Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Original Articles
Nursing Practice of Certified Nurses in Outpatient Chemotherapy Unit for Patients With Liver Cancer on Immune Checkpoint Inhibitors: A Qualitative Descriptive Study
Sachiko Takahira, Hiromi Kobayashi, Haruka Okabe, Masako Shomura
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2024 Volume 44 Pages 786-795

Details
Abstract

目的:免疫チェックポイント阻害薬(以下,ICI)治療を受ける肝がん患者に対して外来化学療法室でがん化学療法看護認定看護師(認定看護師)が行う看護実践を明らかにする.

方法:質的記述的研究デザイン.ICI治療の経験と実績のある認定看護師8名に半構造化面接を実施し,質的統合法(KJ法)にて分析した.

結果:認定看護師は【病院・地域を巻き込んだ重症化対策】を前提として,【症状の発信と受信の強化】と【信頼し合える診療の保証】を行い,患者の安全と安心を保証していた.また【血管確保の確実性の保証】と【治療による生活のしづらさへの配慮】を行い,患者の治療継続を支援していた.【病院・地域を巻き込んだ重症化対策】の一方で,【患者に深く関わる機会の少なさ】の葛藤も存在した.

結論:認定看護師には,ICI治療を受ける肝がん患者に対し,症状の発信と受信の強化と信頼し合える診療の保証を図り,心身両面から支える役割が期待されている.

Translated Abstract

Objective: To identify nursing practices of certified cancer chemotherapy nurses (hereafter “certified nurses”) in the outpatient chemotherapy unit for patients with liver cancer receiving immune checkpoint inhibitor (ICI) therapy.

Methods: In this qualitative descriptive study, eight certified nurses with experience and performance in ICI treatment were interviewed using a semi-structured format, and the data were analyzed using the qualitative synthesis method (KJ method).

Results: Certified nurses ensured patient safety and security by “strengthening the transmission and reception of symptoms” and “assuring mutual trust in medical care” based on the premise of “measures to prevent serious illness involving the hospital and community.” Moreover, they supported patients in continuing their treatment by “guaranteeing the certainty of securing blood vessels” and “considering the difficulties in living due to treatment.” However, a conflict was reported due to “lack of opportunities to be deeply involved with patients.”

Conclusions: Certified nurses are expected to provide physical and mental support to patients with liver cancer undergoing ICI treatment by strengthening the transmission and reception of symptoms and assuring mutual trust in medical care.

Ⅰ. 緒言

肝がんは再発を繰り返し,進行がんに進展することが多い.切除不能な進行肝がんの一次薬物療法にアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法またはトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法が推奨されている(日本肝臓学会,2023).これらの免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitors:以下ICI)治療は生存期間が延長する一方で,免疫関連有害事象(immune-related adverse events:以下irAE)の報告があり(Fukushima et al., 2023)問題となっている.

irAEは,従来の細胞障害性抗がん薬の有害事象に比べて把握が難しい.この理由は,全身性に免疫反応が起こりうるが特異的な症状に乏しく(古瀬,2021),発現時期も不明確であるためである.irAEが重症化する前に対応するためには,患者が自身で異常を認識して医療者に伝えることと,医療者が患者の異常に気づくことの両方が欠かせない.しかし全身性の症状が多彩なため,患者自身で症状を自覚することには困難を伴う.そのため,複数の診療科の専門医,看護師,薬剤師等の多職種との連携が必要である.

irAEマネジメントとして早期発見に着目した実践や,患者・家族への教育支援,多職種協働が報告されている(朝鍋ら,2022).佐藤ら(2021)は,がん免疫療法看護の質評価指標原案を作成し内容妥当性の検討を行っている.国外では,ガイドラインと関連研究を組み合わせて,ICI治療を受ける患者へのケア内容や時期,効果が報告されている(Zhang & Lu, 2021).しかし,発生頻度が低く,多彩な症状を呈するirAEに備えた支援の確立は容易ではない(佐藤ら,2021;朝鍋ら,2022).

また,B型,C型慢性肝炎,肝硬変を背景に発症する肝がんは依然として50%を占める(日本肝臓学会,2022).患者は肝疾患の進行により恐怖,怒り,悲しみ,罪悪感(Gray-Renfrew et al., 2020)など負の感情を経験するが,偏見を恐れて疾患を周囲に伝えづらく苦悩を他者に理解してもらいにくい.さらに肝がんは再発率が高く,再治療を繰り返すために他臓器のがんと比較して経過が長い(日本肝臓学会,2022).そのため,切除不能な肝がんに対する外来でのICI治療では,患者の心理社会的な負担への支援が求められているといえる.ICI治療は主として外来化学療法室にて実施される.ICI治療を受ける肝がん患者は急速に増加しており,irAEの重症化予防と心理社会的支援を含めた,外来化学療法室の看護師の看護実践を明らかにすることは急務である.

ICI治療患者への看護実践に関して,irAEの早期発見と介入(Cherry, 2021;Shankar et al., 2021),効果的な患者教育(Wood et al., 2019),多職種連携の促進(Seery, 2017)等の報告がある.いずれもirAEの重症化予防が焦点であり,心理社会面を含めた看護実践に関する研究は確認できなかった.そのため,さまざまな病いの経過や心理社会的背景をもちICI治療を受ける肝がん患者に対する,看護経験が豊富ながん化学療法看護認定看護師(以下,認定看護師)の経験を言語化することで,心身両面を支える看護実践への示唆が得られると考えた.

そこで本研究は,ICI治療を受ける肝がん患者に対して認定看護師が外来化学療法室で行う看護実践を明らかにする.本研究の成果は,外来においてICI治療を受ける肝がん患者の生命と生活の質の向上に向けた支援に寄与することができる.

Ⅱ. 目的

ICI治療を受ける肝がん患者に対して,認定看護師が外来化学療法室で行う看護実践を明らかにする.

Ⅲ. 用語の定義

外来化学療法室:外来化学療法加算1又は外来化学療法加算2の施設基準に係る届出を行っている施設に設置され,多職種が協働して外来における化学療法を実施する部署とする.

看護実践:認定看護師が自身の知識や経験に基づいて,外来化学療法室で行う支援とする.

認定看護師:日本看護協会が2001年より認定を開始し,がん化学療法薬の安全な取り扱いと適切な投与管理,副作用症状の緩和およびセルフケア支援を行う者とされ,実践,相談,指導の役割をもつ.2021年よりがん薬物療法認定看護師に分野名が変更されたが,本研究参加者の認定時期により,がん化学療法看護認定看護師の名称を用いる.

Ⅳ. 研究方法

1. 研究デザイン

認定看護師の実際の実践に焦点をあて,外来化学療法室でICI治療を受ける肝がん患者に対する看護を構成する要素を見出し,それらの関係性を構造的に把握するため,質的記述的研究デザインを用いた.

2. 参加者

参加者の選定基準は,①日本看護協会認定の認定看護師であること,②1年以上外来化学療法室に勤務していること,③ICI治療を受ける肝がん患者への看護経験があること,以上3項目の全ての条件を満たす者とした.irAEは特異的な症状に乏しく発現時期も不明確であり,従来の細胞障害性抗がん薬の有害事象に比べて把握や管理が難しい.加えて肝がんに対するICI治療の臨床適応経験は浅く,外来化学療法室の看護師が肝がん患者に対して行う看護実践は明確になっていない.そのため,実践知や知見を試行錯誤しながら行う看護実践を詳細に語ることができると考え,認定看護師を参加者とした.参加者の募集方法は,専門的ながん医療の提供を行うがん診療連携拠点病院400施設,専門的な肝疾患の治療を行う日本肝臓学会の認定施設516施設から無作為に100施設を抽出し,看護管理責任者宛に研究依頼書を送付した.承諾の得られた8道県8施設の看護管理責任者より研究参加者を推薦してもらった.参加候補者に研究者が直接依頼を行い,同意が得られた者を参加者とした.

3. 調査期間

2022年7月から2022年9月

4. データ収集方法

COVID-19による感染拡大防止のため,インターネット回線を使用したWeb会議システムを利用した半構造化面接を実施した.研究目的に合った十分な量のデータ収集に向け,事前に参加者にインタビューガイドを送付して面接準備を依頼した上で,参加者1名につき1回の面接を行った.具体的には,外来化学療法室でICI治療を受ける肝がん患者に対するirAEの管理と教育支援,治療継続支援,irAEへの対応経験,多職種との連携を質問し,なるべく自由な語りを促した.参加者の特性として年齢,看護師経験年数,認定看護師の経験年数,外来化学療法室経験年数を調査した.面接はプライバシーの保たれる個室等の静かな環境で行い,承諾を得てICレコーダーに録音した.

5. 分析方法

データの分析は,断片的なデータを基に看護実践の現象にある多くの変数を捨象することなく,その全体像を構造化することができる方法とされる(正木,2008)質的統合法(KJ法)を選択した.本研究では,外来化学療法室の混沌とした状況や認定看護師の複雑な看護実践を取捨選択することなく全体として記述でき,その構造を見出すことができるため,質的統合法(KJ法)が適していると判断した.山浦(2012)の質的統合法(KJ法)の手順に従い,稲垣(2020)を参考に,各個別分析で3段階までグループ編成を行ったラベルを,総合分析の元ラベルとして分析を行った.具体的手順は以下の通りである.

まず,個別分析では,個別のインタビュー内容を逐語録に起こして精読し,認定看護師が,外来化学療法室でICI治療を受ける肝がん患者に対して行う看護実践について,1枚のラベルに1つの意味内容が含まれるように元ラベルを作成した.次に,全ての元ラベルをよく読みつつ一望し,内容の類似性に着目して2~3枚程度のラベルを集め,集まったラベルの内容を一文にまとめた表札を作ることを1段階として,3段階までグループ編成を行った.

総合分析では,各個別分析で3段階までグループ編成を行ったラベル全てを素材として,個別分析と同様の手順を繰り返した.直感的に関係性を捉えられるのは最大7グループとされるため(山浦,2012),最終ラベルが5~7枚になるまで統合した.そして,最終ラベルの訴える内容が意味の上で最もわかりやすく,一貫した総合関係配置となる構造図ができるように,ラベル同士の関係を配置して空間配置図を作成して,最終ラベルにシンボルマークを付けた.シンボルマークは【事柄:エッセンス】の二重構造で表現した.

6. 信用性の確保

分析の信用性を確保するために,研究者自身が質的統合法(KJ法)の研修を複数回受講したうえで分析を行った.質的統合法(KJ法)の指導資格を持ち,指導経験が豊富な共著者と共に分析を行った.また,結果の信憑性を確保するため外来においてICI治療を受ける肝がん患者の研究および看護実践経験の豊富な共著者に結果の適切性の確認を依頼した.さらにデータの妥当性を保証するため,分析終了後,参加者に研究結果を提示しメンバーチェッキングを受けた.

7. 倫理的配慮

本研究は,長崎県立大学一般研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号r4002).また,参加者の所属施設の看護管理責任者の承諾を得て実施した.参加者には依頼書を提示して,自由意思による参加,同意撤回の権利,個人情報の保護とデータ管理,結果は匿名性を確保して学会および学術誌に公表することを説明し,同意の署名を得た.本研究は,品質やセキュリティが評価されているCISCO社のWebex Meetingを利用した双方向のWeb会議システムを利用しデータを収集した.録画は行わず,承諾を得てICレコーダーで録音した.面接はプライバシーが守られるよう配慮した.

Ⅴ. 結果

1. 参加者の特性

参加者は認定看護師8名,年齢は38~59歳(平均49.8 ± 6.8歳),看護師経験年数は16~38年(平均27.8 ± 7.5年),認定看護師の経験年数は7~13年(平均9.6 ± 2.6年),外来化学療法室経験年数は1.3~15年(平均8.4 ± 5.0年)であった.面接は参加者1名につき1回実施し,面接時間は26~47分(平均36.9 ± 7.3分)であった.

2. 分析結果

参加者8名(元ラベル931枚)の各個別分析3段階のラベル263枚で総合分析を行った.10段階のグループ編成を経て,6つの最終ラベルの関係性に基づいて空間配置を行った.図には最終ラベルとシンボルマークを示した.以下,シンボルマークごとに説明したのち,6つのシンボルマークの関係性について説明する.なお,シンボルマークは【事柄:エッセンス】,最終ラベルは《 》,下位ラベルは「 」,( )は(ラベル番号:参加者)を示す.

1) 6つのシンボルマークからなる看護実践

(1) 【病院・地域を巻き込んだ重症化対策:irAEの早期対応と重症化検証】

最終ラベルは,《管理が難しいICI治療は,外来看護師への教育支援と相談支援で看護のレベルを高めながら,irAEの早期対応と重症化検証に病院が一体となって取り組む途上にあり,地域を巻き込んだ広がりも見せている》(H002: A, B, C, D, E, F, G)であった.例えば「がん免疫療法の重症化対策は,事例の原因究明の情報を院内全体で生かすシステムと,調子の悪い患者からの発信を医師や看護師が見逃さず救急対応するシステムの双方から,病院が一体となり挑まなければならない」(E007: A, B, D, E, F)のように,重症化対策に病院が一丸となって取り組んでいた.また,「離島在住のICI治療患者の大腸炎をキャッチできたのは,患者が自ら発熱を救急外来に発信した事と,紹介元の離島の病院と事前に連絡を取り合っており夜間の緊急受診を受け入れてくれた成果による」(B055: B)のように,離島に住む患者のirAEに早期の対応ができた成功例があり,重症化対策は地域を巻き込んだ広がりを見せていた.さらに「irAEの重症化の想像から予防に結びつけるのは難しいが,カンファレンスや勉強会を通して問診や観察,自己管理指導の強化を図り,ICI治療患者への看護のレベルを上げていきたい」(E014: A, B, C, F, G)のように,irAE発症例への対応経験が少ない外来看護師に対し,問診や観察,自己管理指導の強化に向けて認定看護師が積極的に関わり,チームでirAEの早期発見に努めていた.

(2) 【症状の発信と受信の強化:患者教育と指標による把握】

最終ラベルは,《irAEの悪化予防は,患者が重症化の怖さを理解し症状をセルフモニタリングして早期発信する教育と,看護師が経験を積み上げた指標を用いてチームで症状をとらえ医師へつなぐ対応の両輪で懸命に行っている》(J001: A, B, C, D, E, F, G, H)であった.例えば「患者の理解力や自己管理能力の把握は難しいので,会話時の反応,血圧管理やかかりつけ医受診といった行動の指標に,患者に直接関わる医療者が把握する情報も含めて見定めている」(F003: A, B, C, D, E, H)のように,指標により患者の理解力を見定め,教育支援を行っていた.また,「irAEは突然起こり重症化するリスクがあり,重症化例の実体験や,僅かな徴候による防止例を具体的にイメージできるよう伝えて,患者のセルフモニタリングと初期発信の理解につなげる」(D019: A, B, C, D, E, F, H)のように,患者が重症化の怖さを実感して症状を早期発信できるよう関わっていた.

さらに,「患者がはっきり答えやすい臥床時間を聞いて怠さの症状を捉えたり,犬の散歩のきつさや動作の億劫さを指標として自覚できるように患者に助言するなど,培ってきた生活の指標でirAEの徴候を捉える」(C023: A, B, D, G)ことや,「チームで患者を看る体制と雰囲気を作り,皆で患者の動作や表情を細かく観察して得た情報に,顔なじみの看護師が得た情報を合わせて患者の変化を察知し,丁寧な看護につなげる」(F010: A, B, D, E, G)ことを行っていた.また,患者の発信を医療者が確実に受け止めて対応できるよう,「患者には,時間帯に応じた電話番号を教えてICI治療中と言い添える連絡の要領や診察時の伝え方のコツなど,患者からの発信が医師の対応に直結する具体的行動を伝える」(C037: A, E, H)工夫を行っていた.

(3) 【信頼し合える診療の保証:患者が安心できる人的環境づくり】

最終ラベルは,《私たちは患者の拠り所となれるよう意図して話す機会をつくったり,医師と患者が信頼し合える診療の実現に力をそそいだりと,患者が1人で背負い込まず安心して力が発揮できる人的環境をつくっている》(J002:A, B, C, D, E, F, G, H)であった.例えば「治療継続で起きる心理面の変化を外来の場で支援するために,タイミングを見極め,気になる患者を選別しながら接する時間を捻出して不安軽減と意欲促進を柱に話を聞き,安定した気持ちで治療に臨めるようにしている」(H001:A, B, C, E, F, G, H)のように,時間を捻出して患者の話を聞き,不安の軽減と意欲の促進を図っていた.また,「看護師は患者が頑張れる拠り所となる関係を意識して,声をかけて連絡や相談をしやすく感じられるよう働きかけており,その中で患者から良い所をもらうなど互いに気遣うケアリングへ進むこともある」(D010: A, B, C, D, H)のように,患者が安心できる関係を築く中で相互作用が生じることもあった.

そして,「患者が重荷を背負い込まないように看護師がともに歩む姿勢を示し,必要に応じて家族に協力を依頼したり,多職種や専門部署につないだり,在宅支援の看護職と協働して治療と生活を支える」(G009: B, C, D, E, F, G, H)のように,必要に応じて家族や多職種,地域資源の力を借り,患者の治療と生活を支えていた.さらに「患者の治療への思いを医師に橋渡しをしたり,必要時に再診察の設定をしたりと,弱い立場の患者を守りながら医師の負担と効率を考えて行動し,患者と医師が信頼し合える診療となるようにしている」(F001: A, B)のように,外来診療を行う多忙な医師に配慮しながら患者の代弁者となり,医師と患者が信頼し合える診療の実現に注力していた.

(4) 【治療による生活のしづらさへの配慮:思いの傾聴と次の治療選択への準備】

最終ラベルは,《治療選択肢の限られる肝がん患者の治療による生活のしづらさを慮りながら,必須となる次の治療選択と過ごし方の準備に向けて思いを聴き取り,緩和ケアチームと連携して選択を支えている》(I003: A, B, C, D, F, G, H)であった.例えば「患者は飲酒など制約された生活に苦痛を感じているため,治療継続のために節制を促すのはすごく難しいが,生活の質の維持とのバランスに目を向けられるよう話している」(025: A)のように,治療による生活のしづらさを推察して伴走していた.そのような中で,「治療歴が長く完治が目指せない肝がん患者に対して,回数を重ねながら心の内にある治療の目標や自分らしい生活のありようをそれとなく聴き,希望に沿う方法を考える」(D023: D, F, G, H)のように,回数を重ねて患者の思いを傾聴していた.さらに,「治療選択肢が限られる患者は,次の治療をどう選択してどう過ごすかの準備が必至であり,情報を集め,場合によっては緩和ケアチームと共にACP(Advance Care Planning)を進めて納得のいく選択を支える」(E003: C, D, G, H)のように,場合によっては緩和ケアチームと連携しながら次の治療選択への準備を行っていた.

(5) 【血管確保の確実性の保証:穿刺の上手さと血管耐久性の査定】

最終ラベルは,末梢静脈点滴の《穿刺の上手さで患者からの信頼を得ることや,血管の耐久性とポート導入のアセスメントをすること,つまり血管確保の確実性は,治療継続の上でも大きな要因である》(B005: A)であった.例えば,点滴による「治療継続で繰り返し血管を穿刺するし,肥満などで穿刺が難しくて苦痛な患者も多いため,あと何サイクルの治療に耐えられるか見定めたり,医師に早めのポート導入を相談したりと,血管確保のアセスメントをする」(020: A)のように,血管耐久性の査定をして血管確保の確実性を保証することで,患者の苦痛を最小にする方法で治療を継続できるよう支援していた.

(6) 【患者に深く関わる機会の少なさ:安全な投薬の他は余裕のない多重業務】

最終ラベルは,《外来化学療法室は診察で治療可能と判断された患者が来るため異変に気づいたり,irAEへ対応する事は少なく,安全な投薬の他は余裕のない多重業務で,患者に深く関わる機会は少ない》(E016: C, E)であった.例えば「外来化学療法室には,短時間に時間差で多くの患者が来室するため,看護師2人でも安全な投薬は絶対に守るが,他は多重課題のため作業レベル対応しかできない」(B027: E)のように,安全な投薬の他は余裕のない多重業務の現状を語る参加者もいた.また,「化学療法室には,医師の診察を受けて起こった問題が解決され治療可能と判断された患者が来るため,看護師が異変に気づく状況は少なく深い関わりもない」(A012: E)と,外来化学療法室で看護業務の受け止めの特性が語られた.

2) 外来化学療法室での看護実践の空間配置図

ICI治療を受ける肝がん患者に対して認定看護師が外来化学療法室で行う看護実践は図1のように現わすことができた.図1について説明する.認定看護師は【病院・地域を巻き込んだ重症化対策:irAEの早期対応と重症化検証】を前提として,【症状の発信と受信の強化:患者教育と指標による把握】と【信頼し合える診療の保証:患者が安心できる人的環境づくり】を行っていた.これらは両面からICI治療を受ける肝がん患者の安全と安心を保証していた.また,認定看護師は【血管確保の確実性の保証:穿刺の上手さと血管耐久性の査定】と【治療による生活のしづらさへの配慮:思いの傾聴と次の治療選択への準備】を行っていた.これらは両面からICI治療を受ける肝がん患者の治療継続を支援していた.【症状の発信と受信の強化:患者教育と指標による把握】と【血管確保の確実性の保証:穿刺の上手さと血管耐久性の査定】は相俟って,患者の身体面に着目した看護実践であった.そして【信頼し合える診療の保証:患者が安心できる人的環境づくり】と【治療による生活のしづらさへの配慮:思いの傾聴と次の治療選択への準備】は相俟って,患者の心理社会面に着目した看護実践であった.【病院・地域を巻き込んだ重症化対策:irAEの早期対応と重症化検証】が進展する一方で,【患者に深く関わる機会の少なさ:安全な投薬の他は余裕のない多重業務】の葛藤も存在していた.

図1  ICI治療を受ける肝がん患者に対する外来化学療法室での看護実践

Ⅵ. 考察

質的統合法(KJ法)で分析した結果,ICI治療を受ける肝がん患者に対する外来化学療法室での認定看護師の看護実践は最終的に6枚のラベルに集約された.

これらの看護実践は,認定看護師の役割や教育内容に包含されるかという視点で認定看護師教育基準カリキュラム(日本看護協会,2021)との照合を行い,5枚のラベルは包含されることを確認した.一方,【患者に深く関わる機会の少なさ:安全な投薬の他は余裕のない多重業務】は逸脱していた.これは,外来化学療法室での認定看護師の看護実践の現状の一部を示し,認定看護師の役割や教育内容のみでは解決できない課題と考えた.その点を踏まえて,看護実践の特徴と課題を考察する.

1. ICI治療を受ける肝がん患者に対して行う看護実践の特徴

特徴の1つ目として,認定看護師は【症状の発信と受信の強化:患者教育と指標による把握】を行っていた.irAEは急性または遅発性の場合があり,一部は治療終了後長期間経過してから発現する(Schmoranz et al., 2023).患者はICI治療には副作用があり生命を脅かす可能性さえあるという情報を記憶しているにもかかわらず,経験した症状とICI治療が必ずしも結びつかなかった(Cappelli et al., 2020)との報告がある.irAEは多様で紛らわしいと患者に認識され(Milne et al., 2020),教育は難しい.そのため認定看護師は指標から患者の理解力を見定め,緊急性の高い症状を先に情報提供することや,重症化例の実体験を伝えるなど,患者が重症化の怖さを理解し症状を早期発信できるよう関わっていた.さらに,臥床時間や動作の億劫さを指標として,患者の変化をとらえ医師へつなぐ対応を行っていた.このことから,患者の症状発信と医療者の症状受信の両輪の展開によりirAEの重症化予防がなされるといえる.

特徴の2つ目として,認定看護師は【信頼し合える診療の保証:患者が安心できる人的環境づくり】として,患者が1人で背負い込まないよう意図して話す機会を作り,多職種への橋渡しを担い患者の治療と生活を支えていた.ICI治療を受ける患者は,治療評価の検査の直前や結果を待つ間に不安を経験し,将来に対する不確実性をもつ(Hou et al., 2023).さらに,ICI治療の経済的負担は患者の苦痛の原因となる(Milne et al., 2020).肝疾患は偏見への恐れから他者に言いづらい場合もあるため,患者が不安に陥りやすい時期に留意して話を聴く必要がある.そして,患者の努力を認めて自負心を支え,短期目標を創り出すなど治療意欲を引き出し,患者が安定した気持ちで治療に臨めるような関わりが必要である.また,ICI治療は高額であり公的医療保険加入や高額療養費制度,肝疾患特有の医療費助成制度のもとでも経済的負担を伴う.患者が1人で背負い込まないよう,必要に応じて看護師が医療ソーシャルワーカーなどの多職種につなぎ経済的な負担軽減の支援が必要である.

特徴の3つ目として,認定看護師は【治療による生活のしづらさへの配慮:思いの傾聴と次の治療選択への準備】により治療継続を支援していた.肝がん患者のICI治療による無増悪生存期間の中央値は6.2~7.0カ月,12カ月生存率は65~71%(Hatanaka et al., 2022)と有効性が示される一方,治療の限界もある.経過が長い肝がん患者がICI治療を受ける場合はこの先どう過ごすかの準備は必至であり,認定看護師は次の治療選択と過ごし方の準備に向けて思いを聴き取り,緩和ケアチームと連携して選択を支えていた.外来化学療法室は「じっくり関われる場」「きちんと話をする場」と勤務する看護師に経験されたという報告(大谷,2022)がある.本研究でも認定看護師は【患者が安心できる人的環境づくり】と【思いの傾聴と次の治療選択への準備】を行い,これらは相俟って肝がん患者の治療と生活を受けとめ支える外来化学療法室への看護師の存在意義に関わる実践といえる.

特徴の4つ目として,認定看護師は点滴での【血管確保の確実性の保証:穿刺の上手さと血管耐久性の査定】を行っていた.医師の指示の下に看護師等が行う静脈注射は診療の補助行為の範疇として取り扱われている(厚生労働省,2002).末梢静脈留置針の挿入や細胞毒性の強い薬物の点滴静脈注射は,一定以上の臨床経験を有し,かつ,専門の教育を受けた看護師のみが実施することができる(日本看護協会,2003).特に,進行・再発がんの場合は,治療期間が長期にわたることもあるため,末梢血管が治療に耐えうるかのアセスメントが重要となる(淺野,2023).本研究でも,認定看護師は,穿刺の上手さで患者からの信頼を得ることや,血管の耐久性とポート導入のアセスメントにより患者の治療継続を支援していた.つまり,血管確保の確実性の保証は,患者の苦痛を最小に保ち,外来化学療法を継続するための大きな要因であり,重要な看護実践といえる.

2. 体制に影響される看護実践

看護実践の前提条件として,認定看護師は【病院・地域を巻き込んだ重症化対策:irAEの早期対応と重症化検証】を行い,外来看護師への教育支援と相談支援で看護のレベルを高めながら,irAEの早期対応と重症化検証に病院や地域を巻き込んで取り組んでいた.irAEは正常臓器に対する過剰な免疫反応に由来し,全身多臓器に出現する可能性がある.重度のirAEは生命を脅かす可能性があり,irAEが起きていることを早期に認識することおよび迅速な介入が最も重要である(峯村,2021).そのためICI治療の重症化対策は,事例の原因究明の情報を院内全体で生かすシステムと,調子の悪い患者からの発信を医師や看護師が見逃さず救急対応するシステムの双方から病院が一体となって取り組んでいた.

また,ICI治療患者のケアを行う外来看護師の知識の正答率はICI全般27%,irAE全般15%(Tsuji & Hayashi, 2022)と報告され,ICIやirAEに対する知識習得の難しさがある.加えて,発症頻度が低いirAEは遭遇する経験も限られる.そのため,irAE発症例の対応経験が少ない外来看護師に対し問診や観察,自己管理指導に向けて認定看護師が積極的に関わり,irAEを見逃さないようチームで早期発見に努めていた.朝鍋ら(2022)は看護師が遭遇できないirAEを理解して実践につなげるための教育とシステム作りを報告している.本研究においても同様に,irAEの早期対応と重症化検証を病院全体で行うシステムに加え,外来看護師への教育支援と相談支援で看護のレベルを上げ,ICI治療を受ける肝がん患者への看護を行う体制づくりをしていることが表わされた.

一方で,【患者に深く関わる機会の少なさ:安全な投薬の他は余裕のない多重業務】に葛藤する者もいた.外来腫瘍化学療法診療料1・2の施設基準では,専任の医師や看護師または薬剤師を院内に常時1人以上配置することが義務づけられている(厚生労働省,2024).一方,外来看護師の配置基準は患者30人に1人(医療法施行規則,1948)であり,外来化学療法室の病床数に対する看護師配置基準は明確にされていない.外来化学療法室には診察後の患者が短時間に時間差で来室し,侵襲性の高い薬剤が投与される.そのため看護師配置数が少ない場合は,多重業務の中で安全な投薬に焦点がおかれ,【信頼し合える診療の保証】や【治療による生活のしづらさへの配慮】等の心理社会的支援は難しいと推察される.看護師が,患者のその人らしくあるための生活を整え(坂根ら,2017),質の高い外来がん薬物療法を推進するために,看護の診療報酬評価として外来化学療法室の看護師配置基準の明確化は急務といえよう.

Ⅶ. 研究の限界と今後の課題

本研究は,認定看護師に焦点を当て,8名の面接により得られたデータであり,ICI治療を受ける肝がん患者に対する外来化学療法室での看護実践を網羅したとは言えない.また,本研究結果は,外来化学療法室での認定看護師の看護実践のデータの範囲内での分析に限定される.しかし,データを別の文脈に転用可能かどうかを利用者が評価できるよう,詳細な記述を行った.

本研究は,認定看護師が【症状の発信と受信の強化】と【信頼し合える診療の保証】を図り,心身両面から患者の安全と安心を保証することが見出された点に新規性がある.今後は,本研究の知見をもとに,ICI治療を受ける肝がん患者に対する看護実践自己評価尺度を作成し,肝がん患者の生命と生活の質の向上を目指した外来看護実践モデルを構築することが課題である.

Ⅷ. 結論

ICI治療を受ける肝がん患者に対して,認定看護師が外来化学療法室で行う看護実践として3点を明らかにした.

1.【症状の発信と受信の強化:患者教育と指標による把握】と【信頼し合える診療の保証:患者が安心できる人的環境づくり】が,心身両面から患者の安心と安全を保証していた.

2.【血管確保の確実性の保証:穿刺の上手さと血管耐久性の査定】と【治療による生活のしづらさへの配慮:思いの傾聴と次の治療選択への準備】ともまた,心身両面から患者の治療継続を支えていた.

3.看護実践の前提として【病院・地域を巻き込んだ重症化対策:irAEの早期対応と重症化検証】の体制づくりの一方で,【患者に深く関わる機会の少なさ:安全な投薬の他は余裕のない多重業務】の葛藤も存在した.看護の診療報酬評価として,外来化学療法室の看護師配置基準の明確化の必要性が示唆された.

付記:本研究の一部は第43回日本看護科学学会学術集会にて発表した.

謝辞:本研究にご協力くださいました参加者の皆様,ならびに参加者のご推薦を頂きました医療機関の関係者の皆様に心より感謝申し上げます.また,研究構想のご示唆を頂きました長崎大学病院 田浦直太先生に深く感謝申し上げます.本研究は,科学研究費助成事業基盤研究C(課題番号23K10041)「免疫チェックポイント阻害薬治療を受ける肝がん患者に対する外来看護実践モデルの構築」の助成を受けて実施した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:高比良祥子は研究の着想,デザイン,データ収集,データ分析および原稿の作成を行った.小林裕美はデータ分析および原稿への示唆を行った.岡部春香,庄村雅子は原稿への示唆および研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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