Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Overestimation of Driving Ability of Older Drivers in a Japanese Driver’s License Renewal Course
Eri MinematsuKei-ichiro SaikiSachiyo Murashima
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2024 Volume 44 Pages 526-535

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Abstract

目的70歳以上の高齢者講習受講者を対象に,運転能力の自己評価と客観的運転評価とを比較し,自身の運転能力を過大評価する者の特徴を明らかにすること,高齢運転者は免許更新時の実車指導を理解し納得しているかを検討することを目的とした.

方法:大分県運転免許センターにて無記名自記式質問紙調査を実施した.質問紙と実車指導の結果から自己評価と客観的運転評価を比較し,過大評価傾向を従属変数とした順序ロジスティック解析を実施した.

結果:有効回答105件(30.4%)を分析した.運転能力の自己評価と客観的運転評価とを比較した結果,5%が自身の運転能力を過大評価しており,過大評価をする者は,「年齢」が高いこと,「危険運転チェック」が低いことが示された.

結論:運転能力を過大評価する者に対し,免許センターの看護職は,安全ゆとり運転の実行や具体的な運転断念の目安を提示する等の指導を予防的に行う必要がある.

Translated Abstract

Purpose: This study compared the actual and self-perceived driving ability of older drivers, examined the characteristics of those who overestimated their own driving ability and considered whether older drivers understand and agree with in-vehicle instruction in courses.

Methods: A self-administered, anonymous questionnaire was administered to license renewal applicants aged 70 and over at Oita Driver’s License Center. The questionnaire results and in-vehicle instruction results were used to analyze the discrepancy between their actual and self-perceived driving ability, and an ordinal logistic analysis was performed with overestimation as the dependent variable.

Results: We analyzed 105 valid responses (30.4%) and found that the 5% who overestimated their actual driving ability in comparison to their self-perceived driving ability were higher in “age” and had a lower “risky driving score”.

Conclusion: The results show the necessity of providing individual support to older drivers who overestimate their driving ability when they renew their driver’s license by such measures as offering them specific guidelines for giving up driving.

Ⅰ. 緒言

近年,高齢運転者による交通事故が大きな問題となっている.運転者が過失の最も重い第一当事者となる交通死亡事故発生件数は,免許保有者10万人あたり全年齢層では2.8件であるのに対し,70歳以上で4.3件,75歳以上で5.7件,85歳以上では10.3件であり,85歳以上は16~19歳(10.0件)よりも多い(警察庁,2022a).高齢運転者による事故を防ぐ方策として,これまで度々道路交通法が改正されている.70歳以上の免許更新制度について,70~74歳の運転者は,実車指導を含む高齢者講習を受講した場合に,運転免許を更新できる(警察庁,2022b警察庁,2022c).75歳以上の運転者は,これに加え認知機能検査を受検することが義務づけられており,さらに一定の違反歴がある者は,運転技能検査(実車試験)に合格することが運転免許更新の条件となる.つまり75歳以上で認知症と診断された者や,一定の違反歴がある者で運転技能検査に合格できない者は,運転免許を更新することが出来ない.これまでの高齢運転者対策では主に認知機能の低下に着目した対策が進められてきたが,高齢運転者による死亡事故のうち認知機能の低下がみられない者による事故が約6割を占めていること等を踏まえ,認知機能だけでなく加齢による運転技能の低下に着目した対策も必要であるとの観点から2022年5月に運転技能検査が導入された(警察庁,2022d).運転技能検査の対象である75歳以上の違反歴がある者は,運転免許保有者の約17.5%であり,死亡・重症事故件数が免許保有者全体と比較して10万人当たり約1.8倍多く,将来的に交通事故を起こす危険性が高いとされている(警察庁,2020, 2022d).しかし,75歳以上の死亡・重症事故の約7割は違反歴のない者が起しており,高齢者講習の対象者もリスクがないとは言えない.そのため高齢者講習を通じて高齢運転者の事故予防活動をするためには,高齢者講習対象者のうち特に交通事故のハイリスク者を明らかにする必要がある.

免許更新制度の厳格化に加え,運転免許を自主返納することも推奨されている.しかし,自動車は高齢者の主な移動手段となっていることが多いことから,運転を止めた後は,抑うつ症状の増加や,健康状態や認知機能の低下,介護施設への入所や死亡のリスクが高まることが海外のシステマティックレビューで報告されている(Chihuri et al., 2016).従って,特に運転の代替手段を確保出来ない場合には,運転を続けることで健康問題が生じるリスクは増えにくいと推測される.しかし,前述した通り加齢とともに交通事故は増えることから,安全に運転することが難しくなったタイミングで運転を断念する必要がある.つまり,適切なタイミングで運転を止める判断をすることが重要であり,そのためには自身の運転能力を正しく評価する必要がある.

高齢運転者の運転能力の自己評価については,自己評価と路上での技能測定の得点に弱い相関(r = 0.24)があることを報告した研究もあるが(Selander et al., 2011),高齢運転者の多くが自身の運転技能や安全性について過大評価することが多くの研究で報告されている.Huang et al.(2020)は25件の論文をシステマティックレビューし,高齢者は自身の運転能力を若い頃の自分や,同世代のドライバー,他の平均的なドライバーと比較して良いと評価しており,しばしば過大評価する傾向が多いことを報告している.日本人を対象とした研究でも高齢者が自己の運転能力を過大評価することが報告されている(Kosuge et al., 2021a).運転能力を過大評価した者は,同年代の他のドライバーと同じかそれ以下と評価した者と比べ,運転試験に不合格になる可能性が4倍高い(Freund et al., 2005)ことや,過去5年間に事故を起こした者が多い(Wood et al., 2013)ことが報告されている.

一方で,高齢者は自分の運転能力の低下に応じて「補償運転」をすることが,多くの研究で報告されている(Wood et al., 2013Charlton et al., 2006Baldock et al., 2006).「補償運転」とは,運転技能の低下を意識した運転者が,以前よりゆとりをもった運転をすることによって,安全に運転をするための戦略であり,松浦(2022)はこの「補償運転」を「安全ゆとり運転」と言い換えている.「安全ゆとり運転」は,高齢運転者が安全に運転をするために推奨されているものの,全ての高齢運転者が実施しているのではなく,安全運転意識が高い者(松浦,2022)や,運転が難しい状況で自信がない場合(Baldock et al., 2006)に実施することが報告されている.また自身の運転能力を正しく評価していない場合,「安全ゆとり運転」も不十分である可能性が高い(Wood et al., 2013).

これまで運転能力の過大評価に対し,自己認識と運転行動を改善することを目的とした研究はいくつか報告されており,ワークブックを用いた教育的介入(Kosuge et al., 2021b)や,他者の運転を見ることで自分の運転を顧みて自らの安全性についての気づきを促すミラーリング法(太田,2011),交差点での一時停止・安全確認行動に対して行動修正法を用いた教育プログラム(向井ら,2007)等が開発されている.しかし,事故の危険性を評価する認知過程の一つであるハザード知覚には加齢の影響があり,教育をした場合でも一部には効果がみられないという報告もあり(蓮花ら,2007),加齢とともに身体機能や認知機能が低下していく中での教育による効果は限定的である.従って自身の運転能力を過大評価する者は,適切なタイミングで運転を止めるという判断をすることが難しいと予測され,運転を止めること,すなわち運転断念がより重視される必要がある.

2015年に熊本県警は「認知症などの病気に詳しい医療専門職を免許センター内に配置すべき」と,看護師を配置した(鷹木,2018).それが全国に広がり,2023年4月時点で43の都道府県の免許センターに看護職が配置されている(うち保健師は15都府県).これらの看護職は,本人や家族からの相談への対応や,自主返納後の支援施策や地域包括支援センターの紹介,運転経歴証明書の説明等自主返納後の不安を取り除くための説明等を実施している(警察庁,nd).免許センターの看護職は,これらの活動に加え,交通事故のリスクが高いと報告されている運転能力を過大評価する者に対しても支援することが期待される.そのためには支援対象となる高齢者を的確に抽出することが望ましく,まず高齢者講習を通じて運転能力を過大評価する者の特徴を明らかにする必要がある.また高齢者講習の対象者は,実車指導で自身の運転能力を見直す機会があるが,免許更新時の実車指導で指摘された事項を理解し納得しているかについても調査する必要がある.

Ⅱ. 研究の目的

本研究は,70歳以上の免許更新者が受講する高齢者講習において,運転能力の自己評価と客観的運転評価とを比較し,自身の運転能力を過大評価する者の特徴を明らかにすること,高齢運転者は免許更新時の実車指導を理解し納得しているかを検討することを目的とした.

Ⅲ. 用語の定義

「安全ゆとり運転」は,運転技能の低下によって危険となった運転をより安全となるように努める運転で,運転自体を減らしたり,危険な状況を避けるよう運転状況を選択したり,運転前の準備をしたり,運転中は安全第一に運転をすることである(松浦,2022).先行研究では「補償運転」と呼ばれていることも多いが,松浦(2022)は「補償運転」を「安全ゆとり運転」と言い換えており,本研究でも「安全ゆとり運転」とした.「運転断念」は,免許返納の有無を問わず運転を止めることとした.

Ⅳ. 研究方法

1. 研究デザイン

無記名自記式質問紙による横断調査を実施した.

2. 研究対象者および調査方法

本研究は,大分県運転免許センターを管轄する大分県警交通部運転免許課(以下,センター)の協力を得て行った.研究対象は,70歳以上の普通免許更新者で,2023年3月8日から2023年7月31日に高齢者講習を受検した全数とした.高齢者講習終了後にセンターの担当者が研究協力依頼書と質問紙,返信用封筒を配布した.返信用封筒にはセンターの担当者がIDを振った.対象者には質問紙への回答後,各自で厳封し返送するよう依頼した.回収は2023年8月15日までとした.

匿名性を保って質問紙とセンターからの結果を突合するために,研究責任者は,回収した質問紙からID,受講日,生まれた年月,性別の一覧を作成し,センターに各対象者の実車指導の結果について回答を求めた.

3. 調査内容と変数の取り扱い

1) 調査内容と変数について

調査内容と変数の取り扱いを付録1に示す.まず,運転能力の自己評価と客観的運転評価を比較するために,「運転能力の自己評価」を収集した.自己評価は,Huang et al.(2020)のシステマティックレビューで最も多く使用されていた一般的なリッカート尺度による自己評価方式とし,“あなたは他の平均的なドライバーと比べどのくらい運転が上手だと思いますか”という問いに対し,対象者に“上手な方だ”,“やや上手な方だ”,“やや下手な方だ”,“下手な方だ”の4件法で回答を求めた.次に,客観的運転評価としてセンターから実車指導時の指摘事項を収集した.これは,運転評価の判断基準(警察庁,2022d)の10項目に“指摘されたことは何もなかった”を追加して尋ね,“指摘されたことは何もなかった”に該当する場合に100点,それ以外の場合は運転評価の判断基準(警察庁,2022d)に従い100点からの減点方式で点数化し,「運転スコアセンター回答」とした.また対象者から収集した運転能力の自己評価と,センターから収集した客観的運転評価のズレを表す指標として「過大評価傾向」を作成した.Wood et al.(2013)は自己評価(5段階スケールで収集した結果を10段階に変換)と路上運転評価(10段階スケール)の差スコアを使用しており,本研究でも「運転スコアセンター回答」(100点満点で収集した結果を4段階スケールに換算)と「運転能力の自己評価」(4段階スケール)の点数の差を「過大評価傾向」とし,「運転スコアセンター回答」の方が高い場合に“過小評価”,差がない場合に“適切”,「運転能力の自己評価」の方が高い場合に“過大評価”の3群に分けた.

自身の運転能力を過大評価する者の特徴を明らかにするために,質問紙にて次の項目を収集した.まず,「運転頻度」は週に何日運転をするかの回答を求め,「年齢」は生まれた年月と実車指導の受講日から算出した.さらに運転能力の低下を判断する尺度として「危険運転チェック」(松浦,2008)を収集した.この尺度は,信頼性(α = 0.804)・妥当性が検証されている15項目からなる尺度である.対象者にA.数年前からある,B.最近ある,C.あまりないの3段階で回答を求めるものであり,AとBの合計の数を足して危険運転チェック得点を算出した(松浦ら,2008Matsuura, 2011).15項目のうち,11項目以上回答している者を集計の対象とした.また「安全ゆとり運転」の実施状況も収集した.「安全ゆとり運転」の20項目について,対象者にa.数年前からそうしている,b.最近そうしている,c.あまりしていないの3段階で回答を求め,a,bの合計を足すことで「安全ゆとり運転」得点を算出した(松浦,2022).20項目のうち,15項目以上回答している者を集計の対象とした.また,性別,運転断念に影響を及ぼす要因として「同居者の運転」を尋ねた.これは,同居者の有無と運転状況のうち,“同居者も運転する”場合に“有”,“同居者は運転しない”,“同居者はいない”場合に“無”とした.さらに「運転断念の考え」は,“あなたはどのような状態になったら運転をやめるか,考えたことはありますか”の問いに対し対象者に“はい”,“いいえ”で回答を求めた.そして質問紙で「実車指導結果の納得度」(0~10の11段階)について回答を求めた.

高齢運転者は免許更新時の実車指導を理解し納得しているかを評価するために,前述の「運転スコアセンター回答」と同様に,質問紙でも実車指導時の指摘事項を収集し,「運転スコア本人回答」とした.指摘事項は「運転スコアセンター回答」と同様の項目に“指摘事項を覚えていない”を追加して尋ねた.「運転スコア本人回答」は,「運転スコアセンター回答」と同様に点数化した.ただし,“指摘されたことはあるが,内容は覚えていない”のみに該当する場合には100点とした.

その他,背景情報として質問紙で,「現在の公共交通機関の利用頻度」を尋ねた.また「運転断念後に想定する移動の可否」について,“運転をやめた後,これまで運転して移動していた場所に行くことは出来ますか”の問いに対し,“全ての場所に行くことができる”,“行ける場所もあるが行けない場所もある”,“全ての場所に行くことが出来ない”で回答を求めた.さらに運転断念後の移動手段について「現在の公共交通機関の利用頻度」とのギャップを調査するために「運転断念後に想定する移動手段」を尋ねた.

4. 分析方法

最初に,調査項目ごとに記述統計で分布を示した.使用した尺度「危険運転チェック」「安全ゆとり運転」は信頼性の検討のためにCronbachのα係数を算出した.次に,高齢運転者は免許更新時の実車指導を理解し納得しているかを評価するために,「運転スコア本人回答」と「運転スコアセンター回答」との散布図を作成し,回帰式と決定係数を算出した.また,実車指導の結果を理解していない者を抽出するために,「運転スコア本人回答」と「運転スコアセンター回答」を70点以上と未満で4区分にした.本研究の対象者は高齢者講習受講者のため,実車指導の結果に関係なく運転免許を更新することが可能であるが,高齢者講習と同じ指標を用いる運転技能検査では,70点以上が合格点であり,70点未満の者は免許更新不可となることから,70点以上か未満で区切った.さらに,自身の運転能力を過大評価する者の特徴を明らかにするために過大評価傾向別に正規性のある「年齢」は一元配置分散分析を,それ以外の項目はクラスカル・ウォリス検定を行い,群間差が見られた項目について多重比較(正規性のある「年齢」はTukey-Kramer法,それ以外の項目はSteel-Dwass法)を実施した.また,「過大評価傾向」を従属変数とし,群間差が見られた項目について順序ロジスティック解析を実施した.分析には,SAS OnDemand for AcademicsおよびR(v4.2.2)を使用し,有意水準は5%未満(p < 0.05)とした.

5. 倫理的配慮

本研究は,大分県立看護科学大学研究倫理審査委員会の承認を得て,その内容を遵守し,実施した(承認番号22-79).研究依頼書には,研究目的,方法,研究参加の自由意志,別途講習時の実車指導の結果も活用すること,プライバシーの保護,匿名性の確保,データ管理・破棄は研究者が責任を持つこと,研究成果の公表方法,質問紙への回答・返信をもって研究に同意したとみなすこと,センターの業務とは関係がないこと等を明記した.質問紙とセンターからの結果の突合は,匿名性を確保して実施した.

Ⅴ. 結果

配布した質問紙345部のうち,106部を回収した.このうち個人属性や運転状況等が未回答だった1名を除く105名を分析対象とした(回収率30.7%,有効回答率30.4%).

1. 調査結果の概要

対象者の背景情報と運転能力の自己評価,運転能力を表1に示す.まず,運転頻度について,週5日以上運転している者は67名(63.8%)で,平均5.0日(標準偏差=2.1,最小=0,最大=7)だった.年齢は,平均77.3歳(標準偏差=4.8,最小=69,最大=90)だった.運転断念を考えた経験がある者は88名(84.6%)だった.同居者の有無と運転状況は,「同居者も運転する」が62名(59.0%)であるが,運転断念後に想定する移動の可否では「全ての場所に行くことが出来る」は13名(13.7%)のみだった.また運転断念後に「全ての場所に行くことが出来ない」は15名(15.8%)だった.さらに運転断念後にバスや電車を利用可能と答えたのは53名でこれは対象者の半数以上であるが,実際に現在バスや電車を月1回以上利用している者は15名(14.4%)で,月に0回が89名(85.6%)だった.「運転スコアセンター回答」は,運転技能検査の場合に不合格とされる70点未満の者は21名(20.2%)だった.0~10の11段階のスケールで回答を求めた「実車指導結果の納得度」は,平均8.0点(標準偏差=2.5,最小=0,最大=10)で,8~10点の納得している者が64名(74.4%),0~2点の納得していない者が4名(4.7%)だった.また運転能力の「過大評価傾向」について,過小評価は75名(76.5%),適切が18名(18.4%),過大評価が5名(5.1%)だった.

表1 対象者の背景情報と自己評価,運転能力

n = 105)

n %
年齢
69~74歳 30 28.6
75~79歳 46 43.8
80歳以上 29 27.6
性別
62 59.0
43 41.0
運転状況(日/週)
0日 5 4.8
1日~2日 8 7.6
3日~4日 25 23.8
5日以上 67 63.8
運転断念を考えた経験の有無 *運転断念の考えa
88 84.6
16 15.4
同居者の有無と運転状況 *同居家族の運転
同居者も運転する 62 59.0
同居者は運転しない 24 22.9
同居者はいない 19 18.1
運転断念後に想定する移動の可否b
全ての場所に行くことが出来る 13 13.7
行ける場所もあるが行けない場所もある 67 70.5
全ての場所に行くことが出来ない 15 15.8
現在の公共交通機関の利用頻度a
電車バス0回/月 89 85.6
電車バス1~3回/月 11 10.6
電車バス4~7回/月 4 3.8
タクシー0回/月 84 80.8
タクシー1~3回/月 17 16.3
タクシー4~7回/月 3 2.9
運転断念後に想定する利用可能な移動手段(複数回答)c
他者の車に同乗 48
バス・電車 53
タクシー 47
徒歩・自転車・シニアカー 47
運転スコア本人回答d
運転スコア本人回答70点以上(合格) 57 56.4
運転スコア本人回答70点未満(不合格) 44 43.6
運転スコアセンター回答 *客観的運転評価a
運転スコアセンター回答70点以上(合格) 83 80.8
運転スコアセンター回答70点未満(不合格) 21 20.2
実車指導結果の納得度e
納得している(8~10点) 64 74.4
やや納得している(6~7点) 5 5.8
普通(5点) 9 10.5
あまり納得していない(3~4点) 4 4.7
納得していない(0~2点) 4 4.7
他の平均的なドライバーと比べ運転が上手か *運転能力の自己評価f
上手な方だ 12 12.1
やや上手な方だ 45 45.5
やや下手な方だ 33 33.3
下手な方だ 9 9.1
過大評価傾向(=運転能力の自己評価-客観的運転評価換算値)g
過小評価 75 76.5
適切 18 18.4
過大評価 5 5.1

欠損値や非該当の存在により合計が105に一致しない項目がある

a n = 104,b n = 95,c n = 82,d n = 101,e n = 86,f n = 99,g n = 98

c 運転断念後に想定する移動の可否」について「全ての場所に行くことが出来る」「行ける場所もあるが行けない場所もある」と回答した者のみを対象とした.

* 本表以外の図表で使用する記載名を併記する.

使用した尺度のCronbachのα係数は,「危険運転チェック」が0.867,「安全ゆとり運転」は0.888だった.「危険運転チェック」の結果を付録2に,「安全ゆとり運転」の結果を付録3に示す.「危険運転チェック」は,15点満点で平均4.3点(標準偏差=3.4,最小値=0,最大値=14)だった.「安全ゆとり運転」は,20点満点で平均14.9点(標準偏差3.5,最小=5,最大=20)だった.

2. 運転スコア本人回答とセンター回答の相関と運転能力の過大評価傾向

図1に,「運転スコア本人回答」と「運転スコアセンター回答」の相関と運転能力の「過大評価傾向」の分布を示す.「運転スコアセンター回答」は「課題走行」時の指摘結果であるが,「運転スコア本人回答」は,「課題走行」時に加えその前に実施した「ならし走行」時に受けた指摘も含まれる.「運転スコア本人回答」と「運転スコアセンター回答」の間には,正の相関がみられた(調整済みR2 = 0.2).X軸の「運転スコア本人回答」・Y軸の「運転スコアセンター回答」ともに70点以上の右上に位置する者は47名(49.0%),左上は32名(33.3%),左下は10名(10.4%)であった.これに対し,X軸の「運転スコア本人回答」が70点以上,Y軸の「運転スコアセンター回答」が70点未満である右下に位置する者は7名(7.3%)だった.この右下に位置する7名は,本人が回答した運転スコアは高かったにもかかわらず,センターが回答した実際の運転スコアは低かった者である.

図1  運転スコア本人回答と運転スコアセンター回答の相関と運転能力の過大評価傾向

3. 運転能力を過大評価する者の特徴

表2に「過大評価傾向」の3群(過小評価,適切,過大評価)に対し,調査項目の平均値の差を比較し有意差がみられた項目について,多重比較を行った結果を示す.「年齢」は一元配置分散分析を,その他の項目はクラスカル・ウォリス検定を実施した結果,「年齢」と「危険運転チェック」,「実車指導結果の納得度」において「過大評価傾向」の3群に有意差が見られた.「年齢」は過小評価群の平均値が76.8歳に対し,過大評価群では82.0歳で,多重比較では有意に過大評価群は過小評価群よりも高かった.「危険運転チェック」は15点満点中,過小評価群の平均値が4.9点に対し,適切群の平均は2.6点で,多重比較では有意に過小評価群が適切群よりも高かった.「実車指導結果の納得度」は0~11段階のスケールで,適切群の平均値は7.5に対し,過大評価群の平均は10.0で,多重比較では有意に過大評価群が適切群よりも納得度が高かった.

表2 過大評価傾向による群間の比較

過小評価 適切 過大評価 検定結果*1 多重比較*2
n mean std n mean std n mean std 統計量 p
運転頻度a 75 4.9 2.1 18 5.4 1.5 5 4.0 2.5 χ2 = 1.45 0.485
年齢a 75 76.8 4.8 18 78.9 3.6 5 82.0 4.3 F = 4.00 0.022

過小評価-適切(p = 0.209)

過小評価-過大評価(p = 0.044)

適切-過大評価(p = 0.379)

危険運転チェックb 69 4.9 3.6 18 2.6 2.5 4 4.0 2.2 χ2 = 6.93 0.031

過小評価-適切(p = 0.024)

過小評価-過大評価(p = 0.924)

適切-過大評価(p = 0.522)

安全ゆとり運転c 70 15.2 3.2 18 13.6 4.2 4 14.8 5.3 χ2 = 2.42 0.298
実車指導結果の納得度d 60 7.9 2.7 17 7.5 2.2 4 10.0 0.0 χ2 = 6.10 0.047

過小評価-適切(p = 0.446)

過小評価-過大評価(p = 0.112)

適切-過大評価(p = 0.040)

n % n % n %
性別a
 男性 44 75.9 11 19.7 3 5.2 χ2 = 0.04 0.982
 女性 31 77.5 7 17.5 2 5.0
 計 75 76.5 18 18.4 5 5.1
同居家族の運転a
 有 42 76.4 12 21.8 1 1.8 χ2 = 3.43 0.180
 無 33 76.7 6 14.0 4 9.3
 計 75 76.5 18 18.4 5 5.1
運転断念の考えe
 有 64 76.2 15 17.9 5 6.0 χ2 = 0.93 0.628
 無 10 76.9 3 23.1 0 0.0
 計 74 76.3 18 18.6 5 5.2

an = 98,bn = 91,cn = 92,dn = 81,en = 97

*1 年齢は一元配置分散分析を,その他の項目はクラスカル・ウォリス検定を実施した.

*2 年齢はTukey-Kramer法を,その他の項目はSteel-Dwass法にて多重比較を実施した.

表2で有意差のあった「年齢」「危険運転チェック」「実車指導結果の納得度」を独立変数とし,従属変数を「過大評価傾向」として順序ロジスティック解析をした結果,「実車指導結果の納得度」が有意でなかったため除外された.「年齢」「危険運転チェック」を独立変数として解析した結果を表3に示す.「年齢」は「過大評価傾向」と正の関連があり,年齢1歳あたりのオッズ比は1.15(95%信頼区間:1.03~1.30)だった.「危険運転チェック」は「過大評価傾向」と負の関連があり,危険運転チェック1点あたりのオッズ比は0.80(95%信頼区間:0.66~0.94)だった.

表3 過大評価傾向との関連要因

n = 91)

オッズ比 95%信頼区間 p
年齢 1.15 1.03~1.30 0.013
危険運転チェック 0.80 0.66~0.94 0.013
モデルの適合度統計量 AIC = 116.595

検定方法:順序ロジスティック解析

従属変数:過大評価傾向(1=過小評価,2=適切,3=過大評価)

独立変数:年齢(1歳あたり),危険運転チェック(0~15点)

Ⅵ. 考察

1. 高齢運転者は免許更新時の実車指導を理解し納得しているか

対象者とセンターの双方から収集した実車指導結果を比較した結果,「運転スコア本人回答」は,「課題走行」に加え「ならし走行」時の結果も含まれることから,全体的に「運転スコア本人回答」の方が低かったものの,図1のように「運転スコア本人回答」と「運転スコアセンター回答」には正の相関がみられた.また,表1のように実車指導結果を納得している者は74%いたこと,表3より過大評価群は実車指導結果の納得度が有意に高いことから,多くの高齢運転者は免許更新時の実車指導を理解し納得していると言える.一方で,図1のように本人が回答した運転スコアは高かったにもかかわらず,センターが回答した実際の運転スコアは低かった者,つまり実車の指摘事項を過小申告する者が7%いること,表1のように実車指導結果を納得していない者が5%いたことが明らかとなり,実車指導を理解していない者,納得していない者もいることが示された.高齢者講習の在り方として,実車指導では自らの運転能力を客観的に自覚させることが求められており(警察庁,2020),特にこれらの指摘事項を過小申告する者に対しては,実車指導員は実車指導の結果を理解できるようフォローアップをする必要があろう.

2. 運転能力の自己評価と客観的運転評価の比較と運転能力を過大評価する者の特徴

高齢運転者の運転能力の自己評価と客観的運転評価を比較した結果,高齢運転者は自己の運転能力を過大評価する傾向が多いという研究(Huang et al., 2020)と同じく,本研究でも5%が自身の運転能力を過大評価していた.運転能力を過大評価する者の特徴として表3より,「過大評価傾向」には「年齢」と「危険運転チェック」が関係しており,「年齢」が上がると「過大評価傾向」が高くなることが明らかになった.また「過大評価傾向」が高い者ほど「危険運転チェック」が低い可能性があることが示されたことから,「過大評価傾向」の者は,セルフチェックも甘くなると考えられる.これは,危険運転が少ないと自己申告した者ほど自身の運転能力を過大評価するという,藤川・西山(2002)の結果と同様の傾向だと言える.

また,表2の多重比較より「実車指導結果の納得度」は適切群よりも過大評価群において納得度が高いことが示された.これは,図1に示すように過大評価群は運転スコアセンター回答が低いことから,実車指導を受けたことで自身の運転を振り返り納得度が高かった可能性や,過大評価群が4名と少ないことによる偶然の結果である可能性があり,今後の調査が必要である.さらに今回の結果では,「過大評価傾向」と「安全ゆとり運転」や「運転断念の考え」については関係性が見られなかった.しかし,自身の運転能力のセルフチェックツールである「危険運転チェック」が甘くなることが示されたことから,運転能力を過大評価する者は,運転断念のタイミングを自己判断することは難しいことが推測される.また公共交通機関の少ない大分県で調査をした本研究では,表1より同居家族の運転と運転断念後に想定する移動の可否から,運転する同居者がいても運転断念後の移動には制限があることが示された.運転代替となる移動手段を確保することによって運転断念に至りやすいことが報告されているが(峰松ら,2021橋本・山本,2011),本研究では運転断念後に「全ての場所に行くことが出来ない」のは16%もおり,これらの対象者は運転を止めたい時にも移動手段がないために止めることが難しい環境にいると考えられた.従って免許センターでは,運転断念後の移動手段の制限に配慮しながら特に運転能力を過大評価する者に対し,安全ゆとり運転の実行や具体的な運転断念の目安を提示する等の予防的な指導を行うことが求められる.これは全国で免許センターに配置が進む看護職の役割であろう.

運転技能検査の対象者である違反歴がある者は事故のリスクが高いとされているが,実際には75歳以上の死亡・重傷事故の大部分は違反歴がない者,すなわち,高齢者講習の対象者によって引き起こされている.従って高齢者講習の対象者にも,安全指導を行う必要性が示されている(警察庁,2020).本研究では,多くの高齢運転者は免許更新時の実車指導を理解し納得していたが,実車の指摘事項を過小申告する者も7%見られ,実車指導員はこれらの者に対し,実車指導の結果を理解できるようなフォローアップをする必要性が示された.また,自身の運転能力を過大評価する者は5%いることが明らかとなり,今後高齢運転者の事故防止をさらに推進するために,免許センターの看護職は,自身の運転能力を過大評価する者に対して,「安全ゆとり運転」の実行や「運転断念」の目安を提示する等の指導を具体的に行う必要がある.本研究はこのような介入が必要な者の特性を示した点が新たな知見である.

3. 研究の限界

本研究は,都市部と比較し公共交通機関の少ない大分県で調査をしたことから,特に公共交通機関の多い地域への一般化には限界がある.また過大評価の要因として認知機能低下の有無を考慮する必要があるが,75歳以上では更新時に認知機能検査を受検し,その結果認知症の恐れなしと判断された者のみ最終的に免許更新が行えることから,本研究では検討できなかった.さらに本研究では,調査への回答者のみを対象としたため,70歳以上の運転免許更新者の中で本研究に参加した者としなかった者の運転能力の比較は出来なかった.そして本研究では,実車指導結果の理解度を測定するために,運転スコア本人回答と運転スコアセンター回答を比較したが,運転スコア本人回答には「課題走行」時に加え,「ならし走行」時の指摘も含まれていることから,単純に回答を比較できないことも研究の限界である.これらの限界を踏まえ,今後の研究として公共交通機関の多い地域でも研究を実施し,高齢運転者の交通事故予防につなげたい.

Ⅶ. 結論

運転能力の自己評価と客観的運転評価とを比較した結果,5%が自身の運転能力を過大評価していた.運転能力を過大評価する者の特徴として,「年齢」が高いことと,「危険運転チェック」が低いことが示された.過大評価をする者は,加齢に伴いセルフチェックも甘くなると考えられることから,運転能力を過大評価する者に対し,免許センターの看護職は,安全ゆとり運転の実行や具体的な運転断念の目安を提示する等の指導を予防的に行うことがさらなる事故防止の方策として必要である.

また,高齢運転者は免許更新時の実車指導を理解し納得しているかについて,運転能力を示す運転スコアの本人回答とセンター回答に正の相関がみられたこと等から,多くの高齢運転者は免許更新時の実車指導を理解し納得していると言える.しかし実車の指摘事項を過小申告する者が7%いたことが明らかになり,これらの者に対しては実車指導の結果を理解できるような追加の指導が必要であろう.本研究は,高齢者講習の受講者を対象に調査し,運転能力を過大評価する者に対しより踏み込んだ支援の必要性を示したことによって新たな知見を加えたと言えよう.

謝辞:本研究を行うにあたり,ご協力いただいた大分県警交通部運転免許課の皆様,また研究にご参加してくださった皆様に心より感謝申し上げます.

利益相反:本研究に開示すべきCOIはない.

著者資格:EMは研究の着想,研究プロセス全体の実施,原稿の作成.KSおよびSMは研究プロセス全体にわたって指導的な助言を行い,原稿作成においても重要な示唆を提供した.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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