Journal of Japan Academy of Nursing Science
Online ISSN : 2185-8888
Print ISSN : 0287-5330
ISSN-L : 0287-5330
Original Articles
Parental Involvement in the Transition to Self-Care for School-Aged Children With Type 1 Diabetes Using Continuous Subcutaneous Insulin Infusion
Ayumi OguraYuko HirataniTomoyuki Kawamura
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2025 Volume 45 Pages 142-151

Details
Abstract

目的:1型糖尿病の学童期の子どもにセルフケアを移行するプロセスにおける親の関わりの様相を明らかにする.

方法:9歳以下で1型糖尿病を発症した,現在小学生以上の子どもの親10名を対象に半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した.

結果:研究参加者は全員が母親であり,子どもは全員持続皮下インスリン注入療法(CSII)を行っていた.分析の結果,【子ども自身で遂行することが難しい糖尿病管理を補う】【子どもとともに糖尿病管理を実施できるように働きかける】【親の責任のもとに段階的に糖尿病管理を子ども主体で進める】【学校関係者と協働して子どもの糖尿病管理を行う】【安心・安全な子どもの環境を整える】【子どもの主体性を促すために対応の仕方を工夫する】の6カテゴリーが抽出された.

結論:子どもにセルフケアを移行するプロセスにおける親の関わりは,子どもが主体的に糖尿病管理を行い,1型糖尿病と共に生きていくことにつながると示唆された.

Translated Abstract

Objectives: This study aimed to clarify parental involvement in the transition to self-care for school-aged children with type 1 diabetes.

Methods: We conducted semistructured interviews with 10 parents of children of school age or older, who were diagnosed with type 1 diabetes before the age of 9 years. The interview data were analyzed using qualitative inductive methods.

Results: All study participants were mothers, and all children were using continuous subcutaneous insulin infusion. Based on the analysis, six categories were extracted: “Complementing diabetes management that is difficult for the child to manage by themself,” “Managing diabetes with the child,” “Gradually promoting the child’s self-management of diabetes under parental supervision,” “Collaborating with school staff to manage diabetes in school,” “Establishing a safe and secure environment for children,” and “Devising ways to encourage the child’s independence”.

Conclusion: Parental involvement in the transition to self-care helps children will take the intiative in managing diabetes and live with type 1 diabetes.

Ⅰ. 緒言

1型糖尿病は膵臓のβ細胞の破壊によりインスリンが欠乏する疾患である.そのため,1型糖尿病の治療の基本はインスリンの補充であり,患者のセルフケアが不可欠である.1型糖尿病の発症は,乳幼児期から学童期・思春期全体にみられるため(杉原,2011),早ければ乳幼児期からセルフケアの獲得に向けて,1型糖尿病の子どもとその親を支援する必要がある.

子どもは成長・発達の過程でセルフケア能力を高めていく.具体的には,幼児期より基本的生活習慣を身につけ,学童期では家庭から学校中心の社会,親から友人中心の人間関係へと移行し,日常生活における生活習慣を確立していく.子どもは毎日,学校に行くことを通して,社会関係や認知的な広がりが著しく拡大し,親の保護や子ども自身の依存が存在しながらも,学童中期・後期と成長発達する中でセルフケア能力が格段に向上する(勝田,2019).加藤・中野(2008)は,小学校低中学年は,セルフケア行動を,親・家族からの働きかけによって,自分の病気や身体のことを通して知る段階であるため,小学校低中学年の子どもに対して自分の体を知る働きかけを行い,高学年になるころからは子どもの体験を通してセルフケア行動の意味づけができるように,子どもの発達段階に沿いながら,親・家族・医療者がサポートを変化させることが求められると述べている.このように,学童期は子どものセルフケアの獲得に重要な時期である.

1型糖尿病の子どものセルフケアに関する先行研究によると,学童期では家族の理解や協力が重要であることや(小倉・平谷,2023),幼少期・小学校低学年の子どもの療養行動の習得においては,母親の関わりが必要な要素であること(中村ら,2012),親の糖尿病管理の関わりにより小中学生はサポートを知覚して適切に療養行動を行なうことができ,QOLが高まることなどが明らかにされており(中村ら,2010),子どものセルフケアの獲得において家族,特に,親の関わりは重要であると言える.また,9歳以下の年少発症と10代発症の小児/青年が受けているサポートの相違について述べた研究により,前者は親,後者は医療者など他者が関わっていることが明らかにされている(中村ら,2015).このように発症時期によって,子どものセルフケア獲得のプロセスが異なるが.1型糖尿病の子どもの療養行動を親から子どもに移行するプロセスについて明らかにした先行研究(前田・添田,2013)の研究対象は年少発症に加え10代発症も含まれており,9歳以下の年少発症の1型糖尿病の学童期の子どもにセルフケアを移行するプロセスにおける親の関わりについて明らかにした研究は見当たらない.また,この論文は10年程度前の研究である.最近,公表された,就学前後の1 型糖尿病児に対する血糖管理を目指した親の関わりを明らかにした先行研究(水島・山﨑,2024)も存在するが,データ収集がなされたのは5年程度前であり,対象者の治療法はインスリン頻回注射療法に限られている.近年の,糖尿病の治療や測定機器の進歩は著しく,インスリンポンプも普及しているため,必要なセルフケアが異なる可能性が考えられる.

Ⅱ. 研究の目的

本研究では,9歳以下の年少発症の1型糖尿病の学童期の子どもにセルフケアを移行するプロセスにおける親の関わりの様相を明らかにすることとした.これにより,1型糖尿病の学童期の子どもとその親への支援の一助とすることとした.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究デザイン

質的記述的研究

2. 用語の定義

「セルフケア」とは,インスリン療法や血糖測定,低血糖への対応,食事や運動などの糖尿病管理に関する知識や技術に加えて,疾患やそれに伴う生活に対する理解,他者に相談する,他者の助けを借りることも含めた自発的行動とした.

「親の関わりの様相」とは,知識や技術の提供などの教育や,褒めたり子どもの悩みを聞いたりするなどの情緒的な関わり,教育機関との調整など,親が1型糖尿病の学童期の子どもにセルフケアを移行するプロセスにおいて行う行動とその背景にある親の思いや意図を含めた,関わりのありさまとした.

3. データ収集方法

9歳以下で1型糖尿病を発症した,現在,小学生以上の子どもの親(父親または母親,あるいは両親)を対象とした.面接調査を行う上で対面での調査の依頼や実施が可能な関西圏の大学病院のA病院に調査への協力を依頼し,A病院小児科外来に通院中の対象者のうち同意を得られた者を研究参加者とした.調査は1型糖尿病の子どものセルフケアに関する先行研究(前田・添田,2013加藤・中野,2008国吉ら,2003)を参考に作成したインタビューガイドを用いて,半構造化面接調査を行った.具体的には,「お子様が低血糖や高血糖に対応できるようにするためにどのようなことを行いましたか」や「お子様が小学校で過ごせるようにするためにどのようなことを行いましたか」などの質問を行い,幼児期・小学校低学年・小学校高学年の時期ごとの子どものセルフケアの状況や親の関わり・工夫・思いなどを語ってもらった.面接は,新型コロナウイルスの流行状況や社会状況,対象者の希望を加味して,対面もしくはオンライン会議ツール(Zoom)を用いて遠隔で実施した.データ収集期間は,2021年6月から10月であった.

4. 分析方法

Elo & Kyngäs(2008)の質的帰納的内容分析の手法を用いて分析した.録音した半構造化面接の内容をすべて逐語録に起こし,逐語録の内容を何度も繰り返し読み込み,親の関わりに関する語りを分析対象とし,メモや見出しを書きコード化した.コードはコーディングシートに集め,類似性や相違性に着目してグループ化し,サブカテゴリー,カテゴリーとして抽象度を高めた.全ての分析過程において,質的研究に熟知した研究者(1名)からスーパーバイズを受けた.また,1型糖尿病の専門家から助言を得ることで,分析の確証性(グレッグ,2016)の確保に努めた.加えて,結果の確実性(グレッグ,2016)を確保するために,同意の得られた対象者によるメンバーチェッキングを受けた.

5. 倫理的配慮

本研究は,大阪市立大学大学院看護学研究科倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号2021-3).研究協力への同意が得られた参加者に対し,研究目的や方法,参加の自由,同意撤回の権利の保障などについて書面および口頭で説明し,書面による同意を得た.対面面接は,プライバシーを保護できる個室で行い,Zoomを使用する際には,対象者毎にZoomミーティングのURLの変更,待機室機能,開始したZoomミーティングにロックをかける機能を使用して不正侵入を防ぎ,プライバシーを保護した.

Ⅳ. 結果

1. 研究参加者の基本属性

研究参加者は10名(全員が母親)で,基本属性は表1に示した.子どもの1型糖尿病発症時期は,幼児期が8名,学童期が2名で,罹病期間は平均7.75 ± 3.58年(範囲は0.5~14年),現在のインスリン治療は全員が持続皮下インスリン注入療法(以下,CSII)であった.仕事をしている母親の割合は70%であった.本研究参加者は全員が,子どもの糖尿病管理の大半を担っていた.面接時間は平均89.1 ± 27.72分(60~145分の範囲)であった.

表1 研究参加者の基本属性

I.D. 1型糖尿病の子どもとの関係 1型糖尿病の子どもの性別 1型糖尿病の子どもの現在の年齢(歳) 発症年齢(歳) 1型糖尿病の子どもの罹病期間(年) 現在のインスリン治療 1型糖尿病の子どもの同居家族 母親の就業状況
A 母親 11 1 10 CSII 両親,妹 パート
B 母親 10 1 9 CSII 両親,姉,姉 無職
C 母親 14 7 7 CSII 両親,姉 パート
D 母親 11 2 9 CSII 両親,兄,妹 パート
E 母親 14 9 5 CSII 両親 自営業手伝い
F 母親 10 1 9 CSII 両親,弟 無職
G 母親 7 3 4 CSII 両親,兄,兄 パート
H 母親 6 5 0.5 CSII 母親 フルタイム
I 母親 16 2 14 CSII 両親,弟 無職
J 母親 12a 2 10 CSII 母親,姉,妹 フルタイム

a中学生

2. 抽出されたカテゴリーとサブカテゴリー

1型糖尿病の学童期の子どもにセルフケアを移行するプロセスにおける親の関わりとして,6カテゴリー,24サブカテゴリー,359コードが抽出された(表2).以下,【 】はカテゴリー,〈 〉はサブカテゴリー,《 》は代表的なコード,「 」は研究参加者の語りを示した.文意が分かりにくい箇所には,前後の文脈から( )内に言葉を補った.

表2 1型糖尿病の学童期の子どもにセルフケアを移行するプロセスにおける親の関わり

カテゴリー サブカテゴリー 代表的なコード
子ども自身で遂行することが難しい糖尿病管理を補う 子どもの状況に応じて血糖測定や血糖値の確認をする 父親と協力して夜間の血糖測定をする,など18コード 
子どもが実施することが難しいインスリンポンプの管理やインスリン量の調整をする 子どもが自分で穿刺できない臀部にインスリンポンプの注入セットの穿刺をする,など27コード
子どもの食事前にあらかじめカーボカウントを行う 子どもが糖質量を見積もれるようになるまで毎日給食のカーボカウントを行う,など16コード
子どもの代わりに低血糖や高血糖に対応する 小学校から高血糖の電話があれば小学校へ行って対応する,など10コード
子どもとともに糖尿病管理を実施できるように働きかける 子どもが血糖測定や血糖値への対応ができるように働きかける 子どもの気分に合わせて子どもができる時に血糖測定をさせる,など20コード
子どもがインスリンポンプの管理やインスリンの投与を適切に行えるように働きかける 血糖値や糖質量を伝えてインスリンポンプへ入力させる,など34コード
子どもがカーボカウントできるように働きかける 子どもの好きなお菓子の食品表示でカーボカウントの練習をさせる,など25コード
子どもが低血糖や高血糖に対応できるように働きかける 体育の前やしんどい時は保健室へ行って補食するよう伝える,など20コード
子どもがシックデイを理解できるように働きかける 子どもが病気に罹った時にシックデイの説明をする,など5コード
親の責任のもとに段階的に糖尿病管理を子ども主体で進める 親の見守りのもとにインスリンポンプの操作やインスリンの投与を子どもに任せる 入学当初は小学校に行って給食前のインスリン投与を見守る,など7コード
段階的にカーボカウントや食事の量を子どもに任せる 子どもが行うカーボカウントが間違っていないことを確認して子どもに任せる,など7コード
学校関係者と協働して子どもの糖尿病管理を行う 小学校の協力を得て血糖値を管理する 給食時の血糖管理方法を記載したマニュアルを作成する,など6コード
小学校の協力を得てインスリンポンプの管理を行う インスリンポンプが外れた時は電話してもらうよう依頼する,など6コード
小学校の協力を得て食事の量を管理する 給食のご飯の量の測定を学級担任に依頼する,など3コード
小学校の協力を得て低血糖に対応する 低血糖時の血糖値の目安を伝え補食させてもらうよう依頼する,など12コード
安心・安全な子どもの環境を整える 子どもがサポートを得られるように小学校に働きかける 小学校入学前に補助の先生が必要かどうか先生と話し合う,など16コード
周囲に子どもの病気を知ってもらう 小学校入学前に子どもの病気や治療について資料を用いて説明する,など32コード
子どもの不測の事態に対応できるように備える 職場に子どもの病気を説明する,など15コード
1型糖尿病の患者会に参加してつながりをもつ 患者会で日常生活での悩みや工夫を相談する,など15コード
専門家の協力を得る 主治医に日常生活における子どもの悩みを相談する,など11コード
子どもの主体性を促すために対応の仕方を工夫する 子どもの思いに配慮して対応する 子どもが人前で血糖測定したくない気持ちを汲み取り主治医に対応方法を相談する,など10コード
子どもの関心や意向を考慮して対応する 子ども自身に装着しているSAPが見える服装にするかどうか決めさせる,など17コード
子どもの状況や特性に合わせて接する 子どもに口を出しすぎないように配慮する,など10コード
親からの自立のための機会をつくる 1型糖尿病をもってどのように生きていくか子どもと共に考える,など17コード

1) 【子ども自身で遂行することが難しい糖尿病管理を補う】

このカテゴリーは,子どもの能力あるいは子どもの状況により,子ども自身で実施が難しい糖尿病管理を親が代わりに補完している様子を表していた.これは,4サブカテゴリーで構成された.

1型糖尿病を幼児期に発症した子どもは,1人を除いて幼児期に血糖自己測定の手技を習得しており,学童期発症の子どもは発症してすぐに習得していた.しかし,手技を習得後,毎回子どもが血糖測定をしているわけではなく,子どもの気が向かない時には,無理をさせてまで子どもに血糖測定をさせずに,母親が代わりに血糖測定をしていた.また,母親は子どもの夜間睡眠中は,Sensor-Augmented Pump(以下,SAP)のアラートを詳細に設定して血糖値の推移を確認したり,《父親と協力して夜間の血糖測定をする》など〈子どもの状況に応じて血糖測定や血糖値の確認をする〉関わりをしていた.さらに,母親はインスリンポンプを操作してインスリン量の調整を行ったり,《子どもが自分で穿刺できない臀部にインスリンポンプの注入セットの穿刺をする》など〈子どもが実施することが難しいインスリンポンプの管理やインスリン量の調整をする〉関わりをしていた.インスリンポンプを用いた食前のインスリン投与では,食事に含まれる糖質量を見積もるカーボカウントを行った後,インスリンポンプに血糖値と糖質量を入力して自動計算されたインスリン量を投与するが,《子どもが糖質量を見積もれるようになるまで毎日給食のカーボカウントを行う》など,母親が〈子どもの食事前にあらかじめカーボカウントを行(う)〉っていた.また,母親は,《小学校から高血糖の電話があれば小学校へ行って対応する》など〈子どもの代わりに低血糖や高血糖に対応する〉関わりを行っていたが,そのために,「無理やわ,(仕事中)電話かかってきても急に(低血糖に対応をするために小学校に)行かれへんわって思ったのもあって.(中略)もう,いいやって思って,(仕事を)辞めたんですけど(I.D.: F)」のように,仕事の継続を諦めたり,子どものセルフケアがある程度確立してから仕事を始めたりしていた.

2) 【子どもとともに糖尿病管理を実施できるように働きかける】

このカテゴリーは,親が行っている糖尿病管理を子どもに移行するために,親が様々な工夫をしながら,子どもの糖尿病管理への参加を促し,子どもに自分で実施できる糖尿病管理を増やせるように働きかけている様子を表していた.これは,5サブカテゴリーで構成された.

母親は,「(血糖測定は)まあなんか機嫌がいい時とかは自分でやりますよね.機嫌が悪い時は私がやりますよねって.徐々に徐々にっていうかたちで(I.D.: D)」のように,《子どもの気分に合わせて子どもができる時に血糖測定をさせる》などして,徐々に,〈子どもが血糖測定や血糖値への対応ができるように働きかけ(る)〉ていた.CSIIに関しては,子どもに《血糖値や糖質量を伝えてインスリンポンプへ入力させる》など〈子どもがインスリンポンプの管理やインスリンの投与を適切に行えるように働きかけ(る)〉ていた.インスリンポンプの注入セットの交換は,インスリンの充填やインスリンポンプへの取り付けなど多くの手順がある.そのため,母親は子どもと一緒に注入セットを交換することから始め,母親の見守りのもと,子ども自身で行うように促し,子どもが1人で行う手技に問題がないか確認していた.これらを繰り返した後,最終的に子どもは1人で注入セットの交換ができるようになっていた.また,母親はカーボカウントの練習として,《子どもの好きなお菓子の食品表示でカーボカウントの練習をさせる》などの工夫を取り入れ,〈子どもがカーボカウントできるように働きかけ(る)〉ていた.

さらに,母親は,子どもに低血糖時の対処の必要性を説明し,《体育の前やしんどい時は保健室へ行って補食するよう伝える》など〈子どもが低血糖や高血糖に対応できるように働きかけ(る)〉ていた.また,《子どもが病気に罹った時にシックデイの説明をする》など適切なタイミングで〈子どもがシックデイを理解できるように働きかけ(る)〉ていた.

3) 【親の責任のもとに段階的に糖尿病管理を子ども主体で進める】

このカテゴリーは,親が監督できる範囲内で,子ども自身で糖尿病管理を実施するよう段階を踏んで促している様子を表していた.これは,2サブカテゴリーで構成された.

子どもが現在,中学生・高校生の母親は,糖尿病管理を子どもに任せて干渉していなかったが,学童期では,《入学当初は小学校に行って給食前のインスリン投与を見守る》など,「(インスリンポンプへの数値の入力が)合ってるとか間違ってるとかっていうのはちゃんと確認しながら,横で見てやらせて.大丈夫な時がだんだん増えてきて,まあ見んでも大丈夫かなっていうこと(に)なってからは,その確認もしないようにはなったり(I.D.: A)」のように,子どもの手技や理解度を確認して,〈親の見守りのもとにインスリンポンプの操作やインスリンの投与を子どもに任せる〉関わりをしていた.食事においても,《子どもが行うカーボカウントが間違っていないことを確認して子どもに任せる》など,〈段階的にカーボカウントや食事の量を子どもに任せ(る)〉ていた.

4) 【学校関係者と協働して子どもの糖尿病管理を行う】

このカテゴリーは,子どもが小学校で糖尿病管理を実施できるよう,親が学校関係者に働きかけて,協力を得ている様子を表していた.これは,4サブカテゴリーで構成された.

母親は,《給食時の血糖管理方法を記載したマニュアルを作成する》など,学校関係者が臨機応変に対応できるように配慮したうえで,〈小学校の協力を得て血糖値を管理(する)〉していた.また,《インスリンポンプが外れた時は電話してもらうよう依頼する》など〈小学校の協力を得てインスリンポンプの管理を行(う)〉ったり,正確にカーボカウントを行えるように《給食のご飯の量の測定を学級担任に依頼する》など〈小学校の協力を得て食事の量を管理(する)〉していた.

母親は,「低血糖,50(mg/dL)とかなっても,あんまり感じない,感じてんのやけど(自覚症状を感じているけど),ちっちゃいからまだ表現できないのか,(中略)(子どもから)言うことはなかったんです.だからまあ,最初の頃は,やっぱり,ちょっと怖かったんで(I.D.: E)」などの理由から,《低血糖時の血糖値の目安を伝え補食させてもらうよう依頼する》というように,具体的に説明をして〈小学校の協力を得て低血糖に対応(する)〉していた.

5) 【安心・安全な子どもの環境を整える】

このカテゴリーは,1型糖尿病の子どもが安全な環境の中で安心して過ごせるように,親が子どもを取り巻く環境を整備している様子を表していた.これは,5サブカテゴリーで構成された.

母親は,《小学校入学前に補助の先生が必要かどうか先生と話し合う》など〈子どもがサポートを得られるように小学校に働きかけ(る)〉ていた.その際,家庭の方針を小学校に伝える母親がいた一方で,小学校には多くを依頼せずに,小学校の対応に任せる母親もいた.〈周囲に子どもの病気を知ってもらう〉ための働きかけとして,学校関係者に《小学校入学前に子どもの病気や治療について資料を用いて説明する》以外にも,「まったく後ろめたいとかはないし,オープンにしたほうが安心なんで(I.D.: A)」という思いから,クラスメイトや塾講師などにも子どもの病気を伝えたり,災害時に備えて近隣住民に子どもの病気を説明していた.また,母親は,《職場に子どもの病気を説明する》ことで母親自身の職場と調整をするなど〈子どもの不測の事態に対応できるように備え(る)〉ていた.

父親に子どもの糖尿病管理の支援を期待できない,相談しても分からないと諦めていた母親は,「ちょっと,気持ちの拠り所もないしで,っていうのんで,それが1番しんどいというか.(中略)ここの病院(子どもが受診している病院)って,横(1型糖尿病の子どもと親)とのつながりも広げてくれるしで.やっぱり(母親自身が)1人ぼっちになった時に,あれ(子どもの糖尿病管理は),1人では乗り越えられへんやろなーって(I.D.: C)」のような理由から〈1型糖尿病の患者会に参加してつながりをも(つ)〉っており,それにより,《患者会で日常生活での悩みや工夫を相談する》ことができていた.また,母親は,主治医に治療に関する相談だけではなく,《主治医に日常生活における子どもの悩みを相談する》など,積極的に〈専門家の協力を得(る)〉ていた.しかし,看護師に悩みを相談していたのは1名のみであった.

6) 【子どもの主体性を促すために対応の仕方を工夫する】

このカテゴリーは,子どもが主体的に糖尿病管理を実施し,1型糖尿病と共に生きていくために,親が子どもに合わせた方法を模索したり,接し方を工夫している様子を表していた.これは,4サブカテゴリーで構成された.

母親は,《子どもが人前で血糖測定したくない気持ちを汲み取り主治医に対応方法を相談する》など〈子どもの思いに配慮して対応する〉関わりをしていた.また,子どもの意見を聞いて《子ども自身に装着しているSAPが見える服装にするかどうか決めさせる》など〈子どもの関心や意向を考慮して対応する〉関わりをしていた.さらに,小学校高学年の子どもの母親は,糖尿病管理について《子どもに口を出しすぎないように配慮する》など〈子どもの状況や特性に合わせて接する〉関わりをしていた.

1型糖尿病は,小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象疾患であるが,20歳を過ぎると医療費の助成は終了する.そのため,母親は,「糖尿(病)のことは自分の身体のことやし,一生,私ら(親)がやってあげられることではないので,もう,ちょっと厳しいようやけども,『絶対,あなたはこれ(糖尿病管理)をやらないといけない,生きていけないから,自分でできるようにはしなさい』みたいな(と子どもに伝えた)(I.D.: E)」のように,子ども自身で糖尿病管理を行っていかなければならないことを伝え,医療費や職業の選択を含めて《1型糖尿病をもってどのように生きていくか子どもと共に考える》など〈親からの自立のための機会をつくる〉関わりをしていた.その一環として,母親は子どもを糖尿病キャンプに参加させており,本研究参加者10名中7名の子どもが糖尿病キャンプの参加経験があった.参加未経験の2名の子どもの母親も,今後,子どもを糖尿病キャンプに参加させたいと語っていた.

Ⅴ. 考察

1. CSIIを行っている1型糖尿病の学童期の子どもにセルフケアを移行するプロセスにおける親の関わりの様相

【子ども自身で遂行することが難しい糖尿病管理を補う】関わり,【子どもとともに糖尿病管理を実施できるように働きかける】関わり,【親の責任のもとに段階的に糖尿病管理を子ども主体で進める】関わりは,親子間で糖尿病管理を移行するプロセスにおける親の関わりであった.これは,子どもが1つの手技を習得すれば次の手技へというように一方向に進むわけではなく,子どもが手技を習得しても実践はしていなかったり,子どもの夜間睡眠中に親が血糖値を確認したりと,子どもの状況に応じて徐々に,段階的に進めていることが分かった.小児・思春期1型糖尿病の診療ガイドによると,6歳頃からインスリン自己注射は可能とされているが(日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会,2017),本研究参加者の子どもが行っているCSIIでは,インスリンポンプの操作やインスリンポンプの注入セットの交換などが必要であり,その手順は複雑である.本研究参加者が子どもの代わりに実施していたインスリンポンプの注入セットの穿刺は技術を要し,血糖値の推移の確認やカーボカウントをしてインスリン量を調整することは知識や思考力が必要である.親が子どもの代わりに糖尿病管理を実施することは,適切なインスリン療法を行うために必要な関わりと考えられる.そして,親は子どもの能力を捉えて,インスリンポンプの注入セットの交換の一部から実施するなど,子どもができることから開始し,段階的に糖尿病管理を子ども主体に移行していた.セルフケア能力の発達においては,親または養育者が,子どものセルフケア能力を理解し,子どもができるように,できる方法を考え,調整しながら意図的に関わっていくことが重要である(及川・真鍋,2019).子どもに合った方法を考え,見守りや確認をして初めて子どもに任せるという本研究参加者の細やかな関わりは,子どもの安全を確保して確実に糖尿病管理をするために必要と考えられる.一方で,学童期の子どもは認知能力が著しく発達するため,親からの低血糖や高血糖,シックデイの説明により,血糖値の意味や対処の必要性を理解できるようになり,親からの受動的な糖尿病管理から,主体的な糖尿病管理へと変化する可能性が考えられる.出野・中村(2010)は,母親が療養行動の自立を視野に入れ,子どもの理解力や実施能力を適切に判断して療養行動を促していく関わりは,発達段階に見合った療養行動を子どもが実施できることや,子どもなりに療養行動を自分のこととして受け止められることにつながると指摘している.親が子どものできることを認めて,段階的に糖尿病管理を任せたり,子どもの対応を確認してから助言する関わりは,子どもの糖尿病管理への自信や自覚につながると考えられる.また,親が,子どもの機嫌に応じて柔軟に対応することや,子どもが楽しみながら糖尿病管理に取り組めるような工夫をすることは,学童期の子どもにセルフケアを移行する関わりの特徴といえるだろう.このような親から子どもへの柔軟で無理のない働きかけにより,糖尿病管理を行うことが子どもの日常生活に徐々に組み込まれていくと考えられる.

前述のように,学童期の子どもの糖尿病管理には親の補完が必要であるが,この時期の子どもは親から離れて小学校で過ごす時間が多くなる.そのため,親は,【学校関係者と協働して子どもの糖尿病管理を行う】関わりと【安心・安全な子どもの環境を整える】関わりを行っていた.食事量の管理やインスリンポンプの数値の入力の確認など,親の代わりに子どもの糖尿病管理を補ってもらえるように小学校に依頼しており,これは小学校でも確実に子どもの糖尿病管理を継続させることを意図した親の関わりであった.また,学童期の子どもは低血糖などの症状を自覚し,他者に的確に伝える力や対処する力が不十分であるため,親は小学校で起こりうるリスクを予測して,学校関係者がこれに対応できるようにあらかじめ準備していた.親自身も,職場と調整をして子どもの不測の事態に対応できるように備えていた.さらに,親が学校関係者に分かりやすく病気の説明をしたり,小学校側の事情も理解しながらコミュニケーションをとるなど,小学校を尊重した働きかけをすることは,子どもの安心安全な学校生活を整えることにつながると考えられる.また,糖尿病であることを知っている仲間のサポートがある子どものQOLは高いことが明らかにされており(Wagner et al., 2006),クラスメイトの理解を得ることは,子どもが子どもらしく学校生活を過ごすためにも必要と考えられる.本研究参加者は,学校だけでなく塾講師や地域住民にも子どもの病気を説明していた.子どもの活動範囲が拡がるにつれて親だけでは子どもを守ることができなくなるため,周囲の人に子どもの病気を理解してもらうことで,協力を得られるように働きかけていたものと考えられる.さらに,本研究参加者は1型糖尿病の子どもの親同士のつながりをもっており,情報共有の場や母親の気持ちの拠り所となっていた.慢性疾患患児を育てる母親の生活の満足感には,ソーシャルサポートの影響が強いことから(扇野・中村,2010),患者会で同じ病気の子どもをもつ親同士の思いや悩みを共有しあうことは,親が子どもや子どもの病気に前向きに向き合う一助になるだろう.

上述した5つの子どもへの親の関わりの基盤と考えられるのが,【子どもの主体性を促すために対応の仕方を工夫する】関わりである.親は子どもの意向を確認したり,子どもの糖尿病管理に対するネガティブな思いを汲み取ったりしながら,子どもが納得して糖尿病管理を行えるような方法を模索しており,子どもの思いに寄り添いながらも,やるべきことは工夫して実施するメリハリのある関わりを行っていた.また,子どもの特性や発達段階に合わせて関わり方を変えていた.親の自律支援的コミュニケーションは,思春期の子どものアドヒアランス向上と関連していることが報告されている(Goethals et al., 2020).学童期から子どもが主体となって糖尿病管理を行えるような親の関わりは,思春期以降の糖尿病管理の基盤となる可能性が考えられる.加えて,親は糖尿病キャンプを利用したり,就職や医療費などの将来的な課題について話すなど,子どもに自立を意識させる働きかけを行っていた.これらの関わりには,親に頼らずに子どもが生きていけるように,という子どもの将来を見据えた親の思いがあった.親は,学童期の現在だけではなく,長期的な視点をもって,子どもが1型糖尿病と共に生きていくための関わりを行っていたと考えられる.

2. 1型糖尿病の学童期の子どもと親への支援

本研究参加者は,看護師との関わりが少なく,看護師による子どもと親への支援が不足していることが明らかになった.看護師は,本研究により明らかになったセルフケアを移行するプロセスにおける親の関わりの様相を理解し,親と共に子どものセルフケアを支援することが求められる.

本研究参加者の子どもの多くは幼児期発症であり,親は子どもにとって無理のないよう徐々に子ども主体の糖尿病管理へ移行できるよう関わっていた.1型糖尿病発症時期が幼児期である子どもの家庭では,親主体の糖尿病管理が習慣化していると考えられる.看護師は,子どもの発達や能力をアセスメントし,子どもが実施可能な糖尿病管理を積極的に提案することで,親から子へのセルフケアの移行を後押しできると考えられる.同時に,子どもの糖尿病管理は,手技習得もしくは未習得の2択で評価するのではなく,子どもの生活を知り,日常生活の中で子どもが実施できることを増やしていくという視点をもつことが必要である.本研究参加者は,ピアや医師に糖尿病管理を行う中で生じた悩みを相談し具体的な解決方法や工夫について助言を得ていたことから,このようなニーズがあると判断できる.

さらに,本研究参加者は,子どもの意向を尊重し,子どもの将来を見据えて関わっていた.小児期発症疾患患者において,年齢とともに病態・合併症が変化し,身体的・人格的に成熟するにあたって,小児期医療から個々の患者に相応しい成人期医療への移行が重要な課題となっている(横谷ら,2014).1型糖尿病患者の移行に関して,American Diabetes Association Professional Practice Committee(2024)は,思春期初期に成人期医療への移行支援を開始することを推奨しており,学童期から子どもが自身の病気について考え,行動する機会を与えることは決して早くないと考えられる.看護師は,子どもの1型糖尿病への思いや現在の生活について対話する機会をつくることで,子どもの意向を尊重した支援につなげる必要がある.また,親が将来を見据えて関わっていたように,修学旅行や中学校進学といった近い将来のことから一緒に考えることは,子ども自身で考え行動する契機となるだろう.このように,セルフケアの移行を親に任せるのではなく,医療者も共にセルフケアの移行を進めていくことが重要であり,看護師は,子どもと親,医療者がチームとなって移行を進められるよう調整する役割があると考えられる.

また,親は1型糖尿病の子どもの親同士の交流を通して不安や疑問を解消することで,子どもの安心・安全な環境を整えていた.日本の14歳以下の1型糖尿病発症率は10万人年あたり2.25人(Onda et al., 2017)と低いため,1型糖尿病の仲間と出会うことは少なく,1型糖尿病の子ども同士の交流や情報共有は容易ではないと考えられる.このような背景の中,外来通院する慢性疾患患児の家族は,社会資源に関する情報提供を看護師に期待していることが明らかにされているため(鈴木ら,2003),社会資源に関する資料や,患者会,糖尿病キャンプなどに関するパンフレットを外来に掲示するなど,子どもと親が情報に触れられるような環境づくりを行うことも重要だろう.

Ⅵ. 研究の限界と課題

本研究参加者は母親のみであり,父親の関わりは母親の語りからしか伺い知ることができなかった.また,1型糖尿病の治療経験が豊富な1病院に通院する患者の親を対象とした調査であり,子どもの年齢や罹病期間にもばらつきがある.そのため,本研究の結果はCSIIを行っている1型糖尿病の学童期の子どもにセルフケアを移行するプロセスにおける親の関わりの様相として一般化することはできず,例証のひとつである.今後は対象を拡大して,様々な1型糖尿病の子どもと家族を対象に研究を行い,知見を集積する必要があろう.

Ⅶ. 結論

持続皮下インスリン注入療法(CSII)を行っている1型糖尿病の学童期の子どもにセルフケアを移行するプロセスにおいて,親は,子どもが安全かつ確実な糖尿病管理が実施できるように【子ども自身で遂行することが難しい糖尿病管理を補う】関わりをしていたが,同時に,徐々に【子どもとともに糖尿病管理を実施できるように働きかけ(る)】,親から子どもにセルフケアを移行していき,【親の責任のもとに段階的に糖尿病管理を子ども主体で進め(る)】ていた.学童期は,家庭外で過ごす時間が増えるため,【学校関係者と協働して子どもの糖尿病管理を行う】関わりや,【安心・安全な子どもの環境を整える】関わりにより周囲の協力を得ながら,親は子どもが1型糖尿病と共に生きていけるよう【子どもの主体性を促すために対応の仕方を工夫する】関わりをしていた.

付記:本論文の一部はThe 48th Annual ISPAD Conferenceにおいて発表した.また,本研究は大阪市立大学大学院看護学研究科に提出した修士論文に加筆・修正を加えたものである.

謝辞:本研究にご協力いただきました研究参加者の皆様と,研究対象施設の皆様に心より感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:AOは研究の着想およびデザイン,データ収集,分析,論文作成を行った.YHは,研究計画,データ分析,論文作成に関わり,研究プロセス全体への助言を行った.TKは,論文作成に関わり,研究プロセス全体への助言を行った.すべての著者は最終原稿を読み承認した.

文献
 
© 2025 Japan Academy of Nursing Science
feedback
Top