Journal of Japan Academy of Nursing Science
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The Process for Young Adult Generation Cancer Survivors Who Developed Cancer in Young Adulthood to Explore Information About Their Daily Lives After Diagnosis
Masayoshi HaradaMegumi NagoshiSakae Mikane
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2025 Volume 45 Pages 362-372

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Abstract

目的:本研究は若年成年世代がんサバイバーが診断後,日常生活を送る上での情報を探索するプロセスを明らかにすることである.

方法:がんサバイバー19名に半構造化面接を行い,M-GTAで分析した.

結果:がんサバイバーは,〈がんと共存するための情報を経験者から得て,同世代と繋がるために自身も発信する〉.その上で,〈心身の苦痛や経済的な問題を乗り越えて生活を整える方法を探す〉.さらに,〈がんと共存しながら,ライフサイクルに応じた人生を歩む情報を求め続ける〉.また,〈子どもや親への関わり方に悩み,手探りで解決策を探す〉.しかし,〈万が一の時に子どもに生活上の苦労をさせないような対応策を希求する〉.一方で,〈情報を収集する上で自身の信念を持つ〉ことが根底にあった.

結論:がんサバイバーは疾患に伴う苦痛緩和や社会との繋がりを維持し,家族を想いながらがんと共存する方法を模索していることが明らかとなった.

Translated Abstract

Purpose: This study aimed to elucidate the process by which young adult cancer survivors seek information that helps them in managing their daily lives following their diagnosis.

Method: Nineteen cancer survivors participated in semi-structured interviews, which were subsequently analyzed using M-GTA.

Results: Cancer survivors “obtain information on living with cancer from those who have experienced it and then share it themselves in order to connect with their peers.” They “look for ways to organize their lives by overcoming physical and mental pain and financial problems.” Furthermore, they “continue to seek information on living a life that is in line with their life cycle while living with cancer.” They encounter challenges when interacting with their children and parents and attempt to resolve issues through trial and error. Nevertheless, they also endeavor to prevent their children from experiencing hardships in the event of an emergency. Cancer survivors possess their own perspectives when it comes to gathering information.

Conclusion: It was evident that cancer survivors are actively pursuing ways to mitigate the pain associated with the disease, maintain social connections, and coexist with cancer while thinking about their families.

Ⅰ. はじめに

日本では現在,AYA(Adolescent and Young Adult)世代と呼ばれる15~39歳の20,000人が毎年がんを発症する.その中でも若年成年世代(20~39歳)では甲状腺がん(2,173人),子宮頸がん(1,577人),乳がん(3,676人),大腸がん(1,603人)などの固形がんの発症者数が増加する(がん情報サービス,2024a, 2024b).

AYA世代がん患者の支援については,がん対策基本法に基づき,平成29年に制定されたがん対策推進基本計画(第3期)で初めて支援が明記された(厚生労働省,2017).そして,令和5年にがん対策推進基本計画(第4期)が制定され,小児がん患者及びAYA世代がん患者やその家族等が,適切な情報を得て,悩みを相談でき,治療や晩期合併症や移行期支援,ライフサイクルに応じた支援など長期フォローアップを受けられることを目指すことが新たに明記され実施されている(厚生労働省,2023).AYA世代は生涯の中でも変化の大きい時期にある.成人期のがんに比べて,AYA世代のがんは情報が限られており,不安を抱くサバイバーも多い(がん情報サービス,2023).そして,「総合的な思春期・若年成人世代のがん対策のあり方研究」班(2018)は,「AYA世代では,就学,就労,結婚,出産,育児,親などの介護など様々なライフサイクルへの影響を受けやすい」ことを明らかにしている.若年成年世代がんサバイバーにはがん治療によって生じる心身の影響に対処しながら,がんと共存し,ライフサイクルに伴う日常生活や療養生活を送る上での情報ニーズがあるといえる.若年成年世代を含むAYA世代がんサバイバーはライフサイクルへの影響を乗り越えたり,社会生活を営んだりする上での情報ニーズや(「総合的な思春期・若年成人世代のがん対策のあり方研究」班,2018),治療や精神的支援,妊孕性の支援,世代に応じたケアやピアサポートなどの情報ニーズがある(Bibby et al., 2017Cheung & Zebrack, 2017).

若年成年世代では,がんの発症により生じる多様な情報ニーズを満たすための情報探索行動が必要となる.Grace et al.(2019)によると,AYA世代がんサバイバーが必要な情報を活用できるかはヘルスリテラシーによって影響が出ることが示されており,ヘルスリテラシーが低ければ,必要な情報へのアクセスが制限され,健康管理行動に影響が生じる.健康管理行動に必要な情報を若年成年世代は,SNSなどから収集している(小倉・山本,2022).反面,若年者ではネット情報を中心としたe-ヘルスリテラシーが低いことが明らかになっており(光武ら,2011),情報源を精選し,自身が必要としている内容にたどりつくことは課題があるといえる.一方で,情報探索するなかで自身の信念に矛盾する情報については慎重に吟味し検討している(平山・楠見,2004).そのため,個人の信念は必要な情報の精選といった情報探索行動に影響するといえる.

若年成年世代がんサバイバーは妊孕性や治療後のボディイメージの影響に関する情報ニーズがあるが,サバイバー自身で情報を探索し,満たせているとは言い難い(土橋ら,2019中野ら,2023田崎ら,2021).このように若年成年世代がんサバイバーはライフサイクルに関する内容を含む様々な情報ニーズを持っているにも関わらず,必要な情報に到達できるための情報探索行動プロセスについては明らかになっていない.そのため,若年成年世代がんサバイバー自身が情報ニーズを満たせるように,ヘルスリテラシーを高め,自身で求めている情報源にたどりつける情報探索行動へ繋げる支援が必要である.

以上のことから,若年成年世代がんサバイバーがライフサイクルの変化に対応し,情報ニーズを満たしながらがんと共存し,Quality of Life(以下QOLとする)を高めるための示唆を得るために,若年成年世代がんサバイバーの日常生活で生じる情報ニーズを満たすための情報探索を行うプロセスを明らかにする.

Ⅱ. 研究目的

本研究は,若年成年世代がんサバイバーの情報ニーズに基づいた情報探索行動支援への示唆を得るために,若年成年世代にがんを発症したがんサバイバーが診断後に日常生活を送る上での情報を探索するプロセスを明らかにすることを目的とする.

Ⅲ. 用語の定義

1. 日常生活

本研究において日常生活とは,就学,就労,家事従事,育児,介護など社会的生活を営む上で義務的な性格の強い活動で社会に参画している生活を送っている状態と定義する(総務省統計局,2021).

2. 若年成年世代がんサバイバー

本研究において若年成年世代がんサバイバーは20歳以上40歳未満の間にがんの診断を受けた人とする.

3. 情報探索行動

本研究において情報探索行動はがんと共存しながら生活する上で生じる困難を乗り越えるために信念を持って必要となる情報を探し求めるために外的環境に働きかける行為を指す.

Ⅳ. 研究方法

1. 研究デザイン

質的帰納的研究デザイン

2. 研究参加者

研究参加者は20歳以上40歳未満の間にがんと診断され,研究への協力が得られる方とした.小児期にがんを発症したサバイバーには特有のニーズがあり(中田ら,2021),若年成年世代がんサバイバーとはニーズが異なるため除外した.固形がんは成人期に増加し(がん情報サービス,2024a),手術が第一選択となり,身体的に機能形態変化により日常生活に影響が生じやすく特有の情報ニーズがあるため焦点を当てた.血液がんは小児期に発症が多く(がん研究振興財団,2024),化学療法が第一選択となり,造血幹細胞移植などの通常のがんとは異なる治療が行われることが多く,治療で生じる後遺症や日常生活への影響について特有の情報ニーズがあるため(森ら,2022),除外した.また,自己で研究協力の同意ができず,インタビューへの回答が困難な認知・精神・体力の低下が認められる方,研究に参加することで精神等に影響を及ぼす恐れがあると判断した方は除外した.

3. 調査期間及びデータ収集方法

1) 調査期間

2022年5月~2022年9月

2) データ収集方法

ホームページ等に連絡先の記載がある17のがんサバイバーの患者会の代表者に対して,研究の趣旨をメールにて送付した.承諾の得られた患者会に研究の依頼文と研究者の連絡先を伝達し,研究参加者の募集を依頼した.また,同時に機縁法を用い,研究参加者の紹介を依頼した.研究協力の申し出があった方に,発症年齢と固形がんであることを確認し,研究参加者に該当する場合,研究協力の依頼文,同意書を郵送し,同意を得,後日Web会議システムを用いたオンラインもしくは貸し会議室で,半構造化面接を実施した.面接では研究参加者の承諾を得た上で録音を行い,オンラインの場合には音声が不鮮明の場合,口話や表情の情報で内容の確認のため録画をし,逐語録を作成した.面接の内容は,①がん治療を受けてから,若年成年世代であったことで生じた日常生活での支障,復学,就労などの社会復帰で困難と感じたこと,②がんの心身の苦痛を乗り越えるための方法,③がんと共存するための情報ニーズとその探索行動であった.

4. データ分析方法

若年成年世代がんサバイバーは,周囲の人々との社会相互作用の中で日常生活を営んでいる.本研究は社会的相互作用の中で研究参加者が必要とする情報やその探索行動を明らかにしようとするものであるから,木下による修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチ(以下,M-GTA)を採用した(木下,2006).

面接内容の逐語録をデータとし,M-GTAの分析手法を用いて分析した.分析焦点者を「20歳から40歳未満の間に固形がんを診断され,がん治療を受け,日常生活を営んでいるがんサバイバー」とし,分析テーマを「20歳から40歳未満の間に固形がんを発症したがんサバイバーが診断後,自ら必要な情報を求めていくプロセス」とした.バリエーション(具体例),概念名,定義,理論的メモからなる分析ワークシートを作成し,分析を行った.複数の概念が生成された後に概念間の関係性を検討し,統合を繰り返した.研究者間で新たな概念とカテゴリーが生成されないこと,概念とカテゴリーを用いて分析テーマの現象を説明できた時点で理論的飽和したと判断した.概念相互の関係を見ながらサブカテゴリーを生成し,さらにカテゴリーに統合を行った.そして,概念,サブカテゴリー,カテゴリーの相互の関係を検討し,ストーリーラインとして,文章化し,さらに結果図を作成した.分析の過程では,M-GTAの経験のある複数の質的研究に精通する研究者のスーパーバイズを受けながら繰り返し検討を行うことで,真実性の確保に努めた.

5. 倫理的配慮

面接調査実施にあたっては研究参加者に対し,研究者が口頭および文面を用い,研究協力の自由意思,途中辞退する権利及び不利益の回避,利益・不利益,匿名性,プライバシーの保護,データの管理・破棄,研究結果の公開について説明した.説明後に同意を得られた場合に限り研究参加者とし,同意書への署名をもって,同意を得た.また,面接時間が長時間に渡る場合は研究参加者の疲労度を確認し,適宜休憩を挟みながら面接を実施した.

本研究の実施にあたっては岡山県立大学倫理委員会の承認を得た上で実施した(受付番号:21-63).

Ⅴ. 結果

1. 研究参加者の概要(表1

研究参加者は,研究依頼に対し,協力の申し出があった19名(男性4名,女性15名)であった.研究参加者のインタビュー時の年齢は21~50歳,平均年齢は36.9(SD 7.5)歳,発症時の年齢は20~39歳,平均年齢は30.8(SD 5.9)歳であった.面接時間は46~148分,平均88分であった.

表1 研究参加者の概要

記号 性別 年代 がん診断年代 診断名 治療内容 職業 家族構成
A 女性 30 30 浸潤性乳管がん 手術・化学療法 会社員
B 女性 40 30 左乳がん 手術・化学療法・分子標的治療・放射線治療 ジムトレーナー 父母・弟
娘3名
C 女性 40 30 大腸がん(S状) 手術・化学療法 福祉関係 父母
D 女性 30 30 卵巣がん 手術・化学療法 薬剤師 祖父・母
E 女性 20 20 胚細胞腫瘍(卵巣) 手術・化学療法 学生 独居
F 男性 50 20 精巣腫瘍(胚細胞腫瘍) 手術・化学療法 会社員
娘2名
G 女性 30 30 乳がん
腰痛転移による骨折
放射線治療・ホルモン治療・分子標的薬 会社員 単身
H 女性 20 20 子宮体がん 手術・ホルモン治療 会社員 父母
I 男性 30 20 大腸がん(S状) 手術・化学療法 会社員
J 男性 30 20 精巣腫瘍
後腹膜原発不明がん
手術・化学療法 柔道整復師
K 女性 30 30 右乳がん
妊娠中
手術・化学療法・放射線治療 保育士 夫・娘
L 女性 40 30 右乳がん 手術・化学療法・放射線治療 看護師 夫・息子
M 女性 30 30 右上葉肺がん 手術 会社員(事務職) 娘2名
N 男性 40 30 舌がん 手術・化学療法・放射線治療 研究職
息子・娘
O 女性 40 30 子宮頸がん 手術 看護師 夫・息子
P 女性 30 30 浸潤性乳管がん 手術・化学療法・放射線治療・分子標的薬 保育士 夫・娘1人
息子3人
Q 女性 30 30 浸潤性乳管がん 手術・化学療法・分子標的薬 自営業 夫・娘1人
息子1人
R 女性 40 20
30
子宮頸がん
肝細胞がん
手術+TACE(肝動脈化学塞栓療法)+分子標的薬 公務員 夫(単身赴任)
息子1人
S 女性 30 20 右乳がん 手術・化学療法 教員 両親

2. ストーリーラインと結果図(図1

分析の結果,19の概念が生成され,そのうち意味のまとまりにおいて11のサブカテゴリーと6のカテゴリーが生成された(表2).以下,20歳から39歳の間に固形がんを発症したがんサバイバーが診断後,情報を探索していくプロセスを文章化した.文中及び結果図ではカテゴリーは【 】で表記する.

図1  結果図
表2 カテゴリー・サブカテゴリー・概念一覧

カテゴリー サブカテゴリー 概念 定義
子どもや親への関わり方に悩み,手探りで解決策を探す 療養生活を送る中で子どもへの世話の方法や接し方について悩み,解決策を探す. がん治療によって子どもの世話が思うように出来ず戸惑い,子どもの世話について支援の方法を探す. がんの治療や治療に伴う副作用で子どもの世話などが出来ないことを思い悩み,子どもの世話について公的な支援や家族,周囲で支援を受けられる方法を探すこと.
自身の変化で子どもが不安を抱かないために,がんについて,どのように子どもに伝えるべきか,方法を探る. がんに罹患したこと,受けるがんの治療の内容,予後について,子どもに過度の負担を与えないように伝えるにはどのようにしたらよいか,自分自身の思い,家族の思い,がん経験者の伝え方から色々探ること.
自分ががんになったことで苦痛を感じている両親の姿を見て,両親に対する支援を求めて,探し回る. 自分ががんになったことで苦痛を感じている両親の姿を見て,両親に対する支援を求めて,探し回る. 自分ががんに罹患したことで,がんの治療で苦しんでいる自分の姿を見て両親が責任を感じ,精神的な苦痛を抱いていることに対し,苦痛を軽減できるような支援がないか探し求めること.
がんと共存するための情報を経験者から得て,同世代と繋がるために自身も発信する がん経験者と関わることで多方面の情報を求める. がんの経験を発信して,がん患者同士での新たなつながりを築く. がんに罹患し,治療を受けた立場として,自分自身のがんになった想いや治療について,主体的に情報発信することで,新たな人間関係を築くこと.
がん経験者に先の見通しに対する不安を解消するための情報を求める. がんという病気,治療,治療後の生活の不明点,不安なことについて,軽減するために治療を受けた経験者に自ら働きかけること.
患者会に参加することで多方面からの情報を求める. 治療,日常生活,仕事,妊孕性などのがんの悩みについて,患者会などで様々な経験を持つがん経験者と関わることが出来る場所に参加し,仲間作りや新たな知見を求めること.
自分自身の年代で必要となる日常生活に関する情報が得られないため求め続ける. 患者会に参加しても,参加者が若年者でないため,生活背景が大きく異なり,自分が求めている,日常生活,仕事,妊孕性に関する相談が出来ず,必要としている情報が得られないため,探し回ること.
がん患者同士で,新たな見聞を得るために情報を交換する. がん患者同士で,新たな見聞を得るために情報を交換する. がんや生活に関する情報を交換し,がんと共存している自身の経験と他者の経験を共有すること.
心身の苦痛や経済的な問題を乗り越えて生活を整える方法を探す 退院後の療養生活を送る上で生じる様々な苦痛についての解決策を探す. 自宅での療養生活を送る中で疑問に感じる情報を見つける. 療養生活を送るにあたって,科学的根拠のない民間療法,疑似医療など疑問に感じる情報に出会うこと.
退院後の療養生活で感じた身体の不調を乗り越えるための方法を探す. 自宅療養や仕事をしながら,後遺症や抗がん剤治療を受けることで生じた苦痛を乗り越えるために活用できる方法を見つけ出すこと.
がん治療に伴い長期に渡る経済的な負担について,解決策を模索する. がん治療そのもので生じる治療費の負担や仕事が出来ないことで給与が減ったことでの生活への影響やウィッグなどのアピアランスケアに必要となる費用についてなどの経済的な問題について,どのように解決すべきなのか見つけ出そうとすること.
外出や仕事に復帰するにあたり,治療で生じた身体的影響に対する対応策を探す. 家から出かける際に,外見上の変化が分からないような方法を模索する. 治療で生じた脱毛や皮膚の変化,手術痕などの外見上の変化から,がんの患者だと分からないようにするための方法を探すこと.
社会復帰に向け,身体的な準備をして,支援体制について確認する. 仕事や学業への復帰など,社会での活動に戻るために,体力をつけた上で,社会保障制度などの支援体制についての情報を確かめること.
会社への復帰に向けた支援を得るために人づてに相談先を探す. 元の仕事に戻ったり,新しい仕事したりするにあたって,仕事内容の調整を行うために,主治医,家族,上司,同僚などに円滑な仕事復帰に向けて相談できるところを探すこと.
がんと共存しながら,ライフサイクルに応じた人生を歩む情報を求め続ける 体調が落ち着いた後,長期的に安泰出来る生活についての方法を探す. 体調が落ち着いた後,長期的に安泰出来る生活についての方法を探す. 体調が落ち着き,長期的な生活考える余裕が生まれた後,今後の生活への影響を考え,長期に渡り安定した生活を送ることができる方法を探すこと.
医師よりがんの遺伝について伝えられ,治療が一段落した後にがんの遺伝とは何かを調べる. 医師よりがんの遺伝について伝えられ,治療が一段落した後にがんの遺伝とは何かを調べる. 医師より,自分のがんが遺伝性であることを伝えられ,がんが将来自分自身の子どもに遺伝することなどがんの遺伝とはどのようなものか探ること.
治療の目処がついたことで,妊孕性に対する不安を抱くようになり,対策を探す. 治療の目処がついたことで,妊孕性に対する不安を抱くようになり,対策を探す. 抗がん剤による生殖機能への影響や卵巣摘出,精巣摘出などの治療によって,子どもを授かることに影響がないのかなどについて不安を抱き,対策はないか探すこと.
万が一の時に子どもに生活上の苦労をさせないような対応策を探す 子どもと接する中で,もしもの時に,子どもが自分の力で日々の生活ができるような選択肢を求める. 子どもと接する中で,もしもの時に,子どもが自分の力で日々の生活ができるような選択肢を求める. がんに罹患したことで自分が子どもの成長を見ることができず,幼い子どもを遺して死ぬかも知れないことで,子どもが日々の生活を送る上で困らないような対応策を探すこと.
情報を収集する上で自身の信念を持つ がんを乗り越えるために,自身の信念となる考えを持って行動する. がんを乗り越えるために,自身の信念となる考えを持って行動する. がんそのものだけでなく,治療法,日常生活について,正確な情報や必要な情報を得るためについて,自身の信念となる考えを持った上で情報を収集すること.

がん診断後の若年成年世代がんサバイバーは,心身の不調で苦しむ中,子どもの世話ができないことや自身のがんで精神的な苦痛を抱いている親のために,何とかできないかと【子どもや親への関わり方に悩み,手探りで解決策を探す】ために行動する.また同時に,がん経験者と関わり,多方面の情報を得たり,情報交換をしたりして,身体的苦痛や仕事復帰するための情報を探すために【がんと共存するための情報を経験者から得て,同世代と繋がるために自身も発信する】.そして,社会復帰のための情報を得て,【心身の苦痛や経済的な問題を乗り越えて生活を整える方法を探す】.その後,社会生活に戻り,長期的に自身の生活を考える余裕が生まれ,妊娠やがんの遺伝,長期に安泰した生活を望むようになり,【がんと共存しながら,ライフサイクルに応じた人生を歩む情報を求め続ける】.そしてまた,【がんと共存するための情報を経験者から得て,同世代と繋がるために自身も発信する】ことで,同世代との交流を続け,【がんと共存しながら,ライフサイクルに応じた人生を歩む情報を求め続ける】.しかし,【子どもや親への関わり方に悩み,手探りで解決策を探す】が,がんという予後不良の可能性がある疾患を発症することは,子どもを遺して死ぬかも知れないという想いを抱き,【万が一の時に子どもに生活上の苦労をさせないような対応策を希求する】ことで,最期まで親としての役割を果たそうとする.一方で,診断後に日常生活に関する情報を探索する際の根底には,正確,不正確を問わず溢れる様々な情報の中から必要な【情報を収集する上で自身の信念を持つ】ことで情報の取捨選択が可能となり,正確で役立つ情報探索に繋がる.

3. 各カテゴリーの内容

生成された6カテゴリーを構成するサブカテゴリー,概念と研究参加者の語りを記述する.以下,文中では,カテゴリーは【 】,サブカテゴリーは《 》でバリエーションは「 」で表記する.バリエーションの後の〈 〉は研究参加者,( )はバリエーションの内容の補足を示す.

1) 【子どもや親への関わり方に悩み,手探りで解決策を探す】

《療養生活を送る中で子どもへの世話の方法や接し方について悩み,解決策を探す》,また,《自分ががんになったことで苦痛を感じている親の姿を見て,親に対する支援を求めて,探し回る》ことで家族のために行動する.

「(がんを)こうやって伝えたよとかっていうのを見たことはあって,…子どもに説明するブログかなんか見たときに,そういう病気のことを伝えるときって…,僕のせいだ自分のせいだって考えちゃうことがあるから,それは違うっていうのは言った方がいいみたいなのを何かで見たことはあったので,それは絶対に伝えたいなと思って〈O〉」

「なぜ伝えられなかったかというと,旦那がものすごく反対をしてですね.私も全て伝えたいと罹患したときに言ったんですけど,子どもにはこの治療を始めるときに,そういうふうな形で言わないといけないかなっていう話になったときに私はもう全部言ったらいいと思います.…私自身は伝えたいという意見だったんですけど,旦那はやっぱり自分が感じたその不安とか,これから嫁はどうなって行くんだろうかとか,これ,この先どうなっていくんだろうかっていう,そういう不安を子どもにこう感じて欲しくない.(P)」

「なかなかその私に打ち明けることで発散はできないだろうし,親世代のAYA代の親の会っていうのはまずないので,どんなに調べてもなかったので,同じ環境の人と繋がりづらさっていうのは,やっぱりそのAYA世代の当事者だけでなく家族も抱えてる悩みだなとは思いました.〈K〉」

2) 【がんと共存するための情報を経験者から得て,同世代と繋がるために自身も発信する】

がんと診断され退院後の情報を求めるために自ら患者会などに参加し,《がん経験者と関わることで多方面の情報を求める》.そして,がん経験者と関わることで情報を得た上で,自らの想いを表出し,《がん患者同士で,新たな見聞を得るために情報を交換する》.

「Twitterが一番私なんか,リアルタイムで情報を得られるし,何か今の患者さん自身の状況,…お友達とか仲間だよみたいな感じで結構やりとりをフォローしてくれたりするんですよね.〈S〉」

「きっかけは母の友人のサバイバーさんたちの情報がやっぱり世代が違ってたり,あんまり自分の身に落としてとして考えられるような感じじゃなかったからもうちょっと自分と同じような世代の人の方が参考なるかなと思って(若年成年世代がんの患者会に)登録した感じです.〈A〉」

3) 【心身の苦痛や経済的な問題を乗り越えて生活を整える方法を探す】

がんの治療を受けることで生じた《退院後の療養生活を送る上で生じる様々な苦痛についての解決策を探す》.そして,《外出や仕事に復帰するにあたり,治療で生じた身体的影響に対する対応策を探す》.

「(ウィッグの助成が)自分の市では,あの助成がないっていうのを調べてわかって〈B〉」

「何か例えば,自分でネットで調べて役に立たせられたのは,脱毛しちゃった後の肌の手入れとか.〈A〉」

4) 【がんと共存しながら,ライフサイクルに応じた人生を歩む情報を求め続ける】

《体調が落ち着いた後,長期的に安泰出来る生活についての方法を探す》,また,《医師よりがんの遺伝について伝えられ,治療が一段落した後にがんの遺伝とは何かを調べる》,一方で,《治療の目処がついたことで,妊孕性に対する不安を抱くようになり,対策を探す》ことでがんと共存できる方法を探していく.

「抗がん剤の製薬会社の資材.あそこに書いてあっただけなんですよ,妊孕性のこと.…結婚とがん治療で同時だったので,今後どうするとかっていうのを考える前に治療が始まったから.なので,それの情報をもっと早く知りたかったなと思って.しかもお医者さんと看護師さんの口から聞きたかった.…そこでパンフレットを自分がもし読まなかったら,それすら気づいてない.〈I〉」

5) 【万が一の時に子どもに生活上の苦労をさせないような対応策を希求する】

がんを発症したことで死に対する考え持ち,《子どもと接する中で,もしもの時に,子どもが自分の力で日々の生活ができるような選択肢を求める》ことで子どもについて考え続ける.

「インターネットも普通にやって自分でやってる状態だったんでそれで,ちょっとどうしようかなと思ったときにまず子どものことが私,頭にあったので,この子どうしようかなと思って考えたときに,旦那いないし,どうやって高校大学行かせるのって思ったときに,中学受験を思いついたんですよ.…患者ブログを見出したんです.そしたらいるんですよ.結構な数で,結構がんやってるこれくらいの人って,中学受験率ものすごく高いです.〈R〉」

6) 【情報を収集する上で自身の信念を持つ】

必要な情報を探すにあたり,《がんを乗り越えるために,自身の信念となる考えを持って行動する》.

「僕は幅広く全部の,偏らないで,右とか左,右も左も全て意見を見る,全ての情報を知る.多分,真ん中にいるのは厚生労働省だったんで,厚生労働省も右でもなく左でもないので,そこから右寄りの意見とか左寄りの意見というか.〈I〉」

「根拠を必ず確認する癖があるんです.…がん研のサイト,病院のサイトそっから見るんだけど,患者ブログの方にいくじゃないですか.だけど患者ブログも書いてることがまちまちで,…なんで言い切れるんだろうって私すごく疑問に思ってて.元々が違うし状態だって医者じゃないわかんないのに,ステージ4だっていろいろだし,わかんないよねとかって,そういう疑り深い性格だって,PubMedを見てました〈R〉.」

Ⅵ. 考察

1. 若年成年世代がんサバイバーが日常生活を送る上での情報ニーズに基づいた情報を探索するプロセスの特徴と支援

若年成年世代がんサバイバーは【がんと共存するための情報を経験者から得て,同世代と繋がるために自身も発信する】ために患者会の参加やSNSでの情報交換によって,情報探索行動を取るという特徴がみられた.久保・大川(2020)は,がんサバイバーはピアサポートからの情報を求めていることを明らかにしており,若年成年世代がんサバイバーでも同様であった.一方で,患者会に参加しても,年齢差や立場などによって情報ニーズに違いがあり,必要な情報が得られていなかった.そのため,現存する情報を探索することに加え,自らの疾患や想いについてSNSなどネット上で情報を発信し情報を収集していた.叶ら(2016)は,大学生がSNSで知り合いを作ることを明らかにしており,若年成年世代がんサバイバーでも同様の傾向であると考える.若年成年世代がんサバイバーは経験者と関わり,信頼関係を築き,がんと共存するための情報を探索する.そして,自らの情報ニーズを満たし,自身の心理的な安寧に繋がると考える.

そして,若年成年世代がんサバイバーは【心身の苦痛や経済的な問題を乗り越えて生活を整える方法を探す】ようになり,社会復帰を目指す特徴がみられた.特に若年成年世代がんサバイバーはがん治療で生じる外見上の変化で陰性感情を抱く可能性がある.また治療による身体の変化が精神的な影響を及ぼすことも先行研究より明らかになっている(渡邊ら,2021).したがってアピアランスケアは精神的な苦痛の軽減に繋がり,外出などの社会復帰の一助になると考えられる.そのためにも,アピアランスケアについて,情報探索行動に繋げるような支援が重要である.さらに,退院後に必要となる情報が入手できていないことが指摘されている(佐藤ら,2016).そのため,社会との関わりを継続できるような情報を活用し,社会復帰に向けた情報探索行動がとれるように支援する必要があると考える.

若年成年世代がんサバイバーは【心身の苦痛や経済的な問題を乗り越えて生活を整える方法を探す】ことで社会復帰し,【がんと共存しながら,ライフサイクルに応じた人生を歩む情報を求め続ける】という特徴があった.若年成年世代がんサバイバーはライフサイクルと密接に関係する妊孕性に関する情報ニーズがあった.妊孕性は機微な内容を含み,医療者間での温度差があること(高橋ら,2019)や支援の障壁,短時間での意思決定,相談体制の不備,話題の特殊性があること(土橋ら,2019)が示されている.このような背景が相談しづらい状況を増幅させ,支援に繋がっていない可能性がある.また一方で子どもにがんを遺伝させたらという想いで葛藤し,自身が遺伝子検査を受けるメリットとデメリットについて推し量っての迷いの心情があることが明らかになっている(藤村ら,2022).若年成年世代がんサバイバーがライフサイクルと密接に関係する妊孕性やがんの遺伝についてどのような情報ニーズがあるのか理解し,治療前より必要かつ丁寧な情報提供が,疑問点や不安などを解決し,意思決定したうえで治療を受けることに繋がると考える.

さらに,【がんと共存するための情報を経験者から得て,同世代と繋がるために自身も発信する】ことを続け,【がんと共存しながら,ライフサイクルに応じた人生を歩む情報を求め続ける】ことで,日常生活を歩むという特徴があった.がんと共存するために若年成年世代がんサバイバーは社会との関わりを持ち続けることが必要となる.情報探索行動を取ることによって,同世代との交流の場を築き,自身の体験を発信し,心理的な安定に繋げていたと考える.

一方で,若年成年世代がんサバイバーは自身のことだけでなく【子どもや親への関わり方に悩み,手探りで解決策を探す】という特徴があった.子どもへの伝え方については若年成年世代がんサバイバー本人の想いだけでなく,配偶者などの家族との調整が重要である.しかし親の病気での入院や治療によって生じる外見上の変化で,子どもが不安を抱いたり,がんという病気が子どもにネガティブな印象を与え,不安を増幅させたりすることを心配し,どのように伝えるべきかについての情報ニーズがあった.先行研究からも子どもへの伝え方に困難を抱くことや子どもへの伝え方を慎重に考えた上で決めることが明らかになっている(久保田ら,2021藤本・神田,2017).がんサバイバー本人だけでなく,配偶者などの家族を交え,がん治療を受けることを子どもに伝える方法について個別性に合わせた情報提供が必要である.

また,一方で自身が若年であり,親への対応について困難を抱いていた.親を対象とした家族会は少なく情報探索に限界があった.そのため,親自身が想いの表出を行う場所がなく,苦痛の緩和ができない親の姿を見て苦痛を抱き,更に自身のがんの発症で親に対して,自責の念を抱いたと考える.一方で,親も子どもががんを発症したため自責の念を強く抱く.子どものがんの発症は,若年成年世代の親としての責任を感じさせ,罪悪感に繋がり,自責の念を抱いていたと推察する.小児がん患者の親が自責の念を抱くことが明らかになっており(横森ら,2014),若年成年世代でも同様の結果が示された.また,若年成年世代がんサバイバーは,苦痛が大きい治療中であるにも関わらず,親の罪悪感や自責の念を軽減するための情報を探索していた.加えて,親世代はネットを活用しての情報探索には限界があり,代わりに若年成年世代がんサバイバー自身が情報探索行動を余儀なく行っていた.しかし,苦痛を解決するための情報は限られ,解決できず更なる苦痛を抱き,無力感や自尊心の低下を招く学習性無力感を抱く状態となり,社会生活に影響を生じる可能性も考えられる.そのため,若年成年世代がんサバイバーだけでなく,親を含めた支援を行う必要がある.

若年成年世代がんサバイバーは,【子どもや親への関わり方に悩み,手探りで解決策を探す】が,自身の生命予後を考え,【万が一の時に子どもに生活上の苦労をさせないような対応策を希求する】ことで,その後の子どもの生活を見据えた情報を求める特徴がみられていた.これは,最期まで親としての責任を果たそうとする強い思いが根底にあり,活用出来る情報探索行動に繋がっていたと推察する.これらは,山本ら(2021)の乳がん患者の子どもに対する向き合い方と同様の概念である.しかし,情報には限界があった.支援を行う看護師はグリーフケアの側面での支援の視点は持っているが(後藤,2018坂野・岡崎,2020),若年成年世代がんサバイバーが抱く自身の死後の子どもの生活について,診断時や治療早期から支援が行き届かず,自身での情報探索行動に繋がったと考える.そのため,あらゆる側面で信頼できる情報源の提供や他職種での連携によって,若年成年世代がんサバイバー自身で,自身の課題に応じた主体的な情報探索行動に繋げるような支援が重要である.

若年成年世代がんサバイバーは【情報を収集する上で自身の信念を持つ】ことを前提に情報探索行動を行う特徴がみられていた.がん治療は,複数の選択肢の中から,自身で治療法の意思決定が求められる.若年成年世代がんサバイバーは自分にあった適切な治療についての取捨選択を求められる.本研究では,若年成年世代がんサバイバーががん治療についての情報や副作用への対応,がんと共存する日常生活について,必要な情報を探索し,慎重に治療についての意思決定を行っていた.また,疑問に感じる治療法や方法などについては,更なる情報を自身で探し,治療の意思決定に繋げていた.若年成年世代がんサバイバーが自身の情報ニーズを満たすために信頼できる情報を探索しながら,自ら考え意思決定した治療法や苦痛緩和を行うことは,がんと共存することに繋がると考える.

2. 若年成年世代がんサバイバーのヘルスリテラシー向上への支援

若年成年世代がんサバイバーは,ライフサイクルの変化に加えて,がんと共存し,自らの情報ニーズを満たすための情報探索行動を行っていた.本研究では【がんと共存するための情報を経験者から得て,同世代と繋がるために自身も発信する】ことで情報探索行動に繋げていた.そのため,現状では情報ニーズを満たす情報提供を医療者が行えているとは言い難く,がんサバイバー自身で情報探索行動を行い,情報ニーズを満たしていると考える.医療者はがんサバイバーの抱く情報ニーズを理解し,必要な情報探索行動がとれるような支援が必要である.現代では,自身が必要となる情報を容易に入手することが可能である.一方で,情報過多やネガティブな情報で不安を増大させる危険性も孕んでいる.乳がん患者を対象とした橋爪ら(2019)の研究においても,不安の増大や情報過多での混乱のリスクを示唆している.適切な情報源にたどり着くにはヘルスリテラシーの向上に向けた支援が重要であることが示唆されている(早川ら,2022).ヘルスリテラシーを向上させるには,信頼できる情報源とはどのようなものがあるのか,医療者が標準治療や補完代替療法について,医学的な意味や効果なども正確に伝えることが重要である.そのためには若年成年世代がんサバイバーや家族の抱いている想いを無碍にするのではなく受け止め,信頼関係を築くことが重要である.そして,若年成年世代がんサバイバーが抱いている情報ニーズを支援に携わる看護師が理解し,相談内容に応じた支援先を紹介したり,コンサルテーションしたりすることで,情報ニーズを満たす一助となる.

また,若年成年世代がんサバイバーは,【情報を収集する上で自身の信念を持つ】ことで,自身に必要となるがんに関する情報をについて様々な情報源から取捨選択していた.しかし,全ての若年成年世代がんサバイバーが必要な情報の取捨選択を主体的に行うことは困難であると考える.情報の内容やどのように捉えているのかを確認した上で患者教育を行う重要性が示されている(山本ら,2019).サバイバーが得た情報について,情報の解釈をサバイバーと一緒に行い,さらに必要な情報源の提供をサバイバーに行うことがヘルスリテラシーを高める.その結果,若年成年世代がんサバイバーの主体的な情報探索行動に繋がると考える.

Ⅶ. 本研究の限界と今後の課題

本研究の参加者は若年成年世代がんサバイバーの女性が多く,性差が影響を与えている可能性がある.また,患者会を通して参加者を募集したため,主体的な情報探索行動を取っている若年成年世代がんサバイバーであり,データに偏りがある可能性は否めない.今後はこの結果から看護師が行っている支援を明らかにし,若年成年世代がんサバイバーの求めている支援に繋がるように研究を継続する必要がある.さらに全身に影響が生じ,長期的な化学療法や造血幹細胞移植などの治療が必要となる血液がんに着目し,情報ニーズや情報探索行動を明らかにする必要がある.

Ⅷ. 結論

若年成年世代がんサバイバーが診断後,日常生活を送る上での情報を探索するプロセスは19の概念,11のサブカテゴリー,6つのカテゴリーから構成されていた.若年成年世代がんサバイバーは疾患に伴う苦痛緩和の方法や仕事などの社会との繋がりを継続する方法,発達課題に特徴的な子育てや妊孕性,遺伝への対応策について情報探索していた.また,社会との繋がりを維持し,親や子どもへの支援など家族を想いながらがんと共存する方法を模索していた.

看護師はがんという疾患から生じる身体面や精神面,社会的支援や子どもや配偶者を中心とした家族支援に留まらず,親を含めた家族全体への支援,正確な情報源の提供や情報の整理といった患者のヘルスリテラシーを高める支援が必要である.

付記:本論文の内容は第38回日本がん看護学会学術集会にて発表した.

謝辞:本研究に御協力頂きました若年成年世代がんサバイバーの皆様に心より感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:HMは研究の着想および研究デザイン,データ収集,分析,論文執筆の全てを行った.NMは研究の着想および研究デザイン,分析,論文原稿の助言,加筆修正を行った.MSは研究全体への助言,論文原稿の助言,加筆修正を行った.全ての著者は最終原稿を確認し,承認した.

文献
 
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