2025 Volume 45 Pages 25-38
目的:COPD療養者に対する訪問看護師のセルフマネジメント(SM)教育の実施頻度と看護上の課題,他職種との連携頻度,困難に関する実態及び,それらと訪問看護師の臨床経験との関係・特徴を明らかにする.
方法:全国の訪問看護師3,000人を対象に,郵送法による質問紙調査を実施した.分析は基本統計量を算出後,SM教育の実施頻度と看護上の課題,他職種との連携頻度と臨床経験との差をMann–WhitneyのU検定で解析した.困難に関する自由記述は内容分析によりカテゴリーを抽出した.
結果:305人を分析対象とした.SM教育の実施頻度では,息切れの評価に関する指導が最も少なく,呼吸器科病棟経験がない群で有意に少なかった.それに加えて,呼吸器科病棟経験がない群はCOPD療養者への訪問看護の困難を感じやすい特徴があった.
結論:訪問看護師によるSM教育を促進するためには,臨床経験に応じた専門知識の普及と困難感の軽減が求められる.
Objective: This study aimed to clarify the actual conditions of the frequency of self-management (SM) education, nursing issues, frequency of collaboration with other professionals, difficulties faced by home-visit nurses for patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD), and the relationship between these experiences and home-visit nurses’ clinical experiences.
Methods: A postal questionnaire survey was conducted with 3,000 home-visit nurses nationwide. After calculating the basic statistics, the differences between the frequency of SM education, nursing issues, frequency of collaboration with other professions, and clinical experiences were analyzed using the Mann–Whitney U test. The free-description categories of difficulty were extracted using content analysis.
Results: The analysis included 305 participants. Regarding the frequency of SM education, instruction on the assessment of shortness of breath was the least common and significantly less common in the group with no experience in respiratory wards. Additionally, the group with no experience in respiratory wards was more likely to experience difficulties in home-visit nursing for patients with COPD.
Conclusion: To promote SM education among home-visit nurses, there is a need to disseminate expertise and reduce feelings of difficulties.
日本における慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)の死亡者数は,ほぼ横ばいで推移しているものの依然と高い水準である(厚生労働省,2022).そうした現状において,厚生労働省(2023)からは「令和3年度の統計で人口10万人あたり13.3人のCOPD死亡を令和14年には10.0まで減少させる」という新たな目標案が掲げられ,COPDによる死亡率減少の取り組みは,現在においても重要な課題である.
COPDは進行性・全身性の疾患であるため,疾患の進行抑制や生命予後改善のための長期管理が求められる.COPDに対する増悪時のアクションプランを含むセルフマネジメント(Self-Management: SM)教育が健康関連QOLを改善し,呼吸器関連の入院率を減少させることが知られており(Lenferink et al., 2017),長期管理を支援する上でSM教育は必要不可欠な介入である.また,2016年のメタアナリシスでは,SM教育による介入期間が長いほどCOPD患者の全ての原因による入院が減少することがわかっており(Jonkman et al., 2016),全身性疾患の特徴をもつCOPD患者の死亡率減少には長期的な介入がひとつの方策になり得る可能性がある.そこで,本研究では在宅において長期的な支援が可能な訪問看護によるSM教育に着目した.
2012年のCochrane reviewによってCOPD療養者に対する訪問看護は,疾患特異的健康関連QOLを改善することが知られてきた(Wong et al., 2012).日本では,森ら(2019)によってCOPD療養者に対する訪問看護のSM教育に関する質的研究が行われているが,増悪予防に限定されており,SM教育の全国的な実態は明確になっていない現状がある.また,日本の看護研究におけるCOPDの文献レビューによってもSMに関する全国的な調査の必要性が指摘されており(金子ら,2023),訪問看護師によるSM教育の実態調査を行うことの意義は大きい.
2014年の訪問看護実態調査(日本看護協会,2015)によると,訪問看護師が学卒後すぐに訪問看護に就いた割合は0.6%と極めて少なく,訪問看護師として勤務するときには多様な臨床経験を有していることが多い.しかしながら,Benner(2001/2005)は,「どんな看護師でも,経験したことのない科の患者を扱うとき,ケアの目標や手段に慣れていなければ,その実践は初心者レベルである」と述べており,COPD療養者に対する訪問看護という状況の中で前職の臨床経験をどれだけ活かせているのかという疑問がわく.特にCOPDにおけるSMは,呼吸リハビリテーションに包括された位置づけであることから(Spruit et al., 2013),無理のない低負荷の自主トレーニング等の技術獲得への支援も求められる.先行研究によると,訪問看護師はリハビリテーションの訓練計画や評価に対して不安を抱いている一方で(川嶋,2013),訪問看護師の経験年数が長い方が訪問看護師として自律してリハビリテーションを実施していたことが示唆されている(川嶋・飯降,2014).そのため,訪問看護師の臨床経験によってはSM教育の実践が異なっている可能性がある.
同時に,訪問看護師には多様な困難感が存在していることが明らかにされており(柴田ら,2018),とりわけ新任期の訪問看護師の多くは「多種多様な利用者への個別性の高い看護」に強い困難感を抱いていたことが報告されている(渡部・武田,2019).つまり,COPD療養者に対する訪問看護の困難にも訪問看護師の臨床経験による特徴を有している可能性がある.それに加えてCOPDに対するプライマリ・ケアの看護には,療養者との関係性構築,教育が受けられない,訪問時間がかかりすぎる,他職種からのサポート不足等,多様な看護上の課題があることが報告されている(Gustafsson & Nordeman, 2018).
したがって,COPD療養者に対する訪問看護師のSM教育と困難の実態を詳密に把握するために,SM教育の実施頻度やSM教育を行う上での看護上の課題,他職種との連携実態を調査し,訪問看護師の臨床経験に焦点をあてて検討した.
本研究では,全国調査によって以下の2点を明らかにすることを目的とした.
1.COPD療養者に対する訪問看護師のSM教育の実施頻度と看護上の課題,他職種との連携頻度の実態と臨床経験との関係.
2.COPD療養者に対する訪問看護師の困難の実態と臨床経験における特徴.
SM教育
日本の呼吸リハビリテーションに関するステートメント(植木ら,2018)で提唱されているSM教育の定義を用いて,「健康問題を持つ人が疾患に関連する知識を得るだけではなく,自身が多様な価値観に基づき達成目標や行動計画を医療者と協働しながら作成し,問題解決のスキルを高め,自信をつけることにより健康を増進・維持するための行動変容をもたらす支援」と定義した.
困難
訪問看護師の困難感に関する先行研究(長内ら,2011)を参考に,「訪問看護を行う上で生じる訪問看護師の苦労・苦悩・戸惑い・葛藤・無力さなどの主観的な負担」と定義した.
調査施設は全国訪問看護事業協会正会員一覧より,小児と精神疾患専門の訪問看護ステーションを除外したあと47都道府県の会員数の比率と抽出数の比率を同じにし,無作為に訪問看護ステーション1,000施設を抽出した.そして,施設によるデータの偏りを避けるため,調査協力依頼は抽出された訪問看護ステーションの各施設につき3人に設定し,全国の訪問看護師3,000人を対象とした.
2. 調査の期間と方法2019年6月から2019年8月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.はじめに研究者から訪問看護ステーションの管理者に研究を依頼し,研究への同意が得られた管理者から訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師3人へ質問紙を配布いただき回答を求めた.返送は,返信用封筒を用いて対象者から直接研究者に郵送するよう依頼した.また,調査開始2ヶ月頃の回収状況を踏まえて,2019年8月に返信のなかった920施設の訪問看護ステーション管理者に対して研究協力を依頼するはがきを再送付した.
3. 調査内容 1) 研究対象者の背景勤務地や看護師経験年数,訪問看護経験年数等の個人属性に加えて,訪問看護ステーションにおけるCOPD療養者への訪問看護の提供状況を確認するために,勤務している訪問看護ステーションの利用者数及びCOPDを主病名とする利用者数を設定した.
2) COPD療養者に対して訪問看護師が行うSM教育の実施頻度これまでの経験でCOPD療養者に対して実施したことのあるSM教育について,「呼吸リハビリテーションマニュアル―患者教育の考え方と実践―」(日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリテーション委員会ら,2007)の自己管理のための学習内容と達成目標をもとに66項目を作成した.これらの学習内容は,前述の呼吸リハビリテーションに関するステートメント(植木ら,2018)でSM教育の学習項目として示されているものであり,幅広い実態を把握するものとして66項目を設定した.
3) COPD療養者に対してSM教育を行う上での看護上の課題SM教育を行う上での看護上の課題として,先行研究(Gustafsson & Nordeman, 2018)を参考に療養者との関係性構築,教育が受けられない,訪問時間がかかりすぎる,他職種からのサポート不足に関わる8項目を設定した.訪問時間がかかりすぎることについては,これまでのCOPD療養者に対する訪問看護の経験から,SM教育を行うために必要だと感じる提供時間・訪問回数として,介護保険上のサービス種類に基づき訪問看護I2(30分未満)や訪問看護I3(30分以上1時間未満)等で具体的な回答も求めた.
4) COPD療養者に対する訪問看護で行う他職種との連携頻度COPD療養者に対する訪問看護を行う上で連携すると考えられた職種に加えて,COPDの看護に専門性を有する慢性呼吸器疾患看護認定看護師(Chronic Respiratory Nursing Certified Nurse: CRNCN)等を含めた15項目を設定した.
以上の2)~4)の各項目については,頻度または当てはまりを問うためLikert尺度による4件法を用いて,1を「全くしていない」あるいは「全くあてはまらない」,2を「あまりしていない」あるいは「あまりあてはまらない」,3を「時々している」あるいは「ややあてはまる」,4を「いつもしている」あるいは「とてもあてはまる」と設定した.
5) COPD療養者に対する訪問看護師の困難を感じる対象や事象COPD療養者に対する訪問看護で困難を感じる対象や事象については,訪問看護師が自由に表現できることを重視するとともに上記の調査結果を補足説明し,具体的な解釈を得ることを意図したため自由記述法で回答を求めた.
質問紙の作成にあたっては,研究者が作成した試案について,訪問看護ステーションで勤務しているCRNCN 1人と訪問看護師7人に内容妥当性及び回答のしにくさや記入時間,負担感について確認を求めた.
4. 分析方法基本統計量を算出し,分布を確認後,SM教育の実施頻度(66項目),SM教育を行う上での看護上の課題(8項目),他職種との連携頻度(15項目)を順序尺度として用い,臨床経験別(看護師経験年数の長短,訪問看護経験年数の長短,呼吸器科病棟の経験の有無)に2群に分けて群間での差をMann–WhitneyのU検定で解析した.様々な臨床経験の中でこれら3つの経験に焦点を当てて分析した理由は,精神科訪問看護に関する先行研究(関藤・西垣,2021)で,看護師経験年数,精神科訪問看護経験年数,精神科病棟経験の有無の違いによって知識や苦手意識の差があることが示唆されていたため,特に実践に影響を与える重要な臨床経験と考えたからである.本研究では,COPD療養者に対する訪問看護に関する調査であることから,看護師経験年数の長短に加えて,訪問看護経験年数の長短と呼吸器科病棟経験の有無で分析した.看護師経験年数と訪問看護経験年数については,それぞれの中央値に従って均等になるように24年未満(以下,看護師経験が短い群)と24年以上(以下,看護師経験が長い群),6年未満(以下,訪問看護経験が短い群)と6年以上(以下,訪問看護経験が長い群)の2群とした.呼吸器科病棟経験は有無によって,ある群とない群の2群とした.分析にはSPSS Statistics 24.0を使用し,有意水準は5%とした.
自由記述については,訪問看護師の視点や声を反映した困難を明らかにすることを重視し,各臨床経験で数量的な特徴をみるため,ベレルソンの内容分析の定義(Berelson, 1952/1957)に基づいて分析した.また,記述全体を文脈単位,訪問看護師が困難を感じる対象や事象に関する記述の1内容を1項目として含むセンテンス及び単語を記録単位とした.具体的な手続きを以下に示す.
1)未記入や研究者が理解困難な回答,各臨床経験が確認できないものを除外し,最終的に100人の記述内容を分析対象とした.
2)データを熟読したあと,COPD療養者に対する訪問看護で困難を感じる対象や事象が記述されている箇所を抜き出し,記録単位を作成した.
3)作成した記録単位をCOPD療養者の状態・状況に関する困難と訪問看護の提供に関する困難に分類し,記録単位の意味内容が損なわれないように,できるだけ自由記述に記された言葉を用いて簡潔な表現でコード化した.
4)得られたコードから同義のものを集め,その意味を表すように表現したものをサブカテゴリーとした.
5)類似するサブカテゴリーを集め,抽象度を高めて表現したものをカテゴリーとした.
6)分析者の主観を最小限にしてカテゴリーの信頼性を確保するため,上記,3)~5)の手続きについて研究者2人の合意が得られるまでピア・チェッキングを重ねた.その後,カテゴリー分析の経験がある在宅看護専門看護師1人に協力を得てカテゴリーの一致率を算出した.算出方法は,無作為に抽出した20%のコードについて在宅看護専門看護師がカテゴリーへ分類し,Scott(1955)の式により一致率を算出した.そして,舟島(2007)の判断基準を用いて70%以上を信頼性確保の基準とした.
7)カテゴリーの信頼性を確認後,カテゴリーに分類されたコードの出現頻度を数量化し,カテゴリー毎と各臨床経験毎に集計した.
5. 倫理的配慮本研究は,目白大学人及び動物を対象とする研究に係る倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:19研-006).訪問看護ステーションの管理者と対象者に研究の目的,調査参加の任意性,個人情報の保持,不参加の場合にも,対象者になんら不利益が生じないことを文書にて説明した.研究への同意は,質問紙の同意確認欄へのチェックにより確認し,調査協力について強制力が働かないよう,返送は個人で郵便ポストへ投函することとした.
全国の訪問看護師3,000人に質問紙を配布し,山梨県を除く46都道府県の訪問看護師315人(回収率10.5%)から回答を得られた.このうち,複数項目に無回答であった者を除く305人を分析対象とした(有効回答率10.2%).
2. 研究対象者の背景 1) 個人属性(表1)女性が95.7%を占め,年齢は40歳代が41.4%と最も多かった.看護師経験年数は20年以上30年未満が41.9%と最も多く,平均値は22.7年(SD 8.7),中央値は23.0年であった.訪問看護経験年数は5年未満が42.9%と最も多く,平均値は7.7年(SD 6.4),中央値は6.0年であった.これまでの看護職の勤務経験においては,呼吸器科以外の内科病棟が191人と最も多く,呼吸器科病棟は78人であった.
n | 人数(%) | n | 人数(%) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
性別 | 305 | 女性 | 292(95.7) | 看護師経験年数 | 298 | 10年未満 | 24(8.1) | |
男性 | 13(4.3) | 10年以上20年未満 | 73(24.5) | |||||
年齢 | 304 | 20歳代 | 3(1.0) | 20年以上30年未満 | 125(41.9) | |||
30歳代 | 53(17.4) | 30年以上40年未満 | 71(23.8) | |||||
40歳代 | 126(41.4) | 40年以上 | 5(1.7) | |||||
50歳代 | 107(35.2) | 訪問看護経験年数 | 296 | 5年未満 | 127(42.9) | |||
60歳以上 | 15(4.9) | 5年以上10年未満 | 67(22.6) | |||||
勤務地 | 305 | 北海道・東北地方 | 34(11.1) | 10年以上20年未満 | 81(27.4) | |||
関東・甲信越地方 | 97(31.8) | 20年以上 | 21(7.1) | |||||
東海・北陸地方 | 41(13.4) | これまでの看護職の勤務経験(複数回答あり) | 305 | 呼吸器科病棟 | 78 | |||
近畿地方 | 52(17.0) | 呼吸器科以外の内科病棟 | 191 | |||||
中国・四国地方 | 37(12.1) | 呼吸器科以外の外科病棟 | 158 | |||||
九州・沖縄地方 | 44(14.4) | クリティカルケア部門 | 35 | |||||
資格(複数回答あり) | 305 | 看護師 | 301 | 外来 | 106 | |||
准看護師 | 24 | その他 | 90 | |||||
保健師 | 30 | これまでに受講した呼吸ケアに関する勉強会や研修会(複数回答あり) | 305 | 受講あり | 257(84.2) | |||
3学会合同呼吸療法認定士 | 14 | COPD | 128 | |||||
介護支援専門員 | 53 | 在宅酸素療法 | 126 | |||||
認定看護師 | 10 | 非侵襲的陽圧換気 (NPPV) | 157 | |||||
その他 | 8 | 気管切開下陽圧換気 (TPPV) | 103 | |||||
勤務形態 | 304 | 常勤 | 249(81.9) | 呼吸リハビリテーション | 192 | |||
非常勤 | 55(18.1) | 排痰援助 | 146 | |||||
職位 | 303 | 管理職(所長・管理者) | 47(15.4) | その他 | 3 | |||
中間管理職(副所長・主任等) | 36(11.8) | 訪問看護師養成講習会の受講経験 | 301 | あり | 157(52.2) | |||
スタッフ | 220(72.1) | なし | 144(47.8) |
全利用者数の平均は97.1人で,COPDを主病名とする利用者数の平均は3.0人であったため,利用者数に占めるCOPDを主病名とする利用者の割合は約3.1%であった.
3. COPD療養者に対して訪問看護師が行うSM教育の実施頻度(表2)以下,SM教育の66項目は,〈 〉で示す.実施したことのあるSM教育の中で「いつもしている」は,〈1 療養者の訴えに対して積極的に傾聴する姿勢を示している〉(79.0%),〈2 毎年,秋にインフルエンザワクチンの予防接種を勧めている〉(66.8%)の順に多かった.その一方で,「全くしていない」は,〈66 息切れの強さが評価できるよう指導している〉(35.4%),〈60 療養日誌を記入することを勧めている〉(33.9%)の順に多かった.
項目 | n | 全くしていない | あまりしていない | 時々している | いつもしている | |
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n(%) | n(%) | n(%) | n(%) | |||
1 | 療養者の訴えに対して積極的に傾聴する姿勢を示している | 305 | 6(2.0) | 4(1.3) | 54(17.7) | 241(79.0) |
2 | 毎年,秋にインフルエンザワクチンの予防接種を勧めている | 304 | 12(3.9) | 24(7.9) | 65(21.4) | 203(66.8) |
3 | 禁煙の徹底と火災の危険性について指導している | 301 | 10(3.3) | 18(6.0) | 83(27.6) | 190(63.1) |
4 | 深呼吸(腹式呼吸)等のリラクゼーション法を指導している | 305 | 7(2.3) | 13(4.3) | 93(30.5) | 192(63.0) |
5 | 処方流量(安静時,運動時,睡眠時)を守る必要性を指導している | 301 | 7(2.3) | 13(4.3) | 96(31.9) | 185(61.5) |
6 | 安静時の口すぼめ呼吸を指導している | 305 | 13(4.3) | 17(5.6) | 89(29.2) | 186(61.0) |
7 | カニューラの取り扱い方法を指導している | 301 | 7(2.3) | 12(4.0) | 101(33.6) | 181(60.1) |
8 | 在宅酸素療法の意義を説明している | 301 | 10(3.3) | 17(5.6) | 109(36.2) | 165(54.8) |
9 | 停電や災害時等,緊急時の対処について指導している | 301 | 13(4.3) | 28(9.3) | 111(36.9) | 149(49.5) |
10 | 肺炎球菌ワクチンの予防接種を受けているか確認している | 305 | 21(6.9) | 29(9.5) | 109(35.7) | 146(47.9) |
11 | セルフモニタリング(酸素飽和度)の方法を指導している | 305 | 17(5.6) | 29(9.5) | 117(38.4) | 142(46.6) |
12 | 栄養障害がある場合,栄養剤や補助食品を勧めている | 304 | 18(5.9) | 24(7.9) | 123(40.5) | 139(45.7) |
13 | 異常時,緊急時の対応について指導している | 241 | 14(5.8) | 28(11.6) | 91(37.8) | 108(44.8) |
14 | 携帯用酸素ボンベの取り扱いについて指導している | 300 | 15(5.0) | 32(10.6) | 121(40.2) | 132(43.9) |
15 | 吸入薬や吸入用具,補助器具の正しい使用方法を指導している | 305 | 12(3.9) | 19(6.2) | 142(46.6) | 132(43.3) |
16 | 基本動作に合わせた呼吸方法を指導している | 304 | 15(4.9) | 50(16.4) | 115(37.8) | 124(40.8) |
17 | 急な息切れ時のための呼吸法を指導している | 304 | 16(5.3) | 37(12.2) | 131(43.1) | 120(39.5) |
18 | TPPVの場合,用手人工呼吸法,気管内吸引法,カニューレ管理について療養者あるいは家族に指導している | 214 | 29(13.6) | 36(16.8) | 64(29.9) | 85(39.7) |
19 | 在宅人工呼吸器の意義や必要性,効果を説明している | 241 | 15(6.2) | 34(14.1) | 97(40.2) | 95(39.4) |
20 | 療養者の不快な症状緩和を行っている | 305 | 10(3.3) | 41(13.4) | 134(43.9) | 120(39.3) |
21 | NPPVの場合,マスクの取り付け,取り外し手技について療養者あるいは家族に指導している | 239 | 22(9.2) | 30(12.6) | 93(38.9) | 94(39.3) |
22 | 増悪の予防効果がある要因について説明している | 303 | 14(4.6) | 35(11.6) | 144(47.5) | 110(36.3) |
23 | 更衣動作における息切れ軽減の方法を指導している | 305 | 26(8.5) | 60(19.7) | 115(37.7) | 104(34.1) |
24 | 息切れを軽減する姿勢を指導している | 304 | 20(6.6) | 32(10.5) | 149(49.0) | 103(33.9) |
25 | 入浴動作における息切れ軽減の方法を指導している | 305 | 23(7.5) | 43(14.1) | 137(44.9) | 102(33.4) |
26 | セルフマネジメントの重要性について説明している | 305 | 14(4.6) | 34(11.1) | 157(51.5) | 100(32.8) |
27 | 介護保険や医療保険で利用できるサービスについて情報提供している | 303 | 17(5.6) | 54(17.8) | 133(43.9) | 99(32.7) |
28 | 運動の重要性について説明している | 305 | 17(5.6) | 53(17.4) | 139(45.6) | 96(31.5) |
29 | タバコ煙の影響について説明している | 303 | 24(7.9) | 50(16.5) | 134(44.2) | 95(31.4) |
30 | 呼吸同調式デマンドバルブの取り扱いについて指導している | 300 | 50(16.7) | 68(22.7) | 88(29.3) | 94(31.3) |
31 | 薬の効果と副作用について説明している | 305 | 11(3.6) | 33(10.8) | 170(55.7) | 91(29.8) |
32 | 排泄動作における息切れ軽減の方法を指導している | 305 | 24(7.9) | 54(17.7) | 137(44.9) | 90(29.5) |
33 | 上肢あるいは下肢の筋力トレーニング方法を指導している | 305 | 21(6.9) | 62(20.3) | 135(44.3) | 87(28.5) |
34 | 睡眠の問題について支援している | 305 | 18(5.9) | 66(21.6) | 134(43.9) | 87(28.5) |
35 | COPDの増悪原因(気道感染,大気汚染等)について指導している | 303 | 21(6.9) | 58(19.1) | 138(45.5) | 86(28.4) |
36 | 栄養療法の重要性について指導している | 305 | 18(5.9) | 59(19.3) | 142(46.6) | 86(28.2) |
37 | 器械の日常手入れについて指導している | 242 | 23(9.5) | 59(24.4) | 92(38.0) | 68(28.1) |
38 | 息切れの原因について説明している | 305 | 10(3.3) | 28(9.2) | 184(60.3) | 83(27.2) |
39 | 栄養療法の基本的な考え方を療養者と家族に指導している | 305 | 27(8.9) | 71(23.3) | 131(43.0) | 76(24.9) |
40 | 食事中における息切れ軽減の方法を指導している | 305 | 27(8.9) | 63(20.7) | 142(46.6) | 73(23.9) |
41 | ストレッチングの方法を指導している | 305 | 31(10.2) | 89(29.2) | 112(36.7) | 73(23.9) |
42 | 回路の組み立て手技について指導している | 242 | 37(15.3) | 86(35.5) | 63(26.0) | 56(23.1) |
43 | 運動のポイント(頻度と強さ,持続時間)について指導している | 304 | 22(7.2) | 81(26.6) | 131(43.1) | 70(23.0) |
44 | これから起こってくる増悪時にどのように対応するか医療チームで慎重に判断している | 304 | 23(7.6) | 85(28.0) | 126(41.4) | 70(23.0) |
45 | 地域で活用できる社会資源について情報提供している | 302 | 25(8.3) | 86(28.4) | 124(40.9) | 67(22.1) |
46 | 療養者にあった食事の工夫ができるよう指導している | 305 | 21(6.9) | 68(22.3) | 149(48.9) | 67(22.0) |
47 | 室外歩行の方法を指導している | 305 | 33(10.8) | 81(26.6) | 128(42.0) | 63(20.7) |
48 | 整容(歯ブラシ,洗面等)における息切れ軽減の方法を指導している | 305 | 32(10.5) | 81(26.6) | 131(43.0) | 61(20.0) |
49 | COPDの予後について医療従事者から適切な情報提供が行われているか確認している | 304 | 27(8.9) | 94(30.9) | 125(41.1) | 58(19.1) |
50 | 運動の中止基準について指導している | 303 | 40(13.2) | 90(29.7) | 115(38.0) | 58(19.1) |
51 | NPPVまたはTPPVの合併症について指導している | 241 | 23(9.5) | 89(36.9) | 83(34.4) | 46(19.1) |
52 | 身体障害者手帳と等級に応じたサービスについて情報提供している | 304 | 29(9.5) | 106(34.9) | 112(36.8) | 57(18.8) |
53 | 検査結果の意味と解釈について説明している | 305 | 11(3.6) | 60(19.7) | 177(58.0) | 57(18.7) |
54 | 急な息切れ時のための呼吸介助の方法を家族に指導している | 305 | 35(11.5) | 97(31.8) | 118(38.7) | 55(18.0) |
55 | 息切れ軽減のために入浴介助や歩行の前に吸入薬を使用している | 303 | 69(22.8) | 98(32.3) | 85(28.1) | 51(16.8) |
56 | アクションプラン(対処法,受診のタイミング等)を作成している | 304 | 73(24.0) | 93(30.6) | 94(30.9) | 44(14.5) |
57 | 肺と心臓の関係について説明している | 305 | 19(6.2) | 92(30.2) | 154(50.5) | 40(13.1) |
58 | 肺の構造や機能,病態を説明している | 305 | 16(5.2) | 91(29.8) | 163(53.4) | 35(11.5) |
59 | 受動喫煙対策のため家族に家庭内の全面禁煙について説明している | 305 | 60(19.7) | 115(37.7) | 103(33.8) | 27(8.9) |
60 | 療養日誌を記入することを勧めている | 304 | 103(33.9) | 122(40.1) | 52(17.1) | 27(8.9) |
61 | 栄養剤の注意する合併症を指導している | 304 | 60(19.7) | 137(45.1) | 81(26.6) | 26(8.6) |
62 | COPDの症状を悪化させる汚染物質に関して説明している | 305 | 54(17.7) | 126(41.3) | 99(32.5) | 26(8.5) |
63 | 炭水化物主体と脂質主体の2種類の栄養剤の特徴を説明している | 304 | 60(19.7) | 139(45.7) | 80(26.3) | 25(8.2) |
64 | 禁煙外来やニコチン代替療法を紹介している | 303 | 77(25.4) | 121(39.9) | 81(26.7) | 24(7.9) |
65 | 患者会の紹介やサポートグループ,呼吸教室等への参加を促している | 305 | 87(28.5) | 140(45.9) | 57(18.7) | 21(6.9) |
66 | 息切れの強さが評価できるよう指導している | 305 | 108(35.4) | 119(39.0) | 61(20.0) | 17(5.6) |
† 在宅酸素療法と在宅人工呼吸療法に関する項目については,使用していた療養者がいた場合のみ回答を求めた.
‡ 項目18,21,39,54,59については,療養者だけでなく家族への教育も含めて回答を求めた.
臨床経験との関係について,訪問看護経験年数が長い群は短い群と比較して,59項目でSM教育の実施頻度の平均順位が有意に高かった.看護師経験年数と訪問看護経験年数,呼吸器科病棟経験のすべての臨床経験で有意差がみられなかったのは,〈56 アクションプラン(対処法,受診のタイミング等)を作成している〉(p = 0.076, p = 0.095, p = 0.178),〈63 炭水化物主体と脂質主体の2種類の栄養剤の特徴を説明している〉(p = 0.099, p = 0.139, p = 0.127),〈14 携帯用酸素ボンベの取り扱いについて指導している〉(p = 0.421, p = 0.088, p = 0.139)であった.その一方で,看護師経験年数の長短と呼吸器科病棟経験の有無の比較においてのみ有意差がみられた項目があった.まず,看護師経験が長い群は短い群と比較して,〈1 療養者の訴えに対して積極的に傾聴する姿勢を示している〉(p = 0.041)と〈34 睡眠の問題について支援している〉(p = 0.003)の実施頻度が高かった.次に,呼吸器科病棟経験のない群はある群と比較して,〈66 息切れの強さが評価できるよう指導している〉(p = 0.001)の実施頻度が低かった.
項目 | 看護師経験年数 | p | 訪問看護経験年数 | p | 呼吸器科病棟経験 | p | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
24年未満 n = 151 |
24年以上 n = 147 |
6年未満 n = 143 |
6年以上 n = 153 |
なし n = 223 |
あり n = 78 |
|||||
平均順位 | 平均順位 | 平均順位 | ||||||||
1 | 療養者の訴えに対して積極的に傾聴する姿勢を示している | 142.4 | 156.8 | * | 142.2 | 154.4 | 148.8 | 157.2 | ||
2 | 毎年,秋にインフルエンザワクチンの予防接種を勧めている | 141.0 | 157.2 | 137.0 | 158.2 | * | 149.7 | 152.8 | ||
3 | 禁煙の徹底と火災の危険性について指導している | 143.1 | 151.9 | 131.3 | 160.5 | ** | 147.9 | 152.1 | ||
4 | 深呼吸(腹式呼吸)等のリラクゼーション法を指導している | 141.6 | 157.6 | 138.7 | 157.7 | * | 143.1 | 173.5 | ** | |
5 | 処方流量(安静時,運動時,睡眠時)を守る必要性を指導している | 142.3 | 152.8 | 135.0 | 157.1 | ** | 148.3 | 151.1 | ||
6 | 安静時の口すぼめ呼吸を指導している | 143.3 | 155.9 | 131.9 | 164.1 | *** | 147.4 | 161.4 | ||
7 | カニューラの取り扱い方法を指導している | 143.7 | 151.3 | 137.0 | 155.3 | * | 147.9 | 152.2 | ||
8 | 在宅酸素療法の意義を説明している | 141.3 | 153.8 | 133.6 | 158.4 | ** | 148.3 | 151.1 | ||
9 | 停電や災害時等,緊急時の対処について指導している | 142.5 | 152.6 | 126.8 | 164.7 | *** | 145.9 | 157.9 | ||
10 | 肺炎球菌ワクチンの予防接種を受けているか確認している | 134.5 | 165.0 | ** | 129.0 | 166.8 | *** | 147.2 | 161.9 | |
11 | セルフモニタリング(酸素飽和度)の方法を指導している | 142.3 | 156.9 | 135.0 | 161.1 | ** | 149.7 | 154.6 | ||
12 | 栄養障害がある場合,栄養剤や補助食品を勧めている | 136.7 | 161.6 | ** | 127.9 | 166.9 | ** | 143.7 | 170.1 | ** |
13 | 異常時,緊急時の対応について指導している | 109.3 | 127.3 | * | 98.5 | 131.9 | *** | 112.4 | 140.9 | ** |
14 | 携帯用酸素ボンベの取り扱いについて指導している | 143.9 | 151.2 | 138.4 | 154.0 | 145.0 | 160.5 | |||
15 | 吸入薬や吸入用具,補助器具の正しい使用方法を指導している | 144.3 | 154.8 | 132.7 | 163.3 | ** | 145.2 | 167.5 | * | |
16 | 基本動作に合わせた呼吸方法を指導している | 145.1 | 152.9 | 132.1 | 163.0 | ** | 141.3 | 177.1 | ** | |
17 | 急な息切れ時のための呼吸法を指導している | 146.3 | 151.8 | 129.5 | 165.2 | *** | 144.0 | 169.0 | * | |
18 | TPPVの場合,用手人工呼吸法,気管内吸引法,カニューレ管理について 療養者あるいは家族に指導している | 95.4 | 113.5 | ** | 85.3 | 118.0 | *** | 101.6 | 118.5 | |
19 | 在宅人工呼吸器の意義や必要性,効果を説明している | 116.9 | 120.0 | 99.5 | 131.5 | *** | 116.9 | 127.4 | ||
20 | 療養者の不快な症状緩和を行っている | 137.1 | 162.3 | ** | 133.3 | 162.7 | ** | 143.9 | 171.4 | ** |
21 | NPPVの場合,マスクの取り付け,取り外し手技について療養者あるいは家族に指導している | 112.2 | 122.5 | 99.0 | 130.1 | *** | 113.3 | 134.1 | * | |
22 | 増悪の予防効果がある要因について説明している | 141.1 | 156.1 | 124.2 | 169.3 | *** | 145.2 | 165.5 | ||
23 | 更衣動作における息切れ軽減の方法を指導している | 145.2 | 153.9 | 131.0 | 164.9 | *** | 145.1 | 167.8 | * | |
24 | 息切れを軽減する姿勢を指導している | 139.8 | 158.5 | * | 130.4 | 165.4 | *** | 147.4 | 159.4 | |
25 | 入浴動作における息切れ軽減の方法を指導している | 146.1 | 153.0 | 131.3 | 164.5 | *** | 146.3 | 164.5 | ||
26 | セルフマネジメントの重要性について説明している | 145.2 | 154.0 | 134.3 | 161.8 | ** | 146.3 | 164.6 | ||
27 | 介護保険や医療保険で利用できるサービスについて情報提供している | 132.5 | 164.9 | ** | 125.7 | 167.9 | *** | 146.6 | 159.9 | |
28 | 運動の重要性について説明している | 143.5 | 155.7 | 128.8 | 166.9 | *** | 148.8 | 157.4 | ||
29 | タバコ煙の影響について説明している | 134.0 | 163.2 | ** | 129.5 | 164.1 | *** | 151.8 | 146.9 | |
30 | 呼吸同調式デマンドバルブの取り扱いについて指導している | 137.9 | 156.2 | 123.0 | 167.0 | *** | 147.8 | 150.6 | ||
31 | 薬の効果と副作用について説明している | 141.2 | 158.0 | 137.0 | 159.2 | * | 148.4 | 158.4 | ||
32 | 排泄動作における息切れ軽減の方法を指導している | 141.3 | 158.0 | 130.7 | 165.1 | *** | 145.8 | 165.8 | ||
33 | 上肢あるいは下肢の筋力トレーニング方法を指導している | 141.9 | 157.3 | 126.5 | 169.0 | *** | 147.6 | 160.8 | ||
34 | 睡眠の問題について支援している | 135.8 | 163.6 | ** | 140.2 | 156.3 | 146.4 | 164.3 | ||
35 | COPDの増悪原因(気道感染,大気汚染等)について指導している | 136.4 | 160.9 | ** | 119.4 | 174.1 | *** | 144.9 | 164.7 | |
36 | 栄養療法の重要性について指導している | 134.7 | 164.7 | ** | 127.4 | 168.3 | *** | 146.6 | 163.7 | |
37 | 器械の日常手入れについて指導している | 114.7 | 123.0 | 96.8 | 134.2 | *** | 113.4 | 139.6 | ** | |
38 | 息切れの原因について説明している | 144.6 | 154.6 | 136.1 | 160.1 | ** | 145.1 | 167.7 | * | |
39 | 栄養療法の基本的な考え方を療養者と家族に指導している | 139.3 | 160.0 | * | 131.7 | 164.2 | ** | 146.1 | 164.9 | |
40 | 食事中における息切れ軽減の方法を指導している | 140.7 | 158.5 | 137.3 | 159.0 | * | 145.2 | 167.6 | * | |
41 | ストレッチングの方法を指導している | 142.1 | 157.1 | 128.6 | 167.1 | *** | 147.5 | 161.1 | ||
42 | 回路の組み立て手技について指導している | 116.2 | 121.6 | 95.6 | 135.1 | *** | 115.4 | 133.7 | ||
43 | 運動のポイント(頻度と強さ,持続時間)について指導している | 140.2 | 158.0 | 128.5 | 166.4 | *** | 149.5 | 153.3 | ||
44 | これから起こってくる増悪時にどのように対応するか医療チームで慎重に判断している | 145.6 | 152.5 | 131.4 | 163.6 | ** | 145.5 | 166.6 | ||
45 | 地域で活用できる社会資源について情報提供している | 134.3 | 163.1 | ** | 130.2 | 163.7 | *** | 144.0 | 167.5 | * |
46 | 療養者にあった食事の工夫ができるよう指導している | 138.6 | 160.7 | * | 132.9 | 163.1 | ** | 146.2 | 164.6 | |
47 | 室外歩行の方法を指導している | 148.2 | 150.8 | 125.2 | 170.3 | *** | 146.9 | 162.6 | ||
48 | 整容(歯ブラシ,洗面等)における息切れ軽減の方法を指導している | 142.0 | 157.2 | 134.3 | 161.7 | ** | 147.0 | 162.5 | ||
49 | COPDの予後について医療従事者から適切な情報提供が行われているか確認している | 138.3 | 159.9 | * | 136.1 | 159.2 | * | 144.8 | 168.7 | * |
50 | 運動の中止基準について指導している | 141.6 | 156.6 | 129.8 | 164.9 | *** | 146.0 | 163.4 | ||
51 | NPPVまたはTPPVの合併症について指導している | 111.1 | 125.4 | * | 97.2 | 133.1 | *** | 115.0 | 133.2 | |
52 | 身体障害者手帳と等級に応じたサービスについて情報提供している | 135.7 | 162.5 | ** | 132.6 | 162.5 | ** | 143.4 | 171.1 | * |
53 | 検査結果の意味と解釈について説明している | 145.5 | 153.6 | 133.1 | 162.9 | ** | 150.5 | 152.3 | ||
54 | 急な息切れ時のための呼吸介助の方法を家族に指導している | 140.5 | 158.7 | 132.7 | 163.3 | ** | 148.4 | 158.3 | ||
55 | 息切れ軽減のために入浴介助や歩行の前に吸入薬を使用している | 140.9 | 156.4 | 136.2 | 157.9 | * | 143.9 | 167.4 | * | |
56 | アクションプラン(対処法,受診のタイミング等)を作成している | 140.7 | 157.6 | 139.8 | 155.7 | 146.7 | 161.4 | |||
57 | 肺と心臓の関係について説明している | 138.7 | 160.6 | * | 131.7 | 164.2 | *** | 146.7 | 163.4 | |
58 | 肺の構造や機能,病態を説明している | 141.8 | 157.5 | 133.7 | 162.3 | ** | 145.8 | 165.8 | ||
59 | 受動喫煙対策のため家族に家庭内の全面禁煙について説明している | 135.6 | 163.8 | ** | 134.1 | 161.9 | ** | 150.1 | 153.6 | |
60 | 療養日誌を記入することを勧めている | 137.9 | 160.5 | * | 135.1 | 160.2 | ** | 146.5 | 162.0 | |
61 | 栄養剤の注意する合併症を指導している | 138.8 | 159.4 | * | 135.6 | 159.7 | * | 148.4 | 156.5 | |
62 | COPDの症状を悪化させる汚染物質に関して説明している | 142.7 | 156.5 | 131.3 | 164.5 | *** | 151.4 | 149.9 | ||
63 | 炭水化物主体と脂質主体の2種類の栄養剤の特徴を説明している | 141.4 | 156.8 | 140.9 | 154.7 | 146.3 | 162.7 | |||
64 | 禁煙外来やニコチン代替療法を紹介している | 132.2 | 165.0 | ** | 124.4 | 168.8 | *** | 148.6 | 156.0 | |
65 | 患者会の紹介やサポートグループ,呼吸教室等への参加を促している | 135.8 | 163.6 | ** | 139.2 | 157.2 | 143.1 | 173.5 | ** | |
66 | 息切れの強さが評価できるよう指導している | 147.0 | 152.1 | 140.2 | 156.3 | 142.0 | 176.7 | ** |
* p < .05,** p < .01,*** p < .001 Mann–Whitney U test
看護上の課題で「とてもあてはまる」は,COPD療養者に対するSM教育方法を学ぶ機会がないが10.9%と最も高く,COPD療養者に対するSM教育方法を学ぶ時間がない(10.2%)の順に高かった.臨床経験との関係について,看護師経験が短い群は長い群と比較して,生活上の課題が多いためにセルフマネジメント教育まで至らないの項目が有意に高かった(p = 0.014).また,訪問看護師経験が長い群は短い群と比較して,セルフマネジメント教育のための訪問看護について,介護支援専門員から理解が得られずサービスに至らないの項目が有意に高かった(p = 0.018).
項目 | n | 全くあてはまらない | あまりあてはまらない | ややあてはまる | とてもあてはまる | 看護師経験年数 | p | 訪問看護経験年数 | p | 呼吸器科病棟経験 | p | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
24年未満 n = 151 |
24年以上 n = 147 |
6年未満 n = 143 |
6年以上 n = 153 |
なし n = 223 |
あり n = 78 |
|||||||||||
n(%) | n(%) | n(%) | n(%) | 平均順位 | 平均順位 | 平均順位 | ||||||||||
1 | COPD療養者に対するセルフマネジメント教育方法を学ぶ機会がない | 304 | 21(6.9) | 94(30.9) | 156(51.3) | 33(10.9) | 153.0 | 144.9 | 154.6 | 141.9 | 151.7 | 147.0 | ||||
2 | COPD療養者に対するセルフマネジメント教育方法を学ぶ時間がない | 304 | 24(7.9) | 109(35.9) | 140(46.1) | 31(10.2) | 149.4 | 148.6 | 152.1 | 144.2 | 152.3 | 145.5 | ||||
3 | セルフマネジメント教育を行うための訪問時間や訪問回数が足りない | 301 | 33(11.0) | 127(42.2) | 120(39.9) | 21(7.0) | 147.5 | 147.6 | 143.7 | 149.1 | 150.8 | 144.1 | ||||
4 | 生活上の課題が多いためにセルフマネジメント教育まで至らない | 303 | 32(10.6) | 135(44.6) | 127(41.9) | 9(3.0) | 159.5 | 137.2 | * | 149.9 | 145.3 | 148.7 | 153.7 | |||
5 | 多職種のサポートが得られない | 304 | 58(19.1) | 187(61.5) | 50(16.4) | 9(3.0) | 152.0 | 146.0 | 141.9 | 153.7 | 152.5 | 145.0 | ||||
6 | COPD療養者との関係性の構築が困難である | 304 | 49(16.1) | 185(60.9) | 62(20.4) | 8(2.6) | 147.4 | 150.7 | 145.6 | 150.3 | 150.3 | 151.2 | ||||
7 | セルフマネジメント教育のための訪問看護について,介護支援専門員から理解が得られずサービスに至らない | 303 | 80(26.4) | 177(58.4) | 41(13.5) | 5(1.7) | 142.2 | 155.0 | 136.7 | 157.4 | * | 152.2 | 143.7 | |||
8 | COPD療養者や家族が訪問看護の必要性を感じていない | 304 | 75(24.7) | 162(53.3) | 63(20.7) | 4(1.3) | 147.6 | 150.5 | 139.2 | 156.2 | 150.7 | 150.0 |
* p < .05,** p < .01,*** p < .001 Mann–Whitney U test
COPD療養者に対してSM教育を行うために必要だと感じる提供時間については,訪問看護I3(30分以上1時間未満)が64.4%と最も高く,訪問看護I2(30分未満)が23.6%,訪問看護I4(1時間以上1時間30分未満)が6.7%の順に高かった.一方,訪問回数については,週2回が43.5%と最も高く,週1回(40.8%),週3回(7.9%)の順に高かった.
6. COPD療養者に対する訪問看護で行う他職種との連携頻度と臨床経験の関係(表5)他職種との連携頻度で「いつもしている」は,介護支援専門員が69.8%と最も高く,主治医(59.3%)の順に高かった.その一方で,「全くしていない」は,慢性疾患看護専門看護師とCRNCNが69.2%と最も高かった.臨床経験との関係について,看護師経験が長い群は短い群と比較して連携頻度が高かった職種は,外来看護師(p = 0.02),保健師(p = 0.006)等であった.また,訪問看護師経験が長い群は短い群と比較して連携頻度が高かった職種は,介護支援専門員(p = 0.015),主治医(p = 0.011)等であった.さらに,呼吸器科病棟経験がある群はない群と比較して,連携頻度が高かった職種は,リハビリスタッフ(p = 0.03),栄養士(p = 0.021)であった.
項目 | n | 全くしていない | あまりしていない | 時々している | いつもしている | 看護師経験年数 | p | 訪問看護経験年数 | p | 呼吸器科病棟経験 | p | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
24年未満 n = 151 |
24年以上 n = 147 |
6年未満 n = 143 |
6年以上 n = 153 |
なし n = 223 |
あり n = 78 |
|||||||||||
n(%) | n(%) | n(%) | n(%) | 平均順位 | 平均順位 | 平均順位 | ||||||||||
1 | 介護支援専門員 | 305 | 5(1.6) | 6(2.0) | 81(26.6) | 213(69.8) | 145.8 | 153.3 | 138.5 | 157.9 | * | 150.0 | 153.9 | |||
2 | 主治医 | 305 | 4(1.3) | 9(3.0) | 111(36.4) | 181(59.3) | 142.0 | 157.2 | 137.2 | 159.1 | * | 147.0 | 162.3 | |||
3 | リハビリスタッフ | 305 | 33(10.8) | 46(15.1) | 118(38.7) | 108(35.4) | 138.5 | 160.8 | * | 133.4 | 162.6 | ** | 144.9 | 168.4 | * | |
4 | 訪問介護員 | 305 | 32(10.5) | 41(13.4) | 143(46.9) | 89(29.2) | 146.1 | 153.0 | 146.1 | 150.7 | 146.9 | 162.7 | ||||
5 | 呼吸器科医 | 305 | 31(10.2) | 78(25.6) | 124(40.7) | 72(23.6) | 140.2 | 159.1 | * | 137.0 | 159.3 | * | 149.7 | 154.7 | ||
6 | 酸素供給業者 | 305 | 27(8.9) | 67(22.0) | 147(48.2) | 64(21.0) | 144.0 | 155.2 | 134.7 | 161.4 | ** | 147.2 | 162.0 | |||
7 | 福祉用具事業者 | 305 | 21(6.9) | 76(24.9) | 144(47.2) | 64(21.0) | 148.3 | 150.8 | 139.6 | 156.8 | 147.1 | 162.2 | ||||
8 | 外来看護師 | 305 | 32(10.5) | 85(27.9) | 131(43.0) | 57(18.7) | 138.7 | 160.6 | * | 139.1 | 157.3 | 147.4 | 161.3 | |||
9 | デイサービスの看護師 | 305 | 35(11.5) | 72(23.7) | 148(48.7) | 49(16.1) | 142.5 | 155.7 | 139.7 | 155.7 | 145.1 | 165.9 | ||||
10 | 薬剤師 | 305 | 37(12.1) | 121(39.7) | 110(36.1) | 37(12.1) | 142.0 | 157.2 | 143.9 | 152.8 | 149.6 | 155.1 | ||||
11 | 栄養士 | 305 | 89(29.2) | 148(48.5) | 53(17.4) | 15(4.9) | 141.2 | 158.0 | 144.2 | 152.5 | 144.7 | 169.1 | * | |||
12 | 退院後訪問指導の看護師との同行訪問 | 305 | 202(66.2) | 63(20.7) | 28(9.2) | 12(3.9) | 148.9 | 150.2 | 143.8 | 152.9 | 152.4 | 147.1 | ||||
13 | 保健師 | 305 | 155(50.8) | 104(34.1) | 36(11.8) | 10(3.3) | 137.3 | 162.1 | ** | 138.7 | 157.6 | * | 150.2 | 153.2 | ||
14 | 慢性疾患看護専門看護師 | 305 | 211(69.2) | 74(24.3) | 13(4.3) | 7(2.3) | 147.3 | 151.8 | 145.9 | 151.0 | 152.9 | 145.7 | ||||
15 | 慢性呼吸器疾患看護認定看護師 | 305 | 211(69.2) | 77(25.2) | 11(3.6) | 6(2.0) | 145.4 | 153.8 | 147.3 | 149.6 | 153.2 | 144.8 |
* p < .05,** p < .01,*** p < .001 Mann–Whitney U test
100人の分析対象から,171個のコードが得られた.看護師経験が短い群のコードは81個,看護師経験が長い群のコードは90個であった.訪問看護経験が短い群のコードは82個,訪問看護経験が長い群のコードは89個であった.呼吸器科病棟経験がない群のコードは124個,ある訪問看護師のコードは47個であった.COPD療養者の状態・状況に関する困難は,110コード,15サブカテゴリー,5カテゴリーが抽出され,訪問看護の提供に関する困難は,61コード,15サブカテゴリー,5カテゴリーが抽出された.カテゴリーの一致率は79.4%であった.以下,カテゴリーを【 】,サブカテゴリーを[ ]で示す.
分類 | カテゴリー | サブカテゴリー | コード(一部抜粋) | コード数(171) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
合計 | 看護師経験年数 | 訪問看護経験年数 | 呼吸器科病棟経験 | ||||||
24年未満(81) / 24年以上(90) |
6年未満(82) / 6年以上(89) |
なし(124) / あり(47) |
|||||||
COPD療養者の状態・状況に関する困難 | 療養行動への性格的・心理的な障壁 | 自己流への固執 | 自己流で行うことから修正が難しい | 18 | 27 (24.5%) |
110 (64.3%) |
13(48.1%) / 14(51.9%) |
12(44.4%) / 15(55.6%) |
23(85.2%) / 4(14.8%) |
新しい方法が受け入れられるまで時間がかかる | |||||||||
療養意欲の減退 | 療養意欲を維持していくことが難しい | 4 | |||||||
COPD療養者のモチベーションを上げることに難しさを感じている | |||||||||
不安・抑うつ状態 | 精神的に落ち込みやうつが大きい | 5 | |||||||
不安が強い | |||||||||
認知・理解力の低下 | 認知機能の低下 | 認知症状のため理解してもらえない | 13 | 27 (24.5%) |
14(51.9%) / 13(48.1%) |
9(33.3%) / 18(66.7%) |
20(74.1%) / 7(25.9%) |
||
認知機能の低下 | |||||||||
病気の理解不足 | 療養者が病気を理解されていない | 8 | |||||||
病識が乏しい | |||||||||
理解力の低下 | 理解力が少ない | 6 | |||||||
理解力があるようでない | |||||||||
不適切な病気の管理 | HOT・NPPVのアドヒアランス不良 | 苦しいと自己判断で酸素流量を増やしてしまう | 11 | 25 (22.7%) |
8(32.0%) / 17(68.0%) |
11(44.0%) / 14(56.0%) |
15(60.0%) / 10(40.0%) |
||
NPPVをしんどい時だけつければ良いと思っており意識改善が難しい | |||||||||
禁煙困難 | 喫煙がやめられない | 6 | |||||||
禁煙は本人の理解を得るのが本当に難しい | |||||||||
自覚症状の乏しさによる病状の軽視 | 自覚症状がないため指導が入らない | 5 | |||||||
症状がひどくならないと自主的なリハビリの必要性を感じてくれない | |||||||||
不十分な栄養摂取 | るいそうや体力低下が著明で嚥下困難・食思不振がある | 3 | |||||||
食が細くなるので体重が落ちてきても栄養を摂れない | |||||||||
生活を支援する資源の不足 | 十分な支援が得られない家庭環境 | 独居でADL低下している中での管理 | 14 | 18 (16.4%) |
7(38.9%) / 11(61.1%) |
9(50.0%) / 9(50.0%) |
11(61.1%) / 7(38.9%) |
||
家族の協力が得られない | |||||||||
経済的な問題 | 経済状況の問題からリハビリテーションを進めていくのに時間がかかる | 3 | |||||||
栄養食品は高価であるため買えない | |||||||||
外出支援サービスの制限 | 外出サービスが受けにくい | 1 | |||||||
消極的な自己管理行動 | 身体活動への抵抗・拒否 | 息切れにより動かなくなる | 8 | 13 (11.8%) |
8(61.5%) / 5(38.5%) |
7(53.8%) / 6(46.2%) |
9(69.2%) / 4(30.8%) |
||
動くことに消極的 | |||||||||
体調変化時の消極的な対処行動 | 緊急時の連絡のタイミングを難しいと感じている | 5 | |||||||
急な変化に対応できず救急車をすぐ要請してしまう | |||||||||
訪問看護の提供に関する困難 | 問題解決に必要な能力の不足 | 専門的知識の不足 | 自分の知識が不足しているため安楽の援助や呼吸リハができていない | 8 | 28 (45.9%) |
61 (35.7%) |
17(60.7%) / 11(39.3%) |
17(60.7%) / 11(39.3%) |
20(71.4%) / 8(28.6%) |
自分自身が知識不足 | |||||||||
呼吸器症状に対する支援技術の不足 | 呼吸器症状に悩んでいるCOPD療養者に何もできない | 7 | |||||||
呼吸困難等の対処法をうまく説明できない | |||||||||
限られた情報の中での状況判断 | 訪問看護依頼時に病院等から病態重症度の情報がない | 7 | |||||||
CO2が測れないために換気の状況や本人の状況でしか説明がつかない | |||||||||
病状進行による介入の限界 | 末期で苦痛緩和がメインになるため介入が難しい | 4 | |||||||
末期で寝たきりのためリハビリがすすまない | |||||||||
COPD療養者に対する訪問看護経験の不足 | COPD療養者が少なく積極的に学ぶ事をしてこなかった | 2 | |||||||
COPD療養者が少なく対応する機会がない | |||||||||
訪問看護への抵抗感と実感不足への対応 | 訪問看護サービスへの難色に対する関わり | 苦しいのでサービス不要と考えられる | 5 | 11 (18.0%) |
4(36.4%) / 7(63.6%) |
3(27.3%) / 8(72.7%) |
9(81.8%) / 2(18.2%) |
||
しんどさのためケアを受け入れてもらえない | |||||||||
人間関係構築の課題 | 関係性の構築に非常に困難さを感じる | 4 | |||||||
関係性を築くのに時間を要する | |||||||||
実感が得られにくい看護の成果 | 指導を受けても実感が得られない | 2 | |||||||
目に見えてリハビリテーションの効果が出ないので毎日の継続が困難 | |||||||||
訪問時間の不足 | ケアが多いことによる時間の不足 | ケアが多いため時間内でセルフマネジメント教育まで至らない | 5 | 9 (14.8%) |
5(55.6%) / 4(44.4%) |
9(100.0%) / 0(0.0%) |
6(66.7%) / 3(33.3%) |
||
日常生活の支援などで訪問時間が終わりゆっくり話をする時間がない | |||||||||
呼吸困難による看護介入の限定 | 呼吸苦のため多くの内容を一回の訪問にこなしにくい | 3 | |||||||
呼吸苦のため長時間の訪問も難しく教育まで至らない | |||||||||
災害対策の検討不足 | 災害時の対応の検討 | 1 | |||||||
不十分な他職種連携 | 他職種との協力体制構築の課題 | 協力的な主治医を探すことにとても苦労している | 5 | 7 (11.5%) |
4(57.1%) / 3(42.9%) |
4(57.1%) / 3(42.9%) |
6(85.7%) / 1(14.3%) |
||
在宅医でない場合の連携が難しい | |||||||||
関係職種からの理解不足 | 医師や外来看護師に本人・家族の思いを理解してもらえていない | 2 | |||||||
医師にセルフマネジメント教育の理解が得られない | |||||||||
不適当な訪問看護の位置づけ | ケアプランへの疑念 | せめて週1回の訪問看護が必要と思ってもケアプランに入らない | 3 | 6 (9.8%) |
1(16.7%) / 5(83.3%) |
1(16.7%) / 5(83.3%) |
5(83.3%) / 1(16.7%) |
||
訪問看護師に全てウエイトが来るサービスを組まれる | |||||||||
病状が進行してからの訪問看護導入 | 体調が悪くなってから訪問看護の依頼がくる | 3 | |||||||
COPDがある程度進行してからの依頼が多い |
COPD療養者の状態・状況に関する困難が64.3%と困難の多くを占め,訪問看護師は訪問看護の提供に関する困難よりもCOPD療養者の状態・状況に関する困難を抱いている特徴があった.COPD療養者の状態・状況に関する困難で最もコード数が多かったのは【療養行動への性格的・心理的な障壁】と【認知・理解力の低下】で,それぞれ27コードであった.訪問看護の提供に関する困難で最もコード数が多かったのは【問題解決に必要な能力の不足】で,28コードであった.
臨床経験では,【訪問時間の不足】の困難が訪問看護経験年数6年未満の訪問看護師だけにみられた(100.0%).また,【療養行動への性格的・心理的な障壁】【訪問看護への抵抗感と実感不足への対応】【不十分な他職種連携】【不適当な訪問看護の位置づけ】の4カテゴリーで呼吸器科病棟経験がない群が80%以上を占め,呼吸器科病棟経験がない群の方がすべての困難で多い特徴があった.
SM教育の実施頻度について,訪問看護経験年数が長い群は短い群と比較して,66項目中59項目が有意に高かった.今回の調査は,訪問看護経験におけるSM教育の実施頻度について回答を求めているため,訪問看護経験年数の長短で比較した場合に有意差が認められるのは当然考え得ることである.その反面,有意差が認められなかった項目については,他の臨床経験と合わせて興味深い結果が得られた.
SM教育の実施頻度では,〈1 療養者の訴えに対して積極的に傾聴する姿勢を示している〉が最も多かった.本研究では,特に【療養行動への性格的・心理的な障壁】と【認知・理解力の低下】の困難を感じていた訪問看護師が多かったことから,そうしたCOPD療養者の特性がこの実施頻度の高さに影響を及ぼしている可能性が考えられる.また,この項目は看護師経験年数の長短だけに有意差がみられたものであるが,看護師経験年数が長い看護師の方が患者の思いを傾聴していたとの報告もあり(永末ら,2020),このような傾向は一致していた.
その一方で,最も実施頻度が少なかった〈66 息切れの強さが評価できるよう指導している〉は,呼吸器科病棟経験の有無だけに有意差がみられたことから,呼吸器看護の実践領域に特有なものであることが考えられる.COPD療養者が自ら息切れの強さを評価できるようになることは,症状の管理や増悪時の対応,運動療法等,SM全般において重要なスキルである.また,訪問看護師にとってもCOPDに特有の息切れに対応するためには,療養者ごとの細かな評価が必要であることから(3学会合同セルフマネジメント支援マニュアル作成ワーキンググループら,2022),特に呼吸器科病棟経験のない訪問看護師には,息切れの評価に関する知識や指導技術を広く普及していくことが望まれる.それに加えて,呼吸器科病棟経験がない群の方がすべての困難で多い特徴があった.精神科訪問看護に関する先行研究(関藤・西垣,2021)によると,訪問看護師の困難の違いには病棟での精神科看護の知識や経験の違いが大きく影響していることが明らかにされており,本研究においてもその傾向がみられた.これらの結果から,前職の診療科での経験が専門領域に特有なSM教育の実施と,困難感の軽減に寄与しているものと考えられる.
最も興味深い結果は,〈56 アクションプラン(対処法,受診のタイミング等)を作成している〉がすべての臨床経験で有意差がみられなかったことである.アクションプランは患者のSM能力を向上させるための不可欠なツールであるが(3学会合同セルフマネジメント支援マニュアル作成ワーキンググループら,2022),訪問看護ステーションにおけるアクションプランの作成率は高くはなく(梨木ら,2019;梨木ら,2023),主治医から増悪時の指示がない場合があることも報告されている(梨木ら,2023).本研究では,全体的に主治医との連携頻度は高かったが,協力的な主治医を探すことにとても苦労している,医師にセルフマネジメント教育の理解が得られない等の困難もあった.加えて,【認知・理解力の低下】や[体調変化時の消極的な対処行動]のようにアクションプランを活用できないような状態に関する困難もあったことから,増悪に対しては訪問看護師が主導して柔軟に対応していくことが求められる.そのため,アクションプランの適用は慎重に判断すべきだが,CRNCN資格を持つ訪問看護師が症状モニタリングと状態変化時の連絡に対する徹底的な指導から体調に合わせた具体策の共同立案を行っていたことも報告されている(前田・河原,2022).このように教育的支援の中で,段階的にアクションプランの作成に至っている例もあり,COPD療養者が症状モニタリングできる状態であることがアクションプラン作成の必要条件であることも考えられる.
本研究では,〈11 セルフモニタリング(酸素飽和度)の方法を指導している〉の実施頻度が高かった一方で,〈60 療養日誌を記入することを勧めている〉,〈66 息切れの強さが評価できるよう指導している〉等の症状モニタリングに関する実施頻度が低かった.症状モニタリングに関するSM教育は,COPD療養者の【認知・理解力の低下】の他,【療養行動への性格的・心理的な障壁】や[自覚症状の乏しさによる病状の軽視]等によって有効ではない場合があることも推察されるが,アクションプランの作成とは異なり臨床経験で有意差が認められている.そのため,必ずしも主治医の考え方やCOPD療養者の状態・状況に依存するものではないことが考えられるため,まずは訪問看護師にその必要性を訴えるとともに,訪問看護実践で扱いやすい簡便な日誌を普及していくことが重要である.
2. COPD療養者に対してSM教育を行う上での看護上の課題呼吸ケアに関する勉強会や研修会については,多くの訪問看護師が受講していた一方で,約6割の訪問看護師がCOPD療養者に対するSM教育方法を学ぶ機会がないと時間がないに対して「ややあてはまる」「とてもあてはまる」と答えていた.もともと訪問看護師の呼吸ケアに関する勉強会のニーズは高いことが考えられるため,訪問看護師が参加しやすいSM教育の勉強会の機会提供が望まれる.また,【問題解決に必要な能力の不足】の困難が最も多かったことから,呼吸リハビリテーション等の専門的知識に加えて,呼吸器症状に対する支援技術や限られた情報の中での状況判断の方法等に関する勉強会のプログラムを策定することが必要である.
SM教育を行うための訪問時間や訪問回数が足りないについては,過半数ではないものの半数近くの訪問看護師が「ややあてはまる」「とてもあてはまる」と答えていた.梨木ら(2023)の調査においても,限られた訪問看護回数・時間の中で指導やリハビリが難しいことや,低い要介護度認定により利用できるサービスに制限がある悩みが明らかにされており,COPD療養者への訪問看護の課題のひとつであると考えられる.臨床経験別でみると,統計的な有意差はみられなかったが,【訪問時間の不足】の困難は訪問看護経験年数6年未満の訪問看護師だけにみられた特徴があった.【訪問時間の不足】の困難に含まれるコードからは,ケアニーズの多さと呼吸困難がケアを提供する時間を延長させている要因であると考えられ,訪問看護経験が短い訪問看護師にはそうした困難を感じやすい可能性がある.
生活上の課題が多いためにSM教育まで至らないについても,過半数ではないものの半数近くの訪問看護師が「ややあてはまる」「とてもあてはまる」と答えていた.訪問看護の対象となるCOPD療養者は,要支援1でも日常生活に多くの支障があったことが報告されており(長田ら,2014),生活上の課題の多さもCOPD療養者への訪問看護の課題であると考えられる.困難に関する内容分析においても,[十分な支援が得られない家庭環境]や[経済的な問題]のサブカテゴリーが生成されており,このような生活上の課題が看護実践に影響を及ぼしていることが推察される.
以上のような結果に加えて,SM教育を行うために必要と感じる提供時間は,訪問看護I3(30分以上1時間未満)が64.4%と約3分の2に近い割合を占めた.本研究の結果からは傾聴に関する実施頻度が最も多いことに加え,ケアの提供時間が延びやすいことが考えられるため,60分程度の訪問時間を調整し,丁寧にCOPD療養者の訴えに耳を傾けながらSM教育を行うことが望ましいといえる.
訪問回数については,週2回と週1回の両方で40%を超えており,回答が分かれた.訪問看護の回数は,原則的に療養者や家族等の状況に即して主治医から交付された訪問看護指示書に基づき検討されるため,概ねCOPD療養者の状態・状況によって回答が異なったものと考えられる.先行研究によると,週1回よりも多い訪問回数の方が,訪問看護介入前との入院回数・期間が有意に少なかったことが明らかにされている(Matsumura et al., 2015).そのため,前述のアクションプランが適用しにくいような状態で入退院を繰り返している場合等では,週2回以上の訪問で訪問看護師がバイタルサインや症状等の変化を緻密にモニタリングしていくことが重要と考えられる.
3. COPD療養者に対する訪問看護で行う他職種との連携他職種との連携頻度では,COPD患者への看護の専門性を有し,地域のリソースとなることが期待されるCRNCNが,「全くしていない」「あまりしていない」の回答を合わせて94.4%と最も低い結果であった.連携頻度が低い理由としては,本研究の調査時期のCRNCNの登録者数が300人程度であったことから,その資格保持者数が少ないことが一因であると考えられる.以前からCRNCNの地域での活動に期待が寄せられていたが(澤村ら,2019;上田,2019),地域社会における認定看護師活動に対する全体的満足度は低いことが知られており(田中ら,2016),地域での十分な活動ができていないことも推察される.日本看護協会(n.d.)の分野別都道府県別登録者検索によると,これらの資格保持者数は微増にとどまっており,その多くは病院勤務している現状がある.そうした現状を鑑みると,本研究で外来看護師との連携頻度にやや高い傾向がみられたため,このような専門性の高い看護師を外来に配置することで訪問看護師との連携頻度を高められる可能性があると考えられる.
4. 研究の限界と今後の課題本研究の対象者は回収率が10.2%と低いことから,わが国の訪問看護師のCOPD療養者へのSM教育の実態をすべて表していると判断するには注意が必要である.また,SM教育の実施頻度や看護上の課題,他職種との連携頻度等,設問の仕方によっては回答者の理解に差が生じた可能性がある.また,提供時間や訪問回数についてもCOPD療養者の特性や訪問看護師の認識によるため,回答に差が生じた可能性もある.今回の調査は,日本の訪問看護師によるSM教育の実態について広く知ることを目的に行ったが,SM自体の概念も多様である.そのため,今後は概念分析や質的研究によって,訪問看護師によるSM教育の定義や項目を洗練していく必要がある.同時に,訪問看護師のSM教育にどのような効果があるのかを検証していくことが重要である.他方,質問紙の回収率が低い分,問題意識や強い困難を有する積極的な回答者の比率が高かった可能性もある.このような訪問看護師の声を基にしながら,看護実践を改善していく研究を蓄積していくことが望まれる.
COPD療養者への訪問看護師によるSM教育の実施頻度は,〈66 息切れの強さが評価できるよう指導している〉が最も少なく,呼吸器科病棟経験がない群で有意に少なかった.また,看護上の課題では,64.4%の訪問看護師が訪問看護I3(30分以上1時間未満)の提供時間を必要と感じており,60分程度の訪問時間の必要性が示唆された.他職種との連携頻度では,慢性疾患看護専門看護師とCRNCNが最も低い実態が明らかになり,専門性の高い看護師との連携不足も示唆された.
困難については,COPD療養者の状態・状況に関する困難が多くを占め,呼吸器科病棟経験がない群はCOPD療養者への訪問看護の困難を感じやすい特徴があった.
訪問看護師によるSM教育を促進するためには,臨床経験に応じた専門知識の普及や困難感の軽減が求められると同時に,訪問時間の確保や専門性の高い看護師との連携強化が課題である.
付記:本研究は目白大学大学院看護学研究科に提出した修士論文の一部を加筆修正したものである.
謝辞:調査にご協力いただきました訪問看護師の皆様に深く感謝いたします.
利益相反:本研究に関して開示すべきCOI状態はない.
著者資格:前田直宏は研究の着想および研究計画の立案,データ収集,統計解析,内容分析,論文執筆のすべてに貢献した.藤井仁は質問紙作成,統計解析への助言に貢献した.板山稔は研究のプロセス全体への助言及び内容分析に貢献した.すべての著者は最終原稿を読み承認した.