Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Reviews
Patient Education for Children With Food Allergies and Their Caregivers: A Scoping Review
Yoriko Kato, Yuko Tanaka, Yoshiko Matsumoto, Misa Iio, Takashi Nakayasu, Moe Nemoto, Miki Sugawara, Takashi Kitagawa
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2026 Volume 46 Pages 737-751

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Abstract

目的:食物アレルギー(FA)のあるこどもおよびその保護者に対する患者教育の特徴を明らかにするとともに,患者教育の評価に用いられていたアウトカムの内容を健康状態と関連する行動的・心理的側面を含めて整理・提示する.

方法:JBIガイドラインに則り,9つのデータベースを用いて2006年以降の患者教育の文献を選定し,PRISMA-ScRに基づき報告した.

結果:21論文を分析した.主な対象者は保護者で,こどもは限定的だった.主な提供者は,医師・看護師・栄養士・心理職・患者会所属の保護者等が含まれていた.患者教育は,集団や個別,対面やオンライン等で,FA疾患知識やFA管理行動,心理社会面の支援であった.アウトカムは,QOLや心理的側面に加え,アレルゲン摂取量などの客観的指標が含まれていた.

結論:FA患者教育は,介入特性に合わせて様々な提供方法で実施され,患者教育の内容や提供方法に応じて評価指標の特徴が異なる傾向が示された.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to identify the characteristics of patient education interventions for children with food allergies (FAs) and their caregivers and to describe the outcome measures used to evaluate these interventions, including health-related behavioral and psychological outcomes.

Methods: A scoping review was conducted in accordance with the Joanna Briggs Institute Manual for Evidence Synthesis. PubMed, the Cochrane Database of Systematic Reviews, the Cochrane Central Register of Controlled Trials, CINAHL, Web of Science, ERIC, PsycInfo, Igaku Chuo Zasshi, and CiNii were searched to identify studies on patient education that were published since 2006. The review was reported in accordance with the PRISMA-ScR guidelines.

Results: Twenty-one studies were included in the review. Caregivers were the primary target audience, with only a few studies focusing on children. Patient education was delivered by physicians, nurses, dietitians, psychologists, and caregivers affiliated with patient support groups. The educational content included FA-related knowledge, FA management behaviors, and psychosocial support. Educational interventions were delivered through various formats, including group-based and individual sessions, and were conducted either in person or online. Outcomes included subjective measures, such as quality of life and psychological aspects, as well as objective measures, such as allergen intake.

Conclusion: Patient education for children with FAs and their caregivers was delivered through various approaches tailored to the characteristics of the interventions. Outcome measures tended to differ according to the content and mode of delivery of the educational interventions.

Ⅰ. 緒言

食物アレルギー(Food Allergy:以下FA)は,「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」(一般社団法人日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会,2021)と定義されている.FAは全世界人口の5から10%に影響を及ぼしていると推定されており(Tang & Mullins, 2017),その有病率は増加傾向にある.日本のFA患者数の推計は,乳幼児期では約30万から50万人,学齢期では約35万人とされ(松原ら,2018),小児期における重要な慢性疾患のひとつである.

FAは,アナフィラキシーを含む重篤な症状を引き起こす可能性があることから,FAは日常的な管理と継続的な監視を必要とし,こどもと家族の心理社会的機能やQOLに影響を及ぼすことが指摘されている(Westwell-Roper et al., 2022).

FA管理において,原因食物の回避に加え,アレルギー反応の早期認識及び適切な対応への備えが重要である.そのため,包括的なFA患者教育は,日常生活の中で実践する能力と獲得・維持する上で重要な役割を果たす(LeBovidge et al., 2022).FA患者教育は,原因食品の回避,アレルギー症状の認識,緊急時対応,学校や地域社会における生活上の工夫など,日常生活全般への対応が含まれる必要がある(Schauberger & Singh, 2020).

FAに関連するScoping Review(以下ScR)では,幼児教育施設におけるFA管理(Santos et al., 2023)および学校教育におけるFA管理(Santos et al., 2022),保護者の負担(Golding et al., 2021),FAリテラシー(Sanagavarapu et al., 2023)などが取り上げられている.しかし,FA患者教育に関する研究の多くは保護者を主な対象としており,FAのあるこどもの理解や自己管理能力の発達を支援する教育的介入は,十分に整理・検討されていない(De Buhr & Tannen, 2020).

日本においては,小児一般外来診療と比較して,FA外来診療では初診に5倍,再診においても1.5から3倍の診療時間を要することが報告されている(岡藤,2020).FA診療に関わる専門職は,小児アレルギーエデュケーター(Pediatric Allergy Educator:以下PAE)とアレルギー疾患療養指導士が,専門病院,総合病院,クリニック,調剤薬局,研究教育機関で活動している.しかし,この有資格者は都市部に偏在しており,FA医療の均てん化には課題がある.医療需要の高まりに対し,限られた医療資源の中で持続可能なケア提供システムの構築が求められている(本田,2023).このような日本の現状は,FA患者教育の提供体制や内容が,国や医療環境によって多様であることを示している.こうした医療提供体制の制約下では,FA患者教育は医療機関や関与する専門職ごとに,内容や方法,提供体制,評価指標が異なり,それらが体系的に整理・共有されていない状況にあると推察される.

保護者のFAの知識は,こどもの健康管理ニーズを満たすための基盤であり(De Buhr & Tannen, 2020),その知識や能力は,こどもの成長や生活環境の変化に応じて変化する.そのため,発達段階や家族の状況に応じた継続的な支援が求められる(Færk et al., 2024).また,保護者の知識とスキルの向上は,FA管理能力の向上や自己効力感の強化につながる(Moen et al., 2019).こうした背景から,自己効力感は,FAの自己管理行動を理解するうえで重要な概念であるが(Greenhawt & DunnGalvin, 2018),自己効力感を高め,FA管理への適応を支援するための教育的介入は,十分に解明されていない(Proctor et al., 2022).自己効力感は,FA管理行動の遂行や継続と関連する心理的要因であり,患者教育による影響を捉える主要なアウトカムの一つと考えられている.しかし,自己効力感を含む患者教育のアウトカムが,どのような対象,内容,方法の患者教育によって評価されてきたのかは,十分に整理されていない.

FA患者教育は,医療資源の制約の下で実施される必要がある一方,こどもの発達や家族状況,保護者の自己効力感など個別性の高い複雑な介入である.このように,研究テーマが広範または複雑であり,主要概念,情報源,文献のギャップを特定する必要がある場合には,ScRの研究デザインが有用であるとされている(Arksey & O’Malley, 2005;Munn et al., 2022;Peters et al., 2021).本研究では,PubMed,Open Science Framework,Cochrane Dada base of Systematic Reviewsのプラットフォームを用いて“Food Allergy”“Patient Education”の検索語で予備検索を行った.その結果,本テーマに関連する進行中のSystematic ReviewとScRは確認されなかった.

本ScRの目的は,食物アレルギー(FA)のあるこどもおよびその保護者に対する患者教育の特徴を明らかにするとともに,患者教育の評価に用いられたアウトカムの内容を,健康状態と関連する行動的・心理的側面を含めて整理・提示することである.本ScRから得られる知見は,FAのあるこどもと保護者への包括的な患者教育を検討する際の基礎資料に資するものと考えられる.

Ⅱ. 用語の定義

こども:18歳未満とする.

患者教育:最適なレベルの健康を維持増進させるという目的に向かって,健康の管理,療養,生活調整をするために必要な知識,技術,態度を教育内容として提供される関わりとする(Bastable, 2017).

アウトカム:患者教育の効果を評価するために用いられていた評価指標とする.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究デザイン

本ScRは,Preferred Reporting Items for Systematic Review and Meta-Analysis Protocols (PRISMA-P) 2015 statement(Moher et al., 2015)に従ってプロトコルを作成した.

本ScRのプロトコルは,文献検索実施前に作成し,複数回にわたり共同研究者間で討議を重ね,合意を得たうえで,Open Science Framework(https://osf.io/)へ登録した(DOI 10.17605/OSF.IO/B932S).ScRの具体的な実施過程は,JBI Manual for Evidence Synthesis for Scoping Review(Joanna Briggs Institute, 2024;Peters et al., 2021)に準拠した.

本ScRでは,研究疑問の枠組みとして,Population・Concept・Contextフレームワーク(以下PCC)を用いた.本ScRの目的・Research Question・PCCの関連性を示す図は,先行研究(Feo et al., 2020)を参考にして作成した(図1).Populationは,FAと診断された0歳から18歳未満のこどもおよびその保護者を対象とした.こどもと成人のデータが混在している研究は,対象者の80%以上が18歳未満である場合を対象とした.Conceptは,患者教育を最適な健康状態の維持・増進を目的として,疾患管理,療養,生活調整に必要な知識・技術・態度を教育内容として提供される関わりと定義した.教育対象は,こどものみ,こどもと保護者,または保護者のみとした.患者教育のアウトカムは,患者教育の効果を評価するために用いられていた評価指標全般を指し,知識,行動変容,自己効力感,QOL,心理的側面,および客観的指標を含むものとした.Contextは,教育が提供された場(医療機関,地域,家庭,学校等)は限定しなかった.Types of sourcesは,研究デザインおよび言語は制限せず,2006年以降に発表された論文を対象とした.適格基準(Eligibility criteria)は,以下2項目とした.①PCCフレームワークをすべて満たす研究 ②患者教育の内容が具体的に記載されている研究.除外基準(Exclusion criteria)は,以下4項目とした.①患者教育の内容が具体的に記述されていない研究 ②学会抄録,プロトコル論文,解説のみの文献 ③研究対象が18歳以上のみで構成されている研究 ④FAに関する患者教育を主題としていない研究.

図1  研究目的・リサーチクエスチョン・適格基準・除外基準の関係

本ScRの結果報告は,Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analyses extension for Scoping Reviews (PRISMA-ScR) checklist(Tricco et al., 2018)に従って行った.

2. 検索方法および適格基準

対象文献の検索において使用したデータベースは,①PubMed,②Cochrane Database of Systematic Reviews,③Cochrane Central Register of Controlled Trials,④CINAHL,⑤Web of Science,⑥ERIC,⑦PsycINFO,⑧医中誌Web(以下:医中誌),⑨国立情報学研究所データベースCiNii Research(以下:CiNii)である.検索にあたっては,言語,文書タイプ,出版状況の制限は設けなかった.尚,本邦における食物アレルギー診療ガイドラインが発行された2006年以降の文献を対象とした.検索戦略の策定および検索の実施にあたっては,Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analyses literature search extension (PRISMA-S)(Rethlefsen et al., 2021)と,Preferred reporting items for systematic review and meta-analysis protocols (PRISMA-P)(Shamseer et al., 2015),Peer Review of Electronic Search Strategies(PRESS)ガイドライン2015(MeGwan et al., 2016)に従った.対象文献の検索戦略(付録I~VIII)は,PCCに関連する用語を含め,経験豊富なヘルスケア図書館司書の協力を得て策定した.文献検索は,図書館司書が作成した検索式を用いて,2025年3月31日(最終検索日)に実施した.検索結果は,システマティックレビューや文献レビューのためのウェブアプリケーションRayyan(https://www.rayyan.ai/)にインポートし,Rayyanの重複文献排除機能を用いて除外した.

1次スクリーニングは,独立した2人がタイトルおよび抄録を確認し,適格と判断される対象論文を選択した.2次スクリーニングは,独立した5人が,適格基準を満たした文献についてフルテキストスクリーニングを行った.除外された文献の理由は,Rayyanのノート機能に記録した.研究者間で意見の相違が生じた場合は,適格基準に基づき,分析対象候補となる論文の本文をRayyan上で共有したうえで議論し,合意により解決した.対象文献の選択過程は,PRISMAフロー図(図2)に示した.

図2  PRISMAフローチャート

3. データ抽出

データ抽出フォームは,著者1名が,採択予定の論文2件を用いて試行し,追加または不要な項目を検討したうえで決定した.データ抽出項目は,著者,出版年,国,研究の種類とデザイン,場所,対象者,こどもの年齢,サンプルサイズ,教育対象者,教育内容と方法,提供時間,アウトカム,主な結果とした.対象文献は,5名の研究者がExcelデータチャートフォームに記録し,研究者間で記述された内容に誤りがないかを相互に確認した.

4. 結果の要約

分析対象論文は,抽出したデータをもとに発行年代別に整理し,研究概要とFAのあるこどもおよび保護者への患者教育の特徴を表1に,患者教育の評価に用いられたアウトカムの特徴を表2に示した.

表1 対象文献の概要および食物アレルギーのあるこどもおよび保護者への患者教育の特徴

文献番号 著者(発行年)
国
研究
デザイン
(研究種類)
研究対象者 教育提供者 教育内容 提供方法
親 こども 内訳 こどもの年齢 医師 看護師 栄養士 薬剤師 心理士 その他 疾患知識 管理行動 心理社会 集団or個別(方法) 教育方法(場所) メディア 教育提供時間/回
① 渡木ら(2024)
日本
記述的
観察研究
(量)
● ● 母親 10人 父親 1人
※1家族両親
こども 12人
※1家族こども 2人
2から9歳 ● PAE
●
PAE
●
N/A N/A 教員
(栄養学)
(幼児教育)
● ● ● 集団
(対面)
・講義
・調理体験
・座談会(大学)
・配布資料 3時間
② Cronin et al.(2024)
アイルランド
横断研究
(量)
● N/A 母親 139人
父親 12人
平均年齢
8.79歳
● アレルギー専門
●
N/A N/A N/A N/A ● ● N/A 個別
(オンライン)
・アドレナリン自己注射の実技(外来) ・自己注射デモ機 ND
③ 水野ら(2024)
日本
記述的
観察研究
(ミックスメソッド)
N/A ● こども 16人 小学4年生から
中学3年生まで
年齢中央値
10歳8か月
N/A N/A N/A N/A N/A 教員
(栄養学)
学生
(栄養学)
● ● ● 集団
(対面)
・食べ物ゲーム
・店頭での買い物体験(外来)
・配布資料 1時間
④ Dhanjal et al.(2023)
カナダ
1群前後
比較試験
(ミックスメソッド)
● ● 両親 事前 25人
   事後 23人
こども 事前 17人
    事後 11人
0から11歳 N/A N/A N/A N/A N/A FAのあるこども ● ● 学校生活
・いじめ含む
●
個別
(オンライン)
・年上の患児によるピアサポート(オンライン) ・配布資料
・ワークブック
1時間
⑤ Ciliberti et al.(2023)
米国
1群前後
比較試験
(量)
● N/A 母親 42人
父親 3人
1から16歳 ● N/A N/A N/A N/A N/A ● ● ● 個別
(対面)
・緊急時対応
 アクションプランの作成(外来)
・配布資料
・ワークブック
ND
⑥ Kwen & Oh(2022)
韓国
RCT
(量)
● N/A Intervention
 母親 31人 父親 6人
Control
 母親 27人 父親 9人
平均年齢
Intervention
8.73 ± 2.19歳
Control
8.08 ± 2.35歳
● ● ● N/A N/A N/A ● ● N/A 個別
(オンライン)
・教育コンテンツの提供(オンライン) ・配布資料
・音声
・クイズ
45分
⑦ Broome et al.(2022)
米国
RCT
(量)
● N/A Intervention
 母親 20人 父親 0人
Control
 母親 9人 父親 1人
ND
診断90日以内
N/A ● N/A N/A N/A N/A ● ● ● 個別
(オンライン)
・教育コンテンツの提供
・緊急時対応
 アクションプランの作成(オンライン)
・配布資料
・音声
・アプリ
ND
⑧ Sugunasingha et al.(2022)
イギリス
RCT
(量)
● N/A Intervention
 母親 109人 父親 4人
Control
 母親 90人 父親 3人
平均年齢
Intervention
7.36 ± 4.87歳
Control
8.75 ± 4.55歳
● N/A N/A N/A N/A N/A ● ● ● 個別
(オンライン)
・教育コンテンツの提供
・セルフヘルプ(オンライン)
・配布資料
・動画
ND
⑨ Ramos et al.(2021)
米国
予備調査
(量)
● N/A メンター 親 8人
メンティー 親 10人
0から3歳
診断1年未満
N/A N/A N/A N/A ● 親 N/A N/A ● 個別
(対面)
・ピアメンタリング(外来) ・面談時使用電話と電子メール ND
⑩ Shroba et al.(2020)
米国
予備調査
(量)
● ● Intervention
 親子 14組
Control
 親子 15組
中央値
 Intervention
 8歳(6から9歳)
 Control
 7.5歳(5から9歳)
N/A NP
●
N/A N/A N/A N/A ● ● N/A 個別
(対面)
・アドレナリン自己注射の使用に関する実技(外来) ・配布資料
・自己注射デモ機
ND
⑪ Pandya(2020)
インド
waitlist control design study(量) N/A ● テスト前
 こども 244人
テスト後
 こども 215人
13から15歳 N/A スピリチュアルトレーナー取得
●
N/A N/A N/A N/A N/A N/A ● 個別
(オンライン)
・マインドフルイーティングによる自己概念形成の支援(オンライン) ・アプリ ND
⑫ Alqurashi et al.(2020)
カナダ
1群前後
比較試験
(量)
● ● こども 205人
 内訳
 6歳未満 122人
 6から11歳 52人
 12歳以上17歳 31人
0から17歳 ● N/A N/A N/A N/A N/A ● ● N/A 個別(対面) ・緊急時対応
 アクションプランの作成(外来)
・配布資料 ND
⑬ Konishi et al.(2019)
日本
1群前後
比較試験
(量)
● N/A 母親 5人 3から5歳 ● N/A ● N/A ● N/A ● ● ● 集団
(対面)
・講義
・心理教育
・試食体験(外来)
・配布資料 2時間
⑭ 松谷ら(2018)
日本
記述的
観察研究
(量)
● N/A 母親 108人 3か月から8歳
(中央値8か月)
N/A N/A ● N/A N/A N/A ● ● ● 個別
(対面)
・栄養指導(外来) ・配布資料(調理法) 15から
50分
(中央値
25分)
⑮ 笹畑ら(2018)
日本
記述的
観察研究
(量)
● N/A 親 136人
(父母内訳の記載無)
中央値 7歳 ● ● N/A N/A N/A N/A ● ● N/A 個別
(対面)
・携帯型
 緊急時対応マニュアルの提示(外来)
・配布資料 ND
⑯ Ruiz-Baqués et al.(2018)
スペイン
1群前後
比較試験
(量)
● N/A 母親 98人
父親 19人
養育者 13人
中央値 5.46歳 ● ● N/A N/A N/A 親 ● ● ● 個別
(オンライン)
・教育コンテンツの提供(オンライン) ・配布資料
・動画
・チャット
5時間
⑰ LeBovidge et al.(2016)
米国
RCT
(量)
● N/A Intervention
 母親 70人 父親 4人
Control
 母親 73人 父親 6人
中央値
Intervention
 32.1か月
Control
 27.7か月
 診断1年未満
● N/A N/A N/A ● N/A ● ● ● 個別
(対面)
・教育コンテンツの提供(外来) ・配布資料 1から
2時間
⑱ Contreras-Porta et al.(2016)
スペイン
1群前後
比較試験
(量)
● N/A 第1回ワークショップ参加者
 184人
 内訳
  母親 103人 父親 72人
  養育者 9人
第2回ワークショップ参加者
 174人
脱落  10人
 (日程が合わなかった)
中央値 4.86歳 ● ● N/A N/A N/A 親 ● ● ● 集団
(対面)
・教育コンテンツの提供
・ワークショップ(患者会)
・配布資料
・動画
4時間
⑲ Umasunthar et al.(2015)
イギリス
RCT
(量)
● N/A Intervention
 親 158人
 (ANAPEN 79人 EPIPEN 79人)
Control
 親 43人(EPIPEN)
(父母内訳の記載無)
平均年齢
Intervention
 ANAPEN 4.5歳
 EPIPEN7 3.5歳
Control
 EPIPEN 3.8歳
● N/A N/A ● N/A N/A ● ● N/A 個別
(対面)
・アドレナリン自己注射の実技(外来) ・配布資料
・自己注射デモ機
ND
⑳ Sicherer et al.(2012)
米国
1群前後
比較試験
(量)
● N/A 親
 初回教育 60人
 1年後 33人
(父母内訳の記載無)
6か月から14歳
平均年齢 3.6歳
● ● ● N/A ● 親 ● ● ● 個別
(対面)
・教育コンテンツの提供
・アドレナリン自己注射の実技(外来)
・配布資料
・自己注射デモ機
・動画
ND
㉑ LeBovidge et al.(2008)
米国
1群前後
比較試験
(量)
● ● 親子 61組
こども 61人 親 61人
(父母内訳の記載無)
5から7歳
平均年齢 6.4歳
● ● N/A N/A ● ・チャイルドライフスペシャリスト
・親
● ● ● 集団
(対面)
・ワークショップ
・おいしゃさんごっこ
・買い物体験(玩具)(外来)
・配布資料
・玩具
半日
時間
記載なし

PAE:Pediatric Allergy Educatorの略 日本小児臨床アレルギー学会のアレルギー疾患の専門家として認められた看護師・薬剤師・管理栄養士のこと ●印は該当あり N/AはNot Applicate 該当なし ND(No Data)は記述なし

表2 食物アレルギーのあるこどもおよび保護者への患者教育の評価に用いられたアウトカムの概要

文献番号 研究
参加者
アウトカム
回答者 評価指標 評価時期 主な結果
① 親・
こども
親 ・親子クッキング講習会参加満足度 ・講習会参加直後 ・親子で楽しく調理ができたという回答であった.
・ミニ講座や保護者座談会では,知識の習得や情報交換,保護者の思い等の共有の場となっていた.
② 親 親 ・アナフィラキシー管理の知識
・アドレナリン自己注射の投与手順の行動
・教育介入直後 ・アナフィラキシー管理に関する知識スコアは,平均81.33%であった.
・オンライン教育後,アドレナリン自己注射の手順を正しく実行したのは,26.7%であった.
③ こども 親・
こども
【親】アレルギー教室参加後のこどもの行動変容
【こども】アレルギー教室参加後の家庭での食生活と思い
・教室参加2か月後 【親】半数の親が,こどもの食への関心や興味の変化を感じていた.
【こども】こどもは,食べたことのないお菓子に興味を持つようになったと感じていた.
④ こども 親・
こども
【親子】・疾患管理の能力と自信
・教育プログラム参加満足度
・教育プログラム開始前
・教育プログラム開始から8週間後
【親】Food Allergy Canada提供オンラインピアメンタリング(Allergy Pals)に参加後,疾患管理能力と,自信が改善した.
【こども】ピアサポートを通し,こども自身の疎外感が少なくなる傾向があった.
⑤ 親 親 ・アドレナリン自己注射の使用に関する自信とアナフィラキシーの認識
・FAQOL-PF10
・介入 直後
・介入 3か月後
・Food Allergy (FA) Passport(小冊子:緊急連絡先/個別の症状・処方薬/緊急時対応計画/食品表示の読み方などの情報を含む)とワークブック(不安や,コミュニケーションに焦点をあてた教材)による介入によって,アドレナリン自己注射器の使用に関する自信は69%から93%に改善し,アナフィラキシーの認識は66%から73%に改善した.
・QOLスコアは,3.47から3.17となり生活への影響が減少した.
⑥ 親 親 ・FAKT
・FASE-P
・FAMAS
・介入 直後
・介入 2週間後
・オンライン教育プログラム(①FAとアナフィラキシーの理解,②アドレナリン自己注射器の使用手技習得,③緊急行動計画作成)にて,親の知識や自己効力感,実践行動が改善した.
・知識(FAKT)
 介入直後    t = 14.51 p < .001
 介入後2週間  t = 16.15 p < .001
・自己効力感(FASE-P)
 介入直後    t = 77.99 p < .001
 介入後2週間  t = 76.09 p < .001
・実践行動(FAMAS)
 介入直後    t = 28.10 p < .001
 介入後2週間  t = 27.98 p < .001
⑦ 親
診断
90日以内
親 ・FASE-P
・FAQLQ-PB
・介入 直後
・介入 4週間後
・Food Allergy Symptom Self-Management with TechnologyアプリケーションによってIntervention群の社会活動中の安全対策スコアは24%上昇し,Control群は1%減少した.
・Intervention群にて,FAの情報を探すために,Webサイトの利用が17%上昇し,Control群は4%上昇した.
⑧ 親 親 ・FAQLQ-PB
・FASE-P
・GAD-7
・IUS
・PHQ-8
・PSS
・介入 直後
・介入 4週間後
・介入 8週間後
・オンラインセルフヘルプ情報提供教育プログラム参加者の44.9%(n = 92)が追跡調査を継続し,どの時点でも,Intervention・Control両群間のアウトカムに有意差はなかった.
・介入時で抑うつ評価尺度の臨床的カットオフ値を超えていた参加者のサブグループでは,介入により,QOLが向上した可能性があった.
・ウェブサイトコンテンツの有用性とアクセスのしやすさを感じていたが,アクセス頻度は低かった.
⑨ 親
診断
1年未満
親 ・FAQLQ-PB
・FASE-P
・FAIM
・Social Support for Caregiving Scale
・FAKT
・Program Evaluation
・介入 直後
・介入 6か月後
・診断1年以上経過するこどものある親による対面型メンタリングにて,メンティーは,プログラム評価と面接において,介入に対する高い受容度を示し,ソーシャルサポート,ストレス,疾患管理への自信,子育て行動の肯定的な変化が改善した.
⑩ 親・
こども
親・
こども
【親】
・FAの知識
・アドレナリン自己注射使用手順
【こども】
・親が質問票を読み上げてFAの知識面のアンケートに回答する
・介入 直後
・介入 6週間後
・こども向け配布資料を用いた教育効果は,親を対象とした教育と同等であると確認された.
・介入 直後 食物アレルギーの知識が,親とこどもで有意に増加した.(t = –6.301; p < 0.001)
・介入 6週間後 食物アレルギーの知識は,親とこどもとの差がなかった.(t = –1.782; p = 0.089)
 アレルギー反応の知識の差は,親とこどもとの差がなかった.(χ2 = 2.33; p = 0.13)
⑪ こども こども ・MEQ
・BPWBS-A
・PH-2-CSCC
マインドフル・イーティングとは,摂取する食品の性質,種類,量,食感を意識し,それらを味わうことを含む(Dalen et al., 2010;Hendrickson & Rasmussen, 2013)
・介入 直後
・介入 50週間後
・マインドフル・イーティング介入(WhatsAppを用いた投稿型の情報提供)を,思春期でも継続しやすいモバイル・メッセージング形式で配信した結果,中流階級の青年,母親が主な養育者である青年,そしてその主な養育者が高等教育または大学院卒,あるいは専門職資格を有する青年において効果的であった.
⑫ 親・
こども
親・
こども
【親子】
・アナフィラキシーの理解度
・介入 3週間後 ・対面型アクションプラン作成によって,アナフィラキシーの理解度の平均得点は,11.3(標準偏差1.8)(基準範囲0~12)で,アナフィラキシー経験の有無,あるいは識字能力の高低による有意差はなかった.
⑬ 親 親 ・食事管理の心理的負担尺度
・子育て感情尺度 ・牛乳摂取量
・精神的健康度評価尺度 GHQ-12
・子どもの強みと困難度尺度
・介入前
・教育プログラム終了 3か月後
・対面型教育プログラム参加後母親の心理的負担が軽減され,精神的健康状態が改善した.
⑭ 親 親 ・栄養指導後の満足度 ・栄養指導 直後 ・対面による栄養指導により,献立変化では,0歳児の養育者で不安が解消した割合が高く,2歳以上では低かった.
⑮ 親 親 ・アドレナリン自己注注射の使用の目安と使い方などの冊子の内容・見やすさ・使いやすさ ・緊急時対応
 冊子配布後
・外来で配布された緊急時対応冊子の内容・見やすさ,使いやすさについておおむね妥当であった.
⑯ 親・
その他養育者
親・
その他養育者
・疾患知識
・教育プログラムの満足度
・介入前
・介入 直後
・オンライン教育プログラム参加後,30項目の疾患知識のうち15項目において有意に知識が向上した.
・オンラインフォーラムに67.1%の参加者が,ビデオチャットに27.5%の参加者が参加した.
・オンライン教育プログラムの満足度は,8.78(10点満点中)であった.
⑰ 親
診断
1年未満
親 ・疾患知識
・疾患管理スキルの自信
・FAQLQ-PB
・配布資料の満足度・読む時間・内容・情報量・有用性
・資料配布 2週間後
・資料配布 2か月後
・対面による教育資料の配布2週間後,自信が改善した.
・2か月後には,QOLが改善した.
⑱ 親・
その他養育者
親・
その他養育者
・疾患知識
・ワークショップの参加満足度
・ワークショップ前
・ワークショップ直後
・対面でのワークショップ後,知識は,40項目中29項目で改善した.
・参加満足度は,参加者の90%が10点満点中8から10点であった.
⑲ 親 親 ・アドレナリン自己注射の投与手順 ・初回トレーニング6週間後
・初回トレーニング1年後
・対面による初回トレーニングから6週間後,参加者の半数未満がアナフィラキシーのシナリオで,一般的に処方されるアドレナリン自己注射器デバイスを使用できた.
・1年後,再トレーニングせずに類似の代替デバイスに変更した場合,成功率は向上しなかった.
⑳ 親 親 ・疾患知識
・教育プログラムの満足度
・アドレナリン自己注射の投与手順
・介入 直後
・介入 1年後
・対面による教育は,アドレナリン自己注射の使用技術の向上,治療に対する安心感の向上,知識の向上,教材に対する満足度があった.介入1年後のアドレナリン自己注射使用技術は,低下していた.
㉑ 親・
こども
親 【親】
・食物アレルギーの対処能力
・FAQLQ-PB 
・ワークショップ時
・ワークショップ後(4から8週間以内)
・対面でのワークショップ後,食物アレルギーの対処能力に関する親の認識は上昇した.
・対面でのワークショップ後.QOL尺度における親の負担感は減少した.

FAQOL-PF10 QOL尺度 Food Allergy Quality of Life Questionnaire - Parent Form 10-item short version FAQLQ-PB QOL尺度 Food Allergy Quality of Life Parental Burden Scale FAKT 知識尺度 Food Allergy Knowledge Test FASE-P 自己効力感尺度 Food Allergy Self-Efficacy for Parents FAMAS 実践行動尺度 Food Management and Adaptation Scale GAD-7 不安尺度 Generalised Anxiety Disorder 7-item screener IUS 不確実性尺度 Intolerance of Uncertainty Scale PHQ-8 抑うつ評価尺度 Patient Health Questionnaire 8-item version PSS ストレス尺度 10-item version of the Perceived Stress Scale FAIM 食物アレルギーの影響度やリスク認識尺度 Food Allergy Independent Measure MEQ マインドフル・イーティング尺度 Mindful Eating Questionnaire BPWBS-A 幸福感尺度 Brief Psychological Wellbeing Scale for Adolescents PH-2-CSCC 自己概念尺度 Piers-Harris 2 Children’s Self-Concept Scale

Ⅳ. 倫理的配慮

データの抽出および分析において,原著者の意図が損なわれないよう十分に配慮した.また,著作権を侵害することのないよう,引用および文献情報を適切かつ明確に記述した.

Ⅴ. 結果

1. 対象文献の件数

2,918件が検索され,9つのデータベースにて重複された868件を除外した2,050件をスクリーニングの対象とした.1次スクリーニングでは,2,050件のうち1,883件が除外され,167件が抽出された.さらに,2次スクリーニングにおいて,研究対象者が18歳以上であった文献8件,患者教育の詳細な記述がない文献138件を除外し,最終的に21件を分析対象とした.

2. 対象文献の概要およびFAのあるこどもおよび保護者への患者教育の特徴

対象文献の概要と患者教育の特徴(n = 21)を表1に示す.2008年から2024年までの16年間わたり継続的に発表されていた.発行国は,米国(n = 7),日本(n = 5),カナダ(n = 2),イギリス(n = 2),スペイン(n = 2),アイルランド(n = 1),韓国(n = 1),インド(n = 1)であった.研究デザインは,1群前後比較試験(n = 8),RCT(n = 5),記述的観察研究(n = 4),予備調査(n = 2),横断研究(n = 1),waitlist control design study(n = 1)であった.研究の種類は,量的研究(n = 19),ミックスメソッド(n = 2)であった.

患者教育の対象者は,保護者のみ(n = 14),保護者とこども(n = 5),こどものみ(n = 2)だった.保護者の内訳は,母親・父親・両親・その他養育者であったが,多くは母親であった.こどもの診断時期が1年未満の研究は少数であった(n = 3).

患者教育の提供者は,医師(n = 14),看護師(n = 11),栄養士(n = 5),心理士(n = 5),薬剤師(n = 1),栄養学教員(n = 2),保護者(n = 4),こども(n = 1),幼児教育学教員(n = 1),栄養学学生(n = 1),チャイルドライフスペシャリスト(n = 1)であった.患者教育の提供者の中には,日本小児臨床アレルギー学会のアレルギー疾患の専門家として認められた看護師・薬剤師・管理栄養士(PAE)や,海外ではナースプラクティショナー(以下NP),スピリチュアルトレーナー資格をもつ看護師,アレルギー専門看護師など,トレーニングや認定を受けたケア提供者が含まれていた.また,介入特性に応じて,FAのあるこどもを養育してきた経験を有する保護者が,患者教育の提供や支援に関与している研究が確認された(Contreras-Porta et al., 2016).該当研究では,FAをもつこどもの養育経験を有する保護者が,自身の疾患管理経験を踏まえた立場から,ワークショップの運営および教育支援に参加していた.さらに,同研究では,疾患管理経験を有する立場のことをエキスパートペーシェント(慢性疾患をもちながら自身の状態を理解・管理することで健康状態をコントロールし,QOLの向上につなげている人)と説明されていた.

患者教育の内容は,3点に大別された.1.原因食物・アレルギー症状,アレルギー症状のリスクに関するFAに関する疾患知識の理解,2.アドレナリン自己注射の使用を含むFA管理行動の習得,3.不安や負担感,社会的孤立感などに対応する心理社会的側面への支援であった.教育内容の多くは,疾患知識にFA管理行動や心理社会的支援を組み合わせた複合的な内容が提供されていた.こどものみを対象とした教育では,学校生活やいじめなどの心理社会的側面への支援が含まれていた.

患者教育の提供方法は,対面型個別教育(n = 9),対面型集団教育(n = 5),オンライン型個別教育(n = 7)に大別された.提供方法は,対面型個別教育が最も多く,オンラインを活用した個別教育も一定数報告されていた.また,対面とオンラインを組み合わせた研究もみられた.

教育媒体は,ハンドブック,アドレナリン自己注射デモ機,動画,アプリケーションなど多様であり,提供時間は研究により異なっていた.

3. 患者教育の評価に用いられたアウトカムの概要

患者教育の評価に用いられたアウトカムの概要を表2に示す.患者教育の評価に用いられたアウトカムには,疾患知識やFA管理行動などの行動・認知的側面,自己効力感や満足度,QOL,不安やストレスといった心理的側面,ならびにアレルゲン摂取量やアドレナリン自己注射の手技などの客観的指標が含まれていた.単一のアウトカムのみを評価している研究よりも,複数の指標を組み合わせて患者教育の効果を評価している研究が多かった.なお,本ScRでは,これらの指標を,患者教育を通じて健康状態に影響を及ぼし得る要因として捉え,患者教育の評価に用いられていたアウトカムとして整理した.

アウトカムの回答者は主に保護者で,こども対象の場合は発達段階に応じて代理回答が用いられていた.評価時期は,介入直前,介入直後,2から8週間後,2から6か月後,1年後であった.

評価時点におけるアウトカムの主な結果は,短期(介入直後から2週間),中期(4週間から6か月),長期(6から12か月)で異なる傾向を示していた.短期(介入直後から2週間)は知識・手技・自己効力感の改善が認められていた.中期(4週間から6か月)は,FA管理行動やQOLなどの改善が報告されていた.長期(6から12か月)は,自己概念に関わる心理介入による心理面の安定が得られた一方で,アドレナリン自己注射の手技は低下する傾向が示された.

Ⅵ. 考察

FAのあるこどもと保護者への患者教育に関する21件の文献を特定した.結果をもとに,患者教育と患者教育の評価に用いられたアウトカムの特徴について考察していく.

1. 患者教育の特徴

FAの発症は乳幼児期に多いことから,主な対象者は保護者であった.FAは,偶発的なアレルゲン曝露が起こりやすく(Fedele et al., 2016),予測不可能(Cabrera et al., 2023)な側面から,保護者の不安やストレス,孤立などが生じやすい(Broome et al., 2015).そのため,疾患知識,FA管理行動,心理社会的支援を組み合わせた複合的な内容であった.特に,FA診断後6か月までは,家族全員のQOLを維持しながらFA管理に取り組む必要があり,保護者の心理社会的支援ニーズは高いとされている(Broome et al., 2022).EAACIガイドライン(Santos et al., 2025)では,アレルゲン回避および緊急対応に関する教育,行動計画,栄養面,心理社会的問題のスクリーニングを診断早期に速やかに開始することが提言されている.本ScRにおいて,診断6か月未満を対象としていたのは(Broome et al., 2022),1件であった.FA診断間もない時期の患者教育は,FA管理の定着と心理的負担の軽減の両面から重要であり,介入効果を検証する研究の蓄積の必要性が示唆された.一方,こどものみを対象とした研究は,こどもの認知発達によって,学習スタイルや学習内容は,異なっていた.5から11歳のこどもを対象とした研究(Shroba & McElroy, 2020)は,こども自身が安全行動を理解・判断するために写真を用いた結果,こども向け教育が保護者向け教育と同等の知識向上・安全性を示した.また,7から11歳を対象としたピアサポートに関する研究(Dhanjal et al., 2023)は,こどもピアサポートプログラムが,孤立感の軽減や自信の向上などの心理的側面に好影響を及ぼす可能性が示唆されていた.

患者教育の提供者は,主として医師や看護師を中心とする医療専門職であり,一部の研究では,心理士や栄養士,薬剤師の関与もみられた.日本では,日本小児臨床アレルギー学会が認定するPAEが患者教育に関与している報告があった.一方,海外では,アレルギー専門看護師やNPなど,専門的な教育やトレーニングを受けた看護師が患者教育の提供者として関与している事例が示されていた.また,一部の研究では,FAのあるこどもを養育してきた経験を有する保護者が,患者教育の提供や支援に関与していた.このような経験に基づく関与は,医療専門職による教育を補完する役割を果たし,診断間もないFAのあるこどもとその保護者にとって理解しやすく,日常生活に即した視点を提供する可能性がある.FAのように日常的な自己管理が求められる慢性疾患においては,FAのあるこどもを養育してきた経験を有する保護者による実体験に基づく支援が,診断間もないFAのあるこどもとその保護者の安心感や実践行動の促進につながることが考えられ,患者教育の提供体制を検討する上で注目すべき特徴の一つといえる.

提供方法では,対面教育は実技指導に適し,オンライン教育は反復学習に有効である可能性が示唆された.対面型患者教育は,対象者の表情や反応から理解度を確認しやすく,実技指導において即時のフィードバックが可能であるという利点がある一方で,時間や場所の制約を受ける課題がある.これに対し,オンライン型患者教育は,効率的な情報提供や,反復学習が可能であり,自分のペースで学習できる利点がある一方で,対象者の表情や反応を把握しにくいという課題がある.今後,教育内容の特性に加え,対面とオンラインの患者教育のメリットとデメリットを考慮した提供方法に関する検討の必要性が示唆された.

メディアのほとんどがハンドアウトであった.日本では,保護者向けのハンドアウトが環境保全機構のホームページから配信されており,内容は充実している.一方で,こどもの認知発達に応じた教育ツールは,いつでも利用できる段階には至っていない.松本ら(2023)は,PAEを対象とした患者教育の実態調査において,こども向けの教育は,PAEの半数以上が実施していた項目の16項目中10項目にとどまり,こどもの疾患理解を助ける教育の必要性を示唆している.米国国立アレルギー感染症研究所のFAの診断と管理に関するガイドライン(Boyce et al., 2010)において,こどもの成長に伴いQOLに関する懸念が変化する可能性があるため,年齢に応じたアレルゲン回避と緊急時対応に関する情報提供を推奨している.また,米国アレルギー・喘息・免疫学会(Sampson et al., 2014)では,FA教育を一過性の介入ではなく,発達段階に応じて内容を更新しながら継続的に行うプロセスとして位置付けていた.

患者教育の提供時間は,個別と集団教育の特徴が認められた.個別教育では1回につき約1時間程度であった.集団教育では,2時間から4時間程度であった.効果的な患者教育の提供時間・期間の検討は十分に行われていなかった.先行研究においても,介入の提供時間・期間を報告しているが,時間設定の比較や長期的なフォローアップは十分ではない(Sanagavarapu et al., 2023;Cheon et al., 2022;Sugunasingha et al., 2020)ことを指摘しており,同様の結果であった.

2. 患者教育の評価に用いられたアウトカムの概要

FA患者教育は,疾患知識,アドレナリン自己注射に関する手技,アレルギー症状への恐怖や不安などの心理社会的支援を含む複合的なものであった.そのため,患者教育の評価に用いられたアウトカムには,知識や管理スキル,自己効力感やQOLの心理社会的側面が含まれており,患者教育が日常生活全体への適応を支援する役割を担っていることが示唆された.

アウトカム評価の時期は,2週間から50週間と幅があった.アウトカム評価は主に介入前後に実施されていたが,効果的なFA患者教育の介入頻度については,十分に検討されていなかった.アウトカム評価の時期は,短期的に改善しやすい知識面に加え,長期的に変化する心理的状態や,時間経過によるアドレナリン自己注射手技スコアの低下などを含め,中長期的に評価していく必要性が示唆された.

患者教育の評価指標は多様で,評価時点により得られるアウトカムが異なる可能性が示唆された.具体的には,知識・自己効力感・FA管理行動などの「行動変容に直結する指標」は,介入直後から数週間以内に有意な改善を示す傾向が推察された.保護者向け教育プログラム(Kwen & Oh, 2022)では,介入直後および2週間後の両時点で,疾患知識,自己効力感,管理行動がいずれも有意に改善していた.また,アドレナリン自己注射のデモンストレーションや知識テストを指標とした教育カリキュラムは(Cronin et al., 2024),初回教育直後に大きな改善が示された.このことから,知識やスキル,自己効力感は短期評価(介入直後から数週間)で効果が最も捉えやすいことが推測された.また,中期(4週間から6か月)の介入は,心理面の安定やQOLの改善を示す結果が確認された.この結果は,患者教育により介入6か月後よりも12か月時点で不安の軽減が示されたシステマティックレビュー(Cheon et al., 2022)の結果と同様であった.さらに,長期(6か月から12か月)の介入は,マインドフル・イーティング介入(Pandya, 2020)が思春期の自己概念の形成や幸福感の改善に効果がある可能性や,ピアメンターシップが孤独感の改善やストレスの軽減のほか疾患管理の自信や子育て行動の肯定的変化の改善にも寄与する(Ramos et al., 2021)可能性が認められた.

本ScRにおいて,FA患者教育の評価に用いられたアウトカムは,1.短期(介入直後から数週間):知識・スキル・自己効力感・行動指標の改善,2.中期(2週間から6か月):QOLや不安など心理社会的側面のアウトカムの変化,3.長期(6から12か月以降):不安軽減,日常生活全般に影響する中長期的アウトカムなど段階的な時間構造が推測された.

Ⅶ. 研究の限界

本ScRは,9つのデータベースを用い,灰色文献を含めて検討し,患者教育の特徴と患者教育の評価に用いられていたアウトカムを特定したが,検索基準により重要な論文が含まれていない可能性がある.FAに関する基礎研究や診療・管理に関する研究は急速に進展していることから,今後は最新のエビデンスに基づいた継続的かつ網羅的な検討が求められる.

Ⅷ. 今後の研究課題

本ScRから,以下の点が,今後の研究課題として示唆された.

1. FA患者教育の効果的な提供方法の評価

介入内容や介入期間にばらつきが認められたため,FA患者教育の効果的な提供方法について研究間で比較することは困難であった.日本の研究では1群比較試験や記述的観察研究が多く,海外ではRCTが採用されていた.今後は,FAのあるこどもおよび保護者に対する効果的な患者教育の方法を特定するためには,RCTや準実験デザインを用いた研究,より長期的な追跡調査の蓄積が必要である.

2. 保護者とこどものピアサポ―トに関する効果検証

日本のピアサポートに関連する研究は,クッキング教室における座談会1件のみであった.海外研究では,ピアサポートが保護者のFA関連のストレス軽減や自信の向上,こどもにおける疎外感の軽減につながることが示されていた.今後は,支援ニーズが高い診断6か月未満の保護者を対象とした研究や,FAのあるこどもを養育してきた経験を有する保護者やこどもによるピアサポートの効果を明らかにする研究が必要である.

3. こどもの認知発達に応じた教材開発

日本では,幼児期から学童期のこどもを対象に,食べ物ゲームや買い物体験などを対面型集合教育にて実施していた.海外では,5から11歳のこどもがFAに関連した安全な環境が示されている写真を選択するなど,データ収集に参加していた.今後は,こどもの体験に基づくデータ収集や写真を使った手法を通じて,認知発達に応じた教材開発が必要である.

4. こどもの原因食物への恐怖や不安を緩和するための介入研究

日本では,アレルギー教室の参加を通じて,これまで食べたことのない食品への関心が高まったとの報告がある.海外では,思春期のこどもを対象としたマインドフル・イーティングの介入により,自己概念の形成を促進する可能性が示されている.思春期以降,原因食物への恐怖や不安,食感への嫌悪などを背景に寛解後も原因食物の摂取を回避するこどもは少なくない.今後は,食品の性質,種類,量,食感を意識し,それらを味わうことを含むマインドフル・イーティングの考え方や,アレルギー教室を通して食への関心を高める介入の検討が必要である.

Ⅸ. 結論

1.FAのあるこどもと保護者への患者教育は,疾患知識や管理行動の習得に加え,心理・社会的側面への支援を含む多面的な取り組みとして,医師・看護師・栄養士・薬剤師・心理士・患者会の保護者・FAのあるこどもなどが,介入特性に応じた多様な方法で実施されていた.

2.主な対象者は母親であり,父親やこどもを対象とした研究は限られていた.

3.アウトカムの評価指標は,患者教育の内容や提供方法に応じて特徴が異なる傾向が示された.

謝辞:本研究は,2024年度公益財団法人小林製薬青い鳥財団の調査研究「診断間もないFood Allergyのあるこどもと家族への教育的支援に関する質指標の開発」の助成支援を受けて実施した研究成果の一部である.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:YKはこの研究の着想およびデザイン,データ収集・文献スクリーニング・結果の分析と解釈,論文執筆のすべてを実施した.YT・YM・MI・TNは文献スクリーニングと結果の分析と解釈を,MSは結果の分析と解釈,文献検索の資源はMN,レビューの監督はTK,執筆の原案はYK,編集校正はすべての著者,資金獲得はYKである.

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