを検討した.

5. 倫理的配慮

兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所研究倫理委員会の承認を得て,研究に着手した(承認番号:2019F07).研究1の質問紙調査においては,研究協力依頼書に,研究の趣旨,研究協力は自由であること,匿名性の保持,データ管理方法,質問の受付先を明記し質問に対応した.調査票の返送をもって,研究協力の同意とみなした.調査票は,研究期間中,第三者が目にしないよう厳重に管理した.研究2では,研究の趣旨,目的,研究協力が自由であること,匿名性を保持すること,研究目的以外に得た情報は使用しないこと,データの保存方法および破棄の時期,研究結果を学会等で発表することを,研究対象者に口頭および書面で説明し,同意書への署名で研究協力の同意を確認した.

Ⅳ. 結果

1. 研究1

1) 質問紙に回答した学校看護師の属性

学校看護師213名から回答を得た.雇用形態は,正規雇用39名(18.3%),非正規雇用172名(80.8%),無回答2名(0.9%)であった.看護師としての勤務経験10年以上の者が194名(91.1%)であった.現在勤務する特別支援学校での学校看護師経験5年以上の者は101名(47.4%)を占め,経験年数は平均5.7年であった.学校看護師の勤務校には,平均15.8名の医療的ケア児が在籍しており,1名の学校看護師が1日に担当する医療的ケア児数は2~5名が62%を占め最も多かった.

2) 学校看護師による医療的ケアに関する教員への支援

(1) 第3号研修の実地研修の実施状況や指導方法

学校看護師は,医療的ケアの第3号研修の実地研修を最も多く行う日には,平均2.5名の教員に対し平均4.6件行っていた(回答数182).

指導方法について,学校看護師195名から回答を得た(複数回答).「チェックリストにそって教員の手技を目でみて確認する」が184名(94.4%),「その児童生徒の場合に注意することを説明する」が179名(91.8%),「わからないことはないか教員へ尋ね,質問する機会を設ける」が174名(89.2%),「医療的ケアの個別マニュアルにそって説明する」が171名(87.7%),「学校看護師が実際に手順を実施し見せる」が158名(81.0%),「絵を描いたり,物品を用いて,目で見てわかるように説明する」が143名(73.3%),「医療の専門用語を使わずに説明する」が139名(71.3%),「何度も説明する」が132名(67.7%),「その他」が42名(21.5%)であった(表1).その他の自由記述の内容は,知識を提供する,医療的ケアを学びやすい場をつくる,知識の伝え方を工夫する,教員の知識を確認する,教員と共に資料をつくるに大別された(表2).

表2 学校看護師による医療的ケアに関する教員への支援における「その他」の支援(研究1)

支援の時期 カテゴリー サブカテゴリー(No) データ数
第3号研修の実地研修 知識を提供する ヒヤリハットやインシデントやアクシデントの事例を説明する(13) 10 26
方法やコツを説明し助言する(14) 6
根拠を説明する(15) 3
手技だけでなく観察を教える(16) 3
専門用語を説明する(17) 2
保護者の思いを伝える(18) 2
医療的ケアを学びやすい場をつくる 実践練習の場を提供する(19) 9 17
事前に物品に触れる機会を提供する(20) 3
他の教員や学校看護師の協力を得て指導する(21) 3
相談しやすい雰囲気をつくる(22) 2
知識の伝え方を工夫する 見て学んでもらう(23) 3 8
伝え方を工夫する(24) 3
手を添えて共に実施し感覚をつかんでもらう(25) 2
教員の知識を確認する 教員の知識を確認する(26) 4 4
教員と共に資料をつくる 教員と共に資料をつくる(27) 2 2
第3号研修の実地研修以外の普段の学校生活 助言する 医療的ケア児に関する情報を共有する(28) 6 19
ケアのタイミングについて助言する(29) 3
看護師を呼ぶタイミングを伝える(30) 2
環境整備について助言する(31) 2
教員が困っている時に助言する(32) 2
根拠を伝える(33) 2
医療的ケアのマニュアル作成の際に助言する(34) 1
観察について助言する(35) 1
共に考える 教員と一緒に対応を考える(36) 7 13
学校行事の打ち合わせを一緒にする(37) 5
共に対応を振り返る(38) 1
場を作る 緊急時訓練の場を作る(39) 4 7
手技の練習の場を作る(40) 1
人工呼吸器の業者による説明の場をつくる(41) 1
教員への研修計画を立てる(42) 1
安心感を与える コミュニケーションをとり教員の不安や悩みを聴く(43) 3 7
ケアを代行する(44) 2
看護師が不在時の体制を整える(45) 1
物品の確認を共に行う(46) 1
視覚教材を作成する 視覚教材を作成する(47) 4 4

注.( )の番号は表5の( )の数字と対応したものである

(2) 実地研修以外の普段の学校生活での教員への支援

医療的ケアの第3号研修の実地研修以外に,教員が医療的ケアを適切に行えるよう,普段の学校生活の中で教員を支援していると回答したのは学校看護師187名(92.1%)であった(有効回答203).その内容は,表1のように,「医療的ケアを実施する際に見守る」172名(92.0%),「医療的ケアを実施する際に,手順について助言する」150名(80.2%),「医療的ケア児の体調不良時の医療的ケアの実施方法について助言する」139名(74.3%),「医療的ケアに関する勉強会や研修の場を提供する」86名(46.0%),「その他」43名(23.0%)であった(複数回答).その他の自由記述の内容は,助言する,共に考える,場を作る,安心感を与える,視覚教材を作成するに大別された(表2).

(3) 教員への支援で上手くいったエピソード

教員が医療的ケアを適切に行えるよう,教員と関わり上手くいったと感じたエピソードについて学校看護師85名から自由記述で回答を得た.エピソードにおける教員への関わりに関する自由記述内容を質的内容分析で分析し,5カテゴリー,22サブカテゴリーが抽出された(表3-1,データ例は表3-2参照).

表3-1 教員への支援で上手くいったエピソードにおける教員への関わり(研究1)

カテゴリー サブカテゴリー(No)
医療的ケアに関する知識や技術を教える 子どもの医療的ケアの方法や注意点やこつを説明する(48)
子どもの体調を安定させるための方法を伝える(49)
視覚的にわかるようにする(50)
教員にケアを受け体感してもらう(51)
一緒に繰り返し練習できるようにする(52)
実際に近い状況にして練習できるようにする(53)
医療的ケア実施への教員のやる気を引き出す 教員によるケアの必要性を実感してもらう(54)
できていることをほめる(55)
教員に安心感を与える 落ち着いてケアできるよう場を整える(56)
教員の医療的ケアの実施を見守る(57)
教員の欠員分のケアの代行をする(58)
コミュニケーションをとり質問しやすい雰囲気をつくる(59)
教員を混乱させない 保護者とケア方法を調整する(60)
学校看護師の指導内容を統一する(61)
繰り返しアドバイスする(62)
教員と共に進めていく 教員とともに意見交換する(63)
子どもの情報を共有する(64)
教員を尊敬する(65)
教員の指導目標をふまえる(66)
教員の習得状況にあわせる(67)
教員間での支援を活用する(68)
教員を主体と考える(69)

注.( )の番号は表5の( )の数字と対応したものである

表3-2 教員への支援で上手くいったエピソードにおける教員への関わりのデータ例(研究1)

No サブカテゴリー データ例
48 子どもの医療的ケアの方法や注意点やこつを説明する 実際に自分がケアを行う際にもコツを伝えたり,放課後に毎日毎日吸引器の使い方や清潔操作の練習を行いました.清潔な手袋を装着した方の手と反対の手の使い方がスムーズになり,主治医の前で行う最終実習では,教員は自信をもって実施できていました.
49 子どもの体調を安定させるための方法を伝える 授業に参加させたいが,呼吸状態が不安定(排痰ができず)な時,体位ドレナージをしながら,授業に参加できるように,アドバイスをした.時折,聴診をしたり,呼吸介助をして,吸引が有効に行うことができた時,協働で医ケアをしていると感じる.
50 視覚的にわかるようにする 例えば,胃ろうのケアについて,胃ろうの構造についてカラーで説明書を作り,フェルトで皮膚,ペットボトルで胃ろうを作り,生徒への負担を減らすよう指導している.
51 教員にケアを受け体感してもらう 事務的に口腔内吸引をする教員の方がいたが,「実際に私たちも吸引される時の感覚を体験してみましょう」と提案して,教員とナースで口腔内吸引をお互いに実施して体験した.「こんなに不快なんだ…」と感じてもらうことができ,その後の実践では,こまめに児童に声掛けをしながら愛護的に吸引するようになった.教員の行動変容につなげることができ,やってよかったと思いました.
52 一緒に繰り返し練習できるようにする 実地研修前に,看護師から見て,手技の習得に不安のある教員がいた.教員もできていない自覚はあったが,自ら練習しようという姿勢は見られなかった.医ケア担当教員にも相談した.看護師が対応できる時間を作り,教員に伝え,個別に何回も練習する機会を設けた.繰り返し練習することで,教員から「やらないとだめですね」という言葉が聞かれ,手技の習得,意識の向上につながった.
53 実際に近い状況にして練習できるようにする 個別性のある医ケア児は,物品をその児童生徒にあったように準備して,姿勢も,その児童生徒と同じようにして実施してクリアさせている.
54 教員によるケアの必要性を実感してもらう モチベーションをあげるために,医ケアを行う必要性の理解とそれを実感できることが大切と考えてきました.ある日,(週に一度注入を行っていた,担任が行う日ではなかった日)看護師が注入し始めると,児がじっと担任を見つめました.私が,「今日は先生がよいの?ぼくも他の子みたいに先生と給食(の注入)がしたいなって思ったの?」ときくと,「はい」というような表情をしました.担任も一緒にその反応を見て,「○曜日は先生がするからね」と嬉しそうに言われていました.こういう体験が大切だなと感じる場面でした.
55 できていることをほめる 不慣れで吸引の練習を何度も行い,実地研修を実施したが取得に至らない教員がいた.人形で何度も繰り返し練習し,何度も繰り返し説明を行った.「わかっていても,いざ,吸引をするとできない」という言葉が聞かれたが,何回も関わり,できていることを伝えることで,少しずつ自信がもて,実地研修で吸引の取得ができるようになった.
56 落ち着いてケアできるよう場を整える 担任が医療的ケアを実施できるようになったら,担任不在時を考慮して主事や他学級の教員が研修に入ることがある.子どもにとって「いつもの先生」ではないため,拒否や興奮しじっとしていられない走り出すなどの行動がみられるときがあった.先生方と話し合い,研修環境を整えたり,安全を考慮し,付き添う看護師を固定し,手話を使ったり,準備実践片付けなどと区切って時間を短くして最終的に実践ができた.
57 教員の医療的ケアの実施を見守る 実地研修を合格後,初めて児童生徒に医ケアを実施するときは,看護師が見守ると安心して教員が医ケアを実施できたということはよくあります.
58 教員の欠員分のケアの代行をする 教員が一人休みになったクラスで,医療的ケアを行える教員が少なく,一人の教員が二名の栄養注入準備をしながら,給食の摂食の準備もしなければならない状況だった.看護師が一名の栄養注入の準備,実施を行い,給食もそのクラスで見守る体制をとることで,教員がゆっくりと一名の栄養注入準備とその児童の摂食指導を行うことができた.
59 コミュニケーションをとり質問しやすい雰囲気をつくる 教員は「わからない」と言いにくいように感じ,普段から,質問できるような関わりを保っている.
60 保護者とケア方法を調整する 保護者の医ケア(吸引)に対する細かいリクエストが蓄積し,吸引できる教員が,ごくごく限られた人に絞られることになった.ステップが多くなってしまった吸引動作について,教員が取り組みやすいように,その動作を調整し,保護者の前で,私(看護師)が吸引のデモンストレーションを行った.そのデモンストレーションに対して,保護者の了解を得ることができた.その後,複数の教員が,そのやり方で実地研修を行っていくことができ,3号研修(吸引)の免許を取ることができている.
61 学校看護師の指導内容を統一する 指導についても,12名の看護師がいるので,説明するべきことを明確にし,共有している.
62 繰り返しアドバイスする 慣れていない教員には,一緒に見ながらアドバイスし,幼児児童生徒の状態が把握できていると思えるまで,繰り返しアドバイスをしていくと,教員の方からも様々な見方を工夫して行ってくれたり,安心してケアを実施できたりしていると思う.
63 教員とともに意見交換する 職業的に教える,教わるのがプロなので,質問も上手にしてくれたり,こちらも気づかされることが多い.身体に関わることなので,重大なことと意識してもらえれば,受け入れはスムーズ,逆に重大すぎてできないと言われることもあり,そこは回数を重ねることや,いろいろなケースを話し合うことで,少しでも安心感を持ってもらえるように気を付けました.
64 子どもの情報を共有する ただでさえ,緊張する医ケアであるため,研修以外で,教員に声をかけて,児童生徒の様子を共有したり,細かな接し方を伝えたり,逆に教えてもらったりしていることと,他にプライベートなことを自分も話すことで.
65 教員を尊敬する 教員は優秀であると思っているので,畑違いの医ケアの実施を行うことは立派と考えていますので,尊敬しています.
66 教員の指導目標をふまえる 医療的ケアを教育の一部(自立活動)としてとらえているため,研修時には,それをふまえて手技指導したり,教員の指導目標を知りながら,看護師と連携したりしている.
67 教員の習得状況にあわせる 覚えるのがとっても時間のかかる方には倍の時間をかけて現場演習を行った.その結果,現在も医ケアを実施している.
68 教員間での支援を活用する すでに経験(医ケア)を積んでいる教員にも医ケアの研修や実技練習に関わってもらうことで,看護師という立場からではなく,「同じ教員同士」という関係性からスムーズに医ケアに関する知識や技術が入っていくように感じます.また,教員同士のコミュニケーションも深まり,「お互い様」「思いやり」といった関係が深くなるように思います.
69 教員を主体と考える ケアとはいえ,学校現場で行うので,教員が主体となって取り組めるよう,一緒に考えたり,教員がわからないところは何かを観察し,指導している.

注1.番号は表5の( )の数字と対応したものである

注2.( )は著者による補足である

2. 研究2

1) 研究協力者の概要

関東地方,近畿地方,中国地方の5地方公共団体にある特別支援学校9校に勤務する学校看護師15名であった.正規雇用が2名,非正規雇用が13名であった.看護師経験は3年~34年(平均12.8年),特別支援学校での勤務経験は3.3年~16.3年(平均9.5年)であった.

2) 分析結果

教員が適切に医療的ケアを実施できるよう,学校看護師が教員に対し行っている支援について,4カテゴリ―,13サブカテゴリー,42コードが見いだされた(表4-1,データ例は表4-2参照).以下,カテゴリーを《 》,サブカテゴリーを〈 〉,コードを【 】,研究協力者の語りを斜体で示す.大文字のアルファベットは研究協力者のIDである.

表4-1 特別支援学校教員の適切な医療的ケア実施にむけた学校看護師による支援(研究2)

カテゴリー サブカテゴリー コード(No)
子どもの安全と安心と安楽を守る 子どもの安全と安心と安楽を守る 子どもの安全安心安楽を守りながら実地研修を進める(70)
子どもの安全安楽を守るスタンスで説明をする(71)
安全安心な手技かを複数人で確認する(72)
知識や技術を伝達する ケアについての知識を提供する 子どもの体調の見方を教える(73)
質問に答える(74)
個別性をふまえたケアをする際の注意点を説明する(75)
ケアの根拠を説明する(76)
ケアのコツを伝える(77)
ヒヤリハットをもとに説明する(78)
教員がイメージできるようにケア技術を教える 視覚的にわかりやすい資料を提供する(79)
ケアの手本を見てもらう(80)
ケアによる苦痛を体感してもらう(81)
医療的ケアを学べる場をつくる 医療的ケアを学べる場をつくる(82)
意欲や安心感を醸成する 医療的ケア実施の意識を高める 医療的ケア実施に向けた教員の目標を明示する(83)
教員が医療的ケアを実施する意義を伝える(84)
医療的ケアの実施を促す声掛けをする(85)
教員の緊張を和らげる 一緒にケアするスタンスで見守る(86)
落ち着いてケアできるよう時間や場を整える(87)
教員の思いを聴く(88)
失敗しても前向きになれるよう声をかける(89)
コミュニケーションをとり声をかけやすくなるよう配慮する(90)
教員を混乱させない 保護者の意向に配慮しながら手技を簡素化する(91)
学校看護師間で指導内容を統一する(92)
言い方を工夫する(93)
細かな手順をマニュアルに落とし込む(94)
教員を主体として学びあう 共に子どもをケアし経験から学びあう どうケアするか話し合う(95)
子どもの情報を共有し子どもを理解する(96)
教員や学校看護師との関わりから教えることを学ぶ(97)
教員を信頼する 教員に感謝する(98)
教員の力を信頼する(99)
教員のことを理解する 説明への教員の理解度を理解する(100)
教員の医療的ケアに対する考えを理解する(101)
教員が置かれている状況を理解する(102)
医療的ケアを実施できるよう教員を支援する意義を見出す 学校での看護師の役割を自分なりに理解する(103)
教員も医療的ケアをする意義を実感する(104)
医療的ケアの責任は学校看護師にあることを意識する(105)
教員を主体として進める 教員のペースで進める(106)
教員全体に知ってもらう(107)
教員同士で学びあえるようにする(108)
他の教職員の力をかりる(109)
教員自らの学びを待つ 効果的なケア方法を感じ取ってもらう(110)
失敗から学んでもらう(111)

注.( )の番号は表5の( )の数字と対応したものである

表4-2 特別支援学校教員の適切な医療的ケア実施にむけた学校看護師による支援のデータ例(研究2)

No コード データ例
70 子どもの安全安心安楽を守りながら実地研修を進める イレギュラーなこと,誰か同じクラスの子が通院でバタバタしているとか,先生が一人お休みして人がいないとか,看護師が出張に出るからとか,なんかイレギュラーなことがあるときは,もう事故が起きやすいということで,しないです.行事がつまっているとか,時は,(実地研修を)しないですね.(A)
71 子どもの安全安楽を守るスタンスで説明をする 子どもさんに接するときに,思いやりをもって,やさしく接する.ながらケアを行う.だから,一つ一つケアを行うのも,子どもが安楽にケアを受けられるようにもっていくっていう感じで,先生にもそうやって一緒に言いながら,一緒に子どもさんに接しながらケアをする(H)
72 安全安心な手技かを複数人で確認する 新一年生のお子さん,学部の変わったお子さんとかは,学部が変わると先生が全く新規になってしまうので,お母さんにも来ていただいて,お母さんの目でも見ていただいたりとか,3者(母親,教員,看護師)が安心安全に確認できないと,手技はスタートできないです.(G)
73 子どもの体調の見方を教える 先生方は,バイタルチェックを看護師のようにしてっていうのは厳しいので,一緒に行うんですけど,サチュレーションの取り方だとか,脈の測り方,顔色の見方,そういうのも一緒に.ずっと私たちがべったりとつきっきりで,ベッドサイドにいることはできないので.先生にも,普段どういうところをみたら,体調の変化に気づけるかとか,そういうのを,まず覚えていただけるといいかなというような.本当に,意味がわからない.サチュレーションと言われても,何のことかわからない先生もまず多いので,その詳細をわかりやすく説明したりだとか(G)
74 質問に答える 本当に,先生自身が不安だと思うことは,とことん聞いてきてくださるんですよ.ここはどうしたらいいのとか,で,自分たち,もし緊急になった時には,どういう動きをしたらいい,どういう,サーチュレーションはいくらとか数値的なものをみたりとか,そういうのを先生たちが作ってくださってるので,自分たちが,これでいいのかっていうふうに聴いてきてくださる.それを安心材料にしてくださっている部分もあるのかなっていうふうに.それに対して助言をさせていただくような形ですかね.そうですね,先生たちがどんどん,どうしたらいいって.(B)
75 個別性をふまえたケアをする際の注意点を説明する 見てきた中で,こういうところがねって.この子はゼロゼロ音がしてても,吸引してもそんなに(痰を)引けないよっていうことだったりとか,あとは普通に上向いてるだけじゃ吸引は難しいから,ちゃんとうつぶせにして排痰ができる状態を持っていってあげな駄目なんだよとかっていうのを,経年の中で私が見てきていること.その子に対して,こういうふうにしてあげれば,よりいいんじゃないかっていうこととかは伝えていくようにどんどんしていって.(O)
76 ケアの根拠を説明する なぜ今この手技が必要かとか,その理論づけてきちんと説明して,それが一回頭の中に入ると,そんなに無茶苦茶はないです.きちんと説明するということを心掛けているので.(D)
77 ケアのコツを伝える こうやってしたほうがやりやすいよとか,接続チューブとシリンジをこういうふうに持ったほうが抜けにくいだとか,漏れにくいだとか,自分がやってみて感じたこととかも伝えるようにはしています.(G)
78 ヒヤリハットをもとに説明する 先生だけじゃないねん,ようあるヒヤリハット,私もしたしとか,そんなふうに,ことを日常の中で結構伝えるようにはしています.(A)
79 視覚的にわかりやすい資料を提供する 断面,口鼻や,人形の断面を使って,ここをこうして鼻なんか,まっすぐ(吸引カテーテルを)入れたら,鼻中隔にあたって出血しやすい点があるとか,だから,こうあげてこうしたらこうなるとか,実施にそれを見せて,説明したりとか.カニューレも,その子が実際に使っているカニューレを交換したら,古いのを洗浄して消毒してもらって,(保護者から学校に)もらって,実際にカテーテルを入れて,その子のカニューレ内の長さをきっちり測って.それをまた,袋に入れて,名前を書いて,一覧にしてはっておいてあるので,この子にはこういうカニューレが入っているっていうのをわかりやすいようにみてもらったりとか.(I)
80 ケアの手本を見てもらう デモンストレーションを一回私らが,看護師が読み上げて,看護師がやっている姿を,先生方に一連の流れを見ていただく.(K)
81 ケアによる苦痛を体感してもらう 吸引の現場演習のときでも,希望すれば,一回吸引をしてみるって,されてみるとかね.だから,こんなにしんどいんやってわかると,手早くできるようにしようとか.だから,何かにつけて,側臥位の姿勢を長くしていたらしんどいなとか.そういうのは,経験して得てもらっていることって多いですかね.(A)
82 医療的ケアを学べる場をつくる 練習の機会を作って,さっき言ったように,回数をこなすっていうことも大事というので.現場演習の段階や実地研修中に,もうちょっと練習されてもいいのかなという先生とか,個別に練習したいときはいつでも放課後来てくださいって言っているので,そこで人形を使って,看護師も対応して,個別で練習してもらったりしてるのと.場合によっては,片手でシリンジ操作したほうが安全にできる場合があります,薬だとか,容器を押さえながら片手のほうがいいので,シリンジを貸し出したりしています.いつでもコップでちょっと自分でやってくださいっていうふうに,必要時はしています.(F)
83 医療的ケア実施に向けた教員の目標を明示する 1学期は無理せんと,じゃあ自分の今,見てる子,この子を目標に頑張ってくださいっていう,ちょっと提示を.(K)
84 教員が医療的ケアを実施する意義を伝える その先生のもともとの考えとかもあるかもしれないんですけど.先生がたが医ケアをする意義っていうようなところも,もうちょっと詳しく説明したらよかったのかなと思うこともあって,なるべくそこら辺のこともお伝えするように.ちょっと,その後からは気を付けるようにはしましたけど.(N)
85 医療的ケアの実施を促す声掛けをする 「先生,痰取ってみようか.やってみようか.」って言うと,2,3回やってる間にちょっと自信が付いてくるんでしょうね.「先生.次,車いす乗っかったときに,次,授業始まる前に一回,取っとこか.」って言うて声掛けすると,「分かりました.」言うて取ったり,「じゃあ,今から帰るから,帰る前に一回,取っときましょう.」って言うたら,取ってくれたりってするんです.(K)
86 一緒にケアするスタンスで見守る その時間のケアは,看護師はわりふられているので.担当教諭の先生がケアをされている最中でも,できるだけ看護師はそばにいる,見守るといいますか,一緒にケアをするというスタンスで.その時間,看護師は,重複してケアを組まないようにしているので.全くお任せではなくって,いつでも何か困ったことがあれば呼んで下さい,一緒にそこにいるようにしています.(D)
87 落ち着いてケアできるよう時間や場を整える 時間に焦りがあるのか,落ち着いてできない環境なのか,その時は,早めにケアが始められるように,学習時間の調整をちょっと依頼してみたりとか.(F)
88 教員の思いを聴く 横にお母さんが見ていて,いろいろ言われて混乱するんです.それでなくても気を遣いますしね,その時は,ずっと看護師が付き添っていて数日,放課後に先生の話を聴いていったり,先生の心理的な負担を減らしていくっていうことも考えています.(F)
89 失敗しても前向きになれるよう声をかける 自分だけじゃないので.本当に同じ失敗はみんなするので,ただ,そこをしないように,どう気を付けていくかというところが,大事だと思うんですよっていうふうに声掛けはしていますけど.(E)
90 コミュニケーションをとり声をかけやすくなるよう配慮する ケアの必要な子がちょっと増えてきたので,(学校看護師が)二人しかいないので,この時間帯は注入しています,導尿していますとか,離れられないとかっていうことを一覧にして,各医ケアの教室には置かせていただいて,先生が,今,私たちがどこにいるのかっていうのも,わかってくださっているようにはしているんですけど.(B)
91 保護者の意向に配慮しながら手技を簡素化する 今年コロナで,今までは吸引する利き手だけに手袋をするってしてたんですけど,コロナもあるので,スイッチとかの周りとか,やっぱりさわるのであれやからっていって,両手に手袋をするっていうふうになったら,両腕に手袋をした途端,どっちの手でスイッチを押していいんですかとかっていうふうに,すごい混乱しやすかったりっていう.それは,今までもそういうようなのを見てきているので.なるべく先生たちには,同じことをやれば,長さとか量とかそういうところは違ったとしても,手順的には基本,同じことやれるような形に.安全に実施していくためには,そうするのがいいのかなと思ってるので,そこの辺りはお母さんにもその実情を説明して,合わせられるところは合わせてもらって,合わせられないところだけ,ちょっとどうしようかって言って,先生たちも含めて相談をするっていう感じで.(O)
92 学校看護師間で指導内容を統一する 以前出た意見やったら,「看護師によって言うことが違う」とかって言われたりとかして,それを2人なんですけど,ちゃんと刷り合わせをしたりとかしてますかね.(M)
93 言い方を工夫する 何回も言う.同じ,大事なところは,なるべく何回も言う,ゆっくり言う(N)
94 細かな手順をマニュアルに落とし込む 字を大きくするとか,大事なところを赤字にするとか.あのう,その先生がつまづいたところとかを変えていったり.(F)
95 どうケアするか話し合う 私はこう思っているよっていうことを言うっていうのは大事かなって.何を心配してるとか,何を思っているから,そう言っているのかっていうところが,やっぱり明確に出さないと.決定事項だけを伝えるような.医療的ケアだから,私たちがこう言ってるから,これよっていうのではなくて,ちゃんとこういうことがあるから,こうやって言ってるんやけど,どう思う?っていうふうに.(O)
96 子どもの情報を共有し子どもを理解する お母さんが付き添ってもらっている間に,お母さんといろいろ相談しながら,体調面をしっかり先生が把握していくっていうのも大事.うん.私たちも.(H)
97 教員や学校看護師との関わりから教えることを学ぶ (医療的ケア実施の)自立確認は決して,悪いところを捜しているんじゃないので.先生と一緒にやっていきたいし,先生からも私たちもいろいろと教えてほしいし,で,自分たち目線にならないように教えてほしいので(E)
看護師間で,あの先生は自立は無理だなっていうふうに流れがいきかけたんです.ですけど,それを担当した看護師だけで決定してしまうっていうのはよくない,ベテランが出て,今までの経験をもとに広い範囲でみていってするのが大事っていうことで担当されたんですけど.それがすごくよかって(F)
自分自身も少し全体的に,先生とかを観察できるようになって,最初のころは,しっかりと先生にやってもらわないといけないっていうのも強かったので,必死になって教えてたと思うんですけど(G)
98 教員に感謝する 調子悪くなったりとかしたときに,さっと近くに.普通,一般の方っていったらあれですけど,医療者とかだったら,逆になんかしないとって思うんですけど.先生がたって,ちょっと引いちゃう部分があると思うんですけど,そういうときに,逆に,先に,何しましょうかなんて言って声掛けてくれて,私がわたわたする.あ,頼もしいなって思いました.ああ,そこら辺ですかね.そこら辺で,ありがとうって思いました.(N)
99 教員の力を信頼する 子どものことを一番よくみているのは先生だから,先生のことをリスペクトしています.(A)
100 説明への教員の理解度を理解する 人それぞれなんで,理解してもらうのに時間のかかる人もあれば,そのままスムーズに進んでいく方もあるんで.なので,人それぞれ,もうちょっと時間をかけて,あのう支援していかなくてはいけない人とそれぞれ.(H)
101 教員の医療的ケアに対する考えを理解する 単純に自分がするのが怖いとか不安だっていう人なら別に私はしょうがないと思ってるんですけど,そうではなくて,教員の中に医療的ケアは教員がやることではないっていう,根底に思っている人とかがやっぱりいるんですよね.なんで,その辺りがやっぱり難しいというか.そういう根本的なところって変わらないじゃないですか,なかなか.なかなか歩み寄りができない場合も,もちろんあります.(O)
102 教員が置かれている状況を理解する 今,教員は,包括支援プランの締め切りがここやから,今週は絶対ものは頼んだらかわいそうとか,職員室でのいろんなスケジュールを情報を看護師にくださっているので.忙しい時に,こっちからマニュアルの変更をお願いしても,それは申し訳ないというのがあるので,先生のスケジュールを主任を通してこっちに情報提供してくださるというのがありがたかったかなあっていう.全然,今までは先生のスケジュールっていうものが見えてなかったので,なんで,こんなに遅くなんのかなあみたいな,放課後もあるのにっていう思いもあったんですけれども,先生は先生で,学年だったり,学部だったりで,いろんな研究もされていますし,いろんな締め切りにも追われておられるので.その辺を理解できたことは大きかったです.(E)
103 学校での看護師の役割を自分なりに理解する いかに本当に影の,学校にきて先生のかかわることがメインであって,そこの中で,ちょっと手助けができる存在であればいいなっていうふうに,すごく思います.(B)
104 教員も医療的ケアをする意義を実感する 最初,3号研修の人形でするときも,すごくぎこちなくされてる先生も,私だけではなく,看護師が常々いって指導をしてたら,回を重ねるごとにすごく上手になられて,子どもとのコミュニケーションもとれて,子どもが先生を信頼するようになっていったら,やっぱり,毎日そばにいる先生に吸引をしてほしいっていうのが子どもの希望で,たまにしかいかない,ちょっと顔を見に行く看護師がするよりは,その信頼している先生にしてもらうっていうのがあるんかなっていうのは感じることはありますね.(I)
105 医療的ケアの責任は学校看護師にあることを意識する 事故を起こしたくないので.私たちは,県が看護師の業務内容の中に,教員は看護師指導監督のもとでケアをするっていうのがあるので,私たちの責任なので,教員の,何かあったら,私たちの責任になるので,そこのところをしっかりとね意識してくださいねとは言います.(H)
106 教員のペースで進める 吸引とか,注入とか,一日通していろんなことがあると思うですけど,吸引しても,今日は吸引だけで注入はまた今度しますって言われたら,え,せっかくできるチャンスやのにって思うけど,その辺は無理強いしないで,あ,そうですね,先生の気持ちが乗った時にほなしてくださいねって,無理やりさせられたみたいな感じがないように,無理強いはしないように.できるのにと思いながら.(J)
107 教員全体に知ってもらう 医ケア(医療的ケア)が多い学校なので,対象,医ケアをする予定のある先生しない先生にかかわらず,全員が関わる可能性が高いということで,知的(障害児)の担当の先生とかも含めて,全員に向けてやって.(C)
108 教員同士で学びあえるようにする 同じ子を受け持つ先生で,同じグループの先生で読み合わせながら,お互いが受からなくちゃいけないし.実施,確認,実施ってお互いにしてもらったほうが,二度手間じゃく,お互いに高めてもらえるかなと思ってそうしてもらっています.(L)
109 他の教職員の力をかりる こっちから,受けてね,受けてねって言うよりも,一緒に医ケアを見てる担当の先生にこっちが促し,その先生からみんなに発信してもらうようになったほうが,みんな比較的にやろうとしてくれてはるん違うかなと思うんでね.(L)
110 効果的なケア方法を感じ取ってもらう その誤嚥性肺炎とか,熱が急にぽんと出て,肺炎になるということ自体,先生らもちょっと気を付けてらっしゃるというか,え,熱が出てもうたん,で,肺炎になったってことになると,もっとせなあかんかったんかな,とかあるので,ま,気を付け,そやね,ちょっと,手を抜くじゃないんですけど,ちょっと気持ちが緩んでしまったら,大変なことになる子もいるので,たぶん,そういうのをみられたら,ああ,あの子は,だんだん成長していても,そういう繊細なところがあってっていうのが,感じられていると思います.(I)
111 失敗から学んでもらう 実地研修の練習の時点では,失敗するとわかっていても見守る.練習なので,子どもじゃないので,見守る.この体験で教員が失敗の原因を考えて気付いて修正をして,安全な物品配置や段取りを変更していくっていう,そういう過程がすごく大事だなあ.…(略)…実地研修をする前に,教員ペースだとか,看護師ペースをちょっとおさえて,見守ってあげる.自分で気が付いて,子どもに対応して安全にやっていくという方法を先生自身が感じ取れるとしたら,やっぱりそこはうまくいけるかなあというふうに感じます.(F)

注1.番号は表5の( )の数字と対応したものである

注2.( )は著者による補足であり,大文字のアルファベットは研究協力者のIDである

(1) 《子どもの安全と安心と安楽を守る》

このカテゴリーは,教員を支援する上で,学校看護師が基盤として持っている考えを意味する.学校看護師は,教員への実地研修を進めるうえで,「(その子のSpO2が)92(%)でも問題ないとか細かなところがわからないうちに,調子が悪いときに(吸引の医療的ケアの実地研修を)するのはちょっとあれかなって言って,無理をしないようにというのはしています(A)」のように,子どもの安全安心安楽を守るという姿勢で,教員への説明や教員の医療的ケアの手技を複数人で確認していた.

(2) 《知識や技術を伝達する》

このカテゴリーは,学校看護師が,教員に対し,医療的ケアを適切に実施するために必要な知識や技術を伝達することを意味する.学校看護師は,教員が安全に医療的ケアを実施できるよう,〈ケアについての知識を提供する〉,〈教員がイメージできるようにケア技術を教える〉,〈医療的ケアを学べる場をつくる〉ことで,《知識や技術を伝達する》ようにしていた.学校看護師は,〈ケアについての知識を提供する〉際には,「吸引できるベストなタイミングっていうのを,二人で,先生と看護師と共通して持てるようにと思って(J)」のように,医療的ケアの実施のタイミングを適切に判断するためにも【子どもの体調の見方を教える】【個別性をふまえたケアをする際の注意点を説明する】ことをし,【ヒヤリハットをもとに説明する】【ケアの根拠を説明する】ことで知識として定着しやすいようにしていた.その過程で,【質問に答える】ようにしていた.〈教員がイメージできるようにケア技術を教える〉際には,【視覚的にわかりやすい資料を提供する】【ケアの手本を見てもらう】ことでケアのイメージ化を促進していた.また,教員自身がケアを受け【ケアによる苦痛を体感してもらう】ことで,子どもの安楽に配慮してケアできるようにしていた.実際の子どもの状況に近いように物品をそろえ,教員がいつでも医療的ケアを練習できるよう,〈医療的ケアを学べる場をつくる〉ことをしていた.

(3) 《意欲や安心感を醸成する》

医療的ケアを習得しようという教員の意欲や,医療的ケアを実施していくうえでの教員の安心感を,学校看護師が醸成することを意味する.学校看護師は,実地研修の段階で,【医療的ケア実施に向けた教員の目標を明示する】,研修中や研修修了後も,【教員が医療的ケアを実施する意義を伝える】【医療的ケアの実施を促す声掛けをする】ことで,教員の〈医療的ケア実施の意識を高める〉ようにしていた.実地研修を修了後,教員が医療的ケアを実施する際には,【一緒にケアするスタンスで見守る】【落ち着いてケアできるよう時間や場を整える】【コミュニケーションをとり声をかけやすくなるよう配慮する】【失敗しても前向きになれるよう声をかける】ことで,〈教員の緊張を和らげる〉ようにしていた.学校看護師は,【教員の思いを聴く】ことで,医療的ケアの実施や保護者との関わりでの教員の精神的負担を軽減しようとしていた.医療的ケアを実施するにあたり,〈教員を混乱させない〉よう,【細かな手順をマニュアルに落とし込む】【保護者の意向に配慮しながら手技を簡素化する】【言い方を工夫する】のように手順をわかりやすくするとともに,【学校看護師間で情報を共有し指導内容を統一する】ことで,一貫した指導を教員が受けられるようにしていた.「難しい専門的なことをいきなり言ってもわからなくて.一番子どもにしわ寄せがいくのが,安全を守れないということではだめなことだと思っているので,細かいことから,わかりやすいように説明する.(I)」のように,学校看護師は,子どもの安全を保つことを常に意識し,【言い方を工夫する】ことをしていた.

(4) 《教員を主体として学びあう》

学校看護師は,《知識や技術を伝達する》,《意欲や安心感を醸成する》だけではなく,教員を支援する過程で,〈共に子どもをケアし経験から学びあう〉ことをしていた.学校看護師は,「(医療的ケア実施の)自立確認は決して,悪いところを捜しているんじゃないので.先生と一緒にやっていきたいし,先生からも私たちもいろいろと教えてほしいし,で,自分たち目線にならないように教えてほしいので(E)」のように,教員から学ぼうとしていた.そして,「看護師間で,あの先生は自立は無理だなっていうふうに流れがいきかけたんです.ですけど,それを担当した看護師だけで決定してしまうっていうのはよくない,ベテランが出て,今までの経験をもとに広い範囲でみていってするのが大事っていうことで担当されたんですけど.それがすごくよかって(F)」「自分自身も少し全体的に,先生とかを観察できるようになって,最初のころは,しっかりと先生にやってもらわないといけないっていうのも強かったので,必死になって教えてたと思うんですけど(G)」のように,学校看護師同士の話し合いや,教員との関わりを振り返ることで,【教員や学校看護師との関わりから教えることを学ぶ】ようになっていた.学校看護師は,【子どもの情報を共有し子どもを理解する】において,「すごく子どもたちにいっぱい教えられることもあります.本当に教えてもらっているなあって,その周りの先生たちも,それを言ってくださる先生がすごく多いので.(B)」のように,教員と共に子どものことを学んでいると感じていた.そのように〈共に子どもをケアし経験から学びあう〉ことで,学校看護師は,〈教員のことを理解する〉,〈教員を信頼する〉ようになっていた.

そして,学校看護師は〈医療的ケアを実施できるよう教員を支援する意義を見出す〉と,学校看護師のみで教員を教えるのではなく,【教員同士で学びあえるようにする】というように,〈教員を主体として進める〉ようになっていた.さらに,【効果的なケア方法を感じ取ってもらう】【失敗から学んでもらう】というように,〈教員自らの学びを待つ〉ようになっていた.学校看護師は,教員を支援する上で《教員を主体として学びあう》姿勢へと変化していた.

学校看護師は,【子どもの情報を共有し子どもを理解する】【教員や学校看護師との関わりから教えることを学ぶ】ことで,〈共に子どもをケアし経験から学びあう〉ようになり,さらに《知識や技術を伝達する》《意欲や安心感を醸成する》ようになっていた.

3. 研究1と研究2の結果の統合

研究1と2の結果を統合し,4カテゴリー,13サブカテゴリー,58コードが支援の構成要素として抽出された(表5).なお,もととなった選択肢・サブカテゴリー・コードには,表1~4において通し番号をつけている.統合の過程において,研究1で抽出されたサブカテゴリーのみをもとにしたコードがあったため,研究2のデータに立ち返り,データa~g(付録)がそれらのコードのデータに該当することを確認した.支援の構成要素のカテゴリー,サブカテゴリーは,研究2で見いだされたものから追加はないことを確認した.

表5 特別支援学校教員の適切な医療的ケア実施にむけた学校看護師による支援の構成要素(研究1と研究2の統合)

カテゴリー サブカテゴリー コード 研究1 質問紙調査 研究2 インタビュー調査
第3号研修の実地研修での指導方法 実地研修以外の普段の学校生活での教員への支援 上手くいったエピソードでの教員への関わり
子どもの安全と安心と安楽を守る 子どもの安全と安心と安楽を守る 子どもの安全安心安楽を守りながら実地研修を進める ○(70)
子どもの安全安楽を守るスタンスで説明をする ○(71)
安全安心な手技かを複数人で確認する ○(1) ○(72)
知識や技術を伝達する ケアについての知識を提供する 医療的ケアの個別マニュアルにそって説明する ○(4)
医療的ケアを実施する際に手順について助言する ○(10) ○(a)
個別性をふまえたケアをする際の注意点を説明する ○(2) ○(29) ○(48) ○(75)
ケアの根拠を説明する ○(15) ○(33) ○(76)
ケアのコツを伝える ○(14) ○(48) ○(77)
質問に答える ○(3) ○(32) ○(74)
子どもの体調の見方を教える ○(16) ○(35) ○(73)
子どもの体調を安定させるための方法を伝える ○(11) ○(49) ○(b)
看護師を呼ぶタイミングを伝える ○(30)
ヒヤリハットをもとに説明する ○(13) ○(78)
教員がイメージできるようにケア技術を教える 視覚的にわかりやすい資料を提供する ○(6) ○(47) ○(50) ○(79)
ケアの手本を見てもらう ○(5, 23) ○(80)
ケアによる苦痛を体感してもらう ○(51) ○(81)
医療的ケアを学べる場をつくる 医療的ケアの手技を練習できる場をつくる ○(19, 20) ○(40) ○(52, 53) ○(82)
医療的ケアに関する勉強会や研修の場を提供する ○(12, 41) ○(82)
緊急時訓練の場をつくる ○(39) ○(82)
意欲や安心感を醸成する 医療的ケア実施の意識を高める 医療的ケア実施に向けた教員の目標を明示する ○(83)
教員が医療的ケアを実施する意義を伝える ○(54) ○(84)
医療的ケアの実施を促す声掛けをする ○(85)
教員の緊張を和らげる 一緒にケアするスタンスで見守る ○(9) ○(57) ○(86)
物品の確認を共に行う ○(46)
落ち着いてケアできるよう時間や場を整える ○(31, 45) ○(56) ○(87)
ケアを代行する ○(44) ○(58)
教員の思いを聴く ○(43) ○(88)
失敗しても前向きになれるよう声をかける ○(55) ○(89)
コミュニケーションをとり声をかけやすくなるよう配慮する ○(22) ○(43) ○(59) ○(90)
教員を混乱させない 保護者の意向に配慮しながら手技を簡素化する ○(60) ○(91)
学校看護師間で指導内容を統一する ○(42) ○(61) ○(92)
言い方を工夫する ○(24) ○(93)
繰り返し説明する ○(8) ○(62) ○(c)
医療の専門用語を使わずに説明する ○(7)
専門用語を説明する ○(17) ○(d)
細かな手順をマニュアルに落とし込む ○(94)
教員を主体として学びあう 共に子どもをケアし経験から学びあう どうケアするか話し合う ○(36, 37, 38) ○(63) ○(95)
子どもの情報を共有し子どもを理解する ○(28) ○(64) ○(96)
教員や学校看護師との関わりから教えることを学ぶ ○(97)
教員と共に資料をつくる ○(27) ○(34)
保護者の思いを伝える ○(18) ○(e)
教員を信頼する 教員に感謝する ○(98)
教員の力を信頼する ○(99)
教員を尊敬する ○(65) ○(f)
教員のことを理解する 説明への教員の理解度を理解する ○(26) ○(100)
教員の医療的ケアに対する考えを理解する ○(101)
教員が置かれている状況を理解する ○(102)
教員の指導目標をふまえる ○(66)
医療的ケアを実施できるよう教員を支援する意義を見出す 学校での看護師の役割を自分なりに理解する ○(103)
教員も医療的ケアをする意義を実感する ○(104)
医療的ケアの責任は学校看護師にあることを意識する ○(105)
教員を主体として進める 教員のペースで進める ○(67) ○(106)
教員全体に知ってもらう ○(107)
教員同士で学びあえるようにする ○(108)
他の教職員の力をかりる ○(21) ○(68) ○(109)
教員を主体と考える ○(69) ○(g)
教員自らの学びを待つ 効果的なケア方法を感じ取ってもらう ○(25) ○(110)
失敗から学んでもらう ○(111)

注1.( )の数字は表14に記載の番号に該当する

注2.( )に記載のa~gは該当するデータを示しており,データの詳細は付録を参照のこと

Ⅴ. 考察

1. 特別支援学校教員の適切な医療的ケア実施に向けた学校看護師による支援

研究1で,学校看護師は,第3号研修の実地研修を最も多く行う日には平均4.6件行っていること,学校看護師の約9割が,第3号研修の実地研修以外に普段の学校生活の中でも,教員が医療的ケアを適切に行えるよう,教員を支援していることが明らかとなった.また,研究2において,学校看護師にとって教員が適切に医療的ケアを実施できるよう支援するとは,学校看護師が医療的ケアに関する知識や技術を教員に伝達するのみならず,子どもの安全や安心や安楽を守ることを大切に意識しながら,教員の医療的ケア実施に向けた意欲や安心感を醸成し,教員を主体として学びあうことであることが明らかになった.研究1と研究2を統合した表5において,研究1の(1)第3号研修の実地研修での指導方法の21コードのうち,《知識や技術を伝達する》に10コード,《意欲や安心感を醸成する》の〈教員を混乱させない〉に4コードが分布していた.(2)実地研修以外の普段の学校生活での教員への支援の21コードは,《知識や技術を伝達する》に11コード,《意欲や安心感を醸成する》の〈教員の緊張を和らげる〉に6コードが分布していた.そのことから,学校看護師は,常に知識や技術を伝達するという支援を行いながら,第3号研修の実地研修での指導では教員を混乱させないことに,実地研修修了後の普段の学校生活では教員の緊張を和らげることに重点を置くというように,時期によって,支援内容の重点の置き方を変えていると推測された.

特別支援学校で医療的ケアを実施する教員は,学校看護師に安全安心を保証できる見守りを最も多く求めている(清水・勝田,2023).今回,【一緒にケアするスタンスで見守る】が抽出され,〈教員の緊張を和らげる〉に含まれていた.教員の第3号研修修了後,学校看護師が教員に医療的ケアを任せきりにするのではなく,いつでも一緒にケアするというスタンスで見守るという支援の在り方を大切にしていることを示している.他にも,〈教員の緊張を和らげる〉に【落ち着いてケアできるよう時間や場を整える】が含まれており,学校看護師による教員への見守りにおいて,環境を整えることの大切さが表れている.「見守り」は,私のこと,私が何をしようとしているのか,何が私に起こりうるのかを分かってくれているという自分と相手との信頼関係から構成される(Greve & Okamoto-Omi, 2023).結果にあるように,学校看護師は,共に子どもをケアし経験から学ぶ中で,教員のことを理解し信頼していた.一方で,学校看護師が教員に信頼してもらえるためには,《知識や技術を伝達する》中で,医療の専門職としてサポートしてくれるという信頼を教員から得ておくことが大切である.教員が学校看護師に見守ってもらえているという安心感を抱くためには,支援の構成要素のコードにあるように,教員が安心してケアできる環境となるよう整え,教員を理解し信頼し,知識技術を伝達する中で教員からも信頼してもらえる関係を築くことが必要であろう.

研究2で,特別支援学校教員が医療的ケアを適切に実施できるよう学校看護師が支援するなかで,教員を主体として学びあっていることが明らかとなった.学校看護師が,教員を主体として学びあうには,共に子どもをケアし経験から学びあい,教員のことを理解し,医療的ケアを実施できるよう教員を支援する意義を見出し,教員を主体に進め,教員自らの学びを待つということが大切である.特別支援学校で医療的ケアを実施する教員が学校看護師に希望する支援や良かったと感じた支援として,教育の視点を共有することや教育の場を意識することがあがっている(清水・勝田,2023).それらは,《教員を主体として学びあう》の〈医療的ケアを実施できるように教員を支援する意義を見出す〉の【学校での看護師の役割を自分なりに理解する】【教員も医療的ケアをする意義を実感する】,〈教員のことを理解する〉の【教員の指導目標をふまえる】に該当すると考える.そのことから,学校看護師が教育の視点を共有し,教育の場を意識するには,学校看護師も経験から学ぶことが重要である.《教員を主体として学びあう》の〈共に子どもをケアし経験から学びあう〉際,学校看護師は,教員とケアについて話し合い,教員や学校看護師との関わりから教えることを学んでいた.このことは,経験から学びあうには,周囲の人々との関わり,つまり相互作用が重要であることを示している.複数の人が関係する相互作用の中で,その場に参加した人が参加する前と後で考え方を建設的に変化させる建設的相互作用(Miyake, 1986)が生じていたと推測される.学校看護師は,これまで病院等で看護師や家族に対する教育経験はあるが,教育職である教員への教育経験は乏しいと考えられる.学校看護師は,学校看護師同士の話し合いや,教員との関わりを振り返ることで教えることを学んではいたが,より様々な経験を共有し振り返ることができるためにも,第3号研修の実地研修を担当する指導看護師への研修を充実させ,他校の学校看護師と共に教える経験を振り返る機会を得ることが望ましい.

学校看護師は,《教員を主体として学びあう》の〈教員自らの学びを待つ〉際に,効果的なケア方法を感じ取ってもらうこと,教員に失敗から学んでもらうことを意図的に行っていた.新たな価値を創造するような知識の構築には,省察を促し,他者との対話の場が必要であり(金井・楠見,2012),内省支援が経験学習を促すうえで重要であるとされている(中原,2010).学校看護師が教員に失敗から学んでもらうことを意図的に行っていたのは,教員への内省支援にあたり,学校看護師は教員が経験から学べるように支援していたと考えられる.在宅療養児の母親が医療的ケアを実践するプロセスでも,看護師の手技や行為をまねて医療的ケアを実施する段階から,母親は自分で調べ医療職に尋ねるなど自分で行動することでケアの根拠への気づき,医療的ケアの必要性を判断する分析的思考の獲得という次の段階に至っている(草野・高野,2016).教員自身が効果的なケア方法を感じ取る,失敗から学べるよう学校看護師が関わることで,教員自身で判断できる部分が増え,教員の医療的ケア実施のレベルをさらにアップさせることにつながるかもしれない.

今回,教員による適切な医療的ケア実施にむけ,学校看護師が様々な支援を教員に行っていることが明らかとなった.しかし,研究1の結果で,「医療的ケアに関する勉強会や研修の場を提供する」の選択肢が46.0%と他の選択肢と比較し低値であった.全国の特別支援学校の医療的ケアコーディネータの教員を対象とした調査で,専門知識等に関する講義を学校看護師に実施してもらいたいが,実際には実施してもらえていないことが報告されている(山本ら,2019).学校看護師の人員不足や勤務時間の制限により,支援を十分には実践できていないことも考えられる.教員が認定特定行為業務従事者として医療的ケアを実施する体制をとる場合,単純に,教員が医療的ケアを実施することで学校看護師の業務量が減るとは言えない状況が推測される.そのこともふまえ,教員が子どもへの教育として医療的ケアを安心して適切に実施していくことができるよう,教員への支援を十分に行える学校看護師の人数や能力を考慮し,特別支援学校において学校看護師の適切な配置が求められる.

2. 研究の限界と今後の課題

今回,特別支援学校の教員が適切に医療的ケアを実施できるよう,学校看護師が行っている支援を明らかにした.今後は,今回明らかになった学校看護師による支援に対する教員の認識を明らかにし,結果を洗練させていく必要がある.また,教員の医療的ケアを実施できるようになるまでの学びの過程を明らかにすることで,学校看護師による支援が,教員の学びの過程にどのように影響しているのかをみていく必要がある.

付記:本研究の一部を第42回日本看護科学学会学術集会で発表した.

謝辞:研究にご協力いただいた教育委員会,学校長,学校看護師の皆様に,深く感謝いたします.本研究は,公益信託中西睦子看護学先端的研究基金を受けて実施しました.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:FSは研究の着想から論文執筆までの全般にわたって貢献した.HKは研究プロセス全体への助言,論文の修正に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

文献
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  •  金井 壽宏, 楠見 孝(2012):実践知:エキスパートの知性,有斐閣,東京.
  •  草野 淳子, 高野 政子(2016):在宅療養児の母親が医療的ケアを実践するプロセス,日小児看護会誌,25(2), 24–30.
  •  Miyake,  N. (1986): Constructive interaction and the iterative process of understanding, Cogn. Sci., 10, 151–177.
  •  宮本 雄策, 福田 美穂, 橋本 修二(2009):肢体不自由養護学校における医療的ケア実施数の推移と教師の意識変化について,聖マリアンナ医大誌,37, 433–439.
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  •  盛岡 淳美, 松浦 和代(2017):特別支援学校における児童生徒の医療的ケアに関する保護者の視点からみた現状の問題とニーズ,日小児看護会誌,26, 118–124.
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  • 日本小児看護学会(2010): 特別支援学校看護師のためのガイドライン改訂版.
  •  清水 史恵, 勝田 仁美(2023):特別支援学校で医療的ケアを実施する教員への学校看護師による支援―教員の認識に焦点を当てて―,日小児看護会誌,32, 116–124.
  •  清水 春美, 楊 娟, 菅原 弘,他(2012):特別支援学校での教員による医療的ケア実施における関係者の意識に関する研究,教育情報学研究,11, 21–27.
  •  鈴木 和香子, 中垣 紀子(2016):特別支援学校における医療的ケアの現状―養育者の語りから―,日小児看護会誌,25(2), 68–73.
  •  山本 陽子, 二宮 啓子, 岡永 真由美,他(2019):介護保険法改正後の特別支援学校における医療的ケアに実施・支援体制の実態―医療的ケアに携わっている教諭の視点から―,神戸看大紀,23, 1–9.
  •  吉岡 美幸子, 井合 瑞江(2009):養護学校教員医療的ケア実技研修の改善策―医療的ケア練習用人形を制作,導入して―,重症心身障害療育,4(1), 43–45.
  • 全国訪問看護事業協会(2016): 改訂介護職員等による喀痰吸引・経管栄養研修テキスト指導者用―指導上の留意点とQ&A.中央法規,東京.
 
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