2025 Volume 45 Pages 526-539
目的:補完・代替療法に取り組むがん患者の看護におけるコア・コンピテンシーの構成要素をintegrative reviewによって特定し,明らかにすること.
方法:医中誌Web,MEDLINE,CINAHL等を用いて,「補完・代替療法」,「がん」,「臨床能力」等をキーワードとして検索し,選定した各種研究論文,解説等から抽出したデータを,質的帰納的方法により分析した.
結果:39件の分析対象文献の内訳は,質的研究10件,量的研究8件,混合研究4件,総説・レビュー10件,解説7件であり,5つの「知識」,11の「スキル」,4つの「態度・価値観」が明らかになった.
結論:当該コア・コンピテンシーは,知識獲得を基盤に看護師・患者関係を発展させながら,これまで培ってきたがん看護における態度やスキルを活用し,患者の目標達成を可能とする力として特徴づけられると考えた.
Objective: Using integrative review, this study aims to identify and clarify the components of core competencies in nursing for cancer patients who use complementary and alternative medicine (CAM).
Method: Ichu-shi Web, MEDLINE, CINAHL, CiNii books, and WorldCat were searched for various types of research papers, commentaries, and books by combining search terms such as “CAM,” “cancer,” “clinical ability,” and “professional ability.” The extracted data was analyzed using a qualitative inductive method.
Results: A total of 39 articles were adopted: ten qualitative studies, eight quantitative studies, four mixed studies, ten reviews, and seven commentaries. Results of the analysis identified 5 knowledge categories including “Basic knowledge about CAM including pharmacological effects and history” and “Types of CAM modalities used to manage symptoms of the cancer itself as well as cancer treatment,” 11 skills categories including “Ability to carefully examine own CAM knowledge and update information” and “Evaluation of CAM usage status based on patient’s current health status and target health status,” and 4 attitudes and values categories including “Respecting patient values and wishes regarding CAM” and “Open attitude toward CAM and CAM users.”
Conclusion: The findings suggest that core competencies are characterized as the ability to support patients in achieving their goals by fostering nurse–patient relationships grounded in knowledge acquisition and by applying the attitudes and skills developed through experience in cancer nursing.
補完・代替療法(Complementary and Alternative Medicine; CAM 以下CAMとする)は,従来のより厳格なエビデンスに基づく医療の代わりに,または,それに加えて使用されるすべての方法とされている(National Center for Complementary and Integrative Health, 2025).CAMの利用者数は世界的に増加しており,その背景には,インターネットを通じた情報発信の増加,自己健康管理への関心や患者の主体的な治療選択に対する意識の高まり等がある.がん患者においてはその半数以上がCAMを使用していることが世界中で報告されている(Kallman et al., 2023;Kim et al., 2023).日本における2000年代の全国調査では,がん患者の44.6%がCAMを利用していた(Hyodo et al., 2005).2017年の調査ではがん患者の54%がCAMを使用していることが明らかになり(鈴木ら,2017),その数は漸増している.
がん患者の多くは,長期にわたる治療の副作用や疾患の進行に伴う症状に対処するためにCAMを求めている(Ang et al., 2023;Kristoffersen et al., 2022b;Lu et al., 2010;Saghatchian et al., 2014).がん患者がCAMを利用する他の目的として,生活の質の向上,がんという疾患そのものへの対処,リラクセーションやウェルビーイングが挙げられる(Kristoffersen et al., 2022a).日本のがん患者のCAMへの期待を調査した研究では,CAMは,自然治癒力を向上し,治癒に向かってあらゆる手段を得,病院での円滑な治療を維持し,対処するための何かであることが示されている(伊藤ら,2000).
しかし,CAMを利用する患者の51.2%で,従来のがん治療との潜在的な相互作用が確認されている(Wolf et al., 2022).患者がCAMを利用する際には,正確な情報提供や意思決定支援等,CAMを安全に利用するための支援を得る必要があるが,がん患者の45.5~64.0%はCAMの使用について医師に相談していない(Hyodo et al., 2005;Jazieh et al., 2021).医師はCAMについて患者と積極的にコミュニケーションをとる必要があるが,CAMに関する知識不足のため,ほとんどの医師はそのような議論を始めない(Kumbamu et al., 2018;Yang et al., 2017).
これまでの多くの研究では,看護師はCAMに強い関心を示し,従来の治療と組み合わせて使用することを支持し,CAMのトレーニングを受けることを熱望していることが示されている(Admi et al., 2017;Ben-Arye et al., 2017;Rojas-Cooley & Grant, 2006).従来から看護師は,指圧やアロマセラピー等,様々なCAMを看護技術として導入しようと試み,実践してきた(Balouchi et al., 2018;小板橋ら,2005).個々の患者の多様な価値観や思考の枠組みに寄り添った看護独自の機能を発揮することで,看護師は患者のCAM利用を支援する適任者になり得る(楠ら,2020).しかし,CAMを主体的に選択し,利用する患者が有する課題解決を含む,包括的な看護実践を充実させる系統的な教育カリキュラムやプログラムは確立されておらず,教育に必要なコンピテンシーは明示されていない.
「コンピテンシー」とは,各人の内的リソースを結集し,不確実な状況における複雑な要求に対応する能力(OECD, 2019)である.松下(2021)は,教育におけるコンピテンシーを「ある要求・課題に対して,内的リソース(知識,スキル,態度・価値観)を結集させつつ,対象世界や他者と関わりながら,行為し省察する能力」と定義し,医学教育のような専門職の養成においてもコンピテンシーが重視され,汎用的能力だけではなくある分野に固有の能力としてもコンピテンシーが捉えられるとしている.看護においては看護師の自己成長を促すことを含む,教育と実践をつなぐ重要な概念として発展し(Scott Tilley, 2008),看護教育において,コンピテンシー基盤型教育を導入することが推奨されてきた(Anema & McCoy, 2009).よって,CAMに取り組むがん患者の多様で複雑なニーズに対応する看護実践能力はコンピテンシーとして捉えられ,当該コンピテンシーを標準化することは,その容易ではない看護実践を促す看護教育に不可欠であるといえる.
CAMを利用するがん患者の病状や治療の段階,療養の場は様々であり,看護の場や実践者の熟達度も多様である.本研究では,CAMを利用するあらゆるがん患者の看護に共通し,実践の場や看護師の習熟段階を問わない看護実践能力をコンピテンシーではなく「コア・コンピテンシー」とする.そして,CAMに取り組むがん患者の看護におけるコア・コンピテンシーの構成要素を,がん患者がCAMに取り組む過程において遭遇する多様な課題の解決,およびCAMから享受する恩恵の助長に向けた看護に必要となる知識,スキル,態度・価値観とし,それらを特定する.本研究において,知識を「実践に直接適用される一連の情報であり,学習によって習得可能な内容の諸要素として明確化できるもの」,スキルを「あるプロセスを実行するための観察可能な能力であり,学習や経験を通じて構築・拡張可能なもの」,態度・価値観を「ある事象,またはある行動に対する心の持ち方や取り組み方」と定義した.明らかにされた知識,スキル,態度・価値観は,CAMに取り組むがん患者に対する効果的な看護実践を導くコア・コンピテンシーへの示唆を与え,系統的な教育基盤形成の一助となり得る.
CAMに取り組むがん患者の看護におけるコア・コンピテンシーの構成要素として,知識,スキル,態度・価値観を既存の文献より抽出,統合し,明らかにすること.
本研究で探求するコア・コンピテンシーの構成要素は,integrative review(Whittemore & Knafl, 2005)によって導出する.integrative reviewは,さまざまな方法論を包含し,関心のある特定の現象に関する複雑な視点を含めることを可能にするため,看護科学と看護実践にとって重要であると提唱されている.そして,特定の現象の幅広い記述によって,トピックに関する新しいフレームワークと視点を生成し,研究が限られている新しい,新興の,または多様なトピックに適した方法と見なされる(Torraco, 2016).CAMを利用するがん患者への看護に関する研究は限られ,多様で複雑な視点を含むテーマであるため,本研究においてはintegrative reviewによるこれまでの知見の統合が適切であると考えた.
1. 選定基準と除外基準分析対象文献の選定基準は,(1)知識,スキル,態度・価値観の各領域またはいずれかの領域について,CAMを利用する患者への看護に必要な能力について言及している,(2)看護の対象が,自らの意思でCAMの利用を開始し,取り組んでいる(取り組もうとしている)がん患者である,(3)研究論文(質的研究,量的研究,混合研究,総説,レビュー,学位論文),解説,書籍のうち,全文が入手可能な日本語または英語の文献,とした.除外基準は,(1)看護師が自ら技術として患者に提供するCAMの実施方法,および看護師が主導して患者に実施させるCAMの指導方法についての調査・研究・報告,(2)小児や患者の家族を対象とした看護について述べているもの,(3)詳細が不明な会議録,とした.
2. 文献収集方法日本語の研究論文および解説は医中誌Webを用いて2001年以降に出版された文献を,英語の研究論文および解説はMEDLINEとCINAHLを用いて1990年以降に出版された文献を検索した.検索は,シソーラスとキーワードを活用して行った.医中誌においては,「代替医療」,「補完代替療法」,「民間療法」,「腫瘍」,「がん」,「看護」,「臨床能力」,「専門能力」等を,MEDLINEとCINAHLにおいては,「complementary and alternative medicine」,「cancer」,「nurse」,「competency」,「ability」等を組み合わせて検索した.コンピテンシーを探求した先行研究(Hoxhaj et al., 2022;Witt et al., 2022)を参考に,「カリキュラム」,「curriculum」や「ガイドライン」等も検索キーワードとして組み込んだ(表1,付録1,付録2).また,日本語の書籍はCiNii books,英語の書籍はWorldCatを用いて検索した.検索期間は,日本と欧米においてCAMの調査・研究が公的に開始された時期を起点とし,それぞれ2024年10月に検索を実行した.一般にintegrative reviewの検索では,目的的サンプリングを包括的な検索と組み合わせることが可能である(Broome, 2000).したがって,上記により選定された文献のリファレンスについても,ハンドサーチを行った.
| 医中誌Web | #1 | シソーラス用語「代替医療」「民間療法」および,フリーワードの代替療法,補完代替療法,補完代替医療,民間療法,補完・代替療法,補完・代替医療,相補医療,補完医療,相補代替医療,相補・代替医療,をOR検索 |
| #2 | シソーラス用語「腫瘍」および,フリーワードの腫瘍,悪性新生物,がん,癌,をOR検索 | |
| #3 | シソーラス用語「看護」および,フリーワードの看護,看護師,をOR検索 | |
| #4 | シソーラス用語「臨床能力」「知識」「態度」「教育」「カリキュラム」「学習」「ガイドライン」「看護実践」および,フリーワードの臨床能力,コンピテンシー,能力,知識,技術,スキル,態度,教育,カリキュラム,教育課程,教育プログラム,学習,学習プログラム,ガイドライン,看護実践,をOR検索 | |
| #5 | #1~#4をAND検索 | |
| 限定:成人(19~44),中年(45~64),高齢者(65~) 発行年:2001~2024年 | ||
| MEDLINE CINAHL | #1 | complementary and alternative medicine OR complementary medicine OR alternative medicine OR complementary therapy OR complementary therapies OR CAM OR CM |
| #2 | #1 AND cancer OR oncolog* OR malignancy OR tumour OR tumor OR neoplasm | |
| #3 | #2 AND nurse OR nurses OR nursing | |
| #4 | #3 AND knowledge OR education OR competence OR competency OR competencies OR attitude OR attitudes OR curriculum OR curricula OR ability OR abilities OR skill OR skills OR practice OR learn* | |
| #5 | #4 NOT pediatric OR child OR children OR infant OR adolescent | |
| 限定:英語 発行年:1990~2024年 | ||
複数の種類の文献をソースとするintegrative reviewのデータ評価には,そのソースの種類ごとにデータを評価する基準を設ける必要があるため,本研究においては多様な文献の研究デザインや種類に応じてデータを適切に評価するツールを用意した.Mixed Method Assessment Tool(MMAT)(Pluye et al., 2009),Joanna Briggs Institute(以下,JBI)が提供するCritical Appraisal Tools(CAPS)のCHECKLIST FOR SYSTEMATIC REVIEWS AND RESEARCH SYNTHESES(Aromataris et al., 2015)および,CHECKLIST FOR TEXTUAL EVIDENCE: EXPERT OPINION(McArthur et al., 2020)を使用して,対象となった文献の方法論的質の評価を実施した(付録3,付録4).評価の結果については,文献の選定に向けて活用するのではなく,分析の過程において相反するデータが得られた場合等,分析結果の妥当性を確認するための根拠として活用した.
4. データ分析データ分析については,手順の中で最も開発が進んでいない側面の1つでありかつ,最も困難な側面の1つとされている(Whittemore & Knafl, 2005).バイアスとエラーを減らすために,混合研究または質的研究の手法の採用,体系的な分析方法の事前明示をポイントとするWhittemoreらの手順を基本に以下の通り実施した.混合法による統合方法は,JBIのガイダンス(Stern et al., 2020)によるconvergent integrated approach(収束統合アプローチ)を参考とした.
1)対象となった文献を繰り返し精読し,本研究の目的に応じた3つのサブグループ;CAMに取り組むがん患者の看護に必要な「知識」,「スキル」,「態度・価値観」毎に関連する記述および定量的データを抜き出した.記述においては,対象文献におけるテーマやカテゴリーおよびそれらの根拠となる具体的な記述(ロウデータやコード等)を合わせて抽出した.量的研究および混合研究から抽出した定量的データは,それら結果のナラティブな解釈により定性化し,テキスト記述に変換した.
2)3つのサブグループ毎に,類似する記述をグループ化し,それぞれを比較検討しながら共通する意味内容を一文で示し,コードとした.記述の中に複数の意味が含まれるものは,それぞれの意味毎に独立した内容としてとらえ,複数のコードに包含した.
3)相反する抽出内容があった場合,出典のデータ評価を参照し,抽出内容を分析対象として包含するかどうかを検討した.
4)生成したコードにおいて,類似するものをさらにグループ化し,共通する意味内容を一文で示し,カテゴリーとした.
5. 結果の信用性の確保文献の選定およびデータ評価のプロセスは,2名の研究者が独立して実施し,結果が異なる場合は2名で討議を重ねて最終結果を導いた.データ分析は筆頭著者が独立して行い,その過程と結果について質的研究経験が豊富な研究者がピアディブリーフィングを実施し,厳密性を確保した.
公表された資料を対象とし,著作権に配慮して使用した.
文献選定のフローチャートを図1に示す.

分析対象文献は39件であり(表2),その内訳は,質的研究10件,量的研究8件,混合研究4件,総説・レビュー10件,解説7件であった.質的研究,量的研究,混合研究の研究実施国は,インドネシア(1件),オーストラリア(1件),カナダ(3件),タイ(1件),台湾(1件),トルコ(2件),日本(3件),ノルウェー(1件),フィンランド(1件),米国(4件),マレーシア(1件),不明(1件)であった.調査対象は,看護師を含む医療専門職であるもの9件,うち看護師のみを対象としているもの5件,患者を対象としているもの13件であった.総説・レビュー10件はすべて英語論文を対象とした英語文献であった.解説の7件うち日本語文献が3件であった.書籍は選定されなかった.各文献から抽出した内容において,相反する内容はなかった.
| 文献番号 | 著者(発行年) | 国名 | タイトル | 研究デザイン または 論文種別 |
掲載誌 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Fletcher(1992) | 米国 | Unconventional cancer treatments: Professional, legal, and ethical issues | 解説 | Oncol. Nurs. Forum, 19(9), 1351–1354. |
| 2 | Montbriand(1993) | Freedom of Choice: An Issue Concerning Alternate Therapies Chosen by Patients With Cancer | 総説 | Oncol. Nurs. Forum, 20(8), 1195–1201. | |
| 3 | Montbriand(1994) | An overview of alternate therapies chosen by patients with cancer | 総説 | Oncol. Nurs. Forum, 21(9), 1547–1554. | |
| 4 | Fitch et al.(1999) | カナダ | Oncology nurses’ perspectives on unconventional therapies | 質的研究 | Cancer Nurs., 22(1), 90–96. |
| 5 | 伊藤ら(2000) | 日本 | 代替的治療を取り入れているがん患者の期待 | 質的研究 | がん看護,5(4), 326–334. |
| 6 | Montbriand(2000) | カナダ | Alternative therapies: Health professionals’ attitudes | 混合研究 | Can. Nurse, 96(3), 22–26. |
| 7 | Marshall(2001) | 米国 | Alternative and complementary therapies among cancer patients: Nursing considerations | 解説 | Kans Nurse, 76(3), 1–8. |
| 8 | Salmenperä et al.(2001) | フィンランド | Attitudes of patients with breast and prostate cancer toward complementary therapies in Finland | 量的研究 | Cancer Nurs., 24(4), 328–334. |
| 9 | Whitman(2001) | 米国 | Understanding the Perceived Need for Complementary and Alternative Nutraceuticals: Lifestyle Issues | 解説 | Clin. J. Oncol. Nur., 5(5), 190–221. |
| 10 | Fitch et al.(2002) | カナダ | Oncology nurses’ experiences regarding patients’ use of complementary and alternative therapies | 質的研究 | Can. Oncol. Nurs. J., 12(1), 20–33. |
| 11 | Canales & Geller(2003) | 米国 | Surviving breast cancer: The role of complementary therapies | 質的研究 | Fam. Community Health, 26(1), 11–24. |
| 12 | Gözüm et al.(2003) | トルコ | Complementary alternative treatments used by patients with cancer in eastern Turkey | 量的研究 | Cancer Nurs., 26(3), 230–236. |
| 13 | 西崎ら(2004) | 日本 | 医師から勧められた治療を受けないことを自己決定したがん患者の体験 | 質的研究 | 川崎看短大紀,9(1), 19–23. |
| 14 | Owens & Dirksen(2004) | Review and critique of the literature of complementary and alternative therapy use among Hispanic/Latino women with breast cancer | 総説 | Clin. J. Oncol. Nur., 8(2), 151–156. | |
| 15 | Fouladbakhsh et al.(2005) | 米国 | Predictors of use of complementary and alternative therapies among patients with cancer | 量的研究 | Oncol. Nurs. Forum., 32(6), 1115–1122. |
| 16 | Lee(2005) | Communicating facts and knowledge in cancer complementary and alternative medicine | 総説 | Semin. Oncol. Nurs., 21(3), 201–214. | |
| 17 | Chong(2006) | 米国 | An integrative approach to addressing clinical issues in complementary and alternative medicine in an outpatient oncology center | 解説 | Clin. J. Oncol. Nur., 10(1), 83–91. |
| 18 | 鳴井ら(2006) | 日本 | がん患者の代替療法に対する看護職者の認識 | 混合研究 | 青森保健大誌,7(2), 177–186. |
| 19 | Wang & Yates(2006) | オーストラリア | Nurses’ responses to people with cancer who use complementary and alternative medicine | 質的研究 | Int. J. Nurs. Pract., 12(5), 288–294. |
| 20 | Jones et al.(2007) | 米国 | Complementary and alternative medicine modality use and beliefs among African American prostate cancer survivors | 混合研究 | Oncol. Nurs. Forum, 34(2), 359–364. |
| 21 | Eschiti(2008) | 米国 | A model of CAM use by women with female-specific cancers | 量的研究 | J. Psychosoc. Nurs. Ment. Health Serv., 46(12), 50–57. |
| 22 | Malak et al.(2009) | トルコ | Complementary and alternative medicine in cancer patients - analysis of influencing factors in Turkey | 量的研究 | Asian Pac. J. Cancer. Prev., 10(6), 1083–1087. |
| 23 | Bell(2010) | A Review of Complementary and Alternative Medicine Practices Among Cancer Survivors | 総説 | Clin. J. Oncol. Nurs., 14(3), 365–370. | |
| 24 | Wanchai et al.(2010) | Complementary and alternative medicine use among women with breast cancer: A systematic review | システマティックレビュー | Clin. J. Oncol. Nur., 14(4), E45–55. | |
| 25 | Wanchai et al.(2012) | タイ | Performance care practices in complementary and alternative medicine by Thai breast cancer survivors: An ethnonursing study | 質的研究 | University of Missouri - Columbia, (Ph.D.) |
| 26 | 本谷・藤村(2013) | 日本 | がん患者の補完代替療法に関する看護師の経験と困難 | 混合研究 | 日がん看会誌,27(1), 31–42. |
| 27 | 佐久間(2013) | 日本 | 化学療法中の患者ががんが治癒するというサプリメントを使用したいと訴えるケース | 解説 | Oncology Nurse, 7(1), 3–9. |
| 28 | Wang et al.(2016) | 台湾 | Health care professionals’ interactions with cancer patients who use complementary and alternative medicine in Taiwan | 質的研究 | Collegian, 23(2), 209–216. |
| 29 | Stub et al.(2017) | ノルウェー | Complementary and conventional providers in cancer care: Experience of communication with patients and steps to improve communication with other providers | 量的研究 | BMC Complement. Altern. Med., 17, 1–14. |
| 30 | Wanchai et al.(2017) | Complementary Health Approaches: Overcoming barriers to open communication during cancer therapy | 総説 | Clin. J. Oncol. Nur., 21(6), E287–E291. | |
| 31 | Chui et al.(2018) | マレーシア | Complementary and Alternative Medicine Use and Symptom Burden in Women Undergoing Chemotherapy for Breast Cancer in Malaysia | 量的研究 | Cancer Nurs., 41(3), 189–199. |
| 32 | 立場(2018) | 日本 | 医療者が勧めないエビデンスの乏しい「医療」を希望するケース | 解説 | エンドオブライフケア,2(2), 14–19. |
| 33 | 海津(2019) | 日本 | 「〇〇医療ってどうですか?」と聞かれて,患者・家族と相談できるようになるために 看護師の立場から | 解説 | 緩和ケア,29(6月増刊), 162–165. |
| 34 | 楠ら(2020) | 日本 | 看護師,医師,薬剤師によるがん患者への補完・代替療法利用支援 | 質的研究 | 千葉看会誌,26(1), 49–57. |
| 35 | Balneaves et al.(2022) | Addressing Complementary and Alternative Medicine Use Among Individuals With Cancer: An Integrative Review and Clinical Practice Guideline | レビュー | J. Natl. Cancer Inst., 114(1), 25–37. | |
| 36 | Witt et al.(2022) | Education Competencies for Integrative Oncology-Results of a Systematic Review and an International and Interprofessional Consensus Procedure | システマティックレビュー | J. Cancer Educ., 37(3), 499–507. | |
| 37 | Akkuş & Menekli(2023) | 明記なし | Determining the Relationship Between Intolerance of Uncertainty and Attitudes Toward Complementary and Alternative Medicine in Patients With Cancer | 量的研究 | Holist. Nurs. Pract., 37(5), 277–284. |
| 38 | Ben-Arye et al.(2024) | Cross-Cultural Patient Counseling and Communication in the Integrative Medicine Setting: Respecting the Patient’s Health Belief Model of Care | 総説 | Curr. Psychiatry Rep., 26(8), 422–434. | |
| 39 | Christina et al.(2024) | インドネシア | Women’s Lived Experiences in the Use of Complementary and Alternative Medicine for Breast Cancer Management: A Phenomenological Study | 質的研究 | J. Holist. Nurs., 8980101241277680. |
※論文種別については,データベースの記載を参考に,本文を確認し,研究者が判断した.
知識について,抜き出されたデータは26あり,分析の結果,9つのコード,5つのカテゴリーに集約された.カテゴリーは,【健康や医療,がん全般に関わる基礎知識】,【薬理作用や歴史を含むCAMに関する基礎知識】,【がんおよびがん治療による症状管理に活用されるCAMの種類】,【エビデンスに基づくCAM情報の取得手段】,【CAM利用に影響する身体・心理・社会的特性】であった.知識として統合された結果は,一般的な健康や医療の知識を含む,がんそのもの,がん患者が経験する症状,従来医療や従来医療による影響等,ベーシックな看護およびがん看護に必要な内容と,CAMの薬理作用や歴史の基礎知識,がんやがん治療による症状管理に適用可能なCAM,CAM利用者の特性といったCAMに関する専門的な知識を含んだ.
| カテゴリー | コード | 抽出データの例 | 文献番号 |
|---|---|---|---|
| 健康や医療,がん全般に関わる基礎知識 | 一般的ながんの病因,症状,経過,治療について説明できる | 主要ながん治療法(手術,化学療法,放射線療法,内分泌療法,生物学的療法)への理解がある. | 36 |
| 一般的ながん治療による身体的,心理社会的影響について説明できる | がん治療の一般的な副作用を知っている. | 36 | |
| 薬理作用や歴史を含むCAMに関する基礎知識 | 一般的なCAMの歴史やそれらが基づく理論,人体への作用機序が説明できる | 一般的なCAMの歴史,理論,およびメカニズムの基本の理解がある. | 36 |
| 生薬を含む一般的なCAMの安全性や有効性,従来医療との相互作用の可能性が説明できる | 他の薬剤と同様に,ハーブも副作用,アレルギー反応,過剰摂取,毒性を引き起こす可能性があるため,ハーブ療法の有効性,投与量,副作用,毒性,および潜在的な薬物相互作用を認識しておく必要がある. | 12, 30, 36 | |
| がんおよびがん治療による症状管理に活用されるCAMの種類 | 多くのがん患者が利用する特定のCAMについて説明できる | その集団で使用される一般的なCAMモダリティに関する知識が必要. | 9, 20 |
| がんや化学療法にともなう症状を緩和する可能性のあるCAMについて説明できる | 従来の医学の進歩と同様に,がんや化学療法に関連する症状の管理に役立つ可能性のある新しい CAM 臨床試験の結果,支持療法介入,およびエビデンスに基づく手法について常に最新情報を把握しておく必要がある. | 31 | |
| エビデンスに基づく CAM情報の取得手段 |
CAMに関するエビデンスに基づいた情報を得る手段について説明できる | CAMに関する科学文献へのアクセス方法と評価方法を知っている. | 36 |
| CAM提供者やCAMにかかる費用に関する情報を得る手段について説明できる | サービス/プロバイダーの品質保証,ライセンス政府規制,およびCAMの償還に関する情報を取得するための知識を持っている. | 36 | |
| CAM利用に影響する身体・心理・社会的特性 | CAMを利用する可能性が高い個人やがんの特性について説明できる | 乳がん患者に好まれるCAMとそのCAMが,がんや化学療法に関連する症状の負担に関連してどのように使用されているかを理解する. | 15, 21, 23, 31, 36, 37, 38 |
スキルについて,抜き出されたデータは144あり,分析の結果,45のコード,11のカテゴリーに集約された.カテゴリーは,【自身の保有するCAM知見の精査と情報更新力】,【CAMに関する十分かつ患者に調和した情報提供】,【患者のCAMリテラシーの強化】,【患者の健康の現状や目標とされる健康状態に基づくCAM利用状況の評価】,【CAMを利用する患者の安全安楽の保障】,【従来医療者との協働における安全なCAM利用に向けた患者教育力】,【CAMに関する利用状況や思いを十分に引き出せるコミュニケーション力】,【患者と周囲の人々とのCAMに関する対話促進力】,【多職種との連携協働力】,【CAM実施や選択に関わる意思決定支援】,【CAM関連の記録と保存】であった.スキルとして統合された結果は,一般的ながん看護においても重要とされるアセスメント等に加え,CAMに自ら取り組む患者への看護ならではの内容が含まれた.
| カテゴリー | コード | 抽出データの例 | 文献番号 |
|---|---|---|---|
| 自身の保有するCAM知見の精査と情報更新力 | CAMに関する自身の知識レベルを評価できる | CAMに関する自分自身の知識の不足を特定する. | 35, 36 |
| CAMに関する信頼性の高い情報源を特定できる | 信頼できる科学的な研究や観察に基づいた情報を含む,CAMに関する信頼できる参考文献を入手する. | 12, 16, 17, 27 | |
| CAMに関する情報を収集できる | 特定の治療法に詳しくない場合,患者と一緒に治療法を調べる. | 10, 26, 34 | |
| CAMに関する情報を随時更新できる | CAM の評価の指針として使用できる,CAM 分野の現在の開発と傾向を常に把握しておく. | 31, 36 | |
| CAMに関する十分かつ患者に調和した情報提供 | エビデンスに基づくCAM情報を偏りなく提供できる | CAM療法に関するエビデンスは,考えられるリスクを含め,治療法について知られていることとまだ知られていないことを認め,偏りのない方法で提示する. | 9, 12, 22, 35, 36 |
| CAMと薬物を併用するリスクについて情報を提供できる | CAMと薬物の相互作用を意識し,リスクについて患者に通知する. | 22 | |
| 患者のニーズを特定し,ニーズに基づいた情報を提供できる | CAMに関する個人の情報ニーズを特定し,CAMとがんに関する知識を深めるために,彼らとその家族を支援する. | 7, 35 | |
| 正しい情報が得られるCAMの信頼性の高い情報源を提示できる | 患者にCAMの信頼できる情報源を提供する. | 3, 30, 36 | |
| CAMに関して患者の入手した情報が理解されているかを評価できる | CAM使用の潜在的な利点とリスクなど,提供された情報を個人が理解していることを確認する. | 4, 35 | |
| 患者のCAMリテラシーの強化 | 患者が十分にCAM情報を入手できるよう寄り添って支援することができる | 効果が実証されている特定の治療法に関する追加情報や紹介を患者が検索するのを支援する. | 27 |
| CAMに関して患者が入手した情報を評価し整理するのを助けることができる | 看護師は補完療法や代替療法の検討に関する一般原則について会話に参加し,患者が特定の治療法について読んでいる内容を評価する方法を学ぶ手助けをする. | 4, 10, 13, 35, 36 | |
| CAMには不確かな部分が多くあることを患者に説明できる | CAM(ハーブなど)が「自然」であるからといって,それが常に安全であるとは限らないこと,そして患者は経口摂取するCAM製品のラベルを読まなければならないことを説明する. | 20, 26 | |
| 患者の健康の現状や目標とされる健康状態に基づくCAM利用状況の評価 | がんとその治療に影響を受ける健康状態とセルフケアをアセスメントできる | 患者のがん歴に関する重要な情報(がんの種類,以前の治療の種類,現在の病期,および現在の治療)を取得できる. | 9, 31, 36 |
| 患者のCAM利用状況を特定できる(利用の有無,今後の利用計画,種類,用量,頻度等) | 治療の種類,用量,使用頻度など,個人のCAMの使用を評価する. | 4, 7, 12, 14, 15, 17, 19, 24, 25, 30, 34, 35, 36, 38, 39 | |
| CAM利用の動機や背景,目的を多様な側面から把握できる | 患者が特定の療法に興味を持っている理由と,その療法で何を達成できると患者が期待しているかを理解する. | 10, 28, 35, 36 | |
| がんの経過全体を通してCAM利用を継続的にアセスメントできる | がんの経過全体を通じて,リスク要因と教育,紹介,またはCAMの意思決定支援の必要性を特定する. | 35 | |
| CAMを利用する患者の安全安楽の保障 | 安全安楽な方法でCAM実施を支援できる | 患者のCAM実施を助けるときは,害がなく効果が得られるよう注意深く行う. | 34 |
| 音楽療法や芸術療法等,身体に害を及ぼさないより安全な方法を患者に提案できる | 必要に応じて,視覚化や認知および気晴らし戦略などの安全なCAMの使用を促す. | 3, 36 | |
| CAM利用によって安全安楽が脅かされていないかを継続的に評価できる | CAMによって影響が示唆される適切な血液データを監視する. | 3, 13, 18, 35 | |
| 従来医療者との協働における安全なCAM利用に向けた患者教育力 | CAM利用の開示を患者に奨励できる | 潜在的な副作用を回避するためにCAMが使用されているかどうかを医療提供者に伝えることの重要性など,CAMの使用に関連する重要な問題を説明する. | 3, 9, 20, 24, 39 |
| 標準治療継続の意義とCAMの補完的利用の位置づけについて患者に説明できる | CAMの使用は,エビデンスに基づいた,安全なものであり,治療効果を危険にさらさないものであるべきであるという期待を共有する. | 3, 17, 38 | |
| CAM利用による有害事象の報告を患者に奨励できる | CAMによる顕著な副作用が発生した場合は,製品の服用を中止し,医療提供者に通知するように患者に指示する. | 17, 20 | |
| CAMに関する利用状況や思いを十分に引き出せるコミュニケーション力 | コミュニケーションを取りやすい環境調整や関係形成ができる | CAM に関するオープンで有意義な議論を奨励し,患者の視点,文化的,心理社会的,感情的な幸福,および治療の選択を尊重する環境を作り出す. | 17, 27 |
| 偏見のない共感的でオープンな対話ができる | CAMについて,がん患者とその家族と敬意を持って偏見なくコミュニケーションを取り,個人の信念,価値観,好みを認める. | 3, 8, 10, 12, 15, 19, 24, 28, 35, 36, 38 | |
| 患者の思いに配慮した積極的な傾聴技術が適用できる | CAM の使用に関する効果的なコミュニケーションには,傾聴,希望の励まし,共感と思いやりを伝える能力などの特定のスキルが必要である. | 2, 9, 30 | |
| 適切な専門用語や偏見のない言葉を使用して対話ができる | 適切な医学用語を使用できる. | 35, 36 | |
| CAMによるリスクや問題について率直に話し合うことができる | CAMの実施に伴う潜在的な危険や問題は,率直に話し合う. | 4, 11 | |
| がんの経過全体においてCAMに関するコミュニケーションを継続できる | がんサバイバーが,いつでも,何らかの理由でCAMの使用に関する意思決定を変更する可能性があるため,CAMの使用についての会話は,がんの軌跡全体を通じて行う. | 25, 35 | |
| 患者と周囲の人々とのCAMに関する対話促進力 | 主治医とCAMに関する話し合いができるよう患者を励ますことができる | がんサバイバーがCAMについて医師自身と話し合ったり,質問をしたりして,積極的に行動するよう促す. | 7, 25, 34 |
| 患者・医師間でCAMに関する対話ができるように時間や場を意識して設けることができる | がんサバイバーが医師と対話し,経験を共有するための時間を提供する. | 25 | |
| CAMを利用している(利用したい)患者の全体像が理解できる看護の機能を活かし,コミュニケーションリンクとなることができる | アドボケーターとして患者の気持ちを理解し,患者と医師をつなぐ調整役となる. | 18, 29, 33, 34 | |
| 患者・家族間でCAM利用に関する意思が統一されるよう働きかけられる | CAMの利用について家族間で意思が統一できるようコミュニケーションを促し見守る. | 34 | |
| 多職種との連携協働力 | 多職種チームの一員として活動できる | 専門職チームの一員として活動できる. | 36 |
| 患者のCAM利用の特定を多職種と協働して行える | 薬剤師と協力し患者が利用しているCAMを把握する. | 34 | |
| 患者のCAM教育を多職種と協働して行える | 患者の教育において重要な役割を果たす薬剤師を含む医療チームと協力する. | 7 | |
| 患者のCAM利用状況を多職種間で共有できる | 患者が利用しているCAMについては記録して医師・薬剤師と共有する. | 34 | |
| CAMに関する課題解決を看護師個人ではなく医療チームにおいて試みることができる | CAMの経験の中で困難を感じた場合には,看護師1人で抱え込まずに医師や薬剤師を含めたスタッフ間で内容を共有し話し合う. | 34, 26 | |
| 多職種チームメンバー間でコミュニケーションを十分に図り,互いのCAMに対する態度を理解することができる | 専門職は,CAMに対する互いの態度をよりよく理解する. | 6, 10 | |
| CAMに関する他の専門職の強みを理解し,患者を適切なサービスに紹介することができる | 栄養士や薬剤師などの適切な医療提供者に紹介する. | 9, 30, 35 | |
| CAM実施や選択に関わる意思決定支援 | CAM実施や選択に向け,患者の希望を十分に勘案できる | CAMを試したいという乳がん女性の希望を受け入れ,利用可能な多くの選択肢を選別するのを支援する. | 11, 34 |
| 意思決定支援を困難にしている倫理的ジレンマに対処できる | 状況を分析し,倫理的な視点からジレンマを識別する. | 27 | |
| 多様な人的・情報資源を動員して意思決定を支援できる | 倫理的な問題には個人ではなく看護チームで意見を出し合い様々な側面からその事例を考える. | 34, 35 | |
| CAM関連の記録と保存 | 患者が利用しているCAMの内容や用量,頻度を記録できる | 患者によるCAMの使用は,看護師によって評価され十分に文書化されるべきである. | 9, 35, 39 |
| CAM利用に関する医療専門職の説明内容と患者との話し合いの内容,および患者の反応を記録できる | リスクとベネフィットの両方について提示された客観的なデータを注意深く文書化する. | 7, 35, 36 | |
| CAM利用支援に関する今後の方針を記録できる | 個人のCAMのモニタリングの必要性の認識,およびフォローアップ計画の評価を文書化する. | 35 |
態度・価値観について,抜き出されたデータは26あり,分析の結果,7つのコード,4つのカテゴリーに集約された.カテゴリーは,【CAMに対する患者の価値観と希望の尊重】,【CAMに関する自己の価値観と能力の受けとめ】,【CAMやCAM利用者に対する開かれた姿勢】,【患者の療養環境を守る擁護者としての志向】であった.態度・価値観として統合された結果は,患者の価値観や希望の尊重,自己の価値観や能力の受けとめ,開かれた姿勢,擁護等,自身の価値観を超えて,どこまでも患者中心であろうとする医療専門職における態度・価値観の原点とも言うべき内容であった.
| カテゴリー | コード | 抽出データの例 | 文献番号 |
|---|---|---|---|
| 健康や人生,CAMに対する患者の価値観と希望の尊重 | CAM利用の根底にある患者のありのままの思いを受けとめられる | 患者が残された人生をどう生きるか患者の希望や信念に基づいて患者が自己決定できるよう,CAMを取り入れようとする,あるいは実施する患者・家族の思いをありのままに受け入れようとする姿勢を示す. | 7, 18, 26, 32, 34, 36 |
| CAMに対する患者の希望を尊重できる | 患者の自分の人生に関して独立した意思決定を行う権利を完全に尊重する. | 8, 9, 18, 34, 36 | |
| CAMに関する自己の価値観と能力の受けとめ | CAMに対する自身の価値観を認識できる | 患者と家族が自身の価値観と信念を明確にするために,看護師は自身の価値観を認識し,明確にし,自分の価値観をクライアントに押し付けない. | 1, 5, 38 |
| CAMに関する自身の対応能力の限界を認識し,能力の向上を試みる | 看護師は,敬意を払い,心を広く持ち,耳を傾け,CAMに関する自身の知識の限界について正直である必要がある. | 12, 19, 30, 34, 36 | |
| CAMやCAM利用者に対する開かれた姿勢 | CAMやCAM利用者に対する偏見のない共感的で開かれた態度を保てる | 患者が自分の意見や考えが尊重されていると安心できるように,偏見のない態度を示す. | 2, 19, 28, 36 |
| 患者の療養環境を守る擁護者としての志向 | 信頼関係を確立し,患者との治療パートナーシップを形成することができる | 信頼関係を確立し,患者との治療パートナーシップを形成する. | 36 |
| 患者がどのような治療選択を行ったとしても,主治医不在にならない療養体制をコーディネイトしようと試みる | 患者がどのような治療選択を行ったとしても,主治医不在にならない療養体制になるよう目を配る. | 33 |
本レビューの対象となった文献には,多様な国々で実施,執筆された各種研究デザインによる研究論文や解説が含まれた.研究実施国として,ヨーロッパ,北米,オセアニア,アジア,中東の国々が含まれた.総説とレビューはすべて英語文献で,欧米を研究実施国とする研究論文や欧米で発刊されたリソースを対象とした文献であり,一部がヒスパニック/ラテン系民族に限定したデータを扱っていた.解説のうち約半数が日本語文献だった.このことから本研究結果は,様々な医療事情を抱えた国や地域のデータを広く網羅した結果と言える.CAMの適切な利用をめぐっては,国の保険制度や医療費政策の動向が影響を及ぼす可能性がある.しかし,本研究では,医療者主導のCAMの積極的使用ではなく,患者が自らCAMを選び適用しようとするときに懸念される看護上の課題に焦点をあて,文献を選定した.そのため,対象文献の地域は多岐にわたったが,抽出されたデータは,看護の場の社会文化的背景によらず,CAMを利用する患者のQOL向上を優先する変わりのない本質を有し,普遍的な結果として統合された.以下に,CAMに取り組むがん患者の看護に必要な知識,スキル,態度・価値観の特徴を検討し,効果的な看護実践を導くコア・コンピテンシーへの示唆を得る.
1. CAMに取り組むがん患者の看護に必要な知識の特徴知識として統合された結果から,疾患,治療,患者を理解するためのがん医療における基本的知識,ならびにCAMに取り組むがん患者への関わりに必要な特異的知識がいずれも必要であることが考えられた.CAMの薬理作用や歴史,症状管理に適用可能なCAM,CAM利用者の特性といったCAMに関する専門的な知識は,看護基礎教育ならびに継続教育における現行のカリキュラムに含まれる内容ではない.それら知識を得るには,看護師自らがリソースを探さなければならない.専門職のCAMに関する学習機会は限られ(Kusunoki et al., 2023),患者ケアの最適化を目的とするCAMガイドラインの作成も困難である(日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン委員会,2016)ことから,適切な情報取得を可能とする手段がコアな知識として含まれていると考えた.
患者が自らCAMを選択し,利用しようとしている状況においては特に,【CAM利用に影響する身体・心理・社会的特性】が必要となる知識であると考えた.それは,患者が有するCAMへの関心の予測,CAMを利用している患者のスクリーニングに活用できるためである.CAM利用を開示しない患者が多い(Hyodo et al., 2005;Jazieh et al., 2021)現状において,有用な知識であると考える.
2. CAMに取り組むがん患者の看護に必要なスキルの特徴スキルとして統合された11のカテゴリーには,CAMを自ら選択し利用する患者への看護に必要なスキルであるが,一般的ながん看護にも必要なスキル,看護技術としてCAMを看護師が提供する場合にも必要なスキルも含まれた.以下に,CAMを自ら選択し利用する患者への看護に必要な,特徴的なカテゴリーを取り上げ,考察する.
【CAMに関する十分かつ患者に調和した情報提供】,【患者のCAMリテラシーの強化】は,情報活用に関するスキルと考えられた.インターネット等による医療関連情報を含む情報流通が加速している時代(総務省,2025)において,患者は専門職の支援なしに正確な情報を得ることが難しい.CAMを利用する患者の看護においては特に,看護師の情報提供力や患者のリテラシー強化は欠かせない.がんという悪性疾患を有する患者の弱みに付け込んだ悪質なCAM情報の流通も多いことから,より一層情報活用に関するスキルの重要性が強調される.
【CAMに関する利用状況や思いを十分に引き出せるコミュニケーション力】においては,効果的なコミュニケーションに向けた環境調整や関係形成,偏見のない率直な対話,積極的な傾聴,適切な専門用語の選択等,細やかな配慮を伴う多くの内容が示された.特に利用開示に消極的な患者が多いとされるCAM関連の話題は,看護師が率先して患者とコミュニケーションを開始する必要があるため(Wanchai, 2012),このようなスキルをより意識し獲得することが不可欠である.【患者と周囲の人々とのCAMに関する対話促進力】においては,主治医との話し合いの促しや対話の場や時間のセッティング,家族間での意思統一への働きかけ,看護の機能を活かしてコミュニケーションリンクになること等が示され,コミュニケーションが滞りがちなCAMの話題(Owens & Dirksen, 2004)においては特に有用なスキルであると考えた.
【従来医療者との協働における安全なCAM利用に向けた患者教育力】は安全保障に関するスキルと考えられ,CAMの利用場面に医療専門職が直接的に関与し,安全安楽を確保するだけでなく,患者自らが安全なCAM利用を志向できるように患者を指導することの重要性が示された.現時点でがん疾患そのものを治癒,寛解する有効性のあるCAMはなく,がんや治療による症状緩和に有効なCAMも限られると同時に,潜在的なリスクのあるCAMは多数ある(厚生労働省,2025).したがって,医療専門職の責任においては有効性以上に安全性に留意する必要が生じる.患者の安全に寄与するためには,CAM利用時の直接的関与のみならず,CAM利用の開示を促し,がん治療におけるCAMの位置づけを教育し,医療専門職をうまく活用してもらえるような土壌をつくることが重要であると考える.
【CAM実施や選択に関わる意思決定支援】に含まれる内容は,CAMの選択に向けた患者の希望の尊重,善行と自律性の尊重が葛藤する倫理的ジレンマ(鴇田,2019)に気付き対処すること,多様な人的・物的資源の動員,であった.意思決定に向け,CAMのエビデンスの確認や的確なフィジカルアセスメントに加え,患者がそのようなCAMを希望する根底にある背景を把握することや,多様な側面から検討することの重要性が示された.清水・伊坂(2005)は,双方向の情報の流れの結果として医療者と患者とが情報を共有することが,当該患者個人にとって何が最善かを考え選ぶことを合意するために必要な前提となり,特に益と害が多次元的かつ不確定であるときは患者の選好を知ることで倫理原則間のバランスをとることが可能となる,としている.エビデンスが十分に確立していないCAMを検討するときは特に,利用する患者自身の考えをよく把握することが重要であるといえる.ナラティブとエビデンスのバランスのとれたすり合わせによって当該CAM利用の是非を,患者とともに判断していく支援が求められると考える.
3. CAMに取り組むがん患者の看護に必要な態度・価値観の特徴態度・価値観として統合された結果から,世界的に多くのがん患者がCAMを利用している(Kallman et al., 2023;Kim et al., 2023)状況において,自身の価値観に関わらずCAMやCAM利用者を偏見なく受けとめる資質を発展させる必要性が示唆された.これはCAM利用者に対してのみ必要な態度・価値観ではないが,従来医療等へのアンメットニーズを抱えている可能性が高いCAM利用者に対しては,より一層必要になると考える.擁護者としての志向は,全人的な視点を有し,個に寄り添える専門職である看護職が特に発揮すべき態度・価値観であると考えられた.
4. 効果的な看護実践を導くコア・コンピテンシーへの示唆明らかにされた知識,スキル,態度・価値観には,疾患や治療の基本的知識やアセスメント,多職種連携等,一般的ながん看護と共通する内容や,CAMの知識,情報更新力等,看護師が主導してCAMを患者に提供する場合にも必要な内容が含まれると同時に,CAMを自ら選択し,取り組んでいる患者の看護に固有の内容が示された.それは,CAMを利用している患者の価値観を尊重し,開かれた姿勢と,注意深いコミュニケーションによって患者の心理・社会的状況を把握し,患者の目標を達成するための意思決定をともに行っていく能動的な力である.しかし,これらの力を発揮する前提には,CAMに関する看護師のリテラシーが必須である.先行研究において,CAMの知識を獲得することが医療専門職にとって最重要課題であるとされているが,ほとんどの医療専門職は,CAMに関する教育を受けた経験がなく,基本的な知識や情報更新方法を持たないことが示されている(Admi et al., 2017;Ben-Arye et al., 2017;Rojas-Cooley & Grant, 2006).知識不足は,患者との積極的な関わりを阻害する(Kumbamu et al., 2018;Yang et al., 2017).したがって,CAMに取り組むがん患者への看護におけるコア・コンピテンシーは,看護師のCAMリテラシー向上と必要に応じた学習志向を踏まえた看護師・患者関係の積極的構築,ならびにこれまでに培ってきたがん看護における態度やスキルの十分な発揮によって,患者の目標達成を可能とする力として特徴づけられ,示される必要がある.
5. 本研究の限界本研究の結果は,看護の対象となるがん患者の病期や治療,療養の場等を限定しない検索結果に基づいており,それぞれに特徴的に必要な知識,スキル,態度・価値観を特定できる結果ではない.今後は,患者の病状や治療の段階等をより限定した調査を行い,患者の状態や看護の場にあわせた構成要素の特徴を示す必要がある.また,研究背景や研究目的によりintegrative reviewという方法を採用したため,質が担保された文献のみを対象とした結果ではない.今後は当該分野における質の高い研究成果を積み重ねていくことが必要である.しかしながら本研究は,あらゆる状態にあるがん患者を前提に,様々な医療事情を抱えた国や地域の知見を広く網羅した結果であり,CAMに取り組むがん患者への普遍的な看護実践の発展に資するものであると考える.
CAMに取り組むがん患者の看護におけるコア・コンピテンシーの構成要素をintegrative reviewによって抽出,統合し,明らかにした.ベーシックながん看護に加え,看護師自身がCAMへの理解を深め,看護師・患者関係をより積極的に構築していくことが,効果的な看護に必要であると考察された.今後は,本研究結果に示された看護に必要な内的リソースの特徴を考慮し,CAMに関する知識獲得および,看護師・患者関係の構築と活用を基軸としたコア・コンピテンシーを明示していくことが求められる.
謝辞:本研究はJSPS科研費21K10541の助成を受けて実施した研究の一部である.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:楠潤子は研究と原稿作成の全過程を実施;山﨑由利亜は文献の採用・評価,内容の抽出への助言,原稿作成の全過程への助言;田代理沙は文献の採用・評価,原稿作成の全過程への助言;増島麻里子は分析方法・過程・結果の確認,原稿作成への示唆.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.