Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Effectiveness of Role Lettering on Mothers Raising Their First Infant in the First Year of Life: A Randomized Controlled Trial
Kinuyo Sakaeda, Naomi Sasaki
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2025 Volume 45 Pages 927-938

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Abstract

目的:ロールレタリング(以下,RL)による,母親の対児への気持ち,育児不安,自尊感情への効果を検証することである.

方法:0歳児の第一子育児中母親に対しRL 3回の実施群14名と対照群12名の無作為化比較試験を2023年9月~翌年1月に行った.RLは,母親の自宅等,都合の良い場所,時間に実施した.効果評定の方法として,赤ちゃんへの気持ち質問票,育児不安尺度,状態自尊感情尺度を用いた.またRLの記述の変化を検討した.いずれも,統計による検定を行った.

結果:母親の年齢は,実施群30.8歳,対照群33.5歳,児の月齢は実施群6.1か月,対照群4.9か月であった.実施群では,赤ちゃんへの気持ち質問票(p = 0.044),状態自尊感情尺度(p = 0.005)で有意差が認められ,育児不安尺度では有意差はなかった.対照群は全て有意差はなかった.群間の有意差はなかった.RLの記述は,往信の〈7.内省や内言,気づき〉,返信の〈v.異なる視点〉のコードの記述人数に有意差があった.

結論:母親の対児への否定的感情の低下及び状態自尊感情の向上がみられ,RLによる効果の可能性が示唆されたが,群間による有意差がなかったため明確な介入による効果を示すことはできなかった.

Translated Abstract

Purpose: To examine the effects of role lettering (RL) on mothers’ feelings toward their children, parenting anxiety, and self-esteem.

Methods: A randomized controlled trial was conducted from September 2023 to January 2024. Participants included mothers raising their first infant in the first year of life: 14 mothers were in the RL group and 12 in the control group. RLs were completed three times by the intervention group and their efficacy was evaluated with the Japanese version of the Mother-to-Infant Bonding Scale, Scale of Anxiety over Child-Rearing, and the State Self-Esteem Scale. Changes in RL descriptions were also examined and statistically tested.

Results: Mothers had mean ages of 30.8 and 33.5 years in the intervention and control groups, respectively, with children aged 6.1 and 4.9 months on average. Significant differences were found in the intervention group on the Japanese version of the Mother-to-Infant Bonding Scale (p = 0.044) and the State Self-Esteem Scale (p = 0.005), but no significant differences were found on the Scale of Anxiety over Child-Rearing. There were no significant differences between groups. There was a significant difference in the number of RLs describing the codes for <7. reflection, inner speech, and awareness> in outgoing messages and <v. different viewpoint> in reply messages.

Conclusion: Mothers’ negative feelings toward their children decreased and their state self-esteem increased. This suggests a possible effect of RL on these outcomes. However, no significant differences were found between groups, and thus the definitive effect of the intervention could not be demonstrated.

Ⅰ. 緒言

第一子育児中の母親の抱えやすい問題として,育児不安や育児負担がある.育児不安は,早期に出現し(都筑・金川,2001),漫然としており(磯山,2018),不慣れな育児による自信のなさからきている(都筑・金川,2001;磯山,2018).育児負担は,子どもが思い通りにならず,母親自身のことができないことからくる(野原・中田,2019).これらの不安や負担は,第二子以上の育児中の母親よりも有意に高い(都筑・金川,2001;神谷,2021).また,母親の子どもへの気持ちについて,初産婦よりも経産婦の方が子どもに対する肯定感情が高く(福澤・山川,2006;宮良,2021),心の健康度が高い(西出・江守,2011).

児の養育にあたり,母親の肯定的な感情は児にとって最適な養育環境を導き育児スキルを向上させ,長期的な母子関係及び子どもの発達に影響を与える(荒瀧・安田,2019).そのため,母親の児への愛着を高める支援は母親役割への自信に繋がる(田中,2019).また,母親の自尊感情が高い方が母子関係に良好な影響を与え(田所・大塚,2015),子育てヘの肯定感が高いこと(佐藤,2013)から,母親の自尊感情が高いことが,子どもへの肯定的な感情をもたらすことが期待できる.

一方,母子に対する国の取り組みは,母子健康手帳交付時から,支援者である保健師・助産師らが信頼関係を築き,切れ目ない支援を行っていることや,利用者である母親の利用料の軽減など経済的負担を軽減する工夫をするなど,周産期のメンタルヘルスへの対策を着実に進め,成果を挙げている(厚生労働省,2023).しかし,これらは母親自らがアクセスして,事業の場に出向く必要のあるものが中心である.第一子育児中は,子どもの発熱等,急な対応も多く,事業に参加したくてもできないこともあると考えられる.

そこで,母親の好きな時間に活用できる子育て支援の方法を検討する必要があると考え,ロールレタリング(role lettering,以下RL)に着目した.

RLとは,役割交換書簡法ともいわれ,ゲシュタルト療法を元に日本で開発されたものである.その特徴は,自分が自己と他者という両方の視点に立ち,役割を交換して「往信」と「返信」の手紙を書く手法である.「往信」では,自分の気持ちを相手に伝えるように手紙を書き,「返信」では,手紙を相手が読んだと仮定して,相手の立場にたち,自分に向けて手紙を書く(春口,1987).往信も返信もいずれも,自身とのやりとりではあるが,相手の視点に立って自身を見つめることにより,内省を促すとともに,新しい視点から自分をみつめることになる(小林,2007).そのため,自己理解,他者理解を促進する手法として,学校教育(浜口,2014),矯正教育(朴,2021)の現場をはじめ,障害者支援(西岡,2023),子育て中の母親支援(榮田・佐々木,2023a)などに導入されている.また,春口(1995)は,RLの臨床的仮説として,①文章による感情の明確化②自己カウンセリング③カタルシス作用④対決と受容⑤自己と他者,双方からの視点の獲得などを挙げている.

本研究では,0歳児の第一子育児中の母親に,まず「往信」として,0歳児の第一子に向けて手紙を書いてもらい,その子どもが手紙を読んだと仮定して,次に「返信」として,0歳児の第一子の立場になって,母親自身に向けて手紙を書くというRLを行った.榮田・佐々木(2023a)は,生後8か月から13か月児の就園前の第一子育児中6名の母親に対する3回のRL実施後に,母親に対してRLの感想等をインタビューし,RLの効果の構造を明らかにする目的で狭義のKJ法に基づき分析を行っている.その結果,狭義のKJ法では,第一子育児中の母親の特徴である子どもの気持ちがわからずにいることによる不安や自信のなさがある場合,RLを通して,自己と他者である子どもの視点を考えること,自分の感情を吐き出すことによる癒しが得られること,自分と子どもを受容し,育児に自信をもたらすといった可能性が示唆された.

以上のことから,本研究の目的は,RLにより「対児への否定的感情の低下」「育児不安の軽減」「自尊感情の向上」が期待できると考え,無作為化比較試験による,RLの効果を検証することとした.

Ⅱ. 用語の定義

1.対児への否定的感情とは,日本産婦人科医会(2021)を参考に,児に対し「腹立たしい」「こんな子でなかったら」などと表現される怒りや感情と定義する.

2.育児不安とは,牧野(1982)を参考に,子の現状や将来あるいは育児に対する漫然とした恐れを含む情緒の状態と定義する.

3.自尊感情とは,Rosenberg(1965)が他者との比較ではなく,自身で自己への尊重や価値を評価する程度を自尊感情と述べており,それを本研究の定義とする.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究デザイン

CONSORT2010ガイドライン(Kenneth et al., 2010)によるRL実施群と対照群の無作為化比較試験(付録1).

図1に概念枠組みと仮説を示した.仮説は,RL実施により,仮説1.対児への否定的感情の低下,仮説2.育児不安の軽減,仮説3.自尊感情の向上を挙げた.

図1  研究概念枠組みと仮説

2. サンプルサイズ

サンプルサイズの計算には,検定力分析ソフトウェア(G*power3)を用い,効果量0.25,検出力80%,有意水準5%の条件で計算した結果24名が算出された.0歳児育児中の母親を対象としたため,中断の可能性を鑑み30名(各15名)とした.

3. 調査時期

2023年9月~2024年1月であった.

4. 研究対象者の募集

研究対象者は,調査期間中に子どもが0歳であり,第一子育児中である母親とし,A県B市の子育てサロンや産前産後サポートセンター,C市の4か月児健診会場にて施設の協力を得て参加者の募集を行った.このうち,母親及び児が病気・障害等を有する者は,母親や子どもへの実施中の負担を考慮し,募集案内時点で除外した.研究者が,エクセルのRAND関数を用いて,無作為に2群に割り付けた.

5. 本研究における実施方法

1) RLの実施方法

RLは,対象者である母親が,実際には投函しない往復書簡を書くものである.[往信]では,母親から子どもへ手紙を書き,[返信]ではその手紙を子どもが読んだと仮定して,子どもの立場に立って母親である自分自身に向けて手紙を書くものである.実際の相手とは手紙のやりとりを行わないというRLの性質上,妊娠初期から後期にかけて胎児とのRLでは母子の関係性の成熟(清田ら,2013)や,死者とのRLでは死別の喪失感や後悔などの感情の表現と整理(畑中,2021)などが報告されている.

RLの回数は,先行研究(井頭,2007;清田ら,2013)から3回とした.この往復書簡を約2週間ごとに,計3回,対象者の自宅等の好きな場所,時間に実施することとした.RLの実施上の留意点として,体裁などを気にせず,自分の言葉で,書きたいように書きたいだけ書くことを教示した.また,何を書いたらよいかわからない場合は,印象に残った出来事を想起し,感じたことや考えたことを書いたら良いことを伝えた.RL実施群には,RL実施回ごとに記載した往復書簡と上記の調査内容の①~③を,対照群には,調査内容の①~③を約2週間ごとに,研究者に郵送するように依頼した.郵送がない場合にはメールまたは電話で連絡を行った.

2) 調査内容

RL実施群には,往復書簡を計3回実施してもらった.

両群には,基本属性として,年齢,夫の年齢,子どもの月齢,生活に影響を及ぼすライフイベントがあると結果に影響すると考えたため,3回目のRL終了後にベースライン時(0回目)~3回目の間のライフイベントの有無をたずねた.RLの効果評定として,①赤ちゃんへの気持ち質問票②育児不安尺度③状態自尊感情尺度をRL実施前(ベースライン時)とRL 3回の計4回実施し,対照群にも同様に実施した.

(1)赤ちゃんへの気持ち質問票(日本産婦人科医会,2021)は,原著者はMarks MNであり,Kumar Rの原案に基づき日本語訳を吉田が行い,原著者のMarksと共に臨床的有用性と妥当性を検討している(Yosida et al., 2012;鈴宮ら,2003).母親が子どもへ抱く気持ちについて調査する簡便な質問票である.親密な絆の感情の欠如,怒りや拒絶の感情などを評価する10項目で各0~3点の4件法で合計点は0点から30点となる.得点が高いほど赤ちゃんへの否定的な感情が強いことを示す.RLにより児に対する否定的感情の低下に繋がるかについて検討するために本尺度を用いた.

(2)育児不安尺度は,牧野(1982)が作成し,一般的疲労,一般的気力の低下,イライラの状態,育児不安などの14項目,各1~4点の4件法で,合計点は14点から56点となる.得点が高いほど育児不安が高いことを示す.RLにより,母親の育児不安の軽減に繋がるかについて検討するために本尺度を用いた.

(3)状態自尊感情尺度は,阿部・今野(2007)が,Rosenberg(1965)のself-esteem scaleの日本語版自尊感情尺度(山本ら,1982)を元に,作成したものである.状態自尊感情とは「現時点の自分に対して感じる全体的な評価であり,日常生活の出来事などに対応して変動するもの」であり,9項目の各1~5点の5件法で,合計点は9点から45点となる.高い得点ほど状態自尊感情が高いことを示す.RLにより,母親の状態自尊感情の向上に繋がるかについて検討するために本尺度を用いた.

これら全て,作成者の使用許可を得た.

6. データの分析方法

1) 実施群におけるRLの記述内容のコード化とその記述人数について

効果評定を行うにあたり,1~3回目までのRLの記述にいかなる変化が生じるのかを明らかにするために,まず,RL 3回分の[往信][返信]で書かれた記述内容を,金子(2013)のコード表に基づき分類した.金子(2013)のコード表は,書き手の動機や意図を要約できるツールとして開発されたものであり,金子を含む実践家や研究者から,省略されていないRLデータからコードの分割,統合等を繰り返し,出現頻度,コード化のしやすさ,臨床的重要度を評価し,妥当性を得たものである(付録2-1,付録2-2).記述全体にみられるプロセスやパターンを発見できること,記述の変化によって質的研究と量的研究の両面に貢献できるというメリットがあり,記述データに基づいた実証的研究に活用できる(金子,2013).このコード表(金子,2013)に基づきコード分類を3名以上で行うことで,信頼性を確保できるとされる.また,このコード表は,RLを用いた体験学習による看護学生の共感性の変容の検討にも使用されている(金子ら,2014).

本研究では,金子(2013)の手順に沿い,往信は,表1-1の通り15のコードに分類し,返信では,表1-2の通り14のコードに分類した.そして,RLの回ごとにそれぞれのコードを記述した人数を算出した.例えば,1回の往信の中に,コード表の〈8.好意や甘え〉にあたる「大好き」という言葉の記述があった場合は,コード表の〈8.好意や甘え〉の記述人数を1とカウントした.次に,RLの記述人数の変化の分析のため,RL 1回目,2回目,3回目のそれぞれにおいて,記述されたコード毎に,3時点(RL 1回目,2回目,3回目)での記述の有無についてcochranのQ検定を実施し,5%を有意水準としχ2値を算出した.有意差がみられた場合にBonferroni法により,3時点のペアごとの多重比較を実施した.この手法は,榮田・佐々木(2023b)で用いており,就園前の第一子を養育する母親に対するRLの記述人数を分析し,〈7.内省や内言,気づき〉がRL 2回目,3回目で増加したという結果を得ているため,本研究においても使用することとした.なお,記述量は心的作業の質をそのまま反映していない可能性があるとされる(金子ら,2014).そのため,同一人物が,1回のRLにおいて,例えば〈8.好意や甘え〉のコードに含まれるような「大好き」「かわいいね」を繰り返す記述が見られた場合,本研究では,それは記述量とみなし,記述内容に該当するコード〈8.好意や甘え〉の記述人数を1とカウントする方法を行った.

表1-1 RLにおける往信のコードと記述例

コード 記述例
1.不満や怒り なし
2.依存関係 なし
3.苦悩や苦境 なし
4.葛藤,複雑な心境 ・出来る事が増えるのが,うれしい反面,お母さん達はもっとゆっくりでいいよーと赤ちゃんから大きくなっていくことを少し寂しくも思います.(2回目)
5.相手への期待 ・○○ちゃんには,元気に,自分も周りの人も大事にできる優しい子に育ってほしいなと思います.(1回目)
・○○くんの気持ちや考えが知りたいなと思いました.これからたくさん教えてね.(2回目)
6.相手の気持ちの確認 ・もうこの世にきてから半年過ぎたね.楽しい?幸せ?(1回目)
7.内省や内言,気づき ・ママの両親もこのような思いをして一生懸命育ててくれたんだと感じることができました.(1回目)
・幸せな思いと同時に子供を育てることがいかに大変なのかも感じています.(1回目)
・●か月になり,○○くんはたくさんの事ができるようになりました.知らない人に抱っこされると緊張してかたまってしまうようにもなり,色々な事が理解できるようになりました.(2回目)
・ママを見ると,嬉しそうに近づいてくる姿に,自分は○○くんにとって特別な存在なのかなとうれしく思います.(3回目)
8.好意や甘え ・ママは○○ちゃんの事がとっても大好き いつも一緒に過ごせて「嬉しい!」って思っているよ.(1回目)
・ママの顔を見つけるとにこっと笑いかけてくれる顔がたまらなく可愛くて愛おしいよ.(1回目)
9.心配や心情理解 ・最近は寝返りや寝返り返りが上手になってどこでも行ってしまうから少し心配です.(1回目)
・ここ最近,夜泣きが出てきましたね.夜中さみしいのかな?お腹空いて?夜が怖くて?(3回目)
・ケガをしないか病気になってないかとかなんでも心配になります.(3回目)
10.謝罪や反省 ・ママも1年生だからわからないことばっかりでたくさん心配になってしまうから時々笑顔じゃないときがあるけど許してね.(3回目)
11.感謝 ・生まれた時から可愛くて,とっても良い子で,お母さんたちの所に来てくれて本当にありがとう.(1回目)
・いつも頑張ってる姿を見せてくれてありがとう.(3回目)
12.自立や成長の報告,決意 ・ママたちも頑張って,○○ちゃんがこのリズムで安定して生活できるように動くようにするね.(2回目)
・○○ちゃんはパパとママの宝物ですごーく大事な存在だからこれらからも元気でいられるように守っていくからね.(3回目)
13.関係継続の期待や展望 ・これからも一緒にたくさん楽しく,幸せに生きて行こうね.(1回目)
A.過去の振り返り ・○○ちゃんがお腹から出てくるときは本当大変だったけど,出てきてくれた瞬間が本当に幸せだったよ♡.(1回目)
B.事実説明 ・●回目のお手紙です.(2回目)

コード名は,金子(2013)によるものである.

対象者の記述を読んで各コードに分類した.記述例の()内の数字はRLの往信の回数を示す.

表1-2 RLにおける返信のコードと記述例

コード 記述例
i.不満や非難 なし
ii.自立への抵抗や執着 なし
iii.正当性の訴えや弁明 ・今までより動き方がわかってきたから動き回りたいんだよ.見るもの全部がおもしろいの.(1回目)
・○○はママにもっとずっとそばにいてほしいよ.○○のママだから.ママが離れると不安になるの.見えなくなると不安になるの.(3回目)
iv.理解困難や対応困難 なし
v.異なる視点 ・ママは心配するけど,毎日,いろんなものに出会えてわくわくするよ.早く自分で動きたいな.いろいろさわってみたいよ.(3回目)
・ママとパパが難しそうに保育園悩んでいるよね.ママはずっと過ごせないのは,寂しいけど,○○は働いているかっこいいママも好きだよ.(3回目)
vi.「私」への期待や願い ・朝はもう少し早く起きてほしいな 呼んだら起きるけどいつも「もうちょっとねかせて~」って言わずにあそんでごはんちょうだいね.(1回目)
・もっと一緒に遊んでほしいよ.キッチンにいて顔は見えるけど,傍らにいて一緒に遊んでほしいです.(2回目)
vii.心配 ・この間,ママのおっぱいイタイイタイなってて,ママおねつも高くて心配したよ.(1回目)
viii.成長や努力への賞賛 ・ママがいつも一生懸命頑張っているのは わかってるよ.(1回目)
ix.感謝や好意 ・お母さんのことを○○は,出来る事が増えて一緒に喜んでくれるのが嬉しいよ.(2回目)
・いつも○○の事大切に思ってくれてありがとう.(3回目)
x.謝罪や反省 ・○○も誕生日の次の日から熱をだしてママを心配させちゃった.(2回目)
xi.そのままの理解や尊重 ・毎日ごはんやミルクを作ってくれて,苦手なものもあるけど楽しく食べさせてくれるから頑張って食べるよ.(2回目)
xii.関係継続の保証や展望 ・まだまだ,大変なこと,困る事迷惑をかける事もあると思うけど,お付き合いよろしくお願いします.(3回目)
a.過去の振り返り ・急に「お腹出る時間だよー」って言われたから,お腹から出るの不安だったけど,頑張って出てきたらママがいて安心したよ.(1回目)
b.事実説明 ・パパの事も大好きです.(1回目)

コード名は,金子(2013)によるものである.

対象者の記述を読んで各コードに分類した.記述例の()内の数字はRLの返信の回数を示す.

2) RLの効果評定について

RLの効果評定のため用いた指標について,必要な逆転項目処理を行い,「赤ちゃんへの気持ち質問票」「育児不安尺度」「状態自尊感情尺度」の各得点を算出し,RL実施前のベースライン時(0回目)に差がないか確認した.まず,3つの尺度に関し,Shapiro-Wilk検定を用いて正規性を確認し正規性が棄却された場合は,Mann–WhitneyのU検定を行うこととした.さらに3つの尺度に関する,ベースライン時(0回目)及び3回の調査回数による変化について,Friedman検定を行い,有意差がみられた箇所において,Wilcoxonの符号付き順位検定を行った.

データの分析にはSPSSver29を使用し,有意水準は5%とした.

7. 倫理的配慮

研究対象者には,「同意説明文書」を用いて,研究の目的及び方法,研究期間,研究参加の任意性と参加撤回の自由,個人情報の保護,得られたデータの利用範囲及び研究成果の公表,研究参加による利益と不利益,研究の科学的価値や当該領域・社会に対する貢献,研究参加に関わる経費や謝礼等,問い合わせ・連絡先について,事前に説明し,研究参加同意書への署名をもって同意とした.本研究は,日本赤十字広島看護大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号2207).本研究は公開データベースUMIN-CTRに登録した(UMIN000056434).

Ⅳ. 結果

1. 対象者の属性

参加希望者は30名であったが,同意説明時に辞退があったため,研究参加者は実施群14名,対照群12名が,分析対象者となった.

研究参加者の基本属性は表2の通りであった.母親は全員育児休業中または無職であり,年齢は実施群30.8 ± 3.9歳,対照群33.5 ± 6.6歳,子どもの月齢は実施群6.1 ± 2.1か月,対照群4.9 ± 2.2か月であり,夫の年齢は実施群33.5 ± 4.3歳,対照群34.8 ± 6.6歳,家族数は実施群3.0 ± 0.4,対照群3.1 ± 0.3であり,t検定の結果2群間の差は認めなかった.両群における尺度についてShapiro-Wilk検定を用いて正規性の確認を行ったところ,実施群の「赤ちゃんへの気持ち質問票」において有意確率がp = 0.021と正規性が見られなかったため,ノンパラメトリック検定を行うこととした.ベースライン時(0回目)の実施群と対照群の「赤ちゃんへの気持ち質問票」「育児不安尺度」「状態自尊感情尺度」の比較についてMann–WhitneyのU検定を行い有意差は認められなかった.

表2 研究対象者の基本属性

年齢 子の月齢 夫の年齢 家族数 就業
実施群 A 32 6 31 3 育児休業中
B 32 10 35 4 育児休業中
C 26 5 31 3 育児休業中
D 23 9 無 2 無
E 29 5 33 3 育児休業中
F 35 5 35 3 育児休業中
G 32 6 32 3 育児休業中
H 28 6 33 3 無
I 34 10 36 3 無
J 28 4 28 3 育児休業中
K 29 6 32 3 育児休業中
L 38 3 46 3 育児休業中
M 32 6 33 3 育児休業中
N 33 5 31 3 育児休業中
対照群 O 29 9 32 4 育児休業中
P 30 8 30 3 無
Q 27 4 26 3 育児休業中
R 27 4 37 3 育児休業中
S 40 5 35 3 無
T 38 4 37 3 育児休業中
U 26 5 27 3 育児休業中
V 31 4 34 3 育児休業中
W 45 7 46 3 育児休業中
X 29 1 30 3 育児休業中
Y 41 4 47 3 無
Z 39 4 37 3 育児休業中

また,研究期間中に身体や気持ちに影響を与えるようなライフイベントは,全員経験していなかった.

2. 無作為化比較試験について

1) 無作為化比較試験の結果

1回目,2回目,3回目時点での,実施群と対照群を比較したところ,「赤ちゃんへの気持ち質問票」「育児不安尺度」「状態自尊感情尺度」全てに有意差はなかった.

また,実施群と対照群における,「赤ちゃんへの気持ち質問票」「育児不安尺度」「状態自尊感情尺度」に関する調査回数による得点の結果を表3に示す.対照群では,全ての調査項目で調査回数による有意差はなかった.実施群については,以下の2-2)で述べる.

表3  RL介入前後の各質問票の得点

2) 実施群における,「赤ちゃんへの気持ち質問票」「育児不安尺度」「状態自尊感情尺度」に関する調査回数による得点の変化

「赤ちゃんへの気持ち質問票」の実施群の得点は,0回目は1.5点,1回目は1.0点,2回目は1.0点,3回目は0.5点であった.実施群内で,回数による差があるかを検討するため,Friedman検定を行いその結果,実施群では,「赤ちゃんへの気持ち質問票」の得点で有意差が認められた(p = 0.044).Wilcoxonの符号付き順位検定による実施群内の検定の結果,0回目と2回目(p = 0.011)に有意差が認められ,2回目の方が得点が低下し,対児への否定的感情が低下した.

「育児不安尺度」の実施群の得点は,0回目は32.5点,1回目は33.5点,2回目は33.0点,3回目は33.5点であった.実施群内で,回数による差があるかを検討するため,Friedman検定を行い,その結果,有意差は認められなかった(p = 0.285).

「状態自尊感情尺度」の実施群の得点は,0回目は30.0点,1回目は30.5点,2回目は30.5点,3回目は32.0点であった.実施群内で,回数による差があるかを検討するため,Friedman検定を行いその結果,実施群では,「状態自尊感情尺度」の得点で有意差が認められた(p = 0.005).Wilcoxonの符号付き順位検定による実施群内の検定の結果,0回目と2回目(p = 0.025),0回目と3回目(p = 0.002)に有意差が認められ,各々得点が上昇したことから,0回目よりも2,3回目の方が,状態自尊感情が高まった.

3. 0歳児の第一子育児中の母親のRLの記述内容のコード化とその記述人数について

RL 1回目,2回目,3回目において,記述されたコードについて[往信],[返信]の順に挙げる.以下の文中では,金子(2013)のRL記述コード表に基づくコードを 〈〉で表す.なお,各コードの記述例について,[往信]は表1-1,[返信]は表1-2に示す.また,[往信][返信]のコードの結果を表4に示す.

表4 往信及び返信における1回目,2回目,3回目のコードの出現(cochranのQ検定の結果)

コード 1回目 2回目 3回目 χ2(df = 2) p 多重比較(Bonferroni法による)
往信 1.不満や怒り 0 0 0
2.依存関係 0 0 0
3.苦悩や苦境 0 0 0
4.葛藤,複雑な心境 2 4 3 1.000 0.607
5.相手への期待 10 6 7 2.889 0.236
6.相手の気持ちの確認 3 2 2 0.333 0.846
7.内省や内言,気づき 6 13 11 7.800 0.020 1回目<2回目
8.好意や甘え 12 10 11 1.200 0.549
9.心配や心情理解 3 8 5 3.800 0.150
10.謝罪や反省 4 2 2 1.333 0.513
11.感謝 8 7 5 1.400 0.497
12.自立や成長の報告,決意 4 4 7 2.250 0.325
13.関係継続の期待や展望 6 2 3 3.250 0.197
A.過去の振り返り 6 1 1 8.333 0.016 1回目>2回目,1回目>3回目
B.事実説明 2 2 0 2.667 0.264
返信 i.不満や非難 0 0 0
ii.自立への抵抗や執着 0 0 0
iii.正当性の訴えや弁明 4 4 4 0.000 1.000
iv.理解困難や対応困難 0 0 0
v.異なる視点 3 1 8 8.667 0.013 1回目<3回目,2回目<3回目
vi.「私」への期待や願い 11 11 12 0.286 0.867
vii.心配 2 2 1 1.000 0.607
viii.成長や努力への賞賛 1 0 1 1.000 0.607
ix.感謝や好意 14 10 11 4.333 0.115
x.謝罪や反省 0 1 0 2.000 0.368
xi.そのままの理解や尊重 1 6 2 5.250 0.072
xii.関係継続の保証や展望 1 2 5 4.333 0.115
a.過去の振り返り 2 0 0 4.000 0.135
b.事実説明 1 1 0 1.000 0.607

表中の1回目,2回目,3回目の数値は該当コードを記述した人数を示す.

1) [往信]について

[往信]の手紙の記述内容におけるコードの記述人数について,分類されたコードは,記述人数の多い順に,〈8.好意や甘え〉が,RL 1回目12名,RL 2回目10名,RL 3回目11名,延べ33名と最も多かった.次いで,〈7.内省や内言,気づき〉〈5.相手への期待〉〈11.感謝〉〈9.心配や心情理解〉〈12.自立や成長の報告,決意〉〈13.関係継続の期待や展望〉〈4.葛藤,複雑な心境〉〈10.謝罪や反省〉〈A.過去の振り返り〉〈6.相手の気持ちの確認〉〈B.事実説明〉の順であった.またRL 1~3回を通して,記述が全くなかったコードは,〈1.不満や怒り〉〈2.依存関係〉〈3.苦悩や苦境〉であった.

各回で有意差があったコードについて,〈7.内省や内言,気づき〉が,RL 1回目6名,RL 2回目13名,RL 3回目11名であり,RL 1回目に比べて2回目の方がコードの記述人数が有意に多かった(p = 0.020).しかし,RL 2回目より3回目の方がコードの記述人数が減っていた.また〈A.過去の振り返り〉は,RL 1回目は6名,RL 2回目は1名,RL 3回目は1名と,RL 2,3回目より1回目の方が記述人数が有意に多かった(p = 0.016).

2) [返信]について

[返信]の記述人数の多い順に,〈ix.感謝や好意〉が,RL 1回目14名,RL 2回目10名,RL 3回目11名,延べ35名と最も多く,次いで〈vi.「私」への期待や願い〉〈iii.正当性の訴えや弁明〉〈v.異なる視点〉〈xi.そのままの理解や尊重〉〈xii.関係継続の保証や展望〉〈vii.心配〉〈viii.成長や努力への賞賛〉〈a.過去の振り返り〉〈b.事実説明〉〈x.謝罪や反省〉の順であった.また,RL 1~3回を通して,表現が全くなかったコードは,〈i不満や非難〉〈ii.自立への抵抗や執着〉〈iv.理解困難や対応困難〉であった.有意差があったコードとして,〈v.異なる視点〉がRL 1回目より3回目,RL 2回目より3回目で記述人数が有意に多かった(p = 0.013).

Ⅴ. 考察

ここでは,まず実施群の,対児への否定的感情,育児不安,自尊感情の変化について,[往信]の〈7.内省や内言,気づき〉,〈A.過去の振り返り〉,そして[返信]の〈v.異なる視点〉のコードとともに考察を行う.その後,0歳児第一子育児中の母親に対するRLの効果について検討を行う.

1. 対児への否定的感情について

対児への否定的感情を測定するために用いた「赤ちゃんへの気持ち質問票」は対照群には有意差がなく,実施群はRL 0回目と比較して2回目のRL後に,合計得点が有意に低くなったことから,一部の回において対児への否定的感情の低下がみられた.

[往信]の〈7.内省や内言,気づき〉の2回目の記述例には,「●か月になり,○○くんはたくさんの事ができるようになりました.知らない人に抱っこされると緊張してかたまってしまうようにもなり,色々な事が理解できるようになりました」がある.榮田・佐々木(2023a)は,第一子育児中母親に対するRLの経験後のインタビューの分析から『子どもが何かできたことをRLで言葉にして記すと,愛しさや喜びが育って,心が支えられる』といったRLによる素直な感情の表出とそれにより子どもへの肯定的な感情をもたらすことを報告している.

また,鈴木・小林(2009)は,母親は,子どもの成長,発達,健康を感じる出来事を通して愛情や喜び,感謝等を感じると述べている.RLを通して,子どもと母親の関わりを振り返ることで,子どもの成長を改めて捉え直す機会となり,対児への否定的感情の低下につながったと考える.また,3回目の[返信]の「ママは心配するけど,毎日,いろんなものに出会えてわくわくするよ.早く自分で動きたいな.いろいろさわってみたいよ」という記述例では,「ママは心配するけど」という記述は,母親としての子どもへの心配を表し,「毎日,いろんなものに出会えてわくわくするよ,早く自分で動きたい」という記述は,心配だけでなく,子どもの好奇心や探索行動として捉えていることがうかがえる.こうした〈v.異なる視点〉の獲得は,多様な視点での子どもの理解に繋がり,子どもへの否定的感情の低下に繋がった可能性がある.しかしながら,有意差がみられたのは0回目と2回目であり,0回目と3回目は有意ではなかったことから,RLを行うことで否定的感情は一時的に低下することは示されてもその効果が維持されるとは言い切れない.

RL 1回目よりも,2,3回目に記述が有意に減った[往信]のコードが,手紙の相手と共有されている過去の出来事や関係の振り返りを意味する〈A.過去の振り返り〉(金子,2013)であった.金子(2011)は,RLのはじめは,関係性のテーマが現れることを報告している.本研究でも同様に,「○○ちゃんがお腹から出てくるときは本当大変だったけど,出てきてくれた瞬間が本当に幸せだったよ.」のように,過去の出来事を通して関係性を表す記述がRL 1回目には多かった.そして,過去の出来事以上に,「●か月になり,○○くんはたくさんの事ができるようになりました.」(2回目)といった現在の出来事から子どもの成長に気づくことが多くなったのであろう.子どもの成長の気づきは,母としての喜びにつながり,肯定的感情を向上させていくものと考える.

2. 育児不安について

育児不安尺度は,実施群,対照群共に,有意差は無かった.これについて2つの点から検討する.

RLのコード表において,育児不安と関連があると考えられるコード〈3.苦悩や苦境〉にあたるRLの記述は見当たらなかった.榮田・佐々木(2023b)の研究においても,就園前の育児中の母親へのRLの記述内容にも〈3.苦悩や苦境〉として表現されたコードは無かった.また,本研究でも〈1.不満や怒り〉〈2.依存関係〉を含めて否定的感情を示すと考えられるコードもみられなかった.これらについて,対象を母子ともに健康障害などがない者としたため,母親がこうした否定的感情のコードに表現される状態にないという可能性が考えられる.またこうしたコードに表現される状態にあるが,RLには書きたくないといった可能性も否定できない.

また,0歳児第一子育児中の母親は,第二子以降の育児中母親よりも,育児に不慣れによる自信のなさから不安が高い(都筑・金川,2001;磯山,2018)といわれており,神谷(2023)は,産後1年までは,「家族などの周囲のサポートが不十分で,出産後は孤独で様々な不安や悩みで大変だった」「産後は精神的に不安定でなんらかのサポートが必要だった」ことを見出した.さらに,初産婦は経産婦に比べて,「育児の情報を提供しあったり,不安を支えあったりする友人が欲しい」というニーズを持っている(谷口ら,2014).

RLを実施することで育児不安が低減するという報告もある(橋本,2007;井頭,2007)が,これらの研究では対象が母親と未就学児,小学生のように,ある程度子ども自身でも身の安全の確保が意識でき,また言葉や身振りで体調や感情を表現することができる.しかし0歳児は,母親が五感を働かせ,その様子を察する必要があり,常に一定の不安は伴うものと考えられる.先行研究では,育児不安と子どもの月齢の関係では,影響があるもの(北村・小田,2017)もあれば,影響がないもの(谷口ら,2014)もある.岩田(1997)によれば,子育てをしていく上での不安は,子育て全般にわたっており,子どもの発達段階に応じてその不安は変化しながら存在することを挙げている.また,本村ら(1985)は,育児不安が低いほど健康な,望ましい母親であるとは言えないと述べ,育児不安は母親ならば誰しもある程度は持っているものであり,問題なのは,その不安が病的に高いことで通常の判断力や感覚のバランスを失うことだと述べている.本研究の手紙の相手である対象児は0歳児であり,母親も第一子育児中である.そのため,子どもの体調や子どもが出来るようになることも日々変化する日常の中で,母親はその場その場で,子どもの様子を見ながら育児を行っていると考えられる.本村ら(1985)が述べているように,育児における不安が母親に適度にあるからこそ,子どもの安全を確保しながら育児が出来ているともいえるかもしれない.特に育児不安の一因である言葉を発せない子どもの気持ちがわからずにいる場合において,RLにより,子どもの気持ちになりきって,返信を書くという行為は,子どもの気持ちの理解に繋がり,母親の不安の解消に繋がる可能性が考えられる.しかしながら,第一子育児の母親の孤独へのサポートを必要としている(谷口ら,2014)という点においては,RLによる介入では十分にカバーされない可能性がある.そうしたことをふまえ,今後の継続的検討が必要である.

3. 自尊感情について

自尊感情について,本研究では,RLの影響を鑑み状態自尊感情尺度を測定した.その結果,対照群は有意な変化がないが,実施群においては,RL 0回目と2回目の間,RL 0回目と3回目の間に有意な差が認められ,得点もRL 0回目よりも2,3回目の方が得点が高かった.

[往信]の〈7.内省や内言,気づき〉の1回目の記述例には,「ママの両親もこのような思いをして一生懸命育ててくれたんだと感じることができました」がある.これは自分も母親から世話をされ愛情を向けられていたことへの気づきであり,遠藤(1992)のいう自分自身を好ましい人間と感じ,自分の行動を積極的に価値のあるものとして評価することに繋がると考える.また,[返信]の〈v.異なる視点〉の3回目の記述例には,「ママとパパが難しそうに保育園悩んでいるよね.ママとずっと過ごせないのは寂しいけど,〇〇は働いているかっこいいママも好きだよ」がある.これは,母親自身が,子どもに寂しい思いをさせてしまうことを案じつつも,社会に貢献する自身の評価の記述と考える.このように子どもの立場でRLを書くことにより,子どもの気持ちや行動,ひいては自分と子どもの関係を振り返り,母親が自分とは異なる,子どもの視点を見出しつつ,自己を価値のある者と評価できることにより自尊感情が向上したと考える.

RLは,手紙の差出人としての私と手紙の受取人である相手との役割を自分自身で両方の役割をとるということであり,小林(2007)は,他者の視点から自分を見た時,初めて自分のありのままの姿が見え,その問題も見えてくることから,自己理解と自己洞察ができると述べている.そして,岡本(2012)は,RLにより,次第に今の「ありのままの自分」でいいという気持ちになってくるという「自己受容」に繋がると述べている.

RLの先行研究では,児童や年長の親に3回RLを行った後に,子育てに自信が生まれ,相互に肯定的に受容するなど,対照群と比較し,自尊感情が有意に高まること(井頭,2007),対象が母子以外においても,中学生に10回RLを行ったクラス(岡本,2007)や,保健師学生に1回のRLを行った場合(榮田ら,2020)において自尊感情が高まるという報告がある.本研究のように対象が0歳児の第一子育児中の母親であっても,RLは自尊感情の向上に寄与できる可能性がある.

4. 0歳児の第一子育児中の母親へのRLの効果

本研究では,実施群内で,一部の回の間で対児への否定的感情の低下と,状態自尊感情の向上が見られたものの,群間の有意差は認められなかった.そのため,RLの効果を示唆する傾向はみられるが,明確な効果を示したとは言えない.本研究において対照群にはいずれも有意差がなかったことから,母子ともに心身が健康な母親に関しては,なんらかのセルフケアを行っている可能性もあるため,新たな支援法としてRLを行わず見守るという手段も十分にあり得ると考える.そうした複数の可能性をもとに,以下の限界と今後の課題に示すような対象者の選定等を行い,0歳児の第一子育児中の母親支援としてRLの効果を継続して検討していく必要がある.

5. 本研究の限界と今後の課題

まず対象者についてである.本研究の対象者は限られた地域であり,協力的な母親であったことがある.また,母親の年齢段階,子どもの月齢,祖父母のサポート状況も結果に影響する要因と考える.そうした点を対象者募集の段階で,可能な限り均一にした上での検証が必要である.

また,本研究は,約2週間ごとに3回RLを実施した.すなわち全体で1か月半の間の様子を計測したことになる.こうした期間の変化を捉える尺度として,より適切な尺度の検討,もしくは実施間隔の検討が必要といえる.そして,RLの効果がどの程度持続するのか,変化するのかという点が検討できていない.子どもの成長に伴い母親の心配事なども変化する(野原・中田,2019).したがって,フォーローアップ評価を行う必要がある.

Ⅵ. 結論

0歳児の第一子育児中の母親に対するRLの効果検証をRL実施群と対照群の無作為化比較試験を行った結果,両群間に有意差が認められず,効果は検証できなかった.

RL実施群内では,「赤ちゃんへの気持ち質問票」,「状態自尊感情尺度」で有意差が認められたが,「育児不安尺度」の得点では有意差が認められなかった.RL実施群内の実施回数による得点の変化については,「赤ちゃんへの気持ち質問票」は,RL 0回目と2回目に有意差を認め,「状態自尊感情尺度」は,RL 0回目と2回目,RL 0回目と3回目に有意差が認められた.一方,対照群内では,全ての指標で有意差はなかった.RLの記述内容について〈内省や内言,気づき〉のコードの記述人数が1回目に比べ2回目に有意に増加したが,3回目は2回目よりも減っていた.

実施群内においては,0回目よりも2回目のRL後に母親の対児への否定的感情の低下や,0回目よりも2,3回目のRL後に母親の状態自尊感情を高めることが明らかになった.しかしながら,実施群と対照群の群間での差が認められなかったことから,RLの効果を示唆する傾向がみられるというにとどまるに至った.対象者の選定,RLの実施間隔,評価尺度を検討した上で,今後の継続的な検討が望まれる.

付記:本研究は,山口県立大学大学院健康福祉学研究科に提出した博士論文の一部を加筆修正したものです.

謝辞:本研究の実施にあたり,快くご参加いただきました研究対象者の皆様,研究にご協力いただきました,施設の皆様に感謝申し上げます.本研究を遂行するにあたり,ご指導くださいました山口県立大学大学院健康福祉学研究科田中マキ子先生に厚く御礼申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:榮田絹代は,研究の着想及びデザイン,データ収集,分析,原稿の作成に貢献した.佐々木直美は,原稿及び研究プロセス全体への助言を行った.全ての著者は最終原稿を読み,承諾した.

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