Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Nursing Practices in Pediatric Intensive Care Unit to Promote Interaction Between Children With Life-Threatening Conditions and Their Family Members
Aoi Nishimoto
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2024 Volume 44 Pages 536-545

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Abstract

目的:本研究は,PICUにおいて生命の危機状態にある子どもと家族のふれあいを促すための看護実践について明らかにすることを目的とした.

方法:PICUにて5年以上臨床経験のある看護師10名に半構造化インタビューを行い,質的記述的に分析した.

結果:看護実践は,【面会前に備える】という準備段階から始まっており,【子どもと家族が会う場面を支える】【家族が子どもと関わりともに過ごせる時間をつくる】という身体接触を含むふれあいを促す介入が示された.さらに,【子どものことや看護師の思考を家族に伝える】【子どもと家族のことを知る】という心理面に焦点をあてた介入も見出され,多岐に渡る内容で構成された.

結論:PICUにおけるふれあいを促すための看護実践とは,身体接触を促すことに留まらず,家族の心理に寄り添い,必要な情報を伝え,ニーズを把握することも含まれた.これは,心の通い合いがあってこそふれあいが成り立つことを示す知見であると考える.

Translated Abstract

Objectives: The present study aimed to elucidate nursing practices in Pediatric Intensive Care Units (PICU) that promote interaction between children with life-threatening conditions and their family members.

Methods: Semi-structured interviews of 10 nurses with at least 5 years of clinical experience in PICU were conducted, and their responses were qualitatively analyzed using a descriptive approach.

Results: Intervention found in settings that promote physical contact started from the preparatory stage, such as “preparing before meeting,” and included “supporting the child and their family meetings” and “arranging time for family members to be involved and spend time with their child.” Furthermore, an intervention that focused on psychological aspects, such as “extending support to the family about the child and nurse’s thoughts” and “getting to know the child and their family members,” was also found, showing the variety of nursing practices.

Conclusions: Nursing practices that promote interaction in the PICU promote physical contact and include psychologically connecting with the family, communicating important information, and ascertaining their needs. We believe this finding demonstrates that emotional communication is useful for establishing interaction.

Ⅰ. 緒言

生命の危機状態にある子どもの家族の不安やショックは計り知れず,のちに急性ストレス障害や心的外傷後ストレス障害を生じるといった問題が国内外で報告されている(Balluffi et al., 2004Stremler et al., 2017西名ら,2020).新生児・小児・成人ICUの家族中心のケアFamily-Centered-Careガイドラインにおいても,面会時の家族と医療者の関わりが重要であることが提唱されており(Davidson et al., 2017),集中治療室では患者のみならず家族への看護ケアの重要性が謳われる.

日常において母子の接近は愛着形成に不可欠であることは言うまでもなく(ボウルビィ,1951/1991),子どもが家族とふれあいながら育つことは当然である中で,PICU(Pediatric Intensive Care Unit:以下,PICU)においては,小さな体に複数の医療機器が繋がっており,それを目の当たりにする家族が日常のように子どもと“ふれあう”ことは困難である.また,本邦における面会時間は諸外国と比較して短い可能性が示唆されている(長田ら,2019)ほか,近年のCOVID-19流行により我々の感染に対する危機意識は高まり,安全性という観点からもふれあうことに困難さが生じている可能性もあると推測する.

一方で,両親のニーズとして,重症な子どもの状態が怖いと感じる中にも子どもに直接触れるケアを行いたい思いがあること(戈木ら,2019)や,子どものケアに関わるための援助を医療者に求めていたこと(Dahav & Sjöström-Strand, 2018)が報告されており,さらに,両親が日常ケアに参加するほどに子どもの死後の悲嘆症状が軽減する傾向にあることも示唆されている(Meert et al., 2011).

以上により,生命維持に直結する治療の真っただ中であっても,子どもと家族がふれあい,身体のみならず心理的距離を縮めることのできる機会をつくることは重要であり,そのための看護介入は不可欠であるが,本邦においてPICUの面会時に子どもと家族が近づく,またはふれあうための看護実践内容を明示した研究は見当たらない.

また,2012年度に小児専門の特定集中治療室に対する管理料が新設され,2020年までにPICUは37施設345床となった(厚生労働省,2022).しかし諸外国と比較して重症患者発生予測数に応じた病床数は十分でなく(日本集中治療医学会小児集中治療委員会,2019),本邦では状況によって小児専用ではない集中治療室に子どもが入室することもあり,PICU以外の看護師であっても小児患者の家族ケアに関する知識を蓄えておく必要があると考える.

そこで本研究の目的は,PICUの面会時間において生命の危機状態にある子どもと家族のふれあいを促すための看護実践を明らかにすることとする.小児専用の集中治療室であるPICUの経験豊かな看護師への調査を行い,実践内容を可視化することで,面会時間という限られた時間での卓越した看護実践を確立していくための一助となることが期待される.

Ⅱ. 研究目的

本研究の目的は,PICUの面会時間において生命の危機状態にある子どもと家族のふれあいを促すための看護実践を明らかにすることである.

Ⅲ. 用語の定義

ふれあいとは,触れ合い,接触という意味を持ち,心と心のふれあいという用語としても使用される(新村,2018松村,2019).本研究においても同様に,身体的な接触のほか心理面でのふれあいも含めて「ふれあい」と定義する.本研究における「ふれあい」の対象は,子どもと家族間を示す.

Ⅳ. 研究方法

1. 研究デザイン

本研究は,半構造化インタビュー法による質的記述研究である.

2. 調査期間

2022年3月~2022年12月

3. 研究対象者および選定方法

研究対象者は,PICUでの勤務経験が5年以上の看護師とした.Benner(2001/2005)は,状況の全体像を把握し局面の重要性を見分ける能力を習得している看護師は,類似の科の患者ケアを3~5年程経験した看護師としており,経験豊富な語りが得られると考え基準を定めた.

選定方法は,研究者のネットワークによる機縁法とし,研究協力を依頼した.協力の同意が得られた対象者には,文書にて研究目的や内容の説明を行い,必要に応じて対象者が所属する施設の所属長に承諾を得た.

4. データ収集方法

データ収集は,半構造化インタビューにて実施した.インタビューは,小児患者を含む集中治療領域で10年以上看護実践をし,質的研究の経験もある研究者が行った.また,研究者の所属施設でプライバシーが確保される個室,またはオンライン上(遠隔会議システムを使用)にて実施し,研究対象者の承諾を得て,ICレコーダーに録音した.

まず,研究対象者の属性について尋ね,インタビューガイドをもとに調査を行った.インタビューガイドの作成にあたっては,小児集中治療領域の看護研究,質的研究の経験のある複数の研究者にスーパーバイズを受け妥当性を検討した.内容は,具体的な看護実践方法やタイミング,家族の反応,促進因子や阻害因子等にて構成し,生命の危機状態にある子どもと家族のふれあいを促すための看護実践場面を想起しながら語っていただいた.

5. 分析方法

まず,インタビューデータを逐語録とし,以下の手順で内容分析を行った.①子どもと家族のふれあいを促すための看護実践として語られた文脈を抽出した.看護実践は,より具体的に記述するために,直接的な介入のほかアセスメントなど思考内容も含めることとした.②抽出した文脈の意味内容を損なわないよう留意しコード化し,③意味内容が同類のコードを集約,対象者ごとの看護実践内容を整理した.④1名の対象者のデータに他の対象者のデータを合わせ,類似性と相違性を比較検討しながらサブカテゴリを作成し,継続的に全ての対象者のデータを積み重ねていった.⑤データを積み重ねていく中で新たな内容が抽出された場合は,以前のデータで同内容の見落としがないかデータに戻り再確認をした.⑥さらにサブカテゴリの類似性と相違性を検討しながら抽象度を高めてカテゴリを作成し,⑦最後に看護実践として共通する内容を集約し大項目を作成した.

なお,カテゴリ名はデータの文脈として相応しいかその都度確認しながら分析を進めた.分析の過程では,看護実践における質的研究の経験豊富な研究者に定期的なスーパービジョンを受け,妥当性の確保に努めた.

6. 倫理的配慮

本研究は,聖路加国際大学研究倫理審査委員会の承認(21-A084)を得て実施した.必要時,対象者の所属長の承認も得ることとした.対象者に対し,研究の趣旨や目的,研究方法,個人のプライバシー保護,研究協力あるいは拒否・中断は自由意思であり,辞退しても不利益は生じないことを説明した.また,情報の公開,研究成果の公表などについても文書および口頭で説明し,同意を得た.

Ⅴ. 結果

1. 対象者概要

対象者は8施設より看護師10名であった.臨床経験年数は9~24年(平均16.9年),PICU経験年数は9~15年(平均10.6年),インタビュー時間は54~81分(平均67.9分)であった(表1).

表1 対象者概要

年代 臨床経験(年目) PICU経験(年目) 資格 インタビュー時間(分)
A 30代 15 13 集中ケア認定看護師 81
B 40代 19 15 集中ケア認定看護師 64
C 30代 9 9 なし 61
D 30代 9 9 なし 61
E 30代 17 8 小児看護専門看護師 69
F 40代 20 7 集中ケア認定看護師 61
G 30代 14 8 回答なし 81
H 40代 23 15 急性・重症患者看護専門看護師 70
I 40代 19 12 集中ケア認定看護師 54
J 40代 24 10 なし 77

2. 子どもと家族のふれあいを促すための看護実践

分析の結果,162コードから,75サブカテゴリ,25カテゴリが見出された.看護実践は,【面会前に備える】【子どもと家族が会う場面を支える】【子どものことや看護師の思考を家族に伝える】【子どもと家族のことを知る】【家族が子どもと関わりともに過ごせる時間をつくる】の大項目に分けられ,以下は5つの項目ごとに記述する(表2).

表2 子どもと家族のふれあいを促すための看護実践

大項目 カテゴリ サブカテゴリ
面会前に備える 環境整備や面会調整をする ベッドサイドでの第一印象が和らぐよう環境を整える
ベッドサイドの不要な物品は除去して整える
プライバシーに配慮した環境をつくる
ベッドサイドを子どもらしい環境に整える
騒音に配慮する
面会時間が少しでも長くなるよう調整する
子どもの状態を確認し整える 子どもの状況や今耐えうる侵襲の度合いについて確認しておく
子どもの鎮静状況を可能な範囲で調整する
子どもの外見を整える
家族の心理的準備を整える 子どもの病状が悪化している場合は面会前に家族の心理状態を確認し必要時一呼吸置いてもらう
必要時面会前に子どもの状況を説明しておく
手術の場合は術前訪問をしてPICUでの状況を説明しておく
面会時の状況に関するパターンを把握する 子どものPICU入室理由や今の状態など面会時の状況に関するパターンを把握しておく
子どもと家族が会う場面を支える 子どもと会った時の家族の反応を捉える  子どもと会った時の家族の反応を捉える
家族が子どもに近づけるように介入する まず子どもへの声かけを促す
すぐに子どもの顔が見られる位置に家族を案内する
ベッド柵を下げて子どもに近づきやすいようにする 
子どもとの身体的距離があれば,子どもに近づけるよう促す
家族が子どもに接触できるように介入する まず子どもへの接触を促す
医療機器類に支障なく安全に接触できる身体部位を具体的に提示する 
看護師が先に子どもに接触して触れ方を示す
子どもとの身体的距離があれば,接触しやすいよう掛け物から少し子どもの手を出す
子どもとの身体的距離を徐々に縮められるよう段階を踏んで接触を促す
子どもに近づくことに不安があれば,それとなく子どもに接触している様子を見せる
子どもへの接触に不安があれば,安心できるシチュエーションをつくった上で接触を促す
家族の気持ちを察した声かけをする 子どもとの身体的距離があれば,気がかりなことがないか家族の気持ちを察した声かけをする
流涙している家族には,接触を促しながら子どもの気持ちや頑張りを伝える
流涙している家族には,辛い中にありながら面会に来られたことを認めるような声かけをする
家族が子どもに接触できない場合は無理に促さない 家族が子どもに接触できない場合は無理に促さない 
家族が子どもに近づけない真意を検討して介入する 子どもへの身体接触が困難な家族の「今はいい」「こわいからいい」という言動に隠れる真意を検討する
子どもへの身体接触に抵抗がある理由について確認し医療者との認知を揃える
子どものことや看護師の思考を家族に伝える 家族が子どもの状態を理解するために子どものことを説明する 医師からの説明に補足して病状や挿入物について説明する
面会時間以外の子どもの様子を具体的に伝える
治療を受ける子どもの頑張りを具体的に伝える
複数の医療機器が視覚的に衝撃になりうる場合は,順を追って一つずつ説明する
病状に関して医療者との認識にギャップが生じないよう必要な情報を補足説明する
看護師の思いを言葉にして家族に伝える  私達も一緒に子どものことを考え,気にかけていることを伝える
子どもにしてあげたいことがあればいつでも対応することを繰り返し伝える 
終末期の場合は,今子どものためにできることを一緒に行いたい,いつでも要望を言ってほしいと伝える
家族の役割について伝える 何もしてあげられないと言う家族に,家族がここに居るべき理由や今できることを伝える
終末期の場合は,家族がここに居るべき理由や家族にしか担えないことを伝える 
想像される子どもの気持ちを代弁して家族に伝える 想像される子どもの気持ちを代弁して家族に伝える
子どもと家族のことを知る 家族の認識や受け止めの状況を確認する  家族の認識や理解状況を確認する
子どもの病状に関する家族の受け止めの状況を確認する
子どもと家族のニーズを捉える  家族の思いや気がかりを知る
子どもとどう過ごし,してあげたいことは何か家族の選択を知る
今日と明日では状況が異なることを前提に家族の今のニーズを日々捉える
子どもが家族に今何を求めているか考える
ふれあうことが今必要であるか両者の立場に立って考える
家族にしかわからない今子どもが望むことを教えてもらう 
思いを表出しない家族では,子どもと接する様子を見て今何が必要かできることを探る
家族が子どもと関わりともに過ごせる時間をつくる 今できる行うべき最善のケアを検討する 家族のニーズと子どもの状況のバランスを考慮し最善のケアを検討する
家族が今思い描く子どもとのふれあいの形を検討する
ここでこのケアをすれば良いと決めつけず最善のケアを検討する
子どもへの日常ケアを家族とともに実施する 家族とともに子どもの清潔ケアを行う 
子どものミルクや食事に関わる機会をつくる
家族に子どもの整容を行ってもらう
子どものために今できることを家族とともに実施する 子どもが着用するものを家族に選んでもらう
家族に絵本の読み聞かせをしてもらう
音楽や録音した声を子どもに聴かせる
チューブ固定テープに絵を描いてもらうなど何か子どものために作成してもらう
記念日に家族とともに成長記録となるものを作成する
子どもの病状に合わせてプラスアルファなケアを実施する 子どもと家族の状況に合わせて抱っこできる機会をつくる
病状的に通常の抱っこが困難であれば,背中に手を添えた形での抱っこを実施する
病状的に侵襲的なケアが困難であれば,子どもが元々好きだったことをもとに今できる最大の清潔ケアを行う
子どもの病状安定と医療者の人員的余裕があれば,家族とともに日常より一手間かかる清潔ケアを実施する
子どもと家族がただ一緒に過ごせる環境をつくる 家族が子どもと添い寝できる環境をつくる
医療者に遠慮している家族では,あえて子どもと家族だけで過ごせる時間をつくる
ケアの効果を家族と共有する ケアの効果を言葉にして家族と共有する
安全に配慮しながらケアを実施する ふれあいの機会が家族にとってかえってこわい経験とならないよう最大限配慮しながらケアを行う
ケア実施後の子どもと家族の反応や様子を捉える 家族とともに実施したケアに子どもが苦痛を感じていないか快適であるか確認する
ともに実施したケア後に家族の反応を確認する
子どもと家族に距離を感じる場合はその要因を検討する
家族の選択に寄り添いケアを無理に促さない 子どもに接触するケアが困難であれば,無理に促さず「しない」「できない」真意を考える
個々の家族のニーズに合わせて良かれと思うふれあいを無理に促さない

以下,カテゴリは《 》,サブカテゴリは〈 〉,生データは「斜体」で示す.

1) 【面会前に備える】

面会前に備える看護実践は,4カテゴリから構成された.

《環境整備や面会調整をする》は,〈ベッドサイドでの第一印象が和らぐよう環境を整える〉ほか,〈ベッドサイドの不要な物品は除去して整える〉〈プライバシーに配慮した環境をつくる〉〈ベッドサイドを子どもらしい環境に整える〉という環境整備,〈騒音に配慮する〉〈面会時間が少しでも長くなるよう調整する〉という面会に関する配慮の6サブカテゴリから構成された.

「普段ご自宅で使ってるおもちゃとかがあればベッドサイドにそれ置いて…家族の気持ちとしてちょっと和らぐかなって…面会前にベッド周りの状況は整えさせてもらってる.」(C氏)

《子どもの状態を確認し整える》は,〈子どもの状況や今耐えうる侵襲の度合いについて確認しておく〉〈子どもの鎮静状況を可能な範囲で調整する〉〈子どもの外見を整える〉といった子ども側の準備を整える3サブカテゴリで構成された.

《家族の心理的準備を整える》は,〈子どもの病状が悪化している場合は面会前に家族の心理状態を確認し必要時一呼吸置いてもらう〉ほか,〈必要時面会前に子どもの状況を説明しておく〉〈手術の場合は術前訪問をしてPICUでの状況を説明しておく〉という家族側の心の準備を整えるための実践である3サブカテゴリで構成された.

《面会時の状況に関するパターンを把握する》は,1サブカテゴリで構成され,看護師は,鎮静の度合いや病状変化の程度など〈子どものPICU入室理由や今の状態など面会時の状況に関するパターンを把握しておく〉ことで面会に備えていた.

2) 【子どもと家族が会う場面を支える】

子どもと家族が会う場面を支える看護実践は,6カテゴリから構成された.

《子どもと会った時の家族の反応を捉える》は,1サブカテゴリで構成され,例えば「来た時に,ご家族がどんな立ち位置にいるかな.ベッドにすぐにパッと寄って行く人なのか,ちょっと離れて遠巻きに見るのか…直接見てみないとわからない子どもの状況をどう捉え,感じているのか家族の反応を見て…」(J氏)という内容が語られた.

《家族が子どもに近づけるように介入する》は,〈まず子どもへの声かけを促す〉〈すぐに子どもの顔が見られる位置に家族を案内する〉のほか,〈ベッド柵を下げて子どもに近づきやすいようにする〉〈子どもとの身体的距離があれば,子どもに近づけるよう促す〉という4サブカテゴリで構成された.

《家族が子どもに接触できるように介入する》は,〈まず子どもへの接触を促す〉〈医療機器類に支障なく安全に接触できる身体部位を具体的に提示する〉〈看護師が先に子どもに接触して触れ方を示す〉という実践であった.また,子どもとの身体的距離があれば〈接触しやすいよう掛け物から少し子どもの手を出す〉〈徐々に距離が縮められるよう段階を踏んで接触を促す〉ほか,〈子どもに近づくことに不安があれば,それとなく子どもに接触している様子を見せる〉〈子どもへの接触に不安があれば,安心できるシチュエーションをつくった上で接触を促す〉という心理状況に合わせた実践が語られ,7サブカテゴリで構成された.

「やっぱり怖くて,自分が近くにいることで何か機械に触ってしまって,不都合が起きないかっていうことを懸念されるご両親もいるので,看護師もしくは医師が近くにいて,安全は担保されてるんで大丈夫ですよ,っていうシチュエーションをつくった上で,少し触れてもらう機会をつくったり…」(I氏)

《家族の気持ちを察した声かけをする》は,〈子どもとの身体的距離があれば,気がかりなことがないか家族の気持ちを察した声かけをする〉ほか,流涙している家族には〈接触を促しながら子どもの気持ちや頑張りを伝える〉〈辛い中にありながら面会に来られたことを認めるような声かけをする〉という3サブカテゴリで構成された.

《家族が子どもに接触できない場合は無理に促さない》は,1サブカテゴリから構成され,例えば,「今はそのタイミングじゃないんだろうなって…怖いのに触って,怖い体験だけがその家族とかに残って…あんまり無理に促そうとはしない.」(A氏)という内容であった.

《家族が子どもに近づけない真意を検討して介入する》は,〈子どもへの身体接触が困難な家族の「今はいい」「こわいからいい」という言動に隠れる真意を検討する〉〈子どもへの身体接触に抵抗がある理由について確認し医療者との認知を揃える〉という2サブカテゴリから構成された.

「ECMOが回っているような生命維持の状況でも全然触れられるところは触れても生命維持,この治療の目的に外れることはないですよっていうのを説明します.その上で要するに多分お母さんたちが思ってる“大丈夫じゃなくない?”っていうのと“いや,大丈夫ですよ”っていう認知のギャップを埋める.」(G氏)

3) 【子どものことや看護師の思考を家族に伝える】

子どものことや看護師の思考を家族に伝える看護実践は,4カテゴリから構成された.

《家族が子どもの状態を理解するために子どものことを説明する》は,まず〈医師からの説明に補足して病状や挿入物について説明する〉という,治療に関することや子どもを取り囲む医療機器類等における説明のほか,〈面会時間以外の子どもの様子を具体的に伝える〉〈治療を受ける子どもの頑張りを具体的に伝える〉という子どものことを知ってもらうための実践があった.また,〈複数の医療機器が視覚的に衝撃になりうる場合は,順を追って一つずつ説明する〉という配慮や,〈病状に関して医療者との認識にギャップが生じないよう必要な情報を補足説明する〉という実践も語られ,5サブカテゴリから構成された.

《看護師の思いを言葉にして家族に伝える》は,〈私達も一緒に子どものことを考え,気にかけていることを伝える〉ほか,〈子どもにしてあげたいことがあればいつでも対応することを繰り返し伝える〉〈終末期の場合は,今子どものためにできることを一緒に行いたい,いつでも要望を言ってほしいと伝える〉実践が語られ,我々看護師も,ともに子どものことを思っていることを言葉にして伝えるといった3サブカテゴリから構成された.

《家族の役割について伝える》は,〈何もしてあげられないと言う家族に,家族がここに居るべき理由や今できることを伝える〉〈終末期の場合は,家族がここに居るべき理由や家族にしか担えないことを伝える〉という2サブカテゴリから構成された.

《想像される子どもの気持ちを代弁して家族に伝える》は,1サブカテゴリから構成され,例えば,「今ドキドキが落ち着いてきたから,お母さんがいるとやっぱり嬉しいんですねとかって…子どものことを家族によく聞いたうえで,考えられる子どもの気持ちを代弁して心の通い合いをしてもらう」(E氏)という実践が語られた.

4) 【子どもと家族のことを知る】

子どもと家族のことを知る看護実践は,2カテゴリから構成された.

《家族の認識や受け止めの状況を確認する》は,〈家族の認識や理解状況を確認する〉〈子どもの病状に関する家族の受け止めの状況を確認する〉という2サブカテゴリから構成され,看護師は家族がどう考え,どのような心理状況であるのか知ろうと努めていた.

《子どもと家族のニーズを捉える》は,〈家族の思いや気がかりを知る〉〈子どもとどう過ごし,してあげたいことは何か家族の選択を知る〉ほか,〈今日と明日では状況が異なることを前提に家族の今のニーズを日々捉える〉〈子どもが家族に今何を求めているか考える〉〈ふれあうことが今必要であるか両者の立場に立って考える〉といった生命の危機状態にあるからこそ日々変化するニーズを捉えようとする看護師の実践内容であった.また,〈家族にしかわからない今子どもが望むことを教えてもらう〉こと,〈思いを表出しない家族では,子どもと接する様子を見て今何が必要かできることを探る〉というように看護師は常にニーズを把握しようと努めており,7サブカテゴリから構成された.

「私たちは看護の中で医学的知識を持って何ができるかを考えますけど,この子については知らないので.この子のことをよく知ってるお母さん達に,この子にとっての一番を教えてほしいんだっていうことを毎回伝えて.」(B氏)

5) 【家族が子どもと関わりともに過ごせる時間をつくる】

家族が子どもと関わりともに過ごせる時間をつくる看護実践は,9カテゴリから構成された.

《今できる行うべき最善のケアを検討する》は,まず〈家族のニーズと子どもの状況のバランスを考慮し最善のケアを検討する〉という子どもと家族両者の立場に立って検討することが挙げられた.また,〈家族が今思い描く子どもとのふれあいの形を検討する〉〈ここでこのケアをすれば良いと決めつけず最善のケアを検討する〉という看護師の固定観念にとらわれずケアを検討するという語りもあり,3サブカテゴリから構成された.

《子どもへの日常ケアを家族とともに実施する》は,〈家族とともに子どもの清潔ケアを行う〉〈子どものミルクや食事に関わる機会をつくる〉〈家族に子どもの整容を行ってもらう〉という3サブカテゴリから構成された.

《子どものために今できることを家族とともに実施する》は,〈子どもが着用するものを家族に選んでもらう〉〈家族に絵本の読み聞かせをしてもらう〉ことや,〈音楽や録音した声を子どもに聴かせる〉〈チューブ固定テープに絵を描いてもらうなど何か子どものために作成してもらう〉という実践が挙げられた.また,〈記念日に家族とともに成長記録となるものを作成する〉という小児ならではの実践内容も含まれ,5サブカテゴリから構成された.

《子どもの病状に合わせてプラスアルファなケアを実施する》は,まず〈子どもと家族の状況に合わせて抱っこできる機会をつくる〉〈病状的に通常の抱っこが困難であれば,背中に手を添えた形での抱っこを実施する〉というケアが挙げられた.また,〈病状的に侵襲的なケアが困難であれば,子どもが元々好きだったことをもとに今できる最大の清潔ケアを行う〉〈子どもの病状安定と医療者の人員的余裕があれば,家族とともに日常より一手間かかる清潔ケアを実施する〉ことも行われており,4サブカテゴリから構成された.

《子どもと家族がただ一緒に過ごせる環境をつくる》は,何か施すだけではない〈家族が子どもと添い寝できる環境をつくる〉〈医療者に遠慮している家族では,あえて子どもと家族だけで過ごせる時間をつくる〉ことを,ふれあいを促すためのケアとして実践しており2サブカテゴリから構成された.

《ケアの効果を家族と共有する》は,1サブカテゴリから構成され,例えば,「もちろん(ケアにより)末梢循環も改善しますから温かくなるので.次の(血液)ガスでラクテート下がってるよねみたいな…循環が改善したみたいな,そういうことをお母さんがいる場で共有をしてみたり.」(G氏)という実践が語られた.

《安全に配慮しながらケアを実施する》は,1サブカテゴリから構成され,例えば「医療機器がたくさんついてるので,外れちゃいけないところが外れてご家族がトラウマになることがないように…なるべく自然な形でできるように気を付けて…(E氏)」という語りから,もたらされたふれあいの機会が継続されるよう,安全面への配慮が実践に含まれた.

《ケア実施後の子どもと家族の反応や様子を捉える》は,まず,〈家族とともに実施したケアに子どもが苦痛に感じていないか快適であるか確認する〉〈ともに実施したケア後に家族の反応を確認する〉という両者の反応を捉えることであった.そして,看護師はケアをともに行う際に,注意深く子どもと家族の距離間をアセスメントしており,〈子どもと家族に距離を感じる場合はその要因を検討する〉ということも語られ,3サブカテゴリから構成された.

《家族の選択に寄り添いケアを無理に促さない》は,まず〈子どもに接触するケアが困難であれば,無理に促さず「しない」「できない」真意を考える〉ことが語られた.また,〈個々の家族のニーズに合わせて良かれと思うふれあいを無理に促さない〉といったように,両者のためになるケアでふれあいを促すべく,あえてその場でのふれあいを無理させないという実践も明らかになり,2サブカテゴリから構成された.

「家族に対してこちらの良かれで進めてたのは,実はそんな気持ちはなかった(ということがある).親だったら抱っこしたいって思って当然みたいなところがあると思うんですけど…お父さんは本当にもう顔を見て写真を撮って声をかける,お母さんが(子どもの)髪の毛くくってるのを見てるっていうだけですごい十分だって.別にそんな(抱っこは)強制するものじゃないから,お父さんの形で会ってもらったらいい…」(H氏)

Ⅵ. 考察

PICUにおけるふれあいを促すための看護実践とは,【子どもと家族の会う場面を支える】【家族が子どもと関わりともに過ごせる時間をつくる】といった,直接的な身体接触を含むふれあいを促す介入のみならず,【面会前に備える】という準備段階から始まり,【子どものことや看護師の思考を家族に伝える】【子どもと家族のことを知る】という心理面に焦点をあてた介入も含まれ,多岐に渡る内容で構成された.つまり,看護師はふれあいを促すために身体接触できる機会をつくろうと努めていたが,単に身体接触を促すことを,ふれあいを促すための看護実践とは捉えていない.家族の心理的負担を考慮して寄り添い,子どものことや看護師の思考を伝えながらニーズを把握するという行動も含めて,ふれあいを促すための実践であるということが明らかになった.

以下,身体的な接触という意味合いでのふれあい場面における看護実践と,心理面に焦点を置いた看護実践について考察する.

1. 身体的なふれあいを促す場面での看護実践

本研究において,身体的な接触を伴うふれあいを促す実践場面は,面会開始時に子どもと家族が会う場面と,子どもへのケアを家族とともに行う場面であった.

まず,家族がベッドサイドに入室し,子どもと会う場面から細やかな実践が示されたが,これはベッド柵すら自分で下げて良いのかわからない,子どもの周囲に機械があれば立ち位置すら不明瞭であるPICUという環境下であるからこそ語られた看護実践だと考える.そして,〈看護師が先に子どもに接触して触れ方を示す〉ことや〈接触しやすいよう掛け物から少し子どもの手を出す〉といったように,状況に合わせて工夫を凝らした実践に努めていた.一概に身体接触を促すことはせず,家族のペースに合わせて徐々に距離が縮められるよう介入するということから,PICUにおいて家族が子どもに触れられることは当然でないことが看護師の前提としてあり,反応を捉えながら状況に応じて,熟練の技で“子どもと家族が会う”場面を支えていたと考える.

そして【家族が子どもと関わりともに過ごせる時間をつくる】では,家族とともに清潔ケアや整容を行うことなど様々なバリエーションをもって実践していた.PICUにおいて,親が子どものケアに参加したいというニーズがあることは明らかであり(Dudley & Carr, 2004戈木ら,2019Terp et al., 2021Grandjean et al., 2021),ニーズに沿ったケア実践が行われていることが示されたが,実際に本邦のPICUでふれあいを促そうという思いで看護師がこれらのケアを実践していることが明らかになったことは,意義深いことである.また,ケア内容は,〈子どもと家族の状況に合わせて抱っこできる機会をつくる〉など侵襲を伴うケアだけでなく,〈チューブ固定のテープに絵を描いてもらうなど何か子どものために作成してもらう〉といった子どもの病状に左右されず行えるケアも含まれた.今回抽出されたケア内容全てが,多様な家族に適用できるとは限らないが,ふれあいを促すためのケアには幅広い選択肢があることが示唆され,ケアの種類や大小ではなく,看護師がいかにしてふれあいを促そうかと考え,実践されていることが確認された.西田(2003)は,小児看護を専門とする看護師は,母親の子どもを思う気持ちを汲んで,入院前の子どもと母親の関係をいかに継続できるか,育めるか考えていたと報告している.子どものためにできるケアを実践することで,ふれあいを促すと同時に母親,父親役割を継続させ,育むことの一助にもなると考える.さらに,直接的なふれあいでは,オキシトシンの分泌を促進し,副交感神経が優位になることで心身ともにリラックスしてストレスや不安が軽減されると言われており(山口,2014),家族のニーズや状況に応じることは前提となるが,そのような効果も期待される.無論のこと,生命の危機状態にある子どもにおいては,身体接触を伴う侵襲となりうるケアの実施には,安全性が大前提となり,様々な角度から倫理的な葛藤が生じることは確かである.そういった面でケアを安易に推奨することはできないが,限られた面会時間で,ふれあいを促すための一つの選択肢,可能性として,本研究により見出された知見は重要であると考える.

一方で,子どもの病状が不安定であらゆる挿入物があることから,ケアへの参加は医療者の判断に委ねられていることや(戈木ら,2019),子どものために何かしてあげたい時にケアに参加できないことで親は疎外感を感じるという報告もある(Terp et al., 2021).家族は自ら思いを言い出せないことがあると理解し,タイミングを逃さず《今できる行うべき最善のケアを検討》したうえで,家族の意向に沿ったケアを看護師から積極的に提案して機会をつくることが必要であろう.

2. 心理面に焦点を置いたふれあいを促すための看護実践

本研究においては,《家族の選択に寄り添いケアを無理に促さない》というように家族の気持ち,心理面に寄り添った内容も実践として含まれた.坂部(1983)は,「ふれる」「ふれあう」ということは単に触るという触覚に限られるものではなく,より深くに侵入する根源的な感覚に及ぶ広がりをもったものであると述べている.より深くの根源的な感覚に及ぶ何かを感じるふれあいは,心ここにあらずという状態ではなく,心と身体がそれなりに一致した状態でないと困難であると推察する.本研究においても,単に身体接触を促すということに限定せず,家族の心が状況に追いついているか配慮し,“心を通わせる”ということを意識した実践内容が語られており,その互いの心理状況を鑑みた介入があってこそ,「ふれあい」が成り立つのであろう.

例えば,面会に訪れた〈家族が子どもに接触できない場合は無理に促さない〉ことや,ケアの際にも〈個々の家族のニーズに合わせて良かれと思うふれあいを無理に促さない〉ことが示されている.これはまさに,家族の心の準備が整っていなければ,いわば心が通じ合うような感覚は得られず,その後のふれあいがシャットアウトされる可能性すら考えられ,いくら身体接触を促してもふれあいは成り立たないからであると言えよう.これは,本研究で明らかになった看護実践を臨床に還元していく際にも,重要な知見になると考える.

また,言わずもがなPICUでは刻一刻と病状が変化する子どもの状態を目の当たりにする日々である.親役割を果たすことの困難さがある中で,看護師がベッドサイドで継続的に情報提供してくれることで子どもへのより深い理解に繋がり安心することが報告されており(Jakobsen et al., 2021),《家族が子どもの状態を理解するために子どものことを説明》し,《想像される子どもの気持ちを代弁して家族に伝える》ことは,安堵に繋がるとともに,心の通い合いという意味でのふれあいを促進し,かつ身体接触への心の準備状況の高まりが期待される実践であろう.

そして,PICUに子どもが入室する親は常に無力感や不安,恐怖を感じており,それはまるで山あり谷あり予測不能なジェットコースターのような体験であると言われており(Alzawad et al., 2020),医療者の温かい声かけや心のケアが希望を見出すことに繋がることも報告されている(辻尾・上辻,2023).本研究においても,様々な状況に応じて《看護師の思いを言葉にして家族に伝える》ことで,その不安や恐怖に寄り添いながらコミュニケーションをとり,家族の気持ちを置き去りにしない実践が語られた.また,〈今日と明日では状況が異なることを前提に家族の今のニーズを日々捉える〉というように,予測不能な変化する気持ちに寄り添って介入できるよう努めていたと考えられ,心理面への介入は,ふれあいを促すための看護実践としても重要であることが示唆された.

Ⅶ. 研究の限界と今後の課題

本研究は,10名の研究協力者の語りから得られた知見であるため,広く一般化して捉えることはできない.ふれあいを促すための看護実践として探索的に行った研究であり,今後はこれらのデータを基盤として,本領域における専門家や多数の看護師を対象に調査を継続する必要がある.また,より明確に知識体系化を目指すためには,医療者側だけでなく,家族側の視点でPICUにおけるふれあいに関する知見を得ることが重要であると考える.

Ⅷ. 結論

PICUの熟練看護師を対象に,生命の危機状態にある子どもと家族の「ふれあい」を促すための看護実践を探索的に調査したところ,身体接触を促すための実践に留まらず,多角的な内容が含まれた.看護師は,家族の心理に寄り添い,必要な情報を伝え,ニーズを把握することもふれあいを促すために実践しており,これは単に身体接触だけではなく,心の通い合いがあってこそふれあいが成り立つことを示す知見であり,PICUのふれあいを促すための看護実践は多角的な内容で構成された.

付記:本研究は,第30回小児集中治療ワークショップにおいて発表し,新たな分析を加えて修正したものである.

謝辞:本研究にご協力を賜りましたPICU看護師の皆様,ならびにご指導くださいました聖路加国際大学大学院佐居由美先生,中田諭先生に心より御礼申し上げます.本研究はJSPS科研費JP21K21202の助成を受けて実施した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

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